JP2022157476A - 挿し穂の発根評価方法 - Google Patents

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謙史郎 宮内
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Abstract

【課題】本発明の目的は、挿し木苗の生産において、挿し穂の発根の確認を簡便かつ正確に、効率よく行うことができる方法を提供することである。【解決手段】本発明は、被験サンプルとしての、植物の挿し穂を光照射下で発根培養すること、発根培養中、前記挿し穂への光照射量を 複数回測定し光照射量測定値A1、A2、・・・An(nは測定回数を表し、2以上である)を得ること、式D=[C1+C2+・・・Cn]*測定間隔(s)(ただし、Ax-B<0の場合、Ax-B=0としてCxを算出する)に従い、A1、A2・・・Anから、挿し穂の光補償点Bを差し引いた差分Cxを算出し、Cxの合計に測定間隔(s)をかけて、光補償点以上の日射量の和Dを算出すること、及び、光補償点以上の日射量の和Dから、前記挿し穂の発根状況を評価すること、を含む、挿し穂の発根評価方法を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、挿し穂の発根評価方法に関する。
山林苗の挿し木コンテナ苗生産の方法には大きく分けて2種類、すなわち箱挿し、コンテナ直挿しがある。箱挿しは、いずれの方法も「発根培養を行う工程」(挿し付けから発根まで)と発根後の「育苗工程」で大きく管理方法が異なる(非特許文献1及び2)。「発根培養を行う工程」から「育苗工程」への移行は、発根や新芽の伸長の目視による確認により、経験と勘に基づいて行われてきた。
特許文献1には、育苗中の山林樹木の挿し木苗の発根を判定する方法として、育苗中の挿し穂からの総蒸散量/日及び積算日射量を求め、総蒸散量/日を積算日射量当たりの数値に換算した数値が顕著に増大した場合に、又は、総蒸散量/日を求め、この数値を温度当たりの数値に換算した数値が顕著に増大した場合に、挿し穂が発根したと判定することができ、これにより、発根の確認を効率的かつ正確に行えることが記載されている。
特許第6751626号公報
島根県中山間地域研究センター編「スギ・ヒノキのコンテナ苗生産の手引き(改訂版)」、平成30年3月 (https://www.Pref.shimane.lg.jp/admin/region/kikan/chusankan/shinrin/shcn_kai.data/kontenanaetebiki_kai.pdf?site=sp) 関東森林管理局 森林技術・支援センター編「コンテナ苗育苗マニュアル(スギ挿し木編)」、平成28年3月31日(https://www.rinya.maff.go.jp/kanto/gizyutu/seika/pdf/h27sugisasiki_ikubyoumanyuaru.pdf)
しかしながら、特許文献1の方法では、挿し穂からの総蒸散量の測定に大掛かりな装置が必要であり、すべての苗について測定を行うことが困難である。また、装置内に収容されない苗が出てくる結果、収容される苗とそれ以外の苗との間で環境に差が生じ、正確な推定が難しいという問題もある。
本発明の目的は、挿し木苗の生産において、挿し穂の発根の確認を簡便かつ正確に、効率よく行うことができる方法を提供することである。
本発明は、以下の〔1〕~〔18〕を提供する。
〔1〕被験サンプルとしての、植物の挿し穂を光照射下で発根培養すること、
発根培養中、前記挿し穂への光照射量を複数回測定し光照射量測定値A1、A2、・・・An(nは測定回数を表し、2以上である)を得ること、
以下の式に従い、A1、A2・・・Anから、挿し穂の光補償点Bを差し引いた差分Cx(xは1以上n以下の整数である)を算出し、Cxの合計に測定間隔(s)をかけて、光補償点以上の日射量の和Dを算出すること、
D=[(A1-B)+(A2-B)+・・・+(An-B)]*測定間隔(s)
=[C1+C2+・・・Cn]*測定間隔(s)
(ただし、Ax-B<0の場合、Ax-B=0としてCxを算出する。)
及び、光補償点以上の日射量の和Dから、前記挿し穂の発根状況を評価すること、
を含む、挿し穂の発根評価方法。
〔2〕光補償点以上の日射量の和Dが200MW/m2以上の場合に被験サンプルが発根したと評価する、〔1〕に記載の評価方法。
〔3〕光補償点以上の日射量の和Dが200MW/m2以上の場合に被験サンプルの発根培養は完了したと評価する、〔1〕に記載の評価方法。
〔4〕光補償点以上の日射量の和Dが200~450MW/m2の場合に被験サンプルの発根培養は完了したと評価する、〔1〕に記載の評価方法。
〔5〕被験サンプルの発根状況の予測は、
基準サンプルとしての、被験サンプルと同種の植物の未発根の挿し穂を光照射下で挿し穂が発根するまでの間発根培養すること、
発根培養中、前記挿し穂への光照射量を複数回測定し光照射量測定値a1、a2、・・・am(mは測定回数を表し、2以上である)を得ること、
以下の式に従い、a1、a2・・・amから、挿し穂の光補償点bを差し引いた差分c1、c2・・・cmを算出し、これらの合計値に測定間隔(s)をかけて、光補償点以上の日射量の和dを基準値として算出すること、
d=[(a1-b)+(a2-b)+・・・+(am-b)]*測定間隔(s)
=[c1+c2+・・・cm]*測定間隔(s)
(ただし、ay-b<0の場合、ay-b=0としてcy(yは1以上m以下の整数である)を算出する。)
及び
基準値dと被験サンプルの光補償点以上の日射量の和Dを比較して、被験サンプルの発根状況を評価すること、
である、〔1〕に記載の評価方法。
〔6〕基準値dが合計値D以上の場合に、被験サンプルが発根したと評価する、〔5〕に記載の評価方法。
〔7〕基準値dが合計値D以上の場合に、被験サンプルの発根培養は完了したと評価する、〔5〕又は〔6〕に記載の評価方法。
〔8〕発根培養の際、培土水分度18~35%となるように灌水を行う、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の評価方法。
〔9〕発根培養中、発根環境の温度を複数回測定し、測定値E1、E2・・・Ep(pは測定回数を表し、2以上である)を得ること、
