JP2007022999A - 植物病害抵抗性誘導剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 環境汚染等の各種負担を招く殺菌剤等の農薬を用いることなく、各種植物の病気を予防することができる新たな植物病害抵抗性誘導剤の提供。
【解決手段】 その植物病害抵抗性誘導剤は、炭素原子数が5〜24のケトール脂肪酸であって、炭素間の二重結合が1〜6であり、かつαケトール構造又はγケトール構造を有するケトール不飽和脂肪酸を含有することを特徴とするものである。
特に、そのケトール不飽和脂肪酸としては、9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(),15()−オクタデカジエン酸が好ましい。
そして、その植物病害抵抗性誘導剤は 病害抵抗性遺伝子の発現を誘導し、各種植物の病気を予防することができる。
したがって、環境汚染等の各種負担を招く殺菌剤等の農薬を用いことなく、各種植物の病気を予防することができ、その誘導に使用する物質は、従前の誘導剤とは化学構造及び化学的性質が大いに異なりものであり、植物病害抵抗性誘導剤に新たな方向への展開を拓くものである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、各種植物が持つ病害抵抗性反応を誘導することができる植物病害抵抗性誘導剤に関する。
より詳しくは、本発明は、各種植物の病気を予防する殺菌剤等の農薬に代わって、病害抵抗性遺伝子の発現を誘導し、各種植物の病気を予防することができる植物病害抵抗性誘導剤に関する。
各種植物の病気を予防する方法としては、現在のところ病気の原因に直接対処する殺菌剤等の農薬を用いるのが主流ではあるものの、その使用に伴って環境汚染の発生あるいは植物への負担等がある。
それに対して、病害抵抗性遺伝子の発現を誘発させることで、各種植物の病気を予防する手法も近時開発されており、それは、各種植物に病害抵抗性遺伝子を発現させて病害抵抗性反応を誘導することにより、各種植物の病気を予防するものである。
その発現の誘導(誘発)には植物病害抵抗性誘導剤が使用され、この誘導剤は、農薬を用いることに伴う先の各種問題を回避できることから最近注目されている。
その植物病害抵抗性誘導機能を持つ物質としては、サリチル酸(SA)、イソニコチン酸(INA)、1,2-benzisothiazole-3(2H)-one-1,1-dioxide(BIT)、ベンゾ−1,2,3−チアゾール(BTH)、プロベナゾール等があり、それらはいずれも病害抵抗性遺伝子であるPR−1の発現を誘発するものである。
それら物質はその植物病害抵抗性誘導の効果が限られており、より安全で環境等への負担が少なく、かつ誘発性能の優れた植物病害抵抗性誘導剤の開発が切望されている。
そのような中において、本発明者等は、生体内に豊富に存在するα−リノレン酸を出発物質とする脂肪酸代謝物として知られている9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(),15()−オクタデカジエン酸等の特定のαケトール構造又はγ−ケトール構造を持つ不飽和脂肪酸が花芽形成作用、植物賦活作用、成長促進作用、休眠抑制作用あるいは鮮度保持作用等があることを見出した(特許文献1ないし4参照)。
その後もこの物質については鋭意研究を継続しており、本発明者等は、このα又はγ−ケトール不飽和脂肪酸が発根誘導作用も有ることを見出した(特願2004−130744)。
そのようことから、本発明者等は、この9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(),15()−オクタデカジエン酸等の特定のαケトール又はγケトール不飽和脂肪酸が有する植物に対する優れた特性に引き続き着目し、この不飽和脂肪酸が病害抵抗性遺伝子の発現を誘導する性能を有するか否かの確認を試みた。
[先行技術文献]
特開平11−29410号公報 特開2001−131006号 特開2001−236210号 特開2004−2228号 特表平11−513897号公報 特開2001−247512号
その結果、意外にも、この特定のα又はγ−ケトール不飽和脂肪酸に病害抵抗性遺伝子の発現を誘導する作用があることを本発明者は見出すことができ、この知見に基づいて本発明は成されたものである。
したがって、本発明は、環境汚染等の各種負担を招く殺菌剤等の農薬を用いことなく、各種植物の病気を予防することができる新たな植物病害抵抗性誘導剤を提供することを発明の解決すべき課題、すなわち目的とするとものである。
なお、その誘導剤は従前の誘導剤とは化学構造及び化学的性質が大いに異なるものである。
本発明は、前記したとおり植物病害抵抗性誘導剤を提供するものであり、それは、炭素原子数が5〜24のケトール脂肪酸であって、炭素間の二重結合が1〜6であり、かつαケトール構造又はγケトール構造を有するケトール不飽和脂肪酸を含有することを特徴とするものである。
また、そのケトール不飽和脂肪酸は、9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(),15()−オクタデカジエン酸がよい。
なお、本明細書及び特許請求の範囲における「Z」及び「E」は、シス・トランス異性体であることを意味し、そのうちZはシス体、Eはトランス体であることを示す。
また、それらの下に付記されたアンダーラインは、「Z」及び「E」が本来イタリック体で本来表記されるべきものであることを示す。
本発明は、病害抵抗性遺伝子の発現を誘導し、各種植物の病気を予防することができる植物病害抵抗性誘導剤を提供するものである。
したがって、本発明は、環境汚染等の各種負担を招く殺菌剤等の農薬を用いることなく、各種植物の病気を予防することができる優れたものである。
また、その誘導に使用する物質は、前記したとおり従前の誘導剤とは化学構造及び化学的性質が大いに異なるものであり、植物病害抵抗性誘導剤に新たな方向への展開を拓くものである。
