JP7382053B2 - 根系形成促進剤 - Google Patents

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Description

本発明は、植物の根系形成促進剤に関する。
わが国の稲作、野菜栽培、花き栽培においては、苗生産と栽培の分業化が一般化している。定植時の苗の品質がその後の生育や収量に大きく影響するため、品質の安定した苗を生産することが重要である。苗に求められる品質として、根量が多く、育苗ポット内で老化していないことが挙げられる。
種子繁殖を行う植物では、プラスチックポットや紙ポット(ポット苗)、およびセルトレイ(セル成型苗、プラグ苗)で、自根苗やつぎ木苗を育苗する形態が存在する。これらの苗には、地上部は健全に生育する一方で根鉢の形成がよく、本畑への植え付けが容易で活着がよいことが求められる。具体的には、地上部の成長と比較して地下部の根系の成長が勝った苗を栽培できる生産技術が望まれている。
苗の生産法には、前述した種子の播種、発芽から実生を生育させる方法の他に、生育した植物の葉茎を挿し木して不定根を発根させて、生育させる方法がある。特に優良な植物体からクローンを作成する場合には後者の方法が採用される。健常苗の生産のためには、発根を促進し、さらに根の伸長を促進することにより、健常な根系形成を促進する必要がある。
根系形成促進剤として、植物成長ホルモンのオーキシン系化合物が広く用いられている。しかし、オーキシン系化合物は、植物の種類や状態、施用する濃度によっては葉の上偏成長、茎の捻転や茎割れ、根こぶの誘導、さらには枯死等といった好ましくない作用を及ぼすことがある。したがって、オーキシン系化合物は使用方法、使用量等に制限があり、また根の発達を促進する作用も十分満足できるものではなかった。その他の化合物も提案されているが、実用化には至っていない。安価で安全な物質で、強い副作用がなく、根の発根および伸長を促進する根系形成促進剤が望まれていた。
特許文献1~2はケトール構造を有する不飽和脂肪酸が挿し木の発根を促進することを記載している。しかし、ケトール構造を有しない、炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩が、植物の根系形成を促進することは開示されていない。
国際公開第2005/102048号公報 特開2007-167055号公報
本発明は、新規な根系形成促進剤を提供する。
本発明者は、植物油脂由来の脂肪酸塩(鹸化物)に根系形成促進効果があることを見出し、その有効成分を特定した。
すなわち、本発明は、炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩を含む、植物の根系形成促進剤に関する。
炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸がリノール酸であることが好ましい。
前記植物の根系形成促進剤さらに、下記式(I):
Figure 0007382053000001
(式(I)中、RはH、COOM、CONH、炭素数1~4のアルキル基であって、それぞれ同じでも、異なっていてもよく、Mは水素、NH 、または1価もしくは2価の金属カチオンである。)
で表される化合物を含むことが好ましい。
前記化合物は、3-ピリジンカルボン酸、2,3-ピリジンジカルボン酸、3,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、もしくは2,5-ピリジンジカルボン酸、またはその塩であることが好ましい。
前記化合物は0.1nM~100 mMとなる濃度で使用されることが好ましい。
前記植物がアブラナ科植物、ウリ科植物、ナス科植物、ヒユ科植物、キク科植物、バラ科植物、セリ科植物、リンドウ科植物、ヒガンバナ科植物、ナデシコ科植物、マメ科植物、アジサイ科植物、またはニレ科植物であることが好ましい。
また、本発明は、前記根系形成促進剤を植物幼苗に適用する工程を含む、植物苗の製造方法に関する。
前記根系形成促進剤を植物幼苗に適用する工程において、植物幼苗として挿し木または挿し芽を用いて、該挿し木または挿し芽の茎切断面を根系形成促進剤溶液に浸漬し、該挿し木または挿し芽を水耕または土耕に供することが好ましい。
前記根系形成促進剤溶液中の、炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩の濃度が50~200mMであることが好ましい。
前記挿し木または挿し芽の茎切断面を根系形成促進剤溶液に浸漬する時間が1~30秒であることが好ましい。
また、前記根系形成促進剤を植物幼苗に適用する工程において、灌注法により前記根系形成促進剤を植物幼苗に適用することが好ましい。
前記根系形成促進剤溶液中の、炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩の濃度が0.01~10mMであることが好ましい。
