JP2012010652A - タマネギの栽培方法及びタマネギ - Google Patents

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Abstract

【課題】 セット球を用いることなく冬どりタマネギを栽培することがでる方法、及び該方法で栽培されたタマネギを提供する。
【解決手段】 タマネギの種を適宜の培養基に播く播種工程(A)と、それを発芽させる発芽工程(B)と、所定のタイミングで圃場に定植する定植工程(D)とをこの順に実施することによって冬季にタマネギを収穫する場合、播種工程(A)は定植工程(D)における定植のタイミングに応じた所定のタイミングで行い、発芽工程(B)は略30℃以下の適宜温度で行い、発芽した苗を、当該苗の休眠を回避させ得る日長時間で生育させる育苗工程(C)を実施し、定植工程(D)では、育苗工程(C)にて得られた苗を用いて定植を行い、冬季にタマネギを収穫する(D)。
【選択図】 図1

Description

本発明は、タマネギを栽培する方法、及びその方法により栽培されたタマネギに関する。
わが国でタマネギは主に、秋まき及び春まきという2つの作型によって栽培されている。秋まきのタマネギは、主に9月に播種され、翌年の3月から6月に収穫する作型であり、収穫されたタマネギは貯蔵されてその年の9月頃まで市場に供給される。この秋まきのタマネギの主な生産地は、九州地方、中国地方、四国地方、近畿地方、中部地方、東海地方及び関東地方等である。
一方、春まきのタマネギの生産地は主に北海道であるが、この作型では3月頃に播種されてその年の主に9月に収穫される。春まきのタマネギは貯蔵性が高い品種が用いられているため、貯蔵された収穫物は翌年の4月頃まで市場に供給されている。
このように12月から2月の冬季にあっては、主に貯蔵された春まきのタマネギが市場に供給されているが、かかるタマネギは比較的硬いためサラダといった生食用には不向きであり、煮食用に供される場合が多かった。
しかし、食の多様化により冬季においても生食用に供すことができるタマネギの供給が市場に求められていた。
そこで、かかる要求に対応すべく秋まきのタマネギの生産地において、冬季に収穫する所謂冬どりタマネギを市場に供給することを可能にするセット栽培方法が開発されている(非特許文献1参照)。
セット栽培方法ではタマネギの休眠を利用する。
すなわち、2月から3月に苗床に播種することによって、5月中下旬に直径2cm程度の子球を形成させる。このような休眠に入った子球を一旦掘り上げ、風通しが良好な場所で貯蔵した後、休眠が打破される8月下旬から9月上旬の期間に、貯蔵した子球(セット球)を圃場に定植する。このとき、定植の半月程度以前の時期に、貯蔵した子球を10℃程度の温度に保持する冷温処理を実施することによってより積極的に休眠を打破させてもよい。
9月中旬から10月の気候はタマネギの生育に適しており、定植された子球は葉の生長と球の肥大化とがバランス良く行われるため、11月中下旬から12月に良好に肥大したタマネギを収穫することができるのである。
このような冬どりタマネギは新鮮で柔らかいので、冬季であっても生食用に供すことができる。従って、冬どりタマネギは市場価値が高く、高い単価で取引されている。
鈴木良平、「セットタマネギ用品種「シャルム」の栽培管理」、園芸新知識タキイ最前線、タキイ種苗株式会社、2007、春号、p.67−70
しかしながら、このような従来のセット栽培方法にあっては、セット球の生産に多くの労力と長い時間とを要するのに加え、子球の掘り起こし作業及び定植作業を機械化することができないという問題があった。更に、掘り起こしたセット球は定植を行う前に、大きさによる選別と、枯れた茎葉及び根を切り取る調製作業とを実施しなければならかった。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、セット球を用いることなく冬どりタマネギを栽培することができる方法、及び該方法で栽培されたタマネギを提供する。
(1)本発明に係るタマネギの栽培方法は、タマネギの種を適宜の培養基に播く播種工程と、それを発芽させる発芽工程と、所定のタイミングで圃場に定植する定植工程とをこの順に実施することによって冬季にタマネギを収穫するタマネギの栽培方法において、前記播種工程は日本における夏季に対応する季節内の所定タイミングで行い、前記発芽工程は外気温度より低い適宜温度で行い、発芽した苗を、当該苗の休眠を回避させ得る日長時間で生育させる育苗工程を実施し、前記定植工程では、育苗工程にて得られた苗を用いて定植を行うことを特徴とする。
本発明のタマネギの栽培方法にあっては、タマネギの種を適宜の培養基に播く播種工程と、それを発芽させる発芽工程と、所定のタイミングで圃場に定植する定植工程とをこの順に実施する。この場合、前述した播種工程は、日本における夏季に対応する季節内の所定タイミング、より好ましくは日本における6月下旬から8月上旬までの期間に対応する期間内に行う。
なお、本明細書では日本における12月から2月までの季節に対応する季節を冬季、日本における3月から5月までの季節に対応する季節を春季、日本における6月から8月までの季節に対応する季節を夏季、日本における9月から11月までの季節に対応する季節を秋季とする。
かかるタイミングで露地に播種した場合、外気温度が高いため発芽率が低く、たとえ発芽したとしても健全な苗を生育させることが著しく困難であった。
そこで、本発明では発芽工程を外気温度より低い略30℃以下の適宜温度、例えば28℃程度で行う。これによって、発芽率を高くすることができるとともに、健全な芽を発生させて、健全な苗を育成することができるようになる。
