JP7148431B2 - コウヨウザン属植物の苗木の生産方法及びコウヨウザン属植物の生産方法 - Google Patents
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Description
従って、林業として利用するのに十分な量を確保し得る、新たな苗木の生産方法が望まれている。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕~〔5〕を提供する。
〔1〕コウヨウザン属植物の母樹を切断して、複数の挿し穂を得ること、前記複数の挿し穂を、それぞれ挿し床に挿して発根培養すること、発根培養した前記挿し穂を育苗して萌芽枝を発生させること、前記萌芽枝のうち、地際から発生した前記萌芽枝を1つのみ選定するとともに、前記挿し穂及び他の前記萌芽枝を切断すること、並びに選定した前記萌芽枝を伸長させること、を有するコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。
〔2〕前記コウヨウザン属植物の母樹の樹齢が、1~10年生である上記〔1〕に記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。
〔3〕前記挿し穂の長さが、3~10cmである上記〔1〕又は〔2〕に記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。
〔4〕前記選定が、芯立ちした萌芽枝を選定することである上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。
〔5〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法により生産した苗木を用いて育林すること、を有するコウヨウザン属植物の生産方法。
本発明のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法は、コウヨウザン属植物の母樹を切断して、複数の挿し穂を得ること、複数の挿し穂を、それぞれ挿し床に挿して発根培養すること、発根培養した挿し穂を育苗して萌芽枝を発生させること、萌芽枝のうち、地際から発生した萌芽枝を1つのみ選定するとともに、挿し穂及び他の萌芽枝を切断すること、並びに選定した萌芽枝を伸長させること、を有する。
母樹として使用するコウヨウザン属植物の好適な条件を以下に記す。
樹齢は、1~10年生であることが好ましい。
主軸の高さは、10~150cmであることが好ましい。
主軸の太さ(直径)は、0.2~1cmであることが好ましい。
以下、図面を参照しつつ、本発明のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
なお、コウヨウザン属植物の母樹1は、支持体を含むポット・鉢等の容器3に準備する。
肥料の形態も特に限定されない。例えば、固形物(粉剤、粒剤等)、液体(液肥等)のいずれでもよい。
図2において、コウヨウザン属植物の母樹を切断して得られる複数の挿し穂のうち、一つの挿し穂11だけを挿し床に挿して発根培養している状態を示す。しかしながら、本発明は、コウヨウザン母樹を切断して得られる挿し穂を、それぞれ挿し床に挿して発根培養することができる。即ち、切断して得られる挿し穂の数と同じか、それより少ない数だけ、挿し穂を発根培養することができる。
培地は、液体培地、固体培地のいずれであってもよい。但し、液体培地の方が作業効率及び移植時に根を傷つけることが少ない点で好ましい。液体培地は、培地組成を混合し調製してそのまま用い得る。固体培地は、液体培地と同様に培地組成を混合し調製すると同時に、或いは調製後に、固化剤(例、寒天、ゲランガム)で固化して使用し得る。
固化剤の添加量は、固化剤の種類、培地の組成等の条件によって適宜設定できる。寒天の培地に対する添加量は、0.5~1重量%が好ましい。ゲランガムの培地に対する添加量は、0.2~0.3重量%が好ましい。
各成分の形態は特に限定されず、固形物(例、粉剤、粒剤)、又は液体(例、液肥)のいずれでもよい。また、添加剤を構成する成分は、支持体に混合、吸収又は散布されてもよく、挿し穂の少なくとも一部に直接散布、塗布又は噴霧されてもよい。
無機成分1種を上述の公知の培地に含ませる場合、培地中の量は、0.1μM~100mMが好ましく、1μM~100mMがより好ましい。2種以上の組み合わせの場合、それぞれの培地中の量は、0.1μM~100mMが好ましく、1μM~100mMがより好ましい。
炭酸ガスを供給して発根培養を行う場合、発根培地は炭素源を含まなくてもよく、含まないことが好ましい。ショ糖等の炭素源となりうる有機化合物は微生物の炭素源ともなるので、これらを添加した発根培地を用いる場合、無菌環境下で栽培を行う必要がある。しかしながら、炭酸ガスを供給して発根培養を行うことにより、発根培地への炭素源の添加を省略でき、非無菌環境下での培養が可能となる。
