JP6470987B2 - 発根に適した光強度を評価する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、挿し穂、培養物等の発根に適した光強度を評価する方法に関する。
従来、挿し穂の発根方法として、光独立栄養培養による方法が知られている。例えば特許文献1には、窒素、リン、カリウムを必須元素として含み、かつ、炭素源を含まない液体培地で湿潤させた発根床を培養容器内に用意し、これに挿し穂を押し付けて培養し、培養容器内の炭酸ガス濃度を制御しつつ、挿し穂からの発根を行う方法が記載されている。
特開2001−186814号公報
特許文献1の技術では、発根培養を一定の環境下で実施している。しかしながら最適な発根培養条件は、植物の種類などの条件等によって相違しており、特許文献1には発根培養条件を最適化するための手段について記載していない。
本発明は、植物の種類などの条件に応じた最適な発根培養条件を簡易に特定でき、苗の発根率、発根した根の本数及び長さを改善することのできる技術を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、光化学系IIの光量子収率が一定の範囲となるような光強度と、発根率、並びに発根した根の本数及び長さとの間に関連性があることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、以下の〔1〕〜〔5〕を提供する。
〔1〕植物の少なくとも一部に光を照射して、光強度7,000μmol/m2/s以上の飽和光を照射した際の光化学系IIの光量子収率(1)、及び/又は、光強度15,000μmol/m2/sの飽和光を照射した際の光化学系IIの光量子収率(2)を測定すること、
光量子収率(1)の測定値が0.60〜0.80である、及び/又は、光量子収率(2)の測定値が0.20〜0.42である、光強度を特定することを含む、
植物の挿し穂又は培養物の発根に適した光強度を評価する方法。
〔2〕植物が、サクラ属植物、ユーカリ属植物、マオウ属植物、ヤマナラシ属植物又はマツ属植物である、〔1〕に記載の光強度を評価する方法。
〔3〕〔1〕又は〔2〕に記載の方法により特定された光強度の光を照射して植物の挿し穂又は培養物を発根させることを含む、植物の挿し穂又は培養物の発根方法。
〔4〕〔1〕又は〔2〕に記載の方法により特定された光強度の光を照射して植物の挿し穂又は培養物を発根させる、植物の挿し木苗の生産方法。
〔5〕〔1〕又は〔2〕に記載の方法により特定された光強度の光を照射して植物の挿し穂又は培養物を発根させることを含む、植物の栽培方法。
本発明によれば、植物の種類などの条件に応じた最適な発根培養条件を簡易にあらかじめ客観的に特定できるため、苗における発根率を高め、根の本数が多く長さも確保することができ、苗の生産性、品質を向上し、培養期間の短縮を図ることができる。
図1は、実施例1におけるソメイヨシノの光化学系IIの光量子収率(1)と光強度の関係を示すグラフである。 図2は、実施例1におけるソメイヨシノの光化学系IIの光量子収率(1)と光強度の関係を示すグラフである。 図3は、実施例1における光強度とソメイヨシノの挿し穂の発根率の関係を示すグラフである。 図4は、実施例1における光強度とソメイヨシノの挿し穂から発根した根の本数との関係を示すグラフである。 図5は、実施例1における光強度とソメイヨシノの挿し穂から発根した根の長さとの関係を示すグラフである。 図6は、実施例2における丸葉ユーカリの光化学系IIの光量子収率(2)と光強度の関係を示すグラフである。 図7は、実施例2における丸葉ユーカリの光化学系IIの光量子収率(2)と光強度の関係を示すグラフである。 図8は、実施例2における光強度と丸葉ユーカリの培養物の発根率の関係を示すグラフである。 図9は、実施例2における光強度と丸葉ユーカリの培養物から発根した根の本数との関係を示すグラフである。 図10は、実施例2における光強度と丸葉ユーカリの培養物から発根した根の長さとの関係を示すグラフである。 図11は、実施例3におけるマオウの光化学系IIの光量子収率(2)と光強度の関係を示すグラフである。 図12は、実施例3におけるマオウの光化学系IIの光量子収率(2)と光強度の関係を示すグラフである。 図13は、実施例3における光強度とマオウの培養物の発根率の関係を示すグラフである。 図14は、実施例3における光強度とマオウの培養物から発根した根の本数との関係を示すグラフである。 図15は、実施例3における光強度とマオウの培養物から発根した根の長さとの関係を示すグラフである。 図16は、実施例4におけるヤマナラシの光化学系IIの光量子収率(2)と光強度の関係を示すグラフである。 図17は、実施例4における光強度とヤマナラシの培養物の発根率の関係を示すグラフである。 図18は、実施例4における光強度とヤマナラシの培養物から発根した根の本数との関係を示すグラフである。 図19は、実施例4における光強度とヤマナラシの培養物から発根した根の長さとの関係を示すグラフである。 図20は、実施例5におけるクロマツの光化学系IIの光量子収率(2)と光強度の関係を示すグラフである。 図21は、実施例5におけるクロマツの光化学系IIの光量子収率(2)と光強度の関係を示すグラフである。 図22は、実施例5における光強度とクロマツの挿し穂の発根率の関係を示すグラフである。 図23は、実施例5における光強度とクロマツの挿し穂から発根した根の本数との関係を示すグラフである。 図24は、実施例5における光強度とクロマツの挿し穂から発根した根の長さとの関係を示すグラフである。
