JP6971188B2 - カラマツ属植物の増殖方法 - Google Patents

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Description

本発明は、カラマツ属植物の増殖方法に関し、とくに人工照明下の限られた空間内において、台木の育成方法及び採穂の効率を高めたことに特長を有する増殖方法に関する。
植林用山林樹木の苗の育苗には1年〜2年といった長い時間をかけて行われている。育苗中の管理は、露地で行われる粗放的な管理が一般的である。挿し木育苗は、九州のスギの他、カラマツ属では、北海道で開発されたグイマツ×カラマツの交雑種「グイマツ雑種F」(クリーンラーチ等)が簡易なビニールハウスで挿し木が行われているほかは、実生による苗木生産が一般的である。
グイマツ雑種Fは、耐鼠性と高い成長性を併せ持つ優良品種である。グイマツ雑種Fは、特定のグイマツ品種に対してカラマツを交雑させる必要があり、現在、北海道では採種園整備が進められているが、当面、種子は慢性的な不足状態であるため、現在挿し木で増殖されている。この増殖方法においては、
(a)台木の育成
(b)育成された台木からの採穂
(c)採穂された穂の挿し木
(d)挿し木された穂(苗)の育苗
の各工程を経た後、十分に生育した苗が出荷(山出し)の対象とされる。
グイマツ雑種Fの増殖については、ビニールハウスを用いる方法も実施されている(非特許文献1、2、3)。海外においては大規模な施設を用いた増殖方法が実用化されている(非特許文献4)。
特許文献1には特異形質を有するトドマツ及びそのつぎ木による増殖方法についての記載がある。
室内において人工照明を用い、カラマツ属植物を効率的に増殖する方法も報告されている(非特許文献5及び6)。
特許第3783129号公報 特開平5−184252号公報 特願2017−052340号明細書
「グイマツ雑種F1幼苗からのさし木増殖の手引き」、北海道山林種苗協同組合・北海道立林業試験場(平成14年1月) 「グイマツ雑種F1幼苗からのさし木増殖法」、黒丸亮・来田和人、北海道林業試験場研究報告 第40号(平成15年3月) 「挿し木増殖の手引き」、北海道水産林務部森林整備課、北海道立総合研究機構林業試験場森林資源部(平成23年5月) "Saint-Modeste Nursery", Denise Tousignant et. al, Larix 2007-International Symposium of the IUFRO Working Group S2.02.07 「クリーンラーチの挿し木増殖方法の改良(I) ‐環境制御による挿し木台木の成長促進‐」、http://www.forestry.jp/meeting/files/128abstract.pdf 「クリーンラーチの挿し木増殖方法の改良(II) ‐環境制御による挿し木苗の効率的生産‐」、http://www.forestry.jp/meeting/files/128abstract.pdf
グイマツ雑種F等のカラマツ属植物の苗は、上記のとおり挿し木で増殖・生産されているが、現状における苗の供給は需要にはるかに及ばず慢性的に供給不足の状態にある。
苗の供給が不足している原因として考えられたのは、現在の増殖方法においては、
(i)採穂のための台木の育成から採穂(上記工程a〜b)に得られる穂の量が少ないこと、及び
(ii)挿し木された穂(苗)が、育苗により正常に生育する割合(得苗率)が低いこと、である。つまり、単位時間(例えば1年間)あたりに得られる挿し木が可能な穂の数及び正常に生育する穂の割合、の結果としての単位時間(年)あたりの苗の生産量は、上記(i)及び(ii)の理由により少ないと、考えられていた。また、
(iii)発根率が低いといった問題もある。
グイマツ雑種Fにおいて、挿し木された穂(苗)の育苗は、通常5月〜7月頃に挿し木されることから始められるところ、現在の技術においては1年目の生育は発根までに2ヶ月近くを要するため、充分成長せず、山出しが可能になるのは2年目の秋以降である(非特許文献1)。また、発根後の生育を促進するといった手法も存在しない。
なお、苗の供給が不足している上記(i)〜(iii)の原因・理由について、以下のような事情がある(挿し木前年に播種して挿し木台木として使用した場合を「2年生台木」といい、挿し木当年に播種して挿し木台木として使用した場合を「1年生台木」という):
