JP2017077203A - 植物栽培方法及び植物栽培装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】植物の休眠を制御可能な植物栽培方法、及び該方法に用いられる植物栽培装置を提供する。
【解決手段】休眠状態の植物に対して、波長域400〜500nmの青色光、波長域600〜700nmの赤色光、又は波長域700〜800nmの遠赤色光を照射する光照射工程を有する、植物栽培方法。休眠状態の植物に対して、波長域400〜500nmの青色光、波長域600〜700nmの赤色光、又は波長域700〜800nmの遠赤色光を照射する光源を備えた、植物栽培装置。
【選択図】なし

Description

本発明は、休眠状態にある植物に対する光条件制御により休眠を制御する、植物栽培方法及び該方法に用いる植物栽培装置に関する。
落葉樹では、夏に形成された芽は、発育を停止し呼吸などの代謝活性を極端に抑えた「自発休眠」と呼ばれる状態で越冬する。自発休眠が覚醒しないと成長は再開しない。通常の自発休眠の覚醒条件としては、一定期間の低温遭遇がある。自発休眠覚醒後には、樹は温暖により開花に至る。そのため落葉樹の開花期は、基本的には冬の低温と春の温暖により決定される。
一方、落葉果樹の栽培現場においては、開花期を制御する技術に需要がある。例えば、開花期が前進できれば、収穫期の前進が見込まれる。また例えば、開花期を遅らせることができれば、晩霜による花の被害を軽減できる可能性がある。
落葉樹の開花期は気温により決定されるため、最も単純かつ確実な開花期の制御方法は、樹の冷却又は加温である。
また、特許文献1及び2には、開花期を前進させる薬剤が開示されている。
特開2005−176728号公報 特開2010−047514号公報
一般的に露地で栽培される果樹については、エネルギー消費量の観点から樹全体を温度制御することは現実的ではない。
一方、発芽促進剤については登録対象となっている樹以外には使用できない。また発芽を遅らせる薬剤については登録がない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、植物の休眠を制御可能な植物栽培方法、及び該方法に用いられる植物栽培装置を提供することを課題とする。
発明者は樹に照射する光条件を制御することで植物の休眠を制御可能であることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、下記の特徴を有する植物栽培方法及び植物栽培装置を提供するものである。
(1)休眠状態の植物に対して、波長域400〜500nmの青色光、波長域600〜700nmの赤色光、又は波長域700〜800nmの遠赤色光を照射する光照射工程を有する、植物栽培方法。
(2)前記光照射工程を、日の入りから日の出までに対応する時間帯において行う、前記(1)に記載の植物栽培方法。
(3)前記光照射工程を、休眠状態の植物の一休眠期のうち360時間以上行う、前記(1)又は(2)に記載の植物栽培方法。
(4)前記植物に照射される前記青色光、前記赤色光、又は前記遠赤色光の光量子束密度が0.1〜300μmolm−2−1である、前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の植物栽培方法。
(5)前記休眠状態の植物が、バラ科の落葉樹である前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の植物栽培方法。
(6)休眠状態の植物を360時間以上の連続暗期条件で栽培することを含む、植物栽培方法。
(7)前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の植物栽培方法に用いる装置であって、休眠状態の植物に対して、波長域400〜500nmの青色光、波長域600〜700nmの赤色光、又は波長域700〜800nmの遠赤色光を照射する光源を備えた、植物栽培装置。
本発明によれば、植物の休眠を制御可能である。
ニホンナシの成長ステージ及びその時期を説明する図である。 実施例において取得された、低温期の明暗条件がニホンナシの開花に及ぼす影響の結果を示すグラフである。 実施例において取得された、低温期の夜間の光照射がニホンナシの開花に及ぼす影響の結果を示す写真である。 開花状況の指標とした花芽の開花状態を示す写真である。 実施例において取得された、低温期の夜間の光照射がニホンナシの開花に及ぼす影響の結果を示すグラフである。 実施例において取得された、低温期の夜間の光照射がニホンナシの開花に及ぼす影響の結果を示すグラフである。