しかしながら、健全な芽を発生できたとしても、夏季に苗を生育させた場合、そのままでは苗が休眠してしまうため、そのような苗を定植に用いることはできなかった。
そこで、本発明では、発芽した苗を、当該苗の休眠を回避させ得る日長時間で生育させる育苗工程を実施する。
ここで、本発明者らは、育苗工程においてタマネギの苗が休眠するか否かは、主に日長時間に依存しているという知見を得た。そして、鋭意検討した結果、育苗工程において苗の休眠を回避させ得る日長時間で生育させることによって、即ち育苗工程において所要の日長時間に調整すること、又は所要の日長時間となったタイミングで育苗工程を実施することによって、休眠を回避した健全な苗を生育させることが可能になったのである。
定植工程では、このような休眠を回避した健全な苗を圃場に定植する。
そして、タマネギは日本における11月〜1月の期間に対応する期間である冬季に収穫する。
これによって、従来のようなセット球を生産することなく、冬季にタマネギを収穫することができる。また、セット球を生産する必要がないため作業負担及び作業時間を大幅に削減することができる。
(2)また、本発明に係るタマネギの栽培方法は、前記播種工程における播種のタイミングは、日本における6月下旬から7月下旬までの期間であって、前記育苗工程における日長時間が苗の休眠を誘起させ得る日長時間である期間に対応する期間内であり、前記育苗工程では、苗に光が照射される時間を当日の日長時間より所要時間短くする短日処理を行うことを特徴とする。
本発明のタマネギの栽培方法にあっては、前述した播種工程における播種のタイミングは、日本における6月下旬から7月下旬までの期間に対応する期間であって、前記育苗工程における日長時間が苗の休眠を誘起させ得る日長時間である期間に対応する期間内である。かかる期間内に播種が行われた場合、育苗工程での日長時間が長いため、そのままでは休眠する苗が発生してしまう。そこで、育苗工程では、苗に光が照射される時間を当日の日長時間より所要時間短くする短日処理を行う。これによって、苗の休眠を回避して、健全な苗を生育させることができる。
一方、前記した期間内に播種を行った場合、育苗工程を比較的長期間とることができるため、苗の根鉢を十分に形成させることができ、従って機械での定植を円滑に行うことができる。
(3)また、本発明に係るタマネギの栽培方法は、日本における7月下旬から8月上旬までの期間であって、前記育苗工程における日長時間が苗の休眠を回避させ得る日長時間である期間に対応する期間内であることを特徴とする。
本発明のタマネギの栽培方法にあっては、日本における7月下旬から8月上旬までの期間に対応する期間であって、前記育苗工程における日長時間が苗の休眠を回避させ得る日長時間である期間に対応する期間内に播種工程における播種を行う。
かかるタイミングで播種が行われた場合、育苗工程での日長時間は、苗の休眠を回避させ得る長さになっているため、前述したような短日処理を行うことなく育苗工程を実施することができ、短日処理に要する手間を省くことができる。
一方、育苗工程における根の生長度合いの観点より、8月上旬まで、好ましくは8月3日までには播種を行う必要がある。
(4)また、本発明に係るタマネギの栽培方法は、前記短日処理は発芽した子葉が完全に展開したとき以降の所定タイミングに開始することを特徴とする。
タマネギの芽は子葉が完全に展開するまでは日長感応しないので、前述した短日処理は発芽した子葉が完全に展開したとき以降の所定タイミング、好ましくは子葉が完全に展開したときから本葉が0.5枚程度展開するまでの間に開始する。これによって、播種してから略14日程度の間は短日処理を行わなくてもよく、短日処理に要する手間を可及的に削減することができる。
一方、発芽してから子葉が完全に展開するまでの間は短日処理を行わないため、短日処理の期間を可及的に短くすることができ、作業負担を可及的に少なくすることができる。また、これによって徒長が防止され健全な苗を生育することができる。
(5)更に、本発明に係るタマネギの栽培方法は、前記短日処理は当日の日長時間が略13.5時間未満になったタイミングに終了することを特徴とする。
本発明のタマネギの栽培方法にあっては、苗が感応する日長時間が略13.5時間であるため、前述した短日処理は当日の日長時間が略13.5時間未満になったタイミングで終了する。これによって、短日処理を実施する期間を可及的に短くすることができる。
(6)また、本発明に係るタマネギの栽培方法は、前記短日処理によって苗に光が照射される時間は略13.5時間未満の適宜時間に調整することを特徴とする。
本発明のタマネギの栽培方法にあっては、短日処理によって苗に光が照射される時間は略13.5時間未満の適宜時間に調整することによって、苗が日長感応することを確実に防止して休眠を回避することができる。
(7)一方、本発明に係るタマネギの栽培方法は、前記短日処理中、照度は少なくとも略30Lx以下に調整することを特徴とする。
本発明のタマネギの栽培方法にあっては、短日処理中、照度は少なくとも略30Lx以下に調整しており、これによって苗が日長感応することを確実に防止して休眠を回避することができる。
(8)ところで、本発明に係るタマネギの栽培方法は、前記播種工程では、複数のセルを設けてなるセルトレイを用い、各セルに投入した培養基に種を播くことを特徴とする。
本発明のタマネギの栽培方法にあっては、前述した如く育苗工程で得られた苗を定植工程で圃場に定植するのでセルトレイを用いた育苗が可能となる。そこで、播種工程では、複数のセルを設けてなるセルトレイを用い、各セルに投入した培養基に種を播く。
これによって、セット球の定植では実施することが不可能であった機械による定植を実施することが可能となり、定植作業の効率化及び定植作業の軽減化を図ることができる。従って、栽培コストの低減も図られる。
