JP2009209054A - α−ケトール脂肪酸誘導体及びケト脂肪酸誘導体並びに花芽着生促進剤 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、α−ケトール脂肪酸誘導体及びケト脂肪酸誘導体並びに花芽着生促進剤に関する。
植物の花芽形成の促進技術は、果樹、とりわけミカン、リンゴ、ナシ等での花芽着生制御のため、また、園芸植物や穀物植物の供給性向上に不可欠であって、果実生産市場をはじめとする農作物生産市場において大いに期待されている。
従来から、植物の花芽形成過程のメカニズムを明確にした上で、花芽形成誘導剤、花芽着生促進剤等を適用することにより、開花時期を人為的に調節する試みがなされてきた。すなわち、植物の花芽形成を決める因子としては、日長、低温、植物の老化などが知られているが、中でも日長が決定的な影響を有する。植物において日長に感応する部分は葉身であり、花芽形成は生長点で起こり、葉身から葉柄や茎を通って生長点に何らかの信号が送られて、この花芽形成が開始されることが知られている。
花芽形成誘導剤としては、(12Z,15Z)−9−ヒドロキシ−10−オキソ−12、15−オクタデカジエン酸(以下、KODAと称する)などのα-ケトール不飽和脂肪酸を有効成分とする花芽形成誘導剤が知られている(特許文献1及び2参照)。このKODAは、植物体内の代謝経路にてノルエピネフリンなどのカテコールアミンを取り込み、活性型となり、花芽形性誘導活性を示すことがわかっている。
また、植物の生長の調整の一部として花芽形成を誘導可能とするα−ケトール不飽和脂肪酸誘導体及び不飽和ケト脂肪酸誘導体を含む植物生長調整剤が知られている(例えば特許文献3及び特許文献4)。
これらの化合物はいずれも不飽和脂肪酸としてKODAを用いて、化学合成又は植物体を利用することによって得ている。
植物の花芽着生に関する機構は未だに不明な点が多いため、花芽着生促進の解明を進める上で、これらの化合物を利用することは効果的である。
また、植物の生長の調整の一部として花芽形成を誘導可能とするα−ケトール不飽和脂肪酸誘導体及び不飽和ケト脂肪酸誘導体を含む植物生長調整剤が知られている(例えば特許文献3及び特許文献4)。
これらの化合物はいずれも不飽和脂肪酸としてKODAを用いて、化学合成又は植物体を利用することによって得ている。
植物の花芽着生に関する機構は未だに不明な点が多いため、花芽着生促進の解明を進める上で、これらの化合物を利用することは効果的である。
しかしながら、花芽形性誘導剤を形成するためのKODAは、Z−二重結合を複数有することから合成しにくい。このため、KODAを利用せずに容易に合成することができる花芽着生促進剤が求められていた。
従って、本発明は花芽着生促進効果を有し、合成が容易な新規化合物及び花芽着生促進剤を提供することを目的とする。
従って、本発明は花芽着生促進効果を有し、合成が容易な新規化合物及び花芽着生促進剤を提供することを目的とする。
本発明のα−ケトール脂肪酸誘導体は、下記一般式(I)で示されるものである。
本発明のケト脂肪酸誘導体は、下記一般式(II)又は(III)で表されるものである。ここで、各式中、nは3〜7の整数であり、R1は水素原子、水酸基又はメチル基を表し、R2は水素原子又はカルボキシル基を表し、R3は水素原子、メチル基、イソプロピル基、アセチル基又はtert−ブチル基を表し、R4は水酸基、メトキシ基、エトキシ基、ホルミル基又はヒドロキシメチル基を表し、R5は水素原子、メチル基又はエチル基を表す。
本発明のケト脂肪酸誘導体は、下記一般式(II)又は(III)で表されるものである。ここで、各式中、nは3〜7の整数であり、R1は水素原子、水酸基又はメチル基を表し、R2は水素原子又はカルボキシル基を表し、R3は水素原子、メチル基、イソプロピル基、アセチル基又はtert−ブチル基を表し、R4は水酸基、メトキシ基、エトキシ基、ホルミル基又はヒドロキシメチル基を表し、R5は水素原子、メチル基又はエチル基を表す。
本発明の花芽着生促進剤は、上記一般式(I)で表されるα−ケトール脂肪酸誘導体又は上記一般式(II)若しくは(III)で表されるケト脂肪酸誘導体を含むものである。
本発明によれば、本発明は花芽着生促進効果を有し、合成が容易な新規化合物及び花芽着生促進剤を提供することができる。
[1]α−ケトール脂肪酸誘導体
本発明のα−ケトール脂肪酸誘導体は、上記一般式(I)で表されるものである。
一般式(I)で表されるα−ケトール脂肪酸誘導体は、カルボニル基のα位に水酸基を1つ有する脂肪酸部分を有し、このカルボニル基のβ位のエーテル部分とγ位とで、カテコールアミン類を環化付加した構造を採る。また、一般に二重結合の部分は酸化・還元反応を受けやすく安定性に欠ける傾向があるが、本α−ケトール誘導体は、脂肪酸部分に二重結合(オレフィン部分)を有さない。またKODAと異なり、カルボニル基のβ位、γ位に二重結合がないため、二重結合の転位による水中溶解度が低下することもない。このため、本α−ケトール誘導体は、比較的安定であると共に、KODAと比較して合成が容易である。
また、本発明のα−ケトール脂肪酸誘導体は、花芽着生促進活性が認められるので、花芽着生促進剤として使用することができる。
本発明のα−ケトール脂肪酸誘導体は、上記一般式(I)で表されるものである。
一般式(I)で表されるα−ケトール脂肪酸誘導体は、カルボニル基のα位に水酸基を1つ有する脂肪酸部分を有し、このカルボニル基のβ位のエーテル部分とγ位とで、カテコールアミン類を環化付加した構造を採る。また、一般に二重結合の部分は酸化・還元反応を受けやすく安定性に欠ける傾向があるが、本α−ケトール誘導体は、脂肪酸部分に二重結合(オレフィン部分)を有さない。またKODAと異なり、カルボニル基のβ位、γ位に二重結合がないため、二重結合の転位による水中溶解度が低下することもない。このため、本α−ケトール誘導体は、比較的安定であると共に、KODAと比較して合成が容易である。
また、本発明のα−ケトール脂肪酸誘導体は、花芽着生促進活性が認められるので、花芽着生促進剤として使用することができる。
式中nは3〜7の整数を表し、花芽着生促進活性の観点から、5又は7であることが好ましく、7であることが特に好ましい。
式中R1は水素原子、水酸基又はメチル基を表し、花芽着生促進活性の観点から水酸基であることが好ましい。
式中R2は水素原子又はカルボキシル基を表し、花芽着生促進活性の観点から水素原子であることが好ましい。
式中R3は水素原子、メチル基、イソプロピル基、アセチル基又はtert−ブチル基を表し、花芽着生促進活性の観点からメチル基又は水素原子であることが好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