(i)採穂量が少ないことについて
現在、道内の苗木生産者は配布された2年生苗木を育苗し台木として使用しているが、採穂数が、10〜15本/台木と少ない。原因として配布される苗木が小さいこと、3年生以降の台木では発根率の低下や枝性の問題から採穂できないこと、が挙げられる。
(ii)低い得苗率について
道内での挿し木は気温が上昇する5月から7月にかけて行われ、発根させるためには厳密な環境制御が必要であるため生産者の管理負担が大きく、さらに管理ミスにより挿し木を枯らし得苗率を大幅に下げている。
(iii) 低い発根率について
挿し木後の環境制御が困難である。
非特許文献1又は2に記載の方法でも台木の生育には約2年の時間を要するため、採穂が開始されるまでの時間を一層短縮する技術はより好ましい。
またカラマツ属植物の挿し木増殖方法として、閉鎖型育苗施設を利用した方法も提唱されている(特許文献3)。該方法に適用されるべき省スペース化及びより小さい光源の高さが達成されれば、単位面積当たりの採穂量を一層増大させることもできる。
上記のとおり、グイマツ雑種Fを含むカラマツ属植物の挿し木苗の生産において、挿し木苗の供給が需要にはるかに及ばないといった状況を改善するための技術を提供することは、早急に解決されるべき新たな課題であると考えられた。
そのために、さらに採穂量を増大するための技術を確立することは、カラマツ属植物の挿し木苗の生産における急務であった。
本発明者らは、上記の課題について従来考えられた解決手段に加えて、台木から得られる穂の数を一層増大させる技術は、さらに有用である可能性があると考え鋭意研究を重ねた結果、カラマツ属植物において、台木にある操作を加えることにより台木からの穂の発生を促進させることができる可能性があることを見出し、さらに研究を進めた結果本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、少なくとも以下の発明に関する:
[1]閉鎖型育苗施設において、頂枝を切除したカラマツ属植物を、切除された後の頂枝の先端部(すなわち断幹後の台木の主軸の先端部)と人工照明との距離が4cm〜10cmになるように前記人工照明の下に設置し、前記切除された後の頂枝の先端部又はその近傍からの、採穂され挿し木される穂の発生を促進する第1の工程を含む、カラマツ属植物の増殖方法。
[2]
第1の工程の後に発生又は伸長した穂が人工照明に接触する前に該穂を切除し、切除された後の先端部と人工照明との距離を4cm〜10cmにし、前記切除された後の先端部又はその近傍から採穂され挿し木される穂を発生させる第2の工程をさらに含む、上記[1]の方法。
[3]
第2の工程の後に発生又は伸長した穂が人工照明に接触する前に該穂を切除し、切除された後の先端部と人工照明との距離を4cm〜10cmにし、前記切除された後の先端部又はその近傍から採穂され挿し木されるさらなる穂を発生させる第3の工程をさらに含む、上記[2]の方法。
[4]
第2の工程及び第3の工程において切除された穂を挿し木して生育させることを含む上記[2]又は[3]の方法。
[5]
第3の工程の後に発生又は伸長した穂を切除し挿し木して生育させることを含む上記[3]又は[4]の方法。
[6]
第1の工程、第2の工程及び/又は第3の工程において切除された後の先端部と人工照明との距離が5cm〜7cmである、上記[4]の方法。
[7]
台木の頂枝付近の光強度が50〜300μmol m-2 s-1である上記[1]〜[6]のいずれか方法。
[8]
台木の頂枝付近の光強度が100〜200μmol m-2 s-1である上記[7]の方法。
本発明によれば、従来の採穂量が少ないという問題を解決することができる。そのため、本発明によれば、カラマツ属植物についてより高い増殖率を達成し、カラマツ属植物の苗の高効率生産が可能になる。
より具体的には、本発明によれば、より多くの採穂量を確保できるばかりでなく、育苗を促進することにより穂の挿し木を行った年度内に当該穂を育成した苗を山出しの対象とすることができるようになるため、2年生の段階で初めて山出しが可能になる従来の方法より1年度早く苗の生産をより一層大量に行うことができるといった効果が奏される。
本発明の方法は、台木にある操作を加えることにより台木からの穂の発生を促進させるカラマツ属植物の増殖方法である。カラマツ属の大量増殖を目的とする技術は知られているが(特許文献2)、当該技術は組織培養による方法であり本発明の構成とは全く異なるものである。また本発明の方法によれば、特許文献2に記載の技術を含む従来の方法を上回るカラマツ属植物の苗の高効率生産が可能になる。
