JP6918315B2 - イチゴ栽培方法及び大果収穫用イチゴ苗生成方法 - Google Patents

イチゴ栽培方法及び大果収穫用イチゴ苗生成方法 Download PDF

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Description

本発明は、イチゴの特大果を作出する栽培方法に関する。
イチゴ栽培に於いて、果托を肥大化させ特大果を作出するには、(1)花芽分化時から受粉,受精に至る過程において果托上の痩果数を増やし、果托内部のオーキシン生成量を増加させて果実肥大し易い基礎を作るとともに、(2)株の生育を旺盛に保ちソース器官である茎葉の光合成活性を高め、シンク器官である果托への同化産物の転流を促進させることで果托肥大率を大きくすることが必要なことが、従来から知られている(特許文献1〔0035〕,非特許文献1−3参照)。これは、植物ホルモンであるオーキシン(4−CPA)が果托を肥大化させる重要な内的要因であること、イチゴでは種子である痩果が植物ホルモン(オーキシン)の生成部位であること、果托中の植物ホルモンのレベルは種子の発育と密接な関係にあること、痩果を除去した果托は肥大化しないが、該果托に外部からオーキシン処理を行うことで果托を肥大化させることができること、などの知見による。
特許文献1では、イチゴ等の果菜類の果実を肥大化させるための栽培方法として、緑色光(波長域480〜560nm)を暗黒時(例えば、夜間22〜24時)に果菜類に照射し、前記照射を、果菜類の花芽形成から受粉までの生育期間、該受粉から着果するまでの生育期間および果菜類の果実を生育させている期間中に定期的に行うことで、果菜類の着果および果実肥大を促進させる果菜類の栽培方法が提案されている。照射時間は2時間程度、照射頻度は3日に1度、照射光強度は少なくとも5μmol/m/sとされている。この緑色光照射によって、照射を行っていない対照区と比べて、痩果数が増加し、定植後のイチゴの生育が著しく促進され、果実が肥大化したことが報告されている。
また、非特許文献3には、イチゴ品種“女峰”について、(1)7月8日に鉢上げした苗に、8月12日〜9月9日まで25/12℃(昼/夜),8時間日長,光合成有効放射約370μmol/msで花芽分化処理を行い、9月9日に苗が頂花の雌蘂形成期であることを確認した後、(2)9Lの黒色ポリ塩化ビニル製ポットに1株ずつ定植し、(3)これらの定植苗を、其々、32/27℃(昼/夜)、28/23℃(昼/夜)、24/19℃(昼/夜)、20/15℃(昼/夜)、16/11℃(昼/夜)の5つの試験区に置いて、12時間日長の人工気象室内で栽培して、第1果房から第5果房について、果実成熟後の痩果数及び果重を調査した栽培試験について記載されている。そして、この試験に於いて、前記5つの試験区では、花芽分化処理後の温度が低いほど果托当たりの痩果数が多くなったこと、雌蘂分化期の温度が低いほど果托当たりの痩果数が多く、果重も大きくなったことが報告されている。
国際公開WO2011/007868号公報
Abbott,A.J., G.R.Best and R.A.Webb, "The Relation of Achene Number to Berry Weight in Strawberry Fruit", J.Hort.Sci. vol.45: pp.215-222, 1970. 伏原肇,林三徳,柴戸靖志,「イチゴの果重に及ぼすそう果数の影響」,九州農業研究,第55号,191頁,1993年. 森利樹,「花芽形成期の温度がイチゴ果実のそう果数と果重に及ぼす影響」,園芸学雑誌,第67巻,第3号,396-399頁,1998年.