(9)さて、本発明に係るタマネギは、タマネギの種を適宜の培養基に播く播種工程と、それを発芽させる発芽工程と、所定のタイミングで圃場に定植する定植工程とをこの順に実施することによって冬季に収穫されるタマネギにおいて、前記播種工程は日本における夏季に対応する季節内の所定タイミングで行われ、前記発芽工程は外気温度より低い適宜温度で行われ、発芽した苗を、当該苗の休眠を回避させ得る環境下で生育させる育苗工程が実施され、前記定植工程では、育苗工程にて得られた苗を用いて定植が行われることを特徴とする。
本発明のタマネギにあっては、播種工程は、日本における夏季に対応する季節内の所定タイミング、即ち日本における6月下旬から8月上旬までの期間に対応する期間内に行われる。この場合、発芽工程は外気温度より低い略30℃以下の適宜温度、例えば28℃程度で実施されるため、発芽率を高く、また健全な芽を発生させて、健全な苗が育成される。
育苗工程では、苗の休眠を回避させ得る日長時間で生育させることによって、即ち育苗工程において所要の日長時間に調整すること、又は所要の日長時間となったタイミングで育苗工程を実施することによって、休眠を回避した健全な苗が生育される。
そして、定植工程では、このように休眠を回避した健全な苗が圃場に定植され、日本における11月〜1月の期間に対応する間である冬季にタマネギが収穫される。
このように本発明のタマネギにあっては、従来のようなセット球を生産することなく、冬季に収穫され、新鮮で柔らかいので、冬季であっても生食用に供すことができる。従って、かかるタマネギの市場価値は高い。
(10)また、本発明に係るタマネギは、前記播種工程における播種のタイミングは、日本における6月下旬から7月下旬までの期間であって、前記育苗工程における日長時間が苗の休眠を誘起させ得る日長時間である期間に対応する期間内に設定されており、前記育苗工程では、苗に光が照射される時間を当日の日長時間より所要時間短くする短日処理が行われることを特徴とする。
本発明のタマネギにあっては、播種のタイミングは、日本における6月下旬から7月下旬までの期間に対応する期間であって、前記育苗工程における日長時間が苗の休眠を誘起させ得る日長時間である期間に対応する期間内に設定されている。かかる期間内に播種が行われた場合、育苗工程での日長時間が長いため、そのままでは休眠する苗が発生してしまう。そこで、育苗工程では、苗に光が照射される時間を当日の日長時間より所要時間短くする短日処理が行われる。これによって、苗の休眠を回避して、健全な苗を生育させることができる。
一方、前記した期間内に播種工程が設定された場合、育苗工程を比較的長期間とることができるため、苗の根鉢を十分に形成させることができ、機械での定植を円滑に行うことができる。
(11)また、本発明に係るタマネギは、前記播種工程における播種のタイミングは、日本における7月下旬から8月上旬までの期間であって、前記育苗工程における日長時間が苗の休眠を回避させ得る日長時間である期間に対応する期間内に設定してあることを特徴とする。
本発明のタマネギにあっては、日本における7月下旬から8月上旬までの期間に対応する期間であって、前記育苗工程における日長時間が苗の休眠を回避させ得る日長時間である期間に対応する期間内に播種工程における播種が行われる。
かかるタイミングで播種が行われた場合、育苗工程での日長時間は、苗の休眠を回避させ得る長さになっているため、前述したような短日処理を行うことなく育苗工程を実施することができ、短日処理に要する手間が省かれる。従って、栽培コストをより低減させることができる。
本発明のタマネギの栽培方法に係る複数の作業の種類及び実施時期を時系列的に示すチャート図である。 本発明の第2実施形態に係る栽培方法を時系列的に説明するためのチャート図である。 発芽率との関係を示すヒストグラムである。 気温と出芽率との関係を示すヒストグラムである。 発芽率との関係を示すヒストグラムである。 気温と出芽率との関係を示すヒストグラムである。 播種日が育苗に与える影響を検討した結果を示す表図である。 播種日と健全苗の割合との関係をより詳細に検討した結果を示す表図である。 短日処理を開始すべき時期を検討した結果を示す表図である。 短日処理における照度と短日処理の効果との関係を検討した結果を示す表図である。 短日処理を種々の時間で行った場合の結果を示す表図である。 短日処理の終了時期を検討した結果を示す表図である。 播種時期と定植時期との関係を検討した結果を示す表図である。 本発明方法によって種々の品種のタマネギを栽培した結果を示す表図である。
(第1実施形態)
図1は、本発明のタマネギの栽培方法に係る複数の作業の種類及び実施時期を時系列的に示すチャート図である。本発明に係るタマネギ栽培方法が適用され得る地域は、わが国にあっては九州地方、中国地方、四国地方、近畿地方、中部地方及び関東地方等、秋まきのタマネギの生産地であり、図1はこれらの地域における作業スケジュールを示している。
本発明に係る栽培方法にあっては、後述するように夏季であっても休眠させることなく苗を生育させ、得られた苗を8月下旬から9月上旬までの期間に圃場に定植することによって、セット球の生産を行うことなく冬どりタマネギの栽培を可能にしている。
すなわち、図1(A)に示した如く、6月下旬から7月下旬までの期間、好ましくは7月上旬から7月中旬までの期間にタマネギの播種(A)を行う。
前記定植を行う30日から70日程度前、つまり8月下旬から9月上旬までの期間に定植が行われる場合、6月下旬から8月上旬までの期間にタマネギの播種を行うことができる。しかし、本実施形態にあっては6月下旬から7月下旬までの期間、好ましくは7月上旬から7月中旬までの期間にタマネギの播種(A)を行う。これは、かかる期間にタマネギの播種を実施することによって、根鉢を確実に形成させることができ、定植作業を機械でおこなった場合であっても根鉢が崩れることが防止されるからである。
