JP4724661B2 - 植物発根誘導剤 - Google Patents

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Description

本発明は、挿し木により植物を増殖する際の発根を促進又は誘導する植物発根誘導剤に関する。更に詳しくは、本発明は、特に松、杉、茶、クルミ等の発根し難い植物を挿し木により増殖する際に発根を促進又は誘導するケトール不飽和脂肪酸を有効成分とする植物発根誘導剤に関する。本発明は更に挿し木により増殖することが極めて困難又は不可能とされていた、ビヨウヤナギ又はソメイヨシノ(桜)の増殖を可能とした、前記ケトール不飽和脂肪酸を有効成分とする植物発根誘導剤に関する。
植物の増殖は、種子又は挿し木によるのが通常のことであり、前者の種子による繁殖の場合には、通常種子が純系であることが求められる。これは純系の種子を用いないと繁殖植物の形質が区々になってしまうからであるが、種子繁殖では純系の種子を得ることに困難を伴う植物も多い。更に、種子繁殖では、種子が容易に採取できる植物に繁殖対象が限定されてしまうという別な問題もある。
このため、前述の挿し木による繁殖も広く行われているが、挿し木では発根が難しい植物も多く、そのような植物としては、例えば松、樅、栂、杉、茶、ホウノキ、ユリノキ、榎、栗、樫、クマシデ、胡桃、山桃等がある。
そのため、これらの植物を挿し木する場合には、「ルートン(有効成分:1−ナフチルアセトアミド)」、「オキシベロン(有効成分:インドール酪酸)」等のオーキシン系発根誘導剤を用いるのが通常のこととなっている。しかしながら、オーキシン系の発根誘導剤を用いても、前記した植物の発根は困難である場合が多い。そのため、必然的に発根誘導剤の使用量が多くなり、環境汚染を引き起こすことが懸念されている。さらに、その使用形態が煩雑であり、簡便な大量処理を困難にしている。すなわち、挿し木や挿し芽の切り口を高濃度のオーキシン溶液に数時間浸漬、又はその切り口にオーキシンの粉剤を一本ずつ添着させることが必要であり、簡便な手法で利用することができない。
更に、オーキシン系薬剤による処理に先立って、硝酸銀、過マンガン酸カリウム、石灰水、エタノール等により前処理を行うことも広く実施されており、これは発根誘導剤の使用を煩雑にするだけでなく、さらに環境汚染につながることが問題である。しかも、そのような煩雑な工程を以ってしても発根が困難な植物は樹木を中心に数多いのが現状である。また、樹木の特徴として、幼樹では発根が可能であるものの、生長するに従い急速に発根形成能力がなくなってしまうことが挙げられる。このような性質のために、挿し木用に使える量が限られてしまい、それも植林事業を困難にしている大きな原因である。
本発明者等は、発根誘導剤の前記したとおりの現状を打開すべく、またその開発の社会的必要性を痛感し、更には将来性に着目し発根誘導剤の研究開発に努め、その結果、既にインドール系誘導体を開発し、それに発根誘導性能があることを見出し、この誘導体に関し特許出願した(特開平10−77268号公報参照)。
本発明者等が開発した、前記インドール系誘導体は、植物発根誘導剤として散布等の簡便な手法で利用することができ、この点では従来のオーキシン系発根誘導剤の短所であった使用態様の煩雑さを解消するものとなっている。
しかしながら、前記インドール系誘導体も、オーキシン系発根誘導剤の代表的な化合物であるインドール酢酸、インドール酪酸等と同じインドール系化合物であり、その発根誘導性能も充分に満足できるものとは言い難いものであった。
また、それ以外にオーキシン系発根誘導剤にはナフタレン酢酸などもあるが、発根性能を示す化合物については限られた範囲のものとなっており、脂肪族化合物、特に脂肪酸を基本骨格とする物質の発根誘導作用は全く知られていない。
そのようなことから、本発明者らは、より広い範囲の化合物の中から、より優れた発根誘導作用を有する化合物を見出すべく、その後も引き続き発根誘導剤及びそれに適する新規化合物の研究開発に努めた。その際、本発明者らは、特に、樹木において発根が誘導されにくいのは、休眠現象が関わっているのではないかとの仮説を立て、その制御に焦点を当てた研究を進めた。その結果、「花芽形成促進作用」「成長促進作用」「休眠抑制作用」などが認められる特定のケトール脂肪酸(特開平11−29410号公報参照)が、驚くべきことに発根作用をも促進することを見出し、しかも散布等の簡便な手法で利用できることもわかり、本発明の開発に成功した。
従って、本発明の目的は、植物の発根誘導作用、特に松、杉、茶、クルミ等の発根し難い植物を挿し木により増殖する際に優れた発根の促進又は誘導性能を有し、かつ散布等の簡便な手法で利用でき、しかも従来のオーキシン系発根誘導剤化合物とは化学構造が大きく異なる化合物であるケトール不飽和脂肪酸を有効成分とする植物発根誘導剤を提供することにある。
本発明の別の目的は、より発根が難しいとされているビヨウヤナギあるいは発根が不可能といわれているソメイヨシノ(桜)についても、驚くべきことに発根作用を有する前記ケトール脂肪酸のうちの特定のα−ケトール不飽和脂肪酸を有効成分とするビヨウヤナギ又はソメイヨシノにも有効な発根剤を提供することにある。
本発明は、前記したとおり植物発根誘導剤を提供するものであり、その植物発根誘導体は炭素原子数が5〜24のケトール脂肪酸であって、炭素原子間の二重結合の数が1〜6個であり、かつαケトール構造又はγケトール構造を有するケトール不飽和脂肪酸を含んでなる。
特に前記ケトール不飽和脂肪酸としては、9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(),15()−オクタデカジエン酸が好ましい。
なお、本明細書及び請求の範囲における「Z」及び「E」は、シス・トランス異性体であることを意味し、そのうちZはシス体、Eはトランス体であることを示す。また、それらの下に付記されたアンダーラインは、「Z」及び「E」が本来イタリック体で表記されるべきものであることを示す。
本明細書及び請求の範囲の記載において、単数形は、前後の記載からそれが単数であることが明確でない限り、複数形を含むものとする。
本発明は、挿し木により植物を増殖する際に必要な優れた発根性能を発揮する植物発根誘導剤を提供するものであり、特に松、杉、茶、クルミ等の発根し難い植物を挿し木により増殖することができる路を拓いたものであり、優れた発根の促進性能又は誘導性能を発現することができるケトール不飽和脂肪酸を有効成分とする植物発根誘導剤を提供するものである。
さらに、本発明は、より発根が難しいとされているオトギリソウ科、オトギリソウ属であるビヨウヤナギ(美容柳)(和名 ビヨウヤナギ、学名 Hypericum chinense var. salicifolla)及び発根が不可能といわれているバラ科、サクラ属であるソメイヨシノ(桜)(和名 ソメイヨシノ、学名 Prunus yedoensis Matsumura)を挿し木により増殖することができる路を拓いた。また、生長が早く、幹も真直ぐな性質のために合板の材料として有用なマメ科、パラセリアンテス属であるファルカタ(和名 モルッカネム、学名 Paraserianthes falcataria Becker)についても挿し木により増殖することができた。
