JP3861542B2 - 新規な挿し木苗の作出法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優良形質を備えたクローン苗を、挿し木法により、商業的に大量生産する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
挿木は、人為的に切断された植物組織(挿し穂)の切断部位を発根床に挿し入れて、発根床内で発根させ、独立した一個の植物体を作り出す伝統的な栄養繁殖方法であり、草本植物から木本植物に到るまで、親植物と同一の遺伝的性質を備えた個体、即ち、クローン苗を大量に作出・増殖する方法として普及している。
【0003】
この方法は、簡便で、一度に大量の苗を得るのに適しており、優良形質を備えた個体を低コストで大量生産できることから、商業的に有利な方法であるが、全ての植物がこの方法で繁殖できるわけではない。この方法を用いても、挿し穂が全く発根しなかったり、その発根率が極めて低く、繁殖することができない種や品種は数多くある。
【0004】
また、挿し木は、戸外又は温室・フレーム等で行なわれる。一方、この挿し木法においては、挿し穂が発根し、健全な苗を形成するまでの間、その環境を比較的高湿度に保たなければならない。湿度が低いと、その葉からの蒸散作用等によって、挿し穂が萎れて弱ってしまうからである。しかし、戸外はもちろん、温室やフレーム内で挿し木を行なう場合でも、高湿度の環境を維持するには、なかなか手間がかかるのである。
【0005】
このような事情から、優良形質を持ちながら、その個体を商業的に見合うレベルで増殖できない植物は、いまだに少なくなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明は、従来、挿し木による増殖が不可能又は困難とされていた植物にも適用できる、挿し木苗の作出法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本願発明は、挿し穂から苗が形成されるまでの間の環境を、高湿度に維持することができ、苗の生産性を向上させることができる、挿し木苗の作出法を提供することをも目的とする。
【0008】
さらに、本願発明は、多くの植物に適用できる、商業的に有利なクローン苗の大量増殖方法を提供することをも目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは鋭意研究の結果、培養容器内で、植物の生育に必要な栄養素を与えて挿し穂を培養することにより、上記目的が達成されることを見出し、本願発明を完成した。
【0010】
即ち、本願発明は、培養容器内で、かつ、無菌ではない条件下で、挿し穂からの発根を行わせることにより挿し木苗を作出する、挿し木苗の作出法であって容器内への炭酸ガス供給が可能な密閉容器を培養容器とし、この培養容器内に、窒素、リン、カリウムを必須元素として含み、かつ、炭素源を含まない液体培地で湿潤させた発根床を用意して、これに挿し穂を挿し付けて培養し、培養容器内の炭酸ガス濃度を制御しつつ、挿し穂からの発根を行なわせることを特徴とする挿し木苗の作出法を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明について更に詳細に説明する。
【0012】
本願発明を適用できる植物の種類に特に制限はない。ユーカリ、アカシア、ヤマモモ、クヌギ、ブドウ、リンゴ、サクラ、バラ、ツバキ、ウメ等の木本植物の他、キクやカーネーション等の草本植物にも本願発明を適用することができる。また、従来、挿し木法による繁殖が困難であるとされてきた植物にも、そうでないものにも、本願発明を適用することができる。
【0013】
挿し穂としては、緑枝(当年枝)や熟枝(前年以前に伸びた枝)の他、芽や葉も用いることができる。木本植物の場合は緑枝や熟枝、草本植物の場合は葉や芽を用いるのが普通である。なお、従来の挿し木苗の作出法においては、挿し穂として枝を用いる場合には、その枝についた葉の蒸散作用を抑制するために、葉の一部を切除する必要があったが、本願発明において、挿し穂は高湿度下に置かれるので、かかる処理を施さなくとも、その蒸散作用は抑制される。従って、このような前処理は必要とされない。
【0014】