以下の式に従い、E1、E2・・・Epから5を差し引いた差分F1、F2・・・Fpを算出し、それらの合計値Gを算出すること、
G=(E1-5)+(E2-5)+・・・(Ep-5)
=F1+F2+・・・Fp
(ただし、Fz-5<0の場合、Fz-5=0としてFz(zは1以上p以下の整数である)を算出する。)
及び
挿し穂の発根状況の評価の際、合計値Gを積算温度として更に参照すること、
を更に含む、〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の評価方法。
〔10〕合計値Gが800℃以上の場合に被験サンプルが発根したと評価する、〔9〕に記載の評価方法。
〔11〕合計値Gが800℃以上の場合に被験サンプルの発根培養は完了したと評価する、〔9〕に記載の評価方法。
〔12〕合計値Gが800~1600℃の場合に被験サンプルの発根培養は完了したと評価する、〔9〕に記載の評価方法。
〔13〕積算温度の参照は、
基準サンプルとしての、被験サンプルと同種の植物の未発根の挿し穂を光照射下で挿し穂が発根するまでの間発根培養すること、
発根培養中、発根環境の温度を複数回測定し、測定値e1、e2、・・・eq(qは測定回数を表し、2以上である)を得ること、
以下の式に従い、それぞれから基準温度5℃を差し引いた差分(f1、f2、・・・fq)を算出し、それらの合計値gを算出すること、
g=(e1-5)+(e2-5)+・・・(eq-5)
=f1+f2+・・・fq
(ただし、fw-5<0の場合、fw-5=0としてfw(wは1以上q以下の整数である)を算出する。)
基準値gと被験サンプルについての積算温度Gを比較して、被験サンプルの発根状況を評価すること、
である、〔9〕に記載の評価方法。
〔14〕植物が、スギ属植物、ヒノキ属植物、マツ属植物、カラマツ属植物、モミ属植物、及びユーカリ属植物から選ばれる植物である、〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載の評価方法。
〔15〕植物の挿し穂を光照射下で発根培養すること、及び、
〔1〕~〔14〕のいずれか1項に記載の評価方法により被験サンプルとしての前記挿し穂の発根状況を評価すること
を含む、植物の挿し穂の生産方法。
〔16〕〔1〕~〔14〕のいずれか1項に記載の評価方法により発根培養は完了したと評価された後、育苗工程へ移行する、〔15〕に記載の生産方法。
〔17〕発根培養の際、培土水分度18~35%となるように灌水を行う、〔15〕又は〔16〕に記載の生産方法。
〔18〕育苗工程において、育苗促進処理を行う、〔15〕~〔17〕のいずれか1項に記載の生産方法。
本発明によれば、挿し木苗の生産において、挿し穂の発根の確認を簡便かつ正確に、効率よく行うことができ、発根が確認された挿し穂は、良好な生長を示すことができる。よって、本発明によれば、高品質の挿し木苗を効率よく生産できる。
〔1.挿し穂の発根評価方法〕
本発明においては、植物の挿し穂(被験サンプル)を光照射下で発根培養し、その際、挿し穂への光照射量を測定し、得られる光照射量測定値から光補償点を挿しい引いた差分を算出し、それらの合計値から挿し穂の発根状況を評価する。
〔植物の挿し穂〕
被験サンプルは、植物の挿し穂である。
-植物-
植物種は、木本植物と草本植物のいずれでもよく、木本植物が好ましく、草本植物よりも通常発根能が劣る木本植物がより好ましい。木本植物としては、例えば、スギ属(Cryptomeria)植物(スギ(Cryptomeria japonica)など)、ヒノキ属(Chamaecyparis)植物(ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)など)、マツ科(Pinaceae)植物(マツ属(Pinus)植物(クロマツ(Pinus thunbergii)など)、カラマツ属(Larix)植物(カラマツ(Larix kaempferi)、グイマツ(Larix gmelinii)など)、モミ属(Abies)植物(トドマツ(Abies sachalinensis)など)など)、ユーカリ属(Eucalyptus)植物、サクラ属(Prunus)植物(サクラ(Prunus spp.)、ウメ(Prunus mume)、ユスラウメ(Prunus tomentosa)など)、マンゴー属(Mangifera)植物(マンゴー(Mangifera indica)など)、アカシア属(Acacia)植物、ヤマモモ属(Myrica)植物、クヌギ属(Quercus)植物(クヌギなど(Quercus acutissima))、ブドウ(Vitis)属植物、リンゴ(Malus)属植物、バラ属(Rosa)植物、ツバキ属(Camellia)植物(チャ(Camellia sinensis)など)、ジャカランダ属(Jacaranda)植物(ジャカランダ(Jacaranda mimosifolia)など)、ワニナシ属(Persea)植物(アボカド(Persea americana)など)、ナシ属(Pyrus)植物(ナシ(Pyrus serotina Rehder、Pyrus pyrifolia)など)、ビャクダン属(Santalum)植物(ビャクダン(サンダルウッド;Santalum album)など)が例示される。このうち、スギ、ヒノキ、マツ(クロマツ、カラマツ、グイマツ、トドマツなど)、ユーカリ、サクラ、マンゴー、アボカド、アカシア、ヤマモモ、クヌギ、ブドウ、リンゴ、バラ、ツバキ、チャ、ウメ、ユスラウメ、ジャカランタが挙げられ、中でもスギ属植物、ヒノキ属植物、マツ科植物(マツ属植物、カラマツ属植物、モミ属植物など)、ユーカリ属植物、ツバキ属植物、マンゴー属植物、ワニナシ属植物が好ましく、山林苗、すなわち、スギ属植物、ヒノキ属植物、マツ属植物、カラマツ属植物、モミ属植物、ユーカリ属植物がより好ましく、スギ属植物、ヒノキ属植物、マツ属植物、カラマツ属植物、モミ属植物がさらに好ましい。
-挿し穂-