本発明が対象とする植物は特に限定されない。植物としては木本植物、草本植物が例示されるが、木本植物、二次代謝物生産能を有する植物が好ましい。
木本植物としては例えば、ユーカリ属(Eucalyptus)植物、マツ属(Pinus)植物(クロマツ(Pinus thunbergii)など)、サクラ属(Prunus)植物(サクラ(Prunus spp.)、ヤマナラシ(Populus)属植物(ヤマナラシ(Populus tremula var.sieboldii)など)、ウメ(Prunus mume)、ユスラウメ(Prunus tomentosa)など)、アボカド属(Avocado)植物、マンゴー属(Mangifera)植物(マンゴー(Mangifera indica)など)、アカシア属(Acacia)植物、ヤマモモ属(Myrica)植物、クヌギ属(Quercus)植物(クヌギなど(Quercus acutissima))、ブドウ(Vitis)属植物、リンゴ(Malus)属植物、バラ属(Rosa)植物、ツバキ属(Camellia)植物、ジャカランダ属(Jacaranda)植物(ジャカランダ(Jacaranda mimosifolia)など)、ワニナシ属(Persea)植物(アボカド(Persea americana)など)、ナシ属(Pyrus)植物(ナシ(Pyrus serotina Rehder、Pyrus pyrifolia)など)、ビャクダン属(Santalum)植物(ビャクダン(サンダルウッド;Santalum album)など)が挙げられる。このうち、サクラ属植物、ユーカリ属植物、ヤマナラシ属植物及びマツ属植物が好ましい。
二次代謝物(二次代謝物質)とは、一次代謝物が代謝されて合成された物質を意味する。一次代謝物が植物の細胞成長、発生、生殖等の生命に直接的に関与しているのに対し、二次代謝物は生命に直接関与してはいない代わりに、通常、外部からのストレス(紫外線等)、外敵(病原菌等)から自身を守るなどの機能を有する。二次代謝物としては、アルカロイド(エフェドリンなど)、テルペノイド、フラボノイド、テルペンの配糖体(グリチルリチンなど)、グリコシド、フェノール、又はこれらの誘導体等が例示される。二次代謝物には、医薬、健康補助、麻酔薬、染料等に役立つ成分が含まれることが知られているが、このうち医薬、健康補助等に役立つ成分であることが好ましい。
二次代謝物を蓄積する植物としては、薬用植物が好ましい。薬用植物とは、植物の少なくとも一部が薬用に供される植物を意味する。薬は生薬(未精製薬、薬用ハーブ)、漢方薬、民間薬等が例示され、薬事法により医薬に分類されない食品も含む。薬用植物において薬用に供される部位としては、全草、茎葉、花、蕾、種子、果実、果皮、根、地下茎、根茎、木部、樹皮、及びこれらの2種以上を含む植物部位等が例示される。
薬用植物としては、カンキョウ、アキョウ、イレイセン、インチンコウ、ウイキョウ、エンゴサク、オウギ、オウゴン、オウバク、オウレン、オンジ、ガイヨウ、カシュウ、カッコン、カッセキ、カロコン、カロニン、カンゾウ、キキョウ、キクカ、キジツ、キッソウコン、キョウカツ、キョウニン、クジン、ケイガイ、ケイヒ、コウカ、コウジン、コウブシ、コウベイ、コウボク、ゴシツ、ゴシュユ、ゴボウシ、ゴマ、ゴミシ、サイコ、サイシン、サンザシ、サンシシ、サンシュユ、サンショウ、サンソウニン、サンヤク、カンジオウ、ジコッピ、シコン、シツリシ、シナマオウ、シャクヤク、シャゼンシ、ジュクジオウ、シュクシャ、ショウキョウ、ショウバク、ショウマ、シンイ、セッコウ、センキュウ、ゼンコ、センコツ、センタイ、センナ、ソウジュツ、ソウハクヒ、ソボク、ソヨウ、ダイオウ、タイソウ、タクシャ、チクジョ、チクセツニンジン、チモ、チャヨウ、チョウジ、チョウトウコウ、チョレイ、チンピ、テンナンショウ、テンマ、テンモンドウ、トウガシ、トウキ、トウニン、トウヒ、トコン、トチュウ、ドッカツ、ニンジン、ニンドウ、バイモ、バクガ、バクモンドウ、ハッカ、ハマボウフウ、ハンゲ、ビャクゴウ、ビャクシ、ビャクジュツ、ビワヨウ、ビンロウジ、ブクリョウ、ブシ、フンマツアメ、ボウイ、ボウフウ、ボクソク、ボタンピ、ボレイ、マオウ、マシニン、モクツウ、モッコウ、ヨクイニン、リュウガンニク、リュウコツ、リュウタン、リョウキョウ、レンギョウ、レンニク、ワキョウカツが例示され、好ましくはカンキョウ、カンゾウ、ケイヒ、ゴボウシ、サンシシ、チンピ、ビワヨウ、ニンジン、トウニン、チョレイ、ソヨウ、ダイオウ、タイソウ、センナ、シャクヤク、サンショウ、サンシュユ、コウジン、ボタンピ、オンジ、オウギであり、更に好ましくはダイオウ、シャクヤク、ゴボウシ、リュウタンである。更により好ましいのは、マオウ属植物(Ephedra)である。マオウ属植物としては、フタマタマオウ(E.distachya)、シナマオウ(E.sinica)、キダチマオウ(E.equisetina Bunge)が挙げられる。