そして、本発明の植物病害抵抗性誘導剤の有効成分化合物は、天然に存在する不飽和脂肪酸を基本骨格とし、それに酸素2個と、水素1個が付加された単純なケトール構造を持つ誘導体であり、かつ低濃度で所定の性能を発現できることから、殺菌剤による病気予防に比し、環境汚染を遥かに低減できるものである。
さらに、その有効成分であるケトール不飽和脂肪酸は、前記したとおり従前の植物病害抵抗性誘導作用を持つ物質であるSA、INA、BIT、BTH(特許文献5参照)とは化学構造及び化学的性質が大いに異なりものであり、植物病害抵抗性誘導剤に新たな方向への展開を拓くものである。
以下において、本発明について、発明を実施するための最良の形態を含む発明の実施の態様に関し詳述する。
本発明の植物病害抵抗性誘導剤の有効成分である、ケトール不飽和脂肪酸は、前記したとおり炭素原子数が5〜24のケトール脂肪酸であって、炭素間の二重結合が1〜6であり、かつαケトール構造又はγケトール構造を有するものである。
そのαケトール構造又はγ構造ケトール構造を持つケトール不飽和脂肪酸はカルボニル基を構成する炭素原子と水酸基が結合した炭素原子がα位又はγ位の位置にある不飽和脂肪酸である。
そのケトール不飽和脂肪酸は一般式でも表すことができ、それによって表すと前者のαケトール構造を持つケトール不飽和脂肪酸は、一般式(1)及び(2)、後者のγケトール構造を持つケトール不飽和脂肪酸は、一般式(3)及び(4)となる。
Figure 2007022999
そのαケトール構造を持つケトール不飽和脂肪酸については、一般式(1)及び(2)において、R1は直鎖状アルキル基又は2重結合を持つ直鎖状不飽和炭化水素基、R2は直鎖状アルキレン又は2重結合を持つ直鎖状不飽和炭化水素鎖であり、しかも少なくともR1及びR2のいずれか一方が2重結合1つを持ち、かつケトール不飽和脂肪酸の全炭素数が5〜24で、炭素間の全二重結合が1〜6であるように選択されることが必要である。
また、そのγケトール構造を持つケトール不飽和脂肪酸については、一般式(3)及び(4)において、R3は直鎖状アルキル基又は2重結合を持つ直鎖状不飽和炭化水素基、R4は直鎖状アルキレン又は2重結合を持つ直鎖状不飽和炭化水素鎖であり、しかもケトール不飽和脂肪酸の全炭素数が7〜24で、炭素間の全二重結合が1〜6であるように選択されることが必要である。
そして、それらの不飽和ケトール脂肪酸については、炭素原子数が18で、炭素間の二重結合が2つ存在する化合物が本発明の植物病害抵抗性誘導剤の有効成分化合物として好ましいが、その好ましい不飽和ケトール脂肪酸の具体例としては、一般式(1)に該当する9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(),15()−オクタデカジエン酸〔以下,特定ケトール脂肪酸(1a)ということもある〕を挙げることができ、これが特に好ましい。
それ以外に好ましいケトール脂肪酸の具体例として、一般式(2)に該当する13−ヒドロキシ−12−オキソ−9(),15()−オクタデカジエン酸〔以下,特定ケトール脂肪酸(2a)ということもある〕、一般式(3)に該当する13−ヒドロキシ−10−オキソ−11(),15()−オクタデカジエン酸〔以下、特定ケトール脂肪酸(3a)ということもある〕、一般式(4)に該当する9−ヒドロキシ−12−オキソ−10(),15()−オクタデカジエン酸〔以下、特定ケトール脂肪酸(4a)ということもある〕等を挙げることができる。
以下に、不飽和特定ケトール脂肪酸(1a)ないし(4a)の化学構造式を記載する。
Figure 2007022999
1.本発明の植物病害抵抗性誘導剤の有効成分化合物の製造方法について
以下において、本発明の植物病害抵抗性誘導剤(以下、本植物病害抵抗性誘導剤ということもある)有効成分であるα又はγケトール構造を有するケトール不飽和脂肪酸の製造方法について、前記した特定ケトール脂肪酸(1a)ないし(4a)を例に用いながら詳細に説明する。
特定のケトール脂肪酸は、所望するケトール脂肪酸の具体的構造に応じた方法で製造することができ、それは以下のとおりである。
[本植物病害抵抗性誘導剤の有効成分の製造方法]
(1)天然物に含まれていることが明らかな態様の特定ケトール脂肪酸は、この天然物から抽出精製することで製造することができる(以下、抽出法という)。
(2)不飽和脂肪酸にリポキシゲナーゼ等の酵素を、植物体内における脂肪酸代謝経路に準じて作用させることにより特定ケトール脂肪酸を得ることができる(以下、酵素法という)。
(3)所望する特定ケトール脂肪酸の具体的構造に応じて、既知の通常の化学合成法を駆使して特定ケトール脂肪酸を得ることができる(以下、化学合成法という)。
それらの製造方法に関し、以下において具体的に説明する。
(1)抽出法について:
特定ケトール脂肪酸(1a)は、ウキクサ科植物の一種であるアオウキクサ(Lemna paucicostata) から抽出・精製して得ることができる。
この抽出法における原材料となるアオウキクサ(Lemna paucicostata) は、池や水田の水面に浮遊し、かつ水面に浮かぶ葉状体が各々1本の根を水中に下ろす小型の水草であり、比較的増殖速度が速いことで知られている。
その花は、葉状体の体側に形成され、1本の雄しべだけからなる雄花2個と1個の雌しべからなる雌花が、共通した小さな苞に包まれている。
このアオウキクサの破砕物に、遠心分離(8000×g・10分間程度)を施し、得られた上清と沈澱物のうち、上清を除いたものを特定ケトール脂肪酸(1a)を含む画分として利用することができる。
このように、特定ケトール脂肪酸(1a)は、上記破砕物を出発物として単離・精製することが可能である。
さらに、好ましい出発物としては、アオウキクサを浮かばせた又は浸漬した後の特定ケトール脂肪酸(1a)が溶出した水溶液を挙げることができる。
これを用いることにより特定ケトール脂肪酸(1a)の濃度の高い溶出液を得ることができ、効率的に特定ケトール脂肪酸(1a)を調製することできる。