挿し穂は、植物体の少なくとも一部であればよく、例えば、緑枝、熟枝等の枝;頂芽、腋芽などの芽;葉、子葉;胚軸が挙げられる。木本植物の挿し穂は、一般に、緑枝又は熟枝を少なくとも含む。挿し穂は、シュートを少なくとも含むことが好ましい。これにより、不定根形成が容易となり得る。シュートとは、発根能を有する組織を言い、例えば、枝、茎、萌芽、頂芽、腋芽、不定芽、葉、子葉、胚軸、不定胚、苗条原基、これらの具体例から誘導される多芽体(特開平8-228621号公報)が挙げられ、頂芽が好ましい。本発明においては、シュート(好ましくは頂芽)を少なくとも1つ含む枝を、効率良く取得できる。挿し穂は、採穂母樹から採穂されてもよいし、採穂母樹以外の植物体から採穂されてもよい。
採穂される挿し穂のサイズは、通常は40cm以下又は35cm以下であり、33cm以下が好ましく、32cm以下がより好ましく、31cm以下が更に好ましい。下限は特にないが、通常1cm以上又は2cm以上、好ましくは3cm以上、より好ましくは4cm以上、さらに好ましくは5cm以上である。
-挿し付け方法-
発根培養開始時における、挿し穂の培土への挿し付けは、培土の種類、環境、挿し穂の種類等の条件により適宜選択すればよい。例えば、挿し穂の基部を含む一部(例えば基部から1cm~6cm、好ましくは1.5cm~6cm、より好ましくは2cm~5cm)を培土に挿し付ける方法が挙げられる。挿し穂の基部とは、挿し穂の一端であって根が形成される領域(葉の形成される端部に対し反対側)を意味する。多芽体の基部は、多芽体を分割する際の切断面を有する領域である。挿し付ける際、挿し穂への物理的刺激を加えて(例、基部に傷をつける)もよい。これにより、発根率を向上させることができる。基部につける傷のサイズ(例、大きさ、形状)は、特に限定されない。例えば、挿し穂である多芽体の基部(上述の切断面)に十字型の傷を付けることができる。傷を付ける際の器具としては例えば、ハサミ、ナイフが挙げられる。挿し穂の基部のうち支持体に挿し付ける部分(例えば基部先端から3cm程度)の葉は、切断しておくことが好ましい。
〔発根培養〕
-光照射-
被験サンプルの発根培養は、光照射下で行う。光照射の方法、光照射量は、植物種によって適宜設定でき、自然条件(自然光)でもよいし、人工太陽光室、LED等を使って人為的に制御してもよい。光量は、特に限定されないが、自然条件による光照射では遮光することが好ましい。これにより、発根を促進できる。遮光率は、30%以上70%以下が好ましく、40%以上60%以下がより好ましい。
-培土水分度-
発根培養は、培土水分度が好ましくは18~35%、より好ましくは20~30%の条件で行う。これにより、発根をより正確に予測できる。本明細書において、培土水分度は、培土の体積あたりの水分重量(%)である。培土水分度の調整は、灌水条件(灌水回数、量等)、培土の種類、温度、湿度等の培養条件の調整により行うことができる。培土水分度の測定は、土壌水分センサーを用いて行えばよい。
-灌水-
灌水方法としては例えば、頭上灌水でもよいし、底面灌水でもよい。底面灌水の方法としては、例えば、挿し穂が挿し付けられた培土を格納している培養容器(通水口を具備)を水に浸漬する方法、吸水性部材を介して挿し穂に灌水する方法が挙げられる。底面灌水を吸水性部材を介して行う場合、通常、吸水性部材(例えば、マット状の部材)に給水し、水分を、培土と吸水性部材とが接する部分を介して挿し穂に供給する。吸水性部材への給水は、培土が湿潤するように行うこと、及び/又は、吸水性部材が均一に吸水する状態となるように行うことが、好ましい。これにより、培土の水分環境を適度、一定且つ均一に保持することができる。灌水作業は、手灌水および自動灌水装置のいずれで行ってもよい。
-培土-
培土は、植物の育成に通常用いられるものであればよく、例えば、砂、土(例、赤玉土、鹿沼土)等の自然土壌が挙げられる。培土の別の例としては、籾殻燻炭、ココナッツ繊維、バーミキュライト、パーライト、ピートモス、ガラスビーズ等の人工土壌;発泡フェノール樹脂、ロックウール等の多孔性成形品;固化剤(例、寒天又はゲランガム)が挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種を自然土壌に換えて、又は自然土壌と共に用いてもよい。培土は容器に格納されていてもよい。容器としては、従来慣用の容器を用いればよい。
-温度-
温度条件としては、例えば、日中温度15~35℃(好ましくは20~35℃)、夜間温度10~25℃(好ましくは10~20℃、より好ましくは15~20℃)が挙げられる。生育場所は、閉鎖空間(例、ビニールハウス内、人工太陽光室内、温室内、屋内)及び解放空間(例、屋外)のいずれでもよく、特に限定されない。
-湿度-
湿度は植物の種類等栽培条件に応じて調整することができるが、通常は、50%以上、好ましくは60%以上である。これにより、植物からの発根を促進し、育苗を効率よく行うことができる。上限については特に制限はない。
-挿し付け時期-
挿し付けの時期(発根培養開始時)は、実施地域の平均気温、実施場所(室内又は屋外か)にもより、特に限定されないが、12月~5月が好ましく、2~4月初旬がより好ましく、2~3月が更に好ましい。
-培養容器-
発根培養の際には、培土を格納する培養容器を用いてもよい。これにより、操作を円滑に行うことができる。培養容器は、通水口(網、細孔)を略底部に有することが好ましい。これにより、底面灌水に用いることができる。例えば、コンテナ(例、特開2017-079706号公報に記載されたコンテナ、マルチキャビティコンテナ(JFA-150、JFA-300)等)、セルトレー、育苗ポット、プランター、およびバット、底面または側面に網状の開口部を有する箱型容器が挙げられる。1つの容器に挿し穂1株ずつ植え付けるタイプの培養容器でもよいし、1つの容器に2株以上の挿し穂を植え付けるタイプの培養容器でもよい。培養容器の材質は特に限定はなく、例えば、樹脂、ガラス、木材が挙げられる。
〔光照射量の測定〕
発根評価にあたり、発根培養の間に、挿し穂への光照射量を複数回測定する。測定は、発根培養の間不定期に又は定期的に(好ましくは定期的に)複数回(n回)行えばよく、回数は特に限定されないが、発根培養開始時から経時的に行うことが好ましく、1~5分間隔で経時的に行うことがより好ましく、2~3分間隔で経時的に行うことがより好ましい。光照射量の測定は、培土の近傍に載置した日射量センサーを用いて行うことができる。日射量の測定間隔は、定期的であることが好ましく、例えば、1~5分の間で設定でき、2~3分が好ましく、2分がより好ましい。各回で得られた値から光補償点以上の日射量の和Dを算出する。本明細書においては、x回目の測定で得られた光照射量測定値をAxと表記する。例えば、測定回数をn回とすると、A1(1回目の測定値)、A2(2回目の測定値)、・・・An(n回目の測定値)となる。