本発明においては、植物の少なくとも一部に光を照射して、直径略2cmの測定面における光化学系IIの光量子収率(1)、及び/又は、直径略1mmの測定面における光化学系IIの光量子収率(2)を測定する。
植物の種類は先述したとおりである。植物の月齢などは特に限定されない。植物の少なくとも一部は、葉を含むことが好ましく、葉であることが好ましい。葉は、植物から採取された葉でもよいし、植物から採取されていない一部であってもよい。葉の枚数は1枚であってもよいし2枚以上であってもよい。植物の葉は、植物体の全体からランダムに選ぶことができるが、頂芽付近の葉であり、および/または外部の枝から採取された葉であることが好ましい。葉は、展開していてもしていなくてもよいが、展開していることが好ましい。
植物の少なくとも一部に照射する光の光強度は、20μmol/m2/s以上であることが好ましく、40μmol/m2/s以上であることが好ましい。上限は、400μmol/m2/s以下であることが好ましく、300μmol/m2/s以下であることが好ましい。
照射する光は、光強度の異なる2種類以上の光であることが好ましく、3種類以上の光であることがより好ましい。
照射する光は、赤色光、青色光、白色光、及びこれらから選ばれる2種以上の組み合わせであってもよいが、赤色光と青色光の組み合わせであることが好ましい。青色と赤色の比率は、1:9〜5:5であることが好ましく、1:9〜3:7であることがより好ましい。
照射する光の組み合わせの例としては、以下が挙げられる;40、80、160、240及び280μmol/m2/sの組み合わせ;40、80、160及び240μmol/m2/sの組み合わせ;及び40、80及び160μmol/m2/sの組み合わせ。
光量子収率(1)は、光強度7,000μmol/m2/s以上の飽和光を照射した際の光化学系IIの光量子収率であり、光量子収率(2)は、光強度15,000μmol/m2/sの飽和光を照射した際の光化学系IIの光量子収率である。飽和光とは、光合成が飽和する(キノンAが完全還元する)量の光であり、閃光(フラッシュライト)でもよいし間欠光(パルス)でもよい。
光量子収率(1)の測定面の面積は、通常は略314mm2である。光量子収率(2)の測定面の面積は、通常は略0.785mm2である。光量子収率(1)の測定面の直径は、通常は略2cmである。光量子収率(2)の測定面の直径は、通常は略1mmである。
光量子収率(1)及び(2)の各測定面の形状は特に限定されず、略円状、略楕円状であってもよいし、四角形などの多角形状であってもよい。光を葉に照射する場合、葉における測定面の位置は、葉の一部または全部であればよく特に限定されない。葉の一つ一つの形状が細長い、小さい等で測定面を確保できない場合には、葉を束ねる等して測定面の面積に達するよう複数の葉を測定面としてもよい。
光量子収率(1)及び(2)とも、クロロフィル蛍光測定装置、イメージングクロロフィル蛍光測定装置、パルス変調クロロフィル蛍光測定装置等の装置により測定することができる。光量子収率(1)は、LI−6400(Li−Cor社)等の測定装置により測定すればよい。光量子収率(2)は、Mini−PAM(Walz社)等の測定装置により測定すればよい。イメージングクロロフィル蛍光測定装置としては、cfImager(Technologica社)、Fluorcam(PSI社)、ImagingPAM(Walz社)が例示される。パルス変調クロロフィル蛍光測定装置としては、OS5p+(Opti−Sciences社)が例示される。
本発明においては、上記光量子収率(1)と(2)の両方を測定してもよいし、片方のみを測定してもよい。また、上記光量子収率(1)と(2)のいずれも、測定を2回以上行い、その平均値をそれぞれの測定値としてもよい。測定を2回以上行う場合には、各回の測定面が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
光量子収率測定の際の二酸化炭素濃度は、植物の種類などにより異なるが、一般には200ppm以上であることが好ましく、390ppm以上であることがより好ましい。上限は、3500ppm以下であることが好ましく、5000ppm以下であることがより好ましい。二酸化炭素濃度の制御は、密閉型の容器を用いることにより培養容器ごとに行なってもよいが、容器が置かれる環境自体の二酸化炭素濃度を制御して行ってもよい。
容器内で測定を行う場合、容器の形状は特に限定されず、開口部をそのまま開放したもの、開口部を二酸化炭素透過性の膜で覆ったもの、密閉型のものなどが例示される。
光量子収率測定の際の温度、湿度条件は特に限定されないが、温度は通常20〜30℃であり、湿度は30〜100%である。
本発明においては、光量子収率(1)の測定値が0.60〜0.80である、及び/又は、光量子収率(2)の測定値が0.20〜0.42である、光強度を特定する。測定結果によっては、光量子収率(1)の測定値が0.60〜0.80である光強度も、光量子収率(2)の測定値が0.20〜0.42である光強度も見つからない場合があり得るが、その場合には、最初の測定の際に設定した光強度とは異なる光強度で再度光量子収率(1)及び/又は(2)を測定して、測定値が上記数値を充足する光強度を測定すればよい。
本発明においては続いて、特定された光強度で植物の挿し穂又は培養物を発根させる。