その際には、後記するように乾燥ストレス等のストレスを与えたものを用いることにより、より濃度の高い溶出液を得ることができ好ましい。
この水溶液の調製の具体例は、後述する実施例において記載する。
浸漬時間は、室温で2〜3時間程度でも可能であるが、特に限定されるべきものではない。
前記した方法で特定ケトール脂肪酸(1a)の出発物を調製する場合には、予め特定のストレスを与えることで、アオウキクサ内に特定ケトール脂肪酸(1a)をより産生するように誘導することができ、特定ケトール脂肪酸(1a)の製造効率上好ましい。
具体的には、乾燥ストレス、熱ストレス、浸透圧ストレス等を前記特定のストレスとして挙げることができる。
乾燥ストレスは、例えば、低湿度(好ましくは相対湿度で50%以下)で室温下、好ましくは24〜25℃程度で、アオウキクサを乾燥したフィルター紙上に広げた状態で放置することによって与えることができる。
この場合の乾燥時間は、乾燥する対象となるアオウキクサの配置密度にもよるが、概ね20秒以上、好ましくは5分〜5時間である。
熱ストレスは、例えば、温水中にアオウキクサを浸漬することによって与えることができる。
この場合の温水の温度は、浸漬時間に応じて選択すべきものである。
例えば、5分間程度浸漬する場合は、40〜65℃で可能であり、好ましくは45〜60℃、より好ましくは50〜55℃である。
また、上記熱ストレス処理後は、速やかにアオウキクサを常温水中に戻すことが好ましい。
浸透圧ストレスは、例えば高濃度の糖溶液等の高浸透圧溶液にアオウキクサを接触させることにより与えることができる。
この場合の糖濃度は、例えばマンニトール溶液であれば0.3M以上、好ましくは0.5〜0.7Mがよい。
処理時間は、例えば0.5Mマンニトール溶液を用いる場合は1分以上、好ましくは2〜5分間である。
このようにして、所望する特定ケトール脂肪酸(1a)を含む出発物を効率的に調製することができる。
なお、上記した種々の出発物の基となるアオウキクサの株の種類は特に限定されないが、P441株は、特定ケトール脂肪酸(1a)の製造において特に好ましい株である。
前記のように調製した出発物に以下に示すような分離・精製手段を施して、所望する特定ケトール脂肪酸(1a)を製造することができる。
なお、ここに示す分離手段は例示であり、前記出発物から特定ケトール脂肪酸(1a)を製造するための分離手段は、前記例示した手段に限定されるものではなく、各種のものが特に制限されることなく採用することができる。
前記のようにして調製した出発物に対しては、まず溶媒抽出を行い、特定ケトール脂肪酸(1a)を含有する成分を抽出することが好ましい。
かかる溶媒抽出に用いる溶媒は、特に限定されるものではなく、例えば、クロロホルム、酢酸エチル、エーテル等を用いることができる。
これらの溶媒の中でもクロロホルムは、比較的容易に不純物を除去することが可能であるという点において好ましい。
この溶媒抽出で得られた油層画分を、既知の通常の方法を用いて洗浄・濃縮し、ODS(オクタデシルシラン)カラム等の逆相分配カラムクロマトグラフィー用カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけて、本発明の植物病害抵抗性誘導剤の有効成分である特定ケトール脂肪酸(1a)を同定・単離することにより調製することができる。
なお、出発物の性質等に応じて既知の通常の他の分離手段、例えば限外濾過,ゲル濾過クロマトグラフィー等を組み合わせて用いることも勿論可能である。
以上、特定ケトール脂肪酸(1a)を抽出法で製造する工程について説明したが、所望する態様の特定ケトール脂肪酸が、アオウキクサ以外の植物において存在する場合には、上記に準じた方法や、上記の方法の変法を駆使することにより、その特定ケトール脂肪酸を製造することが可能である。
(2)酵素法について:
酵素法の出発物質として典型的なものとしては、所望する特定ケトール脂肪酸の構造に応じた位置に二重結合が存在し、かつその炭素数が5〜24の各種不飽和脂肪酸を挙げることができる。
この不飽和脂肪酸としては、例えばオレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、9,11-octadecadienoic acid 、10,12-octadecadienoic acid、9,12,15-octadecatrienoic acid 、6,9,12,15-octadecatetraenoic acid 、11,14-eicosadienoic acid、5,8,11-eicosatrienoic acid、11,14,17-eicosatrienoic acid、5,8,11,14,17-eicosapentaenoic acid、13,16-docosadienoic acid、13,16,19-docosatrienoic acid、7,10,13,16-docosatetraenoic acid、7,10,13,16,19-docosapentaenoic acid 、4,7,10,13,16,19-docosahexaenoic acid等を挙げることができるが、これらの不飽和脂肪酸に限定されるものではない。
これらの不飽和脂肪酸は、概ね動物・植物等に含まれている不飽和脂肪酸であり、これらの動物・植物等から既知の通常の方法を通じて抽出・精製したものあるいは既知の通常の方法により化学合成したものを用いることも可能であり、市販品を用いることも勿論可能である。
この酵素法においては、上記の不飽和脂肪酸を基質として、リポキシゲナーゼ(LOX)を作用させて、これらの不飽和脂肪酸の炭素鎖にヒドロペルオキシ基(−OOH)を導入する。
そのリポキシゲナーゼは、不飽和脂肪酸の炭素鎖に分子状酸素をヒドロペルオキシ基として導入する酸化還元酵素であり、その存在は動物・植物を問わず確認されており、またサッカロミセス属に代表される酵母においてもその存在が確認されている。