≪植物栽培方法≫
図1は、日本における落葉樹の成長ステージとその時期を、ニホンナシを例として説明する図である。落葉樹は、冬の間は成長を止め、春になってから枝を伸ばしたり花を咲かせたりする。冬の間の成長が止まっている間は「自発休眠」と呼ばれ、この期間は「自発休眠期」と呼ばれる。樹は、一定以上の低温を経験すると、冬の終わり、即ち春の訪れを判断して、休眠から目覚める。この休眠から目覚める時期を「休眠覚醒期」という。自発休眠から覚醒した樹は、温かくなることで、芽の成長が促進され(「花芽発育期」)、開花に至る。
植物には種子休眠を示すものと芽休眠を示すものがある。本明細書中における「休眠状態」の休眠とは芽休眠のことをいう。
休眠状態の植物は、植物が生育又は発生を休止又は著しく低下させている。休眠状態は、冬季の落葉樹で通常みられる状態であり、この間、樹は葉を落葉させて組織の成長を停止している。一旦、自発休眠状態となった植物は、たとえ成長に適した環境が一時的に訪れたとしても、休眠覚醒するまで成長を開始することはない。
植物が休眠状態となること、およびその状態については公知であり、一部の植物については自然環境下における自発休眠期も詳細に明らかにされている。自発休眠期は、植物種や休眠前の環境によって多少異なることがあるが、例えば、ニホンナシの場合の自発休眠期は、11月初め〜12月末である。
(光照射)
本発明の植物栽培方法は、休眠状態の植物に対して、波長域400〜500nmの青色光、波長域600〜700nmの赤色光、又は波長域700〜800nmの遠赤色光を照射する光照射工程を有する。
休眠状態の植物に上記青色光、上記赤色光、又は上記遠赤色光を照射することで、植物の休眠を制御することができる。
休眠状態の植物に上記青色光、又は上記赤色光を照射することで、植物の休眠覚醒期を早めることができる。
休眠状態の植物に上記遠赤色光を照射することで、植物の休眠覚醒期を遅延させることができる。
植物の休眠覚醒期を早めたことは、上記青色光又は上記赤色光が照射されていない植物に比べ、上記青色光又は上記赤色光が照射された植物で、休眠覚醒の時期が早められたことで確認できる。
植物の休眠覚醒期を遅延させたことは、上記遠赤色光が照射されていない植物に比べ、上記遠赤色光が照射された植物で、休眠覚醒の時期が遅められたことで確認できる。
休眠覚醒の時期は、休眠覚醒後に生じる花の開花を指標として判断すればよく、係る指標としては花の満開日、開花率、開花ステージの推移等を採用可能である。
本発明の一実施形態として、休眠状態の植物に対して、波長域400〜500nmの青色光、波長域600〜700nmの赤色光、又は波長域700〜800nmの遠赤色光を照射する光照射工程を有する、休眠覚醒期の制御方法を提供する。
本発明の一実施形態として、休眠状態の植物に対して、波長域400〜500nmの青色光、又は波長域600〜700nmの赤色光を照射する光照射工程を有する、休眠覚醒期の促進方法を提供する。
本発明の一実施形態として、休眠状態の植物に対して、波長域700〜800nmの遠赤色光を照射する光照射工程を有する、休眠覚醒期の遅延方法を提供する。
本発明の一実施形態として、休眠状態の植物に対して、波長域400〜500nmの青色光、波長域600〜700nmの赤色光、又は波長域700〜800nmの遠赤色光を照射する光照射工程を有する、花の開花期の制御方法を提供する。
本発明の一実施形態として、休眠状態の植物に対して、波長域400〜500nmの青色光、又は波長域600〜700nmの赤色光を照射する光照射工程を有する、花の開花期の促進方法を提供する。
本発明の一実施形態として、休眠状態の植物に対して、波長域700〜800nmの遠赤色光を照射する光照射工程を有する、花の開花期の遅延方法を提供する。
波長域400〜500nmの青色光とは、400〜500nmの波長域を主波長とする青色光であり、波長域600〜700nmの赤色光とは、600〜700nmの波長域を主波長とする赤色光であり、波長域700〜800nmの遠赤色光とは、700〜800nmの波長域を主波長とする遠赤色光である。ここで主波長とは、光のスペクトル分布において強度の極大値を有する波長を意味する。
上記青色光、赤色光、遠赤色光は、人為的に発せられた人工光が挙げられる。