挿し穂に照射する光は、赤色光、青色光、白色光、及びこれらから選ばれる2種以上の組み合わせであってもよいが、白色光であることが好ましい。
照射の明期と暗期の繰り返しの周期は特に限定されないが、24時間あたりの明期14時間〜18時間/暗期6時間〜10時間であることが好ましい。
挿し穂は、植物の一部又は全部であればよい。挿し穂としては、植物の少なくとも一部であればよく、緑枝(当年枝)、熟枝(前年以前に伸びた枝)等の枝;頂芽、腋芽などの芽;葉、子葉;胚軸などが例示される。木本植物の場合の挿し穂は、通常は緑枝又は熟枝であり、草本植物の場合の挿し穂は、通常は葉又は芽であるが、挿し穂は、少なくとも葉を含むことが好ましい。培養物は、植物の一部又は全部の培養物であればよいが、少なくとも葉を含むことが好ましい。
挿し穂及び培養物としてシュートを用いてもよい。シュートとは、発根能を有する組織全般をいう。該組織としては、枝、茎、頂芽、腋芽、不定芽、葉、子葉、胚軸、不定胚、苗条原基等が例示される。シュートの由来は特に限定されず、温室又は屋外に生育している植物個体から得られる組織でもよいし、組織培養法により得られた培養組織であってもよいし、天然の植物体の一部の組織であってもよい。シュートは、挿し穂の母本植物、又は多芽体から効率良く取得することができる。中でも、挿し穂(母本植物から得た挿し穂)、母本植物から採取した器官を無菌的に培養することにより得た多芽体、もしくは前記器官を無菌的に育成して得た茎葉であることが好ましい。
多芽体は、本発明を適用してクローン苗を生産しようとする植物から、頂芽、腋芽等の組織を切取って、これを組織培養して誘導することができる。多芽体を、母本植物から採取した器官を無菌的に培養して、形成させるには、特開平8−228621号公報に記載の方法、条件に従って行い得る。その方法、条件は概ね次の通りである。まず、材料とする植物から頂芽、腋芽等の組織を採取し、採取した組織について、有効塩素量約0.5%〜約4%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液又は有効塩素量約5%〜約15%の過酸化水素水溶液に約10分〜約20分間浸漬して表面殺菌を行う。次いで、これを滅菌水で洗浄し、固体培地に挿し付けて芽を開じょさせ、伸長してきた茎葉を同じ組成の培地で継代培養することにより、多芽体を形成させる。ユーカリ属又はアカシア属の組織(例えば腋芽)を用いる場合には、固体培地は、ショ糖1〜5重量%、植物ホルモンとしてベンジルアデニン(以下、BAと略す。)約0.02mg/l以上約1mg/l以下、ゲランガム約0.2重量%以上約0.3重量%若しくは寒天約0.5重量%以上約1重量%以下を含有するムラシゲスクーグ(以下、MSと略す。)培地、又は、MS培地の硝酸アンモニウム成分と硝酸カリウム成分とを半減させた改変MS培地を用いるのが好ましい。こうして形成された多芽体からは活発にシュートが伸長してくる。多芽体自体は、適当に分割して多芽体形成に用いた培地と同一組成の培地で培養することにより維持し、増殖させることができる。
挿し穂から発根させる工程における栽培環境の湿度は、対象とする植物により適宜調整すればよく特に限定されないが、60%Rh以上であることが好ましく、80%Rh以上であることがより好ましく、90%Rh以上であることがさらに好ましい。これにより、植物からの発根を促進することができる。湿度の上限については特に制限はなく、100%Rh以下であればよい。カビが増殖しやすい植物の場合、80%Rh以下であることがより好ましく、70%Rh以上であることがさらに好ましい。
挿し穂から発根させる工程における栽培環境の炭酸ガス濃度は、通常300ppm以上であり、好ましくは350ppm以上であり、より好ましくは400ppm以上である。上限は通常2000ppm以下であり、好ましくは1500ppm以下であり、1250ppm以下であり、より好ましくは1000ppmであることがさらに好ましい。炭酸ガスの供給量の制御は、人工気象器等の設備、二酸化炭素透過性の膜を開口部に有する培養容器などを利用して行われうる。
挿し穂から発根させる工程における栽培環境の温度は、約23℃以上約28℃以下であることが好ましい。
挿し穂から発根させる工程における、明期と暗期の配分は、通常は1:1〜3:1であり、3:2〜5:2であることが好ましい。
挿し穂から発根させる工程においては、遮光を行うことが好ましい。遮光率は、30%以上70%以下が好ましく、40%以上60%以下がより好ましい。
挿し穂から発根させる工程の期間は、植物の種類等の栽培条件によっても異なるが、通常は2週間〜3ヶ月であり、4週間〜2ヶ月であることが好ましい。挿し穂から発根が観察されるまで続ければよい。
挿し穂から発根させる工程において、通常は発根用培地を用いる。本発明において発根用培地とは、挿し穂から発根させるために用いられる培地を意味する。
発根用培地は、銀イオン及び/又は抗酸化剤を含有することが好ましく、銀イオン及び抗酸化剤の両方を含有することがより好ましい。銀イオンは、チオ硫酸銀(STS、AgS46)、硝酸銀等の銀化合物(銀イオン源)として培地中に添加すればよい。中でもSTSは、培地に添加してシュートを培養すると、健全な根の発根及び/又は伸長が促進されるので、本発明で用いる銀イオン源として好ましい。これは、STSに由来する銀イオンが、培地中で、チオ硫酸銀イオンの形態を取り、マイナスに帯電しているためと考えられる。発根用培地中の銀イオンの濃度は、銀イオン源の種類その他の培養条件などにもよるが、銀イオン源の濃度として約0.5μM以上約6μM以下が好ましく、約2μM以上約6μM以下がより好ましい。
