JP5013143B2 - マツ科樹木の挿し木苗の生産方法 - Google Patents

マツ科樹木の挿し木苗の生産方法 Download PDF

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Description

本発明は、マツ科樹木の苗を、挿し木法により商業規模で大量生産する技術に関する。
マツ科(Pinaceae)の樹木は世界で最も広く植林されている樹種のひとつであり、わが国においても産業利用のみならず、里山のアカマツ林、海岸沿いのクロマツ林などが、日本を代表する風景として定着している。
このように、広く植えられている樹木であるにもかかわらず、マツの栄養増殖法としては接ぎ木が主流で、挿し木は一般に行われていない。
また、マツ科樹木の接ぎ木による生産においては、植物生長調節物質の一種で、細胞分裂やシュートの形成を促す働きがあるサイトカイニンを用いて、外植体を効率よく採取する方法が知られている。すなわち、図1に示すように、マツ科の樹木は、針葉の根元に短枝と呼ばれる長さ2〜3mmの短い枝部を持っており、この短枝の頂部で針葉の基部にあたる部分に芽の原基である茎頂を備え、通常、この短枝の茎頂は休眠状態にあるが、上記方法では、サイトカイニンを作用させることで、この短枝の茎頂からシュートを誘導し、接ぎ穂として利用する(非特許文献1)。
一方、マツの挿し木による生産方法は、一般に挿し木に適していると言われる当年枝を用いて種々検討されているが、実用規模で実施可能な挿し木苗生産方法は、未だに知られていない。その理由として、大きく次の三つが考えられる。
理由1.マツ科の樹木は樹齢を経るに従い、当年枝から得た挿し穂であっても、発根率が著しく低下する。
理由2.若齢木の当年枝から得た挿し穂では、ある程度の発根率が見込めるものの、樹体が小さいために当年枝が少なく、十分な数の挿し穂を採取できない。
たとえば、マツ科の樹木であるアカマツやクロマツの分枝は、自然状態では年に一回、新芽を中心として5本程度の側芽が車軸状に伸長するのみであるため、挿し穂として採取できる当年枝の数は限られ、3〜5年程度の若齢木の場合、挿し穂は20〜40本程度しか得られない。
理由3.若齢木の当年枝を挿し穂として用いた場合でも、発根までに3〜6ヶ月という長い期間が必要とされる。
このため、例えば、日本において猛威を振るっている松枯れ病に対する耐性等、有用な形質を持ったマツ科樹木があったとしても、挿し木による有効な生産方法が開発されていないために、苗の供給は接ぎ木苗か種子由来の実生苗に頼らざるを得ない。しかし、接ぎ木による苗の生産方法は作業工程が煩雑で熟練を要する。また、実生苗は、必ずしも親株の有していた形質が伝えられるとは限らないため、上記のような有用形質を備えた均質な苗を、実用規模で、一度に大量に得ることは困難である。
本出願人は既に、難発根性樹木の挿し木による生産方法として、光独立栄養培養法を利用した挿し木苗生産方法を報告しているが(特許文献1)、この方法を用いても、マツ科樹木の実用規模での挿し木苗生産は困難であった。
特開2001−186814 涌島、吉岡、「マツノザイセンチュウ抵抗性アカマツの増殖に関する研究−BAP噴霧処理の時期と回数がシュートの発生に与える影響について−」、広島県林業試験場研究報告、1993年、第27巻、p.95〜100
本発明は、以上の状況を背景としてなされたものであり、従来、挿し木による増殖が困難とされていたマツ科樹木にも適用できる、挿し木苗の生産方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、マツ科樹木において、実用規模の量の挿し木苗、即ち、造林や植林に使用可能な量の挿し木苗を一度に生産できる、挿し木苗の生産方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究の結果、サイトカイニンの外添により鱗片葉及び/又は一次葉を誘導させたマツ科樹木の短枝を、光独立栄養培養することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(4)に関する。