なお、本明細書では各月の1日から10日までの期間を上旬、11日から20日までの期間を中旬、21日から晦日までの期間を下旬としている。
前述した播種は、複数のセルを設けてなるセルトレイ(例えば、みのるポット448穴;みのる産業株式会社製)を用い、培養土が投入された各セルにそれぞれ行うようにする。このようにセルトレイに播種することによって定植を機械で行うことを可能とし、また後述する育苗管理を可及的に容易に行うことができる。
播種が終了すると、図1(B)に示した如く、発芽を行わせる。発芽は、日中の最高気温が30℃以下、好ましくは25℃±3程度の環境下で実施する。かかる温度環境は屋内において容易に実現することができる。これによって、高い発芽率を得ることができるとともに、健全な芽を発生させて罹病を防止することができる。
次に図1(C)に示した如く、育苗を行う。本実施の形態にあってはこの育苗中の所定期間において短日処理を実施する。
ここで、短日処理の開始は、発芽後、子葉が完全に展開するタイミングで行う。
本発明者らが鋭意検討した結果、子葉が完全に展開した後はタマネギの苗が日長に感応することができるようになるが、6月下旬から7月下旬までの期間にあっては日長が13.5時間より長いため、当該苗は日長感応により葉鞘基部を肥大化させ、最終的には休眠してしまうという知見を得た。そこで、前述したタイミングで短日処理を施すことによって日長感応を回避して、休眠させることなく苗を生育させるのである。
ここで、短日処理は苗に光が照射される時間を13.5時間未満、好ましくは8時間程度から12時間程度までに制御することによって実施される。例えば、17時から翌日の9時までの間、遮光フィルムで周囲を覆った環境下に苗を置くことによって、苗に光が照射される時間を8時間に制御することができる。
遮光フィルムとしては、苗の周囲の照度を略30Lx以下に維持することができるものを用いるとよい。
短日処理は通常、ハウス内で実施されるが、そのハウスには寒冷紗被覆を施すとともに十分な換気を実施することによって当該ハウス内の気温が過剰に上昇することを防止する。すなわち、育苗中、ハウス内の平均気温が28℃以下の適宜温度であり、最高気温が35℃以下であり、セルトレイ内の平均地温が27℃以下の適宜温度であり、最高地温が33℃以下であるように管理するのが好ましい。タマネギの苗の休眠は高温によっても影響されるが、かかる温度に調整することによって休眠に対する温度の影響を排除して、健全な苗を生育させることができるからである。
また、短日処理を行う間、セルトレイは前記ハウス内に設置したベンチ上に載置しておくとよい。セルトレイをベンチ上に載置することによってセルトレイの上方のみならず下方においても風の流れが良好であるため、セルトレイの周囲に熱が籠ることが防止される。また、ベンチによってセルトレイをハウス内の土の表面から離隔した状態に保持することができるため、セルトレイへの散水時にハウス内の土の表面から苗への跳ね返りが防止され、罹病の危険性を低減させることができる。一方、セルトレイは持ち運びが容易であるため、発芽と育苗とを互いに異なる場所で行う場合であっても、発芽した多くの苗を容易に移動させることができる。
なお、ベンチを用いない場合にあってはセルトレイとハウス内の土の表面との間に適宜のシートを介装させるとよい。この場合もシートによって、散水時にハウス内の土の表面から苗への跳ね返りが防止され、罹病の危険性を低減させることができる。
このような短日処理は、少なくとも日長時間が13.5時間未満になるまで実施する。例えば、佐賀県であれば少なくとも8月11日まで短日処理を実施する。
これによって、夏季であってもタマネギの苗の休眠を回避して、健全な苗を育成することができる。
かかる育苗は次の定植を行う前まで実施するが、育苗中に前述したように日長時間が13.5時間未満になった場合は、短日処理を行うことなく育苗を実施してもよい。
このようにして苗が生育すると、図1(D)に示した如く、所定の時期に当該苗を圃場に定植する。
定植の時期は次のようにして定められる。すなわち、定植日から日が進んで、日長時間が11.5時間以上であり、最低気温が15℃以上である時期内に、圃場に定植された苗が草丈で略60cmから略70cmとなり、葉数で6枚から7枚となるように、その生育が確保されることが好ましい。この時期に苗の生長がそこまで確保されていない場合、その後の玉の肥大化が行われずに茎葉が繁茂する、所謂青立ち株となる虞が高いからである。なお、日長時間が11.5時間以上であり、最低気温が15℃以上である条件が確保され得る最も遅い時期は、例えば佐賀県では10月10日頃である。
この時期に苗の生長を前述した如く確保するには、8月下旬から9月上旬までの間、好ましく8月下旬に定植を実施する必要がある。
セルトレイで育苗した場合、機械を用いて定植を実施することができる。定植を機械で行うことによって、当該定植に要する作業量及び作業時間を、セット栽培での定植に要する作業量及び作業時間に比べて大幅に削減することができる。
また、セルトレイで生育させた苗を圃場に直接定植することができるため、セット栽培で行われていた子球の掘り起こし作業、掘り起こした子球を風通しが良好な日陰に吊下げて貯蔵する吊り玉貯蔵作業、良好なセット球を選別する選別作業、枯れた茎葉及び根を切り取る調製作業等を省くことができ、作業負担の低減及び作業効率の向上が図られる。
更に、播種してからセット球を定植するまでに5カ月〜6カ月の期間を要していたが、本実施の形態にあっては播種してから苗を定植するまでに2カ月程度の期間でよく、作業期間を大幅に短縮することができる。