式中R4は水酸基、メトキシ基、エトキシ基、ホルミル基又はヒドロキシメチル基を表し、R5は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、花芽着生促進活性の観点から水酸基又は水素原子であることが好ましく、水酸基であることが更に好ましい。
式中R1は水素原子、水酸基又はメチル基を表し、花芽着生促進活性の観点から水酸基であることが好ましい。
式中R2は水素原子又はカルボキシル基を表し、花芽着生促進活性の観点から水素原子であることが好ましい。
式中R3は水素原子、メチル基、イソプロピル基、アセチル基又はtert−ブチル基を表し、花芽着生促進活性の観点からメチル基又は水素原子であることが好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
式中R4は水酸基、メトキシ基、エトキシ基、ホルミル基又はヒドロキシメチル基を表し、R5は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、花芽着生促進活性の観点から水酸基又は水素原子であることが好ましく、水酸基であることが更に好ましい。
上記一般式(I)で表されるα−ケトール脂肪酸誘導体としては、花芽着生促進活性及び合成容易性の観点から、以下に示すものであることが好ましい。
本発明のα−ケトール脂肪酸誘導体は、下記一般式(IV)表されるα−ケトール脂肪酸と下記一般式(V)で表されるカテコールアミンとを酸素雰囲気下で反応させることにより得ることができる。下記一般式(IV)及び(V)中、n、R1〜R3及びR5は前述したものと同じである。
一般式(IV)で表されるα−ケトール脂肪酸は、簡単に説明すれば、炭素数7〜11の脂肪酸メチルエステルのω3位の水酸基を、ter−ブチルジメチルシリル:TBDMS基で保護した末端エポキシドと1−ヘプチンとから、ルイス酸存在下n−ブチルリチウムを用いて、水酸基のγ位に三重結合を有する脂肪酸メチルエステルを得、リンドラー触媒による三重結合の二重結合への還元、スワーン酸化によるω9位水酸基のカルボニル基への酸化、フッ化水素酸によるTBDMS基の脱保護によって得ることができる。
上記α−ケトール脂肪酸と組み合わせ可能な一般式(V)で表されるカテコールアミン類としては、ノルエピネフリンの他、エピネフリン、ドーパミン、ノルメタネフリン、3−O−メチルドーパミン、4−O−メチルドーパミン等が挙げられる。
これらのカテコールアミン類は、市販のものを用いても、天然物から抽出精製しても、また通常公知の化学合成法を駆使して製造したものを用いてもよい。
これらのカテコールアミン類は、市販のものを用いても、天然物から抽出精製しても、また通常公知の化学合成法を駆使して製造したものを用いてもよい。
一般式(IV)で表されるα−ケトール脂肪酸と一般式(V)で表されるカテコールアミン類との反応は、酸素条件下で接触させればよく、中性〜塩基性条件下でインキュベートを行うことにより、所望する本誘導体を製造することができる。
ここで「中性〜塩基性条件下」とは、一般的にpH6.0程度以上を意味するが、製造効率の観点から、pH8〜9程度の弱塩基性条件下を選択することが好ましい。
接触時間は、特に限定されないが、1時間〜200時間程度の間で選択されることが好ましい。反応温度も、特に限定されないが、4〜40℃程度の間であることが好ましい。
ここで「中性〜塩基性条件下」とは、一般的にpH6.0程度以上を意味するが、製造効率の観点から、pH8〜9程度の弱塩基性条件下を選択することが好ましい。
接触時間は、特に限定されないが、1時間〜200時間程度の間で選択されることが好ましい。反応温度も、特に限定されないが、4〜40℃程度の間であることが好ましい。
一般式(IV)で表されるα−ケトール脂肪酸と一般式(V)で表されるカテコールアミンとの混合比率は、特に限定されないが、重量比で、概ね、1:10〜10:1が好ましく、製造効率の観点から1:1であることが最も好ましい。
反応溶媒は、水が好適であるが、含水率80質量%以上程度の含水溶媒であってもよい。水中に共存し得る他の種類の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン等を挙げることができる。
反応溶媒は、水が好適であるが、含水率80質量%以上程度の含水溶媒であってもよい。水中に共存し得る他の種類の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、アセトン等を挙げることができる。
[2]ケト脂肪酸誘導体
本発明のケト脂肪酸誘導体は、上記一般式(II)又は(III)で表されるものである。
一般式(II)及び(III)で表されるケト脂肪酸誘導体は、カルボニル基のα位に水酸基がない脂肪酸部分を有し、このカルボニル基のβ位のエーテル部分とγ位とで、カテコールアミン類を環化付加した構造を採る。即ち、これらのケトエーテル誘導体では、カルボニル基のα位の炭素はいずれも不斉原子ではなく、この結果、本ケト脂肪酸誘導体には立体異性体が存在しない。従って、本ケトエーテル誘導体は合成しやすく、KODAのように立体異性体を単離する必要がない。また、水酸基を有しない構造は、例えばガスクロマトグラフィー質量分析を行う際に保護を行う必要がなく、その結果、微量分析に適した更なる誘導体を容易に得ることができる。
一般式(III)で表されるケト脂肪酸誘導体は、脂肪酸部分にオレフィンを含んでいないため、安定性も良好である。
また、本発明のケト脂肪酸誘導体には、花芽着生促進活性が認められるので、花芽着生促進剤として使用することができる。
本発明のケト脂肪酸誘導体は、上記一般式(II)又は(III)で表されるものである。
一般式(II)及び(III)で表されるケト脂肪酸誘導体は、カルボニル基のα位に水酸基がない脂肪酸部分を有し、このカルボニル基のβ位のエーテル部分とγ位とで、カテコールアミン類を環化付加した構造を採る。即ち、これらのケトエーテル誘導体では、カルボニル基のα位の炭素はいずれも不斉原子ではなく、この結果、本ケト脂肪酸誘導体には立体異性体が存在しない。従って、本ケトエーテル誘導体は合成しやすく、KODAのように立体異性体を単離する必要がない。また、水酸基を有しない構造は、例えばガスクロマトグラフィー質量分析を行う際に保護を行う必要がなく、その結果、微量分析に適した更なる誘導体を容易に得ることができる。
一般式(III)で表されるケト脂肪酸誘導体は、脂肪酸部分にオレフィンを含んでいないため、安定性も良好である。