本発明の根系形成促進剤は、植物体に作用してその根系の形成を促進し、苗の安定供給を実現する。
リノール酸による根系形成促進作用を示す。 ヤエナリ根系における根系形成促進効果のサンプル写真を示す。 各種脂肪酸による根系形成促進作用を示す。 各種脂肪酸による根系形成促進作用を示す。 リノール酸ナトリウムの濃度と根の数の関係を示す。 リノール酸ナトリウムの濃度と根の長さの関係を示す。 脂肪酸を含まない栽培液(比較例1)で栽培したヤエナリ幼苗の根系を示す。 3-ピリジンカルボン酸を含む栽培液(比較例6)で栽培したヤエナリ幼苗の根系を示す。 リノール酸を含む根系形成促進剤(実施例3)で栽培したヤエナリ幼苗の根系を示す。 リノール酸および3-ピリジンカルボン酸を含む根系形成促進剤(実施例21)で栽培したヤエナリ幼苗の根系を示す。 植物油の加水分解物による、ハボタン(Ornamental cabbage)、ヤエナリ(Mungbean)、キュウリ(Cucumber)、トウガラシ(Capsicum)の根系形成促進効果を示す。 植物油の加水分解物による、アジサイの根系形成促進効果を示す。 植物油の加水分解物による、トマトの根系形成促進効果を示す。 植物油の加水分解物の濃度と根の数の関係を示す。 植物油の加水分解物の濃度と根の長さの関係を示す。 リノール酸および/または3-ピリジンカルボン酸を含む根系形成促進剤の、根の数への影響を示す。 リノール酸および/または3-ピリジンカルボン酸を含む根系形成促進剤の、根の長さへの影響を示す。
<<根系形成促進剤>>
本発明は、炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩を含む、植物の根系形成促進剤に関する。
本発明の根系形成促進剤は、植物体に作用してその根系の形成を促進する。根系の形成は、発根、および根系の伸長を含む。発根は、茎からの不定根の発根数の増加により評価できる。根の伸長は、根の全長の増大、根重量の増加により評価できる。
<脂肪酸>
本発明の根系形成促進剤は、有効成分として炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩を含む。脂肪酸は、長鎖炭化水素の1価のカルボン酸であり、長鎖炭化水素部分は炭素原子、および水素原子で構成されることが好ましい。よって、炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸には、ケトール構造を有する脂肪酸は含まれない。脂肪酸の炭素数は16~18であるが、根系形成促進効果の観点から、炭素数は18が好ましい。炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が挙げられ、これらの中でもナトリウム塩が好ましい。
炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸の具体例としては、パルミチン酸(C16:0)、パルミトレイン酸(C16:1)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、α-リノレン酸(C18:3)、γ-リノレン酸(C18:3)、ピノレン酸(all-cis-5,9,12-18:3)が挙げられる。これらの中でも、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸が好ましく、リノール酸がより好ましい。
根系形成促進剤における炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸の含有量は特に限定されないが、根系形成促進剤が固体剤型の場合には10~40重量%が好ましい。根系形成促進剤が液体型の場合には5~20重量%が好ましい。
根系形成促進剤は炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩を含んでいればよく、例えば、植物油の分解物も、根系形成促進剤として用いることができる。炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸を構成成分として含む植物油としては、大豆油、松の実油、菜種油、サンフラワー油、サフラワー油、米油、コーン油、パーム油、綿実油、ごま油、落花生油が挙げられる。この中でも、大豆油のアルカリ加水分解物が好ましい。大豆は植物油の中でも生産量が多く入手が容易であり、大豆油の脂肪酸組成は、リノール酸が50%、オレイン酸が20%、パルミチン酸が10%、α-リノレン酸が10%であり、炭素数16~18の脂肪酸を多く含む。よって、大豆油は根系形成促進剤の原料として有用である。
<ピリジンカルボン酸>
根系形成促進剤は、さらに、ピリジンカルボン酸を含んでいてもよい。ピリジンカルボン酸としては、下記式(I):