また、本発明の植物発根誘導剤は、従来のオーキシン系発根誘導剤のように挿し木や挿し芽の切り口を高濃度のオーキシン溶液に数時間浸漬するか、あるいはその切り口にキーキシンの粉剤を一本ずつ添着させるような手法で使用する必要はなく、液剤や乳剤として散布、滴下あるいは塗布等の簡便な手法で使用することができる長所がある。
本発明の発根誘導剤の有効成分化合物は、天然に存在する不飽和脂肪酸を基本骨格とし、それに酸素2個と、水素1個が付加された単純なケトール構造を持つ誘導体であり、かつ低濃度で所定の性能を発現することができから、従来のオーキシン系発根誘導剤の環境汚染の可能性も低減できる。
更に、その有効成分であるケトール不飽和脂肪酸は、従来のオーキシン系発根誘導剤の代表的な有効成分であるインドール系化合物又はナフタレン酢酸等の芳香族化合物とは基本骨格を異にする大いに化学構造の異なる不飽和脂肪酸を基本骨格とする脂肪族化合物であり、このような物質に植物発根誘導作用が認められたことは、全く予測の範囲外のことである。
従って、本発明は、以下の点において特に植物発根誘導剤に新たな領域を開いたものであり、卓越した技術を提供するものである。
実施例3におけるビヨウヤナギ発根誘導性能試験の結果を示す図面である。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を含む本発明の実施の態様に関し詳述する。
本発明の植物発根誘導剤の有効成分である、ケトール不飽和脂肪酸は、前記したとおり、炭素原子数が5〜24のケトール脂肪酸であって、炭素間の二重結合が1〜6であり、かつαケトール構造又はγケトール構造を有するものである。
前記αケトール構造又はγ構造ケトール構造を持つケトール不飽和脂肪酸はカルボニル基を構成する炭素原子と水酸基が結合した炭素原子がα位又はγ位の位置にある不飽和脂肪酸である。
前記ケトール不飽和脂肪酸は一般式でも表すことができ、それによって表すと前者のαケトール構造を持つケトール不飽和脂肪酸は、以下の一般式(I)及び(II)、後者のγケトール構造を持つケトール不飽和脂肪酸は、以下の一般式(III)及び(IV)となる。
Figure 0004724661
上記αケトール構造を持つケトール不飽和脂肪酸については、前記一般式(I)及び(II)において、Rは直鎖状アルキル基又は2重結合を持つ直鎖状不飽和炭化水素基であり、Rは直鎖状アルキレン又は2重結合を持つ直鎖状不飽和炭化水素鎖であり、しかも少なくともR及びRのいずれか一方が2重結合1つを持ち、かつケトール不飽和脂肪酸の全炭素数が5〜24で、炭素間の全二重結合が1〜6であるように選択されることが必要である。
また、γケトール構造を持つケトール不飽和脂肪酸については、前記一般式(III)及び(IV)において、Rは直鎖状アルキル基又は2重結合を持つ直鎖状不飽和炭化水素基であり、Rは直鎖状アルキレン又は2重結合を持つ直鎖状不飽和炭化水素鎖であり、しかもケトール不飽和脂肪酸の全炭素数が7〜24で、炭素間の全二重結合が1〜6であるように選択されることが必要である。
前記不飽和ケトール脂肪酸については、炭素原子数が18で、炭素間の二重結合が2つ存在する化合物が本発明の発根誘導剤の有効成分の化合物として好ましい。好ましいケトール脂肪酸の具体例としては、一般式(I)に該当する9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(),15()−オクタデカジエン酸〔以下,特定ケトール脂肪酸(Ia)ということもある〕、一般式(II)に該当する13−ヒドロキシ−12−オキソ−9(),15()−オクタデカジエン酸〔以下,特定ケトール脂肪酸(IIa)ということもある〕、一般式(III)に該当する13−ヒドロキシ−10−オキソ−11(),15()−オクタデカジエン酸〔以下、特定ケトール脂肪酸(IIIa)ということもある〕、一般式(IV)に該当する9−ヒドロキシ−12−オキソ−10(),15()−オクタデカジエン酸〔以下、特定ケトール脂肪酸(IVa)ということもある〕等を挙げることができる。
以下に、特定ケトール脂肪酸(Ia)〜(IVa)の化学構造式を記載する。
Figure 0004724661
Figure 0004724661
1.本植物発根誘導剤の有効成分化合物の製造方法について
以下に、本発明の植物発根誘導剤の有効成分であるα又はγケトール構造を有するケトール不飽和脂肪酸の製造方法について、前記した特定ケトール脂肪酸(Ia)〜(IVa)を例に用いながら詳細に説明する。
特定のケトール脂肪酸は、所望するケトール脂肪酸の具体的構造に応じた方法で製造することができ、それは以下のとおりである。
(1)天然物に含まれていることが明らかな態様の特定ケトール脂肪酸は、この天然物から抽出精製することで製造することができる(以下、抽出法という)。
(2)不飽和脂肪酸にリポキシゲナーゼ等の酵素を、植物体内における脂肪酸代謝経路に準じて作用させることにより特定ケトール脂肪酸を得ることができる(以下、酵素法という)。
(3)所望する特定ケトール脂肪酸の具体的構造に応じて、既知の通常の化学合成法を駆使して特定ケトール脂肪酸を得ることができる(以下、化学合成法という)。
これらの製造方法に関し、以下において具体的に説明する。
(1)抽出法について:
特定ケトール脂肪酸(Ia)は、ウキクサ科植物の一種であるアオウキクサ(Lemna paucicostata)から抽出・精製して得ることができる。
この抽出法における原材料となるアオウキクサ(Lemna paucicostata)は、池や水田の水面に浮遊し、かつ水面に浮かぶ葉状体が各々1本の根を水中に下ろす小型の水草であり、比較的増殖速度が速いことで知られている。その花は、葉状体の体側に形成され、1本の雄しべだけからなる雄花2個と1個の雌しべからなる雌花が、共通した小さな苞に包まれている。このアオウキクサの破砕物に、遠心分離(8000×g・10分間程度)を施し、得られた上清と沈澱物のうち、上清を除いたものを特定ケトール脂肪酸(Ia)を含む画分として利用することができる。このように、特定ケトール脂肪酸(Ia)は、上記破砕物を出発物質として単離、精製することが可能である。
さらに、好ましい出発物質としては、アオウキクサを浮かばせた又は浸漬した後の特定ケトール脂肪酸(Ia)が溶出した水溶液を挙げることができる。これを用いることにより特定ケトール脂肪酸(Ia)の濃度の高い溶出液を得ることができ、効率的に特定ケトール脂肪酸(Ia)を調製することできる。その際には、後記するように乾燥ストレス等のストレスを与えたものを用いることにより、より濃度の高い溶出液を得ることができ好ましい。この水溶液の調製の具体例は、後述する実施例において記載する。浸漬時間は、室温で2〜3時間程度でも可能であるが、特に限定されるべきものではない。