青色光、赤色光、遠赤色光の光源としては、例えば、上記の主波長の光を発光する光源が挙げられ、発光ダイオード(LED,Light Emitting Diode)、半導体レーザー(LD、Laser Diode)等を例示できる。あるいは、適当なフィルターを用いて青色光、赤色光又は遠赤色光を発するようにした光源を用いてもよい。例えば、白色光を発光する蛍光灯に調色のためのフィルターを取り付け、これを青色光、赤色光、遠赤色光の光源として用いてもよい。
光量子束密度は、単位面積・単位時間あたりの光子数を示す値である。
植物に照射される青色光の光量子束密度は、植物種によって適宜定めることができ、0.1〜300μmolm−2−1であることが好ましく、0.1〜100μmolm−2−1であることがより好ましく、0.1〜50μmolm−2−1であることがさらに好ましく、0.1〜10μmolm−2−1であることが特に好ましい。
植物に照射される赤色光の光量子束密度は、植物種によって適宜定めることができ、0.1〜300μmolm−2−1であることが好ましく、0.1〜100μmolm−2−1であることがより好ましく、0.1〜50μmolm−2−1であることがさらに好ましく、0.1〜10μmolm−2−1であることが特に好ましい。
植物に照射される遠赤色光の光量子束密度は、植物種によって適宜定めることができ、0.1〜300μmolm−2−1であることが好ましく、0.1〜100μmolm−2−1であることがより好ましく、0.1〜50μmolm−2−1であることがさらに好ましく、0.1〜10μmolm−2−1であることが特に好ましい。
上記範囲の光量を植物に照射することで、より効率的に植物の休眠を制御することができる。
植物体のうち、植物が光照射をうける箇所は、特に制限されず、植物体の一部のみに光を照射してもよく、植物体の全部に光を照射してもよい。植物体に光を照射する方向は特に制限されず、植物体の主軸の伸長方向に対して上から照射してもよく、横から照射してもよく、下から照射してもよい。
休眠状態の植物体は、落葉した状態にある場合も想定されるため、植物体が光照射を受けるのは、植物の幹や枝の表皮や休眠中の芽等が挙げられる。
植物に照射される光の光量子束密度の値は、植物体が光を受ける箇所に光量子束密度計を配置して測定すればよい。上から光を照射する場合、例えば、地表面等の植物体の植え付け面の適当な位置に光量子束密度計を配置して測定し、光量子束密度の値を求めてもよい。
前記光照射工程は、日の入りから日の出までに対応する時間帯において行うことが好ましい。このことは、本来太陽光が照射されない夜間に、積極的に植物に光を照射することを目的としている。
日の入りから日の出までの時間は、植物を栽培している環境に合わせて適宜定めればよい。日本での露地栽培の場合、例えば、11月ごろの日の入りの時間である16時49分から、同じく11月ごろの日の出の時間である6時00分まで、植物に光照射することが挙げられる。
なお、光照射工程を、日の入りから日の出までに対応する時間帯において行うことは、日の出後の昼間の時間帯に光照射工程を行うことを妨げるものではない。
人工気象装置内など、人工的な光環境下で栽培されている植物の場合、日の入りから日の出までに対応する時間帯とは、明暗周期設定における暗期が該当する。例えば、12時間明期・12時間暗期のサイクルで栽培されている植物の場合、明期として白色光を12時間照射した後、暗期の期間に青色光、赤色光、又は遠赤色光を12時間照射する。
光照射工程において、光の照射は連続して行われてもよく、一時的に中断されてもよい。
光の照射の積算時間は、植物種に応じて適宜定めることができ、休眠を制御可能な時間分の光を、植物に照射すればよい。
実施形態の栽培方法において、前記光照射工程を、休眠状態の植物の一休眠期のうち、例えば、360時間以上行うことが好ましく、400時間以上行うことが好ましく、700時間以上行うことがより好ましく、1000時間以上行うことがさらに好ましい。
照射時間の上限は、照射対象の植物種の通常の休眠期間等も考慮し、適宜定めることができる。例えば、前記光照射工程を、休眠状態の植物の一休眠期のうち、例えば、3600時間以下行うことが好ましく、2000時間以下行うことがより好ましく、1500時間以下行うことがさらに好ましく、1200時間以下行うことが特に好ましい。
前記光照射工程を、休眠状態の植物の一休眠期のうち、例えば、360時間以上3600時間以下行ってもよく、400時間以上2000時間以下行ってもよく、700時間以上1500時間以下行ってもよく、1000時間以上1200時間以下行ってもよい。
(暗期処理)