例えば、植物であれば被子植物全般(具体的には、後述する本植物発根誘導剤を適用可能な双子葉植物及び単子葉植物全般)において、その存在が確認されている酵素である。
これらの植物の中でも、特にダイズ、アマ、アルファルファ、大麦、ソラマメ、ハウチワマメ、ヒラマメ、エンドウマメ、ジャガイモ、小麦、リンゴ、パンイースト、綿、キュウリ、スグリ、ブドウ、西洋ナシ、インゲンマメ、コメ、イチゴ、ヒマワリあるいは茶等がリポキシゲナーゼの出所としては好ましい。
また、クロロフィルがリポキシゲナーゼの上記活性を阻害する傾向が強いために、可能な限り植物におけるクロロフィルが存在しない種子、根、果実等をリポキシゲナーゼの原料として選択することが好ましい。
本発明においては、リポキシゲナーゼは、不飽和脂肪酸の炭素鎖の所望する位置にヒドロペルオキシ基を導入することができるものであれば、その由来は特に限定されないが、特定ケトール脂肪酸(1a)の場合には、可能な限り選択的にリノール酸又はリノレン酸の9位の二重結合部分を酸化するリポキシゲナーゼを用いることが好ましい。
かかる選択的リポキシゲナーゼの代表的なものとして、例えばコメ胚芽(rice germ)に由来するリポキシゲナーゼを挙げることができる〔Yamamoto,A.,Fuji,Y.,Yasumoto,K.,Mitsuda,H.,Agric.Biol.Chem.,44,443(1980)等〕。
そして、この選択的リポキシゲナーゼに対する基質として選択する不飽和脂肪酸としては、リノール酸又はα−リノレン酸を用いることが好ましい。
なお、不飽和脂肪酸を基質としてリポキシゲナーゼ処理を行うに際しては、使用するリポキシゲナーゼの最適温度及び最適pHで酵素反応を進行させることが好ましいのは当然である。
また、上記のリポキシゲナーゼ反応工程により生じた、製造を意図しない夾雑物は、既知の通常の方法、例えば上記(1)の欄で述べたHPLC等を用いることにより、容易に分離することが可能である。
ここで使用するリポキシゲナーゼは、既知の通常の方法により上記植物等から抽出・精製したものを用いることも、また市販品を用いることも可能である。
このようにして上記不飽和脂肪酸からヒドロペルオキシ不飽和脂肪酸を製造することができる。
このヒドロペルオキシ不飽和脂肪酸は、特定のケトール脂肪酸の酵素法による製造工程の中間体として位置づけることが可能である。
このヒドロペルオキシ不飽和脂肪酸としては、例えば上記特定ケトール脂肪酸(1a)の中間体として、α−リノレン酸にリポキシゲナーゼを作用させて得ることができる9−ヒドロペルオキシ−10(),12(),15()−オクタデカトリエン酸を挙げることができ、また特定ケトール脂肪酸(3a)の中間体としては13−ヒドロペルオキシ−9(),11(),15()−オクタデカトリエン酸を挙げることができる。
これらヒドロペルオキシ脂肪酸に関し、前者の9−ヒドロペルオキシ−10(),12(),15()−オクタデカトリエン酸を本発明関連ヒドロペルオキシ脂肪酸(1a')として、また後者の13−ヒドロペルオキシ−9(),11(),15()−オクタデカトリエン酸を本発明関連ヒドロペルオキシ脂肪酸(3a')として、化学構造式を以下に記載する。
Figure 2007022999
特定ケトール脂肪酸は、ヒドロペルオキシ不飽和脂肪酸を基質として、アレンオキサイドシンターゼを作用させることによって製造することができる。
このアレンオキサイドシンターゼは、ヒドロペルオキシ基をエポキシ化を経てケトール体に変換する活性を有する酵素であり、前記リポキシゲナーゼと同様に植物、動物及び酵母において存在する酵素であり、植物であれば被子植物全般において、存在している酵素である。
なお、このアレンオキサイドシンターゼは、植物であれば大麦、小麦、トウモロコシ、綿、ナス、アマ(種等)、チシャ、エンバク、ホウレンソウ、ヒマワリ等においてその存在が認められている。
本発明において特定ケトール脂肪酸を製造するのに使用するアレンオキサイドシンターゼについては、例えば上記の9−ヒドロペルオキシ−10(),12(),15()−オクタデカトリエン酸の9位のヒドロペルオキシ基を脱水することによりエポキシ基を形成させ、さらにOH-の求核反応により、所望する特定ケトール脂肪酸を結果として得ることができる限りにおいては特に限定されるものではない。
ここで使用するアレンオキサイドシンターゼは、既知の通常の方法により上記植物等から抽出・精製したものを用いることも、また市販品を用いることも可能である。
なお、前記した2工程の酵素反応は、別々に行うことも、連続して行うことも可能である。
前記したアレンオキサイドシンターゼによる処理を行うに際しては、使用するアレンオキサイドシンターゼの最適温度及び最適pHで酵素反応を進行させることが好ましいのは当然である。
さらに、上記酵素については、粗精製品も精製品も使用することができ、それを用いて上記酵素反応を進行させることにより、所望する特定ケトール脂肪酸を得ることが可能である。
また、上記酵素を担体に固定して、これらの固定化酵素を調製してカラム処理又はバッチ処理等を基質に施すことにより所望する特定ケトール脂肪酸を得ることができる。
また、上記の2工程に用いる酵素の調製法としては、遺伝子工学的手法を用いることも可能である。
すなわち、これらの酵素をコードする遺伝子を、常法により植物等から抽出・取得し、又は酵素の遺伝子配列に基づいて化学合成することにより取得し、かかる遺伝子により、大腸菌や酵母などの微生物、動物培養細胞、植物培養細胞などを形質転換し、これらの形質転換細胞において、組換え酵素蛋白質を発現させることにより、所望する酵素を得ることができる。
そして、エポキシ基を形成させた後のOH-の求核反応(上記)により特定ケトール脂肪酸を得ようとする場合に、その求核物の上記エポキシ基付近における作用形式によっては、α−ケトール不飽和脂肪酸のほかにγ−ケトール化合物が生成する。
このγ−ケトール化合物は、上記(1)の欄で述べたHPLC等の既知の通常の分離手段を用いることにより容易にα−ケトール化合物と分離することができる。
(3)化学合成法について:
