JP3568909B2 - 天井構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吊タイプの天井構造に係る技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、吊タイプの天井構造は、図10に示すように、天井パネルPが取付けられるフレーム部材1が天井スラブ(天井スラブ)Cに固定された吊部材2に吊持され、フレーム部材1の端部が壁Wに固定された廻縁部材3に連結されてなる。フレーム部材1と廻縁部材3の結合については、ボルト締等の固定構造が採用されている。
【0003】
この天井構造では、地震等の振動が作用した場合に、フレーム部材1に天井スラブC及び壁Wからの力が集中して捻れや撓み等の変形を生ずることがある。このため、フレーム部材1と廻縁部材3の連結については、非固定構造を採用して、フレーム部材1へ振動による応力の集中を避けることが望まれている。
【0004】
従来、フレーム部材と廻縁部材の連結に非固定構造を採用した天井構造としては、例えば、特開平8−27945号公報に記載の回縁用スペーサを使用したものがある。
【0005】
この従来の天井構造における回縁用スペーサは、Tバー(フレーム部材)の端部を壁に固定された廻縁で保持するのに補助的に使用するものである。回縁用スペーサは、ボード支持部と横移動防止爪を備えて廻縁の内部に移動可能に取り付けられ、このボード支持部と横移動防止爪でTバー(フレーム部材)を支持するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述の従来の天井構造では、回縁用スペーサのボード支持部は下方からTバー(フレーム部材)を支えているだけなので、地震でTバー(フレーム部材)が長手方向に大きく移動する動きに対しては、Tバー(フレーム部材)がボード支持部から外れて、Tバー(フレーム部材)が脱落する危険性があるという問題ある。
【0007】
また、回縁用スペーサのボード支持部と横移動防止爪が回縁に移動可能に取り付けられたもので、地震の振動の力を上下左右に支える構造ではないため、地震で回縁から天井パネルが外れると天井からだけの吊部材に頼らなければ天井の落下防止ができないという問題がある。その結果、吊部材を強度の高いものにする必要があるので、コストアップになるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたもので、地震などの振動で天井パネルを設置するフレーム部材が壁面から大きく離脱しても、天井の落下を防止することができる安価な天井構造を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するため、本発明に係る天井構造は、次のような手段を採用する。
【0010】
即ち、請求項1では、天井に吊部材で吊持されるフレーム部材と、フレーム部材に設置される天井パネルと、壁面に固定されるとともにフレーム部材とスライド可能に連結される連結補助具とからなり、前記フレ−ム部材は端部に開口された長さ方向に延びる上下複数の中空部を有し、前記連結補助具は水平に突出した上下複数のガイド部を有し、前記ガイド部は前記中空部の夫々にスライド可能に嵌合される。
【0011】
この手段では、連結補助具の上下にある複数のガイド部がフレーム部材の上下にある複数の中空部に夫々嵌合してスライド可能に連結され、フレーム部材が壁面から離れてもフレーム部材を上下複数箇所から支持可能とする。
【0012】
また、請求項2では、請求項1に記載の天井構造において、一つのガイド部がフレーム部材の長さ方向と直交する方向の動きを規制し、他のガイド部が垂直方向の動きを規制するようにフレーム部材に嵌合されることを特徴とする。
【0013】
この手段では、連結補助具の一つのガイド部がフレ−ム部材の長さ方向と直交する方向の動きを規制し、連結補助具の他のガイド部が垂直方向の動きを規制するように構成される。
【0014】
また、請求項3では、請求項1または2に記載の天井構造において、垂直方向の動きを規制するガイド部は逆U字形に折曲げ形成されることを特徴とする。
【0015】
この手段では、連結補助具はフレーム部材の垂直方向の動きを規制するように構成される。
【0016】
さらに、請求項4では、請求項1〜3のいずれかに記載の天井構造において、フレーム部材は連結補助具のガイド部の基端部に嵌合する上端部を斜めに切り欠かれていることを特徴とする。
【0017】
この手段では、連結補助具に嵌合するフレーム部材が干渉を避けるように切り欠かれる。
【0018】
また、請求項5では、請求項1〜4のいずれかに記載の天井構造において、連結補助具は板材を折り曲げて形成されるものであることを特徴とする。