本願発明の挿し木苗の作出法は容器内への炭酸ガス供給が可能な密閉容器を培養容器とし、この培養容器内に、液体培地で湿潤させた発根床を用意して、これに挿し穂を挿し付けて培養を行なうことで、挿し穂及びこれから形成される苗を取り巻く環境の湿度維持を容易とする例えば、容器開口部を炭酸ガス透過性の膜で蔽う等の方法を、このような目的のため、採用することができる。
【0015】
発根床としては、液体培地により実質的に均一に湿潤されるものであって、かつ、これに挿し付けられる挿し穂を、その挿し付けた状態で保持できるようなものを用いる。例えば、砂、赤玉土等の自然土壌、バーミキュライト、パーライト、ガラスビーズ等の人工土壌、又は発泡フェノール樹脂、ロックウール等の多孔性成形品等を培養容器内に入れ、これを発根床として使用することができる。
【0016】
本願発明において液体培地は、窒素、リン、カリウムを必須元素とする。これら各々の元素の濃度は、その適用する植物の種類に応じて調整する。このような液体培地としては、市販の家庭園芸用複合肥料や公知の植物組織培養用液体培地をそのまま、又は適宜希釈して用いることができる。例えば、家庭園芸用複合肥料としては、窒素、リン、カリウムを主要成分とする「ハイポネックス液5−10−5(登録商標)」((株)ハイポネックスジャパン製)液を250〜500倍に希釈した溶液が、植物組織培養用液体培地としては、ムラシゲ・スクーグ培地(Murashige and Skoog(1962)、以下、MS培地と略記する。)を4〜16倍に希釈した溶液が、本発明において、汎用性の高い液体培地として使用できる。
【0017】
なお、上記MS培地を始め、公知の植物組織培養用培地は、窒素、リン、カリウムの他、多量元素として水素、炭素、酸素、硫黄、カルシウム、マグネシウムを、微量元素として鉄、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ホウ素、塩素を、無機塩類、又は、チアミン、ピリドキシン、ニコチン酸等のビタミン類として含んでいる。従って、本願発明の液体培地としては、窒素、リン、カリウムの他、これらの元素を無機塩類又はビタミン類等として含有しているものも、使用することができる。
【0018】
また、本願発明において使用する液体培地には、更に、植物生長調整物質を添加することもできる。例えば、植物組織からの不定根発生を促進する、インドール酢酸、インドール酪酸(IBA)、ナフタレン酢酸等のオーキシン類を単独で又は2種以上組合せて、本願発明の液体培地に0.1〜10mg/l添加することにより、挿し穂からの発根、即ち挿し木苗の形成を促進することができる。
【0019】
一方、本願発明の液体培地には、ショ糖等の炭素源は含まれない。炭素源は、多くの生物に共通するエネルギー源であるが、本願発明では、無菌ではない条件下で操作を行うため、炭素原を含有する培地を用いると、挿し穂に付着した雑菌や、培養環境中の雑菌も培地中の炭素源を栄養源として繁殖し、挿し穂や、これから形成される苗の枯死をもたらすからである。
【0020】
もっとも、挿し穂から形成される苗はもちろん、挿し穂自体も、自ら光合成を行なう能力を有しているので、植物の生育に適当な強度の光を与えることにより、炭酸ガスを同化してエネルギー源とすることができる。そのため、本願発明の挿し穂においても、栄養素として炭素源を付与しなくとも、大気中の炭酸ガスを利用して発根等を行なうことができる筈である。しかし、本願発明において、窒素、リン、カリウム等の栄養素を液体培地により与えられた挿し穂は、活発に光合成を行なうため、この炭酸ガスの濃度を人工的に制御する必要が生ずる。即ち、挿し穂の活発な光合成により、培養容器内の炭酸ガス濃度は低下するので、これを、人為的に補う必要があるのである。さもなければ、たとえ、炭酸ガス以外の栄養素を、この挿し穂に十分供給したとしても、やがてその光合成能は低下し、挿し穂からの発根、つまりは苗の形成が阻害されることとなる。
【0021】
培養容器内の挿し穂に活発に光合成を行なわせ、その発根率を向上させるため必要とされる炭酸ガス濃度は、挿し穂とする植物の種類によって異なる。しかし、一般的には、培養容器内の炭酸ガス濃度を300〜1500ppmに制御するのが好ましい。培養容器内の炭酸ガス濃度が300ppmより低いと、挿し穂の光合成能も発根率も、大幅な向上を期待できない。また、培養容器内の炭酸ガス濃度を1500ppmより高めても、挿し穂の光合成能や発根率は、その炭酸ガス濃度に見合った向上を示さなくなる。炭酸ガス濃度の制御は、各培養容器ごとに行なってもよいが、培養容器が置かれる環境自体の炭酸ガス濃度を制御することで、培養容器内を所定の炭酸ガス濃度に制御する方が、簡便で、コスト的にも有利である。このとき、培養容器は、開口部をそのまま開放したものや、前記したように、その開口部を炭酸ガス透過性の膜で覆ったものを使用することができる。
