JP7061864B2 - 植物の挿し木苗の生産方法 - Google Patents

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Description

本発明は、植物の挿し木苗の生産方法に関する。
挿し木は人為的に切断された植物組織を用いて発根床内で発根させ、独立した一つの植物体を作出する方法であり、遺伝的に均一な苗を大量増殖するのに優れた方法である。
スギやヒノキ等の山林苗の挿し木技術では、通常用いる20~40cm程度の長さを有する大きな穂に対して、例えば、5cm~10cm程度の長さを有する小さな穂(ミニ穂)を挿し穂として用いるマイクロカッティング法は、親木から大量の苗木を得られる利点を有し、大量増殖に向いていると考えられる(非特許文献1、2)。
斉藤雅一ら、和歌山県農林水産総合技術センター研究報告第13号81~88頁(2012年) 和歌山県農林水産総合技術センター 林業試験場 経営環境部 斉藤、和歌山県林業試験場だより 第67号3頁(2008年)
しかし、ミニ穂を挿し穂として用いて育成した挿し木苗は、通直性を保持できないことが多いことが課題である。この現象は枝性と称され、植物の枝を挿し穂として用いて挿し木苗を生産した場合に曲がってしまうことである。特に、頂芽を有する主軸以外の植物の部位をミニ穂として用いた場合その傾向が顕著である。通直性が保持できない挿し木苗は苗としての利用価値が低下する。また、枝性が極度な場合は培地上で自立できずに倒れてしまう。
本発明は、ミニ穂を挿し穂として用いて育成した挿し木苗の通直性を保持し、挿し木苗の生産効率を高めることのできる、植物の挿し木苗の生産方法の提供を目的とする。
本発明は、以下の〔1〕~〔5〕を提供する。
〔1〕挿し穂を発根培地に挿し付けて発根培養する発根培養工程、及び発根後の挿し穂を育苗培地にて育苗する育苗工程を含む、植物の挿し木苗の生産方法において、
前記発根培養工程が、
発根培地に挿し付けられる挿し穂として、頂芽を有する主軸以外の植物の部位を、20cm未満の長さを有するように調製する工程
を含み、
前記育苗工程が、
挿し穂の直近の部位に支柱を設置する工程、
を含む、方法。
〔2〕発根培地に挿し付けられる挿し穂が、5~10cmの長さを有するように調製される、〔1〕の方法。
〔3〕発根培地に挿し付けられる挿し穂が、2本以上の枝を有するように調製される、〔1〕又は〔2〕の方法。
〔4〕前記育苗工程が、挿し穂を剪定して1本の枝を残して他の枝を除去する工程をさらに含む、〔1〕~〔3〕のいずれかの方法。
〔5〕植物が、スギ属植物、ヒノキ属植物、マツ属植物又はコウヨウザン属植物である、〔1〕~〔4〕のいずれかの方法。
本発明によれば、挿し木苗の生産効率を高めることができる。具体的には、ミニ穂を用いた挿し木苗の生産において、枝性がなくなり通直性を保持した挿し木苗を得ることができる。ミニ穂を用いることにより、通常用いる20~40cm程度の長さを有する大きな枝を用いる場合に対して、親木から大量の苗木が得られ、大量増殖が可能となる。
本発明は、発根培養工程、及び育苗工程を含む植物の挿し木苗の生産方法を提供する。
〔発根培養工程〕
発根培養工程においては、挿し穂を発根培地に挿し付けて発根培養する。
(挿し穂)
挿し穂は、挿し木苗を得たい植物の挿し穂であればよい。植物の種類は特に限定されない。植物は木本植物と草本植物とに分類されうるが、本発明はこれらのいずれにも適用可能であり、木本植物に適用されることが好ましく、草本植物よりも発根能が劣っている木本植物に適用されることがより好ましい。