Figure 0007382053000002
(式(I)中、RはH、COOM、CONH、炭素数1~4のアルキル基であって、それぞれ同じでも、異なっていてもよく、Mは水素、NH 、または1価もしくは2価の金属カチオンである。)で表される化合物が挙げられる。
前記式(I)中、Mは水素、NH 、または1価もしくは2価の金属カチオンである。1価もしくは2価の金属カチオンとしては、Na、K、Mg2+、Ca2+が挙げられる。これらの中でも、MはNa、Kであることが好ましい。
前記式(I)中、RはH、COOM、CONH、炭素数1~4のアルキル基である。炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、およびそれらの水酸基(-OH)の置換体が挙げられる。
ピリジンカルボン酸の具体例としては、3-ピリジンカルボン酸(3-PCA)、2,3-ピリジンジカルボン酸(2,3-PDCA)、3,4-ピリジンジカルボン酸(3,4-PDCA)、3,5-ピリジンジカルボン酸(3,5-PDCA)、2,5-ピリジンジカルボン酸(2,5-PDCA)、2-メチル-3-ピリジンカルボン酸(2-Me-3-PCA)、4-メチル-3-ピリジンカルボン酸(4-Me-3-PCA)、5-メチル-3-ピリジンカルボン酸(5-Me-3-PCA)、6-メチル-3-ピリジンカルボン酸(6-Me-3-PCA)、もしくはその塩が挙げられる。これらの中でも3-ピリジンカルボン酸、2,3-ピリジンジカルボン酸、3,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、または2,5-ピリジンジカルボン酸が好ましく、3-ピリジンカルボン酸、3,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸がより好ましい。なお、IUPAC命名法により2,5-ピリジンジカルボン酸(2,5-PDCA)と表記される化合物は、3,6-ピリジンジカルボン酸と同じ化合物である。
根系形成促進剤におけるピリジンカルボン酸の含有量は特に限定されないが、根系形成促進剤が固体剤型の場合には10~40重量%が好ましい。根系形成促進剤が液体型の場合には5~20重量%が好ましい。
<他の植物成長調整成分>
根系形成促進剤は、上述した以外に、他の植物成長調整成分を含有していてもよい。このような植物成長調整成分としては、インドール酪酸やα-ナフチルアセトアミドのオーキシン類、ベンジルアデニンやフェニル尿素のサイトカイニン類が挙げられる。
<剤型、補助剤>
根系形成促進剤の剤型としては、乳剤、水和剤、懸濁剤、水溶剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤が挙げられる。これらの剤型に製剤するために、固体担体や液体担体等の不活性担体を含有していてもよい。固体担体としては、デンプン、ゼオライト、タルク、酸性白土やケイ酸塩白土などの粘土鉱物が挙げられる。液体担体としては、水、希薄エタノール水溶液が挙げられる。
根系形成促進剤は、製剤用の補助剤を含有していてもよい。このような補助剤としては、界面活性剤、pH調整剤、固形化補助剤、粘着剤が挙げられる。界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステルが挙げられる。
根系形成促進剤単独では水に溶解しにくく前述の濃度とすることができない場合には、溶解用の補助剤を併用して根系形成促進剤を分散させてもよい。溶解用の補助剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。溶解補助剤の濃度は特に限定されないが、1mM(およそ0.01%)以下が好ましい。
<対象植物>
根系形成促進剤の適用対象植物は、特に限定されず、アブラナ科植物、ウリ科植物、ナス科植物、ヒユ科植物、キク科植物、バラ科植物、セリ科植物、リンドウ科植物、ヒガンバナ科植物、ナデシコ科植物、マメ科植物、ニレ科植物、アジサイ科植物、キンポウゲ科植物、ラン科植物、ヒルガオ科植物、ツツジ科植物、カキノキ科植物、ブドウ科植物が挙げられる。
アブラナ科植物としては、キャベツ、ハボタン、ブロッコリー、カリフラワー、ハクサイ、ミズナ、ダイコンが挙げられる。ウリ科植物としては、キュウリ、カボチャ、スイカ、メロン、マクワウリが挙げられる。ナス科植物としては、ナス、トウガラシ、ピーマン、トマトが挙げられる。