ビタミン1種を上述の培地に添加する場合、その量は、0.01mg/l~200mg/lが好ましく、0.02mg/l~100mg/lがより好ましい。2種以上の組み合わせを添加する場合、それぞれの量は、0.01mg/l~150mg/lが好ましく、0.02mg/l~100mg/lがより好ましい。
アミノ酸類1種を上述の培地に添加する場合、その量は、0.1mg/l~1000mg/lが好ましい。2種以上の組み合わせを添加する場合、それぞれの培地中の量は、0.2mg/l~1000mg/lが好ましい。
オーキシンとしては、例えば、ナフタレン酢酸(NAA)、インドール酢酸(IAA)、p-クロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4D)、インドール酪酸(IBA)及びこれらの誘導体等が挙げられる。オーキシンは、これらのうちの1種でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
サイトカイニンとしては、例えば、ベンジルアデニン(BA)、カイネチン、ゼアチン及びこれらの誘導体が挙げられる。サイトカイニンは、これらのうちの1種でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
植物ホルモンを1種類培地中に添加する場合、その量は0.001mg/l~10mg/lが好ましく、0.01mg/l~10mg/lがより好ましい。2種以上の組み合わせを添加する場合、それぞれの量は0.001mg/l~10mg/lが好ましく、0.01mg/l~10mg/lがより好ましい。
添加方法は、成分の態様にもよるが、例えば、散布、湿潤、噴霧が挙げられる。添加回数も特に限定されず、1回のみ(培養開始時)でもよいし、2回以上(培養開始時及び途中)でもよい。また、発根培地を構成する成分をまとめて添加してもよいし、それぞれ別個に添加してもよいし、途中で適宜交換又は補充してもよい。
1つの容器に挿し穂1株ずつ植え付けるタイプの培養容器でもよいし、1つの容器に2株以上の挿し穂を植え付けるタイプの培養容器でもよい。培養容器の材質は特に限定はなく、例えば、樹脂、ガラス、木材が挙げられる。
挿し穂の基部とは、挿し穂の一端であって根が形成される領域(葉の形成される端部に対し反対側)を意味する。
挿し付ける際、挿し穂への物理的刺激を加えて(例、基部に傷をつける)もよい。これにより、発根率を向上させることができる。基部につける傷のサイズ(例、大きさ、形状)は、特に限定されない。例えば、挿し穂の基部に十字型の傷を付けることができる。傷を付ける際の器具としては例えば、ハサミ、ナイフが挙げられる。挿し穂の基部のうち支持体に挿し付ける部分の葉は、切除しておくことが好ましい。
灌水量は、挿し穂が実質的に湿潤すればよく、特に限定されない。発根培養工程においては、吸水性部材を介して挿し穂に潅水してもよい。すなわち、吸水性部材に給水し、水分が、培地と吸水性部材とが接する部分を介して挿し穂に供給される。吸水性部材への給水は、培地が湿潤するように行うこと、及び/又は、吸水性部材が均一に吸水する状態となるように行うこと、が好ましい。これにより、培地の水分環境を適度、一定且つ均一に保持することができる。潅水作業は、手潅水及び自動潅水装置のいずれで行ってもよい。
温度は、23~28℃であることがより好ましい。
挿し穂に照射する光は、自然光でもよいし、光強度が人為的に調整された光でもよい。人為的に調整する方法としては、例えば、光強度の調整、波長成分の調整、遮光が挙げられる。
光強度(光合成有効光量子束密度)は、10μmol/m2/s~1000μmol/m2/sが好ましく、50μmol/m2/s~500μmol/m2/sがより好ましい。
照射する光は、650nm~670nmの波長成分と450nm~470nmの波長成分とを含む光が好ましく、両者の割合は、好ましくは9:1~7:3、より好ましくは9:1~8:2である。
遮光を行う場合、遮光率は、30~70%が好ましく、40~60%がより好ましい。
培養容器はビニールハウス内に設置することが好ましい。これにより湿度、温度等の条件の制御が容易となり得る。
図3において、地際から発生した萌芽枝21は一つのみ示している。しかしながら、地際から発生する萌芽枝21は、通常、複数存在する。
なお、挿し穂11から萌芽枝21,31を発生させる際の条件は、採穂母樹の生育のための条件と同一であってもよく、一部変更してもよい。
選定は、芯立ちした萌芽枝を選定することが好ましく、芯立ちを保っている萌芽枝を選定することがより好ましい。これにより、選定した萌芽枝を伸長させて芯立ちした苗木を得ることができる。萌芽枝21を1つのみ選定した後、地際から萌芽枝が再度発生した場合には、再度発生した萌芽枝をはさみ等の切断器具を用いて切断する。
切断方法は特に限定されず、はさみ等の切断器具で切断し得る。挿し穂11及び他の萌芽枝31は、萌芽枝の芽の上1~3cm程度で切断することができる。
上記した通り、樹冠部の芯立ちした枝、枝性の枝、樹冠部の枝を切断した後に発生する萌芽枝を挿し穂に用いて育苗すると、苗木が曲がりやすいことが知られている。そのため、挿し穂を発根培養した際に地際から新たに発生する萌芽枝を育苗する必要がある。