木本植物としては、スギ属(Cryptomeria)植物(スギ(Cryptomeria japonica)など)、ヒノキ属(Chamaecyparis)植物(ヒノキ(Chamaecyparis obtusa))など)、マツ科(Pinaceae)植物(マツ属(Pinus)植物(クロマツ(Pinus thunbergii)など)、カラマツ属(Larix)植物(カラマツ(Larix kaempferi)、グイマツ(Larix gmelinii)など)、モミ属(Abies)植物(トドマツ(Abies sachalinensis)など)など)、ユーカリ属(Eucalyptus)植物、サクラ属(Prunus)植物(サクラ(Prunus spp.)、ウメ(Prunus mume)、ユスラウメ(Prunus tomentosa)など)、マンゴー属(Mangifera)植物(マンゴー(Mangifera indica)など)、アカシア属(Acacia)植物、ヤマモモ属(Myrica)植物、クヌギ属(Quercus)植物(クヌギなど(Quercus acutissima))、ブドウ(Vitis)属植物、リンゴ(Malus)属植物、バラ属(Rosa)植物、ツバキ属(Camellia)植物(チャ(Camellia sinensis)など)、ジャカランダ属(Jacaranda)植物(ジャカランダ(Jacaranda mimosifolia)など)、ワニナシ属(Persea)植物(アボカド(Persea americana)など)、ナシ属(Pyrus)植物(ナシ(Pyrus serotina Rehder、Pyrus pyrifolia)など)、ビャクダン属(Santalum)植物(ビャクダン(サンダルウッド;Santalum album)など)が例示される。このうち、スギ、ヒノキ、マツ(クロマツ、カラマツ、グイマツ、トドマツなど)、ユーカリ、サクラ、マンゴー、アボカド、アカシア、ヤマモモ、クヌギ、ブドウ、リンゴ、バラ、ツバキ、チャ、ウメ、ユスラウメ、ジャカランタ等に適用した場合に、より本発明の効果を発揮しうる。中でもスギ属植物、ヒノキ属植物、マツ科植物(マツ属植物、カラマツ属植物、モミ属植物など)、ユーカリ属植物、ツバキ属植物、マンゴー属植物、ワニナシ属植物が好ましく、スギ属植物、ヒノキ属植物、マツ属植物、カラマツ属植物、モミ属植物、ユーカリ属植物がより好ましく、スギ属植物、ヒノキ属植物、マツ属植物、カラマツ属植物、モミ属植物がさらに好ましい。
本発明において、発根培地に挿し付けられる挿し穂は、ミニ穂として調製される。本明細書において「ミニ穂」とは、「マイクロカッティング法」に用いられる挿し穂であり、挿し穂として通常用いられる20~40cm程度の長さを有する大きな穂よりも短い長さ(例、5~10cm)を有する穂である。ミニ穂の長さとしては、例えば20cm未満、好ましくは3~15cm、より好ましくは5~10cmである。
挿し穂は、頂芽を有する主軸以外の植物の部位であればよく、例えば、緑枝(当年枝)、熟枝(前年以前に伸びた枝)、側枝、節等が挙げられる。
本発明において、発根培養工程では、発根培地に挿し付けられる挿し穂として、2本以上の枝を有する植物の部位、例えば、2本以上の枝を有する側枝又は節を用いてもよい。挿し穂が2本以上の枝を有することは、葉の面積が増え光合成能力が向上するため、発根のために有利と考えられる。
発根培養工程において、頂芽を有する主軸以外の植物の部位を使用することは、得られる挿し穂が大幅に増える点で有利と考えられる。すなわち、頂芽を有する主軸以外の部位は、枝性が出やすく、通直性を保持した挿し木苗を得ることができないため、従来は挿し木には利用することができなかったからである。
本発明において、挿し付けの安定化の観点から、挿し穂の挿し付け部分の領域上(例えば、挿し穂の根元から2~3cmまで、より好ましくは3~4cmまで、さらに好ましくは4~5cmまでの領域上)において葉が除去されていることが好ましい。
(発根培地)
発根培地は特に限定されず、例えば、養液、水耕栽培水、植物組織培養用培地等の栽培用培地、前記栽培用培地の希釈培地、前記栽培用培地に適宜肥料成分を追加した培地が挙げられる。発根培養工程程は、例えば、水耕、又は土耕のいずれで実施してもよい。