ヒユ科植物としては、ホウレンソウが挙げられる。キク科植物としてはレタス、ゴボウ、観賞ギク、ガーベラが挙げられる。セリ科植物としては、ニンジンが挙げられる。リンドウ科植物としては、トルコギキョウが挙げられる。ヒガンバナ科植物としてはネギ、タマネギが挙げられる。ナデシコ科植物としてはカーネーション、ダイアンサス、ナデシコが挙げられる。マメ科植物としては、アズキ、ダイズ、エンドウ、ソラマメ、ササゲ、ヤエナリが挙げられる。バラ科植物としては、バラ、サクラ、イチゴ、ラズベリー、ナナカマドが挙げられる。ニレ科植物としては、ケヤキが挙げられる。アジサイ科植物としては、アジサイが挙げられる。キンポウゲ科植物としてはクリスマスローズが挙げられる。ラン科植物としてはコチョウラン、シンビジウム、デンドロビウムが挙げられる。ヒルガオ科植物としてはアサガオ、サツマイモが挙げられる。ツツジ科植物としてはツツジ、サツキ、シャクナゲ、アザレア、ブルーベリーが挙げられる。カキノキ科植物としてはカキノキが挙げられる。ブドウ科植物 としてはブドウ、ヤマブドウ、ノブドウ、ツタが挙げられる。
これらの中でも、キャベツ、ハクサイ、ホウレンソウ、レタス、キュウリ、カボチャ、メロン、ナス、トマト、ピーマン、トウガラシ、サツマイモ、イチゴ、クリスマスローズ、ラン、アジサイ、ツツジ、アザレア、ブドウ、ラズベリー、ブルーベリーが好ましい。
<土耕・水耕による適用>
根系の形成促進は、本発明の根系形成促進剤を栽培土壌、水耕液、種子、または植物体に適用することによって行われる。
水耕液は、窒素、リン、カリウムに加えて微量栄養素を含み、pHとイオン強度を調整した一般的な水耕液を使用できる。
栽培土壌は、一般的な畑土壌、水田土壌に加えて、顆粒状に焼成した畑土壌を使用できる。ポット苗やプラグ苗の栽培では、有機質培土ピートモス、バーミキュライト、パーライトなどの単独または混合物からなる栽培基質を使用できる。
根系形成促進剤の植物への適用量は、植物種、適用法、植物の栽培形態によっても異なるが、一般的には炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩の最終濃度が1nM~200mMであることが好ましく、1nM~10mMであることがより好ましく、1μM~1mMであることがさらに好ましい。なおこれらの濃度は、根系形成促進剤が炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩を2種以上含む場合にはその合計濃度を指すものとする。
水耕適用する場合には、炭素数16~18の飽和もしくは飽和脂肪酸、またはその塩の最終濃度が、1nM~1mMが好ましく、0.01~1mMがより好ましく、0.1~1mMが更に好ましい。
土耕(土壌)適用する場合には炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩の最終濃度が、0.01~10mMが好ましく、0.5~5mMがより好ましい。
根系形成促進剤を土壌に適用する具体例としては、灌注法が挙げられる。灌注法においては、根系形成促進剤溶液を土壌に灌注してから、その土壌において植物体の栽培を行う。根系形成促進剤溶液を土壌に灌注する方法は特に限定されず、例えば、セルトレイ等の容器に入れた土壌を純水で十分に湿らせた後で、土壌と同程度の体積の根系形成促進剤溶液を散布する方法が挙げられる。灌注法に用いる根系形成促進剤溶液中の、炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩の濃度は、土耕(土壌)適用に関して前述した濃度を用いることができる。
灌注後に栽培する植物体の形態は特に限定されず、種、幼苗等が挙げられるが、顕著な根系形成促進効果により苗の生産性を高めるために、挿し木、挿し芽が好ましい。
<植物体への適用>
根系形成促進剤の、植物への適用部位としては、植物の根、根と茎の接合部(クラウン)、茎、葉が挙げられる。播種前(発芽前)の種子に適用する場合には、根系形成促進剤をコーティング材に混和してコーティング種子を作製する方法が挙げられる。
炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩の濃度は、茎葉散布の場合には0.01~10mMが好ましく、0.5~5mMがより好ましい。種子処理の場合には0.01~10mMが好ましく、0.5~5mMがより好ましい。
根系形成促進剤を植物体に適用する具体例として、植物種子を播種して幼苗を育成し、その幼苗に根系形成促進剤を適用する方法が挙げられる。種子を、栽培土、あるいは有機培養基(ピートモス、バーミキュライト、パーライトなどの混合物)、ロックウール成形物、易分解性成形培土(オアシスなど)をプラグトレイに詰めた発芽床に播種し、幼苗を育成する。プラグトレイは、種子の大きさによって、200穴、128穴、72穴のサイズのものから適切なものを選ぶことができる。種子から発芽し、幼苗の地上部長が0.5~1cmとなった時に、根系形成促進剤をピペットで施用するか、またはじょうろで散布する。施用量は、プラグトレイの大きさに応じて調節することができる。根系形成促進剤の施用量は、育苗期間中に1回の施用によって根系形成促進効果が現れる施用量とすることが好ましい。