このようにして圃場に定植された苗はその後順調に生育して行き、日長時間が11.5時間以上であり、最低気温が15℃以上である時期内に十分な草丈及び葉数が確保されているため、日長感応による玉の肥大化がなされて行く。
なお、この間、定植する畝の表面をフィルムで覆って栽培する、所謂マルチ栽培を実施する。これによって、日長感応期に茎葉の温度を上昇させることができ、更なる玉の肥大化を図ることができる。
そして、図1(E)に示した如く、冬季である11月から1月までの期間にタマネギを収穫する。
このようにして収穫されたタマネギは、冬季であっても新鮮で柔らかく、サラダといった生食用に用いることができる。従って、本タマネギは商品価値が高く、単位重量当たりの価格も高い。
一方、前述した如く本発明の栽培方法にあっては、従来のようにセット球を生産する必要がないため作業負担及び作業時間を大幅に削減することができるのに加え、セルトレイを用いた育苗が可能となり、またこれによってセット球の定植では実施することが不可能であった機械による定植を実施することが可能となったため、定植作業の効率化及び定植作業の軽減化を図ることができる。従って、栽培コストの低減も図られる。
また、本発明方法によって収穫されたタマネギの単位面積当たりの収量は、セット栽培によって収穫されたタマネギの単位面積当たりの収量と略同程度であり、高い収量が確保される。
なお、本発明に係るタマネギ栽培方法が適用され得る地域は、わが国にあっては九州地方、中国地方、四国地方、近畿地方、中部地方、東海地方及び関東地方、並びにそれらの周辺であるが、海外の国というようにこれらの地域以外であっても、これらの地域と同様の気象条件の地域であれば本発明方法を適用し得ることは言うまでもない。このとき、北半球と南半球とでは季節の推移が逆になるため、それに対応して播種、育苗及び定植の月日を調整する。
また、本発明を適用できるタマネギの品種としては、シャルム、貴錦、博多こがねEX、センチュリー2号、トップゴールド320、博多こがね、若丸、ひろまる等、極早生品種、及び早生品種が挙げられる。
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係る栽培方法を時系列的に説明するためのチャート図である。本実施形態では前述した短日処理を実施しない冬どりタマネギの栽培方法について説明する。
本実施形態においては、図2(A)に示した如く、播種してから略2週間が経過した後の子葉が完全に展開した時期の日長時間が13.5時間未満である7月下旬から8月上旬までの期間、好ましくは7月下旬、更に好ましくは佐賀県の気象条件に対応する地域にあっては7月25日の前後1日の間にタマネギの播種を行う。13.5時間未満の日長時間を確保することができる一方、育苗期間を可及的に長くすることができ、定植時期までに根鉢の形成を所要の状態になすことができるからである。この播種は、前同様セルトレイを用いて行う。
次に、図2(B)に示した如く、発芽を行わせる。発芽は、前同様の条件下で実施する。
次に、図2(C)に示した如く、育苗を実施する。育苗の条件は、短日処理を実施しないこと以外は前述した条件と同じである。
このように育苗中に短日処理を行わないのは、育苗期間における日長時間が既に13.5時間未満であるので、苗が日長感応によって休眠に入ることなく、健全に生育するからである。
このようにして苗が生育すると、前同様の時期に当該苗を圃場に定植し、冬季である11月から1月までの期間にタマネギを収穫する(図2(D)及び(E))。
本発明に係る栽培方法にあっては、前同様の作用・効果を奏するのに加え、育苗中に短日処理を行わないため、当該処理に要する作業を省くことができ、作業の軽減化が図れる。
なお、本発明に係るタマネギ栽培方法が適用され得る地域は、わが国にあっては九州地方、中国地方、四国地方、近畿地方、中部地方、東海地方及び関東地方、並びにそれらの周辺であるが、海外の国というようにこれらの地域以外であっても、これらの地域と同様の気象条件の地域であれば本発明方法を適用し得ることは言うまでもない。このとき、北半球と南半球とでは季節の推移が逆になるため、それに対応して播種、育苗及び定植の月日を調整する。
また、本発明を適用できるタマネギの品種としては、シャルム、貴錦、博多こがねEX、センチュリー2号、トップゴールド320、博多こがね、若丸、ひろまる等、極早生品種、及び早生品種が挙げられる。
(実施例1)
本発明に係るタマネギの栽培方法では、休眠を回避させて生育させた苗を8月下旬から9月上旬までの期間に圃場に定植すべく、6月下旬から8月上旬までの期間に播種を行う。しかし、かかる時期に秋まき又は春まきの場合と同じように苗床に播種した場合は発芽率が低く、また発芽した場合であっても健全な苗を得ることができないため、苗による定植を行うことは不可能であった。そのため前述したように、より早い時期に播種を行って所要の発芽率を確保する一方、日長感応による休眠にて葉鞘基部が肥大したセット球を用いて定植を行うセット栽培方法が開発されたのである。
本発明者らは前記時期に播種した場合であっても高い発芽率を確保すべく、気温と発芽率との関係を検討した。
図3及び図5は気温と発芽率との関係を示すヒストグラムであり、図4及び図6は気温と出芽率との関係を示すヒストグラムである。図3〜図6中、横軸は気温を示しており、縦軸は発芽率又は出芽率を示している。
ここで、発芽率は種から芽が出た割合であり、また出芽率は種から出た芽が土表面から外へ伸長した割合である。なお、図3及び図4はターザンを用いた結果を、また図5及び図6はもみじ3号を用いた結果を示している。