前記した方法で特定ケトール脂肪酸(Ia)の出発物質を調製する場合には、予め特定のストレスを与えることで、アオウキクサ内に特定ケトール脂肪酸(Ia)をより産生するように誘導することができ、特定ケトール脂肪酸(Ia)の製造効率上好ましい。具体的には、乾燥ストレス、熱ストレス、浸透圧ストレス等を前記特定のストレスとして挙げることができる。
乾燥ストレスは、例えば低湿度(好ましくは相対湿度で50%以下)で室温下、好ましくは24〜25℃程度で、アオウキクサを乾燥したフィルター紙上に広げた状態で放置することによって与えることができる。この場合の乾燥時間は、乾燥する対象となるアオウキクサの配置密度にもよるが、概ね20秒以上、好ましくは5分〜5時間である。
熱ストレスは、例えば温水中にアオウキクサを浸漬することによって与えることができる。この場合の温水の温度は、浸漬時間に応じて選択すべきものである。例えば5分間程度浸漬する場合は、40〜65℃で可能であり、好ましくは45〜60℃、より好ましくは50〜55℃である。この熱ストレス処理後は、速やかにアオウキクサを常温水中に戻すことが好ましい。
浸透圧ストレスは、例えば高濃度の糖溶液等の高浸透圧溶液にアオウキクサを接触させることにより与えることができる。この場合の糖濃度は、例えばマンニトール溶液であれば0.3M以上、好ましくは0.5〜0.7Mがよい。処理時間は、例えば0.5Mマンニトール溶液を用いる場合は1分以上、好ましくは2〜5分間である。
このようにして、所望の特定ケトール脂肪酸(Ia)を含む出発物質を効率的に調製することができる。
なお、上記した種々の出発物質の基となるアオウキクサの株の種類は特に限定されないが、P441株は、特定ケトール脂肪酸(Ia)の製造において特に好ましい株である。
前記のように調製した出発物質に以下に示すような分離・精製手段を施して、所望する特定ケトール脂肪酸(Ia)を製造することができる。なお、ここに示す分離手段は例示であり、前記出発物質から特定ケトール脂肪酸(Ia)を製造するための分離手段は、前記例示した手段に限定されるものではなく、各種のものが特に制限されることなく採用することができる。
前記のようにして調製した出発物質に対しては、まず溶媒抽出を行い、特定ケトール脂肪酸(Ia)を含有する成分を抽出することが好ましい。かかる溶媒抽出に用いる溶媒は、特に限定されるものではなく、例えばクロロホルム、酢酸エチル、エーテル等を用いることができる。これらの溶媒の中でもクロロホルムは、比較的容易に不純物を除去することが可能であるという点において好ましい。
この溶媒抽出で得られた油層画分を、既知の通常の方法を用いて洗浄・濃縮し、ODS(オクタデシルシラン)カラム等の逆相分配カラムクロマトグラフィー用カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけて、花芽形成誘導活性画分でもある特定ケトール脂肪酸(Ia)を同定、単離することにより調製することができる。なお、特定ケトール脂肪酸に花芽形成誘導活性が認められることは、既に既知である(特開平10−324602号公報等参照。
出発物質の性質等に応じて既知の通常の他の分離手段、例えば限外濾過,ゲル濾過クロマトグラフィー等を組み合わせて用いることも勿論可能である。以上、特定ケトール脂肪酸(Ia)を抽出法で製造する工程について説明したが、所望する態様の特定ケトール脂肪酸が、アオウキクサ以外の植物において存在する場合には、上記に準じた方法や、上記の方法の変法を駆使することにより、その特定ケトール脂肪酸を製造することが可能である。
(2)酵素法について:
酵素法の出発物質として典型的なものとしては、所望する特定ケトール脂肪酸の構造に応じた位置に二重結合が存在し、かつその炭素数が5〜24の各種不飽和脂肪酸を挙げることができる。この不飽和脂肪酸としては、例えばオレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、9,11−octadecadienoic acid、10,12−octadecadienoic acid、9,12,15−octadecatrienoic acid、6,9,12,15−octadecatetraenoic acid、11,14−eicosadienoic acid、5,8,11−eicosatrienoic acid、11,14,17−eicosatrienoic acid、5,8,11,14,17−eicosapentaenoic acid、13,16−docosadienoic acid、13,16,19−docosatrienoic acid、7,10,13,16−docosatetraenoic acid、7,10,13,16,19−docosapentaenoic acid、4,7,10,13,16,19−docosahexaenoic acid等を挙げることができるが、これらの不飽和脂肪酸に限定されるものではない。
これらの不飽和脂肪酸は、概ね動物・植物等に含まれている不飽和脂肪酸であり、これらの動物・植物等から既知の通常の方法を通じて抽出・精製したものあるいは既知の通常の方法により化学合成したものを用いることも可能であり、市販品を用いることも勿論可能である。この酵素法においては、上記の不飽和脂肪酸を基質として、リポキシゲナーゼ(LOX)を作用させて、これらの不飽和脂肪酸の炭素鎖にヒドロペルオキシ基(−OOH)を導入する。
前記リポキシゲナーゼは、不飽和脂肪酸の炭素鎖に分子状酸素をヒドロペルオキシ基として導入する酸化還元酵素であり、その存在は動物・植物を問わず確認されており、またサッカロミセス属に代表される酵母においてもその存在が確認されている。
例えば、植物であれば被子植物全般(具体的には、後述する本発明の植物発根誘導剤を適用可能な双子葉植物及び単子葉植物全般)において、その存在が確認されている酵素である。
これらの植物の中でも、特にダイズ、アマ、アルファルファ、大麦、ソラマメ、ハウチワマメ、ヒラマメ、エンドウマメ、ジャガイモ、小麦、リンゴ、パンイースト、綿、キュウリ、スグリ、ブドウ、西洋ナシ、インゲンマメ、コメ、イチゴ、ヒマワリあるいは茶等がリポキシゲナーゼの出所としては好ましい。また、クロロフィルがリポキシゲナーゼの上記活性を阻害する傾向が強いために、可能な限り植物におけるクロロフィルが存在しない種子、根、果実等をリポキシゲナーゼの原料として選択することが好ましい。
本発明においては、リポキシゲナーゼは、不飽和脂肪酸の炭素鎖の所望する位置にヒドロペルオキシ基を導入することができるものであれば、その由来は特に限定されないが、特定ケトール脂肪酸(1a)の場合には、可能な限り選択的にリノール酸又はリノレン酸の9位の二重結合部分を酸化するリポキシゲナーゼを用いることが好ましい。かかる選択的リポキシゲナーゼの代表的なものとして、例えばコメ胚芽(rice germ)に由来するリポキシゲナーゼを挙げることができる〔Yamamoto,A.,Fuji,Y.,Yasumoto,K.,Mitsuda,H.,Agric.Biol.Chem.,44,443(1980)等〕。