【0019】
この手段では、連結補助具が安価に構成されるとともに、適度に変形が可能な構造とする。
【0020】
また、請求項6では、請求項5に記載の天井構造において、連結補助具は板材の折り曲げ部に補強を施したものであることを特徴とする。
【0021】
この手段では、連結補助具が薄板で形成される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る天井構造の実施の形態を図1〜図9に基づいて説明する。
【0023】
図1〜図4は、本発明に係る天井構造の実施の形態(1)を示すものである。
【0024】
この実施の形態における天井構造100は、前述の従来例と同様に、吊部材2と、フレーム部材1と、フレーム部材1設置された天井パネルPと、廻縁部材3と、廻縁部材3とフレーム部材1との間に連結補助具4とを設けた構成としている。
【0025】
フレーム部材1は、一枚の板材から断面がほぼT字形に折曲げ形成された長尺材からなるもので、上部に吊部材2が取付けられる縦長筒形の吊部材取付部11が設けられ、下部に天井パネルPが嵌込み設置される吊部材取付部11よりの少し大きな横長筒形の天井パネル取付部12が設けられている。また、吊部材取付部11、天井パネル取付部12の間に板材が接合された垂直な平坦部13が設けられている。
【0026】
吊部材取付部11の内部は、フレーム部材1の長さ方向に延びるとともにフレーム部材1の端部に開口された中空部14となっている。天井パネル取付部12の内部は、フレーム部材1の長さ方向に延びるとともにフレーム部材1の端部と下面の一部とに開口された中空部15となっている。平坦部13には、天井パネル取付部12の開口部が力を受けて開かないように複数のカシメ加工17が施されている。
【0027】
吊部材2は、天井スラブCから吊持されたボルト部21と、ボルト部21の下端部に取付けられた端末部22とからなる。ボルト部21は、天井スラブCに打込まれたアンカーピン等に吊され、ナットなどを用いて端末部22の高さが調節できるような構造(図示しない)となっている。端末部22はコ字形に形成されて、フレーム部材1の吊部材取付部11に取り付けられる。
【0028】
廻縁部材3は、金属材または合成樹脂材等の垂直片31、水平片32がL字形に形成されてなる。垂直片31は、壁面Wに当接されて取付ボルト等で固定される。水平片32は、壁面Wから水平に突出してフレーム部材1の天井パネル取付部12の下面を支持する。
【0029】
連結補助具4は、壁面Wに固定された廻縁部材3の垂直片31に当接されて固定される基板41と、フレーム部材1にスライド可能に嵌合されるガイド部であり、基板41と90°をなす方向の上下に比較的長く突出したガイド片42、43と、両ガイド片42、43と基板41との間に設けられた立ち上がり部44とを備えている。基板41は、廻縁部材3の垂直片31に固定するためのビス5が挿通されるビス孔45が開孔されている。
【0030】
上側のガイド片42は、図2に示すように、フレーム部材1の吊部材取付部11の中空部14に嵌合して挿通される縦長の逆U字形(開放側を下側にした)に折曲げ形成されている。したがって、フレーム部材1の垂直方向の動きを規制するものである。一方、下側のガイド片43は、図2に示すように、フレーム部材1の天井パネル取付部12の中空部15に、その断面の上部分にのみ当接して嵌合される水平の板形に形成されている。したがって、フレーム部材1の長さ方向と直交する方向に対してフレーム部材1の動きを規制するものである。なお、立ち上がり部44は、両ガイド片42、43を基板41寄りの端部で一つにして、基板41に連続している。
【0031】
この連結補助具4については、図4に示すような打抜き加工された一枚の板材料から、図示の点線に沿って折曲げ加工することにより容易に製造することができる。なお、板材料の折曲げが狭い範囲に集中する基板41と下側のガイド片43と立ち上がり部44との間には、折曲げをしやすくするために、U字形の切込46が設けられている。また、板材料の基板41と立ち上がり部44との間の折曲げ部分には、折曲げ状態を保持、補強するために凸側から凹側に叩き出すことによる補強47が施されている。
【0032】
この実施の形態の天井構造100によると、図1、図2に示すように、壁Wに固定された廻縁部材3にビス5で連結補助具4の基板41を固定し、壁Wから水平に突出した連結補助具4の両ガイド片42、43をフレーム部材1の中空部14、15に挿通することで、フレーム部材1、廻縁部材3(連結補助具4)がスライド可能に連結される。なお、工事手順としては、連結補助具4の両ガイド片42、43をフレーム部材1の中空部14、15に挿通してから、廻縁部材3に連結補助具4の基板41を固定することが可能である。