前記の特許文献1の栽培方法に於いては、通常の電照用照明に加え、緑色光(波長域480〜560nm)の照射用の照明設備が必要であり、その分設備コストが大きくなる。また、非特許文献3記載の栽培試験のように、大果作出のために花芽分化処理後の温度管理を行う場合、9月中旬から下旬にかけて栽培圃場全体を低温に温度管理を行う必要があり、冷房コストが嵩むという問題がある。
特に、実際の農業経営に於いては、低コスト化と栽培管理の省力化が強く求められ、より低コスト・低管理労力でイチゴの大果を作出する技術が求められている。
また、従来の栽培方法では、温度管理を行わない場合には、自然条件に起因する花芽分化時期の年次変動が大きく、果実の収穫開始時期のバラツキが大きくなるため、計画的なイチゴ生産開始時期の調整が困難であるという課題があった。
そこで、本発明の目的は、従来よりも低コスト・低管理労力で計画的にイチゴの特大果を作出する栽培方法を提供することにある。また、本発明は、前記の特大果を作出する栽培方法を応用して大果収穫用のイチゴ苗を生成するイチゴ苗生成方法を提供することにある。
本発明に係るイチゴ栽培方法は、鉢上げした花芽分化前の株に対し、外気温の1日の平均値が25℃以下,日長13時間以下となる時期に至るまで、夜間電照を用いた16〜24時間の長日処理を行い、
前記条件の時期に至った後、前記長日処理を打ち切り、その後、圃場に定植することを特徴とする。
この方法によれば、花芽分化処理を行った後に温度管理を行うのではなく、温度管理を行う必要のない外気温条件となる時期である、外気温の1日の平均値が25℃以下,日長13時間以下となる時期まで長日処理を行うことによって花芽分化を遅延させ、前記時期に至った後に長日処理を打ち切り花芽分化を行わせることで、花芽分化後の花芽の生長が緩慢となり、イチゴ株の果托あたりの痩果数が増加し、その結果として大果を作出することができる。また、低温条件維持のための温度管理を行う必要なく、また、電照設備も通常使用する電照設備のみあれば実施可能であるため、大果作出のためのみに必要となる新たな設備も必要がない。従って、低コスト・低管理労力でイチゴの大果を作出することができる。また、育苗期後半の長日処理によって、通常の育苗とは逆に花芽分化を遅延させ、花芽分化が誘導される短日条件が整った時期に長日処理を打ち切ることから、花芽分化時期は電照の打ち切り時期によって決定され、自然条件に起因する花芽分化時期の年次変動が抑えられる為、計画的なイチゴ生産が可能となる。
ここで、外気温の1日の平均値が25℃以下,日長13時間以下となる時期は、過去5年間の平均気温から1日の平均値が25℃以下,日長13時間以下となる時期であり、具体的には、例えば、九州北部地方では、通常、9月15日〜30日である。また、定植時期は10月1日〜15日とされる。また、夜間電照の光源は、通常の夜間電照と同じく、白熱灯、蛍光灯、又はLED照明などを用いる事が出来、照度は20〜200lxとすることができる。長日処理の時間の下限を16時間としているのは、イチゴに於いては16時間が花芽分化の限界日照時間(日長16時間以上では、温度条件に関わらず花芽分化が誘導されない。)だからである。
また、本発明において、前記長日処理を打ち切った後、低温暗黒処理又は夜冷短日処理により、花芽分化の促進を行った後、圃場に定植するようにすることもできる。
このように、果托の痩果数を増やすための外気温条件が整った後は、出来るだけ早期に花芽分化を誘導し、雌蘂形成の時期を早めることで、受粉,受精後の栽培時の暖房コストを極力抑えることが出来る。
本発明に係る大果収穫用イチゴ苗生成方法は、鉢上げした花芽分化前のイチゴ苗を、1日の平均値が25℃以下となる時期は日長が16〜24時間となるよう日長調整をしつつ、花芽分化を開始するのに十分な株サイズまで養生する初期栽培工程と、
前記初期栽培工程の後、外気温の1日の平均値が25℃以下の育苗地に前記イチゴ苗を運搬し、該イチゴ苗を育苗圃場に定置する山上工程と、