幼苗に根系形成促進剤を適用する方法の一つとして、挿し木または挿し芽が挙げられる。この方法では、植物体の茎を切断し、その切断面を根系形成促進剤溶液に浸漬する。その後の栽培方法は限定されず、水耕や土耕が可能である。切断面を根系形成促進剤溶液に浸漬した後、必要に応じて水等により洗浄してもよい。挿し木または挿し芽の茎切断面に適用する炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩の最終濃度の濃度は、50~200mMが好ましく、80mM~200mMがより好ましい。高濃度とすることにより、挿し木または挿し芽の茎切断面を根系形成促進剤溶液に浸漬する時間を短縮でき、作業効率を向上できる。高濃度とするために前述した溶解補助剤を併用してもよい。
作業効率の向上のため、挿し木または挿し芽の茎切断面を根系形成促進剤溶液に浸漬する時間は短い方が好ましく、具体的には1~30秒が好ましい。
植物幼苗の茎の切断面を根系形成促進剤溶液に浸漬した後の、水耕や土耕の条件は特に限定されず、例えば後述する温度で10~40日間栽培すればよい。この水耕や土耕において根系形成促進剤を適用する必要はないが、根系形成促進剤を適用する場合には、水耕や土耕について前述した条件を用いることができる。
<その他の適用条件>
根系形成促進剤が前記ピリジンカルボン酸を含む場合、ピリジンカルボン酸の最終濃度が0.1nM~100mMであることが好ましい。さらに、水耕施用の場合には、ピリジンカルボン酸の最終濃度が0.1nM~10mMであることが好ましく、1nM~1mMであることがより好ましく、1μM~1mMであることがさらに好ましい。土耕(土壌)施用の場合には0.05~10mMが好ましく、0.5~5mMがより好ましい。茎葉散布の場合には1.0~10mMが好ましく、2.0~5mMがより好ましい。種子処理の場合には1.0~10mMが好ましく、2.0~5mMがより好ましい。
根系形成促進剤を植物に適用する際のpH条件は、pH4.5~7.5が好ましく、pH5.5~7.0がより好ましく、pH6.0~6.5がさらに好ましい。pH4.5未満では、ピリジンカルボン酸が遊離酸となり植物体内への取り込み(移行)が減少する傾向があり、また、植物の生育に障がいが現れる傾向がある。pH7.5を超えると植物の生育に障がいが現れる傾向がある。pH条件は、塩酸や硫酸等の酸や、水酸化ナトリウムや水酸化アンモニウム等の塩基の添加により調節できる。
根系形成促進剤を適用した後の栽培温度は、植物種により適宜決定できるが、10~35℃が好ましく、15~30℃がより好ましく、18~27℃がさらに好ましく、21~25℃がさらにより好ましい。
<植物苗の製造方法>
また、本発明は、前記根系形成促進剤を植物苗に適用する工程を含む、植物苗の製造方法に関する。本発明の製造方法により製造される苗の形態としては、種子発芽育成苗、つぎ木苗、セル成型苗、挿し木苗、断根苗が挙げられる。根系形成促進剤の組成、適用対象の植物、適用量としては、前述した組成、植物、適用量を用いることができる。
(1)リノール酸による根系形成促進効果
(1-1)種子の播種と幼苗の育成
植物栽培土を水で湿らせ、ジフィーポットストリップ(No.517、5×5cm区画、6×2穴)に詰めた。この植物栽培土に、ヤエナリ(リョクトウ、緑豆)種子を播き、少量の栽培土で覆土した。播種後、自然光を照射する無加温のガラス温室内で、下胚軸(土表面から子葉までの胚軸)の長さがおよそ5cmであり、子葉から第1本葉までの節間部(上胚軸)の長さが4~6cmである幼苗を育成した。
(1-2)幼苗の根系形成促進
上記ヤエナリ幼苗を採取し水洗して根の土を除いた。片刃剃刀を用いて子葉下2cmで下胚軸を茎と垂直に切断した。
底が先細りになっている深さ5.5cm、内径1.25cmのプラスチックチューブ(内容量5.5ml)に、リノール酸ナトリウムを表1の最終濃度で含む栽培液を5ml入れ、根を切除したヤエナリ幼苗を挿した。この幼苗を、25℃、白色蛍光灯下で、1週間栽培した。栽培開始3日後に、吸水により減少した根系形成促進剤(栽培開始時に使用した根系形成促進剤と同一組成)を2~3ml補充し、プラスチックチューブ内の根系形成促進剤が5mlとなるようにした。
Figure 0007382053000003
(1-3)根系形成促進効果の観察
栽培後のヤエナリ幼苗を撮影した写真を図1に示す。脂肪酸を含まない比較例1の栽培液を用いた結果、ヤエナリ幼苗からはほとんど発根は認められなかった。脂肪酸としてリノール酸ナトリウムを含む実施例1~4の栽培液を用いた結果、発根および根の伸長が認められた。
(2)各種脂肪酸による根系形成促進効果
(2-1)各種脂肪酸を用いたヤエナリ幼苗の栽培
上記(1-1)と同様に種子の播種と幼苗の育成を行った。栽培液として、各種脂肪酸のナトリウム塩を表2の最終濃度で含む栽培液を用いた以外は、上記(1-2)と同様に幼苗の根系形成促進効果を検討した。1回の試行につきヤエナリ幼苗を3個体栽培し、4回の試行を行った。