一方、抗酸化剤としては、例えば、酸化型グルタチオン(GSSG)、アスコルビン酸、亜硫酸塩等の、公知の抗酸化剤を用いることができ、酸化型グルタチオンが好ましい。発根用培地中の酸化型グルタチオンの濃度は、1mg/l〜100mg/lが好ましく、5mg/l〜約75mg/lがより好ましい。
発根用培地は、無機成分、炭素源、ビタミン類、アミノ酸類及び植物ホルモン類等の成分を更に含んでいてもよい。
無機成分としては、窒素、リン、カリウム、硫黄、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、モリブデン、塩素、ヨウ素、コバルト等の元素、及び、これらの元素から選ばれる1以上の元素を含む無機塩が例示される。無機塩としては例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ホウ酸、三酸化モリブデン、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化コバルト等、これらの水和物が挙げられる。無機成分は、1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
発根用培地は、窒素、リン及びカリウムが必須元素として含まれることが好ましい。よって、上述の無機成分の具体例のうち、窒素、リン、カリウム、窒素を含む無機塩、リンを含む無機塩、及びカリウムを含む無機塩が好ましく、窒素、リン、カリウム、及び、窒素を含む無機塩がより好ましい。発根用培地中の無機成分の濃度は、無機成分が1種の場合は0.1μM〜100mMであることが好ましく、1μM〜100mMであることがより好ましい。無機成分が2種以上の組み合わせの場合はそれぞれ0.1μM〜100mMであることが好ましく、1μM〜100mMであることがより好ましい。
炭素源としては、ショ糖等の炭水化物とその誘導体;脂肪酸等の有機酸;エタノール等の1級アルコール、などが例示される。炭素源は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。発根用培地中の炭素源の濃度は、1g/l〜100g/lであることが好ましく、10g/l〜100g/lであることがより好ましい。しかし、培養を炭酸ガスを供給しながら行う場合には、培地は炭素源を含む必要は無く、含まないことが好ましい。ショ糖等の炭素源となりうる有機化合物は微生物の炭素源ともなるので、これらを添加した培地を用いる場合には、無菌環境下で培養を行う必要があるが、炭素源を含まない培地を用いることにより、非無菌環境下での培養が可能となる。
ビタミンとしては、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB4)、ピリドキサール、ピリドキサミン、パントテン酸カルシウム、イノシトール、ニコチン酸、ニコチン酸アミド及びリボフラビン(ビタミンB2)等が例示される。ビタミンは1種でもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。発根用培地中のビタミンの濃度は、ビタミンが1種の場合は0.01mg/l〜200mg/lであることが好ましく、0.02mg/l〜100mg/lであることがより好ましい。ビタミンが2種以上の組み合わせの場合はそれぞれ、0.01mg/l〜150mg/lであることが好ましく、0.02mg/l〜100mg/lであることがより好ましい。
アミノ酸としては、グリシン、アラニン、グルタミン酸、システイン、フェニルアラニン及びリジン等が例示される。アミノ酸は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。発根用培地中のアミノ酸の濃度は、アミノ酸が1種の場合は約0.1mg/l以上約1000mg/l以下であることが好ましく、アミノ酸が2種以上の組み合わせの場合は、それぞれ0.2mg/l〜1000mg/lであることが好ましい。
植物ホルモンとしては、オーキシン、サイトカイニン等が例示される。オーキシン類としては、ナフタレン酢酸(NAA)、インドール酢酸(IAA)、p−クロロフェノキシ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4D)、インドール酪酸(IBA)及びこれらの誘導体等が例示される。オーキシンは、1種であってもよいし2種以上の組み合わせであってもよい。サイトカイニンとしては、ベンジルアデニン(BA)、カイネチン、ゼアチン、6−ベンジルアミノプリン(BAP)、これらの誘導体等が例示される。サイトカイニンは、1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。植物ホルモンは、オーキシンのみであってもよいし、サイトカイニンのみであってもよいし、オーキシンとサイトカイニンの組み合わせであってもよい。一般に、オーキシンは発根に作用し、サイトカイニンは生育に作用するため、サイトカイニンのみを添加して挿し穂を培養した後に、オーキシンを添加して発根させることができる。発根用培地中の植物ホルモンの濃度は、植物ホルモンを1種用いる場合には0.01mg/l〜10mg/lであることが好ましく、0.02mg/l〜10mg/lであることがより好ましい。植物ホルモンが2種以上の場合にはそれぞれ、0.01mg/l〜10mg/lであることが好ましく、0.02mg/l〜10mg/lであることがより好ましい。