前記育苗圃場において、日長13時間以下となるように日長調整しつつ、少なくとも20日間、前記イチゴ苗の育苗を行う痩果生成工程と、を備えたことを特徴とする。
この方法によれば、初期栽培工程で花芽分化を開始するのに十分な状態まで栽培したイチゴ株を、山上工程において、温度管理を行う必要のない外気温条件(外気温の1日の平均値が25℃以下)の育苗圃場に運搬し定置し、痩果生成工程で、日長13時間以下となるように日長調整することでイチゴ苗に花芽分化を起こさせるとともに、1日の平均値が25℃以下の条件下で緩慢に花芽分化後の花芽の生長を進行させる。花芽分化後20日間が経過すると、分化した花芽の果房分化が完了し痩果数が決定するため、このイチゴ苗を通常の栽培環境下で栽培すれば大果が生じる。従って、痩果生成工程後のイチゴ苗を出荷することで、大果収穫用イチゴ苗を農家等の栽培者に提供することができる。尚、一旦、イチゴ株の頂花の痩果数が決まれば、その後の栽培において該イチゴ株を外気温の1日の平均値が25℃以上の高温条件に遭遇させても、痩果数が変化することはないため、その後の栽培によって確実に大果を生じさせることが可能である。
ここで、「外気温の1日の平均値が25℃以下の育苗地」とは、具体的には、標高の高い高冷地であり、一般にイチゴ栽培で行われている「山上げ栽培」と同様である。
以上のように、本発明によれば、通常の育苗とは逆に、外気温の1日の平均値が25℃以下,日長13時間以下となる時期まで長日処理によって花芽分化を遅延させ、前記時期に至った後に長日処理を打ち切り花芽分化を行わせることで、計画的且つ効率的に大果を作出することができる。また、低温温度管理や、特殊な電照設備を必要とせず、低コスト・低管理労力でイチゴの大果を作出することができる。また、花芽分化時期は電照の打ち切り時期によって決定され、自然条件に起因する花芽分化時期の年次変動が抑えられる為、計画的なイチゴ生産が可能となる。
また、本発明に係る大果収穫用イチゴ苗生成方法によれば、農家等の栽培者に対し頂花房で確実に大果を生じさせることが可能な大果収穫用イチゴ苗を提供することができる。
従来のイチゴ栽培方法と本発明のイチゴ栽培方法との栽培工程を比較する図である。 (a)育苗床において夜間電照による長日処理を行う様子を撮影した写真、(b)試験圃場に定植した供試苗の写真である。 試験区と対照区との着果状況を表す写真である。図3(a)は試験区、図3(b)は対照区である。 栽培試験期における(a)育苗期間の圃場の1日の平均気温、並びに(b)ハウス内定植後のハウス内気温及び外気温の1日の平均気温を表す図である。 2017年2月27日までに収穫された果実の第1果房〜第4果房の平均果重の測定結果である。 (a)各試験区で生じた第1果房の拡大写真、(b)試験区で収穫された第1果房の拡大写真である。 対照区及び試験区(長日処理区)における(a)果重と平面面積との関係、及び(b)果重と全痩果数との関係の測定結果である。 実施例2の大果収穫用イチゴ苗生成方法の栽培工程を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明のイチゴ栽培方法では、
(冷涼な気象条件で花芽分化を開始させる)
→(花芽分化期が緩慢に進行)
→(花芽分化期間が延びて細胞分裂回数が増加し種子細胞が多数発生)
→(痩果数が増加)
→(痩果数数に比例して果托内のオーキシン生成量が増加)
→(果托肥大化のためのベースが完成)