本発明の植物栽培方法は、休眠状態の植物を360時間以上の連続暗期条件で栽培する暗期処理を含む。上記連続暗期は700時間以上であってもよく、900時間以上であってもよい。
連続暗期時間の上限は、照射対象の植物種の通常の休眠期間等も考慮し、適宜定めることができる。例えば、前記連続暗期の時間は、休眠状態の植物の一休眠期のうち、例えば、3600時間以下であってもよく、2000時間以下であってもよく、1500時間以下であってもよい。
前記連続暗期の時間は、休眠状態の植物の一休眠期のうち、例えば、360時間以上3600時間以下であってもよく、700時間以上2000時間以下であってもよく、900時間以上1500時間以下であってもよい。
休眠状態の植物を上記連続暗期条件で栽培することで、植物の休眠を制御することができる。
休眠状態の植物を上記連続暗期条件で栽培することで、植物の休眠覚醒期を遅延させることができる。
植物の休眠覚醒期を遅延させたことは、上記連続暗期で処理されていない植物に比べ、上記連続暗期で処理された植物で、休眠覚醒の時期が遅められたことで確認できる。
休眠覚醒の時期は、休眠覚醒後に生じる花の開花を指標として判断すればよく、係る指標としては花の満開日、開花率、開花ステージの推移等を採用可能である。
本発明の一実施形態として、休眠状態の植物を上記連続暗期条件で栽培する暗期処理を含む、休眠覚醒期の制御方法を提供する。
本発明の一実施形態として、休眠状態の植物を上記連続暗期条件で栽培する暗期処理を含む、休眠覚醒期の遅延方法を提供する。
本発明の一実施形態として、休眠状態の植物を上記連続暗期条件で栽培する暗期処理を含む、花の開花期の制御の制御方法を提供する。
本発明の一実施形態として、休眠状態の植物を上記連続暗期条件で栽培する暗期処理を含む、花の開花期の制御の遅延方法を提供する。
(低温処理)
本発明の植物栽培方法において、上記光照射工程に加え、休眠状態の植物に対し低温処理を行ってもよい。これは、休眠状態の植物の一休眠期のうち、光照射工程と低温処理とを両方行うことを意味する。低温処理と光照射工程は、同時に行われてもよく、別々に行われてもよい。
本発明の植物栽培方法において、上記暗期処理に加え、休眠状態の植物に対し低温処理を行ってもよい。これは、休眠状態の植物の一休眠期のうち、暗期処理と低温処理とを両方行うことを意味する。低温処理と暗期処理は、同時に行われてもよく、別々に行われてもよい。
低温処理は、一例として、−3〜15℃程度、好ましくは−6〜12℃程度の低温環境下に休眠状態の植物をさらすことが挙げられ、これは−3〜15℃程度、好ましくは−6〜12℃程度の冷気に休眠状態の植物を接触させることが挙げられる。低温処理により、植物の休眠覚醒期を制御可能である。低温処理の期間は、100〜1500時間程度とすることができ、好ましくは750〜1500時間程度とすることができる。低温処理は、春化処理とも呼ばれる。
(植物)
本発明の適用対象の植物は、休眠状態となることが可能な植物であれば特に制限されず、落葉樹を例示できる。落葉樹は低温要求性落葉樹であってもよい。落葉樹は落葉果樹であってもよい。落葉樹としては、リンゴ、ナシ、モモ、スモモ、セイヨウスモモ、ウメ、アンズ、オウトウ、キイチゴ、アーモンド、サクラ、バラ等のバラ科(Rosaceae)植物、クリ等のブナ科(Fagaceae)植物、クルミ等のクルミ科(Juglandaceae)植物、ブドウ等のブドウ科(Vitaceae)植物、カキ等のカキノキ科(Ebenaceae)植物、イチジク等のクワ科(Moraceae)植物、ブルーベリー等のツツジ科(Ericaceae)植物等が挙げられ、バラ科植物が好ましい。バラ科植物のなかでも、ニホンナシ等のナシ属(Pyrus)植物が好ましい。
≪植物栽培装置≫
本発明の植物栽培装置は、上記の植物栽培方法に用いる装置であって、休眠状態の植物に対して、波長域400〜500nmの青色光、波長域600〜700nmの赤色光、又は波長域700〜800nmの遠赤色光を照射する光源を備えたものである。
青色光、赤色光、遠赤色光は、上記植物栽培方法において説明したものと同一のため、説明を省略する。
青色光、赤色光、遠赤色光の光源としては、例えば、上記の主波長の光を発光する光源が挙げられ、発光ダイオード(LED,Light Emitting Diode)、半導体レーザー(LD、Laser Diode)等を例示できる。あるいは、適当なフィルターを用いて青色光、赤色光又は遠赤色光を発するようにした光源を用いてもよい。例えば、白色光を発光する蛍光灯に調色のためのフィルターを取り付け、これを青色光、赤色光、遠赤色光の光源として用いてもよい。