特定ケトール脂肪酸は、既知の通常の化学合成法を駆使することにより製造することもできる。
例えば、一端にアルデヒド基等の反応性基を有し、他端に保護基を結合させたカルボキシル末端を付加させた飽和炭素鎖を既知の通常の方法により合成し、これとは別にcis-3-ヘキセン-1-オール等の不飽和アルコール等を出発物質として、所望の位置に不飽和基を有する反応性末端を有する不飽和炭素鎖とを合成する。
次いで、上記飽和炭化水素鎖とこの不飽和炭素鎖とを反応させて、特定のケトール脂肪酸を製造することができる。
なお、この一連の反応において、反応を企図しない末端に付加する保護基や反応を促進するための触媒は、具体的な反応様式に応じて適宜選択して用いることができる。
そして、具体的には、例えば以下のような手順で特定ケトール脂肪酸を合成することができる。
i)特定ケトール脂肪酸(1a)の合成
Nonanedioic acid monoethyl esterを出発原料として、N,N'-carbonyldiimidazoleと反応させ、酸イミダゾリドとした後に、低温でLiAlH4還元して対応するアルデヒドを合成する。
なお、上記出発物質を例えば1,9-nonanediol等のジオールとして、同様のアルデヒドを合成することも可能である。
これとは別に、cis-3-ヘキセン-1- オール(cis-3-hexen-1-ol)をtriphenylphosphine及びcarbon tetrabromide と反応させ、得られた臭化化合物にtriphenyl phosphineを反応させ、さらにn−BuLiの存在下でchloroacetaldehydeと反応させることによりcisオレフィンを構築し、更にこれとmethylthiomethyl p-tolyl sulfoneとを反応させた後、NaHの存在下上記のアルデヒドと反応させて誘導した2級アルコールをtert-butyl diphenyl silyl chlorid(TBDPSCl)で保護して、酸加水分解、次いで脱保護することにより、所望する特定ケトール脂肪酸(1a)を合成することができる。
以下に、この特定ケトール脂肪酸(1a)の合成工程について簡単な工程図を示す。
Figure 2007022999
ii)特定ケトール脂肪酸(2a)の合成
Nonanedioic acid monoethyl ester を出発原料として、塩化チオニルと反応させることにより酸クロリドとし、その後NaBH4還元を行い酸アルコールを生成させる。
次いで、この酸アルコールの遊離カルボン酸を保護した後に、triphenylphosphine及びcarbon tetrabromideと反応させ、得られた臭化化合物にtriphenylphosphineを反応させ、更にn−BuLiの存在下でchloroacetaldehydeと反応させることによりcisオレフィンを構築し、更にこれとmethylthiomethyl p-tolyl sulfoneとを反応させた。
この反応物をn−BuLiの存在下で、これとは別にcis-3-hexen-1-olのPCC酸化により誘導したアルデヒドと反応させ、最後に脱保護することにより、所望する特定ケトール脂肪酸(2a)を合成することができる。
以下に、この特定ケトール脂肪酸(2a)の合成工程の一例の簡単な工程図を示す。
Figure 2007022999
iii)特定ケトール脂肪酸(3a)の合成
Methyl vinyl ketoneを出発原料とし、LDA及びDMEの存在下でtrimethylsilylchlorideを反応させ、得られたシリルエーテルを、低温(-70℃)でMCPBA及びtrimethylamine hydrofluoric acidを添加してケトアルコールを調製する。
その後、このケトアルコールのカルボニル基を保護した後に、triphenylphosphine及びtrichloroacetoneを反応試薬に用いて、オレフィンに塩化物を付加させることなく反応させる。
次いで、この反応物をtributylarsine及びK2CO3の存在下で、formic acidを反応させ、transオレフィンを構築して塩化物とする。
その後、この塩化物とcis-3-hexen-1-olのPCC酸化により誘導したアルデヒドとを反応させて、この反応物と6-heptenonic acidとの結合反応を行い、最後に脱保護することにより、所望する特定ケトール脂肪酸(3a)を合成することができる。
以下に、この特定ケトール脂肪酸(3a)の合成工程について簡単な工程を示す。
Figure 2007022999
また、本発明で用いる特定ケトール脂肪酸は、前記以外の合成法によっても製造することができ、それには例えば本出願人が開発した方法がある(特許文献6参照)。
具体的には、その特許文献6の段落[0093]に記載の方法で合成された化合物39Aは、特定ケトール脂肪酸(1a)の末端のカルボキシル基がメタノールでエステル化されたものであるが、これを加水分解することにより簡単に特定ケトール脂肪酸(1a)を製造することができる。
本発明の植物病害抵抗性誘導剤の使用対象植物の種類は、特に限定されることはなく、被子植物(双子葉植物・単子葉植物)の他、菌類、地衣類、蘚苔類、シダ類及び裸子植物に対しても有効である。
その使用対象植物の具体例を示すと以下のとおりである。
被子植物のうち、双子葉植物としては、例えば、アサガオ属植物(アサガオ)、ヒルガオ属植物(ヒルガオ、コヒルガオ、ハマヒルガオ)、サツマイモ属植物(グンバイヒルガオ、サツマイモ)、ネナシカズラ属植物(ネナシカズラ、マメダオシ)が含まれるひるがお科植物、ナデシコ属植物、ハコベ属植物、タカネツメクサ属植物、ミミナグサ属植物、ツメクサ属植物、ノミノツヅリ属植物、オオヤマフスマ属植物、ワチガイソウ属植物、ハマハコベ属植物、オオツメクサ属植物、シオツメクサ属植物、マンテマ属植物、センノウ属植物、フシグロ属植物、ナンバンハコベ属植物等のなでしこ科植物をはじめ、もくまもう科植物、どくだみ科植物、こしょう科植物、せんりょう科植物、やなぎ科植物、やまもも科植物、くるみ科植物、かばのき科植物、ぶな科植物、にれ科植物、くわ科植物、いらくさ科植物、かわごけそう科植物、やまもがし科植物、ぼろぼろのき科植物、びゃくだん科植物、やどりぎ科植物がある。