のようなプロセスによって、大果が誘導されると推測される。従来の栽培方法との違いは、育苗期間中に於いて日長調整を行うことにより人為的に花芽分化を遅延させ、花芽分化を開始させるタイミングを、花芽分化に十分な温度条件となる冷涼な気象条件(9月下旬から10月上旬の外気温の1日の平均値が25℃以下,日長13時間以下)となる時期まで人為的に待機させるようにしたことにある。図1に、従来の一般的なイチゴ栽培方法と本発明のイチゴ栽培方法との栽培工程の比較を示す。温度条件の調整は冷暖房設備が必要となり設備コストやランニングコストが大きくなるのに対し、日長調整は極めて電照によって容易且つ低コストで行うことが出来るため、本発明は低コストで実施できる。またこれにより、従来では、花芽分化開始時期の株間でのバラつきが比較的大きかったものが、本発明では、長日処理の打ち切りとほぼ同時に全株で一斉に花芽分化が開始されるため、全株に対して容易に果実の収穫開始時期(花芽分化開始後2〜2.5月)をコントロールすることができる。さらに、冷涼な気象条件で花芽分化期が緩慢に進行することによって、痩果数が増加し、その結果、大果が誘導される。尚、従来の栽培方法では、図1に示したように、花芽分化を誘導するために、花芽分化を起こさせる20日程度前から追肥の窒素量を減少させる窒素中断工程を行っていたが、本発明では、花芽分化を開始するタイミングを花芽分化に十分な温度条件となる冷涼な気象条件まで人為的に遅延させるので、長日処理の打ち切り時には花芽分化のための気象条件が十分に整っており、窒素中断工程を行う必要はない。以下、これを実証するための試験を実施したので、試験結果について説明する。
本発明では、花芽分化前の株に対し、外気温の1日の平均値が25℃以下,日長13時間以下となる時期に至るまで、夜間電照を用いた16〜24時間の長日処理を行い、前記時期に至った後に長日処理を打ち切り、その後、圃場に定植するものである。この栽培方法により大果を作出することができることについて実証試験を実施したので、以下に説明する。
(1)試験方法
栽培試験は、福岡県筑紫野市の育苗圃場と、福岡県八女郡広川町の定植試験圃場で実施した。筑紫野市及び広川町の育苗圃場及び定植試験圃場では、1日の平均値が25℃以下,日長13時間以下となるのは、9月中旬以降である。材料にはイチゴ品種“福岡S6号”を用いた。まず、試験区1〜4として、ポットに鉢上げした花芽分化前のイチゴの供試苗を育苗床(福岡県筑紫野市の育苗圃場)に配置し、2016年8月16日から9月26日又は9月30日まで、白熱電球を用いて夜間電照を行うことで長日処理(24時間日照)を継続して行った。図2(a)は、育苗床において夜間電照による長日処理を行う様子を撮影した写真である。試験区1,3は、8月31日まで追肥を行いその後追肥を打ち切り、試験区2,4には、長日処理の打切日まで追肥を行った。また、長日処理は、試験区1,2では8月16日〜9月26日の期間行い、試験区3,4では8月16日〜9月30日の期間行った。また、対照区として、従来の栽培方法と同じく長日処理を行わない試験区を設け、対照区の供試苗には8月31日まで追肥を行いその後追肥を打ち切った。
次に、10月3日に、それぞれの試験区1〜4及び対照区の供試苗を同一のハウス内の試験圃場(福岡県八女郡広川町の定植試験圃場)に定植し、同一条件で通常通り栽培を行い、第1果房から第4果房について、果実成熟後の果重を調査した。図2(b)は、試験圃場に定植した供試苗の写真である。
図3は、試験区と対照区との着果状況を表す写真である。図3(a)は試験区、図3(b)は対照区である。写真中で表示されている「(丸数字)−(数字)」は、前半の丸数字が試験区の番号、後半の数字が供試苗の番号である。尚、丸数字の「5」は対照区を表す。図3に示したように、対照区では第1果房は典型的なサイズの整形果であるのに対し、試験区では大部分の第1果房は、対照区のものに比べて約2倍の大きさの鶏冠状果(帯状果。鶏冠状に広がった形状の特大果)となった。この傾向は、第2果房まで顕著にみられた。第3果房以降は、試験区と対照区との間で殆ど差がみられなくなった。また、試験区において発生した鶏冠状果は、通常大果でよく見られるような先青果や先白果はみられなかった。