栽培土が投入された複数のポット内へそれぞれ種を播き、各ポットを種々の温度に設定した人工気象器(NK式温度勾配式恒温器TG−200-ADCT;(株)日本医化農機製作所製)内にそれぞれ配置して培養した。そして、全ポット数に対する発芽したポット数の割合、全ポット数に対する出芽したポット数の割合を求めて発芽率及び出芽率とした。
図3〜図6から明らかな如く、いずれの品種にあっても、気温が30℃を超えた場合、発芽率及び出芽率ともに最大でも略60%未満と低い値であった。
一方、気温が30℃以下である場合、発芽率及び出芽率はとも少なくとも略80%以上と、発芽率及び出芽率ともに高い値であった。
従って、発芽及び出芽させる時期における種の周囲温度、すなわち地温を30℃以下に制御することによって、6月下旬から8月上旬までの期間に播種を行った場合であっても、高い発芽率及び出芽率を確保することができる。
出芽した後の育苗期間にあっては、前述した如く育苗を行うハウス内の平均気温が28℃以下の適宜温度であり、最高気温が35℃以下であり、育苗を行うセルトレイ内の平均地温が27℃以下の適宜温度であり、最高地温が33℃以下であるように管理する。これによって、休眠への温度の影響を回避して健全な苗を生育させることができる。
(実施例2)
次に、苗の日長感応による休眠を回避する方法について検討した結果について説明する。
図7は、播種日が育苗に与える影響を検討した結果を示す表図である。7月11日(7月中旬)と7月25日(7月下旬)とに播種し、上述した如く温度管理した状態で発芽させ、ともに8月24日まで上述した如く温度管理した状態で育苗を行い、健全に生育した苗の数と休眠した苗の数とを比較した。
播種はセルトレイ(みのるポット448穴;みのる産業株式会社製)を用いて実施した。また、育苗はハウスと露地で行い、それぞれ短日処理を行う場合と、短日処理を行わない場合とに分けて実施した。なお、短日処理は17時から翌日の9時まで行った。また、用いた品種は貴錦及びシャルムである。
図7から明らかなように、いずれの品種にあっても7月11日に播種された場合、短日処理を行わないと健全な苗を実用的な割合で得ることができなかった。しかし、7月11日に播種された場合であっても、短日処理が実施されると90%以上の割合で健全な苗を得ることができた。
一方、7月25日に播種された場合は、短日処理の有無に拘わらず、実用的な割合で健全な苗を得ることができた。
これらの結果より、7月中旬以前に播種する場合は短日処理を実施することによって苗の休眠を回避できることが分かる。一方、短日処理を実施しない場合は7月下旬以降に播種することによって苗の休眠を回避し得ることが分かる。
ところで、7月に播種した場合であっても、短日処理の有無を除いては前述した如き温度管理下にて育苗することによって、健全な苗を育成することができた。
(実施例3)
次に、短日処理を実施するか否かの判定基準について検討した。
図8は、播種日と健全苗の率との関係をより詳細に検討した結果を示す表図である。播種日を7月11日、7月28日、7月25日、8月1日とし、いずれも短日処理を実施していないこと以外は、実施例2で説明した条件と同じとした。
図8から明らかな如く、播種日が7月25日以降であった場合、実用的な割合で健全な苗を得ることができたが、播種日が7月18日以前であった場合、実用的な割合で健全な苗を得ることができなかった。
ここで、図8に示したように7月11日に播かれた種の子葉完全展開時期は7月25日であり、当日の日長は13時間57分であった。また、7月18日に播かれた種の子葉完全展開時期は8月1日であり、当日の日長は13時間46分であった。一方、7月25日に播かれた種の子葉完全展開時期は8月8日であり、当日の日長は13時間36分であった。また、8月1日に播かれた種の子葉完全展開時期は8月15日であり、当日の日長は13時間24分であった。
これらの結果より、6月下旬から7月中旬までに播種する場合、すなわち子葉完全展開時期の日長が略13.5時間を超える場合は、短日処理を実施しないと実用的な割合で健全な苗を得ることができず、7月下旬から8月上旬までに播種する場合、すなわち子葉完全展開時期の日長が略13.5時間以下である場合は短日処理を実施せずとも実用的な率で健全な苗を得ることができた。
(実施例4)
次に、短日処理の開始時期について検討した。
図9は短日処理を開始すべき時期を検討した結果を示す表図である。
苗の日長感応がいつから始まるかを判断すべく、苗に短日処理を行わない場合における葉の展開枚数と地下部の玉の肥大化の関係を調査した結果を図9に示した。なお、いずれも播種は7月11日に行い、育苗はハウスと露地とで実施した。使用した品種は貴錦及びシャルムである。なお、いずれの場合も、短日処理を行った結果についても対照として示した。
図9から明らかな如く、子葉を含む展開枚数は2.7枚、3.1枚、2.0枚、3.1枚であり、いずれの場合も葉鞘基部の肥大化が観察された。
いずれの場合も子葉は1枚であるので、本葉の枚数はそれぞれ1.7枚、2.1枚、1枚、2.1枚である。すなわち、少なくとも本葉が1枚展開した以降では、苗は日長感応していた。
従ってそれ以前のタイミング、すなわち、子葉が完全に展開してから本葉が多くとも0.5枚程度展開するまでのタイミングで短日処理を開始すれば、苗の日長感応を回避することができる。なお、本葉の展開する0.5枚の数値は経験的に定めた。
(実施例5)
次に、短日処理中の照度を検討した結果について説明する。
短日処理における照度と短日処理の効果との関係を検討した結果を図10に示す。
本試験では、ハウス内に遮光フィルムを展張することによって、ハウス内の水平照度を7Lx又は28Lxに調整して短日処理を実施し、休眠した苗、すなわち葉鞘基部が肥大化した苗の発生を回避する短日効果の有無を判定した。ここで、葉鞘基部が肥大化した苗の発生割合が略5%以下である場合を短日効果が有ると判定した。