本発明の方法のうち上記[2]〜[5]の方法によれば、カラマツ属植物の苗の生産の効率を一層高めることができる。
また本発明の方法のうち上記[6]の方法によれば、第1の工程、第2の工程及び/又は第3の工程において切除された後の先端部と人工照明との距離が最適化され、カラマツ属植物の苗の生産の効率をより一層高めることができる。
また本発明の方法において、台木の頂枝付近の光強度が50〜300μmol m-2 s-1である方法(上記[7])、とくに台木の頂枝付近の光強度が100〜200μmol m-2 s-1である方法(上記[8])によれば、光強度が好適であるためカラマツ属植物の苗の生産の効率をより一層高めることができる。
閉鎖型育苗施設は太陽光が透過しない閉鎖空間内で人工光を使い、植物を育成する施設であり、温湿度、光条件の他、培養液、CO2等の植物育成に関連する環境を管理することが可能にする施設であり、農業分野では普及が進んでいる。一方、木本類の苗木生産における閉鎖型育苗施設の利用は一部の薬木類を除いて事例がなく、樹木の苗木生産については海外の山林用苗木生産で人工光を使った育苗の事例があるにすぎない。本発明の方法によれば、閉鎖型育苗施設を用いることにより、カラマツ属植物の挿し木苗の生産において、低コスト・安定生産に資する手法を確立することができる。
また、挿し木増殖を目的とした台木を剪定する方法は、スギ、ヒノキでは確立されている。またカラマツ属植物については盆栽のような増殖を目的としない場合においては剪定がなされることは知られている。一方、カラマツ属植物の挿し木増殖を目的とする場合については、伸長した頂枝又は側枝を適当な長さで切除し採穂として利用するため採穂数は台木の長さに強く依存することから(図1)、頂枝又は側枝を採穂前に剪定・切除することはこれまで行われていない。
上記のような従来技術における手法とは異なり、本発明においては頂枝及び側枝の切除が採穂前になされることにより、従来の方法を上回る採穂数及び苗の増殖率が達成される。すなわち本発明の構成は従来技術からは想到し得ないものであるし、本発明により奏される効果は従来技術からは予測することができない顕著な効果である。
従来の方法による1年生の台木の生育を示す写真である写真図である。台木の大きさは約40〜50cmである。 本発明の方法を模式的に示す図である。 本発明の方法(実施例1:2年生台木)により育成し、採穂が開始されたときの台木を示す写真図(写真4)である。 本発明の方法(実施例1:2年生台木)により育成し、合計採穂数が62本であった台木(12月処理)を示す写真図(写真5)である。 本発明の方法(実施例1:2年生台木)により育成し、合計採穂数が55本であった台木(1月処理)を示す写真図(写真6)である。 本発明の方法(実施例1:2年生台木)により育成された台木から採穂された穂の写真図(写真7)である。左の写真は挿し木トレイの例を示し(2017年4月19日に撮影)、右の写真は発根済みの小型プラグ挿し木苗の例を示す。 本発明の方法(実施例2:1年生台木)における、台木の断幹位置と採穂位置の例を示す写真図(写真8)である。 本発明の方法(実施例2:1年生台木)における、脇芽から発生・伸長した挿し穂となる葉芽の成長の例を示す写真図(写真9)である。 本発明の方法(実施例2:1年生台木)における、CL(クリーンラーチ)のある個体の外観を経時的に示す写真図(写真10)である。左から断幹時(2017年10月27日)、1ヶ月後、2ヵ月後、及び3ヵ月後の外観である。
本明細書及び本発明において「頂枝」とは、採穂のための穂を発生させる樹木の植物体である台木の幹(主軸)の上端部位を意味する。本明細書において、頂枝の先端部を切除することを「断幹」ということがある。また他に断りがない限り、「頂枝の先端部」は切り取られた枝の頂枝の先端部ではなく、切り取られた枝が除去された、台木の主軸の先端部を意味する。
本明細書及び本発明において「側枝」とは、主軸から発生した枝又は穂を意味する。
本明細書及び本発明において、「生育」及び「育成」の語は、植物を成長させること又は植物を成長することを意味し、相互に実質的に同じ意味を有する。