前記選択的リポキシゲナーゼに対する基質として選択する不飽和脂肪酸としては、リノール酸又はα−リノレン酸を用いることが好ましい。なお、不飽和脂肪酸を基質としてリポキシゲナーゼ処理を行うに際しては、使用するリポキシゲナーゼの最適温度及び最適pHで酵素反応を進行させることが好ましいのは当然である。また、上記のリポキシゲナーゼ反応工程により生じた、製造を意図しない夾雑物は、既知の通常の方法、例えば上記(1)の欄で述べたHPLC等を用いることにより、容易に分離することが可能である。
前記リポキシゲナーゼは、既知の通常の方法により上記植物等から抽出・精製したものを用いることも、また市販品を用いることも可能である。このようにして前記不飽和脂肪酸からヒドロペルオキシ不飽和脂肪酸を製造することができる。このヒドロペルオキシ不飽和脂肪酸は、特定のケトール脂肪酸の酵素法による製造工程の中間体として位置づけることが可能である。
前記ヒドロペルオキシ不飽和脂肪酸としては、例えば上記特定ケトール脂肪酸(Ia)の中間体として、α−リノレン酸にリポキシゲナーゼを作用させて得ることができる9−ヒドロペルオキシ−10(),12(),15()−オクタデカトリエン酸を挙げることができ、また特定ケトール脂肪酸(IIIa)の中間体としては13−ヒドロペルオキシ−9(),11(),15()−オクタデカトリエン酸を挙げることができる。
これらヒドロペルオキシ脂肪酸に関し、前者の9−ヒドロペルオキシ−10(),12(),15()−オクタデカトリエン酸を本発明関連ヒドロペルオキシ脂肪酸(Ia’)として、また後者の13−ヒドロペルオキシ−9(),11(),15()−オクタデカトリエン酸を本発明関連ヒドロペルオキシ脂肪酸(IIIa’)として、化学構造式を以下に記載する。
Figure 0004724661
特定ケトール脂肪酸は、ヒドロペルオキシ不飽和脂肪酸を基質として、アレンオキサイドシンターゼを作用させることによって製造することができる。このアレンオキサイドシンターゼは、ヒドロペルオキシ基をエポキシ化を経てケトール体に変換する活性を有する酵素であり、前記リポキシゲナーゼと同様に植物、動物及び酵母において存在する酵素であり、植物であれば被子植物全般〔具体的には、後述する本発明の植物発根誘導剤を適用可能な双子葉植物および単子葉植物全般〕において、存在している酵素である。なお、このアレンオキサイドシンターゼは、植物であれば大麦、小麦、トウモロコシ、綿、ナス、アマ(種等)、チシャ、エンバク、ホウレンソウ、ヒマワリ等においてその存在が認められている。
本発明において特定ケトール脂肪酸を製造するのに使用するアレンオキサイドシンターゼについては、例えば上記の9−ヒドロペルオキシ−10(),12(),15()−オクタデカトリエン酸の9位のヒドロペルオキシ基を脱水することによりエポキシ基を形成させ、さらにOHの求核反応により、所望する特定ケトール脂肪酸を結果として得ることができる限りにおいては特に限定されるものではない。ここで使用するアレンオキサイドシンターゼは、既知の通常の方法により上記植物等から抽出・精製したものを用いることも、また市販品を用いることも可能である。なお、前記した2工程の酵素反応は、別々に行うことも、連続して行うことも可能である。
前記したアレンオキサイドシンターゼによる処理を行うに際しては、使用するアレンオキサイドシンターゼの最適温度及び最適pHで酵素反応を進行させることが好ましいのは当然である。さらに、上記酵素については、粗精製品も精製品も使用することができ、それを用いて上記酵素反応を進行させることにより、所望する特定ケトール脂肪酸を得ることが可能である。また、上記酵素を担体に固定して、これらの固定化酵素を調製してカラム処理又はバッチ処理等を基質に施すことにより所望する特定ケトール脂肪酸を得ることができる。
また、上記の2工程に用いる酵素の調製法としては、遺伝子工学的手法を用いることも可能である。即ち、これらの酵素をコードする遺伝子を、常法により植物等から抽出・取得し、又は酵素の遺伝子配列に基づいて化学合成することにより取得し、かかる遺伝子により、大腸菌や酵母などの微生物、動物培養細胞、植物培養細胞などを形質転換し、これらの形質転換細胞において、組換え酵素蛋白質を発現させることにより、所望の酵素を得ることができる。
エポキシ基を形成させた後のOHの求核反応(上記)により特定ケトール脂肪酸を得ようとする場合には、その求核物の上記エポキシ基付近における作用形式によっては、α−ケトール不飽和脂肪酸のほかにγ−ケトール化合物が生成する。
このγ−ケトール化合物は、上記(1)の欄で述べたHPLC等の既知の通常の分離手段を用いることにより容易にα−ケトール化合物と分離することができる。
(3)化学合成法について:
特定ケトール脂肪酸は既知の通常の化学合成法を駆使することにより製造することもできる。例えば、その一端にアルデヒド基等の反応性基を有し、他端に保護基を結合させたカルボキシル末端を付加させた飽和炭素鎖を既知の通常の方法により合成し、これとは別にcis−3−ヘキセン−1−オール等の不飽和アルコール等を出発物質として、所望の位置に不飽和基を有する反応性末端を有する不飽和炭素鎖とを合成する。次いで、上記飽和炭化水素鎖とこの不飽和炭素鎖とを反応させて、特定のケトール脂肪酸を製造することができる。なお、この一連の反応において、反応を企図しない末端に付加する保護基や反応を促進するための触媒は、具体的な反応様式に応じて適宜選択して用いることができる。
具体的には、例えば以下のような手順で特定ケトール脂肪酸を合成することができる。
i)特定ケトール脂肪酸(Ia)の合成
Nonanedioic acid monoethyl esterを出発原料として、N,N’−carbonyldiimidazoleと反応させ、酸イミダゾリドとした後に、低温でLiAlH還元して対応するアルデヒドを合成する。なお、上記出発物質を例えば1,9−nonanediol等のジオールとして、同様のアルデヒドを合成することも可能である。
これとは別に、cis−3−ヘキセン−1−オール(cis−3−hexen−1−ol)をtriphenylphosphine及びcarbon tetrabromideと反応させ、得られた臭化化合物にtriphenyl phosphineを反応させ、さらにn−BuLiの存在下でchloroacetaldehydeと反応させることによりcisオレフィンを構築し、更にこれとmethylthiomethyl p−tolyl sulfoneとを反応させた後、NaHの存在下上記のアルデヒドと反応させて誘導した2級アルコールをtert−butyl diphenyl silyl chlorid(TBDPSCl)で保護して、酸加水分解、次いで脱保護することにより、所望する特定ケトール脂肪酸(Ia)を合成することができる。
以下に、この特定ケトール脂肪酸(Ia)の合成工程について簡単な工程図を示す。