さらに、双子葉植物としては、うまのすずくさ科植物、やっこそう科植物、つちとりもち科植物、たで科植物、あかざ科植物、ひゆ科植物、おしろいばな科植物、やまとぐさ科植物、やまごぼう科植物、つるな科植物、すべりひゆ科植物、もくれん科植物、やまぐるま科植物、かつら科植物、すいれん科植物、まつも科植物、きんぽうげ科植物、あけび科植物、めぎ科植物、つづらふじ科植物、ろうばい科植物、くすのき科植物、けし科植物、ふうちょうそう科植物、あぶらな科植物、もうせんごけ科植物、うつぼかずら科植物、べんけいそう科植物、ゆきのした科植物、とべら科植物、まんさく科植物、すずかけのき科植物、ばら科植物、まめ科植物、かたばみ科植物、ふうろそう科植物、あま科植物、はまびし科植物、みかん科植物、にがき科植物、せんだん科植物、ひめはぎ科植物、とうだいぐさ科植物、あわごけ科植物も例示できる。
また、つげ科植物、がんこうらん科植物、どくうつぎ科植物、うるし科植物、もちのき科植物、にしきぎ科植物、みつばうつぎ科植物、くろたきかずら科植物、かえで科植物、とちのき科植物、むくろじ科植物、あわぶき科植物、つりふねそう科植物、くろうめもどき科植物、ぶどう科植物、ほるとのき科植物、しなのき科植物、あおい科植物、あおぎり科植物、さるなし科植物、つばき科植物、おとぎりそう科植物、みぞはこべ科植物、ぎょりゅう科植物、すみれ科植物、いいぎり科植物、きぶし科植物、とけいそう科植物、しゅうかいどう科植物、さぼてん科植物、じんちょうげ科植物、ぐみ科植物、みそはぎ科植物、ざくろ科植物、ひるぎ科植物、うりのき科植物、のぼたん科植物、ひし科植物、あかばな科植物、ありのとうぐさ科植物、すぎなも科植物、うこぎ科植物、せり科植物、みずき科植物、いわうめ科植物、りょうぶ科植物も例示できる。
さらに、いちやくそう科植物、つつじ科植物、やぶこうじ科植物、さくらそう科植物、いそまつ科植物、かきのき科植物、はいのき科植物、えごのき科植物、もくせい科植物、ふじうつぎ科植物、りんどう科植物、きょうちくとう科植物、ががいも科植物、はなしのぶ科植物、むらさき科植物、くまつづら科植物、しそ科植物、なす科植物(なす、トマト等)、ごまのはぐさ科植物、のうぜんかずら科植物、ごま科植物、はまうつぼ科植物、いわたばこ科植物、たぬきも科植物、きつねのまご科植物、はまじんちょう科植物、はえどくそう科植物、おおばこ科植物、あかね科植物、すいかずら科植物、れんぷくそう科植物、おみなえし科植物、まつむしそう科植物、うり科植物、ききょう科植物、きく科植物等も例示することができる。
同じく、単子葉植物としては、例えば、ウキクサ属植物(ウキクサ)及びアオウキクサ属植物(アオウキクサ、ヒンジモ)が含まれるうきくさ科植物、カトレア属植物、シンビジウム属植物、デンドロビューム属植物、ファレノプシス属植物、バンダ属植物、パフィオペディラム属植物、オンシジウム属植物等が含まれるらん科植物、がま科植物、みくり科植物、ひるむしろ科植物、いばらも科植物、ほろむいそう科植物、おもだか科植物、とちかがみ科植物、ほんごうそう科植物、いね科植物(イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ等)、かやつりぐさ科植物、やし科植物、さといも科植物、ほしぐさ科植物、つゆくさ科植物、みずあおい科植物、いぐさ科植物、びゃくぶ科植物、ゆり科植物(アスパラガス等)、ひがんばな科植物、やまのいも科植物、あやめ科植物、ばしょう科植物、しょうが科植物、かんな科植物、ひなのしゃくじょう科植物等を例示することができる。
本発明の植物病害抵抗性誘導剤の使用形態は特に制限されることはなく、それは農薬と同様に散布等の簡便な手法で植物に使用することができる。
それ以外の使用形態としては、かんすい等が例示できる。
その特定ケトール脂肪酸の植物に対する投与量については、上限は特に限定されない。
すなわち、本発明の植物病害抵抗性誘導剤により、特定ケトール脂肪酸を多量に投与しても、成長阻害等の植物に対する負の効果は、ほとんど認められない。
逆に、上記の特定ケトール脂肪酸の植物に対する投与量の下限濃度は、植物個体の種類や大きさにより異なるが、1つの植物個体に対して1回の投与当り、0.1μM程度以上が目安である。
本植物病害抵抗性誘導剤における特定ケトール脂肪酸の配合量は、その使用態様や使用する対象となる植物の種類、更には本植物病害抵抗性誘導剤の具体的な剤形等に応じて選択することが可能である。
本植物病害抵抗性誘導剤の使用態様として、特定ケトール脂肪酸をそのまま用いることも可能であるが、上記の特定ケトール脂肪酸の投与の目安等を勘案すると、概ね、剤全体に対して0.01〜100ppm程度がよく、さらに好ましくは、同0.1〜50ppm程度である。
本植物病害抵抗性誘導剤の剤形としては、例えば、液剤、固形剤、粉剤、乳剤、底床添加剤等の剤形が挙げられ、その剤形に応じて、製剤学上適用することが可能な既知の担体成分、製剤用補助剤等を本発明の所期の効果である植物病害抵抗性誘導剤の病気予防作用が損なわれない限度において、適宜配合することができる。
例えば、担体成分としては、本植物病害抵抗性誘導剤が底床添加剤又は固形剤である場合には、概ねタルク、クレー、バーミキュライト、珪藻土、カオリン、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、白土、シリカゲル等の無機質や小麦粉、澱粉等の固体担体、また液剤である場合には、概ね水、キシレン等の芳香族炭化水素類、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の液体担体が上記の担体成分として用いられる。