【0022】
本願発明の挿し木苗の作出法においては、他の条件、即ち、挿し穂を培養するにあたっての温度や光強度の条件に特に制限はない。その挿し穂の由来する植物が、光合成をするのに適した条件を適宜採用すればよい。一般的には、温度20〜30℃、光強度40〜100μmol/m2/sec程度の条件が、この目的のために採用される。また、本願発明においては、光を照射して培養を行なう明期と、暗黒下で培養を行なう暗期とを設定し、この明期・暗期を交互に繰返して培養を行なってもよい。この場合、光合成は明期においてのみ行なわれるので、培養容器内の炭酸ガス制御も、明期においてのみ行えばよい。
【0023】
なお、前記したように、本願発明は、無菌ではない条件下で作業を行なう。しかし、より健全な苗の作出のため万全を期すには、培養容器、液体培地、発根床については、挿し穂の挿し付け前に、予め感熱滅菌やオートクレーブ滅菌等の処置を行なっておくことが好ましい。
【0024】
本願発明において作出された挿し木苗は、発根後、直ちに培養容器から取出して育苗容器に移植し、育成することができる。育苗容器に移植する際の用土や、苗を育成する際の温度・光強度等の条件は、その植物に適するように適宜設定すればよい。かかる育成過程を経ることによって、植林等、所定の目的に使用可能な苗とすることができる。
【0025】
【作用】
従来、挿し木によって苗を作出・増殖する場合には、挿し穂の発根前において養分を与えることは禁忌とされていた。これは、発根前の挿し穂は養分を吸収する正常な能力がないため、この段階における養分の付与は、挿し穂の腐敗を招くだけと考えられていたからである(例えば、『接木、挿し木、取り木の実際』(株)泰光堂、昭和61年7月1日発行、第34頁)。
【0026】
しかし、本願発明者らは、発根前の挿し穂であっても、窒素、リン、カリウム等の元素を利用することができ、雑菌の繁殖さえ防げれば、これらの元素を養分として付与することにより、その発根率を飛躍的に上昇させることを見出した。ここで、雑菌繁殖の原因となるのが炭素源である。そこで、本願発明においては、窒素、リン、カリウムを必須元素として含み、かつ、炭素源を含まない液体培地を用いて、挿し穂を培養する。
【0027】
一方、植物において、炭素源に代わるエネルギー源として必要とされるのが、大気中に存在する炭酸ガスである。本願発明の場合、人工的に、培養環境中のその濃度を制御することにより、上記培地で培養する挿し穂を発根させて、苗を作出する。大気中に存在する炭酸ガスの利用だけでは、挿し穂からの発根に不十分だからである。
【0028】
また、挿し木法により苗を作出しようとする場合、挿し穂は、健全な苗が形成されるまでの間、高湿度下に置かれることが望ましい。しかし、従来、挿し木は戸外又は温室・フレーム等で行なわれていた。そのため、挿し穂及びこれから形成される苗の培養環境を高湿度に維持するには、かなりの手間をかけなければならなかった。しかし、本願発明は、容器内への炭酸ガス供給が可能な密閉容器を培養容器とし、この培養容器内に、液体培地で湿潤させた発根床を用意して、これに挿し穂を挿し付けて培養を行うことで、挿し木苗を作出する。これにより、挿し穂等の培養環境中の湿度を、労せずして高いレベルに保つことができ、健全な挿し木苗を容易に作出することができるのである。
【0029】
【実施例】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0030】
[実施例1]
40年生のソメイヨシノの当年枝より、挿し穂となる枝を採取した。この枝を、芽を一つだけ残して3cm長さにカッティングし、更に、そこについていた葉の3分の1にあたる数の葉を切除して、挿し穂を調整した。
【0031】
一方、培養容器としては、10cm四方のポリカーボネート製容器の上部2ヶ所に直径1cmの穴を開け、この開口部を炭酸ガス透過性の膜(日本ミリポア(株)製『ミリシール』)で蔽ったものを用意した。発根床としては、IBA2mg/lをそれぞれ添加した、8倍希釈MS培地100ml又は500倍希釈「ハイポネックス液5−10−5(登録商標)」100mlにより湿潤させた、発泡フェノール樹脂成形品(日本曹達(株)製『オアシス』)を使用した。
