JP3568443B2 - ポリエステル繊維及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、その製糸時の生産性の高いポリエステル繊維及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリエチレンテレフタレート繊維で代表されるポリエステル繊維の生産性向上の手法として、溶融紡糸の際に、引き取り速度を高くし、かつ紡糸口金からの吐出量を増加させる方法があり、この方法は簡単で有効な手法である。しかしながら、この方法では、引き取り速度の増加により紡糸により得られた繊維の分子配向が大きくなり、残留伸度が低下するという現象が生じる。そのため紡糸時の生産性は向上しても、その後の工程で引き取り速度が低い場合と同等の糸質の繊維を得ることは困難である。特にいったん未延伸糸を得て更に延伸するという製糸方法においては、未延伸糸の延伸又は延伸仮撚時の延伸比を小さくせざるを得ず、引き取り速度の上昇による吐出量増加効果が延伸比の低下によって相殺されるということが起こる。
【0003】
この問題を解決するには、紡糸引き取り速度を高くしても、得られた繊維の分子配向が大きくならないようにすることが必要である。その一手段として、ポリエステルにペンタエリスリトール等の連鎖分岐剤を共重合させ、吐出量、延伸比を増大させポリエステル繊維の生産性を向上させる方法が特開昭53−292号公報にて提案されているが、この方法では、特別な重合条件を採用する必要があり、また低い紡糸速度では全く効果がなく紡糸速度域に制限がある、毛羽が発生し易くなる等の問題がある。
【0004】
一方、ポリエステルに特定のポリマーを配合し、ポリエステル繊維の生産性を向上させる方法も提案されている。例えば、特開昭56−91030号公報にてポリエステルにスチレン系ポリマーを配合する方法が提案されているが、十分な生産性向上効果を得るためには大量の配合量を必要とし、このため糸切れの原因を作るという問題がある。また特開昭57−47912号公報、特開平6−17317号公報にてポリエステルにポリメチルメタクリレート等の添加剤を配合する方法が提案されているが、生産性向上効果が低く、紡糸温度域での添加剤の熱安定性が悪く糸切れの原因となるという問題がある。またWO99−07927号公報にてポリエステルの溶融粘度の1〜10倍の粘度を有するポリマーを含有する方法が提案されているが、生産性向上の効果が低く、後加工時に毛羽等のトラブルが発生するという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、繊維物性が良好で、かつその製糸時の生産性の高いポリエステル繊維を提供し、またかかるポリエステル繊維を紡糸を含む製糸工程での糸切れ等のトラブルもなく生産性高く得ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、テレフタル酸を主とするジカルボン酸成分及びエチレングリコールを主とするジオール成分とからなるポリエステルに、200℃から250℃の範囲内での剛性率が該ポリエステルの20倍以上1000倍以下の、スチレン系化合物単位、(メタ)アクリロニトリル単位及びN−置換マレイミド単位を成分とする共重合ポリマーが、ポリエステル100重量部に対し0.01〜10重量部の比で含有されたポリエステルからなり、該共重合ポリマーが、繊維軸に対し平行に伸長した構造を有し、繊維軸に対し垂直方向の繊維横断面において共重合ポリマーのドメインの直径が0.12μm以下で、かつ平行方向の繊維縦断面において共重合ポリマーのドメインの長さが5.5μm以上であることを特徴とするポリエステル繊維、及び、テレフタル酸を主とするジカルボン酸成分及びエチレングリコールを主とするジオール成分とからなるポリエステルを溶融紡糸してポリエステル繊維を製造するに際し、該ポリエステルの生成中又は生成後の系に、200℃から250℃の範囲内での剛性率が該ポリエステルの20倍以上1000倍以下の、スチレン系化合物単位、(メタ)アクリロニトリル単位及びN−置換マレイミド単位を成分とする共重合ポリマーを、生成ポリエステル100重量部に対し0.01〜10重量部の比で添加することを特徴とするポリエステル繊維の製造方法、にある。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステルは、テレフタル酸を主とするジカルボン酸成分及びエチレングリコールを主とするジオール成分とからなるポリエステルであり、実用上十分な繊維強度を確保するためには、フェノール/テトラクロロエタン(50/50)混合溶媒中、25℃において測定した極限粘度が0.5以上であることが好ましく、より好ましくは0.6以上である。またポリエステル繊維としての物性を著しく低下させない範囲でジカルボン酸成分及び又はジオール成分の一部を他のジカルボン酸成分或いはジオール成分で置き換えたものであってもよい。