本明細書及び本発明において「穂の発生を促進する」及び「穂の発生が促進される」とは、特定の処理が行われた場合に該処理が行われない場合と比較して、穂の発生が少なくとも約10%多くなることを意味する。
本明細書及び本発明において、台木の頂枝又は側枝が「切除された後の先端部」とは、切除された部分が切り離された後に台木に残っている該頂枝又は側枝の先端部を意味する。
本発明の方法は、閉鎖型育苗施設において、頂枝を切除したカラマツ属植物を、切除された後の頂枝の先端部と人工照明との距離が4cm〜10cmになるように前記人工照明の下に設置し、前記切除された後の頂枝の先端部又はその近傍からの、採穂され挿し木される穂の発生を促進する第1の工程を含む、カラマツ属植物の増殖方法、である。
第1の工程は、採穂を目的とするカラマツ属植物の台木の頂枝を切除(又は剪定)し、室内の人工照明下に、閉鎖型育苗施設において、切除された後の頂枝の先端部と人工照明との距離が約4cm〜約10cmになるように置く操作を含む。かかる操作により、前記切除された後の頂枝の先端部又はその近傍からの穂の発生が促進される。
図2に本発明の方法を模式的に示した。同図に示されている各ステージについて、例えば以下のように説明される:
Figure 0006971188

本発明者らは、カラマツ属植物の頂枝を切除(断幹)し、さらに切除された後の頂枝の先端部と人工照明との距離が約4cm〜約10cmになるように前記人工照明の下に前記カラマツ属植物を設置することにより、前記切除された後の頂枝の先端部又はその近傍からの穂の発生を促進されることを見出した。また発生が促進された穂は、人工照明の方向に伸長するためほぼ鉛直方向に伸長する。このように穂の発生が促進されるようになる植物の生理機構は明らかではないが、切除が植物体に対する何らかの刺激になっていると推測される。
前記のとおり発生が促進された穂がほぼ鉛直方向に伸長することは、穂全体が実質的に均一に生育することに寄与し、挿し木後の良好な生育につながるため好ましい。穂が鉛直方向ではなく水平方向に近い方向に伸長すると、穂の軸に表裏関係が生じ、枝性等の苗木の品質上、問題となる生育を示す場合があることを、当該好ましい態様においては回避することができるからである。
前記第1の工程においては上記のとおり、カラマツ属植物の切除された後の頂枝の先端部と人工照明との距離が約4cm〜約10cmになるように前記人工照明の下に設置されるところ、切除は人工照明下への設置の前に行っても後に行ってもよい。
切除された後の頂枝の先端部と人工照明との距離は、好ましくは約4.5cm〜約9cmであり、より好ましくは約5cm〜約7cmであり、最も好ましくは約5cm〜約6.5cmである。
これらの長さは、切り取られる穂の長さ約5cmを目安とした長さであり、カラマツ属植物の生育の状態や生育の環境に応じて適宜改変してよい。また本明細書において「約」の語は、その後に導かれる数値について少なくとも大小10%の範囲の数値を包含するものである。すなわちカラマツ属植物の切除された後の頂枝の先端部と人工照明との距離は、約5cmを目安に行えばよい。
第1の工程において頂枝を切除して切り取られる部位の長さは限定されず、切除された後の頂枝の先端部と人工照明との距離が約4cm〜約10cmになるように個々の設備の条件に合わせてよい。前記切り取られる部位の長さは例えば約2cm〜約10cmである。
第1の工程において頂枝を切除した後の台木の大きさ(樹高)も限定されず、個々の設備の条件に合わせてよい。かかる大きさは例えば約25cm〜約40cmとしてよい。
本発明の方法が適用されるカラマツ属植物は限定されないところ、グイマツ雑種F1等の種簡交雑品種は好ましい。また本発明の方法が適用される台木の樹齢は限定されず、1年生又は2年生のいずれであってもよい。
第1の工程において頂枝を切除されるカラマツ属植物の台木は、挿し木が可能な穂が発生しているものが好ましい。このような台木は実生苗から育成されるところ、台木として2年生までのものは発根率が高く、また枝性の増加がないため好ましく、播種後約1年以内のものはより好ましい。台木は冷蔵等による低温処理を経たものであってもよい。
本発明の方法のうち、第2の工程、すなわち、
−第1の工程の後に発生又は伸長した穂が人工照明に接触する前に該穂を切除し、切除された後の先端部と人工照明との距離を約4cm〜約10cmにし、前記切除された後の先端部又はその近傍から採穂され挿し木される穂を発生させる工程、
及び第3の工程、すなわち