また、本発明のケト脂肪酸誘導体には、花芽着生促進活性が認められるので、花芽着生促進剤として使用することができる。
式中nは3〜7の整数を表し、花芽着生促進活性の観点から、5又は7であることが好ましく、7であることが特に好ましい。
式中R1は水素原子、水酸基又はメチル基を表し、水酸基であることが好ましい。
式中R2は水素原子又はカルボキシル基を表し、水素原子であることが好ましい。
式中R3は水素原子、メチル基、イソプロピル基、アセチル基又はtert−ブチル基を表し、メチル基又は水素原子であることが好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
式中R4は水酸基、メトキシ基、エトキシ基、ホルミル基又はヒドロキシメチル基を表し、R5は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、水酸基又は水素原子であることが好ましく、水酸基であることが更に好ましい。
式中R1は水素原子、水酸基又はメチル基を表し、水酸基であることが好ましい。
式中R2は水素原子又はカルボキシル基を表し、水素原子であることが好ましい。
式中R3は水素原子、メチル基、イソプロピル基、アセチル基又はtert−ブチル基を表し、メチル基又は水素原子であることが好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
式中R4は水酸基、メトキシ基、エトキシ基、ホルミル基又はヒドロキシメチル基を表し、R5は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、水酸基又は水素原子であることが好ましく、水酸基であることが更に好ましい。
上記一般式(II)又は(III)で表されるケト脂肪酸誘導体としては、花芽着生促進活性及び合成容易性の観点から、以下に示すものであることが好ましい。
本発明の一般式(II)で表されるケト脂肪酸誘導体は、下記一般式(VI)表されるケト脂肪酸と上述した一般式(V)で表されるカテコールアミンとを酸素雰囲気下で反応させることにより得ることができる。なお一般式(VI)中n及びR5は前述したものと同一である。
また本発明の一般式(III)で表されるケト脂肪酸誘導体は、下記一般式(VII)表されるケト脂肪酸と上述した一般式(V)で表されるカテコールアミンとを酸素雰囲気下で反応させることにより得ることができる。なお一般式(VII)中n及びR5は前述したものと同一である。
一般式(VI)で表されるケト脂肪酸は、簡単に説明すれば、炭素数7〜11の脂肪酸メチルエステルの末端エポキシドと1−ヘプチンとから、ルイス酸存在下n−ブチルリチウムを用いて、水酸基のγ位に三重結合を有する脂肪酸メチルエステルを得、リンドラー触媒による三重結合の二重結合への還元、スワーン酸化による水酸基のカルボニル基への酸化によって得ることができる。
一般式(VII)で表されるケト脂肪酸は、簡単に説明すれば、炭素数7〜11の脂肪酸メチルエステルの末端エポキシドと1,4−ヘプチジインとから、ルイス酸存在下n−ブチルリチウムを用いて、ω3,6位に2個の三重結合を有する脂肪酸メチルエステルを得、リンドラー触媒による三重結合の二重結合への還元、スワーン酸化による水酸基のカルボニル基への酸化によって得ることができる。
[3]花芽着生促進剤
本発明の花芽着生促進剤は、上記の一般式(I)で表されるα−ケトール脂肪酸誘導体又は、一般式(II)若しくは一般式(III)で表されるケト脂肪酸誘導体を有効成分として含有するものである。上述したように本発明のα−ケトール脂肪酸誘導体及びケト脂肪酸誘導体はいずれも花芽着生促進効果を有するので、これらの化合物を含む花芽着生促進剤を得ることができる。
本発明の花芽着生促進剤は、上記化合物のいずれかを単独で含むものであってもよく、それぞれ2種以上を組み合わせ含むものであってもよく、更には、α−ケトール脂肪酸誘導体とケト脂肪酸誘導体とを適宜組み合わせ含むものであってもよい。花芽着生促進作用の観点からは、本発明の花芽着生促進剤は、α−ケトール脂肪酸誘導体を少なくとも含むものであることが好ましい。
以下、本発明において、「有効成分」とは、上述したα−ケトール脂肪酸誘導体及びケト脂肪酸誘導体のうち花芽着生促進剤中に含有される1種又は2種以上の化合物全体を指す。
本発明の花芽着生促進剤は、上記の一般式(I)で表されるα−ケトール脂肪酸誘導体又は、一般式(II)若しくは一般式(III)で表されるケト脂肪酸誘導体を有効成分として含有するものである。上述したように本発明のα−ケトール脂肪酸誘導体及びケト脂肪酸誘導体はいずれも花芽着生促進効果を有するので、これらの化合物を含む花芽着生促進剤を得ることができる。
本発明の花芽着生促進剤は、上記化合物のいずれかを単独で含むものであってもよく、それぞれ2種以上を組み合わせ含むものであってもよく、更には、α−ケトール脂肪酸誘導体とケト脂肪酸誘導体とを適宜組み合わせ含むものであってもよい。花芽着生促進作用の観点からは、本発明の花芽着生促進剤は、α−ケトール脂肪酸誘導体を少なくとも含むものであることが好ましい。
以下、本発明において、「有効成分」とは、上述したα−ケトール脂肪酸誘導体及びケト脂肪酸誘導体のうち花芽着生促進剤中に含有される1種又は2種以上の化合物全体を指す。
本発明の花芽着生促進剤における有効成分の含有量は、花芽着生促進剤の全質量の0.1質量%〜10.0質量%、好ましくは0.5質量%〜2.0質量%とすることができる。
また本発明の花芽着生促進剤は、有効成分のみを精製物としてそのまま用いてもよいが、植物に適用可能な所望の剤形、例えば液剤、固形剤、粉剤、乳剤、底床添加剤等の剤形に応じて、製剤学上許容可能な担体と配合してもよい。
例えば、担体成分としては、本発明の花芽着生促進剤が底床添加剤又は固形剤である場合には、概ねタルク、クレー、バーミキュライト、珪藻土、カオリン、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、白土、シリカゲル等の無機質や小麦粉、澱粉等の個体担体が;また液剤である場合には、概ね水、キシレン等の芳香族炭化水素類、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の液体担体が上記の担体成分として用いられる。これらの担体は、上記本発明の所期の効果を損なわない限度で適宜配合することができる。