【0008】
置き換え可能な他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸或いは2−スルホイソフタル酸、1,8−ジカルボキシナフタレン−3−スルホン酸等のアルカリ金属塩、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボン酸類又はこれらのエステル形成性誘導体、p−オキシ安息香酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸類又はこれらのエステル形成性誘導体、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸、5−テトラフェニルホスホニウムスルホイソフタル酸、5−フェニルトリブチルホスホニウムスルホイソフタル酸、5−ブチルトリフェニルホスホニウムスルホイソフタル酸等のスルホン酸ホスホニウム塩含有ジカルボン酸類又はこれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0009】
置き換え可能な他のジオール成分としては、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等の炭素数2〜10の低級アルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコ−ル、1,4−ビス(β−オキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノ−ル−Aのビスグリコ−ルエ−テル、各種分子量のポリエチレングリコ−ル又はポリプロピレングリコ−ル、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、或いはポリアルキレングリコ−ルの各種誘導体等が挙げられる。
【0010】
また、ポリエステルが実質的に線状である範囲内で、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸、トリメチロ−ルプロパン又はそのエチレンオキサイド付加誘導体、ペンタエリスリト−ル、グリセリン又はそのエチレンオキサイド付加誘導体等のポリオ−ルが含まれていてもよい。更に、各種分子量のモノハイドリックポリアルキレンオキサイド又はその誘導体、フェニル酢酸等の重合停止剤が含まれていてもよい。
【0011】
本発明のポリエステルの生成に際しては、従来公知の任意のポリエステル合成用触媒を用いることができる。また、公知の抗酸化剤等の安定剤、着色防止剤、エ−テル結合副生抑制剤、易滑剤、艶消し剤、難燃剤、蛍光剤、その他の添加剤が適宜含まれていてもよい。
【0012】
本発明におけるポリエステルに含有される共重合ポリマーは、200℃から250℃の範囲内での剛性率が該ポリエステルの20倍以上1000倍以下であるポリマーである。この剛性率は、市販の評価装置、例えばレオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製レオメーター等で測定することにより容易に求められる。共重合ポリマーの剛性率は、200℃から250℃の範囲内でポリエステルの20倍以上1000倍以下であればよいが、好ましくは30倍以上500倍以下、より好ましく30倍以上200倍以下である。剛性率が20倍未満や1000倍を超える場合は、生産性向上の効果が低いものとなる。
【0013】
本発明における共重合ポリマーは、ポリエステルの溶融状態においてポリエステルと2相分離し得る非相溶ポリマーである。以下、本発明における共重合ポリマーを非相溶ポリマーということがある。
【0014】
本発明においては、ポリエステル中に非相溶ポリマーが、ポリエステル100重量部に対し0.01〜10重量部の比で含有されていることが必要であり、好ましくは0.1〜1.0重量部、より好ましくは0.3〜0.8重量部の比で含有される。非相溶ポリマーの含有量が0.01重量部未満では、その製糸時の生産性向上の効果がなく、10重量部を超えると、糸切れ等製糸時にトラブルが発生する。
【0015】
本発明におけるポリエステル中において、含有される共重合ポリマーのドメインの分散状態は、繊維軸に対し垂直方向の繊維横断面において直径が0.12μm以下で、かつ繊維軸に対し平行方向の繊維縦断面において長さが5.5μm以上であればよい。直径が0.12μmを超える場合は、糸切れし易く、長さが5.5μm未満の場合は、生産性向上の効果が小さくなる。
【0016】
