JP7148431B2 - コウヨウザン属植物の苗木の生産方法及びコウヨウザン属植物の生産方法 - Google Patents

コウヨウザン属植物の苗木の生産方法及びコウヨウザン属植物の生産方法 Download PDF

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Description

本発明は、挿し木増殖を利用したコウヨウザン属植物の苗木の生産方法及びその苗木を用いたコウヨウザン属植物の生産方法に関する。
スギやヒノキ等のヒノキ科樹木は、付加価値の高い建築材として広く用いられている。そのため、植栽から伐採までおおよそ40~60年程度の長期間を要しても、林業として利用されてきた。しかしながら、近年、外材の輸入による価格低下等に伴って、長期育林を要する林業が困難になりつつある。そこで、早生樹を育林して伐採回数を増やすことにより、収益性を高める新たな林業が望まれている。
このような早生樹として、ヒノキ科樹木のコウヨウザンが提案されている。コウヨウザンの苗木は、実生又は挿し木により生産されている。ところで、コウヨウザンは、中国中部から南部に分布する針葉樹であり、日本には江戸時代後期に渡来して、神社仏閣等に植栽されている。そのため、国内に存在するコウヨウザンの実生から苗木を生産するには、林業として利用するのに十分な量を確保できない。そこで、コウヨウザンの苗木を挿し木から生産することが検討されている(例えば、非特許文献1参照)。
非特許文献1には、樹冠部の芯立ちした枝、枝性の枝、樹冠部の枝を切断した後に発生する萌芽枝を挿し穂に用いると、苗木が曲がりやすいことが開示されている。苗木が曲がると、建築材として利用可能な樹木が得られず、建築材に利用する林業には不適である。一方、地際から発生した萌芽枝を挿し木に用いると、苗木が芯立ちする、即ち、通直性の苗木が得られることが開示されている。
大分県農林水産研究指導センター 林業研究部、「早生樹を用いた短伐期林業の手引き(コウヨウザン、チャンモドキ編)」、平成27年4月発行
地際から発生した萌芽枝だけを用いて苗木を生産しても、林業として利用するのに十分な量を確保できないのが実状である。
従って、林業として利用するのに十分な量を確保し得る、新たな苗木の生産方法が望まれている。
本発明の課題は、林業として利用するのに十分な量を確保し得る、コウヨウザン属植物の苗木の生産方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、コウヨウザン属植物の母樹から複数の挿し穂を得、得られたそれぞれの挿し穂を発根培養し、育苗することで萌芽枝を発生させ、発生した萌芽枝のうち、地際から発生した萌芽枝を1つのみ選定して、選定した萌芽枝を伸長させて、複数の挿し穂から1本ずつコウヨウザン属植物の苗木を生産することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕~〔5〕を提供する。
〔1〕コウヨウザン属植物の母樹を切断して、複数の挿し穂を得ること、前記複数の挿し穂を、それぞれ挿し床に挿して発根培養すること、発根培養した前記挿し穂を育苗して萌芽枝を発生させること、前記萌芽枝のうち、地際から発生した前記萌芽枝を1つのみ選定するとともに、前記挿し穂及び他の前記萌芽枝を切断すること、並びに選定した前記萌芽枝を伸長させること、を有するコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。
〔2〕前記コウヨウザン属植物の母樹の樹齢が、1~10年生である上記〔1〕に記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。
〔3〕前記挿し穂の長さが、3~10cmである上記〔1〕又は〔2〕に記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。
〔4〕前記選定が、芯立ちした萌芽枝を選定することである上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。
〔5〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法により生産した苗木を用いて育林すること、を有するコウヨウザン属植物の生産方法。
本発明によれば、林業として利用するのに十分な量を確保し得る、コウヨウザン属植物の苗木の生産方法を提供することができる。