図4は、栽培試験期における(a)育苗期間の圃場の1日の平均気温、並びに(b)ハウス内定植後のハウス内気温及び外気温の1日の平均気温を表す図である。図4(a)において、「平均/筑紫野市」の線が育苗床が置かれた育苗圃場近辺における平均気温の推移を表している。気温は日によって多少のバラツキがあるが、9月下旬以降が概ね一日の平均気温が25℃以下となる日が大部分を占めるようになる。図4(b)において、「平均/下ハウス」の線が定植後の定植圃場のハウス内の1日の平均気温を表す。定植圃場のハウス内の1日の平均気温は、9月下旬以降は25℃以下となるようになる。
表1は、自然状態(育苗期間に長日処理を行なわない状態)で栽培された対照区において花芽分化状況を調査した結果を表す。表2は、試験区(試験区3,4)において花芽分化状況を調査した結果を表す。花芽分化状況を調査は、調査対照区の3〜5株をサンプリングし、検鏡により肥厚期又は果房分化期であるか否かを確認することにより行った。ここで、「肥厚期」は、成長点部が一様に肥大肥厚する成長点肥厚を開始している時期をいう。成長点肥厚が開始した時点で花芽分化が開始する。「果房分化期」は、果房の分化が開始する時期をいう。尚、表1,表2において、「多肥」は、育苗期間中に固形肥料(IB化成肥1g)の追肥を1回行ったもの、「少肥」は育苗期間中に追肥を行わなかったものを表す。通常の栽培では、花芽分化を促進するために育苗期間中に追肥を切り「少肥」状態とされる。
Figure 0006918315
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表1において、対照区では、育苗期間の9月24日には、調査した全ての株が花芽分化期に入っており、定植日の10月3日には、調査した全ての株が果房分化期に入っていることが確認された。従って、対照区では、育苗期間の9月24日には、全株が花芽分化を開始していると考えられる。
一方、表2において、試験区(育苗期間に長日処理を行った長日処理区)は肥効状態により若干違いはあるものの、長日処理終了後2週間程度経過して花芽分化状態になった。このことから花芽分化条件が整ってから形態的に花芽分化が確認されるまでは2週間程度を要するものと思われた。また、育苗期間中に長日処理を行うことにより、花芽分化の開始時期を遅らせる方向にコントロールすることができ、外気温が花芽分化開始条件となるまで十分に下がってから長日処理を打ち切ることにより、長日処理を打ち切ってから約2週間後に一斉に花芽分化が開始されることが確認された。
図5は、2017年2月27日までに収穫された果実の第1果房〜第4果房の平均果重の測定結果である。図5において、丸数字の1〜4は、それぞれ、試験区1〜4の結果を表す。図5より、第1果房,第2果房において、何れの試験区に於いても対照区よりも果重が大きくなり、また、第2果房までは、何れの試験区に於いても通常栽培のDXクラス(最も大きい果実のランク)よりも大きい果実が得られた。
図6(a)は、各試験区で生じた第1果房の拡大写真、図6(b)は試験区で収穫された第1果房の拡大写真である。本発明のイチゴ栽培方法により、図6(b)に示したように、第1果房として手の平の半分程度の大きさの第1果房を高率で得ることが出来た。
図7は、対照区及び試験区(長日処理区)における(a)果重と果実平面面積との関係、及び(b)果重と全痩果数との関係の測定結果である。「果実平面面積」とは、イチゴ果托を撮影して測定した面積、即ち、平面に射影したときの面積である。長日処理区の果形については、乱形果を、横に広がった鶏の鶏冠状の形状をした「鶏冠果」と、球形状をした「ニギリ果」とに類別している。図7(a)において、対照区及び長日処理区は同じ傾向が認められた。整形果と乱形果の分布位置はほぼ重なった。乱形果のなかで横に広がった「鶏冠果」と球状の「ニギリ果」もほぼ同じ分布位置を占めた。図7(b)において、処理の有無や果形による分布の相違は認められなかった。果重と痩果数の相関関係について、長日処理の有無による相違は認められず、長日処理による果実の大型果には痩果数が影響していると考えれる。図7(a)(b)より、長日処理の終了時期を25℃以下になるまで延長することで果房内の痩果の発育を促した結果、果托の大果化が誘導されたことが分かる。