光源の照射部は、植物の主軸の伸長方向に対して上方に配置されていてもよく、側方に配置されていてもよく、下方に配置されていてもよい。
植物栽培装置は、光源を1つのみ有していてもよく、複数個有していてもよい。
植物栽培装置は、上記の光源の点灯、消灯、調節及び/又はのタイミング、或いは調光を制御する制御部を有することが好ましい。制御部としては、タイマー等が挙げられる。植物栽培装置が制御部を有することで、光源の点灯又は消灯を制御可能となる。制御部を有する植物栽培装置は、上記植物栽培方法のうち、光照射工程を、日の入りから日の出までに対応する時間帯において行うことを含む植物栽培方法に、好適に用いることができる。
制御部は、例えば、日の入りの時間になったときに光源を点灯させ、日の出の時間になったときに光源を消灯させる。光源の点灯は、日の入りの時間と同時であってもよく、日の入の時間の前であってもよく、後であってもよい。光源の消灯は、日の出の時間と同時あってもよく、日の入りの時間の前であってもよく、後であってもよい。
人工気象装置内など、人工的な光環境下で栽培されている植物の場合、日の入りから日の出までに対応する時間帯とは、明暗周期設定における暗期が該当する。例えば、12時間明期・12時間暗期のサイクルで植物を栽培しようとする場合、制御部は、明期として12時間白色光を照射した後、12時間青色光、赤色光、又は遠赤色光を照射するよう制御してもよい。
本発明の植物栽培装置によれば、休眠状態の植物に上記青色光、上記赤色光、又は上記遠赤色光を照射することで、植物の休眠を制御できる。
また、植物栽培装置が制御部を備えることで、制御部が光源の点灯及び/又は消灯を制御し、光源が点灯している必要性の低い太陽光が照射される日中の時間帯に、光源を点灯しておくことが防止されるので、経済的にも環境的にも優れる。更には、植物栽培装置が制御部を備えることで、光照射時間の制御が可能となり、花の開花期の制御等の休眠覚醒期を、より精度高く制御することが可能となる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.低温期の明暗条件がニホンナシの開花に及ぼす影響
(実施例1)
茨城県つくば市の屋外で栽培されていた3年生のニホンナシ「幸水」ポット樹を、供試した。ポット樹を11月1日に6℃の低温処理施設内で低温遭遇させ、光照射の無い室内環境である連続暗環境下に配した。低温遭遇時間が1125時間に達したところで、15℃、自然日照の人工気象室にポット樹を移動して加温し、腋花芽開花率を定期的に調査した。
腋花芽開花率は、ポット樹1つあたりに形成された腋花芽のうち、加温から2か月後までに開花した腋花芽の割合とした。
(実施例2)
低温遭遇時間が1500時間に達したところで、上記人工気象室にポット樹を移動して加温したこと以外は、上記実施例1と同様にしてニホンナシを栽培し、腋花芽開花率を調査した。
(参考例1)
対照として、上記暗黒条件下に代えて、12時間日長の条件下でポット樹を栽培した以外は、上記実施例1と同様にしてニホンナシを栽培し、腋花芽開花率を調査した。上記12時間日長とは、具体的には、白熱灯により約20μmolm−2−1の白色光を12時間照射して明環境下とし、その後12時間光照射の無い暗環境下とし、明環境下と暗環境下を交互に繰り返した。
(参考例2)
低温遭遇時間が1500時間に達したところで、上記人工気象室にポット樹を移動して加温したこと以外は、上記参考例1と同様にしてニホンナシを栽培し、腋花芽開花率を調査した。
結果を図2に示す。図2中、「12 hour−light」は12時間明環境下と12時間暗環境下の交互繰り返し(12時間日長)を示し、「Dark」は図2中の時間の連続暗環境下を示す。
ニホンナシのポット樹の腋花芽開花率は、12時間日長で低温遭遇させた樹よりも、暗黒条件下で低温遭遇させた樹のほうで低くなった。
2.低温期の夜間の光照射がニホンナシの開花に及ぼす影響
(実施例3)
茨城県つくば市の屋外で栽培されていた4年生のニホンナシ「幸水」のポット樹に対し、2013年10月15日から翌年の3月6日まで、LED電球を用いて日没から日の出にかけて青色光(最大波長460nm)を照射した。照射した光の強さは、植え付け面での測定で約0.5〜1μmolm−2−1とした。ポット樹は屋外で栽培し、日中は通常の日光が照射される環境に置いた。3月6日を過ぎてからは光の照射は行わず、開花期までそのまま露地で生育させ、満開日を調査した。満開日は上記の腋花芽開花率が9割以上となった日とした。