図1は、コウヨウザン属植物の母樹の模式図である。 図2は、挿し穂を、挿し床に挿して発根培養している状態を示す模式図である。 図3は、発根培養した挿し穂を育苗して萌芽枝を発生させた状態を示す模式図である。 図4は、地際から発生した萌芽枝を1つのみ選定するとともに、挿し穂及び他の萌芽枝を切断した状態を示す模式図である。 図5は、選定した萌芽枝を伸長させて苗木を生産する状態を示す模式図である。 図6は、コウヨウザンの主軸を切った状態を示す模式図である。 図7は、主軸を切った状態で地際から萌芽枝を発生させた状態を示す模式図である。
[1.コウヨウザン属植物の苗木の生産方法]
本発明のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法は、コウヨウザン属植物の母樹を切断して、複数の挿し穂を得ること、複数の挿し穂を、それぞれ挿し床に挿して発根培養すること、発根培養した挿し穂を育苗して萌芽枝を発生させること、萌芽枝のうち、地際から発生した萌芽枝を1つのみ選定するとともに、挿し穂及び他の萌芽枝を切断すること、並びに選定した萌芽枝を伸長させること、を有する。
母樹として使用するコウヨウザン属植物の好適な条件を以下に記す。
樹齢は、1~10年生であることが好ましい。
主軸の高さは、10~150cmであることが好ましい。
主軸の太さ(直径)は、0.2~1cmであることが好ましい。
以下、図面を参照しつつ、本発明のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
図1は、コウヨウザン属植物の母樹1の模式図である。本発明においては、図1に示すように、コウヨウザン属植物の母樹1から複数の挿し穂を得るために、コウヨウザン属植物の母樹1を切断する。図1では、切断箇所l~lは主軸方向と直交して存在している。しかしながら、切断箇所は、図1に示した箇所に限定されるものではなく、切断箇所を挿し穂として利用できればよい。例えば、切断箇所は、図示はしないけれども、枝でもよい。挿し穂の長さとしては、通常、20cm以下であり、15cm以下が好ましく、10cm以下がより好ましい。下限は、特に限定されないが、通常1cm以上であり、3cm以上が好ましく、5cm以上がより好ましい。切断方法は特に限定されず、はさみ等の切断器具で切断し得る。
なお、コウヨウザン属植物の母樹1は、支持体を含むポット・鉢等の容器3に準備する。
採穂母樹を生育する際の条件を例示する。採穂母樹を生育する際、通常、施肥を行う。施肥を行う場合、肥料は特に限定されないが、速効性肥料若しくは緩効性肥料が好ましい。なお、肥料は、無機肥料又は有機肥料が好ましく、化成肥料がより好ましい。
肥料に含まれる成分は特に限定されないが、例えば、無機成分、銀イオン、抗酸化剤、炭素源、ビタミン類、アミノ酸類、植物ホルモン類等の植物の栄養素の供給源となり得る成分が挙げられる。
肥料の形態も特に限定されない。例えば、固形物(粉剤、粒剤等)、液体(液肥等)のいずれでもよい。
無機成分としては、例えば、窒素、リン、カリウム、硫黄、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、モリブデン、塩素、ヨウ素、コバルト等の元素や、これらを含む無機塩が挙げられる。該無機塩としては、例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ホウ酸、三酸化モリブデン、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化コバルト等やこれらの水和物が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸塩が挙げられる。アスコルビン酸は、培地への残留性が低いため、環境汚染を抑制できる。そのため、抗酸化剤としては、アスコルビン酸が好ましい。
炭素源としては、例えば、ショ糖等の炭水化物とその誘導体;脂肪酸等の有機酸;エタノール等の1級アルコール等の化合物が挙げられる。
ビタミン類としては、例えば、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB4)、ピリドキサール、ピリドキサミン、パントテン酸カルシウム、イノシトール、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、及びリボフラビン(ビタミンB2)が挙げられる。
アミノ酸類としては、例えば、グリシン、アラニン、グルタミン酸、システイン、フェニルアラニン、及びリジンが挙げられる。