−第2の工程の後に発生又は伸長した穂が人工照明に接触する前に該穂を切除し、切除された後の先端部と人工照明との距離を約4cm〜約10cmにし、前記切除された後の頂枝の先端部又はその近傍から採穂され挿し木されるさらなる穂を発生させる工程
をさらに含む方法は好ましい。第2の工程及び第3の工程において切除し得られた穂を挿し木して生育させることにより、カラマツ属植物を大量に増殖することができる。
さらにまた、第3の工程の後に発生又は伸長した穂を台木から切除して得て挿し木して生育させることにより、カラマツ属植物を一層大量に増殖することができる。したがって、第2の工程、第3の工程、又は第3の工程の後の工程において切除される穂の本数が2本又は3本以上である本発明の方法はより好ましい。
上記各工程における採穂が、台木の比較的上位に発生した穂のみについて行うことによる本発明の方法は好ましい。台木の「比較的上位」としては、例えば台木の樹高の上から約60%の高さまでの位置を意味する。本発明の方法においては台木の比較的上方において穂の発生を促進できるため、受光効率、すなわち光合成の効率を高めることができる。
第2の工程、第3の工程、又は第3の工程の後の工程において、切除された後の先端部と人工照明との距離は、好ましくは約4.5cm〜約9cmであり、より好ましくは約5cm〜約7cmであり、最も好ましくは約5cm〜約6.5cmである。
これらの長さも第1の工程の場合と同様に約5cmを目安とした長さであり、カラマツ属植物の生育の状態や生育の環境に応じて適宜改変してよい。
第2の工程、第3の工程、又は第3の工程の後の工程により、人工照明(光源)から台木の先端(最上部)までの距離がほぼ常時約5cm以上になるように主軸の断幹、枝葉の切除が行われ、切除された部分を挿し穂として挿し木が行われる本発明の方法は好ましい。
人工照明(光源)から台木の先端(最上部)までの距離は、人工照明(光源)と同じ高さであって人工照明と実質的に同じ照度を有する部位と台木の先端(最上部)との最短距離を意味するのであって、必ずしも台木の先端(最上部)と人工照明の光源自体との最短距離ではない。
第2の工程、第3の工程又は第3の工程の後において穂を伸長させる期間は限定されないところ、これらの期間が短い本発明の方法は好ましい。このような好ましい期間は、例えば4日間〜8日間である。
本発明の方法において第2の工程、第3の工程又は第3の工程の後に穂を伸長させる期間は、いずれかの工程を行った後に新たに発生した穂の長さを基準にして行ってもよい。
第2の工程、第3の工程又は第3の工程の後において採穂を行う場合、採穂の対象とされる穂(側枝)の長さはとくに限定されないが、一定程度の長さを有するものは挿し木後の生育に優れるため好ましい。かかる長さは例えば約3cm以上であり、好ましくは約4cm以上である。
採穂は毎日行ってもよいし、日をおいて行ってもよい。採穂はまた、採穂可能な穂の数が一定数に達した頃に行ってもよい。かかる一定数は、例えば5本/台木であるが、これに限定されない。
台木を育成する方法は限定されないところ、環境条件を制御できる恒温室や恒温チャンバのような室内・設備内において育成を行うことは好ましい。
台木を育成する条件は限定されないところ、例えば1年生の段階から15時間以上の長日及び13℃以上の加温条件は好ましい。長日条件として16時間以上の日長が好ましく、18時間の日長はより好ましい。
人工照明(光源、人工光)の種類は限定されず、例えば白熱電球、蛍光灯、高輝度放電灯(ハロゲンランプ、高圧ナトリウムランプ)、固体素子発光光源(LED、有機EL等)であってよい。
本発明の方法においては人工照明(光源)の光強度も限定されず、用いられる設備の条件に合わせて設定してよい。
光強度としてはまた台木の頂枝付近において50〜300μmol m-2 s-1であると好ましく、100〜200μmol m-2 s-1はより好ましい。
台木を育成する際の密度は限定されず、用いられる設備や装置を勘案して決定してよい。前記密度として20株/m2以上が例示され、好ましくは30株/m2以上である。密度を高くすることにより、カラマツ属植物の増殖を一層効率的に行うことができるため好ましい。
挿し木後の育苗方法
少なくとも第1の工程を経た後に発生・伸長した穂を挿し木して育苗する本発明の方法は好ましい。