肥料成分としては、例えば、無機成分、銀イオン、抗酸化剤、炭素源、ビタミン類、アミノ酸類、植物ホルモン類等の植物の栄養素の供給源となり得る成分が挙げられる。肥料成分の形態は特に限定されず、固形物(例、粉剤、粒剤)、又は液体(例、液肥)のいずれでもよい。
無機成分としては、窒素、リン、カリウム、硫黄、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、モリブデン、塩素、ヨウ素、コバルト等の元素や、これらを含む無機塩が例示される。該無機塩としては例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ホウ酸、三酸化モリブデン、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化コバルト等やこれらの水和物が挙げられる。無機成分として、上記具体例の中から1種を選択して、或いは2種以上を組み合わせて用いうる。本発明で用いられる液体培地においては、窒素、リン、カリウムが必須元素として含まれることが好ましい。よって、これら無機成分の具体例のうち、窒素、リン、カリウム、窒素を含む無機塩、リンを含む無機塩、及びカリウムを含む無機塩が好ましく、窒素、リン、カリウム、窒素を含む無機塩がより好ましい。無機成分は、液体培地中の濃度が、1種の場合は約1μM~約100mMとなるように添加することが好ましく、約0.1μM~約100mMとなるように添加することがより好ましい。2種以上の組み合わせの場合はそれぞれ約0.1μM~約100mMとなるよう添加することが好ましく、約1μM~約100mMとなるように添加することがより好ましい。
銀イオンとしては、例えば、チオ硫酸銀(STS、AgS46)、硝酸銀等の銀化合物(銀イオン源)が挙げられ、STSが好ましい。STSは培地中で、チオ硫酸銀イオンの形態を取り、マイナスに帯電していると推測され、これにより健全な根の発根及び伸長を促進に寄与することができる。培地中に添加する銀イオンの濃度は、銀イオン源の種類その他の培養条件などにもよるが、銀イオン源の濃度として約0.5μM以上約6μM以下が好ましく、約2μM以上約6μM以下がより好ましい。
抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸塩が挙げられ、アスコルビン酸が好ましい。アスコルビン酸は、培地への残留性が低いため、環境汚染を抑制できる。培地中に添加する抗酸化剤の濃度は、約5mg/l以上約200mg/l以下が好ましく、約20mg/l以上約100mg/l以下がより好ましい。
炭素源としては、ショ糖等の炭水化物とその誘導体;脂肪酸等の有機酸;エタノール等の1級アルコール、などの化合物を使用することができる。炭素源として、上記具体例の中から1種を選択して、或いは2種以上を組み合わせて用いうる。炭素源は、液体培地中に約1g/l~約100g/lとなるよう添加することが好ましく、約10g/l~約100g/lとなるように添加することがより好ましい。しかし、栽培を炭酸ガスを供給しながら行う場合には、培地は炭素源を含む必要は無く、含まないことが好ましい。ショ糖等の炭素源となりうる有機化合物は微生物の炭素源ともなるので、これらを添加した培地を用いる場合には、無菌環境下で栽培を行う必要があるが、炭素源を含まない培地を用いることにより、非無菌環境下での栽培が可能となる。
ビタミン類としては、例えば、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB4)、ピリドキサール、ピリドキサミン、パントテン酸カルシウム、イノシトール、ニコチン酸、ニコチン酸アミド及び/又はリボフラビン(ビタミンB2)等を使用することができる。ビタミン類として、上記具体例の中から1種を選択して、或いは2種以上を組み合わせて用いうる。ビタミン類は、液体培地中の濃度が、1種の場合は液体培地中に約0.01mg/l~約200mg/lとなるように添加することが好ましく、約0.02mg/l~約100mg/lとなるように添加することがより好ましい。2種以上の組み合わせの場合はそれぞれ、液体培地中に約0.01mg/l~約150mg/lとなるよう添加することが好ましく、約0.02mg/l~約100mg/lとなるように添加することがより好ましい。