施肥方法は、特に限定されず、用いる肥料に適した施肥条件とすればよい。例えば、採穂母樹の支持体及び/又は採穂母樹に肥料を適量散布、塗布、噴霧する方法が挙げられる。施肥の回数は、採穂予定日より前1年間(前年に採穂を行った場合、通常は、前年の採穂から採穂予定日までの間)に少なくとも1回行い、2回以上行うことが好ましい。施肥方法は、施肥の回数ごとに異なってもよいし、同じでもよい。
採穂母樹の生育における支持体は、通常植物の生育に用いられるものであればよい。例えば、砂、土(例、赤玉土、鹿沼土)等の自然土壌が挙げられる。支持体の別の例としては、籾殻燻炭、ココナッツ繊維、バーミキュライト、パーライト、ピートモス、ガラスビーズ等の人工土壌;発泡フェノール樹脂、ロックウール等の多孔性成形品;固化剤(例、寒天又はゲランガム)が挙げられる。支持体の別の例から選ばれる少なくとも一種を自然土壌に換えて、又は自然土壌と共に用いてもよい。支持体は容器に格納されていてもよい。容器としては、従来慣用の容器を用いればよい。
採穂母樹の生育のためのその他の条件(例、温度、湿度、光)は、樹種によって適宜設定できる。例えば、自然条件でもよいし、人為的に制御してもよい。温度の制御条件としては、例えば、日中温度15~35℃(好ましくは20~30℃)、夜間温度5~25℃(好ましくは10~25℃)が挙げられる。生育場所も特に限定されず、閉鎖空間(例、ビニールハウス内、人工太陽光室内、温室内、屋内)及び解放空間(例、屋外)のいずれでもよい。必要に応じて、生長を促進するための処理(例えば、根切り)を施してもよい。
採穂予定日は、例えば、3月~10月が好ましく、4月~7月がより好ましい。採穂母樹を実生で生産する場合、上記の範囲内に採穂予定日を設定することがさらに好ましい。実際の採穂日は、採穂予定日の前後10日間の間の日であればよく、採穂予定日当日が好ましい。
図2は、挿し穂11を、挿し床に挿して発根培養している状態を示す模式図である。本発明においては、コウヨウザン属植物の母樹を切断して得た挿し穂11を、挿し床に挿して発根培養する。図2において、挿し穂11は、支持体を含むポット・鉢等の容器13の挿し床に挿して発根培養している。支持体の詳細は、上記した内容と同じである。
図2において、コウヨウザン属植物の母樹を切断して得られる複数の挿し穂のうち、一つの挿し穂11だけを挿し床に挿して発根培養している状態を示す。しかしながら、本発明は、コウヨウザン母樹を切断して得られる挿し穂を、それぞれ挿し床に挿して発根培養することができる。即ち、切断して得られる挿し穂の数と同じか、それより少ない数だけ、挿し穂を発根培養することができる。
図2において、挿し穂11には、複数の葉2が存在している。しかしながら、本発明においては、挿し穂11を挿し床13に挿す際に、葉2を切除してもよい。挿し穂の基部(支持体に挿し付ける側、例えば、基部先端から3cm程度)にも葉が存在する場合、葉は、はさみ等の切断器具で切除することが好ましい。
挿し穂からの発根培養は、常法により行えばよい。例えば、支持体に挿し穂を挿し付けて発根培養する方法が挙げられる。支持体は、必要に応じて用いられる添加剤を含んでいてもよい。また、培養容器に格納されてもよい。
支持体は、挿し穂及び培地を支持(保持)できればよい。中でも、吸水性及び通気性を有し、添加剤を挿し穂に効率よく吸収させ得る、従来慣用の支持体を用いることができる。支持体の例は、採穂母樹の生育の際に用い得る支持体の例と同様であり、好ましくは自然土壌と人工土壌の組み合わせである。自然土壌としては、赤玉土が好ましい。人工土壌としては、ピートモスが好ましい。
培地としては、例えば、植物組織培養用の公知の培地、水性溶媒(例、水)が挙げられる。中でも、水性溶媒が好ましく、水がより好ましい。植物組織培養用培地としては、例えば、MS培地、リンスマイヤースクーグ培地、ホワイト培地、ガンボーグのB-5培地、ニッチニッチ培地を挙げることができる。中でも、MS培地及びガンボーグのB-5培地が好ましい。これらの培地は、必要に応じて適宜希釈して用いることができる。
培地は、液体培地、固体培地のいずれであってもよい。但し、液体培地の方が作業効率及び移植時に根を傷つけることが少ない点で好ましい。液体培地は、培地組成を混合し調製してそのまま用い得る。固体培地は、液体培地と同様に培地組成を混合し調製すると同時に、或いは調製後に、固化剤(例、寒天、ゲランガム)で固化して使用し得る。
固化剤の添加量は、固化剤の種類、培地の組成等の条件によって適宜設定できる。寒天の培地に対する添加量は、0.5~1重量%が好ましい。ゲランガムの培地に対する添加量は、0.2~0.3重量%が好ましい。
添加剤は、挿し穂の発根の際に用いられる添加剤であればよい。例えば、肥料(例、無機成分、銀イオン、抗酸化剤、炭素源、ビタミン類、アミノ酸類、植物ホルモン類)、上記以外の発根促進剤(例、国際公開第2011/136285号、特開2012-232907号公報、特開2013-95664号公報等の文献に記載の剤)等が挙げられる。