例えば、担体成分としては、本発明の花芽着生促進剤が底床添加剤又は固形剤である場合には、概ねタルク、クレー、バーミキュライト、珪藻土、カオリン、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、白土、シリカゲル等の無機質や小麦粉、澱粉等の個体担体が;また液剤である場合には、概ね水、キシレン等の芳香族炭化水素類、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の液体担体が上記の担体成分として用いられる。これらの担体は、上記本発明の所期の効果を損なわない限度で適宜配合することができる。
また本発明の花芽着生促進剤には、上記本発明の所期の効果を損なわない限度において、製剤用補助剤を配合してもよい。製剤用補助剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等の陰イオン界面活性剤、高級脂肪族アミンの塩類等の陽イオン界面活性剤、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコールアシルエステル、ポリオキシエチレングリコール多価アルコールアシルエステル、セルロース誘導体等の非イオン界面活性剤、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム等の増粘剤、増量剤、結合剤等を適宜配合することができる。
さらに必要に応じて、植物生長調整剤、例えば安息香酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ピペコリン酸等を、上記本発明の所期の効果を損なわない限度において、本発明の花芽着生促進剤中に配合することもできる。
上記本発明の花芽着生促進剤は、その剤形に応じた方法で種々の植物に用いられる。例えば、本発明においては、開花を図る植物の生長点のみならず、茎,葉をはじめとする植物体の一部又は全体に,液剤や乳剤として散布,滴下,塗布等することや、固形剤や粉剤として地中から根に吸収させること等が可能である。また、開花を図る植物がウキクサ等の水草の場合には、底床添加剤として根から吸収させたり、固形剤を水中で除々に溶解させること等も可能である。
また、本発明の花芽着生促進剤を適用可能な植物の種類は特に限定されず、双子葉植物、単子葉植物の両者に対して本発明花芽形成誘導剤は有効である。
双子葉植物としては、例えばアサガオ属植物(アサガオ),ヒルガオ属植物(ヒルガオ,コヒルガオ,ハマヒルガオ),サツマイモ属植物(グンバイヒルガオ,サツマイモ),ネナシカズラ属植物(ネナシカズラ,マメダオシ)が含まれるひるがお科植物、ナデシコ属植物(カーネーション等),ハコベ属植物,タカネツメクサ属植物,ミミナグサ属植物,ツメクサ属植物,ノミノツヅリ属植物,オオヤマフスマ属植物,ワチガイソウ属植物,ハマハコベ属植物,オオツメクサ属植物,シオツメクサ属植物,マンテマ属植物,センノウ属植物,フシグロ属植物,ナンバンハコベ属植物が含まれるなでしこ科植物、もくまもう科植物、どくだみ科植物、こしょう科植物、せんりょう科植物、やなぎ科植物、やまもも科植物、くるみ科植物、かばのき科植物、ぶな科植物、にれ科植物、くわ科植物、いらくさ科植物、かわごけそう科植物、やまもがし科植物、ぼろぼろのき科植物、びゃくだん科植物、やどりぎ科植物、うまのすずくさ科植物、やっこそう科植物、つちとりもち科植物、たで科植物、あかざ科植物、ひゆ科植物、おしろいばな科植物、やまとぐさ科植物、やまごぼう科植物、つるな科植物、すべりひゆ科植物、もくれん科植物、やまぐるま科植物、かつら科植物、すいれん科植物、まつも科植物、きんぽうげ科植物、あけび科植物、めぎ科植物、つづらふじ科植物、ろうばい科植物、くすのき科植物、けし科植物、ふうちょうそう科植物、あぶらな科植物、もうせんごけ科植物、うつぼかずら科植物、べんけいそう科植物、ゆきのした科植物、とべら科植物、まんさく科植物、すずかけのき科植物、ばら科植物、まめ科植物、かたばみ科植物、ふうろそう科植物、あま科植物、はまびし科植物、みかん科植物、にがき科植物、せんだん科植物、ひめはぎ科植物、とうだいぐさ科植物、あわごけ科植物、つげ科植物、がんこうらん科植物、どくうつぎ科植物、うるし科植物、もちのき科植物、にしきぎ科植物、みつばうつぎ科植物、くろたきかずら科植物、かえで科植物、とちのき科植物、むくろじ科植物、あわぶき科植物、つりふねそう科植物、くろうめもどき科植物、ぶどう科植物、ほるとのき科植物、しなのき科植物、あおい科植物、あおぎり科植物、さるなし科植物、つばき科植物、おとぎりそう科植物、みぞはこべ科植物、ぎょりゅう科植物、すみれ科植物、いいぎり科植物、きぶし科植物、とけいそう科植物、しゅうかいどう科植物、さぼてん科植物、じんちょうげ科植物、ぐみ科植物、みそはぎ科植物、ざくろ科植物、ひるぎ科植物、うりのき科植物、のぼたん科植物、ひし科植物、あかばな科植物、ありのとうぐさ科植物、すぎなも科植物、うこぎ科植物、せり科植物、みずき科植物、いわうめ科植物、りょうぶ科植物、いちやくそう科植物、つつじ科植物、やぶこうじ科植物、さくらそう科植物、いそまつ科植物、かきのき科植物、はいのき科植物、えごのき科植物、もくせい科植物、ふじうつぎ科植物、りんどう科植物、きょうちくとう科植物、ががいも科植物、はなしのぶ科植物、むらさき科植物、くまつづら科植物、しそ科植物、なす科植物、ごまのはぐさ科植物、のうぜんかずら科植物、ごま科植物、はまうつぼ科植物、いわたばこ科植物、たぬきも科植物、きつねのまご科植物、はまじんちょう科植物、はえどくそう科植物、おおばこ科植物、あかね科植物、すいかずら科植物、れんぷくそう科植物、おみなえし科植物、まつむしそう科植物、うり科植物、ききょう科植物、きく科植物等を例示することができる。
単子葉植物としては、例えばウキクサ属植物(ウキクサ)及びアオウキクサ属植物(アオウキクサ,ヒンジモ)が含まれる,うきくさ科植物、カトレア属植物,シンビジウム属植物,デンドロビューム属植物,ファレノプシス属植物,バンダ属植物,パフィオペディラム属植物,オンシジウム属植物等が含まれる,らん科植物、がま科植物、みくり科植物、ひるむしろ科植物、いばらも科植物、ほろむいそう科植物、おもだか科植物、とちかがみ科植物、ほんごうそう科植物、いね科植物、かやつりぐさ科植物、やし科植物、さといも科植物、ほしぐさ科植物、つゆくさ科植物、みずあおい科植物、いぐさ科植物、びゃくぶ科植物、ゆり科植物、ひがんばな科植物、やまのいも科植物、あやめ科植物、ばしょう科植物、しょうが科植物、かんな科植物、ひなのしゃくじょう科植物等を例示することができる。
本発明の花芽着生促進剤の植物に対する投与量の下限は、植物個体の種類や大きさにより異なるが、目安としては1つの植物個体に対して一回の投与当り、有効成分0.1μM程度以上である。また、本発明の花芽着生促進剤の使用濃度は、0.1μM〜100μMとすることができ、生理活性の観点から好ましくは0.5μM〜20μMとすることができる。