上記挿し木の方法は限定されず、採穂した挿し穂を本技術分野において通常用いられる容器(ポットやプラグ)に挿し木してよい。容器としてサブストレートポット(イワタニアグリグリーン社販売、φ30mm×H30mm)等が例示されるがこれらに限定されるものではない。
挿し木後の育苗方法は限定されず、挿し木が生育して山出し可能なものになる方法であればよい。挿し木後の育苗が室内において光条件及び温度条件の管理が自動で行われる本発明の方法は、管理がより確実に行われるため好ましい。これらの場合において光条件を与えるために用いる光源の種類は限定されず、台木の育成に用いてよい光源と同様であってよく、例えば白熱電球、蛍光灯、高輝度放電灯(ハロゲンランプ、高圧ナトリウムランプ)、固体素子発光光源(LED、有機EL等)であってよい。
育苗の際の光の強度も限定されず、用いられる設備の条件に合わせて設定してよい。光の強度は例えば光源から30cmの高さで80〜120μmol m-2 s-1であってよい。
本発明の方法において、挿し木を小容量(10 ml〜30 ml)のプラグを利用して、発根・幼苗段階の育成を行うことは、小面積での量産が可能になるため好ましい。閉鎖環境系において育苗を行うことにより周年生産が可能になるため、より好ましい。
本発明の方法において、育苗の際の潅水の方法は限定されず、底面潅水により潅水を行うこともできる。
本発明の方法のうち、得苗率が、80%以上である方法は好ましく、90%以上である方法はより好ましく、95%以上である方法は一層より好ましい。育苗が、挿し木から2ヶ月後まで行われる本発明の方法は好ましく、挿し木から3ヶ月後まで行われる方法はより好ましい。
本発明の方法においては、従来の方法と同様に必ずしも肥料は必要とされないが、肥料が用いられる条件下において行われる本発明の方法は好ましい。
肥料の種類は限定されず、固形肥料および液体肥料のいずれも好適に用いられる。固形肥料は初期肥効が抑えられる肥効調節型肥料を予め培地に混合しておくか、根を伸長させる時期に移行する際に添加してよい。液体肥料は、根を伸長させる工程以降に培地に添加してよい。
本発明の方法には、以下の態様も包含される:
1)光源から植物体までの高さが限られた閉鎖型育苗施設において、カラマツ属植物の挿し木増殖を目的に大量採穂を可能にする台木育成方法であり、一定の高さで台木の先端を切除し、切除した後の先端と光源までの長さを6cm以上とする方法。
2)分枝した枝(側枝)から発生する緑枝を光源から6cm以上で切除し、挿し穂とする方法。
3)光源の明期が14時間以上であり、好ましくは16時間以上である方法。
4)台木の育成密度が20株/m2以上、好ましくは30株/m2以上である方法。
5)台木の剪定が、播種後約2年以内(実生苗からの台木)、又は露地に播種し越冬後を経た、播種後約1年以内に行われる方法。
実施例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例はいかなる意味においても本発明を限定するものではない。
<実施例1(2年生台木)>
1)目的
閉鎖型育苗施設においてクリーンラーチ台木から大量採穂を確立するため、剪定方法及び育成方法を検討する。
2)試験内容
●供試植物:クリーンラーチ2年生台木(2016年春に播種し育成後、同年10月に雪室に貯蔵されていた苗を北海道林業試験場より提供されたもの)。
●育苗方法:クリーンラーチは2016年12月及び2017年1月に雪室から台木を出して1リットル容のポットに鉢上げし恒温室で育成した。恒温室の条件は気温25℃、湿度60%、人工光により明期18時間で管理を行った。人工光の光源は蛍光灯(3波長昼光色、32W、光強度は光源から30cmの高さで100μmol m-2 s-1)とした。潅水は底面灌水により1回/日の頻度で行った。
●剪定方法:光源から下へ5cm以下になるようにCL台木の頂枝を断幹した。その後、上方へ伸長した側枝を、光源からの距離が5cm以上になるように枝を切除し挿し穂とした。台木の樹高は30〜35cmであった。
●挿し木方法:採穂した挿し穂はサブストレートポット(イワタニアグリグリーン社販売、φ30mm×H30mm)に挿し木して、同じ恒温室で同じ条件で管理した。
本実施例における試験において採用された試験スケジュールを模式的に以下に示す:
Figure 0006971188
3)試験結果