Figure 0007382053000004
(2-2)根系形成の評価
栽培後のヤエナリ幼苗を3個体並べて写真撮影した。撮影した写真をもとに、根系形成促進効果を「0」~「6」の7段階に評価した。下記のように、根系形成促進効果は、発根と根の伸長を総合考慮して評価した。「0」~「6」の各段階のヤエナリ根系のサンプル写真を図2に示す。
0:発根が認められない
1:長さ約1mmの根が数本発根している
2:発根した根の長さが約2mm
3:発根した根の長さが約2~3mmで根数も増加している
4:発根した根の長さが約5mmを超え根数も増加している
5:発根が茎の切り口だけでなく、切り口から2cm上部にもみられる
6:茎切断面から2cm上までの、旺盛な発根と根の伸長がみられる
3個体の幼苗の点数を合計し、さらに4回の試行の点数を平均することにより根系形成促進効果を評価した。その結果を図3に示す。炭素数8~14の脂肪酸の塩を含む比較例2~5の栽培液を用いた結果、発根および根の伸長は、脂肪酸を含まない比較例1の栽培液と同程度であり、根系形成促進効果は認められなかった。脂肪酸の塩として炭素数16~18である、パルミチン酸ナトリウム(C16:0)、ステアリン酸ナトリウム(C18:0)、オレイン酸ナトリウム(C18:1)、またはリノール酸ナトリウム(C18:2)を含む実施例3、および5~7の栽培液を用いた結果、発根および根の伸長が認められた。特にリノール酸ナトリウムを用いた実施例3では発根および根の伸長が顕著であった。
(2-3)各種脂肪酸による根系形成促進効果の定量
パルミチン酸ナトリウム(C16:0)、ステアリン酸ナトリウム(C18:0)、オレイン酸ナトリウム(C18:1)、リノール酸ナトリウム(C18:2)、またはリノレン酸ナトリウム(C18:3)をそれぞれ1mMの濃度で含む水溶液を作製した。これらの脂肪酸は水溶液を温めると溶解したが、冷却後は沈殿が発生したため、使用時には1mM以下の濃度となった。対照試験では脂肪酸水溶液に代えて水を用いた。
上記脂肪酸水溶液に、根を切除したヤエナリ幼苗を挿し、幼苗を25℃、白色蛍光灯下で5日間栽培した。栽培後の根部を拡大鏡下で観察して0.5mm以上の長さの根を切断し、切断した根の長さの合計値を図4に示す。図4の結果は各試行において5本の幼苗を用いた4回の試行に基づく平均値±標準誤差である。*はDunnett検定による、対照試験に対する有意な差を示す(p<0.05)。脂肪酸水溶液で栽培したヤエナリ幼苗は、対照試験と比較して根の長さが増大していた。特に、リノレン酸ナトリウム(C18:3)で栽培すると根の長さの増大が顕著であった。
(2-4)リノール酸による根系形成促進効果の定量
根系形成促進剤溶液としてリノール酸ナトリウムを0.001mM~1mMの濃度で含む栽培液を用いた以外は、上記(2-1)と同様の操作でヤエナリを栽培した。栽培後の根部を拡大鏡下で観察して0.5mm以上の長さの根を切断した。切断した根の数を図5Aに示し、切断した根の長さの合計値を図5Bに示す。図5A~Bの結果は各試行において5本の幼苗を用いた4回の試行に基づく平均値±標準誤差である。*はDunnett検定による、対照試験(脂肪酸を含まない水による栽培)に対する有意な差を示す(p<0.05)。リノール酸の濃度に依存して、ヤエナリ幼苗の根の数および長さが増大することが確認された。
(3)脂肪酸とピリジンカルボン酸の併用による根系形成促進効果
(3-1)各種脂肪酸を用いたヤエナリ幼苗の栽培
上記(1-1)と同様に種子の播種と幼苗の育成を行った。栽培液として、リノール酸ナトリウムおよび/または3-ピリジンカルボン酸(3-PCA)を表3の最終濃度で含む栽培液を用いた以外は、上記(1-2)と同様に幼苗の根系形成促進効果を検討した。1回の試行につきヤエナリ幼苗を3個体栽培した。
Figure 0007382053000005
(3-2)根系形成促進効果の観察
栽培後のヤエナリ幼苗を写真撮影した。その結果を図6A~Dに示す。図6A~Dにおいて、植物体の下の数値は、上記(2-2)に記載した基準に基づく根系形成の評価値を示す。
ピリジンカルボン酸を含む比較例6の栽培液を用いた場合(図6B)のヤエナリ幼苗の発根および根の伸長は、脂肪酸を含まない比較例1の栽培液を用いた場合(図6A)と同程度であった。
リノール酸ナトリウムを含む実施例3の根系形成促進剤を用いた場合、ヤエナリ幼苗の発根および根の伸長は比較例1および6よりも向上した(図6C)。さらに、リノール酸ナトリウムおよびピリジンカルボン酸を含む実施例8の根系形成促進剤を用いると、ヤエナリ幼苗の発根および根の伸長は実施例3よりも向上し、リノール酸ナトリウムとピリジンカルボン酸の相乗効果が認められた(図6D)。
(4)各種植物に対する根系形成促進効果