本発明におけるポリエステルに含有される共重合ポリマーは、スチレン系化合物単位、(メタ)アクリロニトリル単位及びN−置換マレイミド単位を成分とする共重合ポリマーである。更にこの共重合ポリマーについて説明する。共重合ポリマーの成分の単位を構成するスチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体が挙げられ、(メタ)アクリロニトリルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられ、N−置換マレイミドとしては、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−脂肪族置換マレイミド、N−フェニルマレイミド等のN−芳香族置換マレイミドが挙げられる。
【0017】
共重合ポリマーの組成は、特に限定されないが、各成分が少なくとも5重量%含まれることが好ましく、より好ましい組成は、スチレン系化合物単位が40〜80重量%、(メタ)アクリロニトリル単位が5〜45重量%及びN−置換マレイミド単位が15〜55重量%である。
【0018】
かかる共重合ポリマーの具体的な例としては、スチレン、アクリロニトリル及びN−フェニルマレイミドの共重合体等が挙げられる。これらの共重合ポリマーの中で3種の成分のうちの一つに(メタ)アクリロニトリルが含まれることがポリエステル中での分散性の点からより好ましく、更により好ましいものとして、スチレン/アクリロニトリル/N−フェニルマレイミド共重合体が挙げられる。
【0019】
非相溶ポリマーとして用いる共重合ポリマーは、その分子量が任意のものであってよいが、数平均分子量で10000〜500000のポリマーであることが好ましく、数平均分子量で40000〜200000のポリマーであることがより好ましい。数平均分子量が10000未満では、生産性向上の効果が低くなる傾向にあり、500000を超えると、ポリエステル中での分散性が悪くなる傾向にある。
【0020】
また共重合ポリマーは、そのガラス転移温度が110℃以上であることが好ましく、より好ましくは130℃以上で、ポリエステルの融点以下であることが好ましく、より好ましくは150℃未満である。ガラス転移温度が110℃未満では、製糸時の生産性向上の効果が低くなる傾向にあり、ポリエステルの融点を超えると、ポリエステル中での分散が悪くなり、製糸時に糸切れ等のトラブルが起こったり、得られた繊維の物性に悪影響を及ぼす傾向にある。
【0021】
本発明のポリエステル繊維は、紡糸速度、即ち紡糸引き取り速度を高くしても、得られた繊維の分子配向が大きくならず製糸生産性を向上させる働きがある。この理由は、明らかではないが、繊維を形成させるポリエステルの紡糸の際に、溶融状態から繊維として固化するまでの温度域で通常のポリエステルに比して高い剛性率を有することに加え、線状に引き延ばされ繊維長手方向に連続したような構造となるため繊維全体にかかる応力が添加した共重合ポリマー側に比較的多くかかり、結果的にポリエステルの配向がかかり難くするものと推定される。
【0022】
本発明のポリエステル繊維は、次のようにして製造することができる。
即ち、テレフタル酸を主とするジカルボン酸成分及びエチレングリコールを主とするジオール成分とからポリエステルを溶融紡糸し、ポリエステル繊維を製造するに際し、用いるポリエステルの生成中又は生成後の系に、200℃から250℃の範囲内での剛性率が該ポリエステルの20倍以上1000倍以下であるスチレン系化合物単位、(メタ)アクリロニトリル単位及びN−置換マレイミド単位を成分とする共重合ポリマーを、生成ポリエステル100重量部に対し0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜1重量部、より好ましくは0.3〜0.8重量部の比で添加することにより本発明のポリエステル繊維を得ることができる。
【0023】
本発明のポリエステル繊維は、非相溶ポリマーが含有されたポリエステルから構成されており、本発明のポリエステル繊維は、紡糸直前の溶融状態において、ポリエステルポリマーが海、非相溶ポリマーが島の海島構造にあり、非相溶ポリマーが走査型電子顕微鏡観察による非相溶ポリマー相の平均分散粒径で0.5μm未満で含有されていることが好ましい。含有された非相溶ポリマーの平均分散粒径が0.5μm以上である場合は、紡糸の際に糸切れを起こしたり、布帛にしたときに筋斑の発生等の問題が起こり易くなる。
【0024】
非相溶ポリマーのポリエステルへの添加方法は、ポリエステルの生成中又は生成後の系に添加され、紡糸直前に生成したポリエステルに混合することも可能であるが、非相溶ポリマーがポリエステル中に島、ポリエステルが海の海島構造に均一に分散させるためには、ポリエステルの生成中の系に添加することが好ましく、特に重縮合反応系に添加することがより好ましい。