また、製剤用補助剤としては、例えばアルキル硫酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等の陰イオン界面活性剤、高級脂肪族アミンの塩類等の陽イオン界面活性剤、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコールアシルエステル、ポリオキシエチレングリコール多価アルコールアシルエステル、セルロース誘導体等の非イオン界面活性剤、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム等の増粘剤、増量剤、結合剤などを適宜配合することができる。
さらに、必要に応じて既知の病害抵抗性誘導剤や、安息香酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ピペコリン酸等を、上記の本発明の所期の目的を損なわない限度において、本植物発根誘導剤中に配合することもできる。
本植物病害抵抗性誘導剤は、その剤形に応じた方法で種々の植物に用いられ得る。
例えば、植物の生長点のみならず、茎や葉をはじめとする植物体の一部又は全体に液剤や乳剤として散布、滴下あるいは塗布等することができる。
本植物病害抵抗性誘導剤の植物への投与については、その頻度は植物個体の種類や投与目的等により異なるが、基本的には、ただ1度の投与によっても所望する効果を得ることができる。
複数回投与する場合には、1週間以上の投与間隔をあけることが効率的である。
以下において、本発明の植物病害抵抗性誘導剤に使用する化合物の製造例及びその化合物による植物病害抵抗性誘導試験例を実施例1として具体的に示すが、本発明は、この実施例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって特定されるものであることはいうまでもない。
〔製造例〕 特定ケトール脂肪酸(1a)の製造例
本植物病害抵抗性誘導剤の一種であり、かつ特定ケトール脂肪酸(1a)である〔9-hydroxy-10-oxo-12 (Z), 15(Z)-octadecadienoic acid 〕を酵素法により以下のとおり製造した。
1.コメ胚芽由来のリポキシゲナーゼの調製
コメ胚芽350g を石油エーテルで洗浄、脱脂及び乾燥したもの(250g )を、0.1M酢酸緩衝液(pH4.5)1.25Lに懸濁し、この懸濁物をホモジナイズした。
その後かかるホモジナイズ抽出液を16000rpmで15分間遠心分離し、上清(0.8L)を得た。
次いで、その得られた上清に硫酸アンモニウム140.8g(30%飽和)を加え、4℃で一晩放置し、再度遠心を9500rpmで30分間行い、得られた上清(0.85L)に硫酸アンモニウム232g(70%飽和)を添加して、4℃で5時間放置した。
その後、遠心を9500rpmで30分間行い、これにより得られた沈澱物(コメ胚芽抽出液の硫安30〜70%飽和画分)をpH4.5の酢酸緩衝液300mLに溶解し、63℃で5分間加熱処理を行った。
さらに、生成した沈澱物を除去して、得られた上清を、RC透析チューブ(Spectrum社製ポア4:MWCO 12000〜14000)を用いて透析(3L×3)により脱塩後、所望するコメ胚芽由来のリポキシゲナーゼの粗酵素液を得た。
2.アマ種子由来のアレンオキサイドシンターゼの調製
アマ種子は、一丸ファルコス社から購入し、このアマ種子200gに、アセトン250mLを添加してホモジナイズ(20s×3)し、得られた沈澱物を目皿ロートで濾取し、溶媒を除去した。
次いで、その沈澱物を再びアセトン250mLに懸濁してホモジナイズ(10s×3)し、再度沈澱物を得た。
その沈澱物をアセトン及びエチルエーテルで洗浄後、乾燥して、アマ種子のアセトン粉末を得た(150g )。
このアマ種子のアセトン粉末のうち20g分を、氷冷下50mMリン酸緩衝液(pH7.0)400mLに懸濁し、これを4℃で1時間スターラー攪拌を施して抽出した。
得られた抽出物を、11000rpmで30分間遠心し、これにより得られた上清(380mL)に硫酸アンモニウム105.3g(0〜45%飽和)を加え、氷冷下で1時間静置し、さらに11000rpmで30分間遠心して得られた沈澱物を、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)150mLに溶解し、透析して脱塩し(3L×3)、所望するアマ種子由来のアレンオキサイドシンターゼの粗酵素液を得た。
3.α−リノレン酸のナトリウム塩の調製
出発原料とするα−リノレン酸は、水における溶解性が著しく低いので、酵素基質として働くことを容易にするために、α−リノレン酸をナトリウム塩化した。
すなわち、炭酸ナトリウム530mgを、精製水10mLに溶解して55℃に加温し、これにα−リノレン酸(ナカライテスク社)を278mg滴下して、3時間攪拌した。
反応終了後、イオン交換樹脂[Dowex50W-X8(H+form)(ダウケミカル社製)]で中和すると沈澱物が生成した。
これを濾過して樹脂を分離し、MeOHで溶解後、減圧下で溶媒を留去した。
これにより得られた生成物をイソプロパノールで再結晶し、所望するα−リノレン酸のナトリウム塩(250mg,83%)を得た。
4.特定ケトール脂肪酸(1a)の製造
上記3により得られたα−リノレン酸のナトリウム塩(15mg:50μmol )を、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)30mLに溶解した。
得られた溶液に、酸素気流下25℃で上記1により得たコメ胚芽由来のリポキシゲナーゼの粗酵素液を3.18mL添加し、30分間攪拌し、その後、更に同じくコメ胚芽由来のリポキシゲナーゼの粗酵素液3.18mLを添加して30分間攪拌した。
この攪拌終了後、このリポキシゲナーゼ反応物に、窒素気流下で上記2で得たアレンオキサイドシンターゼの粗酵素液34.5mLを添加して、30分間攪拌した後、氷冷下希塩酸を添加して反応溶液のpHを3.0に調整した。
次いで、その反応溶液をCHCl3−MeOH=10:1で抽出した。
その抽出により得られた有機層に硫酸マグネシウムを加えて脱水し、減圧下、溶媒を留去して乾燥した。
