JP5102914B2 - タマネギの栽培方法及びタマネギ - Google Patents
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すなわち、2月から3月に苗床に播種することによって、5月中下旬に直径2cm程度の子球を形成させる。このような休眠に入った子球を一旦掘り上げ、風通しが良好な場所で貯蔵した後、休眠が打破される8月下旬から9月上旬の期間に、貯蔵した子球(セット球)を圃場に定植する。このとき、定植の半月程度以前の時期に、貯蔵した子球を10℃程度の温度に保持する冷温処理を実施することによってより積極的に休眠を打破させてもよい。
また、本発明に係るタマネギの栽培方法は、タマネギの種を適宜の培養基に播く播種工 程と、それを発芽させる発芽工程と、所定のタイミングで圃場に定植する定植工程とをこ の順に実施することによって冬季にタマネギを収穫するタマネギの栽培方法において、前 記播種工程は日本における夏季であって8月上旬までの期間に対応する期間内の所定タイ ミングで行い、該播種工程では、複数のセルを設けてなるセルトレイを用い、各セルに投 入した培養基に種を播き、前記発芽工程は、前記セルトレイを外気温度より低い適宜温度 に配置することによって行い、発芽した苗を、当該苗の休眠を回避させ得る日長時間で生 育させる育苗工程を実施し、前記定植工程では、育苗工程にて得られた苗を用いて、日本 における8月下旬から9月上旬までの期間に対応する期間に定植を行うことを特徴とする 。
そして、タマネギは日本における11月〜1月の期間に対応する期間である冬季に収穫する。
図1は、本発明のタマネギの栽培方法に係る複数の作業の種類及び実施時期を時系列的に示すチャート図である。本発明に係るタマネギ栽培方法が適用され得る地域は、わが国にあっては九州地方、中国地方、四国地方、近畿地方、中部地方及び関東地方等、秋まきのタマネギの生産地であり、図1はこれらの地域における作業スケジュールを示している。
本発明者らが鋭意検討した結果、子葉が完全に展開した後はタマネギの苗が日長に感応することができるようになるが、6月下旬から7月下旬までの期間にあっては日長が13.5時間より長いため、当該苗は日長感応により葉鞘基部を肥大化させ、最終的には休眠してしまうという知見を得た。そこで、前述したタイミングで短日処理を施すことによって日長感応を回避して、休眠させることなく苗を生育させるのである。
図2は、本発明の第2実施形態に係る栽培方法を時系列的に説明するためのチャート図である。本実施形態では前述した短日処理を実施しない冬どりタマネギの栽培方法について説明する。
本発明に係るタマネギの栽培方法では、休眠を回避させて生育させた苗を8月下旬から9月上旬までの期間に圃場に定植すべく、6月下旬から8月上旬までの期間に播種を行う。しかし、かかる時期に秋まき又は春まきの場合と同じように苗床に播種した場合は発芽率が低く、また発芽した場合であっても健全な苗を得ることができないため、苗による定植を行うことは不可能であった。そのため前述したように、より早い時期に播種を行って所要の発芽率を確保する一方、日長感応による休眠にて葉鞘基部が肥大したセット球を用いて定植を行うセット栽培方法が開発されたのである。
次に、苗の日長感応による休眠を回避する方法について検討した結果について説明する。
図7は、播種日が育苗に与える影響を検討した結果を示す表図である。7月11日(7月中旬)と7月25日(7月下旬)とに播種し、上述した如く温度管理した状態で発芽させ、ともに8月24日まで上述した如く温度管理した状態で育苗を行い、健全に生育した苗の数と休眠した苗の数とを比較した。
次に、短日処理を実施するか否かの判定基準について検討した。
図8は、播種日と健全苗の率との関係をより詳細に検討した結果を示す表図である。播種日を7月11日、7月28日、7月25日、8月1日とし、いずれも短日処理を実施していないこと以外は、実施例2で説明した条件と同じとした。
次に、短日処理の開始時期について検討した。
図9は短日処理を開始すべき時期を検討した結果を示す表図である。
苗の日長感応がいつから始まるかを判断すべく、苗に短日処理を行わない場合における葉の展開枚数と地下部の玉の肥大化の関係を調査した結果を図9に示した。なお、いずれも播種は7月11日に行い、育苗はハウスと露地とで実施した。使用した品種は貴錦及びシャルムである。なお、いずれの場合も、短日処理を行った結果についても対照として示した。
次に、短日処理中の照度を検討した結果について説明する。
短日処理における照度と短日処理の効果との関係を検討した結果を図10に示す。
本試験では、ハウス内に遮光フィルムを展張することによって、ハウス内の水平照度を7Lx又は28Lxに調整して短日処理を実施し、休眠した苗、すなわち葉鞘基部が肥大化した苗の発生を回避する短日効果の有無を判定した。ここで、葉鞘基部が肥大化した苗の発生割合が略5%以下である場合を短日効果が有ると判定した。
次に、短日処理の時間を検討した結果について説明する。
図11は、短日処理を種々の時間で行った場合の結果を示す表図である。
以上より、実施例3の結果と同様、日長時間を略13.5時間未満に調整することによって短日処理の効果を得ることができた。