Figure 0004724661
ii)特定ケトール脂肪酸(IIa)の合成
Nonanedioic acid monoethyl esterを出発原料として、塩化チオニルと反応させることにより酸クロリドとし、その後NaBH還元を行い酸アルコールを生成させる。次いで、この酸アルコールの遊離カルボン酸を保護した後に、triphenylphosphine及びcarbon tetrabromideと反応させ、得られた臭化化合物にtriphenylphosphineを反応させ、更にn−BuLiの存在下でchloroacetaldehydeと反応させることによりcisオレフィンを構築し、更にこれとmethylthiomethyl p−tolyl sulfoneとを反応させた。
この反応物をn−BuLiの存在下で、これとは別にcis−3−hexen−1−olのPCC酸化により誘導したアルデヒドと反応させ、最後に脱保護することにより、所望する特定ケトール脂肪酸(IIa)を合成することができる。以下に、この特定ケトール脂肪酸(IIa)の合成工程の一例の簡単な工程図を示す。
Figure 0004724661
iii)本発明のケトール脂肪酸(IIIa)の合成
Methyl vinyl ketoneを出発原料とし、LDA及びDMEの存在下でtrimethylsilylchlorideを反応させ、得られたシリルエーテルを、低温(−70℃)でMCPBA及びtrimethylamine hydrofluoric acidを添加してケトアルコールを調製する。その後、このケトアルコールのカルボニル基を保護した後に、triphenylphosphine及びtrichloroacetoneを反応試薬に用いて、オレフィンに塩化物を付加させることなく反応させる。
次いで、この反応生成物をtributylarsine及びKCOの存在下で、formic acidを反応させ、transオレフィンを構築して塩化物とする。その後、この塩化物とcis−3−hexen−1−olのPCC酸化により誘導したアルデヒドとを反応させて、この反応生成物と6−heptenonic acidとの結合反応を行い、最後に脱保護することにより、所望する特定ケトール脂肪酸(IIIa)を合成することができる。
以下に、この特定ケトール脂肪酸(IIIa)の合成工程について簡単な工程図を示す。
Figure 0004724661
2.本発明の植物発根誘導剤について
本発明の植物発根誘導剤の有効成分は、前記したとおり炭素原子数が5〜24のケトール脂肪酸であって、炭素間の二重結合が1〜6であり、かつαケトール構造又はγケトール構造を有するケトール不飽和脂肪酸である。
前記αケトール構造を有するケトール不飽和脂肪酸は、炭素原子数が5〜24であって、炭素間の二重結合が1〜6であり、一般式(I)又は(II)で表すことができる。また、前記γケトール構造を有するケトール不飽和脂肪酸は、炭素原子数が7〜24であって、炭素間の二重結合が1〜6であり、一般式(III)又は(IV)で表すことができる。なお、それらの一般式におけるR、R、R及びRは前記したとおりである。
本発明の植物発根誘導剤は、これを散布等の簡便な手法で植物に使用することにより、その植物の発根を促進又は誘導することができる。
その使用態様としては、有効成分である化合物又はそれを配合する製剤を水溶液として散布、塗布、含浸等の簡便な手法で植物に使用するのがよい。特にソメイヨシノ、ビヨウヤナギ又はファルカタの挿し木の発根に用いる場合には、特定ケトール脂肪酸(Ia)含有溶液をそれらの切断木に塗布もしくは散布するか、又はそれらの切断木を前記溶液に含浸するのがよい。
前記特定ケトール脂肪酸の植物に対する投与量については、その上限は特に限定されない。すなわち、本発明の植物発根誘導剤により、特定ケトール脂肪酸を多量に投与しても、成長阻害等の植物に対する負の効果は、ほとんど認められない。これは、従来から用いられているオーキシンやサイトカイニンのような植物ホルモン剤を過剰投与すると植物に対する負の効果が顕著に現れ、これらの使用に際しては、過剰投与がなされないように格別の気配りをしなければならないことと比較すると、本発明の植物発根誘導剤は非常に優れているといえる。
また、上記の特定ケトール脂肪酸の植物に対する投与量の下限濃度は、植物個体の種類や大きさにより異なるが、1つの植物個体に対して1回の投与当り、1μmM程度以上が目安である。
本発明の植物発根誘導剤における、特定ケトール脂肪酸の配合量は、その使用態様や使用する対象となる植物の種類、更には本発明の植物発根誘導剤の具体的な剤形等に応じて選択することが可能である。
本発明の植物発根誘導剤の態様として、有効成分である特定のケトール脂肪酸をそのまま用いることも可能であるが、前記有効成分を、基剤その他の添加剤と配合して組成物として使用することができる。有効成分の配合濃度については特に制限はないが、上記の特定ケトール脂肪酸の投与の目安等を勘案すると、概ね、剤(組成物)全体量に対して0.1〜100ppm程度が好ましく、さらに好ましくは、同1〜50ppm程度である。
本発明の植物発根誘導剤(組成物)の剤形としては、例えば液剤、固形剤、粉剤、乳剤、底床添加剤等の剤形が挙げられ、その剤形に応じて、製剤学上適用することが可能な既知の担体成分、製剤用補助剤等を本発明の所期の効果である植物の発根誘導作用が損なわれない限度において、適宜配合することができる。例えば、担体成分としては、本発明の植物発根誘導剤が底床添加剤又は固形剤である場合には、概ねタルク、クレー、バーミキュライト、珪藻土、カオリン、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、白土、シリカゲル等の無機質や小麦粉、澱粉等の固体担体、また液剤である場合には、概ね水、キシレン等の芳香族炭化水素類、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の液体担体が上記の担体成分として用いられる。
また、製剤用補助剤としては、例えばアルキル硫酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等の陰イオン界面活性剤、高級脂肪族アミンの塩類等の陽イオン界面活性剤、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコールアシルエステル、ポリオキシエチレングリコール多価アルコールアシルエステル、セルロース誘導体等の非イオン界面活性剤、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム等の増粘剤、増量剤、結合剤などを適宜配合することができる。さらに、必要に応じて一般的な植物成長調節剤や、安息香酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ピペコリン酸等を、上記の本発明の所期の目的を損なわない限度において、本発明の植物発根誘導剤中に配合することもできる。