発根用培地は、植物組織培養用培地として公知の培地に、必要に応じて、銀イオン及び/又は抗酸化剤、炭素源、もしくは、植物ホルモン類を適宜添加した培地を用いてもよい。植物組織培養用培地として公知の培地としては、MS培地、リンスマイヤースクーグ培地、ホワイト培地、ガンボーグのB5培地、ニッチニッチ培地等が例示される。このうちMS培地及びガンボーグのB5培地が好ましい。これらの培地は、必要に応じて適宜希釈等して用いることができる。
発根用培地は、液体培地、固体培地のいずれであってもよいが、液体培地の方が作業効率及び移植時に根を傷つけることが少ない点で好ましい。液体培地の場合には培地組成を混合し調製してそのまま用いてもよい。固体培地の場合には液体培地と同様に培地組成を混合し調製すると同時に、或いは調整後に、寒天又はゲランガム等の固化剤で固化させて使用し得る。固化剤の培地への添加量は、固化剤の種類、培地の組成によっても異なる。固化剤が寒天の場合0.5重量%以上1重量%以下であることが好ましい。固化剤がゲランガムの場合0.2重量%以上0.3重量%以下であることが好ましい。
発根用培地への挿し穂の挿し付け方法は、培地の種類、培養条件等により適宜選択すればよい。発根用培地が固体培地の場合は、発根用培地に挿し穂の基部を直接挿し付けて培養すればよい。一方、発根用培地が液体培地の場合は、例えば、後述の支持体を発根用培地で湿潤させてから、挿し穂の基部を挿し付けて培養すればよい。なお、発根用培地に挿し付ける時に挿し穂の基部に傷をつけるといった物理的刺激を加えることも、発根率の向上のために好ましい。挿し穂の基部とは、挿し穂の一端であって根が形成される領域(葉の形成される端部に対し反対側)を意味する。挿し穂として多芽体を用いる場合の基部は、多芽体を分割する際の切断面を有する領域である。挿し穂の基部への傷のサイズ(大きさ、形状など)は特に限定されない。例えば、挿し穂として多芽体を用いる場合、挿し穂の基部(上述の切断面)を正面方向から見た際に十字型となるような傷を付けることが好ましい。傷を付ける際には、ハサミ、ナイフなどの器具を用いることができる。
本発明において支持体とは、挿し穂を支持するための支持体である。発根用培地(特に固体培地)を用いる場合などには、支持体は不要の場合があるが、それ以外の場合には通常支持体が利用される。
支持体は、栽培の期間中挿し穂を指しつけた状態で保持できる支持体が好ましい。栽培にあたり液状の発根用培地を用いる場合には、通常、支持体に浸潤させて用いられる。よって支持体は液体で浸潤され得る支持体が好ましく、中でも、液体培地により実質的に均一に湿潤され得る支持体が好ましい。支持体としては、従来慣用の支持体を用いればよく、特に限定されない。支持体としては、砂、赤玉土等の自然土壌;籾殻燻炭、ココナッツ繊維、バーミキュライト、パーライト、ピートモス、ガラスビーズ等の人工土壌;発泡フェノール樹脂、ロックウール等の多孔性成形品などを例示することができる。支持体を培養容器内に入れることにより発根床が調製され得る。なお、発根用培地が固体培地の場合には、固体培地を直接培養容器に入れることで、発根床が調製され得る。
本発明においては、発根用培地又は支持体を納めるための培養容器を用いることが好ましい。培養容器としては、従来慣用の培養容器を用いることができ、特に限定されない。例えば、育苗ポット、プラグトレーなどが例示される。培養容器は密閉型でもよいし開放型でもよいが、密閉型の培養容器が、挿し穂及びこれから形成される挿し木苗を取り巻く環境の湿度維持が容易となるため好ましい。
挿し穂として枝を用いる場合には、培養容器として密閉型の培養容器を用いることが好ましい。これにより挿し穂を高湿度下に置くことが容易となるので、枝についた葉の蒸散作用が抑制され、従来行われていた葉の一部切除処理を省略することができる。
培養容器は、容器内への炭酸ガス供給が可能な容器であることがより好ましい。このような培養容器としては、二酸化炭素透過性の膜で蔽われた開口部を有する容器が例示される。二酸化炭素透過性の膜で蔽われた開口部を有する容器を用いることにより、培養環境の湿度をも容易に調整しうる。開口部の形状は特に問わない。二酸化炭素透過性の膜の材料は特に限定されず、ポリテトラフルオロエチレンなどが例示される。膜の孔径も特に限定されず、約0.1μm以上約1μm以下の孔径の膜が例示される。
本発明において、支持体及び/又は発根用培地の温度は、通常は20℃〜30℃であり、22℃〜26℃であることが好ましい。
本発明は、発根後の挿し穂及び培養物から得られる挿し木苗を育成するなど、植物の栽培を行ってもよい。例えば、得られる挿し木苗を、育苗容器、苗畑に移植して育成させ得る。挿し穂又は培養物が不定芽、苗条原基等の培養組織由来のシュートである場合には、通常、育苗容器等への移植の前に順化の工程を経る。育成の際の温度、光強度、育苗容器に収容する用土の種類や量等の条件は、挿し木苗に適する条件を適宜設定すればよい。挿し木苗を育成する工程を経ることにより、植物やその二次代謝物を得ることができる。