以上のように、鉢上げした花芽分化前の株に対し、8月中旬から外気温の1日の平均値が25℃以下,日長13時間以下となる時期(9月下旬)に至るまで、夜間電照を用いた長日処理を行い、前記条件の時期に至った後、前記長日処理を打ち切り、その後、圃場に定植することにより、高率で特大果の第1果房を作出することが可能となる。尚、9月下旬には、温度条件及び日長条件がイチゴの花芽分化開始に十分な条件となっているため、1日の平均値が25℃以下,日長13時間以下となる時期に至ったときに長日処理を打ち切れば、全ての株がほぼ同時に花芽分化を開始する。従って、長日処理を打ち切り時期によって、収穫時期(花芽分化開始後2〜2.5月)を調整することが可能となる。これにより、自然条件に起因する花芽分化時期の年次変動が抑えられる為、計画的なイチゴ生産が可能となる。
さらに、花芽分化時期をより正確に調節したい場合には、前記長日処理を打ち切った後、低温暗黒処理又は夜冷短日処理により、花芽分化の促進を行えばよい。


本実施例では、大果収穫用イチゴ苗生成方法の実施例について説明する。図8は、実施例2の大果収穫用イチゴ苗生成方法の栽培工程を示す図である。まず、苗の鉢上げを行う。そして、初期栽培工程において、鉢上げした花芽分化前のイチゴ苗を、花芽分化を開始するのに十分な状態まで養生する。このとき、養生期間が、外気温の1日の平均値が25℃以下となる時期を含む場合には、日長が16〜24時間となるよう日長調整をし、イチゴ苗が花芽分化を生じないようにする。日長調整は、夜間電照によって容易に行うことが出来る。次に、山上工程において、外気温の1日の平均値が25℃以下の育苗地(標高の高い高冷地)にイチゴ苗を運搬し、該イチゴ苗を育苗圃場に定置する。育苗地を高冷地とするのは、花芽分化のための温度管理を行う必要がないからである。温度管理を行う必要がないため、冷房設備費用やそのランニングコストが不要となり、栽培コストを低く抑えることが出来る。次に、痩果生成工程において、育苗圃場に定置したイチゴ苗に対し、日長13時間以下となるように日長調整しつつ、少なくとも20日間、イチゴ苗の育苗を行う。日長調整は、夜間から朝間の一定の期間にかけて、斜光シートでイチゴ苗を覆い、暗黒条件とすればよく、容易に行うことができる。山上げとともにイチゴ苗は一斉に花芽分化を開始し、この痩果生成工程において、果房分化が完了し痩果数が決定する。花芽分化開始から果房分化が完了までは、外気温の1日の平均値が25℃以下の冷涼状態で進行するため、花芽分化後の花芽の生長が緩慢となり、イチゴ株の果托あたりの痩果数が揃って増加する。最後に、痩果生成工程後のイチゴ苗を出荷する。痩果生成工程後は、痩果数が決定しているため、イチゴ苗を高温遭遇(1日の温度平均値が25℃以上の高温に遭遇)させてもよく、最適な温度条件で栽培すればよい。このようにして生成されたイチゴ苗は、頂果房の痩果数が揃って多いことから、その後の栽培によって確実に大果を生じさせることが可能となる。

Claims (2)

  1. 鉢上げした花芽分化前のイチゴ苗(ただし、四季成り性品種のイチゴを除く。)に対し、外気温の1日の平均値が25℃以下,日長13時間以下となる時期に至るまで、夜間電照を用いた16〜24時間の長日処理を行い、
    前記条件の時期に至った後、前記長日処理を打ち切り、その後、前記イチゴ苗を圃場に定植することを特徴とするイチゴ栽培方法。
  2. 前記長日処理を打ち切った後、低温暗黒処理又は夜冷短日処理により、前記イチゴ苗の花芽分化の促進を行った後、圃場に定植することを特徴とする請求項1記載のイチゴ栽培方法。
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