【0032】
挿し木苗の作出は、上記のようにして調整した挿し穂を、この発根床に、培養容器あたり25本となるように挿し付け、各培養容器内の炭酸ガス濃度が、明期のみ350、500、1000又は1500ppmとなるように制御し、温度22〜24℃、光強度50μmol/m2/sec、明期16時間、暗期8時間で培養することにより行った。なお、培養容器内の炭酸ガス濃度の制御は、この培養容器が置かれた環境中の炭酸ガス濃度を制御することにより行った。
【0033】
3週間後、各試験区あたり100本の挿し穂について、発根の有無を調査した結果を表1に示す。
【0034】
[比較例1]
発根床を湿潤させる液体培地として、IBA2mg/lを添加した水を用いた以外は、実施例1と同様にして、ソメイヨシノより採取・調整した挿し穂の培養を行い、挿し木苗の作出を試みた。なお、本実験は、培養容器内の炭酸ガス濃度を1000ppm(明期のみ)に制御した場合のみについて行った。
【0035】
発根床への挿し穂の挿し付けから3週間後、100本の挿し穂について、発根の有無を調査した結果を表1に示す。
【0036】
[比較例2]
培養容器内の炭酸ガス濃度を全く制御しないで行った以外は、実施例1と同様にして、ソメイヨシノより採取・調整した挿し穂の培養を行い、挿し木苗の作出を試みた。なお、本実験は、発根床を湿潤させる液体培地として、IBA2mg/l添加の8倍希釈MS培地を用いた場合のみについて行った。
【0037】
発根床への挿し穂の挿し付けから3週間後、100本の挿し穂について、発根の有無を調査した結果を表1に示す。なお、このとき、培養容器内の炭酸ガス濃度は、培養開始直後の明期終了時点までに、既に100ppm以下となっていた。
【0038】
[比較例3]
従来法により、挿し木苗の作出を試みた。
【0039】
実施例1と同様にして採取・調整したソメイヨシノの挿し穂の基部に、IBA1重量%を混合したタルク粉末を塗布し、これを水道水で湿潤させた、実施例1と同様の発泡フェノール樹脂成形品に挿し付けた。寒冷紗によって70%遮光された温室内にこのフェノール樹脂成形品をそのまま置いて、挿し穂の培養を行った。
【0040】
発根床への挿し穂の挿し付けから3週間後、100本の挿し穂について、発根の有無を調査した結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
Figure 0003861542
表1より明らかなように、培養容器内の炭酸ガス濃度を350ppm以上に制御し、植物組織培養用培地又は植物用肥料を液体培地として付与した試験区においては、液体培地の代わりに水を付与したもの、炭酸ガス濃度の制御を行わなかったもの又は従来の挿し木法によるものと比べて、いずれも、極めて高い挿し穂からの発根率を示した。
【0042】
また、最も高い発根率は、液体培地として植物組織培養用培地を用いた場合には培養容器内の炭酸ガス濃度を500ppmに制御した試験区で、一方、液体培地として植物用肥料を用いた場合には培養容器内の炭酸ガス濃度を1000ppmに制御した試験区で達成された。
【0043】
[実施例2]
1年生ユーカリプタス・グラブラス(Eucalyptus globulus、以下、E.グロブラスと略記する。)の頂芽を切除することにより腋芽から枝を伸長させ、3週間後、この枝の頂端から2節目までを切取って挿し穂とした。
【0044】
この挿し穂を、実施例1と同様にして培養し、挿し木苗の作出を行った。但し、このとき、培養容器内の炭酸ガス濃度を350ppm又は500ppmに制御した試験区においては、植物組織培養用培地として、8倍希釈MS培地の他に、4倍希釈したMS培地も使用して挿し木苗の作出を行った(いずれも、IBA2mg/lを添加。)。
【0045】
発根床への挿し穂の挿し付けから3週間後、100本の挿し穂について、発根の有無を調査した結果を表2に示す。
【0046】
[比較例4]
発根床を湿潤させる液体培地として、IBA2mg/lを添加した水を用いた以外は、実施例2と同様にして、E.グロブラスより採取した挿し穂の培養を行い、挿し木苗の作出を試みた。なお、本実験は、培養容器内の炭酸ガス濃度を500ppm(明期のみ)に制御した場合のみについて行った。
【0047】