アミノ酸類としては、例えば、グリシン、アラニン、グルタミン酸、システイン、フェニルアラニン及び/又はリジン等を使用することができる。アミノ酸類として、上記具体例の中から1種を選択して、或いは2種以上を組み合わせて用いうる。アミノ酸類は、液体培地中の濃度が、1種の場合は液体培地中に約0.1mg/l~約1000mg/lとなるように添加することが好ましく、2種以上の組み合わせの場合は、それぞれ液体培地中に約0.2mg/l~約1000mg/lとなるよう添加することが好ましい。
植物ホルモンとしては、例えば、オーキシン及びサイトカイニン等の発根促進剤が挙げられる。オーキシンとしては、ナフタレン酢酸(NAA)、インドール酢酸(IAA)、p-クロロフェノキシ酢酸、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4D)、インドール酪酸(IBA)及びこれらの誘導体等が例示され、これらから選択される1種以上又は2種以上を組み合わせて用い得る。また、サイトカイニンとしては、ベンジルアデニン(BA)、カイネチン、ゼアチン及びこれらの誘導体等が例示され、これらから選択される1種以上又は2種以上を組み合わせて用い得る。植物ホルモンは、オーキシン、又は、オーキシンとサイトカイニンの組み合わせが好ましい。
発根用培地中の植物ホルモンの濃度は、植物ホルモンを1種用いる場合には0.001mg/l~10mg/lであることが好ましく、0.01mg/l~10mg/lであることがより好ましい。植物ホルモンが2種以上の場合にはそれぞれ、0.001mg/l~10mg/lであることが好ましく、0.01mg/l~10mg/lであることがより好ましい。植物ホルモンの添加方法は特に限定されず、市販品の説明書に従って添加すればよく、例えば、粉末のまま挿し穂の基部に塗布する方法、培地に添加する方法が挙げられる。
養液、水耕栽培水、植物組織培養用培地は、公知のものから適宜選択し、必要に応じて希釈されていてもよい。植物組織培養用培地としては、例えば、MS(ムラシゲ-スクーグ)培地、リンスマイヤースクーグ培地、ホワイト培地、ガンボーグのB-5培地、ニッチニッチ培地等を挙げることができる。中でも、MS培地及びガンボーグのB-5培地が好ましい。
発根培地は、支持体を含んでもよい。これにより、挿し穂を発根培地中で支持し、発根培養を効率的に実施できる。支持体は、発根培養工程中、挿し穂を支持した状態で保持できれば特に限定されず、従来慣用の支持体を用いることができる。支持体としては例えば、砂、土(例、赤玉土)等の自然土壌(好ましくは、赤玉土);籾殻燻炭、ココナッツ繊維、バーミキュライト、パーライト、ピートモス、ガラスビーズ等の人工土壌;発泡フェノール樹脂、ロックウール等の多孔性成形品;固化剤(例、寒天又はゲランガム)などが挙げられる。支持体は、挿し穂と培地との接触を妨げないものであればよく、支持体が培地の少なくとも一部を含んでいてもよい。
培地と支持体は、容器に載置されていてもよい。容器は特に限定されないが、複数の挿し穂を一株ずつ処理できるように区分けされた構造の容器であることが好ましい。挿し穂が枝の場合、密閉型の培養容器を用いることが好ましい。これにより挿し穂を高湿度下に置くことが容易となるので、枝についた葉の蒸散作用が抑制され、従来行われていた葉の一部切除処理を省略することができる。
容器への発根培地の載置方法は特に限定されず、例えば、支持体を容器に入れた後、培地を入れる方法、培地を容器に入れた後に支持体を入れる方法、支持体に容器内に入れ培地を保持させる方法、支持体を予め培地で膨潤させ、膨潤した支持体を容器に載置する方法が挙げられる。