なお、ハウス外の水平照度は、ハウス内の水平照度が7Lxであったときは48820Lxであり、ハウス内の水平照度が28Lxであったときは95850Lxであった。
図10から明らかな如く、ハウス内の水平照度が7Lx及び28Lxのいずれの場合であっても短日効果を有していた。
従って、これらの結果に過去の経験を加味すると、少なくとも30Lx程度の水平照度に調整すれば短日効果を奏することができるものと考えられた。
(実施例6)
次に、短日処理の時間を検討した結果について説明する。
図11は、短日処理を種々の時間で行った場合の結果を示す表図である。
短日処理は、17時から翌日9時まで遮光した場合(A)、15時から20時まで遮光した場合(B)、17時から20時まで遮光した場合(C)でそれぞれ実施した。なお、前記(A)における日長時間は略8時間であり、(B)における日長時間は9時間29分から9時間13分であり、(C)における日長時間は11時間29分から11時間13分であった。
対照として、短日処理を実施しない無処理の結果も示しており、日長時間は13時間48分から13時間8分であった。
なお、実施場所は佐賀県唐津市鎮西町であり、播種日は7月17日であり、短日処理は7月31日から8月24日までを実施した。品種はいずれもシャルムを用いた。
図11に示した無処理の結果から明らかな如く、短日処理を行わない場合では、得られた苗は、休眠又は生育不良により50%を超える高い割合で定植することが不可能であった。
これに対して図11(A)〜(C)から明らかな如く、今回実施したいずれの短日処理であっても、苗は略100%の割合で健全に生育していた。
以上より、実施例3の結果と同様、日長時間を略13.5時間未満に調整することによって短日処理の効果を得ることができた。
また、日長時間を8時間に調整する短日処理を行っても、苗は健全に生育しており、日長不足による生育障害は生じていなかった。
(実施例7)
次に、短日処理の終了時期を検討した結果について説明する。
短日処理の終了時期を8月4日、11日、18日及び24日と種々異ならせて育苗を行い、得られた苗の状態と、当該苗を定植して得られた商品の収量とをそれぞれ比較した。なお、播種日はいずれの場合も7月17日であり、短日処理開始時期は本葉が0.5枚程度展開したときとした。短日処理の時間帯は17時から翌日9時までであり、8月4日の日長時間は13時間43分、8月11日の日長時間は13時間31分、8月18日の日長時間は13時間19分、8月24日の日長時間は13時間08分であった。また、品種はシャルムである。なお、対照として短日処理を実施しない結果も示した。
比較結果を図12に示す。なお、図12において商品収量とは、タマネギの規格である2S以上のサイズであり、分球又は裂球がなく、長玉でなく、更に病虫被害がないものの収量とした。なお、2Sサイズとは球の横径が5〜6cmの大きさのものをいう。
図12から明らかな如く、短日処理を行わない場合、生育した苗は50%を超える割合で定植することができないものであった。これは殆どの場合、葉鞘基部が肥大化して休眠に入ってしまったからである。
これに対して、短日処理を行った場合、いずれの終了時期であっても定植可能な苗の割合は94%以上であった。
しかし、短日処理を8月11日、8月18日及び8月24日に終了した場合の商品収量は、いずれも10a当たり略3.5tであったが、短日処理を8月4日に終了した場合にあっては、商品収量が10a当たり略2.8tと20%程度減少していた。これは、短日処理を8月4日に終了した場合、定植が可能であると判定された苗であっても、葉鞘基部にやや肥大化したものが12%程度混在していたことからも分かるように、短日処理を終了した時期の日長が略13.5時間を超えていたため、苗が日長感応してしまい、定植後の生育が他の場合より劣ってしまったものと考えられる。
従って、短日処理の終了時期は日長時間が略13.5時間未満となる時期が好適であると考えられる。
(実施例8)
次に、播種時期と定植時期との関係を検討した結果について説明する。
7月20日、7月26日、8月1日及び8月7日にそれぞれ播種を行って発芽、育苗を実施し、得られた苗を8月27日及び9月1日にそれぞれ80株ずつ定植した。そして、1月12日に収穫し、収穫株割合、総収量、商品収量、平均球重をそれぞれ求めた結果を図13に示した。なお、実施場所は佐賀県唐津市鎮西町である。
図13から明らかな如く、定植日が同じである場合、播種日の違いによって収穫株割合、総収量、商品収量、平均球重のいずれにも有意差は見られなかった。
同様に、定植日が異なる場合であっても、収穫株割合、総収量、商品収量、平均球重のいずれにも有意差は見られなかった。
以上より、定植は8月下旬から9月上旬までの期間内に実施すればよい。
(実施例9)
次に、本発明方法によって種々の品種のタマネギを栽培した結果について説明する。
貴錦、シャルム、博多こがねEX、センチュリー2号、トップゴールド320、博多こがね、ひろまる、及び若丸の各品種を7月25日に播種して発芽、育苗を実施し、8月27日に圃場へ定植した。そして、12月7日に収穫した。なお、本実施例では8月10日から8月24日まで17時から翌日9時まで遮光する短日処理を行った。
一方、対照としてシャルムを用いたセット栽培を行った。なお、セット栽培の定植時期及び収穫時期は前述した期日と同じにした。
各品種の収量、収穫されたタマネギの球の重さ等を比較した結果を図14に示す。
図14から明らかな如く、本発明の栽培方法は本実施例で用いたいずれの品種にも適用することができた。
また、総収量を比較すると、本発明の栽培方法を適用した貴錦、博多こがねEX、センチュリー2号、トップゴールド320、博多こがね、ひろまる、若丸にあってはセット栽培を適用したシャルムの結果と略同じであった。