本発明の植物発根誘導剤は、その剤形に応じた方法で種々の植物に用いられ得る。その最も特徴的なところは、植物の生長点のみならず、茎や葉をはじめとする植物体の一部又は全体に液剤や乳剤として散布、滴下又は塗布等することができることであり、この点が従来のオーキシン系発根誘導剤と大きく異なる。
オーキシン系発根誘導剤は、挿し木や挿し芽の切り口を土壌に挿す前に高濃度のオーキシン溶液に数時間浸漬するか、あるいはオーキシンの粉剤切り口に一本ずつ添着させることが必要で大量処理を困難にしていた。
本発明の植物発根誘導剤は、必要な数の挿し木、挿し芽をそのまま土壌に挿し、その後、まとめて散布器などで散布することが可能であり、そのため前記困難を回避でき、大量処理に適した発根誘導剤である。
その大量処理に適した散布可能な発根誘導剤としては、本発明者等が開発したところの前記した特定の構造を持ったインドールラクトン体(特開平10−77268号公報参照)が恐らく唯一のものであるが、その特定インドールラクトン体は、各種オーキシン類と同様に休眠中の植物に対しては効果が弱く、使用場面が制限される。本発明の植物発根誘導剤は、休眠中の植物の発根をも誘導することができるという大きな特徴をもつ。
本発明の植物発根誘導剤の植物への投与については、その頻度は植物個体の種類や投与目的等により異なるが、基本的には、ただ1度の投与によっても所望の効果を得ることができる。複数回投与する場合には、1週間以上の投与間隔をあけることが効率的である。
本発明の植物発根誘導剤を適用可能な植物の種類は、特に限定されず被子植物(双子葉植物・単子葉植物)の他、菌類、地衣類、蘚苔類、シダ類及び裸子植物に対しても有効である。
被子植物のうち、双子葉植物としては、例えば、アサガオ属植物(アサガオ)、ヒルガオ属植物(ヒルガオ、コヒルガオ、ハマヒルガオ)、サツマイモ属植物(グンバイヒルガオ、サツマイモ)、ネナシカズラ属植物(ネナシカズラ、マメダオシ)が含まれるひるがお科植物、ナデシコ属植物、ハコベ属植物、タカネツメクサ属植物、ミミナグサ属植物、ツメクサ属植物、ノミノツヅリ属植物、オオヤマフスマ属植物、ワチガイソウ属植物、ハマハコベ属植物、オオツメクサ属植物、シオツメクサ属植物、マンテマ属植物、センノウ属植物、フシグロ属植物、ナンバンハコベ属植物等のなでしこ科植物をはじめ、もくまもう科植物、どくだみ科植物、こしょう科植物、せんりょう科植物、やなぎ科植物、やまもも科植物、くるみ科植物、かばのき科植物、ぶな科植物、にれ科植物、くわ科植物、いらくさ科植物、かわごけそう科植物、やまもがし科植物、ぼろぼろのき科植物、びゃくだん科植物、やどりぎ科植物がある。
更に、双子葉植物としては、うまのすずくさ科植物、やっこそう科植物、つちとりもち科植物、たで科植物、あかざ科植物、ひゆ科植物、おしろいばな科植物、やまとぐさ科植物、やまごぼう科植物、つるな科植物、すべりひゆ科植物、もくれん科植物、やまぐるま科植物、かつら科植物、すいれん科植物、まつも科植物、きんぽうげ科植物、あけび科植物、めぎ科植物、つづらふじ科植物、ろうばい科植物、くすのき科植物、けし科植物、ふうちょうそう科植物、あぶらな科植物、もうせんごけ科植物、うつぼかずら科植物、べんけいそう科植物、ゆきのした科植物、とべら科植物、まんさく科植物、すずかけのき科植物、ばら科植物、まめ科植物、かたばみ科植物、ふうろそう科植物、あま科植物、はまびし科植物、みかん科植物、にがき科植物、せんだん科植物、ひめはぎ科植物、とうだいぐさ科植物、あわごけ科植物も例示できる。
また、つげ科植物、がんこうらん科植物、どくうつぎ科植物、うるし科植物、もちのき科植物、にしきぎ科植物、みつばうつぎ科植物、くろたきかずら科植物、かえで科植物、とちのき科植物、むくろじ科植物、あわぶき科植物、つりふねそう科植物、くろうめもどき科植物、ぶどう科植物、ほるとのき科植物、しなのき科植物、あおい科植物、あおぎり科植物、さるなし科植物、つばき科植物、おとぎりそう科植物、みぞはこべ科植物、ぎょりゅう科植物、すみれ科植物、いいぎり科植物、きぶし科植物、とけいそう科植物、しゅうかいどう科植物、さぼてん科植物、じんちょうげ科植物、ぐみ科植物、みそはぎ科植物、ざくろ科植物、ひるぎ科植物、うりのき科植物、のぼたん科植物、ひし科植物、あかばな科植物、ありのとうぐさ科植物、すぎなも科植物、うこぎ科植物、せり科植物、みずき科植物、いわうめ科植物、りょうぶ科植物も例示できる。
更に、いちやくそう科植物、つつじ科植物、やぶこうじ科植物、さくらそう科植物、いそまつ科植物、かきのき科植物、はいのき科植物、えごのき科植物、もくせい科植物、ふじうつぎ科植物、りんどう科植物、きょうちくとう科植物、ががいも科植物、はなしのぶ科植物、むらさき科植物、くまつづら科植物、しそ科植物、なす科植物(なす、トマト等)、ごまのはぐさ科植物、のうぜんかずら科植物、ごま科植物、はまうつぼ科植物、いわたばこ科植物、たぬきも科植物、きつねのまご科植物、はまじんちょう科植物、はえどくそう科植物、おおばこ科植物、あかね科植物、すいかずら科植物、れんぷくそう科植物、おみなえし科植物、まつむしそう科植物、うり科植物、ききょう科植物、きく科植物等も例示することができる。
同じく、単子葉植物としては、例えばウキクサ属植物(ウキクサ)及びアオウキクサ属植物(アオウキクサ、ヒンジモ)が含まれるうきくさ科植物、カトレア属植物、シンビジウム属植物、デンドロビューム属植物、ファレノプシス属植物、バンダ属植物、パフィオペディラム属植物、オンシジウム属植物等が含まれるらん科植物、がま科植物、みくり科植物、ひるむしろ科植物、いばらも科植物、ほろむいそう科植物、おもだか科植物、とちかがみ科植物、ほんごうそう科植物、いね科植物(イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ等)、かやつりぐさ科植物、やし科植物、さといも科植物、ほしぐさ科植物、つゆくさ科植物、みずあおい科植物、いぐさ科植物、びゃくぶ科植物、ゆり科植物(アスパラガス等)、ひがんばな科植物、やまのいも科植物、あやめ科植物、ばしょう科植物、しょうが科植物、かんな科植物、ひなのしゃくじょう科植物等を例示することができる。
以下に、本発明の植物発根誘導剤に使用する化合物の製造例及びその化合物による発根誘導性能試験例を実施例として具体的に示すが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではなく、請求の範囲の記載によって特定されるものであることはいうまでもない。
[実施例1]
製造例:特定ケトール脂肪酸(Ia)の製造
本発明の植物発根誘導剤の一種であり、かつ特定ケトール脂肪酸(Ia)である〔9−hydroxy−10−oxo−12(),15()−octadecadienoic acid〕を酵素法により以下のとおり製造した。
1.コメ胚芽由来のリポキシゲナーゼの調製
コメ胚芽350gを石油エーテルで洗浄、脱脂及び乾燥したもの(250g)を、0.1M酢酸緩衝液(pH4.5)1.25Lに懸濁し、この懸濁物をホモジナイズした。その後かかるホモジナイズ抽出液を16000rpmで15分間遠心分離し、上清(0.8L)を得た。