発根工程においては、通常は1種類の発根培地を用いるが、期間を区切る等して2種以上の発根培地の組合せを用いてもよい。
発根培養工程において、発根培地への挿し穂の挿し付け方法は、培地の種類、培養条件等により適宜選択すればよい。また、発根用培地に挿し付ける時に挿し穂の基部に傷をつける等の物理的刺激を加えることも、発根率の向上のために好ましい。挿し穂の基部とは、挿し穂の一端であって根が形成される領域(葉の形成される端部に対し反対側)を意味する。挿し穂の基部への傷のサイズ(大きさ、形状など)は特に限定されない。傷を付ける際には、ハサミ、ナイフなどの器具を用いることができる。
(培養場所)
発根培養工程を実施する場所は、閉鎖空間(例、ビニールハウス内、炭酸ガス培養室内、屋内)又は解放空間(例、屋外)であってもよいが、閉鎖空間が好ましい。これにより、温度、湿度等の育苗条件の調整が容易となる。
発根培養工程の培養期間は、植物種によっても異なるが、通常は2週間~10ヶ月であり、4週間~6ヶ月であることが好ましく、2ヶ月~6ヶ月であることがとりわけ好ましい。発根培養工程は、挿し穂から発根が観察されるまで続ければよい。
〔育苗工程〕
育苗工程においては、発根後の挿し穂を育苗培地にて育苗する。
(発根後の挿し穂)
発根後の挿し穂は、発根培養工程を経て発根した挿し穂である。挿し穂が発根していることは、肉眼による観察にて根を確認できればよい。
育苗工程において、発根後の挿し穂は、1本の枝を残して他の枝を除去するように剪定される。剪定において残す枝は発根後に萌芽した枝でも良く、例えば、枝径が1番太い枝もしくは枝径に差がない場合は枝長が1番長い枝とすることが挙げられ、いずれも先端に芽があることが必要である。剪定は、発根から例えば2ヶ月後、好ましくは1ヶ月後、より好ましくは発根直後に行ってもよく、1度だけ行ってもよく、余分な枝が発生するたびに随時行ってもよい。剪定による余分な枝の除去は、養分の分散防止により挿し木苗の1方向への成長に有利と考えられる。
育苗工程において、支柱が、発根後の挿し穂の直近の部位に設置される。支柱は、挿し穂を支えるための形状を有する部材であれば特に限定されず、例えば、棒状の形状を有する部材が挙げられる。棒状の形状としては、例えば、2mm~35mmの径を有し、5cm~400cmの長さを有する形状が挙げられる。支柱は、略鉛直に設置されることが好ましい。発根後の挿し穂は、支柱に誘引させて育苗される。挿し穂の支柱への誘引は、例えば、挿し穂の支柱への紐付けもしくはクリップによる固定によって行ってもよい。挿し穂の支柱への誘引は、剪定から例えば1ヶ月後、好ましくは剪定直後、より好ましくは剪定と同時に行ってもよい。育苗工程後は、支柱は設置されたままであっても、除去されていてもよい。支柱の設置は、挿し穂の鉛直方向への生育を補助するために有利と考えられる。
(育苗培地)
育苗培地の例は、発根培地の項目において説明した発根培地の例と同様である。発根培地と育苗培地とは共通でも異なっていてもよいが、発根培地と共通であることが好ましく、発根培地をそのまま育苗培地として用いてもよい。すなわち、発根後の挿し穂を発根培地に挿し付けたまま、発根培地を育苗培地として育苗工程を継続して実施してもよい。一方、発根後の挿し穂を発根培地から別途調製された育苗培地に挿し替えて育苗工程を実施してもよい。育苗工程は、例えば、水耕、又は土耕のいずれで実施してもよい。
(育苗場所)
育苗工程を実施する場所は、閉鎖空間(例、ビニールハウス内、炭酸ガス培養室内、屋内)又は解放空間(例、屋外)のいずれであってもよい。発根培養工程と育苗工程を実施する場所は同じ場所又は異なる場所のいずれであってもよい。
(挿し木苗)
育苗工程を経て、挿し穂は挿し木苗へと生育する。本発明の方法で生産された挿し木苗は、通直性を保持できる。すなわち、本発明の方法で生産された挿し木苗は、保持具がなくても鉛直方向に自立した状態を維持し、優れた得苗率を奏し得る。