〔光補償点以上の日射量の和Dの算出〕
発根評価にあたり、上記光照射量の測定値を算出後、挿し穂の光補償点以上の光照射量の光補償点以上の日射量の和Dを得る。すなわち、以下の式に従い、A1、A2・・・Anから、挿し穂の光補償点Bを差し引いた差分C1、C2・・・Cnを算出し、これらの合計値Cを得、合計値Cに測定時間(s)をかけて、光補償点以上の日射量の和(合計値)Dを算出する。
D=[(A1-B)+(A2-B)+・・・+(An-B)]*測定時間(s)
=[C1+C2+・・・Cn]*測定間隔(s)=C*測定間隔(s)
ただし、Ax-B<0の場合、Ax-B=0としてCxを算出する(xは1以上n以下の整数である)。
合計値Dは光照射量のうち挿し穂が光合成に用いることのできるエネルギー量に相当すると考えられるので、光照射量の単なる積算値よりも発根をより精度良く評価できる。光補償点Bは、植物ごとに一義的に定まる。例えば、スギの光補償点は、7.9W/m2、ヒノキの光補償点は、19.5W/m2である。
〔発根状況の評価〕
発根評価にあたり、上述のようにして算出した合計値Dから、挿し穂の発根状況を評価する。これにより、挿し穂の発根状況の目視による確認を省略でき、育苗の効率化を図ることができる。中でも、複数の挿し穂を育苗する場合には、より効率的である。
-評価例1-1(所定の数値に基づく評価)-
評価の一例を挙げると、合計値Dが200MW/m2以上、好ましくは210MW/m2以上の場合には、被験サンプルが発根した、発根培養工程は終了と評価できる。上限も設けることができ、例えば、450MW/m2を超える前、好ましくは420MW/m2を超える前に発根培養工程を終了すべき(次の工程(例えば、育苗工程)へ移るべき(例えば、育苗促進処理(追肥処理、育苗容器への植え替え処理など)をすべき))と評価できる。
-評価例1-2(基準サンプルを用いた予備試験で得られた基準値cに基づく評価)-
評価の別の例を挙げると、被験サンプルと同じ又は近縁の植物種の挿し穂(基準サンプル)を用いた予備試験において得られた挿し穂の光補償点b(通常は、b≒Bであり、好ましくはb=Bである)以上の光照射量の合計値を基準値dとして、前記基準値と合計値Dとの比較により、挿し穂の発根状況を評価できる。基準値dは、基準サンプルを光照射下で挿し穂が発根するまでの間発根培養し、発根培養中、光照射量を不定期に又は定期的に(好ましくは定期的に)複数回(m回とする;mは、nと同じでもよいし異なってもよいが、同じであることが好ましい。)測定し光照射量測定値a1、a2、・・・am(mは測定回数を表し、2以上である)を得て、それぞれから前記植物の光補償点Bを差し引いた差分(c1、c2、・・・cm)を算出し、それらの合計値cに測定間隔(s)をかけて、すなわち以下の式にて算出して得ることができる。
d=[(a1-b)+(a2-b)+・・・+(am-b)]:測定間隔(s)
=[c1+c2+・・・cn]*測定間隔(s)=c*測定間隔(s)
ただし、ay-b<0の場合、ay-b=0としてcyを算出する(yは1以上m以下の整数である)。
基準サンプルの発根培養条件、光照射量測定回数、間隔は、被験サンプルのそれらと実質同一とすることが好ましい。被験サンプルにおける合計値Dが基準値d以上の場合には、被験サンプルが発根した、発根培養工程は終了と評価できる。基準値dを大きく超えた場合(例えば、基準値d+2.0MW/m2を超えた場合)、発根培養工程を終了すべき(次の工程(例えば、育苗工程)へ移るべき(例えば、育苗促進処理(追肥処理、育苗容器への植え替え処理など)をすべき))と評価できる。
〔積算温度を参照した発根状況の評価〕
発根状況の評価にあたっては、発根培養中の発根環境の積算温度を参照してもよい。これにより、発根の評価をより正確に行うことができる。発根環境の積算温度は、発根培養期間中の温度の積算値であり、発根環境の温度を不定期に又は定期的に(好ましくは定期的に)複数回測定し測定値E1、E2、・・・Ep(pは測定回数を表し、2以上である。測定期間中の日数(毎日)が好ましい)を得て、それぞれから基準温度5℃を差し引いた差分(F1、F2、・・・Fp)を算出し、それらの合計値Gを以下の式にて算出して得ることができる。
G=(E1-5)+(E2-5)+・・・(Ep-5)
=F1+F2+・・・Fp
ただし、Fz-5<0の場合、Fz-5=0としてFzを算出する(zは1以上p以下の整数である)。
温度測定値Ezは、1日あたりの平均温度であることが好ましい。Ezは、常法に従い温度センサーを用いて測定すればよい。
-評価例2-1(所定の数値に基づく評価)-
積算温度を考慮した評価の一例を挙げると、上記の光照射量による評価と共に、合計値Gが800℃以上、好ましくは900℃以上の場合には、被験サンプルが発根した、発根培養工程は終了と評価できる。上限も設けることができ、例えば、1600℃を超える前に発根培養工程を終了すべき(次の工程(例えば、育苗工程)へ移るべき(例えば、育苗促進処理(追肥処理、育苗容器への植え替え処理など)をすべき))と評価できる。
-評価例2-2(基準サンプルを用いた予備試験で得られた基準値gに基づく評価)-
評価の別の例を挙げると、被験サンプルと同じ植物種の挿し穂(基準サンプル)を用いた予備試験において得られた、予備試験期間中の、基準温度以上の温度の合計値(積算温度)を基準値gとして、前記基準値gと合計値Gとの比較により、挿し穂の発根状況を評価できる。基準値gは、基準サンプルを光照射下で挿し穂が発根するまでの間発根培養し、発根培養中、育苗環境の温度を不定期に又は定期的に(好ましくは定期的に)複数回測定し測定値e1、e2、・・・eq(qは測定回数を表し、2以上である。測定期間中の日数(毎日)が好ましい;qは、pと同じでもよいし異なってもよいが、同じであることが好ましい。)を得て、それぞれから基準温度5℃を差し引いた差分(f1、f2、・・・fq)を算出し、それらの合計値gを以下の式にて算出して得ることができる。
g=(e1-5)+(e2-5)+・・・(eq-5)
=f1+f2+・・・fq