【0033】
フレーム部材1と廻縁部材3が連結補助具4を介して連結されると、廻縁部材3の壁面Wから水平に突出している水平片32は、連結補助具4と一緒にフレーム部材1を下から支える。また、連結補助具4の上側のガイド片42は、開放側を下側にしたU字形の補強構造としているのでフレーム部材1の荷重に充分に耐えることができる。
【0034】
この実施の形態の天井構造100に地震等の振動が加わった場合、図1に示すように、フレーム部材1は連結補助具4のガイド片42、43に支持されて、取付位置A1に対し図の右方向にスライドすることができる。ここでかなり大きな地震が発生した場合、フレーム部材1は位置A2まで動くこともあり得る。その場合、従来例の構造ではフレーム部材1が廻縁部材3から外れてしまい、他の場所の連結補助具4の状況によっては、天井パネルPが落下する可能性がある。
【0035】
しかし、連結補助具4はそのガイド片42、43の連結長さを十分に確保してあるため、A2やA3の位置までフレーム部材1が動いても連結補助具4のガイド片42、43からフレーム部材1が離脱することはない。なお、過去に日本国内で発生した大地震のデータを再現実験して調べると、変位量は最大なものでも4cm程度(A3の位置以下)であり、安全率を見込んでその2倍程度の長さを与えれば十分と考えられる。ちなみに従来の回縁3だけの支持では、2cm動くと回縁から外れてしまう。
【0036】
また、この実施の形態では、スライド構造が上下に2組構成され、フレーム部材の長さ方向と直交する方向の動きを規制するとともに垂直方向の動きを規制するようにフレーム部材に嵌合されているので、吊部材2のばたつきを押さえることができ、また、捻れに対する剛性が高くなる。したがって、縦揺れ、横揺れ等の複雑な振動形態からなる地震に有効に対応することができる。なお、固定式の天井と異なり、フレーム部材1の中空部14、15と連結補助具4のガイド片42、43とでスライドする構造のために、フレーム部材1に天井スラブC、壁Wからの振動の応力が集中して、フレーム部材1が捻れ、撓み等の変形を生ずるようなことはない。
【0037】
また、連結補助具4のガイド片42、43がフレーム部材1の中空部14、15の吊部材取付部11、天井パネル取付部12にそれぞれ平面で当接し、スライド構造が広い面積で案内されているため、スライド構造がガタつくことなく円滑に動作する。また、連結補助具4のガイド片42がU字形で周囲がフレーム部材1の吊部材取付部11で囲まれているため、スライド構造のスライド軋音等の共鳴がフレーム部材1の吊部材取付部11の内部で減衰され、スライド騒音の発生が防止される。
【0038】
図5は、本発明に係る天井構造の実施の形態(2)を示すものである。
【0039】
この実施の形態では、前述の実施の形態(1)の連結補助具4に嵌合するフレーム部材1の上端部を吊部材取付部11から天井パネル取付部12にかけて斜めに切り欠いてある。この切り欠き50は連結補助具のガイド部の基端部(連結補助具4のガイド片42の付け根部48が強度を確保するために丸みを設けている)との干渉を避けるように切り欠かれたものである。
【0040】
すなわち、この実施の形態によると、フレーム部材1の上端部を斜めに切断していることで、連結補助具4のガイド片43の付け根の部分49までフレーム部材1が挿入可能となっている。(この斜め切断を行わない場合は、図5の2点差線で示すような位置までフレーム部材1を挿入可能)したがって、この実施の形態によれば、フレーム部材1の廻縁部材3による支持長さを大きくすることができる。
【0041】
なお、フレーム部材1の上端部を斜めに切断する方法は図5に示す形態に限ったことではなく、ガイド片42の付け根部48の丸みを避けるように形成するものであれば構わない。例えばフレーム部材1の上端部の角部のみを面取りするように形成してもよい。
【0042】
図6〜図9は、本発明に係る天井構造の実施の形態(3)を示すものである。
【0043】
この実施の形態では、前述の実施の形態(1)の連結補助具4の下側のガイド片43に代えて当接片48を設けてある。当接片48は、フレーム部材1の平坦部13の外側面に当接する垂直の板形に形成されている。
【0044】
この実施の形態の連結補助具4については、図9に示すような打抜き加工された一枚の板材料から、図示の点線に沿って折曲げ加工することにより容易に製造することができる。
【0045】