以下実施例により本発明を説明するが本発明はこれに限定されない。
(実施例1)
スギの越年枝より40cmほどの荒穂を2月に採取し、ハサミにて分断した。分断した穂から、頂芽を有する主軸以外の植物の部位として側枝及び節を選別した。分断した穂の長さは5~10cmであった。選別した穂の根元から2~3cmまでの領域上にある葉をすべて切断して挿し穂を調製した。培養容器としてセルトレーを用い、赤玉小粒土(簗島商事(株)製)とピートモス(トーホー(株)製)を1対1に混合し、充填して挿し床を調製した。上述のようにして調製した挿し穂の基部(切断部)にルートン(登録商標)(石原バイオサイエンス(株)製、植物ホルモンNAAを含む白色粉末、NAAの濃度は40%)の粉末を5~10mg塗布した後、該挿し穂を基部から2~3cmのところまで挿し床に挿しつけたものを、ビニールハウス内に配置して6月まで発根培養した。培地としては水を使用した。培養後の挿し穂を肉眼により観察し、根が確認されれば発根したと判断した。発根後は枝が2本以上で先端に芽がある場合は1本に剪定し、先端に芽がない場合は新たに萌芽させた枝を1本残して剪定した。さらに、支柱を立てて、挿し穂を支柱に紐付けすることにより誘引し、野外に出して4ヶ月間育苗した。育苗中は化学肥料(液肥)を毎週1回散布した。育苗期間後に生存していて苗高が40cmを超え通直性があれば得苗したと判断した。支柱を除去しても苗が鉛直に立つ場合に、通直性を有すると判断した。
(比較例1)
剪定を行わない、支柱にて誘引しない以外、実施例1と同様に実施した。
(比較例2)
支柱にて誘引しない以外、実施例1と同様に実施した。
(比較例3)
剪定を行わない以外、実施例1と同様に実施した。
(比較例4)
40cmの荒穂を分断せずに下部4~5cmの範囲の葉をすべて切断して挿し穂(頂芽を有する主軸)を調製し、基部から4~5cmのところまで挿し床に挿しつけた以外、実施例1と同様に実施した。
〔評価項目および結果〕
実施例および比較例において、得苗数、通直性、及び得苗率を評価した。結果を表1に示す。
Figure 0007061864000001
実施例1及び比較例1~3は、ミニ穂を挿し穂として用いた場合の各種生育条件下での挿し木苗の生産方法の対比を示す。実施例1は、得苗数、通直性、及び得苗率の全てにおいて比較例1~3より優れていたことが示される。
実施例1及び比較例4は、それぞれ、ミニ穂又は40cmの穂を挿し穂として用いた場合の挿し木苗の生産方法の対比を示す。実施例1は、単位数あたりの親木から得られる挿し木苗の数において比較例4より優れていると考えられる。
以上から、本発明の植物の挿し木苗の生産方法が優れていることが示された。

Claims (3)

  1. 挿し穂を発根培地に挿し付けて発根培養する発根培養工程、及び発根後の挿し穂を育苗培地にて育苗する育苗工程を含む、植物の挿し木苗の生産方法において、
    前記挿し穂が、スギ属植物、ヒノキ属植物、マツ属植物、カラマツ属植物、モミ属植物又はコウヨウザン属植物であり、
    前記発根培養工程が、
    発根培地に挿し付けられる挿し穂として、頂芽を有する主軸以外の植物の部位を、20cm未満の長さを有するように調製する工程
    を含み、
    前記育苗工程が、
    発根後の挿し穂の直近の部位に支柱を設置する工程、及び
    発根後の挿し穂を、芽を有する枝を、又は新たに萌芽させた枝を、1本残すように剪定し、支柱に誘引させて育苗する工程、
    を含む、方法。
  2. 発根培地に挿し付けられる挿し穂が、5~10cmの長さを有するように調製される、請求項1に記載の方法。
  3. 発根培地に挿し付けられる挿し穂が、2本以上の枝を有するように調製される、請求項1又は2に記載の方法。
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