なお、適切な長さmは、通常、その大きさが10~30cmとなることをいう。
主軸を切った状態でコウヨウザン属植物の母樹1を生育する際の条件は、上記の条件と同じである。
従って、地際から発生する萌芽枝41を利用する必要がある。しかしながら、地際から発生する萌芽枝41は、その数が限られており、林業に使用するのに十分な量の苗木を確保し難い。
本発明のコウヨウザン属植物の生産方法は、本発明のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法により生産した苗木を用いて育林する工程を有する。
上記した通り、本発明のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法によれば、1つの採穂母樹から複数の苗木を生産することができる。即ち、林業として利用するのに十分な量の苗木を確保し得る。加えて、本発明のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法により生産した苗木は、育苗の過程で曲がりにくい芯立ちした苗木である。そのため、当該苗木を用いてコウヨウザン属植物を生産すると、建築材に適したコウヨウザン属植物を生産し得る。
従って、本発明のコウヨウザン属植物の生産方法は、早生樹を育林して伐採回数を増加することにより、収益性を高める新たな林業として期待し得る。
コウヨウザンの播種後2年目の実生苗の鉢植えを採穂母樹として使用した。採穂母樹の主軸及び枝を各5cm程度に切断した。挿し付け基部から下、2~3cm程度についている葉を切除して挿し穂(65本)を得た。
発根培養後、セルトレーから掘り出し、発根培養した61本を容量300ccのコンテナに移植して育苗した。コンテナに移植後、地際から萌芽枝の芽が発生した時点で、地際から発生した芯立ちした萌芽枝を1つのみ選定するとともに、挿し穂及び他の萌芽枝を萌芽枝の芽の直上で切断した。当該萌芽枝を伸長させたところ、芯立ちした苗木は52本であった。
コウヨウザンの播種後2年目の実生苗の鉢植えについて、地際5cm程度のところで切断し、採穂母樹とした。2か月が経過した時点で地際から発生した萌芽枝を、頂芽を含む5cm程度の大きさで採穂し、下部2~3cmにある葉を切除して、挿し穂(33本)を得た。
なお、挿し床は、実施例1と同様に調製した。
発根培養後、セルトレーから掘り出し、発根培養した30本を容量300ccのコンテナに移植して育苗した。コンテナに移植後、1か月間、育苗して萌芽枝を発生させた(1本)。当該萌芽枝を伸長させたところ、芯立ちした苗木は27本であった。
コウヨウザンの播種後2年目の実生苗の鉢植えを採穂母樹として使用した。採穂母樹の主軸及び枝を各5cm程度に切断した。挿し付け基部から下、2~3cm程度についている葉を切除して挿し穂(60本)を得た。
培養容器としてセルトレーを用いた。赤玉小粒土(簗島商事社製)とピートモス(トーホー社製)を1対1に混合し、セルトレーに充填して挿し床を調製した。上記で得た65本の挿し穂の基部に、ルートン(登録商標)(石原バイオサイエンス社製、植物ホルモンNAAを含む白色粉末、NAAの濃度は0.4%)の粉末を5~10mg塗布した後、該挿し穂を基部から1.5~2.5cmのところまで挿し床に挿しつけて発根培養を行った。発根培養は、通常のガラス温室内で8月から10月まで行った。
発根培養後、セルトレーから掘り出し、発根培養した56本を容量300ccのコンテナに移植して育苗した。コンテナに移植後、地際から萌芽枝の芽が発生した時点で、萌芽枝の選定を行わなかった以外は、実施例1と同様にした。当該萌芽枝を伸長させたところ、芯立ちした苗木は3本であった。
Claims (5)
- コウヨウザン属植物の母樹を切断して、複数の挿し穂を得ること、
前記複数の挿し穂を、それぞれ挿し床に挿して発根培養すること、
発根培養した前記挿し穂を育苗して萌芽枝を発生させること、
前記萌芽枝のうち、地際から発生した前記萌芽枝を1つのみ選定するとともに、前記挿し穂及び他の前記萌芽枝を切断すること、並びに
選定した前記萌芽枝を伸長させること、を有するコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。 - 前記コウヨウザン属植物の母樹の樹齢が、1~10年生である請求項1に記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。
- 前記挿し穂の長さが、3~10cmである請求項1又は2に記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。
- 前記選定が、芯立ちした萌芽枝を選定することである請求項1~3のいずれか1項に記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載のコウヨウザン属植物の苗木の生産方法により生産した苗木を用いて育林すること、を有するコウヨウザン属植物の生産方法。
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