実施例1
1)対象植物
ソメイヨシノを用いた。
2)光化学系IIの量子収率の測定
測定用のチャンバー内のCO2濃度を400又は1000ppm、温度を24〜26℃、湿度を50〜70%に、それぞれ調整した。チャンバー内にソメイヨシノの葉の付いた枝を投入し、無作為に選んだ葉に光を当てて光化学系IIの量子収率(クロロフィル蛍光)を測定した。光強度は、40、80、160、240、320、640及び960μmol/m2/sに調光した。クロロフィル蛍光測定器は、LI−6400(Li−Cor社)であり、測定面積は314mm2(径約20mm)、飽和光の光強度7,000μmol/m2/s(フラッシュライト)であった。照射する光は、青色と赤色の比率2:8の光合成波長とした。結果を表1、図1〜2に示す。なお、表1及び図中の量子収率は、5枚以上の葉または5か所以上の部位についての測定値の平均値である。
3)発根培養
発根培地にソメイヨシノの挿し穂(2014年6月に採取)を光照射条件ごとに5本ずつ挿しつけて発根培養した。光照射条件は、光強度40、80、160及び240μmol/m2/sとした。発根培地は、1/5希釈B5培地(和光純薬工業株式会社製)であり、IBA濃度を2mg/Lに調整するとともにチオ硫酸銀5μMを添加した。培養条件は、CO2濃度1000ppm、温度25℃、湿度60%、培養期間18日間であった。照射する光は、青色と赤色の比率2:8の波長とした。
4)発根状況の確認
発根培養期間終了後、挿し穂の発根率、根の本数、及び根の長さを測定し、光照射条件ごとの平均値を測定した。結果を表1、図3〜5に示す。
実施例2
1)対象植物
丸葉ユーカリを用いた。
2)光化学系IIの量子収率の測定
測定用のチャンバー内のCO2濃度を1000ppm、温度を25℃、湿度を60℃に、それぞれ調整した。丸葉ユーカリの葉をあらかじめそれぞれの光環境に5分以上置いた後、光化学系IIの量子収率(クロロフィル蛍光)を測定した。測定は、スライドガラス上にサンプルを置き、測定装置の光ファイバーの長手方向がサンプルに対し90°となるように、光ファイバーをスライドガラスに接地して行った。測定装置は、Mini−PAM(WALZ社製)であり、測定面積は0.785mm2(径約1mm))、飽和光の光強度15,000μmol/m2/s(フラッシュライト)であった。光環境は、光強度40、80、160、240及び280μmol/m2/sの光照射であった。結果を表3、図6〜7に示す。なお、表2及び図中の量子収率は、5枚以上の葉または5か所以上の部位についての測定値の平均値である。
3)発根培養
試料を丸葉ユーカリ培養物としたこと、光照射条件ごとの供試数を25本としたこと、培養期間を3週間としたこと、照射する光は白色(青色と赤色の比率が5:3)の波長の冷陰極管からの光としたこと、及び光照射条件を光強度40、80、160、240及び280μmol/m2/sとしたこと以外は、実施例1の項目3と同様に行った。培養物は、以下の条件で調製した:MS培地、BAP0.2mg/L、MSビタミン、2.5g/L、シュークロース20g/L、ゲランガム2.5g/Lを加えてpHを5.5に調整した培地で伸長させた組織培養物から挿し穂を切り出した。その後、5倍希釈したB5培地にIBA5mg/Lを添加した発根培地を発根支持体であるオアシスに浸漬させ、挿し穂をオアシスに挿し付けて容器内で4週間培養した。
4)発根状況の確認
実施例1の項目4と同様に行った。結果を表4、図8〜10に示す。
実施例3
1)対象植物
マオウ(シナマオウ:Ephedra sinica)を用いた。
2)光化学系IIの量子収率の測定
光照射条件を光強度40、80、160及び240μmol/m2/sとしたこと以外は、実施例2の項目2と同様に行った。結果を表4、図11〜12に示す。なお、表及び図中の量子収率は、5枚以上の葉または5か所以上の部位についての測定値の平均値である。
3)発根培養
試料をマオウの培養物としたこと、光照射条件ごとの供試数を12本としたこと、培養期間を4週間としたこと、光照射条件を光強度40、80、160及び240μmol/m2/sとしたこと、及びIBA濃度を5mg/Lとしたこと以外は、実施例1の項目3と同様に行った。培養物は、以下の条件で調製した:MS培地、BAP2mg/L、MSビタミン、シュークロース20g/L、ゲランガム2.5g/Lを加えてpHを5.5に調整した培地で伸長させた組織培養物から挿し穂を切り出した。5倍希釈したB5培地にIBA5mg/Lを添加した発根培地を発根支持体であるオアシスに浸漬させた。挿し穂をオアシスに挿し付けて容器内で6週間培養した。
4)発根状況の確認
実施例1の項目4と同様に行った。結果を図13〜15に示す。
実施例4
1)対象植物
ヤマナラシ(ポプラ)をサンプルとして用いた。
2)光化学系IIの量子収率の測定
光照射条件を光強度40、80、160及び240μmol/m2/sとしたこと、及びCO2濃度を400又は1000ppmとしたこと以外は、実施例3の項目2と同様に行った。結果を表5、図16に示す。なお、表5及び図中の量子収率は、5枚以上の葉または5か所以上の部位についての測定値の平均値である。