次いで、その得られた上清に硫酸アンモニウム140.8g(30%飽和)を加え、4℃で一晩放置し、再度遠心を9500rpmで30分間行い、得られた上清(0.85L)に硫酸アンモニウム232g(70%飽和)を添加して、4℃で5時間放置した。その後、遠心を9500rpmで30分間行い、これにより得られた沈澱物(コメ胚芽抽出液の硫安30〜70%飽和画分)をpH4.5の酢酸緩衝液300mLに溶解し、63℃で5分間加熱処理を行った。さらに、生成した沈澱物を除去して、得られた上清を、RC透析チューブ(Spectrum社製ポア4:MWCO 12000〜14000)を用いて透析(3L×3)により脱塩後、所望するコメ胚芽由来のリポキシゲナーゼの粗酵素液を得た。
2.アマ種子由来のアレンオキサイドシンターゼの調製
アマ種子は、一丸ファルコス社から購入し、このアマ種子200gに、アセトン250mLを添加してホモジナイズ(20s×3)し、得られた沈澱物を目皿ロートで濾取し、溶媒を除去した。次いで、その沈澱物を再びアセトン250mLに懸濁してホモジナイズ(10s×3)し、再度沈澱物を得た。その沈澱物をアセトン及びエチルエーテルで洗浄後、乾燥して、アマ種子のアセトン粉末を得た(150g)。
このアマ種子のアセトン粉末のうち20g分を、氷冷下50mMリン酸緩衝液(pH7.0)400mLに懸濁し、これを4℃で1時間スターラー攪拌を施して抽出した。得られた抽出物を、11000rpmで30分間遠心し、これにより得られた上清(380mL)に硫酸アンモニウム105.3g(0〜45%飽和)を加え、氷冷下で1時間静置し、さらに11000rpmで30分間遠心して得られた沈澱物を、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)150mLに溶解し、透析して脱塩し(3L×3)、所望するアマ種子由来のアレンオキサイドシンターゼの粗酵素液を得た。
3.α−リノレン酸のナトリウム塩の調製
出発原料とするα−リノレン酸は、水における溶解性が著しく低いので、酵素基質として働くことを容易にするために、α−リノレン酸をナトリウム塩化した。すなわち、炭酸ナトリウム530mgを、精製水10mLに溶解して55℃に加温し、これにα−リノレン酸(ナカライテスク社)を278mg滴下して、3時間攪拌した。反応終了後、イオン交換樹脂[Dowex50W−X8(Hform)(ダウケミカル社製)]で中和すると沈澱物が生成した。これを濾過して樹脂を分離し、MeOHで溶解後、減圧下で溶媒を留去した。得られた生成物をイソプロパノールで再結晶し、所望するα−リノレン酸のナトリウム塩(250mg,83%)を得た。
4.特定ケトール脂肪酸(Ia)の調製
上記3により得られたα−リノレン酸のナトリウム塩(15mg:50μmol)を、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)30mLに溶解した。得られた溶液に、酸素気流下25℃で上記1により得たコメ胚芽由来のリポキシゲナーゼの粗酵素液を3.18mL添加し、30分間攪拌し、その後、更に同じくコメ胚芽由来のリポキシゲナーゼの粗酵素液3.18mLを添加して30分間攪拌した。
この攪拌終了後、このリポキシゲナーゼ反応物に、窒素気流下で上記2で得たアレンオキサイドシンターゼの粗酵素液34.5mLを添加して、30分間攪拌した後、氷冷下希塩酸を添加して反応溶液のpHを3.0に調整した。
次いで、その反応溶液をCHCl−MeOH=10:1で抽出した。抽出により得られた有機層に硫酸マグネシウムを加えて脱水し、減圧下、溶媒を留去して乾燥した。
このようにして得られた粗生成物をHPLCにかけて、その特定ケトール脂肪酸(Ia)と認められるピーク(リテンションタイム:16分付近)を分取した。分取した画分にクロロホルムを加え、クロロホルム層を分離して水洗し、エバポレーターでこのクロロホルムを留去して、精製物を得た。
この得られた精製物の構造を確認するために重メタノール溶液でH及び13C−NMRスペクトルを測定し、その測定スペクトルを表Iに示した。
Figure 0004724661
その結果、H−NMRにおいて、末端メチル基〔δ0.98(t)〕、2組のオレフィン〔(δ5.25,5.40),(δ5.55,5.62)〕、2級水酸基〔δ4.09(dd)〕及び多数のメチレンに基づくシグナルが認められ、特定ケトール脂肪酸(Ia)であると推定された。更に、前記測定した表Iの13C−NMRのケミカルシフト値を、特定ケトール脂肪酸(Ia)の13C−NMRのケミカルシフト値(〔特開平10−324602号公報、特にその第7頁第11欄下から第1行目以降に記載されている「製造例(抽出法)」における13C−NMRのケミカルシフト値(第8頁左欄第3行目以降段落番号〔0054〕及び段落番号〔0055〕)〕と比較したところ一致した。
したがって、上記のようにして得た酵素法による合成品は、確かに、特定ケトール脂肪酸(Ia)の9−hydroxy−10−oxo−12(),15()−octadecadienoic acidであることが確認できた。
評価試験1:特定ケトール脂肪酸(Ia)の発根誘導性能評価
アジサイ(品種名不明)の第2節部分を8月に切り出し、ろ紙を敷いたシャーレに並べた。
特定ケトール脂肪酸(Ia)の水溶液(濃度100μM及び200μM)を調製し、スプレーで前記切り出したアジサイに噴霧し、2時間蓋を閉めて放置した。なお、対照区は純水を噴霧し、特定ケトール脂肪酸(Ia)の場合と同様に放置した。その後、水を加え、25℃、連続光下で20日間放置した。
それぞれ5個体の平均の発根数を数えたところ、水処理区では1.1本、特定ケトール脂肪酸(Ia)100μM区では3.2本、200μM区では3.1本であった。
評価試験2:特定ケトール脂肪酸(Ia)の発根誘導性能評価
12月にアジサイ(品種名不明)の休眠芽を含む枝を5cmほどになるように切り出し、赤玉土とバーミキュライト(7:3)からなる土壌を入れたトレイに挿し木した。水又は特定ケトール脂肪酸(Ia)(10μM、100μM)を噴霧した後、25℃のバイオチャンバー(12時間明暗周期)で1ヶ月間培養した。挿し木を土壌から抜いたときの土をつけたままの重量と発根数を測定し、その測定結果を以下の表IIに示す。なお、土付き重量の増加は、ひげ根の発達等に伴う抱土率向上及び葉芽の繁殖に伴うものであり、それは発根誘導効果性能が優れていることを反映するものである。
Figure 0004724661
この測定結果は、特定ケトール脂肪酸(Ia)が、特に葉芽の発達を促したことも反映している。
以上のとおりであり、上記のケトール脂肪酸に、植物発根誘導作用が認められたことは、全く予測の範囲外のことである。
[実施例2]