各成分の形態は特に限定されず、固形物(例、粉剤、粒剤)、又は液体(例、液肥)のいずれでもよい。また、添加剤を構成する成分は、支持体に混合、吸収又は散布されてもよく、挿し穂の少なくとも一部に直接散布、塗布又は噴霧されてもよい。
添加剤は、それぞれを混合して又は少なくとも一部を別個に、支持体に含ませてもよいし、植物組織培養用の公知の培地又は水性溶媒(例、水)に添加して支持体に含ませてもよいし、挿し穂(好ましくは基部)に直接適用してもよい。
無機成分は、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。無機成分の例は、上記の例と同様である。中でも、無機成分は、窒素、リン、カリウム、窒素を含む無機塩、リンを含む無機塩、及びカリウムを含む無機塩から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
無機成分1種を上述の公知の培地に含ませる場合、培地中の量は、0.1μM~100mMが好ましく、1μM~100mMがより好ましい。2種以上の組み合わせの場合、それぞれの培地中の量は、0.1μM~100mMが好ましく、1μM~100mMがより好ましい。
銀イオンは、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。銀イオンとしては、例えば、チオ硫酸銀(STS、AgS)、硝酸銀等の銀化合物(銀イオン源)が挙げられる。中でも、銀イオンは、STSが好ましい。STSは培地中で、チオ硫酸銀イオンの形態を取り、マイナスに帯電していると推測される。そのため、健全な根の発根及び伸長の促進に寄与し得る。銀イオンを上述の培地に含ませる場合、銀イオン源の培地中の量は、0.5μM~6μMが好ましく、2μM~6μMがより好ましい。
抗酸化剤は、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。抗酸化剤の例は、上記の例と同様である。抗酸化剤を培地中に含ませる場合、その量は、5mg/l~200mg/lが好ましく、20mg/l~100mg/lがより好ましい。
炭素源は、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。炭素源の例は、上記の例と同様である。炭素源を培地中に含ませる場合、その量は、1g/l~100g/lが好ましく、10g/l~100g/lがより好ましい。
炭酸ガスを供給して発根培養を行う場合、発根培地は炭素源を含まなくてもよく、含まないことが好ましい。ショ糖等の炭素源となりうる有機化合物は微生物の炭素源ともなるので、これらを添加した発根培地を用いる場合、無菌環境下で栽培を行う必要がある。しかしながら、炭酸ガスを供給して発根培養を行うことにより、発根培地への炭素源の添加を省略でき、非無菌環境下での培養が可能となる。
ビタミン類は、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。ビタミン類の例は、上記の例と同様である。
ビタミン1種を上述の培地に添加する場合、その量は、0.01mg/l~200mg/lが好ましく、0.02mg/l~100mg/lがより好ましい。2種以上の組み合わせを添加する場合、それぞれの量は、0.01mg/l~150mg/lが好ましく、0.02mg/l~100mg/lがより好ましい。
アミノ酸類は、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。アミノ酸類の例は、上記の例と同様である。
アミノ酸類1種を上述の培地に添加する場合、その量は、0.1mg/l~1000mg/lが好ましい。2種以上の組み合わせを添加する場合、それぞれの培地中の量は、0.2mg/l~1000mg/lが好ましい。
植物ホルモンとしては、例えば、オーキシン及びサイトカイニン等の発根促進剤が挙げられる。植物ホルモンは、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。中でも、オーキシン、又はオーキシンとサイトカイニンの組み合わせを含むことが好ましい。
オーキシンとしては、例えば、ナフタレン酢酸(NAA)、インドール酢酸(IAA)、p-クロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4D)、インドール酪酸(IBA)及びこれらの誘導体等が挙げられる。オーキシンは、これらのうちの1種でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