本発明の花芽着生促進剤は、有効成分のみで構成される場合には、有効成分を使用することを含むものであるが、製剤学的に許容可能な担体を含むものである場合には、有効成分と製剤学上許容可能な担体とを混合する工程を更に含むものであってもよい。
本発明のα−ケトール脂肪酸誘導体及びケト脂肪酸誘導体は、花芽着生促進活性を有するものであるので、花芽形成や花芽着生促進活性といった植物における種々の生理活性を解明するためのツールとして使用することができる。
このようなツールとしての使用形態には、例えば、本発明のα−ケトール脂肪酸誘導体又はケト脂肪酸誘導体に結合可能な物質(リセプタ、抗体など)の探索や、花芽誘導活性関連酵素の探索、活性中心の特定を目的とする各種誘導体の作製定等を挙げることができる。
また、本発明を作製するために利用可能な一般式(IV)、(VI)又は(VII)で表される脂肪酸誘導体を、花芽形成又は花芽着生の解明を目的とした各種誘導体の作製に利用することもできる。
このようなツールとしての使用形態には、例えば、本発明のα−ケトール脂肪酸誘導体又はケト脂肪酸誘導体に結合可能な物質(リセプタ、抗体など)の探索や、花芽誘導活性関連酵素の探索、活性中心の特定を目的とする各種誘導体の作製定等を挙げることができる。
また、本発明を作製するために利用可能な一般式(IV)、(VI)又は(VII)で表される脂肪酸誘導体を、花芽形成又は花芽着生の解明を目的とした各種誘導体の作製に利用することもできる。
以下、実施例により本発明を説明する。以下の実施例において「%」は特に断らない限り質量基準である。また本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
α−ケトール脂肪酸誘導体(I−1)の合成
(1)(Z)-9-Hydroxy-10-oxo-octadeca-12-enoic acid(化合物4)の合成
以下のスキームに従って、(Z)-9-Hydroxy-10-oxo-octadeca-12-enoic acid(化合物4)を合成した。
α−ケトール脂肪酸誘導体(I−1)の合成
(1)(Z)-9-Hydroxy-10-oxo-octadeca-12-enoic acid(化合物4)の合成
以下のスキームに従って、(Z)-9-Hydroxy-10-oxo-octadeca-12-enoic acid(化合物4)を合成した。
1−メチルノナン二酸(化合物18)を、テトラヒドロフラン中でフッ化水素によってカルボキシル基を水酸基に還元し化合物19を得た。次いで、ピリディニウムクロリドによりアルデヒド(化合物20)に酸化後、ビニルマグネシウムブロミドにより増炭し化合物21を得た。さらに、二重結合をエポキシド化して、メチル9−[(tert−ブチルジメチルシリル:TBDMS)オキシ]−9−(オキリラニル)ノナノエート(化合物14)を得た。
化合物14に、ヘキサ−1−イン(化合物12)を、テトラヒドロフラン中でn−ブチルリチウムと反応し化合物35を得、これをリンドラー触媒にて還元することで化合物36を得た。次いで、スワーン酸化により化合物37に変換後、最後にTBDMS基を脱保護することで下記の化合物4を得た(収率16%)。
化合物14に、ヘキサ−1−イン(化合物12)を、テトラヒドロフラン中でn−ブチルリチウムと反応し化合物35を得、これをリンドラー触媒にて還元することで化合物36を得た。次いで、スワーン酸化により化合物37に変換後、最後にTBDMS基を脱保護することで下記の化合物4を得た(収率16%)。
1H NMR (270 MHz, CDCl3) δ 0.89(3H, t, J = 6.6 Hz), 1.19-1.93 (18H), 2.02 (2H, q-like), 2.35 (2H, t, J = 7.6 Hz), 3.24 (2H, m), 4.25 (1H, m), 5.51 (1H, m), 5.64 (1H, m). 13C NMR (67.5 MHz, CDCl3) δ 14.0, 22.5, 24.6, 24.7, 27.6, 28.9 (C×2), 29.0, 29.2, 31.4, 33.6, 33.8, 36.8, 76.0, 119.5, 134.5, 179.0, 210.4. HR-MS (ESI+) m/z 335.2198 [M+Na]+(calc. for C18H32NaO4, 335.2198)
(2)α−ケトール脂肪酸誘導体の合成
300mlナス型フラスコ中で、1600μMのノルエピネフリンを1M−Tris−HCl緩衝液(pH8.0,40ml)に溶解後、800μMの化合物4を添加した。市販ゴム風船2個を二重とし、酸素を充填し、上記ナスフラスコに取り付け、空気と置換した後、10〜24時間室温にて反応した。反応液を1%ギ酸でpH3〜5に調整後、酢酸エチル40mlで3回抽出した
抽出液を減圧下濃縮乾固した。これをアセトニトリルに溶解後、以下の条件でHPLCによる分取を試みた。化合物4由来の反応生成物(I−1)を約20mg得た(収率16%)。HPLC条件:カラム、CAPCELL PAKC18(株式会社資生堂製) 10×250mm;流速、4.0mL/min;溶媒、30%アセトニトリル水、保持時間7.6分。
更にCOSY、HMQC,HMBCによる詳細な検討に基づいて、下記の構造を決定した。化合物4は9位炭素の立体配置を異にするジアステレオマー混合物である。
300mlナス型フラスコ中で、1600μMのノルエピネフリンを1M−Tris−HCl緩衝液(pH8.0,40ml)に溶解後、800μMの化合物4を添加した。市販ゴム風船2個を二重とし、酸素を充填し、上記ナスフラスコに取り付け、空気と置換した後、10〜24時間室温にて反応した。反応液を1%ギ酸でpH3〜5に調整後、酢酸エチル40mlで3回抽出した
抽出液を減圧下濃縮乾固した。これをアセトニトリルに溶解後、以下の条件でHPLCによる分取を試みた。化合物4由来の反応生成物(I−1)を約20mg得た(収率16%)。HPLC条件:カラム、CAPCELL PAKC18(株式会社資生堂製) 10×250mm;流速、4.0mL/min;溶媒、30%アセトニトリル水、保持時間7.6分。
更にCOSY、HMQC,HMBCによる詳細な検討に基づいて、下記の構造を決定した。化合物4は9位炭素の立体配置を異にするジアステレオマー混合物である。