(1)以下の工程A及びBを経て行うことを特徴とする、マツ科樹木の挿し木苗生産方法。
A.マツ科樹木の短枝茎頂にサイトカイニンを外添し、新たな鱗片葉及び/又は一次葉を誘導する工程。
B.上記工程Aにて新たな鱗片葉及び/又は一次葉が誘導された短枝を切り取り、これを挿し穂として、窒素、リン、カリウムを必須元素として含み、かつ、炭素原を含まない液体培地で湿潤させた発根床に挿し付けて、培養容器内で、培養容器内の炭酸ガス濃度を制御しつつ、湿度80%以上で培養することにより、上記挿し穂からの発根を行なわせる工程。
(2)工程A及び/又はBを非無菌条件下で行うことを特徴とする、(1)に記載の方法。
(3)培養容器内の炭酸ガス濃度を300〜1500ppmに制御して行うことを特徴とする、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)マツ科樹木がマツ属(Pinus)に属する樹木であることを特徴とする、(1)、(2)又は(3)に記載の方法。
上記(1)に係る発明によれば、挿し穂として、サイトカイニンの外添により、新たな鱗片葉及び/又は一次葉を誘導させたマツ科樹木の短枝を用いるので、樹体の小さな若齢木であっても、大量の挿し穂を採取することできる。また、こうして得られた挿し穂を、培養容器内で高湿条件下、植物の生育に必要な栄養素を与えて、炭酸ガス濃度を制御しつつ培養するので、従来は発根が困難であったマツ科樹木において、挿し穂からの発根を促進し、その発根率を大きく向上させることができる。従って、上記(1)に係る発明によれば、従来、挿し木による増殖が困難とされていたマツ科樹木にも適用できる、挿し木苗の生産方法を提供できるのみならず、マツ科樹木において、実用規模の量の挿し木苗、即ち、造林や植林に使用可能な量の挿し木苗を一度に生産できる、挿し木苗の生産方法を提供することができる。
また、上記(2)に係る発明によれば、発明の実施あたって、無菌設備や無菌化のための操作を必要としないので、より低コストかつ容易な、マツ科樹木の挿し木苗生産方法を提供することができる。
また、上記(3)に係る発明によれば、培養容器内の炭酸ガス濃度が、光独立栄養培養に最適な範囲に保たれ、より確実に挿し穂からの発根が促進され、その発根率を大きく向上させることができるので、大量の挿し木苗の生産に一層適した、マツ科樹木の挿し木苗生産方法を提供することができる。
さらに、上記(4)に係る発明によれば、マツ科樹木のマツ属には、日本を代表するマツ科樹木であるアカマツやクロマツ等が属するので、より社会的に大きな貢献が期待できる、マツ科樹木の挿し木苗生産方法を提供することができる。
マツ科樹木の枝葉の各部位の位置関係と名称を示す説明図である。 サイトカイニン類の外添による、短枝茎頂及びその周辺部の変化を示す説明図である。 従来の挿し穂の調製法を示す説明図である。
符号の説明
1 長枝
2 針葉
3 短枝茎頂
4 短枝
5 短枝茎頂から発達した頂芽
6 新たに分化・展開してきた鱗片葉又は一次葉
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、マツ科樹木に対して適用できる。挿し穂を採取する母樹としては、健全な状態にあるものであれば、大きさ・樹齢に制限は無い。また、採取時期にも制限はないが、後述するサイトカイニン類の外添によって、より発根に適した挿し穂を得るためには、サイトカイニン類の外添から挿し穂の採取までの期間が、1年のうち、母樹の旺盛な生育期と、ほぼ一致していることが好ましい。このような観点から、たとえばアカマツであれば、生育期がほぼ終わりつつある晩秋から、翌年の生育期の始まりである春先までの期間は、挿し穂の採取時期としては好ましくない。
母樹の短枝茎頂に外添するサイトカイニンとしては、ゼアチン、ベンジルアミノプリン(BAP)、カイネチン等の既知のサイトカイニン類を、単独又は2種以上組合せて使用することができる。なお、インドール酢酸(IAA)、インドール酪酸(IBA)、ナフタレン酢酸(NAA)等のオーキシン類も、上記サイトカイニン類と共に、単独又は2種以上組合せて、外添して構わない。