サイトカイニンとしては、例えば、ベンジルアデニン(BA)、カイネチン、ゼアチン及びこれらの誘導体が挙げられる。サイトカイニンは、これらのうちの1種でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
植物ホルモンを1種類培地中に添加する場合、その量は0.001mg/l~10mg/lが好ましく、0.01mg/l~10mg/lがより好ましい。2種以上の組み合わせを添加する場合、それぞれの量は0.001mg/l~10mg/lが好ましく、0.01mg/l~10mg/lがより好ましい。
植物ホルモンの添加方法は、市販品の説明書に従えばよい。例えば、植物ホルモンの粉末(例えば、オーキシン)を挿し付け前に挿し穂の基部(好ましくは物理的刺激を加えた基部)に直接塗布する方法、支持体に添加する方法が挙げられる。
発根培地の添加時期は、特に限定されない。例えば、発根培養の開始時、培養の途中が挙げられる。
添加方法は、成分の態様にもよるが、例えば、散布、湿潤、噴霧が挙げられる。添加回数も特に限定されず、1回のみ(培養開始時)でもよいし、2回以上(培養開始時及び途中)でもよい。また、発根培地を構成する成分をまとめて添加してもよいし、それぞれ別個に添加してもよいし、途中で適宜交換又は補充してもよい。
培養容器に支持体を格納することにより、発根後の挿し穂の生育を円滑に行うことができる。培養容器は、通水口(網、細孔)を有することが好ましい。これにより、底面灌水に用いることができる。例えば、コンテナ(例、特開2017-079706号公報に記載されたコンテナ、マルチキャビティコンテナ(JFA-150、JFA-300)等)、セルトレー、育苗ポット、プランター、及びバット(底面又は側面に網状の開口部を有する箱型容器)が挙げられる。
1つの容器に挿し穂1株ずつ植え付けるタイプの培養容器でもよいし、1つの容器に2株以上の挿し穂を植え付けるタイプの培養容器でもよい。培養容器の材質は特に限定はなく、例えば、樹脂、ガラス、木材が挙げられる。
挿し穂の支持体への挿し付けは、支持体の種類、環境、挿し穂の種類等の条件により適宜選択すればよい。例えば、挿し穂の基部を含む一部(例えば基部から1cm~5cm)を支持体に挿し付ける方法が挙げられる。
挿し穂の基部とは、挿し穂の一端であって根が形成される領域(葉の形成される端部に対し反対側)を意味する。
挿し付ける際、挿し穂への物理的刺激を加えて(例、基部に傷をつける)もよい。これにより、発根率を向上させることができる。基部につける傷のサイズ(例、大きさ、形状)は、特に限定されない。例えば、挿し穂の基部に十字型の傷を付けることができる。傷を付ける際の器具としては例えば、ハサミ、ナイフが挙げられる。挿し穂の基部のうち支持体に挿し付ける部分の葉は、切除しておくことが好ましい。
発根の際の灌水方法としては、例えば、頭上灌水及び底面灌水のいずれでもよい。中でも、底面灌水が好ましい。底面灌水の方法としては、例えば、挿し穂が挿し付けられた支持体を格納している培養容器(通水口を具備)を水に浸漬する方法が挙げられる。
灌水量は、挿し穂が実質的に湿潤すればよく、特に限定されない。発根培養工程においては、吸水性部材を介して挿し穂に潅水してもよい。すなわち、吸水性部材に給水し、水分が、培地と吸水性部材とが接する部分を介して挿し穂に供給される。吸水性部材への給水は、培地が湿潤するように行うこと、及び/又は、吸水性部材が均一に吸水する状態となるように行うこと、が好ましい。これにより、培地の水分環境を適度、一定且つ均一に保持することができる。潅水作業は、手潅水及び自動潅水装置のいずれで行ってもよい。
挿し穂を発根させるための発根培養期間は、少なくとも発根が観察されるまで続ければよく、根が充実するまで続けることが好ましい。通常は2週間~10ヶ月であり、4週間~8ヶ月が好ましく、1ヶ月~8ヶ月がより好ましい。
前述以外の発根のための条件(例、温度、光、炭酸ガス濃度、湿度)は、挿し穂の部位、サイズ、添加剤の種類等により適宜決定し得る。例えば、以下の通りである。
温度は、23~28℃であることがより好ましい。
挿し穂に照射する光は、自然光でもよいし、光強度が人為的に調整された光でもよい。人為的に調整する方法としては、例えば、光強度の調整、波長成分の調整、遮光が挙げられる。
光強度(光合成有効光量子束密度)は、10μmol/m/s~1000μmol/m/sが好ましく、50μmol/m/s~500μmol/m/sがより好ましい。