UV λmax (nm)(CH3OH) 294;HRESI-TOF-MS m/z518.27297 [M+Na]+ calc.for C26H41N1Na1O8(518.27299) 1H NMR (500 MHz, (CD3)2CO) δ 0.90(3H, t, J=6.6 Hz), 1.20-1.45 (17H), 1.50(1H, m), 1.59(2H, m), 1.73 (1H,m), 1.96(1H, m), 2.05 (1H, m), 2.28 (2H, t, J=7.2 Hz),2.63 (1H, dd, J=5.5, 16.5 Hz), 2.97 (1H, dd, J=7.7, 16.5 Hz), 3.52 (1H, d, J=12.2 Hz), 3.93 (1H dd, J=2.6, 12.2 Hz), 4.03 (1H, m), 4.36 (1H, d, J=2.6 Hz), 4.60 (1H, m), 5.50 (1H, s); 13C NMR (125 MHz, (CD3)2CO) δ 14.3(C18),23.2 (C17), 32.8 (C16), 30.5 (C15), 25.6 (C14), 39.5 (C13), 70.9 (C12), 41.4 (C11), 211.7 (C10), 77.3,77.7 (C9), 34.1 (C8), 30.5, 30.6, 25.6、26.9 (C7-4), 25.7 (C3), 34.2(C2), 174.8 (C1), 54.9 (C8’), 73.0(C7’), 174.7 (C6’), 93.5 (C5’), 187.3 (C4’), 93.9 (C3’), 32.4 (C2’), 57.5 (C1’)
(3)花芽着生促進活性
100ml容三角フラスコにE−培地20mlを加え、継代7日目のアオウキクサ(Lemna paucicostata)を一個体移植後、化合物(I−1)を最終濃度10nM、100nM、1000nM、10000nMとなるように加えた。25℃、連続照明(5000lux)下、10日間培養した。15〜30個体に増殖した各固体の花芽を顕微鏡で計数し、2mMの安息香酸(ポジティブコントロール)の花芽誘導率に対して、いずれの濃度においても80%であることを確認し、データの信頼性を保証した。この場合の花芽着生促進率は、下記式に基づき算出した。
花芽着生促進率(%)=[増殖後の花芽の個数/増殖前の花芽の個数]×100
100ml容三角フラスコにE−培地20mlを加え、継代7日目のアオウキクサ(Lemna paucicostata)を一個体移植後、化合物(I−1)を最終濃度10nM、100nM、1000nM、10000nMとなるように加えた。25℃、連続照明(5000lux)下、10日間培養した。15〜30個体に増殖した各固体の花芽を顕微鏡で計数し、2mMの安息香酸(ポジティブコントロール)の花芽誘導率に対して、いずれの濃度においても80%であることを確認し、データの信頼性を保証した。この場合の花芽着生促進率は、下記式に基づき算出した。
花芽着生促進率(%)=[増殖後の花芽の個数/増殖前の花芽の個数]×100
[実施例2]
ケト脂肪酸誘導体(II−1)の合成
(1)(12Z,15Z)-10-oxo-octadeca-12,15-dienoic acid(化合物9)の合成
以下のスキームに従って、(12Z,15Z)-10-oxo-octadeca-12,15-dienoic acid(化合物9)を合成した。
ケト脂肪酸誘導体(II−1)の合成
(1)(12Z,15Z)-10-oxo-octadeca-12,15-dienoic acid(化合物9)の合成
以下のスキームに従って、(12Z,15Z)-10-oxo-octadeca-12,15-dienoic acid(化合物9)を合成した。
メチル−1−ウンデセン酸(化合物34)を、m−クロロ過安息香酸により処理しメチル9−(オキシラン−2−イル)ノナノエート(化合物17)を得た。
化合物17に、ヘキサ−1,6−ジイン(化合物13)を、ルイス酸存在下、n−ブチルリチウムにより増炭しジイン(化合物50)を得た。次いで、リンドラー触媒にて還元しジエン(化合物51)へと変換した。最後に、スワーン酸化により水酸基をカルボニル基に酸化後、リパーゼPSにより加水分解することで、下記の化合物9を得た(収率11%)。
1H NMR (270 MHz, CDCl3) δ 0.98 (3H, t, J = 7.6 Hz), 1.09-1.13 (8H), 1.57-1.63 (8H), 2.07 (2H, m), 2.35 (2H, t, J = 7.6 Hz), 2.44 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.78 (2H, t-like), 3.20 (2H, d, J = 5.1 Hz), 5.28 (1H, m), 5.40 (1H, m), 5.51-5.63 (2H). 13C NMR (67.5 MHz, CDCl3) δ 14.1, 20.6, 23.7, 24.3, 25.7, 28.9 (C×2), 29.0, 29.1, 33.9, 41.6, 42.3, 121.2, 126.2, 131.8, 132.4, 179.7, 209.3. HR-MS (ESI+) m/z 317.2090 [M+Na]+(calc. for C18H30NaO3, 317.2093).
化合物17に、ヘキサ−1,6−ジイン(化合物13)を、ルイス酸存在下、n−ブチルリチウムにより増炭しジイン(化合物50)を得た。次いで、リンドラー触媒にて還元しジエン(化合物51)へと変換した。最後に、スワーン酸化により水酸基をカルボニル基に酸化後、リパーゼPSにより加水分解することで、下記の化合物9を得た(収率11%)。
1H NMR (270 MHz, CDCl3) δ 0.98 (3H, t, J = 7.6 Hz), 1.09-1.13 (8H), 1.57-1.63 (8H), 2.07 (2H, m), 2.35 (2H, t, J = 7.6 Hz), 2.44 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.78 (2H, t-like), 3.20 (2H, d, J = 5.1 Hz), 5.28 (1H, m), 5.40 (1H, m), 5.51-5.63 (2H). 13C NMR (67.5 MHz, CDCl3) δ 14.1, 20.6, 23.7, 24.3, 25.7, 28.9 (C×2), 29.0, 29.1, 33.9, 41.6, 42.3, 121.2, 126.2, 131.8, 132.4, 179.7, 209.3. HR-MS (ESI+) m/z 317.2090 [M+Na]+(calc. for C18H30NaO3, 317.2093).