キャベツ、キュウリ、ナス、トウガラシの種子を播種して、幼苗を育成し、根を切除したあと根系形成促進剤を適用したところ、実施例1~8と同様の根系形成促進効果が認められた。
(5)植物油の加水分解物による根系形成促進効果
(5-1)ハボタンの挿し木(水耕)
松の実油の加水分解物(約63mMのリノール酸、約38mMのオレイン酸、約14mMのパルミチン酸、約21mMのピノレン酸、及び約7mMのステアリン酸を含み、溶解補助剤として0.01%以下のエチレングリコールモノブチルエーテルを含む。)を水で100~1000倍希釈して根系形成促進剤溶液を作製した。ハボタン(Brassica oleracea var.acephala f.tricolor)を、全長がおおよそ20cmとなるまで栽培土で育成し、得られた幼苗の茎を切断した。切断面を、前述の根系形成促進剤溶液に浸漬して白色蛍光灯下で23℃で3週間栽培した。栽培中に吸水により減少した根系形成促進剤溶液は適宜補充した。栽培後の幼苗を図7左上に示す。スケールバーは3cmを表す。
(5-2)ヤエナリ、キュウリ、トウガラシの挿し木(水耕)
大豆油の加水分解物(約68mMのリノール酸、約28mMのオレイン酸、約14mMのパルミチン酸、約14mMのリノレン酸、及び約7mMのステアリン酸を含み、溶解補助剤として0.01%以下のエチレングリコールモノブチルエーテルを含む。)を水で2000倍希釈して根系形成促進剤溶液を作製した。上記(1)と同様の操作で得られたヤエナリ、キュウリ、トウガラシの幼苗の茎を切断し、その切断面を前述の根系形成促進剤溶液に浸漬して25℃、白色蛍光灯下で、1週間栽培した。栽培中に吸水により減少した根系形成促進剤溶液は適宜補充した。栽培後の幼苗を図7右上、左下、右下に示す。スケールバーは2cmを表す。
大豆油の加水分解物で水耕することにより、ハボタン、ヤエナリ、キュウリ、トウガラシの幼苗において根の形成が促進された。本試験で用いた大豆油の加水分解物は、洗浄剤として使用可能な物である。洗浄作用や抗菌作用を有することから植物の生育には有害と予想されたが、この予想に反して根の形成を促進することができた。
(5-3)アジサイの挿し木(土耕)
72穴のプラグトレイの各セルに、種まき培土を充填し、十分量の灌水を行った。丈5~7cmのアジサイ(品種名アーリーブルー)の挿し芽の茎下端を、(5-2)と同じ大豆油の加水分解物の原液に0秒間(対照)、または10秒間浸漬した後、各セルの培土に対し、各セルあたり1本の植物体の挿し芽を行った。各処理あたり12の植物体を用いた。20℃、白色蛍光灯下の24時間明期、相対湿度90~99%のインキュベーター内で30日間栽培した。栽培後に、各処理あたり8本の植物体を採取した。得られた植物体の写真を図8に示す。対照試験では一部の植物体においてのみ発根と根の伸長がみられた。これに対し、大豆油の加水分解物に浸漬した全ての植物体において、発根と根の伸長が観察された。
(5-4)トマトの挿し木(土耕)
128穴のプラグトレイの各セルに、種まき培土を充填し、十分量の灌水を行った。トマト(品種名Bバリヤー)の種子を1個ずつ播種しバーミキュライトで軽く覆土した。十分量の灌水を行った後、25℃、白色蛍光灯下の16時間明期-8時間暗期、相対湿度90~99%のインキュベーター内で10日間かけて発芽および育成し、草丈5~6cmの植物個体を得た。
植物個体の茎を地上部の生え際で剃刀の刃を用いて切断し、草丈約3cmの断根苗を調製した。断根苗の茎下端を、(5-2)と同じ大豆油の加水分解物の原液に、0秒間(対照)、1秒間、5秒間、または10秒間浸漬した。
これらの断根苗を、128穴のプラグトレイの各セルに充填して十分量の灌水を行った種まき培土に対し、各セルあたり1本の挿し芽を行った。各処理あたり16の植物体を用いた。23℃、白色蛍光灯下の16時間明期-8時間暗期、相対湿度90~99%のインキュベーター内で12日間栽培した。栽培後に、各処理あたり10本の植物体を採取した。得られた植物体の写真を図9に示す。対照試験では一部の植物体においてのみ発根と根の伸長がみられた。これに対し、大豆油の加水分解物に浸漬した全ての植物体において、発根と根の伸長が観察された。発根と根の伸長は、浸漬時間に比例して増大していた。
(6)植物油の加水分解物による根系形成促進効果の定量
(5-2)と同じ大豆油の加水分解物を水で10~10倍希釈して根系形成促進剤溶液を作製した。この根系形成促進剤溶液に、(5-2)と同様の操作でヤエナリの茎の切断面を浸漬して栽培した。栽培後の根部を拡大鏡下で観察して0.5mm以上の長さの根を切断した。切断した根の数を図10Aに示し、切断した根の長さの合計値を図10Bに示す。図10A~Bの結果は各試行において5本の幼苗を用いた4回の試行に基づく平均値±標準誤差である。*はDunnett検定による対照試験(脂肪酸を含まない水による栽培)に対する有意な差を示す(p<0.05)。大豆油の加水分解物の濃度に依存して、ヤエナリ幼苗の根の数および長さが増大することが確認された。