照射する光は、650nm~670nmの波長成分と450nm~470nmの波長成分とを含む光が好ましく、両者の割合は、好ましくは9:1~7:3、より好ましくは9:1~8:2である。
遮光を行う場合、遮光率は、30~70%が好ましく、40~60%がより好ましい。
発根の際の炭酸ガス濃度は、通常、300~2000ppmであり、800~1500ppmが好ましい。炭酸ガス濃度は、二酸化炭素透過性の膜を備えた培養容器を用いることにより、膜内の二酸化炭素濃度を上記範囲に調節する(例えば、人工気象器などの設備内に載置)ことが挙げられる。
湿度は、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。これにより、植物からの発根を促進できる。上限は特に制限はない。
培養容器はビニールハウス内に設置することが好ましい。これにより湿度、温度等の条件の制御が容易となり得る。
挿し付けの時期は、採穂と同時でもよいし、採穂後の適当な時期(例えば、採穂から6か月以内、5か月以内、4か月以内、3か月以内、又は2か月以内の時期)でもよい。中でも、採穂と同時が好ましい。採穂後の適当な時期に挿し付けを行う場合、挿し付けまでの間、挿し穂を冷蔵(例えば4℃以下)することが好ましい。これにより、挿し穂の発根能力を維持することができる。
図3は、発根培養した挿し穂11を育苗して萌芽枝21,31を発生させた状態を示す模式図である。本発明においては、図3に示すように、挿し穂11を育苗すると、地際から萌芽枝21が発生するとともに、主軸からも萌芽枝31が発生する。
図3において、地際から発生した萌芽枝21は一つのみ示している。しかしながら、地際から発生する萌芽枝21は、通常、複数存在する。
なお、挿し穂11から萌芽枝21,31を発生させる際の条件は、採穂母樹の生育のための条件と同一であってもよく、一部変更してもよい。
育苗は、常法により行えばよい。例えば、発根培養を行った支持体でそのまま行ってもよく、他の支持体に植え替えて行ってもよい。
本発明においては、萌芽枝21,31のうち、地際から発生した萌芽枝21を1つのみ選定するとともに、挿し穂11及び他の萌芽枝31を切断する。図3では、切断箇所l’を示している。しかしながら、切断箇所は、萌芽枝21が生育して苗木を生産し得る限り、図の位置に限定されない。切断方法は特に限定されず、はさみ等の切断器具で切断し得る。
選定は、芯立ちした萌芽枝を選定することが好ましく、芯立ちを保っている萌芽枝を選定することがより好ましい。これにより、選定した萌芽枝を伸長させて芯立ちした苗木を得ることができる。萌芽枝21を1つのみ選定した後、地際から萌芽枝が再度発生した場合には、再度発生した萌芽枝をはさみ等の切断器具を用いて切断する。
図4は、地際から発生した萌芽枝21を1つのみ選定するとともに、挿し穂及び他の萌芽枝を切断した状態を示す模式図である。本発明においては、萌芽枝21、31のうち、地際から発生した萌芽枝21を1つのみ選定するとともに、挿し穂11及び他の萌芽枝31を切断する。
切断方法は特に限定されず、はさみ等の切断器具で切断し得る。挿し穂11及び他の萌芽枝31は、萌芽枝の芽の上1~3cm程度で切断することができる。
図5は、選定した萌芽枝21を伸長させて苗木を生産する状態を示す模式図である。本発明においては、地際から発生した萌芽枝21を1つのみ選定して伸長させることで、芯立ちするコウヨウザン属植物の苗木を生産し得る。
伸長は、培養容器から育苗容器、苗畑(用土:例えば前述の自然土壌)等に移植して行ってもよいし、培養容器中でそのまま行ってもよい。
施肥方法は特に限定されず、用いる肥料に適した施肥条件(施肥間隔、施肥量、施肥方法)とすればよい。肥料成分の例は、上記の例と同じである。
伸長のための条件(例、温度、湿度、光照射、灌水条件)は、適宜決定することができる。発根培養の際と同じ条件としてもよいし、異なる条件としてもよい。苗がある程度まで大きくなった時点で(例えば、30cm以上又は35cm以上)、植林等の目的に用いる苗を得ることができる。
本発明のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法の利点は、以下の通りである。一つのコウヨウザン属植物を複数個所切断することにより、複数の挿し穂を得ることができる。そして、複数の挿し穂をそれぞれ挿し床に挿して発根培養した後、育苗することで、それぞれの挿し床の地際から発生する萌芽枝21を複数得ることができる。そして、選定した地際から発生した萌芽枝21のみを伸長させて複数苗木を生産することで、芯立ちするコウヨウザン属植物の苗木を複数得ることができる。従って、林業に使用するコウヨウザン属植物の苗木の量を十分確保し得る。