3)発根培養
試料をヤマナラシの培養物としたこと、光照射条件ごとの供試数を10本としたこと、培養期間を10日間としたこと、及びCO2濃度を400又は1000ppmとしたこと以外は、実施例1の項目3と同様に行った。培養物は、以下の条件で調製した:MS培地、BAP2mg/L、MSビタミン、シュークロース20g/L、ゲランガム2.5g/Lを加えてpHを5.5に調整した培地で伸長させた組織培養物から挿し穂を切り出した。5倍希釈したB5培地にIBA2mg/Lを添加した発根培地を発根支持体であるオアシスに浸漬させた。挿し穂をオアシスに挿し付けて容器内で4週間培養した。
4)発根状況の確認
実施例1の項目4と同様に行った。結果を表5及び図17〜19に示す。
実施例5
1)対象植物
クロマツを用いた。
2−1)光化学系IIの量子収率のLI−6400による測定
クロマツの葉は細長いため、葉を水平に並べて両端をテープで留めて面状の束を作成し、束をチャンバー内に投入し葉の束に光を当てて光化学系IIの量子収率(クロロフィル蛍光)を測定した。また、CO2濃度を1000ppmに調整した。そのほかは実施例1の項目2と同様とした。結果を表2に示す。培養物は、以下の条件で調製した:鉢に植えられた苗からV字状の挿し穂を採取する。5倍希釈したB5培地にIBA10mg/Lを添加した発根培地を発根支持体であるオアシスに浸漬させた。挿し穂をオアシスに挿し付けて容器内で8週間培養した。
2−2)光化学系IIの量子収率のMini−PAMによる測定
光照射条件を光強度40、80及び160μmol/m2/sとしたこと以外は、実施例2の項目2と同様に行った。結果を表6、図20〜21に示す。なお、表及び図中の量子収率は、3束のそれぞれの測定値の平均値である。
3)発根培養
試料をクロマツの挿し穂(2014年6月に採取)としたこと、光照射条件ごとの供試数を50本としたこと、培養期間を8週間としたこと、光照射条件を光強度40、80及び160μmol/m2/sとしたこと及びIBA濃度を10mg/Lとしたこと以外は、実施例1の項目3と同様に行った。
4)発根状況の確認
実施例1の項目4と同様に行った。結果を図22〜24に示す。
ソメイヨシノでは、光化学系IIの量子収率が0.66のときの光強度が160μmol/m2/sであり、光強度160μmol/m2/sでソメイヨシノの挿し穂を培養すると発根率、根の本数及び根の長さがいずれも好成績であった(実施例1)。丸葉ユーカリでは、光化学系IIの量子効率が0.18のときの光強度が240μmol/m2/sであり、光強度240で丸葉ユーカリの培養物を培養すると発根率、根の本数及び根の長さがいずれも好成績であった(実施例2)。マオウでは、光化学系IIの量子収率が0.24の時の光強度が160μmol/m2/sであり、光強度160μmol/m2/sでマオウの培養物を培養すると発根率、根の本数及び根の長さがいずれも好成績であった(実施例3)。ヤマナラシでは、光化学系IIの量子効率が0.34のときの光強度が80μmol/m2/sであり、光強度80μmol/m2/sでヤマナラシ培養物を培養すると発根率、根の本数及び根の長さがいずれも好成績であった(実施例4)。クロマツでは、光化学系IIの量子効率が0.70(LI−6400:表2)及び0.24(Mini−PAM:表6)のときの光強度が80μmol/m2/sであり、光強度80μmol/m2/sで丸葉ユーカリの挿し穂を培養すると発根率、根の本数及び根の長さがいずれも好成績であった(実施例5)。なお、実施例1及び4では、CO2濃度400及び1000ppmに拘らず同様の光強度が好ましいとの結果が得られた。
これらの結果は、本発明の方法によれば、植物の種類などの条件に応じた最適な発根培養条件を簡易に特定でき、苗の発根率、発根した根の本数及び長さを改善することができることを示している。

Claims (5)

  1. 植物の少なくとも一部に光を照射して
    強度7,000μmol/m2/s以上の飽和光を照射した際の光化学系IIの光量子収率(1)を測定すること、及び、光量子収率(1)の測定値が0.60〜0.80における光強度を特定すること、並びに/又は
    光強度15,000μmol/m 2 /sの飽和光を照射した際の光化学系IIの光量子収率(2)を測定すること、及び、光量子収率(2)の測定値が0.20〜0.42における光強度を特定すること、
    を含む、植物の挿し穂又は培養物の発根に適した光強度を評価する方法。
  2. 植物が、サクラ属植物、ユーカリ属植物、マオウ属植物、ヤマナラシ属植物又はマツ属植物である、請求項1に記載の光強度を評価する方法。
  3. 請求項1又は2に記載の方法により特定された光強度の光を照射して植物の挿し穂又は培養物を発根させることを含む、植物の挿し穂又は培養物の発根方法。
  4. 請求項1又は2に記載の方法により特定された光強度の光を照射して植物の挿し穂又は培養物を発根させる、植物の挿し木苗の生産方法。
  5. 請求項1又は2に記載の方法により特定された光強度の光を照射して植物の挿し穂又は培養物を発根させることを含む、植物の栽培方法。
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