また、日長時間を8時間に調整する短日処理を行っても、苗は健全に生育しており、日長不足による生育障害は生じていなかった。
次に、短日処理の終了時期を検討した結果について説明する。
短日処理の終了時期を8月4日、11日、18日及び24日と種々異ならせて育苗を行い、得られた苗の状態と、当該苗を定植して得られた商品の収量とをそれぞれ比較した。なお、播種日はいずれの場合も7月17日であり、短日処理開始時期は本葉が0.5枚程度展開したときとした。短日処理の時間帯は17時から翌日9時までであり、8月4日の日長時間は13時間43分、8月11日の日長時間は13時間31分、8月18日の日長時間は13時間19分、8月24日の日長時間は13時間08分であった。また、品種はシャルムである。なお、対照として短日処理を実施しない結果も示した。
次に、播種時期と定植時期との関係を検討した結果について説明する。
7月20日、7月26日、8月1日及び8月7日にそれぞれ播種を行って発芽、育苗を実施し、得られた苗を8月27日及び9月1日にそれぞれ80株ずつ定植した。そして、1月12日に収穫し、収穫株割合、総収量、商品収量、平均球重をそれぞれ求めた結果を図13に示した。なお、実施場所は佐賀県唐津市鎮西町である。
次に、本発明方法によって種々の品種のタマネギを栽培した結果について説明する。
貴錦、シャルム、博多こがねEX、センチュリー2号、トップゴールド320、博多こがね、ひろまる、及び若丸の各品種を7月25日に播種して発芽、育苗を実施し、8月27日に圃場へ定植した。そして、12月7日に収穫した。なお、本実施例では8月10日から8月24日まで17時から翌日9時まで遮光する短日処理を行った。
以上より、本件では更に以下の発明も開示している。
B 発芽
C 育苗
D 定植
E 収穫
Claims (9)
- タマネギの種を適宜の培養基に播く播種工程と、それを発芽させる発芽工程と、所定のタイミングで圃場に定植する定植工程とをこの順に実施することによって冬季にタマネギを収穫するタマネギの栽培方法において、
前記播種工程は日本における夏季であって8月上旬までの期間に対応する期間内の所定タイミングで行い、
前記発芽工程は外気温度より低い適宜温度で行い、
発芽した苗を、当該苗の休眠を回避させ得る日長時間で生育させる育苗工程を実施し、
前記定植工程では、育苗工程にて得られた苗を用いて、日本における8月下旬から9月 上旬までの期間に対応する期間に定植を行う
ことを特徴とするタマネギの栽培方法。 - タマネギの種を適宜の培養基に播く播種工程と、それを発芽させる発芽工程と、所定の タイミングで圃場に定植する定植工程とをこの順に実施することによって冬季にタマネギ を収穫するタマネギの栽培方法において、
前記播種工程は日本における夏季であって8月上旬までの期間に対応する期間内の所定 タイミングで行い、該播種工程では、複数のセルを設けてなるセルトレイを用い、各セル に投入した培養基に種を播き、
前記発芽工程は、前記セルトレイを外気温度より低い適宜温度に配置することによって 行い、
発芽した苗を、当該苗の休眠を回避させ得る日長時間で生育させる育苗工程を実施し、
前記定植工程では、育苗工程にて得られた苗を用いて、日本における8月下旬から9月 上旬までの期間に対応する期間に定植を行う
ことを特徴とするタマネギの栽培方法。 - タマネギの種を適宜の培養基に播く播種工程と、それを発芽させる発芽工程と、所定の タイミングで圃場に定植する定植工程とをこの順に実施することによって冬季にタマネギ を収穫するタマネギの栽培方法において、
前記播種工程は日本における夏季に対応する季節内の所定タイミングで行い、
前記発芽工程は外気温度より低い適宜温度で行い、
発芽した苗を、当該苗の休眠を回避させ得る日長時間で生育させる育苗工程を実施し、
前記定植工程では、育苗工程にて得られた苗を用いて定植を行うに当たって、
前記播種工程における播種のタイミングは、日本における6月下旬から7月下旬までの 期間であって、前記育苗工程における日長時間が苗の休眠を誘起させ得る日長時間である 期間に対応する期間内であり、
前記育苗工程では、苗に光が照射される時間を当日の日長時間より所要時間短くする短 日処理を行う
ことを特徴とするタマネギの栽培方法。 - 前記播種工程における播種のタイミングは、日本における7月下旬から8月上旬までの 期間であって、前記育苗工程における日長時間が苗の休眠を回避させ得る日長時間である 期間に対応する期間内である請求項1又は2記載のタマネギの栽培方法。
- 前記短日処理は発芽した子葉が完全に展開したとき以降の所定タイミングに開始する請 求項3記載のタマネギの栽培方法。
- 前記短日処理は当日の日長時間が略13.5時間未満になったタイミングに終了する請 求項3又は5記載のタマネギの栽培方法。
- 前記短日処理によって苗に光が照射される時間は略13.5時間未満の適宜時間に調整 する請求項3、5又は6記載のタマネギの栽培方法。
- 前記短日処理中、照度は少なくとも略30Lx以下に調整する請求項3、5、6又は7 記載のタマネギの栽培方法。
- 前記播種工程では、複数のセルを設けてなるセルトレイを用い、各セルに投入した培養 基に種を播く請求項1、3、5から8のいずれかに記載のタマネギの栽培方法。
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