(2)ケト脂肪酸誘導体の合成
300mlナス型フラスコ中で、1600μMのノルエピネフリンを1M−Tris−HCl緩衝液(pH8.0,40ml)に溶解後、800μMの化合物9を添加した。市販ゴム風船2個を二重とし、酸素を充填し、上記ナスフラスコに取り付け、空気と置換した後、10〜24時間室温にて反応した。反応液を1%ギ酸でpH3〜5に調整後、酢酸エチル40mlで3回抽出した
抽出液を減圧下濃縮乾固した。これをアセトニトリルに溶解後、以下の条件でHPLCによる分取を試みた。化合物9由来の反応生成物(II−1)を約20mg得た。HPLC条件:カラム、CAPCELL PAKC18(株式会社資生堂製) 10×250mm;流速、4.0mL/min;溶媒、30%アセトニトリル水、保持時間7.3分。
更にCOSY、HMQC,HMBCによる詳細な検討に基づいて、下記の立体構造を決定した。
300mlナス型フラスコ中で、1600μMのノルエピネフリンを1M−Tris−HCl緩衝液(pH8.0,40ml)に溶解後、800μMの化合物9を添加した。市販ゴム風船2個を二重とし、酸素を充填し、上記ナスフラスコに取り付け、空気と置換した後、10〜24時間室温にて反応した。反応液を1%ギ酸でpH3〜5に調整後、酢酸エチル40mlで3回抽出した
抽出液を減圧下濃縮乾固した。これをアセトニトリルに溶解後、以下の条件でHPLCによる分取を試みた。化合物9由来の反応生成物(II−1)を約20mg得た。HPLC条件:カラム、CAPCELL PAKC18(株式会社資生堂製) 10×250mm;流速、4.0mL/min;溶媒、30%アセトニトリル水、保持時間7.3分。
更にCOSY、HMQC,HMBCによる詳細な検討に基づいて、下記の立体構造を決定した。
(3)花芽着生促進活性
100ml容三角フラスコにE−培地20mlを加え、継代7日目のアオウキクサ(Lemna paucicostata)を一個体移植後、化合物(II−1)を最終濃度10nM、100nM、1000nM、10000nMとなるように加えた。25℃、連続照明(5000lux)下、10日間培養した。15〜30個体に増殖した各固体の花芽を顕微鏡で計数し、2mMの安息香酸(ポジティブコントロール)の花芽誘導率に対して、いずれの濃度においても80%であることを確認し、データの信頼性を保証した。
100ml容三角フラスコにE−培地20mlを加え、継代7日目のアオウキクサ(Lemna paucicostata)を一個体移植後、化合物(II−1)を最終濃度10nM、100nM、1000nM、10000nMとなるように加えた。25℃、連続照明(5000lux)下、10日間培養した。15〜30個体に増殖した各固体の花芽を顕微鏡で計数し、2mMの安息香酸(ポジティブコントロール)の花芽誘導率に対して、いずれの濃度においても80%であることを確認し、データの信頼性を保証した。
[実施例3]
ケト脂肪酸誘導体(III−1)の合成
(1)(Z)-10-Oxo-octadeca-12-enoic acid(化合物7)の合成
以下のスキームに従って、(Z)-10-Oxo-octadeca-12-enoic acidを合成した。
ケト脂肪酸誘導体(III−1)の合成
(1)(Z)-10-Oxo-octadeca-12-enoic acid(化合物7)の合成
以下のスキームに従って、(Z)-10-Oxo-octadeca-12-enoic acidを合成した。
1−ヘプチン(化合物12)と実施例2の(1)において得たエポキシド17とをn−ブチルリチウムにより反応後、得られたメチル−10−ヒドロキシ−12−オクタデシン酸(化合物47)をリンドラー触媒にて還元することでメチル−10−ヒドロキシ−12−オクタデセン酸(化合物48)を得た。次いでスワーン酸化によりメチル−10−オキソ−オクタデセン酸(化合物49)に導き、最終的にリパーゼPSによって下記化合物7を得た。(収率16%)
1H NMR (270 MHz, CDCl3) δ 0.89 (3H, t, J = 6.9 Hz), 1.30-1.42 (14H), 1.53-1.65 (4H), 2.02 (2H, q-like), 2.34 (2H, t, J = 7.6 Hz), 2.43 (2H, t, J = 7.6 Hz), 3.15 (2H, d, J = 5.9 Hz), 5.48-5.64 (2H, m), 6.47 (1H, br). 13CNMR (67.5 MHz, CDCl3) δ 14.0, 22.5, 23.7, 24.6, 27.5, 29.0 (C×3), 29.1 (C×2), 31.5, 33.9, 41.7, 42.2, 120.9, 133.7, 179.4, 209.4. HR-MS (ESI+) m/z 319.2246 [M+Na]+ (calc. for C18H32NaO3, 335.2249).
(2)ケト脂肪酸誘導体の合成
300mlナス型フラスコ中で、1600μMのノルエピネフリンを1M−Tris−HCl緩衝液(pH8.0,40ml)に溶解後、800μMの化合物7を添加した。市販ゴム風船2個を二重とし、酸素を充填し、上記ナスフラスコに取り付け、空気と置換した後、10〜24時間室温にて反応した。反応液を1%ギ酸でpH3−5に調整後、酢酸エチル40mlで3回抽出した
抽出液を減圧下濃縮乾固した。これをアセトニトリルに溶解後、以下の条件でHPLCによる分取を試みた。化合物7由来の反応生成物(III−1)を約18mg得た(収率14%)。HPLC条件:カラム、CAPCELL PAKC18(株式会社資生堂製) 10×250mm;流速、4.0mL/min;溶媒、30%アセトニトリル水、保持時間8.0分。
更にCOSY、HMQC,HMBCによる詳細な検討に基づいて、下記の構造を決定した。
300mlナス型フラスコ中で、1600μMのノルエピネフリンを1M−Tris−HCl緩衝液(pH8.0,40ml)に溶解後、800μMの化合物7を添加した。市販ゴム風船2個を二重とし、酸素を充填し、上記ナスフラスコに取り付け、空気と置換した後、10〜24時間室温にて反応した。反応液を1%ギ酸でpH3−5に調整後、酢酸エチル40mlで3回抽出した
抽出液を減圧下濃縮乾固した。これをアセトニトリルに溶解後、以下の条件でHPLCによる分取を試みた。化合物7由来の反応生成物(III−1)を約18mg得た(収率14%)。HPLC条件:カラム、CAPCELL PAKC18(株式会社資生堂製) 10×250mm;流速、4.0mL/min;溶媒、30%アセトニトリル水、保持時間8.0分。
更にCOSY、HMQC,HMBCによる詳細な検討に基づいて、下記の構造を決定した。
UV λmax (nm)(CH3OH) 294;HRESI-TOF-MS m/z502.2729304 [M+Na]+ calc.for C26H41N1Na1O7(502.27301) 1H NMR (500 MHz, (CD3)2CO) δ 0.94(3H, t, J=6.6 Hz), 1.20-1.45 (18H), 1.50(1H, m), 1.59(2H, m), 1.73 (1H,m), 1.96(1H, m), 2.28 (2H, t, J=7.2 Hz),2.37 (2H, m), 2.49 (1H, dd, J=5.5, 16.5 Hz), 2.64 (1H, dd, J=7.7, 16.5 Hz), 3.52 (1H, d, J=12.2 Hz), 3.93 (1H dd, J=2.6, 12.2 Hz), 4.36 (1H, d, J=2.6 Hz), 4.60 (1H, m), 5.50 (1H, s); 13C NMR (125 MHz, (CD3)2CO) δ 14.3(C18),23.2 (C17), 32.8 (C16), 30.5 (C15), 25.6 (C14), 39.9 (C13), 70.7 (C12), 46.1 (C11), 208.2 (C10), 43.1 (C9), 32.0 (C8), 30.2, 30.0, 29.9 (x2) (C7-4), 25.6 (C3), 34.1 (C2), 174.2 (C1), 62,0 (C8’), 71.8(C7’), 173.0 (C6’), 93.7 (C5’), 186.3 (C4’), 93.7 (C3’), 32.5 (C2’), 58.7 (C1’)