このようにして得られた粗生成物をHPLCにかけて、その特定ケトール脂肪酸(1a)と認められるピーク(リテンションタイム:16分付近)を分取した。
その分取した画分にクロロホルムを加え、クロロホルム層を分離して水洗し、エバポレーターでこのクロロホルムを留去して、精製物を得た。
この得られた精製物の構造を確認するために重メタノール溶液で1H及び13C−NMRスペクトルを測定し、その測定スペクトルを表1に示した。
Figure 2007022999
その結果、1H−NMRにおいて、末端メチル基〔δ0.98(t)〕、2組のオレフィン〔(δ5.25,5.40),(δ5.55,5.62 )〕、2級水酸基〔δ4.09(dd)〕及び多数のメチレンに基づくシグナルが認められ、特定ケトール脂肪酸(1a)であると推定された。
さらに、前記測定した表1の13C−NMRのケミカルシフト値を、特定ケトール脂肪酸(1a)の13C−NMRのケミカルシフト値(〔特許文献3、第7頁第11欄下から第1行目以降に記載されている「製造例(抽出法)」における13C−NMRのケミカルシフト値(第8頁左欄第3行目以降段落番号0054・段落番号0055)〕と比較したところ一致した。
したがって、上記のようにして得た酵素法による合成品は、確かに、特定ケトール脂肪酸(1a)の9-hydroxy-10-oxo-12 (Z), 15(Z)-octadecadienoic acidであることが確認できた。
〔評価試験1〕 特定ケトール脂肪酸による病害抵抗性遺伝子発現誘導性能確認
特定不飽和ケトール脂肪酸(1a)を用いて、タバコ(SR-1(T))に対する病害抵抗性遺伝子の発現誘導性能の確認試験を以下のとおり行った。
タバコの葉(約500mg)を葉柄から切り取り切断面を試験用薬剤に浸け、その後蒸留水に移し、光条件下で一晩置いたものを評価試験に供した。
病害抵抗性遺伝子の発現の誘導確認には、RT−PCR法を用いた。
そのRT−PCR法とは以下のとおりものである。
すなわち、まずタバコの葉をすり潰し、その液中からmRNAを抽出し、そのmRNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成する。
その合成されたcDNAを鋳型とし、プライマーを設計してPCR装置で増幅させる方法であり、その際にアガロースゲル電気泳動によりバンドの有無を調べ、目的遺伝子の発現を見るものである。
なお、その際のPCR条件としては、91℃ 1分、72℃ 10分を用いた。
そして、その評価試験の際における病害抵抗性遺伝子の発現の誘導のための薬剤としては、本植物病害抵抗性誘導剤である9-hydroxy-10-oxo-12 (Z), 15(Z)-octadecadienoic acid(KODAという)に加えて、比較のためにSA、BIT、BHTを用いた。
それら薬剤は、本植物病害抵抗性誘導剤を除き、前記したとおり病害抵抗性遺伝子の発現の誘導作用を有することが既知の物質である、
すなわち、SAは植物の全身獲得抵抗性を誘導する物質であり、BHTはこの全身獲得抵抗性を人為的に引き出し植物病害を積極的に防除しようとして開発された農薬である。 さらに、BITはプロベナゾール(明治製菓(株))の代謝産物であり、そのプロベナゾールもBTHと同様の農薬である。
その評価試験の結果は以下のとおりである。
本植物病害抵抗性誘導剤であるKODAの1mMを用いて、切除したタバコの葉の切口を処理し、PR−1遺伝子の発現を調査したところ、下記に示すSA処理の場合と同様に濃いバンドが検出された。
なお、これについては2度同様の試験を行ったが、いずれもPR−1遺伝子の発現が確認でき、KODAによるPR−1遺伝子の発現誘導には再現性も確認できた。
また、SA1mM処理、BIT及びBHT100μM処理の場合も同様に濃いバンドが検出されたが、無処理区でも僅かにバンドが確認された。
〔評価試験2〕 特定ケトール脂肪酸による病害抵抗性遺伝子発現誘導性能評価
評価試験1では、KODAの濃度が1mMと高濃度だったので、低い濃度(100μM)のKODAで処理した場合の発現性能の評価を行った。
この評価試験には、病害抵抗性遺伝子であることが既知のAcidic glucanase(PR-2)、Basic glucanase(PR-2)、Class I basic chitinase(PR-3)、Class II acidic chitinase(PR-3)、Class III acidic chitinase(PR-8)、Class III basic chitinase(PR-8)を用いた。
なお、比較のために評価試験1と同様にSA1mM処理、BIT及びBHT100μM処理の場合も同様に評価試験を行った。
さらに、プロベナゾール1mM、BIT10μM処理の場合も同様に評価試験を行った。
それらの結果は表2に示すとおりである。
それによれば、Acidic glucanase(PR-2)、Basic glucanase(PR-2)、Class I basic chitinase(PR-3)、Class III acidic chitinase(PR-8)、Class III basic chitinase(PR-8)において、KODAで処理した場合には、コントロールよりも遺伝子が強く発現することが判明した。
なお、Class II acidic chitinase(PR-3)では、コントロールでも遺伝子が強く発現しており差異はみられなかった。
Figure 2007022999

Claims (2)

  1. 炭素原子数が5〜24のケトール脂肪酸であって、炭素間の二重結合が1〜6であり、かつαケトール構造又はγケトール構造を有するケトール不飽和脂肪酸を含有することを特徴とする植物病害抵抗性誘導剤。
  2. ケトール不飽和脂肪酸が、9−ヒドロキシ−10−オキソ−12(),15()−オクタデカジエン酸である、請求項1に記載の植物病害抵抗性誘導剤。
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