これに対して、従来公知の方法では、林業に使用するのに十分な量の苗木を確保し難いという課題が存在することを、図面を用いつつ説明する。
上記した通り、樹冠部の芯立ちした枝、枝性の枝、樹冠部の枝を切断した後に発生する萌芽枝を挿し穂に用いて育苗すると、苗木が曲がりやすいことが知られている。そのため、挿し穂を発根培養した際に地際から新たに発生する萌芽枝を育苗する必要がある。
地際から発生した萌芽枝を挿し穂に用いる従来の方法でも、最初にコウヨウザン属植物の母樹1を準備する。コウヨウザン属植物の母樹1の準備については、本発明のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法で、上記したことと同じことがいえる。
図6は、コウヨウザン属植物の母樹1の主軸を切った状態を示す模式図である。従来の方法では、地際から発生した萌芽枝を挿し穂に用いる場合、主軸を適切な長さmで切断する。切断は、はさみ等の切断器具で切断し得る。
なお、適切な長さmは、通常、その大きさが10~30cmとなることをいう。
図7は、主軸を切った状態で地際から複数の萌芽枝41を発生させた状態を示す模式図である。図6の状態で生育すると、図7に示すように、地際から複数の萌芽枝41が発生する。なお、この際、コウヨウザン属植物の母樹1の主軸に存在する複数の葉2の根元の芽からも複数の萌芽枝51が発生する。
主軸を切った状態でコウヨウザン属植物の母樹1を生育する際の条件は、上記の条件と同じである。
従来の方法であると、地際から発生する萌芽枝41と、主軸の複数の葉2の根元の芽から発生する萌芽枝51が取れる。しかしながら、主軸の複数の葉2の根元の芽から発生する萌芽枝51を挿し穂に用いると、苗木が曲がりやすいという問題がある。
従って、地際から発生する萌芽枝41を利用する必要がある。しかしながら、地際から発生する萌芽枝41は、その数が限られており、林業に使用するのに十分な量の苗木を確保し難い。
[2.コウヨウザン属植物の生産方法]
本発明のコウヨウザン属植物の生産方法は、本発明のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法により生産した苗木を用いて育林する工程を有する。
上記した通り、本発明のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法によれば、1つの採穂母樹から複数の苗木を生産することができる。即ち、林業として利用するのに十分な量の苗木を確保し得る。加えて、本発明のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法により生産した苗木は、育苗の過程で曲がりにくい芯立ちした苗木である。そのため、当該苗木を用いてコウヨウザン属植物を生産すると、建築材に適したコウヨウザン属植物を生産し得る。
従って、本発明のコウヨウザン属植物の生産方法は、早生樹を育林して伐採回数を増加することにより、収益性を高める新たな林業として期待し得る。
苗木を育林することは、特に限定されるものではない。ある程度生長した苗木を育林地に運んで植える等が挙げられる。育林地は、適宜変更し得る。なお、苗木を植える際、野ウサギ等の食害を防止する観点から、ツリーシェルター等を利用してもよい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。
[発根率]:挿し穂を調製した挿し床に挿しつけて、通常のガラス温室内で2か月生育した後、セルトレー内から掘り起こし、発根培養した挿し穂数を挿し床に挿しつけた挿し穂の数で割ることで算出した。
[芯立ち率]:発根した挿し穂をコンテナに移植後、1か月間、萌芽枝を伸長させた。1か月が経過した時点で芯立ちしていることを確認した数を、移植した数で割ることで算出した。
(実施例1:節差し)
コウヨウザンの播種後2年目の実生苗の鉢植えを採穂母樹として使用した。採穂母樹の主軸及び枝を各5cm程度に切断した。挿し付け基部から下、2~3cm程度についている葉を切除して挿し穂(65本)を得た。
培養容器としてセルトレーを用いた。赤玉小粒土(簗島商事社製)とピートモス(トーホー社製)を1対1に混合し、セルトレーに充填して挿し床を調製した。上記で得た65本の挿し穂の基部に、ルートン(登録商標)(石原バイオサイエンス社製、植物ホルモンNAAを含む白色粉末、NAAの濃度は0.4%)の粉末を5~10mg塗布した後、該挿し穂を基部から1.5~2.5cmのところまで挿し床に挿しつけて発根培養を行った。発根培養は、通常のガラス温室内で8月から10月まで行った。