(7)植物油の加水分解物とピリジンカルボン酸の併用による根系形成促進効果
上記(1-1)と同様に種子の播種と幼苗の育成を行った。栽培液として、(5-2)と同じ大豆油の加水分解物(SOHL(Soybean Oil Hydrolysate))を3×10倍希釈した根系形成促進剤溶液、および/または0.3mMの3-ピリジンカルボン酸(3-PCA)を含む栽培液を用いた以外は、上記(1-2)と同様に幼苗の根系形成促進効果を検討した。栽培後の根部を拡大鏡下で観察して0.5mm以上の長さの根を切断した。切断した根の数を図11Aに示し、切断した根の長さの合計値を図11Bに示す。図11A~Bの結果は各試行において5本の幼苗を用いた4回の試行に基づく平均値±標準誤差である。*はDunnett検定による対照試験(水による栽培)に対する有意な差を示す(p<0.05)。
植物油の加水分解物およびピリジンカルボン酸を含む根系形成促進剤を用いると、ヤエナリ幼苗の発根および根の伸長は植物油の加水分解物、またはピリジンカルボン酸を単独で使用した場合よりも向上し、植物油の加水分解物とピリジンカルボン酸の相乗効果が認められた(図11A~B)。

Claims (12)

  1. ケトール構造を有しない、炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩を有効成分として含む、植物の根系形成促進剤(ただし、炭素数4~30の脂肪酸を0.1~8mg/lの溶存酸素濃度環境下でプロテオバクテリアに代謝させることで得られる脂肪酸代謝物を含む植物賦活剤を除く)。
  2. 炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸がリノール酸である、請求項1に記載の植物の根系形成促進剤。
  3. ケトール構造を有しない、炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその、および
    下記式(I):
    Figure 0007382053000006
    (式(I)中、RはH、COOM、CONH、炭素数1~4のアルキル基であって、それぞれ同じでも、異なっていてもよく、Mは水素、NH 、または1価もしくは2価の金属カチオンである。)
    で表される化合物を有効成分として含む、植物の根系形成促進剤。
  4. 前記化合物が、3-ピリジンカルボン酸、2,3-ピリジンジカルボン酸、3,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、もしくは2,5-ピリジンジカルボン酸、またはその塩である、請求項3に記載の植物の根系形成促進剤。
  5. 前記化合物が0.1nM~100mMとなる濃度で使用される、
    請求項3または4に記載の植物の根系形成促進剤。
  6. 前記植物がアブラナ科植物、ウリ科植物、ナス科植物、ヒユ科植物、キク科植物、バラ科植物、セリ科植物、リンドウ科植物、ヒガンバナ科植物、ナデシコ科植物、マメ科植物、アジサイ科植物、またはニレ科植物である、
    請求項1~5のいずれかに記載の根系形成促進剤。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の根系形成促進剤を植物幼苗に適用する工程を含む、植物苗の製造方法。
  8. ケトール構造を有しない、炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩を有効成分として含む、植物の根系形成促進剤を植物幼苗に適用する工程を含む、植物苗の製造方法であって、
    前記根系形成促進剤を植物幼苗に適用する工程において、
    植物幼苗として挿し木または挿し芽を用いて、該挿し木または挿し芽の茎切断面を根系形成促進剤溶液に浸漬し、該挿し木または挿し芽を水耕または土耕に供する、
    植物苗の製造方法。
  9. 前記根系形成促進剤溶液中の、炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩の濃度が50~200mMである、
    請求項8に記載の植物苗の製造方法。
  10. 前記挿し木または挿し芽の茎切断面を根系形成促進剤溶液に浸漬する時間が1~30秒である、
    請求項8または9に記載の植物苗の製造方法。
  11. 前記根系形成促進剤を植物幼苗に適用する工程において、
    灌注法により前記根系形成促進剤を植物幼苗に適用する、
    請求項7に記載の植物苗の製造方法。
  12. 前記根系形成促進剤溶液中の、炭素数16~18の飽和もしくは不飽和脂肪酸、またはその塩の濃度が0.01~10mMである、
    請求項11に記載の植物苗の製造方法。
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