上記サイトカイニン類等、即ち、サイトカイニン類、又はサイトカイニン類とオーキシン類とは、適当な媒質で所定の濃度となるように希釈した上で、挿し穂を採取する母樹の、少なくとも短枝の上端にある茎頂(図1参照)に直接付着するよう外添する。希釈のための媒質としては、水、脂質、鉱物性の微粉末等を例示することができる。
たとえば、水を媒質とする場合には、上記サイトカイニン類等を溶解し、水溶液として外添することができる。また、脂質を媒質とする場合には、上記サイトカイニン類等をいったん水に溶解した後、乳化剤や界面活性剤を用いて媒質とする脂質に均一に懸濁するか、又は、水に溶解させず、粉状のまま脂質に均一に懸濁もしくは混合し、懸濁液もしくは混合液として外添することができる。鉱物性の微粉末等、粉体を媒質とする場合には、上記サイトカイニン類等をこの粉体に均一に混合して、外添すればよい。媒質に対するサイトカイニン類の濃度(2種以上を組合せて使用したときは、組合せたサイトカイニンの合算量から算出される濃度)は、用いるサイトカイニンの種類にもよるが、媒質1lあたり10〜1000mg、又は、媒質1kgあたり10〜1000mg/kgの範囲が好ましい。なお、外添にあたっては、必要に応じて展着剤等の他の成分も、上記サイトカイニン類、乳化剤、界面活性剤と共に媒質に添加して、用いることができる。
外添は、水溶液又は流動性の高い脂質を媒質とする懸濁液の場合には、上記サイトカイニン類等を溶解した水溶液又は懸濁液を、噴霧器により噴霧したり、如雨露により散布したりする他、この水溶液又は懸濁液に、挿し穂として採取しようとする短枝を浸漬することで実施できる。また、流動性の低い脂質を媒質とする混合液の場合には、上記サイトカイニン類等を均一に混合した混合液を、筆、シリンジ、もしくはグリースガンなど適切な治具を用いて塗布することで、実施できる。粉体を媒質とする場合には、上記サイトカイニン類等を均一に混合したこの粉体を、挿し穂として採取しようとする短枝に粉衣することで実施できる。
外添の回数に特に制限は無い。上記濃度のサイトカイニン類を週に2回程度の間隔でマツ科樹木の短枝茎頂に外添する場合、通常であれば、1〜10回の外添処理を行うことで、本発明の挿し穂として使用可能な状態となるが、屋外に生育している母樹から挿し穂を採取しようとすると、短枝茎頂に外添されたサイトカイニン類は、降雨や強風等に曝され流亡するおそれがあるので、気象条件によって、効果の発現に必要な外添回数は異なってくるためである。
上記のようにしてサイトカイニン類が外添された短枝茎頂は、通常、外添開始後2〜3週間で休眠が破られ、次第に肥大して頂芽に発達し、その頂芽の基部や短枝の上部に、鱗片葉及び/又は一次葉を分化させる(図2参照)ので、本発明においては、こうして鱗片葉及び/又は一次葉の分化が誘導された短枝を、その基部で長枝から切り取り、挿し穂として、光独立栄養培養を行う。
このとき、挿し穂としては、緑色をした鱗片葉及び/又は一次葉が長さ2〜10mmほどに伸長しており、こうして伸長し、針状となった葉(以下、針葉とも記載する。)が、それぞれ隣り合う針葉と触れ合う程度まで展開したものを用いることが、光独立栄養培養によって、高い発根率を得る上で好ましい。このような状態の挿し穂は、短枝基部から茎頂先端まで1cm前後しかなく、従来の挿し木法で用いられる挿し穂に較べると著しく小さいが、本発明においては問題なく使用でき、むしろ、上記したように高い発根率が得られる。
以上のようにして採取された挿し穂は、液体培地で湿潤させた発根床に挿し付け、光独立栄養培養を行う。より具体的には、窒素、リン、カリウムを必須元素として含み、かつ、炭素原を含まない液体培地で湿潤させた発根床に挿し付けて、培養容器内の炭酸ガス濃度を制御しつつ、湿度80%以上で培養を行う。