ただし、fw-5<0の場合、fw-5=0としてfwを算出する(wは1以上q以下の整数である)。
温度測定値ewは、1日あたりの平均温度であることが好ましい。ewは、常法に従い温度センサーを用いて測定すればよい。
基準サンプルの発根培養条件、温度測定回数、間隔は、被験サンプルのそれらと実質同一とすることが好ましい。被験サンプルにおける合計値Gが基準値g以上の場合には、被験サンプルが発根した、発根培養工程は終了と評価できる。基準値gを大きく超えた場合(例えば、基準値g+500℃を超えた場合)、発根培養工程を終了すべき(次の工程(例えば、育苗工程)へ移るべき(例えば、育苗促進処理(追肥処理、育苗容器への植え替え処理など)をすべき))と評価できる。
〔発根促進処理〕
発根培養期間中は、必要に応じて、発根促進処理を行ってもよい。発根促進処理としては、例えば、添加剤の投与、遮光(例えば、寒冷紗を利用した遮光)、炭酸ガス濃度調整、湿度調整、温度調整等の、発根を促進する目的でなされる発根環境の調整処理が挙げられ、2以上の処理を組み合わせてもよい。発根促進処理の種類、実施条件は、植物種、部位、サイズ等により適宜決定すればよく、後段で例示する処理のうちから適宜決定すればよい。
〔2.挿し木苗の生産方法〕
上記評価方法は、挿し木の生産管理に利用できる。例えば、植物の挿し穂を光照射下で発根培養し、上記評価方法によりその発根状況を評価して、発根培養は完了したと評価された後、発根培養工程を終了し育苗工程に移行することができる。育苗工程は、育苗培地にて行うことができる。育苗培地の例は、発根培地の例と同じであり、発根培地をそのまま使ってもよいし変更してもよい。育苗培地を格納するための育苗容器を使用してもよい。育苗容器の例は、発根培養における培養容器の例と同様であり、発根培養における培養容器をそのまま育苗容器として用いてもよいし、育苗工程移行時に植え替えてもよい。育苗工程を実施する場所、温度、湿度条件の例も、遮光をしない他は、発根培養と同様であり、発根培養と同じ条件でもよい。なお、発根培養終了後育苗工程の実施前に、順化工程を経てもよい。
〔育苗促進処理〕
育苗期間中は、必要に応じて、育苗促進処理を行ってもよい。育苗促進処理としては、例えば、添加剤(例えば、植物ホルモン、無機成分、肥料)の投与、植え替え(培地の交換)、温度、湿度の調整等、苗の生育を促進する目的でなされる育苗環境の調整処理が挙げられ、2以上の処理を組み合わせてもよい。育苗促進処理の種類、実施条件は、植物種、部位、サイズ等により適宜決定すればよく、後段で例示する処理のうちから適宜決定すればよい。
〔任意の育苗条件〕
本発明においては、上記以外の発根培養(被験サンプル、基準サンプルとも)、発根後の育苗条件は、常法に従って行えばよく、特に限定されない。一例を挙げると、以下のとおりである。
-添加剤-
培土は、植物の挿し木の際に通常用いる添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、植物組織培養用の公知の培地、水性溶媒(例、水)が挙げられ、水性溶媒が好ましく、水がより好ましい。植物組織培養用培地としては、例えば、MS培地、リンスマイヤースクーグ培地、ホワイト培地、ガンボーグのB-5培地、ニッチニッチ培地を挙げることができる。中でも、MS培地およびガンボーグのB-5培地が好ましい。これらの培地は、必要に応じて適宜希釈して用いることができる。培地は、液体培地、固体培地のいずれであってもよいが、液体培地の方が作業効率および移植時に根を傷つけることが少ない点で好ましい。液体培地は、培地組成を混合し調製してそのまま用い得る。また固体培地は、液体培地と同様に培地組成を混合し調製すると同時に、或いは調製後に、固化剤(例、寒天、ゲランガム)で固化させて使用し得る。固化剤の添加量は、固化剤の種類、培地の組成等の条件によって適宜設定できる。寒天の培地に対する添加量は、0.5~1重量%が好ましい。ゲランガムの培地に対する添加量は、0.2~0.3重量%が好ましい。
添加剤は任意であり、挿し穂の発根の際に用いられる添加剤でもよく、その後の育苗の際に用いられる添加剤でもよい。例えば、肥料(例、無機成分、銀イオン、抗酸化剤、炭素源、ビタミン類、アミノ酸類、植物ホルモン類)、上記以外の発根促進剤(例、国際公開第2011/136285号、特開2012-232907号公報、特開2013-95664号公報等の文献に記載の剤)等が挙げられる。各成分の形態は特に限定されず、固形物(例、錠剤、粉剤、粒剤)、又は液体(例、液肥)のいずれでもよい。また、添加剤を構成する成分は培土に混合、吸収又は散布されてもよく、挿し穂の少なくとも一部に直接散布、塗布又は噴霧されてもよい。
添加剤は、それぞれを混合して又は少なくとも一部を別個に、支持体に含ませてもよいし、培地に添加剤を予め添加してから支持体に含ませてもよい。また、添加剤を、挿し穂(好ましくは基部)に直接適用(例えば、塗布、散布)してもよい。
無機成分としては、例えば、窒素、リン、カリウム、硫黄、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、モリブデン、塩素、ヨウ素、コバルト等の元素や、これらを含む無機塩が例示される。該無機塩としては例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ホウ酸、三酸化モリブデン、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化コバルト等やこれらの水和物が挙げられる。無機成分は、1種単独でも2種以上の組み合わせでもよく、窒素、リン、カリウム、マグネシウム、窒素を含む無機塩、リンを含む無機塩、及びカリウムを含む無機塩から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。無機成分1種を上述の公知の培地に含ませる場合、培地中の量は、0.1μM~100mMが好ましく、1μM~100mMがより好ましい。2種以上の組み合わせの場合、それぞれの培地中の量は0.1μM~100mMが好ましく、1μM~100mMがより好ましい。