(実施例4)
上記青色光に代えて、赤色光(最大波長660nm)を照射した以外は、上記実施例3と同様にしてニホンナシを栽培し、満開日を調査した。
(実施例5)
上記青色光に代えて、遠赤色光(最大波長730nm)を照射した以外は、上記実施例3と同様にしてニホンナシを栽培し、満開日を調査した。
(比較例1)
対照として、上記光照射を行わなかった以外は、上記実施例3と同様にしてニホンナシを栽培し、満開日を調査した。
結果を表1に示す。4月10日に撮影した各ニホンナシの様子を図3に示す。図3中、「青色」は青色光照射を示し、「赤色」は赤色光照射を示し、「cont」は当該光照射を行わなかったことを示し、「遠赤色」は遠赤色光照射を示す。
青色光処理により満開日が早まる一方、遠赤色光処理により、満開日が遅延することが明らかとなった。
3.低温期の夜間の光照射がニホンナシの開花に及ぼす影響
(実施例6)
茨城県つくば市の屋外で栽培されていた5年生のニホンナシ「幸水」のポット樹に対し、2014年9月16日から同年の12月22日まで、LED電球を用いて日没から日の出にかけて青色光(最大波長460nm)を照射した。照射した光の強さは、植え付け面での測定で約0.5〜1μmolm−2−1とした。ポット樹は屋外で栽培し、日中は通常の日光が照射される環境に置いた。12月22日を過ぎてからは光の照射は行わず、最低気温10℃以上で管理されたガラス温室に移動させ、開花期まで生育させた。その後、開花状況(開花ステージ)、及び腋花芽開花率を調査した。開花状況は図4に示す開花状況の指標により判断した。腋花芽開花率は上記と同様である。
(実施例7)
上記青色光に代えて、赤色光(最大波長660nm)を照射した以外は、上記実施例6と同様にしてニホンナシを栽培し、開花状況及び腋花芽開花率を調査した。
(実施例8)
上記青色光に代えて、遠赤色光(最大波長730nm)を照射した以外は、上記実施例6と同様にしてニホンナシを栽培し、開花状況及び腋花芽開花率を調査した。
(比較例2)
対照として、上記光照射を行わなかった以外は、上記実施例6と同様にしてニホンナシを栽培し、開花状況及び腋花芽開花率を調査した。
開花状況の推移結果を図5に示す。腋花芽開花率を図6に示す。図5及び図6中、「cont」は当該光照射を行わなかったことを示し、「R」は赤色光照射を示し、「FR」は遠赤色光照射を示し、「B」は青色光照射を示す。
青色光処理により開花率が高まり開花が早まる一方、遠赤色光処理により、開花率が低下し開花が遅延することが明らかとなった。
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせなどは一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。
本発明によれば、休眠期を有する植物の栽培において、開花期を前進又は遅延させることが可能であり、植物の栽培を行う農家をはじめ、農業関連分野などで広く利用可能である。

Claims (7)

  1. 休眠状態の植物に対して、波長域400〜500nmの青色光、波長域600〜700nmの赤色光、又は波長域700〜800nmの遠赤色光を照射する光照射工程を有する、植物栽培方法。
  2. 前記光照射工程を、日の入りから日の出までに対応する時間帯において行う、請求項1に記載の植物栽培方法。
  3. 前記光照射工程を、休眠状態の植物の一休眠期のうち360時間以上行う、請求項1又は2に記載の植物栽培方法。
  4. 前記植物に照射される前記青色光、前記赤色光、又は前記遠赤色光の光量子束密度が0.1〜300μmolm−2−1である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の植物栽培方法。
  5. 前記休眠状態の植物が、バラ科の落葉樹である請求項1〜4のいずれか一項に記載の植物栽培方法。
  6. 休眠状態の植物を360時間以上の連続暗期条件で栽培することを含む、植物栽培方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の植物栽培方法に用いる装置であって、休眠状態の植物に対して、波長域400〜500nmの青色光、波長域600〜700nmの赤色光、又は波長域700〜800nmの遠赤色光を照射する光源を備えた、植物栽培装置。
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