この実施例2においては、本発明の発根剤の有効成分化合物である特定ケトール脂肪酸(Ia)、すなわち9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(),15()−オクタデカジエン酸を用いてソメイヨシノ(桜)の発根誘導性能試験を行い、その観察結果を示すが、本発明は、この実施例によって何ら限定されるものではなく、請求の範囲の記載によって特定されるものであることはいうまでもない。その評価試験方法及び試験結果は以下のとおりである。
ソメイヨシノの発根誘導性能試験
本発明の発根剤単独、それと既存の発根剤との組み合わせ等の15種の実験区を用いて、ソメイヨシノに関し発根誘導性能試験を行った。
その試験に用いた既存の発根剤は、下記式(V)で示されインドール誘導体(以下、「IBL」と略記する。なお特開平10−77268号公報参照)及び市販発根剤であるオキシベロン(以下「Oxy」と略記する。バイエルクロップサイエンス株式会社製)である。
なお、本試験においては、前記特定ケトール脂肪酸(Ia)は「KODA」と略記する。
Figure 0004724661
(式中、Rはエチレンである。)
発根剤組成
各実験区で用いた発根剤組成は、以下のとおりである。
実験区(1)水:実験区(2)KODA10μM:実験区(3)KODA100μM:実験区(4)Oxy:実験区(5)IBL50ppm:実験区(6)IBL100ppm:実験区(7)KODA10μM+Oxy:実験区(8)KODA100μM+Oxy:実験区(9)KODA10μM+IBL50ppm:実験区(10)KODA100μM+IBL50ppm:実験区(11)KODA10μM+IBL100ppm:実験区(12)KODA100μM+IBL100ppm:実験区(13)KODA10μM+IBL50ppm+Oxy:実験区(14)KODA100μM+IBL50ppm+Oxy:実験区(15)KODA100μM+IBL100ppm+Oxy。
発根試験手順
実験に使用したソメイヨシノの枝は、住友林業緑化(株)から購入した。それを先端から5〜8cm程度の長さをカットして、赤玉土とバーミキュライトとを7:3の比率にて配合されたトレイ中の混合土壌に挿した。その際、各実験区には10本の枝を用いた。なお、その実験の開始は、3月上旬だったので葉は未だ展開していなかった。
発根試験に使用するオキシベロン(Oxy)は、オキシベロン液剤(インドール酪酸0.4%含有、バイエルクルップサイエンス株式会社製)を40倍に希釈し、それにOxyを用いる実験区(4)(7)(8)(13)(14)(15)用のソメイヨシノの枝を3時間漬けた後、それぞれの実験区の土壌に挿した。
試験開始後7週間後に生存している挿し木の数を測定した結果は以下のとおりである。
実験区(1)0%:実験区(2)10%:実験区(3)10%:実験区(4)0%:実験区(5)0%:実験区(6)0%:実験区(7)30%:実験区(8)10%:実験区(9)20%:実験区(10)30%:実験区(11)20%:実験区(12)30%:実験区(13)10%:実験区(14)20%:実験区(15)30%。
なお、生存している挿し木は全て活発な発根が認められた。
以上のとおりであるから、本発明の発根剤は、従来挿し木は不可能とされていたソメイヨシノに対し優れた発根誘導性能を有することがわかる。
[実施例3]
この実施例3においては、実施例2と同様に特定ケトール脂肪酸(Ia)を用いて、ビヨウヤナギの発根誘導性能試験を行った。
その各実験区において用いた発根剤組成及び発根試験手順は、実施例2と同様とした。その試験の結果、本発根剤(10μM)及びIBL(50ppm)を用いた場合には、ビヨウヤナギの挿し木は100%生存することがわかった。
また、その発根性能試験は図1に示すとおりであり、この図1によれば、実験区(2)、実験区(3)、実験区(8)、実験区(11)、実験区(13)、実験区(14)、実験区(15)において、水処理区(実験区(1))に比較して発根量が明らかに増加した。
以上の結果からして、本発明の発根剤を用いることが根の増大に必要十分な条件であることになる。
なお、図1の棒グラフの頭部に配置された「*」の記号は、有意差検定における危険率を示すものであり、同記号1つは危険率5%以下、同記号2つは危険率1%以下、同記号3つは危険率0.5%以下であることを示す。
すなわち、棒グラフの頭部に「*」が配置された実験区においては、水処理区(実験区(1))に比較して発根量が明らかに増加したことを示すものである。
[実施例4]
ファルカタの発根誘導性能試験
合板の製造原料として有用なファルカタ(Paraserianthes falcataria)は熱帯木であるが、他の樹種と同様に木のエイジが進むと挿し木が不可能になる。挿し木が不可能になったファルカタを用いて、KODAまたは既存の発根誘導剤オキシベロン(バイエルクロップサイエンス株式会社製)を用いて、挿し木増殖を試みた。培養土は赤玉小粒を用いた。2ヶ月後の結果を表IIIに示したとおり、ファルカタはオキシベロンでも全く発根が誘導されなかったが、10μMのKODAを噴霧することにより44%の発根率を得た。
Figure 0004724661
以上のとおり、本発明のケトール脂肪酸に、植物発根誘導作用が認められたことは、全く予測の範囲外のことである。

Claims (4)

  1. 炭素原子数が5〜24のケトール脂肪酸であって、炭素原子間の二重結合の数が1〜6個であり、かつαケトール構造又はγケトール構造を有するケトール不飽和脂肪酸を含んでなる植物発根誘導剤。
  2. 前記αケトール構造を有するケトール不飽和脂肪酸は、以下の一般式(I)又は(II)で表され、前記γケトール構造を有するケトール不飽和脂肪酸は、以下の一般式(III )又は(IV)で表される、請求項1記載の植物発根誘導剤
    Figure 0004724661
    (式中、R 1 は直鎖状アルキル基又は2重結合を持つ直鎖状不飽和炭化水素基であり、R 2 は直鎖状アルキレン又は2重結合を持つ直鎖状不飽和炭化水素鎖であり、
    3 は直鎖状アルキル基又は2重結合を持つ直鎖状不飽和炭化水素基であり、R 4 は直鎖状アルキレン又は2重結合を持つ直鎖状不飽和炭化水素鎖である)
  3. 前記ケトール不飽和脂肪酸が
    9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(Z),15(Z)−オクタデカジエン酸、
    13−ヒドロキシ−12−オキソ−9(Z),15(Z)−オクタデカジエン酸、
    13−ヒドロキシ−10−オキソ−11(E),15(Z)−オクタデカジエン酸及び
    9−ヒドロキシ−12−オキソ−10(E),15(Z)−オクタデカジエン酸
    からなる群から選ばれる、請求項1記載の植物発根誘導剤。
  4. 前記ケトール不飽和脂肪酸が9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(),15()−オクタデカジエン酸である請求項1に記載の植物発根誘導剤。
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