銀イオンとしては、例えば、チオ硫酸銀(STS、AgS46)、硝酸銀等の銀化合物(銀イオン源)が挙げられ、1種単独でも2種以上の組み合わせでもよく、STSが好ましい。STSは培地中で、チオ硫酸銀イオンの形態を取り、マイナスに帯電していると推測され、これにより健全な根の発根及び伸長を促進に寄与することができる。銀イオンを上述の培地に含ませる場合、銀イオン源の培地中の量は、0.5μM~6μMが好ましく、2μM~6μMがより好ましい。
抗酸化剤の例は、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸塩が挙げられ、アスコルビン酸が好ましい。アスコルビン酸は、培地への残留性が低いため、環境汚染を抑制できる。抗酸化剤を培地中に含ませる場合、その量は、5mg/l~200mg/lが好ましく、20mg/l~100mg/lがより好ましい。
炭素源の例は、ショ糖等の炭水化物とその誘導体;脂肪酸等の有機酸;エタノール等の1級アルコール、などの化合物を使用することができる。炭素源として、上記具体例の中から1種を選択して、或いは2種以上を組み合わせて用いうる。炭素源を培地中に含ませる場合、その量は、1g/l~100g/lが好ましく、10g/l~100g/lがより好ましい。炭酸ガスを供給して発根培養を行う場合、発根培地は炭素源を含まなくてもよく、含まないことが好ましい。ショ糖等の炭素源となりうる有機化合物は微生物の炭素源ともなるので、これらを添加した発根培地を用いる場合、無菌環境下で栽培を行う必要があるが、炭酸ガスを供給して発根培養を行うことにより、発根培地への炭素源の添加を省略でき、非無菌環境下での栽培が可能となる。
ビタミン類としては、例えば、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB4)、ピリドキサール、ピリドキサミン、パントテン酸カルシウム、イノシトール、ニコチン酸、ニコチン酸アミド及び/又はリボフラビン(ビタミンB2)等を使用することができる。ビタミン類として、上記具体例の中から1種を選択して、或いは2種以上を組み合わせて用いうる。。ビタミン1種を上述の培地に添加する場合、その量は、0.01mg/l~200mg/lが好ましく、0.02mg/l~100mg/lがより好ましい。2種以上の組み合わせを添加する場合、それぞれの量は、0.01mg/l~150mg/lが好ましく、0.02mg/l~100mg/lがより好ましい。
アミノ酸としては例えば、グリシン、アラニン、グルタミン酸、システイン、フェニルアラニン及びリジンが挙げられる。アミノ酸類は、1種を選択して、或いは2種以上を組み合わせて用いうる。アミノ酸類1種を上述の培地に添加する場合、その量は、0.1mg/l~1000mg/lが好ましく、2種以上の組み合わせを添加する場合、それぞれの培地中の量は、0.2mg/l~1000mg/lが好ましい。
植物ホルモンとしては、例えば、オーキシン及びサイトカイニン等の発根促進剤が挙げられる。オーキシンとしては、例えば、ナフタレン酢酸(NAA)、インドール酢酸(IAA)、p-クロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4D)、インドール酪酸(IBA)及びこれらの誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種、又は2種以上の組み合わせでもよい。オーキシンとしては、NAA、IBAが好ましい。サイトカイニンとしては、例えば、ベンジルアデニン(BA)、カイネチン、ゼアチン及びこれらの誘導体が挙げられ、これらのうちの1種、又は2種以上の組み合わせでもよい。植物ホルモンは、1種でもよいし2種以上の組み合わせでもよく、オーキシン、又はオーキシンとサイトカイニンの組み合わせを含むことが好ましい。
植物ホルモンを1種類培地中に添加する場合、その量は0.001mg/l~10mg/lが好ましく、0.01mg/l~10mg/lがより好ましい。2種以上の組み合わせを添加する場合、それぞれの量は0.001mg/l~10mg/lが好ましく、0.01mg/l~10mg/lがより好ましい。植物ホルモンの添加方法は、市販品の説明書に従えばよく、例えば、植物ホルモンの粉末(例えば、オーキシン)を挿し付け前に挿し穂の基部(好ましくは物理的刺激を加えた基部)に直接塗布する方法、支持体に添加する方法が挙げられる。
添加剤の添加時期は、添加剤の種類によって異なり、特に限定されない。例えば、植物ホルモン(例えば、オーキシン)は、発根培養の開始時に添加できる。また、無機成分(例えば、窒素、リン、カリウム、マグネシウムを含む肥料)は、発根確認後に添加(追肥)してもよい。添加方法は成分の態様にもよるが、例えば、散布、湿潤、噴霧が挙げられる。添加回数も特に限定されず、1回のみ(培養開始時)でもよいし、2回以上(培養開始時及び途中)でもよい。また、発根培地を構成する成分をまとめて添加してもよいし、それぞれ別個に添加してもよいし、途中で適宜交換又は補充してもよい。
-炭酸ガス濃度、湿度-
栽培環境中の炭酸ガスは、通常は300ppm以上2000ppm以下、好ましくは800ppm以上1500ppm以下となるように供給することが好ましい。炭酸ガスの供給量の制御は、人工気象器等の設備や、二酸化炭素透過性の膜を開口部に有する培養容器などを利用して行われうる。
湿度は植物の種類等栽培条件に応じて調整することができるが、通常は、50%以上、好ましくは60%以上である。これにより、植物からの発根を促進し、育苗を効率よく行うことができる。上限については特に制限はない。
-灌水-
灌水方法は、頭上灌水及び底面灌水のいずれでもよい。灌水作業は、手灌水および自動灌水装置のいずれで行ってもよい。
-育苗の場所-
育苗を行う場所は、閉鎖空間(例えば、ビニールハウス内、炭酸ガス培養室内、温室内、屋内)又は解放空間(例えば、屋外)でもよいが、育苗開始から数カ月(例えば2~3ヶ月目まで)は閉鎖空間が好ましい。これにより、温度、湿度等の条件の調整が容易となる。
-温度-
発根および育苗の環境における温度は、育苗が可能な条件である限り特に限定されないが、例えば、20~40℃が好ましい。
-期間-
発根培養期間は上述したとおりである。育苗期間は、少なくとも苗が観察されるまで続ければよく、通常は4ヶ月以上であり、6ヶ月以上が好ましく、8ヶ月以上がより好ましい。育苗は、苗高が30cm程度以上になるまで続けることが好ましいところ、苗が観察された後も上述の培土と育苗容器を用いて育苗を行ってもよいし、他の培土に移し替えて育苗を継続してもよい。