●加温・長日処理から約1ヵ月後で採穂が可能になり(図3(写真4))、その後、光源からの距離を保ちながら、3〜4ヶ月採穂が継続された。採穂数の合計は12月処理では平均38本、最大62本(図4(写真5))、1月処理では平均40本、最大55本(図5、写真6)となった。通常、北海道での採穂は5月〜8月まで行われ、採穂数は平均10数本であることから、本発明の方法により採穂数を格段に増やせることが確認できた(表1、図6(写真7))。
本発明の方法により生育された台木は、従来技術による台木(例えば図1を参照)と比較して、穂の発生が頂部においてより多いという特徴がみられた。
●また、1月〜2月に挿し木された挿し木苗の発根率は82%(n=128)であり良好であった(表2)。
Figure 0006971188


Figure 0006971188
<実施例2(1年生台木)>
1)目的
閉鎖型育苗施設においてクリーンラーチ台木から大量採穂を確立するため、剪定方法及び育成方法を1年生台木において検討する。
2)試験内容
●供試植物:クリーンラーチ
●育苗方法:クリーンラーチは2017年3月1日に播種し、2017年4月に150ml容積の不織布ポットに移植し温室内で育成した。同年7月14日に1リットル容のポットに鉢上げし恒温室で育成した。育成管理は実施例1と同様とし、人工光の明期は16時間とした。
●剪定方法:台木の主軸から伸長した頂枝は光源から下へ5cm以下になるように断幹した。その後、上方へ伸長した側枝を、光源からの距離が5cm以上になるように枝を切除し挿し穂とした(図7(写真8))。台木の樹高は30〜35cmであった。
本実施例における試験において採用された試験スケジュールを模式的に以下に示す:
Figure 0006971188


3)試験結果
●断幹後、頂枝があった主軸の光源に近い上方付近から複数の葉芽が発生し、上方へ伸長した(図8(写真9))。更に主軸から伸長した側枝についても、光源から5cmの高さを目安に切除したところ、主軸と同様に光源に近い上方から複数の葉芽が発生し上方へ伸長した(図9(写真10))。
●切除した枝葉は、長さ3〜4cmで調整し挿し穂とした。挿し穂の本数は、恒温室へ移動後3ヶ月までに平均で18本、最大で35本に達した(表3)。
Figure 0006971188

本発明によれば、カラマツ属植物についてより高い増殖率を達成し、カラマツ属植物の苗の高効率生産が可能になる。したがって、本発明はカラマツ属植物の挿し木苗の生産産業および関連産業の発展に寄与するところ大である。

Claims (8)

  1. 閉鎖型育苗施設において、頂枝を切除したカラマツ属植物を、切除された後の頂枝の先端部と人工照明との距離が4cm〜10cmになるように前記人工照明の下に設置し、前記切除された後の頂枝の先端部又はその近傍からの、採穂され挿し木される穂の発生を促進する第1の工程を含む、カラマツ属植物の増殖方法。
  2. 第1の工程の後に発生又は伸長した穂が人工照明に接触する前に該穂を切除し、切除された後の先端部と人工照明との距離を4cm〜10cmにし、前記切除された後の先端部又はその近傍から採穂され挿し木される穂を発生させる第2の工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 第2の工程の後に発生又は伸長した穂が人工照明に接触する前に該穂を切除し、切除された後の先端部と人工照明との距離を4cm〜10cmにし、前記切除された後の先端部又はその近傍から採穂され挿し木されるさらなる穂を発生させる第3の工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
  4. 第2の工程及び第3の工程において切除された穂を挿し木して生育させることを含む請求項2又は3に記載の方法。
  5. 第3の工程の後に発生又は伸長した穂を切除し挿し木して生育させることを含む請求項3又は4に記載の方法。
  6. 第1の工程、第2の工程及び/又は第3の工程において切除された後の先端部と人工照明との距離が5cm〜7cmである、請求項4に記載の方法。
  7. 台木の頂枝付近の光強度が50〜300μmol m-2 s-1である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 台木の頂枝付近の光強度が100〜200μmol m-2 s-1である請求項7に記載の方法。
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