(3)花芽着生促進活性
100ml容三角フラスコにE−培地20mlを加え、継代7日目のアオウキクサ(Lemna paucicostata)を一個体移植後、化合物(III−1)を最終濃度10nM、100nM、1000nM、10000nMとなるように加えた。25℃、連続照明(5000lux)下、10日間培養した。15〜30個体に増殖した各固体の花芽を顕微鏡で計数し、2mMの安息香酸(ポジティブコントロール)の花芽誘導率に対して、いずれの濃度においても80%であることを確認し、データの信頼性を保証した。
100ml容三角フラスコにE−培地20mlを加え、継代7日目のアオウキクサ(Lemna paucicostata)を一個体移植後、化合物(III−1)を最終濃度10nM、100nM、1000nM、10000nMとなるように加えた。25℃、連続照明(5000lux)下、10日間培養した。15〜30個体に増殖した各固体の花芽を顕微鏡で計数し、2mMの安息香酸(ポジティブコントロール)の花芽誘導率に対して、いずれの濃度においても80%であることを確認し、データの信頼性を保証した。
[試験例1]
花芽着生促進活性の比較
2ml反応バイアル中で、1.6μMのノルエピネフリンを1M−Tris−HCl緩衝液(pH8.0,0.4ml)に溶解後、上記実施例1〜3で得られた化合物4、化合物7及び化合物9と、下記に示すKODA、化合物8、化合物10及びリノレン酸をそれぞれ8μMずつ添加した。
本試験で用いられたKODAは、α-リノレン酸より既報の酵素合成法により得た。KODAをノルエピネフリンと接触させると、強い花芽着生促進活性を有することが知られている化合物FN−1が生成する。
化合物8は、実施例3における化合物7と同時に得られるものであり、ODSカラムを装着したHPLCにより化合物8を精製した。
化合物10は、化合物4を接触還元することにより得た。
α-リノレン酸は、市販(Sigma社)のものを用いた。
各化合物の構造を以下に示す。
花芽着生促進活性の比較
2ml反応バイアル中で、1.6μMのノルエピネフリンを1M−Tris−HCl緩衝液(pH8.0,0.4ml)に溶解後、上記実施例1〜3で得られた化合物4、化合物7及び化合物9と、下記に示すKODA、化合物8、化合物10及びリノレン酸をそれぞれ8μMずつ添加した。
本試験で用いられたKODAは、α-リノレン酸より既報の酵素合成法により得た。KODAをノルエピネフリンと接触させると、強い花芽着生促進活性を有することが知られている化合物FN−1が生成する。
化合物8は、実施例3における化合物7と同時に得られるものであり、ODSカラムを装着したHPLCにより化合物8を精製した。
化合物10は、化合物4を接触還元することにより得た。
α-リノレン酸は、市販(Sigma社)のものを用いた。
各化合物の構造を以下に示す。
市販ゴム風船2個を二重とし、酸素を充填し、上記ナスフラスコに取り付け、空気と置換した後、10〜24時間室温にて反応した。アオウキクサを移植した三角フラスコに、各試験化合物が10nM、100nM、1000nM、10000nM相当量になるように添加した。その後、実施例1(3)の花芽着生促進活性の項で説明した手順と同様にして、培養を行い、花芽誘導活性を計測した。花芽誘導率20%以上で、花芽誘導活性を示すと判断する。
結果を図1に示す。
なお図1中、KODAは(黒菱形・実線)、化合物(I−1)は(黒四角・実線)、化合物(II−1)は(黒三角・実線)、化合物(III−1)は(黒四角・破線)、化合物8は(白四角・破線)、化合物10は(白丸・二点破線)、リノレン酸は(黒四角・一点破線)で表す。
結果を図1に示す。
なお図1中、KODAは(黒菱形・実線)、化合物(I−1)は(黒四角・実線)、化合物(II−1)は(黒三角・実線)、化合物(III−1)は(黒四角・破線)、化合物8は(白四角・破線)、化合物10は(白丸・二点破線)、リノレン酸は(黒四角・一点破線)で表す。
図1に示されるように、本発明の実施例に相当する化合物(I−1)は、1nM以上の濃度でFN−1に匹敵する花芽着生促進活性を示した。
また本発明の実施例に相当する化合物(II−1)は100nM以上の濃度で花芽誘導率が30%を超え、化合物(III−1)は1μM以上で花芽誘導率が50%を超えていた。
従って、本発明の化合物はいずれも花芽誘導活性を示す化合物であることがわかった。
また、化合物8、化合物10及びリノレン酸を用いた試験により、脂肪酸における9位のカルボニル基と、このカルボニル基に対してβ、γ位の不飽和結合が花芽誘導活性には重要であること、花芽誘導活性に15位の二重結合、9位の水酸基が必ずしも必要でないことがわかった。
また本発明の実施例に相当する化合物(II−1)は100nM以上の濃度で花芽誘導率が30%を超え、化合物(III−1)は1μM以上で花芽誘導率が50%を超えていた。
従って、本発明の化合物はいずれも花芽誘導活性を示す化合物であることがわかった。
また、化合物8、化合物10及びリノレン酸を用いた試験により、脂肪酸における9位のカルボニル基と、このカルボニル基に対してβ、γ位の不飽和結合が花芽誘導活性には重要であること、花芽誘導活性に15位の二重結合、9位の水酸基が必ずしも必要でないことがわかった。
Claims (5)
- 請求項1記載のα−ケトール脂肪酸誘導体を含む花芽着生促進剤。
- 請求項2又は請求項3記載のケト脂肪酸誘導体を含む花芽着生促進剤。
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JP2008051028A JP2009209054A (ja) | 2008-02-29 | 2008-02-29 | α−ケトール脂肪酸誘導体及びケト脂肪酸誘導体並びに花芽着生促進剤 |
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JPWO2014069227A1 (ja) * | 2012-10-29 | 2016-09-08 | 国立大学法人京都大学 | 希少脂肪酸を含む代謝改善剤 |
WO2019026575A1 (ja) * | 2017-08-04 | 2019-02-07 | 国立大学法人名古屋大学 | 花成時期調節剤、農薬組成物及び植物の花成時期の調節方法 |
JP7481134B2 (ja) | 2019-12-20 | 2024-05-10 | イビデン株式会社 | 植物賦活剤 |
-
2008
- 2008-02-29 JP JP2008051028A patent/JP2009209054A/ja not_active Withdrawn
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