本発明を実施例により詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されない。
実施例1
2020年4月1日にスギ母樹より枝を採取し、長さ30cm程度の挿し穂を調製した。赤玉土小粒(簗島商事(株)製)を育苗箱(ヤマトプラスチック 育苗箱B型)に充填して挿し床とした。上述のようにして調製した挿し穂の基部(切断部)にルートン(登録商標)(石原バイオサイエンス(株)製、植物ホルモンNAAを含む白色粉末、NAAの濃度は0.4%)の粉末を5~10mg塗布した後、該挿し穂を基部から5cm程度のところまで挿し床に挿しつけた。挿し穂を挿し付けた育苗箱を屋外の育苗棚に設置し、培土水分度を測定するための水分センサー(WD-3、株式会社ARP社製)を設置した。育苗箱の横に日射量を測定するための日射量センサー(ロガー付き日射計 三商社製)を設置した。発根培養中は培土水分度が25%を維持するように自動散水機を用いて行った。日射量センサーにより、2分に1回の間隔で日射量を測定し、スギの光補償点以上の日射量の和を算出した。積算温度は2分間に1回温度を測定、1日24時間の平均温度を算出、ここから基準温度(5℃)を差し引きして1日あたりの温度を算出、1日ごとに算出した値の和を積算温度とした。測定装置はおんどとり(T&D社製)を用い、育苗箱に隣接して設置した。
日射量の和が236MW/m2を超えた時点で、育苗コンテナ(マルチキャビティコンテナ)への植え替え作業を行った。赤玉土小粒(簗島商事(株)製)とピートモス(トーホー(株)製)を1対1に混合し、育苗コンテナへ充填して育苗培土とした。育苗コンテナに植え替えたスギ苗は野外の育苗棚に設置し、育苗管理を続けた。2020年11月1日にスギ苗の成長量を測定し、苗高35cm以上、根元径5.5mm以上となっているものを得苗して得苗率を算出した(表1)。
実施例2
育苗コンテナへの植え替えはスギの光補償点以上の日射量の和が360MW/m2を超えた時点で行った。その他は実施例1と同様にして実施した(表1)。
実施例3
育苗コンテナへの植え替えはスギの光補償点以上の日射量の和が396MW/m2を超えた時点で行った。その他は実施例1と同様にして実施した(表1)。
実施例4
2020年4月1日にヒノキ母樹より枝を採取し、長さ30cm程度の挿し穂を調整した。実施例1と同様、日射量及び温度を経時的に測定し、ヒノキの光補償点以上の日射量の和及び積算温度を算出した。日射量の和が360MW/m2を超えた時点で、育苗コンテナへの植え替え作業を行った。2020年11月1日にヒノキ苗の成長量を測定し苗高30cm以上、根元径3.5mm以上となっているものを得苗したとして得苗率を算出した。その他は実施例1と同様にして実施した(表1)。
比較例1
潅水は目視で挿し床表面が乾いたことが確認できたときに実施した。植え替え作業は育苗箱の底から根が伸長してきたことが確認できる前に実施した。その他は実施例1と同様に実施した(表1)。
比較例2
植え替え作業は育苗箱の底から根が十分に伸長してきたことを確認してから実施した。その他は実施例1と同様に実施した(表1)。
Figure 2022157476000001
光補償点以上の日射量の和を算出せずに植え替えを行った比較例1及び2と比較して、日射量の和を算出して確認した実施例1~4では、発根率及び得苗率が高く、苗高、根元径の大きい苗が得られた(表1)。
実施例5
2020年4月1日にスギ母樹より枝を採取し、長さ30cm程度の挿し穂を調整した。
培養容器として育苗コンテナ(マルチキャビティコンテナ)を用い、赤玉小粒土(簗島商事(株)製)とピートモス(トーホー(株)製)を1対1に混合し、充填して挿し床を調製した。上述のようにして調製した挿し穂の基部(切断部)にルートン(登録商標)(石原バイオサイエンス(株)製、植物ホルモンNAAを含む白色粉末、NAAの濃度は0.4%)の粉末を5~10mg塗布した後、該挿し穂を基部から5cm程度のところまで挿し床に挿しつけた。挿し穂を挿し付けた育苗コンテナを屋外の育苗棚に設置し、培土水分度を測定するための水分センサー(WD-3、株式会社ARP社製)を設置した。育苗コンテナの横に日射量を測定するための日射量センサー(ロガー付き日射計 三商社製)を設置した。発根培養中は培土水分度が20~25%を維持するように自動散水機を用いて行った。日射量センサーにより、2分に1回の間隔で日射量を測定し、スギの光補償点以上の日射量の和を算出した。また、積算温度を実施例1と同様にして算出した。
日射量の和が236MW/m2を超えた時点で、追肥としてプロミック錠剤遅効き中粒(6-8-8)(ハイポネックス社製)を与えた。2020年11月1日にスギ苗の成長量を測定し、苗高35cm以上、根元径5.5mm以上となっているものを得苗して得苗率を算出した(表2)。
実施例6
追肥はスギの光補償点以上の日射量の和が360MW/m2を超えた時点で実施した。その他は実施例5と同様に実施した(表2)。
実施例7
追肥はスギの光補償点以上の日射量の和が396MW/m2を超えた時点で実施した。その他は実施例5と同様に実施した(表2)。
実施例8
2020年4月1日にヒノキ母樹より枝を採取し、長さ30cm程度の挿し穂を調整した。日射量センサーにより、2分に1回の間隔で日射量を測定し、ヒノキの光補償点以上の日射量の和を算出し、360MW/m2を超えた時点で、追肥としてプロミック錠剤遅効き中粒(6-8-8)(ハイポネックス社製)を与えた。2020年11月1日にヒノキ苗の成長量を測定し、苗高30cm以上、根元径3.5mm以上となっているものを得苗して得苗率を算出した。その他は実施例5と同様に実施した(表2)。
比較例3
潅水は目視で挿し床表面が乾いたことが確認できたときに実施した。追肥は育苗コンテナの底から根が伸長してくる前に実施した。その他は実施例5と同様に実施した(表2)。
比較例4
潅水は目視で挿し床表面が乾いたことが確認できたときに実施した。追肥は育苗コンテナの底から根が十分に伸長してきたことを確認してから実施した。その他は実施例5と同様に実施した(表2)。
Figure 2022157476000002