この実施の形態によると、前述の実施の形態(1)と同様に、大きな地震に対してもフレーム部材1の離脱を防ぐことができるとともに、当接片48により垂直方向の動きの規制をする性能が高くなる。ただし、フレーム部材の長さ方向と直交する方向の動きを規制が一方向なので、実施の形態(1)に比べ、捻れに対する対応性能はわずかに低下する。
【0046】
なお、上記の実施の形態では、廻縁部材3を用いたが、廻縁部材3はなくても取付部などの強度を確保すれば(板厚をわずかに厚くするなどで、安価に強度アップで実施可能)、連結補助具4のみでフレーム部材1を支持することは可能である。
【0047】
また、実施の形態(1)のガイド片42をフレーム部材1の長さ方向と直交する方向の動きを規制するようにし、ガイド片43を垂直方向の動きの規制をする(上部と下部を入れ替える)ようにすることも容易にでき、同じ作用、効果を得ることができる。
【0048】
なお、フレーム部材1は現在米国の規格で形状が1種類に統一されているが、規格が変更された場合は、変更されたフレーム部材1の中空部14、15の形状に対応して、連結補助具4のガイド片42、43の形状等を適宜変更することは可能である。
【0049】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る天井構造は、天井から吊部材で吊持されるフレーム部材に設置される天井パネルと、壁面に固定されるとともにフレーム部材にスライド可能に連結されるガイド部を備えた連結補助具を備え、フレ−ム部材が端部に開口された長さ方向に 延びる上下複数の中空部を有し、連結補助具が水平に突出した上下複数のガイド部を有することで、前記ガイド部が前記中空部の夫々にスライド可能に嵌合されたので、地震などの振動で天井パネルを設置するフレーム部材が壁面から大きく離れても、上下複数箇所から天井の落下を防止することができる効果がある。
【0050】
さらに、天井の落下防止のために、天井からの吊部材だけに頼らなくてよいので、吊部材を強度の低くすることができ、全体としても安価な天井構造が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る天井構造の実施の形態(1)を示す側面断面図である。
【図2】図1のX−X線拡大断面図である。
【図3】図1の要部の分解状態の斜視図である。
【図4】図1の要部の製造例を示す製造材料の展開図である。
【図5】本発明に係る天井構造の実施の形態(2)を示す側面断面図である。
【図6】本発明に係る天井構造の実施の形態(3)を示す側面断面図である。
【図7】図6のY−Y線拡大断面図である。
【図8】図6の要部の分解状態の斜視図である。
【図9】図6の要部の製造例を示す製造材料の展開図である。
【図10】一般的な吊タイプの天井構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 フレーム部材
11 吊部材取付部
12 天井パネル取付部
14、15 中空部
2 吊部材
3 廻縁部材
4 連結補助具
41 基板
42、43 ガイド片
44 立ち上がり部
46 当接片
47 補強
48 当接片
100 天井構造
C 天井(天井スラブ)
P 天井パネル
W 壁
Claims (6)
- 天井に吊部材で吊持されるフレーム部材と、フレーム部材に設置される天井パネルと、壁面に固定されるとともにフレーム部材とスライド可能に連結される連結補助具とからなり、前記フレ−ム部材は端部に開口された長さ方向に延びる上下複数の中空部を有し、前記連結補助具は水平に突出した上下複数のガイド部を有し、前記ガイド部は前記中空部の夫々にスライド可能に嵌合される天井構造。
- 請求項1に記載の天井構造において、一つのガイド部がフレーム部材の長さ方向と直交する方向の動きを規制し、他のガイド部が垂直方向の動きを規制するようにフレーム部材に嵌合されることを特徴とする天井構造。
- 請求項1または2に記載の天井構造において、垂直方向の動きを規制するガイド部は逆U字形に折曲げ形成されることを特徴とする天井構造。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の天井構造において、フレーム部材は連結補助具のガイド部の基端部に嵌合する上端部を斜めに切り欠かれていることを特徴とする天井構造。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の天井構造において、連結補助具は板材を折り曲げて形成されるものであることを特徴とする天井構造。
- 請求項5に記載の天井構造において、連結補助具は板材の折り曲げ部に補強を施したものであることを特徴とする天井構造。
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