一方、商品収量を比較すると、本発明の栽培方法を適用したセンチュリー2号、トップゴールド320はセット栽培を適用したシャルムの結果よりやや劣っていたものの、本発明の栽培方法を適用した貴錦、シャルム、博多こがね、若丸にあってはセット栽培を適用したシャルムの結果と同程度であり、本発明の栽培方法を適用した博多こがねEX、ひろまるにあってはセット栽培を適用したシャルムより1割程度増大していた。
(追記)
以上より、本件では更に以下の発明も開示している。
すなわち、(1)前記播種工程における播種のタイミングは、発芽した苗が育苗工程において前記定植のタイミングで定植可能な状態に生育しているように定めることを特徴とするタマネギの栽培方法。
本発明のタマネギの栽培方法にあっては、前述した播種工程における播種のタイミングは、発芽した苗が育苗工程において前記定植のタイミングで定植可能な状態に生育しているように定める。具体的には日本における6月下旬から8月上旬までの期間に対応する期間であり、播種工程及び育苗工程を前述した如く実施することによって、かかる期間に播種した場合であっても健全な苗を定植が可能な状態、すなわち根鉢が形成されている状態まで生育させることができる。これによって、機械による定植が可能となり、定植作業の軽減及び効率化を図ることができる。
(2)前記定植工程における定植のタイミングは、圃場に定植された苗の生長の程度と日長時間及び気温との関係に基づいて定めることを特徴とするタマネギの栽培方法。
本発明のタマネギの栽培方法にあっては、定植工程における定植のタイミングは、圃場に定植された苗の生長の程度と日長時間及び気温との関係に基づいて定める。すなわち、定植日から日が進んで、日長時間が11.5時間以上であり、最低気温が15℃以上である時期内に、圃場に定植された苗が草丈で略60cmから略70cmとなり、葉数で6枚から7枚となるように、その生育が確保されるように定植日を定める。具体例としては、佐賀県にあっては8月25日から28日までの期間内に定植工程を実施することが好ましい。
このようなタイミングで定植された苗は、日長時間が11.5時間以上であり、最低気温が15℃以上である時期内に十分な草丈及び葉数が確保されているため、日長感応による玉の肥大化がなされて行く。
A 播種
B 発芽
C 育苗
D 定植
E 収穫

Claims (11)

  1. タマネギの種を適宜の培養基に播く播種工程と、それを発芽させる発芽工程と、所定のタイミングで圃場に定植する定植工程とをこの順に実施することによって冬季にタマネギを収穫するタマネギの栽培方法において、
    前記播種工程は日本における夏季に対応する季節内の所定タイミングで行い、
    前記発芽工程は外気温度より低い適宜温度で行い、
    発芽した苗を、当該苗の休眠を回避させ得る日長時間で生育させる育苗工程を実施し、
    前記定植工程では、育苗工程にて得られた苗を用いて定植を行う
    ことを特徴とするタマネギの栽培方法。
  2. 前記播種工程における播種のタイミングは、日本における6月下旬から7月下旬までの期間であって、前記育苗工程における日長時間が苗の休眠を誘起させ得る日長時間である期間に対応する期間内であり、
    前記育苗工程では、苗に光が照射される時間を当日の日長時間より所要時間短くする短日処理を行う
    請求項1記載のタマネギの栽培方法。
  3. 前記播種工程における播種のタイミングは、日本における7月下旬から8月上旬までの期間であって、前記育苗工程における日長時間が苗の休眠を回避させ得る日長時間である期間に対応する期間内である請求項1記載のタマネギの栽培方法。
  4. 前記短日処理は発芽した子葉が完全に展開したとき以降の所定タイミングに開始する請求項2記載のタマネギの栽培方法。
  5. 前記短日処理は当日の日長時間が略13.5時間未満になったタイミングに終了する請求項2又は4記載のタマネギの栽培方法。
  6. 前記短日処理によって苗に光が照射される時間は略13.5時間未満の適宜時間に調整する請求項2、4又は5記載のタマネギの栽培方法。
  7. 前記短日処理中、照度は少なくとも略30Lx以下に調整する請求項2、4、5又は6記載のタマネギの栽培方法。
  8. 前記播種工程では、複数のセルを設けてなるセルトレイを用い、各セルに投入した培養基に種を播く請求項1から7のいずれかに記載のタマネギの栽培方法。
  9. タマネギの種を適宜の培養基に播く播種工程と、それを発芽させる発芽工程と、所定のタイミングで圃場に定植する定植工程とをこの順に実施することによって冬季に収穫されるタマネギにおいて、
    前記播種工程は日本における夏季に対応する季節内の所定タイミングで行われ、
    前記発芽工程は外気温度より低い適宜温度で行われ、
    発芽した苗を、当該苗の休眠を回避させ得る環境下で生育させる育苗工程が実施され、
    前記定植工程では、育苗工程にて得られた苗を用いて定植が行われる
    ことを特徴とするタマネギ。
  10. 前記播種工程における播種のタイミングは、日本における6月下旬から7月下旬までの期間であって、前記育苗工程における日長時間が苗の休眠を誘起させ得る日長時間である期間に対応する期間内に設定されており、
    前記育苗工程では、苗に光が照射される時間を当日の日長時間より所要時間短くする短日処理が行われる
    請求項9記載のタマネギ。
  11. 前記播種工程における播種のタイミングは、日本における7月下旬から8月上旬までの期間であって、前記育苗工程における日長時間が苗の休眠を回避させ得る日長時間である期間に対応する期間内に設定してある請求項9記載のタマネギ。
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