本発明において液体培地は、窒素、リン、カリウムを必須元素とする。このような液体培地としては、市販の家庭園芸用複合肥料や公知の植物組織培養用液体培地をそのまま、又は適宜希釈して用いることができる。例えば、家庭園芸用複合肥料としては、窒素、リン、カリウムを主要成分とする「ハイポネックス液5−10−5(登録商標)」((株)ハイポネックスジャパン製)液を250〜500倍に希釈した溶液が、植物組織培養用液体培地としては、ガンボーグB5培地やムラシゲ・スクーグ培地(Murashige and Skoog、Physiol. Plant、15: 473(1962)、以下、MS培地と略記する。)を4〜16倍に希釈した溶液が、本発明において、汎用性の高い液体培地として使用できる。
なお、上記MS培地を始め、公知の植物組織培養用培地は、窒素、リン、カリウムの他、多量元素として水素、炭素、酸素、硫黄、カルシウム、マグネシウムを、微量元素として鉄、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ホウ素、塩素を、無機塩類、又は、チアミン、ピリドキシン、ニコチン酸等のビタミン類として含んでいる。従って、本発明の液体培地としては、窒素、リン、カリウムの他、これらの元素を無機塩類又はビタミン類等として含有しているものも、使用することができる。
また、本発明において使用する液体培地には、更に、植物生長調整物質を添加することもできる。例えば、植物組織からの不定根発生を促進する、IAA、IBA、NAA等のオーキシン類を単独で又は2種以上組合せて、本発明の液体培地に0.1〜10mg/l添加することにより、挿し穂からの発根、即ち挿し木苗の形成を促進することができる。
一方、本発明の液体培地には、ショ糖等の炭素源は含まれない。炭素源は、多くの生物に共通するエネルギー源であるが、本発明では、屋外又は温室内等で生育したマツ科樹木を母樹とし、挿し穂も、こうした非無菌条件下で鱗片葉及び/又は一次葉が誘導された短枝を、特に殺菌操作を行うことなく、湿度80%以上で培養するため、炭素原を含有する培地を用いると、挿し穂に付着した雑菌や、培養環境中の雑菌が培地中の炭素源を栄養源として繁殖し、挿し穂や、これから形成される苗の枯死をもたらすからである。
挿し穂を挿し付ける発根床としては、液体培地により実質的に均一に湿潤されるものであって、かつ、挿し穂を挿し付けた際に、その挿し付けた状態で保持できるようなものを用いる。例えば、砂、赤玉土等の自然土壌、バーミキュライト、パーライト、ガラスビーズ等の人工土壌、又は発泡フェノール樹脂、ロックウール等の多孔性成形品等を培養容器内に入れ、これを発根床として使用することができる。
本発明において、窒素、リン、カリウム等の栄養素を液体培地により与えられた挿し穂は、活発に光合成を行なうため、この炭酸ガスの濃度を人工的に制御する必要が生ずる。即ち、挿し穂の活発な光合成により、培養容器内の炭酸ガス濃度は低下するので、これを、人為的に補う必要がある。培養容器内の挿し穂に活発に光合成を行なわせ、その発根率を向上させるため、培養容器内の炭酸ガス濃度は300〜1500ppmに制御するのが好ましい。培養容器内の炭酸ガス濃度が300ppmより低いと、挿し穂の光合成能も発根率も、大幅な向上を期待できない。また、培養容器内の炭酸ガス濃度を1500ppmより高めても、挿し穂の光合成能や発根率は、その炭酸ガス濃度に見合った向上を示さなくなる。炭酸ガス濃度の制御は、各培養容器ごとに行なってもよいが、培養容器が置かれる環境自体の炭酸ガス濃度を制御することで、培養容器内を所定の炭酸ガス濃度に制御する方が、簡便で、コスト的にも有利である。このとき、培養容器は、後述のように、開口部をそのまま開放したものや、その開口部を炭酸ガス透過性の膜で覆ったものを使用することができる。