光補償点以上の日射量の和を算出せずに追肥を行った比較例3及び4と比較して、日射量の和を算出して確認した実施例5~9では、発根率及び得苗率が高く、苗高、根元径の大きい苗が得られた。
これらの実施例は、本発明によれば、挿し穂の発根の確認を簡便かつ正確に、効率よく行うことができ、発根が確認された挿し穂は、良好な生長を示すことができること、これにより、高品質の挿し木苗を効率よく生産できることを示している。

Claims (18)

  1. 被験サンプルとしての、植物の挿し穂を光照射下で発根培養すること、
    発根培養中、前記挿し穂への光照射量を複数回測定し光照射量測定値A1、A2、・・・An(nは測定回数を表し、2以上である)を得ること、
    以下の式に従い、A1、A2・・・Anから、挿し穂の光補償点Bを差し引いた差分Cx(xは1以上n以下の整数である)を算出し、Cxの合計に測定間隔(s)をかけて、光補償点以上の日射量の和Dを算出すること、
    D=[(A1-B)+(A2-B)+・・・+(An-B)]*測定間隔(s)
    =[C1+C2+・・・Cn]*測定間隔(s)
    (ただし、Ax-B<0の場合、Ax-B=0としてCxを算出する。)
    及び、光補償点以上の日射量の和Dから、前記挿し穂の発根状況を評価すること、
    を含む、挿し穂の発根評価方法。
  2. 光補償点以上の日射量の和Dが200MW/m2以上の場合に被験サンプルが発根したと評価する、請求項1に記載の評価方法。
  3. 光補償点以上の日射量の和Dが200MW/m2以上の場合に被験サンプルの発根培養は完了したと評価する、請求項1に記載の評価方法。
  4. 光補償点以上の日射量の和Dが200~450MW/m2の場合に被験サンプルの発根培養は完了したと評価する、請求項1に記載の評価方法。
  5. 被験サンプルの発根状況の予測は、
    基準サンプルとしての、被験サンプルと同種の植物の未発根の挿し穂を光照射下で挿し穂が発根するまでの間発根培養すること、
    発根培養中、前記挿し穂への光照射量を複数回測定し光照射量測定値a1、a2、・・・am(mは測定回数を表し、2以上である)を得ること、
    以下の式に従い、a1、a2・・・amから、挿し穂の光補償点bを差し引いた差分c1、c2・・・cmを算出し、これらの合計値に測定間隔(s)をかけて、光補償点以上の日射量の和dを基準値として算出すること、
    d=[(a1-b)+(a2-b)+・・・+(am-b)]*測定間隔(s)
    =[c1+c2+・・・cm]*測定間隔(s)
    (ただし、ay-b<0の場合、ay-b=0としてcy(yは1以上m以下の整数である)を算出する。)
    及び
    基準値dと被験サンプルの光補償点以上の日射量の和Dを比較して、被験サンプルの発根状況を評価すること、
    である、請求項1に記載の評価方法。
  6. 基準値dが合計値D以上の場合に、被験サンプルが発根したと評価する、請求項5に記載の評価方法。
  7. 基準値dが合計値D以上の場合に、被験サンプルの発根培養は完了したと評価する、請求項5又は6に記載の評価方法。
  8. 発根培養の際、培土水分度18~35%となるように灌水を行う、請求項1~7のいずれか1項に記載の評価方法。
  9. 発根培養中、発根環境の温度を複数回測定し、測定値E1、E2・・・Ep(pは測定回数を表し、2以上である)を得ること、
    以下の式に従い、E1、E2・・・Epから5を差し引いた差分F1、F2・・・Fpを算出し、それらの合計値Gを算出すること、
    G=(E1-5)+(E2-5)+・・・(Ep-5)
    =F1+F2+・・・Fp
    (ただし、Fz-5<0の場合、Fz-5=0としてFz(zは1以上p以下の整数である)を算出する。)
    及び
    挿し穂の発根状況の評価の際、合計値Gを積算温度として更に参照すること、
    を更に含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の評価方法。
  10. 合計値Gが800℃以上の場合に被験サンプルが発根したと評価する、請求項9に記載の評価方法。
  11. 合計値Gが800℃以上の場合に被験サンプルの発根培養は完了したと評価する、請求項9に記載の評価方法。
  12. 合計値Gが800~1600℃の場合に被験サンプルの発根培養は完了したと評価する、請求項9に記載の評価方法。
  13. 積算温度の参照は、
    基準サンプルとしての、被験サンプルと同種の植物の未発根の挿し穂を光照射下で挿し穂が発根するまでの間発根培養すること、
    発根培養中、発根環境の温度を複数回測定し、測定値e1、e2、・・・eq(qは測定回数を表し、2以上である)を得ること、
    以下の式に従い、それぞれから基準温度5℃を差し引いた差分(f1、f2、・・・fq)を算出し、それらの合計値gを算出すること、
    g=(e1-5)+(e2-5)+・・・(eq-5)
    =f1+f2+・・・fq
    (ただし、fw-5<0の場合、fw-5=0としてfw(wは1以上q以下の整数である)を算出する。)
    基準値gと被験サンプルについての積算温度Gを比較して、被験サンプルの発根状況を評価すること、
    である、請求項9に記載の評価方法。
  14. 植物が、スギ属植物、ヒノキ属植物、マツ属植物、カラマツ属植物、モミ属植物、及びユーカリ属植物から選ばれる植物である、請求項1~13のいずれか1項に記載の評価方法。
  15. 植物の挿し穂を光照射下で発根培養すること、及び、
    請求項1~14のいずれか1項に記載の評価方法により被験サンプルとしての前記挿し穂の発根状況を評価すること
    を含む、植物の挿し穂の生産方法。
  16. 請求項1~14のいずれか1項に記載の評価方法により発根培養は完了したと評価された後、育苗工程へ移行する、請求項15に記載の生産方法。
  17. 発根培養の際、培土水分度18~35%となるように灌水を行う、請求項15又は16に記載の生産方法。
  18. 育苗工程において、育苗促進処理を行う、請求項15~17のいずれか1項に記載の生産方法。
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