発根床への挿し穂の挿し付けから3週間後、100本の挿し穂について、発根の有無を調査した結果を表2に示す。
【0048】
[比較例5]
培養容器内の炭酸ガス濃度を全く制御しないで行った以外は、実施例2と同様にして、E.グロブラスより採取した挿し穂の培養を行い、挿し木苗の作出を試みた。なお、本実験は、発根床を湿潤させる液体培地として、IBA2mg/l添加の8倍希釈MS培地を用いた場合のみについて行った。
【0049】
発根床への挿し穂の挿し付けから3週間後、100本の挿し穂について、発根の有無を調査した結果を表2に示す。
【0050】
[比較例6]
従来法により、挿し木苗の作出を試みた。
【0051】
実施例2と同様にして採取したE.グロブラスの挿し穂の基部に、IBA1重量%を混合したタルク粉末を塗布し、これを水道水で湿潤させた、実施例2と同様の発泡フェノール樹脂成形品に挿し付けた。寒冷紗によって70%遮光された温室内にこのフェノール樹脂成形品をそのまま置いて、挿し穂の培養を行った。
【0052】
発根床への挿し穂の挿し付けから3週間後、100本の挿し穂について、発根の有無を調査した結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
Figure 0003861542
表2より明らかなように、培養容器内の炭酸ガス濃度を350ppm以上に制御し、植物組織培養用培地又は植物用肥料を液体培地として付与した試験区においては、液体培地の代わりに水を付与したもの、炭酸ガス濃度の制御を行わなかったもの又は従来の挿し木法によるものと比べて、いずれも、極めて高い挿し穂からの発根率を示した。即ち、液体培地として植物組織培養用培地又は植物用肥料のいずれを用いた場合でも、培養容器内の炭酸ガス濃度を350ppm以上に制御した場合には、ほぼ90%以上の挿し穂から発根が観察された。
【0054】
【発明の効果】
本願発明によれば、従来の挿し木法によっては、挿し穂からの発根が困難であった植物においても、その発根率が大幅に向上する。
【0055】
また、本願発明によれば、挿し穂から苗が形成されるまでの間の環境を、容易に高湿度に維持することができる。
【0056】
従って、本願発明においては、従来法による挿し木苗の作出が困難であった植物からの挿し木苗の作出が可能となる。また、従来法により、比較的容易に挿し木苗が作出できた植物にあっては、その生産性を向上させることができる。しかも、そのための操作は、従来の挿し木苗の作出法による操作の利点を引継いでおり、簡便である。
【0057】
加えて、本願発明においては、培養容器内で挿し木苗の形成を行うため、湿度のみならず、温度、光等の条件の制御が、従来法による挿し木苗の作出法と比べて容易である。
【0058】
従って、本願発明によれば、挿し木苗の周年生産を容易に行うことができる。
【0059】
即ち、本願発明は、商業的に有利なクローン苗の大量増殖を可能とするものである。

Claims (7)

  1. 培養容器内で、かつ、無菌ではない条件下で、挿し穂からの発根を行わせることにより挿し木苗を作出する、挿し木苗の作出法であって容器内への炭酸ガス供給が可能な密閉容器を培養容器とし、この培養容器内に、窒素、リン、カリウムを必須元素として含み、かつ、炭素源を含まない液体培地で湿潤させた発根床を用意して、これに挿し穂を挿し付けて培養し、培養容器内の炭酸ガス濃度を制御しつつ、挿し穂からの発根を行なわせることを特徴とする挿し木苗の作出法。
  2. 発根床を湿潤させる液体培地として、公知の植物用肥料をそのまま又は希釈して用いることを特徴とする、請求項1記載の挿し木苗の作出法。
  3. 発根床を湿潤させる液体培地として、公知の植物組織培養用培地をそのまま又は希釈して用いる、請求項1記載の挿し木苗の作出法。
  4. 発根床を湿潤させる液体培地として、植物生長調整物質を添加したものを用いる、請求項1、2又は3に記載の挿し木苗の作出法。
  5. 植物生長調整物質として、オーキシンを用いる、請求項4記載の挿し木苗の作出法。
  6. 培養容器内の炭酸ガス濃度を300〜1500ppmに制御して行う、請求項1、2、3又は4に記載の挿し木苗の作出法。
  7. 挿し穂として、木本植物由来のものを用いる、請求項1、2、3、5又は6に記載の挿し木苗の作出法。
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