本発明において、培養容器内の湿度は、比較的容易に80%以上とすることができる。すなわち、上記したように、本発明は液体培地で湿潤させた発根床を用いるので、培養容器内は高湿度となりやすく、例えば、この培養容器内で生産される挿し木苗の高さより、開口部が高い位置にある広口フラスコ等を利用すれば、挿し穂から健全な苗が形成されるまでの間、培養容器内の環境は、通常、湿度80%以上に自然と保持されるからである。また、かかる容器ばかりではなく、容器開口部の大きさや位置を工夫することで、種々の形態の容器において、培養容器内の環境を湿度80%以上に保持することができる。従って、本発明においては、作業性等を考慮し、種々の形態の容器を、その培養容器として選択することができる。なお、培養容器内の環境を高湿度に保つという観点から、最も好ましいのは密閉容器の使用であるが、この場合でも、培養容器内には炭酸ガスが供給されるようにしなければならない。例えば、容器開口部を炭酸ガス透過性の膜で蔽ったり、容器の一部又は全体を炭酸ガス透過性のフィルムやシートで作成する等の方法を、このような目的のために採用することができる。
本発明の挿し木苗の生産方法においては、他の条件、即ち、挿し穂を培養するにあたっての温度や光強度の条件に特に制限はない。温度20〜30℃、光強度40〜100μmol/m/sec程度の条件が、マツ科樹木の光合成に好ましい。また、本発明においては、光を照射して培養を行なう明期と、暗黒下で培養を行なう暗期とを設定し、この明期・暗期を交互に繰返して培養を行なってもよい。この場合、光合成は明期においてのみ行なわれるので、培養容器内の炭酸ガス制御も、明期においてのみ行えばよい。
なお、前記したように、本発明は、ショ糖等の炭素源が培地に含まれていないため、非無菌条件下で挿し穂を培養し、挿し木苗を生産できる。しかし、より健全な苗の生産のため万全を期すには、培養容器、液体培地、発根床については、挿し穂の挿し付け前に、予め乾熱滅菌やオートクレーブ滅菌等の処置を行なっておくことが好ましい。
本発明において生産されたマツ科樹木の挿し木苗は、発根後、直ちに培養容器から取出して育苗容器に移植し、育成することができる。育苗容器に移植する際の用土や、苗を育成する際の温度・光強度等の条件は、マツ科樹木に公知の条件を適宜設定すればよい。かかる育成過程を経ることによって、植林等、所定の目的に使用可能な苗とすることができる。
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
温室内で生育している、実生により得られた樹齢3年のアカマツ(Pinus densiflora)の地上部全体に、250mg/lに希釈したBAP水溶液を、週2回の間隔で、計15回にわたり、市販のスプレー容器にて満遍なく噴霧することにより、その短枝茎頂にBAPを外添した。
BAPの外添処理開始から3ヵ月後、短枝の上部や頂芽の基部から分化が誘導された緑色の鱗片葉及び/又は一次葉が伸長し、針葉が展開してきたので、こうした新たな針葉が隣同士で互いに触れ合う程度まで展開している短枝を、挿し穂とするため基部から切り取り、更に、この短枝の既存の針葉(BAPの外添処理開始前から存在していた針葉)を3cm程度に切り詰めて、挿し穂を調製した。なお、このとき、サイトカイニンの外添により、新たな針葉が挿し穂として使用可能な状態まで伸長し、展開している短枝は全部で461本であった(表1)。すなわち、本発明によれば、上記アカマツから最大461本の挿し穂を採取できることとなる。
一方、培養容器としては、縦11cm、横11cm、高さ10cmのポリカーボネート製容器の上面2ヶ所に直径1cmの穴を開け、この開口部を炭酸ガス透過性の膜(日本ミリポア(株)製『ミリシール』)で蔽ったものを用意した。発根床としては、IBA2mg/lを添加した、4倍希釈ガンボーグB5培地100mlにより湿潤させた、汎用の園芸用土である赤玉土の細粒品を使用した。
挿し木苗の生産は、上記のようにして調整した挿し穂を、この発根床に、培養容器あたり9本となるように挿し付け、各培養容器内の炭酸ガス濃度が1500ppmとなるように制御し、温度25〜28℃、光強度80μmol/m/sec、明期16時間、暗期8時間で培養することにより行った。なお、培養容器内の炭酸ガス濃度の制御は、この培養容器が置かれた環境中の炭酸ガス濃度を制御することにより行った。