発根培養後、セルトレーから掘り出し、発根培養した61本を容量300ccのコンテナに移植して育苗した。コンテナに移植後、地際から萌芽枝の芽が発生した時点で、地際から発生した芯立ちした萌芽枝を1つのみ選定するとともに、挿し穂及び他の萌芽枝を萌芽枝の芽の直上で切断した。当該萌芽枝を伸長させたところ、芯立ちした苗木は52本であった。
(比較例1:無処理)
コウヨウザンの播種後2年目の実生苗の鉢植えについて、地際5cm程度のところで切断し、採穂母樹とした。2か月が経過した時点で地際から発生した萌芽枝を、頂芽を含む5cm程度の大きさで採穂し、下部2~3cmにある葉を切除して、挿し穂(33本)を得た。
上記で得た33本の挿し穂の基部にルートン(登録商標)(石原バイオサイエンス社製、植物ホルモンNAAを含む白色粉末、NAAの濃度は0.4%)の粉末を5~10mg塗布した後、挿し穂を基部から1.5~2.5cmのところまで挿し床に挿しつけて発根培養を行った。発根培養は、通常のガラス温室内で8月から10月まで行った。
なお、挿し床は、実施例1と同様に調製した。
発根培養後、セルトレーから掘り出し、発根培養した30本を容量300ccのコンテナに移植して育苗した。コンテナに移植後、1か月間、育苗して萌芽枝を発生させた(1本)。当該萌芽枝を伸長させたところ、芯立ちした苗木は27本であった。
(比較例2:節差し、萌芽枝の選定なし)
コウヨウザンの播種後2年目の実生苗の鉢植えを採穂母樹として使用した。採穂母樹の主軸及び枝を各5cm程度に切断した。挿し付け基部から下、2~3cm程度についている葉を切除して挿し穂(60本)を得た。
培養容器としてセルトレーを用いた。赤玉小粒土(簗島商事社製)とピートモス(トーホー社製)を1対1に混合し、セルトレーに充填して挿し床を調製した。上記で得た65本の挿し穂の基部に、ルートン(登録商標)(石原バイオサイエンス社製、植物ホルモンNAAを含む白色粉末、NAAの濃度は0.4%)の粉末を5~10mg塗布した後、該挿し穂を基部から1.5~2.5cmのところまで挿し床に挿しつけて発根培養を行った。発根培養は、通常のガラス温室内で8月から10月まで行った。
発根培養後、セルトレーから掘り出し、発根培養した56本を容量300ccのコンテナに移植して育苗した。コンテナに移植後、地際から萌芽枝の芽が発生した時点で、萌芽枝の選定を行わなかった以外は、実施例1と同様にした。当該萌芽枝を伸長させたところ、芯立ちした苗木は3本であった。
実施例1及び比較例1~2の処理方法、萌芽枝の選定の有無、採穂数、発根率、芯立ち率、及び芯立ちした苗木数の結果を表1に記す。
Figure 0007148431000001
表1からわかるように、本発明のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法によれば、従来の方法と比べて、芯立ちした苗木を多く得ることができるので、コウヨウザン属植物の苗木の生産量を向上し得る。
1:コウヨウザン属植物の母樹、2、22、32、42、52:葉、3、13:容器、11:挿し穂、21、31、41、51:萌芽枝、l、l、l、l、l、l’:切断箇所。

Claims (5)

  1. コウヨウザン属植物の母樹を切断して、複数の挿し穂を得ること、
    前記複数の挿し穂を、それぞれ挿し床に挿して発根培養すること、
    発根培養した前記挿し穂を育苗して萌芽枝を発生させること、
    前記萌芽枝のうち、地際から発生した前記萌芽枝を1つのみ選定するとともに、前記挿し穂及び他の前記萌芽枝を切断すること、並びに
    選定した前記萌芽枝を伸長させること、を有するコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。
  2. 前記コウヨウザン属植物の母樹の樹齢が、1~10年生である請求項1に記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。
  3. 前記挿し穂の長さが、3~10cmである請求項1又は2に記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。
  4. 前記選定が、芯立ちした萌芽枝を選定することである請求項1~3のいずれか1項に記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法により生産した苗木を用いて育林すること、を有するコウヨウザン属植物の生産方法。
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