以上のようにして調製し、培養した挿し穂100本の発根率は33.5%であった(表1)。
[比較例1]
屋外で生育している推定樹齢15〜20年のアカマツを用い、従来法にて挿し穂を採取し、調製した。すなわち、図3に示すように、上記アカマツの当年枝に伸長した長枝を、茎頂部から4cm程度のところで切り取り、その切り口から中ほどにかけての針葉を切除したものを挿し穂として用いた。このようにして調製した挿し穂の培養を、実施例1と同様に行ったが、挿し穂100本のうち発根したものはなく、発根率は0%であった(表1)。
[比較例2]
培養容器内の炭酸ガス濃度を全く制御しないで行った以外は、実施例1と同様にして挿し穂の培養を行ったところ、培養した挿し穂100本の発根率は0.6%であった(表1)。
[比較例3]
温室内で生育している、実生により得られた樹齢3年のアカマツの短枝を、サイトカイニン類の外添を行うことなく、基部から切り取り、更に、この短枝に存在している針葉を3cm程度に切り詰めて、挿し穂を調製した。このようにして調製した挿し穂の培養を、実施例1と同様に行ったが、挿し穂100本のうち発根したものはなく、発根率は0%であった(表1)。
[比較例4]
温室内で生育している、実生により得られた樹齢3年のアカマツを用い、従来法にて挿し穂を採取し、調製した。すなわち、図3に示すように、上記アカマツの当年枝に伸長した長枝を、茎頂部から4cm程度のところで切り取り、その切り口から中ほどにかけての針葉を切除したものを挿し穂として用いた。なお、このとき、当年枝より伸長し、挿し穂として使用可能な長枝は全部で21本であった(表1)。すなわち、この例では、上記アカマツから最大21本の挿し穂しか採取できないこととなる。
また、このようにして調製した挿し穂の培養を、実施例1と同様に行ったところ、培養した挿し穂100本の発根率は16.7%であった(表1)。
Figure 0005013143
表1より明らかなように、本発明によれば、マツ科樹木の挿し穂からの発根が促進され、発根率が約2倍と、大きく向上する。しかも、同じ樹齢の母樹で比較した場合に、従来法に対して、20倍以上の挿し穂を採取することができる。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2007年6月13日出願の日本特許出願(特願2007−155859)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。すべての引用される参照は内容として取り込まれる。
本発明によって、従来、挿し木による増殖が困難とされていたマツ科樹木にも適用できる、挿し木苗の生産方法が提供される。また、マツ科樹木において、実用規模の量の挿し木苗、即ち、造林や植林に使用可能な量の挿し木苗を一度に生産できる、挿し木苗の生産方法が提供される。

Claims (4)

  1. 以下の工程A及びBを経て行うことを特徴とする、マツ科樹木の挿し木苗生産方法。
    A.マツ科樹木の短枝茎頂にサイトカイニンを外添し、新たな鱗片葉及び/又は一次葉を誘導する工程。
    B.上記工程Aにて新たな鱗片葉及び/又は一次葉が誘導された短枝を切り取り、これを挿し穂として、窒素、リン、カリウムを必須元素として含み、かつ、炭素原を含まない液体培地で湿潤させた発根床に挿し付けて、培養容器内で、培養容器内の炭酸ガス濃度を制御しつつ、湿度80%以上で培養することにより、上記挿し穂からの発根を行なわせる工程。
  2. 上記工程A及び/又はBを、非無菌条件下で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 上記工程Bにおいて、培養容器内の炭酸ガス濃度を300〜1500ppmに制御して行う、請求項1又は2に記載の方法。
  4. マツ科樹木がマツ属に属する樹木であることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の方法。
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