【0025】
また、非相溶ポリマーをポリエステルへ添加する際、熱劣化、着色等の問題を防止するために公知の抗酸化剤等の安定剤、着色防止剤や、易滑剤、難燃剤、蛍光剤、その他の添加剤を適宜添加してもよい。ポリエステルの生成工程で添加する場合や比較的高温で紡糸する場合等長い、或いは高い温度の熱履歴が加わる場合は抗酸化剤を用いることが好ましい。抗酸化剤としては、例えばフェノール系、ホスファイト系やチオエーテル系等が用いられる。
【0026】
本発明のポリエステル繊維の製造における溶融紡糸は、非相溶ポリマーを添加したポリエステルを通常の紡糸機を用いて紡糸されるが、紡糸速度としては、1000〜6000m/分未満の紡糸速度で紡糸することが好ましい。本発明のポリエステル繊維の製造方法によれば、非相溶ポリマーを添加することにより、非相溶ポリマーを添加しないポリエステルの溶融紡糸に比べ、同等の繊維物性の繊維を得る場合に、紡糸速度を高めることができ、製糸時の生産性を向上させることができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
なお、実施例中の各特性値は、下記の方法により測定した。また、実施例中の部は重量部を意味する。
【0028】
(繊維強度、伸度)
島津製作所社製オ−トグラフSD−100−Cを用いて、試料長200mm、引張速度200mm/分で応力−伸長曲線を測定し、繊維の破断点の強度及び伸度を求めた。
(複屈折率)
浸漬液としてグリセリンを用い、ステップコンペンセーター法により求めた。
(最大延伸倍率)
得られた未延伸糸を、延伸速度600m/分で延伸し、破断する延伸倍率を最大延伸倍率とした。
【0029】
(溶融状態での剛性率)
レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製レオメーターRDA−700を用いて、パラレルプレート:25mmφ、プレート間隔:2mm、角周波数:10rad/sec、初期設定歪み:10%、初期設定温度:300℃、降温速度:15℃/min、雰囲気:窒素の条件で、200〜250℃での非相溶ポリマーの剛性率G(a)とポリエステルの剛性率G(b)からG(a)/G(b)を剛性率比として求めた。非相溶ポリマーを重縮合系中に添加した場合は、非相溶ポリマーを添加したポリエステルと同一極限粘度を有する非相溶性ポリマーを添加していないポリエステルの剛性率をG(b)とした。また、剛性率比は200〜250℃で剛性率比が最大になる温度、最小になる温度でのデータで示した。
【0030】
(電子顕微鏡観察)
繊維を包埋処理した後、ダイヤモンドナイフにて薄切試料を得、透過型電子顕微鏡用シ−トメッシュ(150メッシュ)に積載し、1%RuO水溶液上に曝し、蒸気染色をした後、日本電子(株)社製透過型電子顕微鏡JEM−100CX−IIにて非相溶ポリマーの分散状態を観察した。
【0031】
(実施例1)
テレフタル酸85.5部、エチレングリコール48.0部(ジカルボン酸:ジオールの仕込みモル比=1:1.5、ポリエステルとして100部となる)を反応槽に仕込み、窒素雰囲気下265℃まで昇温して、余剰の水及びエチレングリコールを系外へ留去しながらエステル化反応させた。その後、アンチモン系触媒0.04部、リン系安定剤0.03部、酸化チタン0.46部を反応槽に仕込み、徐々に重合槽内を減圧していき、高真空下290℃まで昇温して、余剰のエチレングリコールを系外へ留去しながら重縮合反応させた。減圧開始から20分後一旦常圧に戻し、非相溶ポリマーとしてガラス転移温度が145℃、数平均分子量が65000のスチレン/アクリロニトリル/N−フェニルマレイミド共重合体(重量比53/14/33)、(PSAMHと略す)をペレットの状態で0.5部添加し、反応生成物との混合物を調製後、徐々に重合槽内を減圧していき、高真空下290℃にて40分間重縮合反応を更に進行させ、極限粘度0.71のポリエステルを得た。
【0032】
得られたポリエステルを、常法によりチップ化した後、真空乾燥し、孔径0.25mmの円形紡糸孔を36個有する紡糸口金を通して、紡糸温度292℃にて溶融紡糸した。吐出糸条を冷却気流で冷却固化した後、油剤を付与し、3000m/分の紡糸速度で巻取った。なお、紡糸機からの放流ポリマー中でのPSAMHの平均分散粒径は0.34μmで、また紡糸時のトラブルもなかった。得られた未延伸糸は、83dtexであり、得られた未延伸糸の繊維物性を表1に示した。また200〜250℃でのポリエステルに対するPSAMHの剛性率比も表1に示した。なお、PSAMHの剛性率G(a)と本実施例におけるポリエステルと同一極限粘度を有するPSAMHを添加していないポリエステルの剛性率G(b)との剛性率比は240℃で最大82(G(a)=16.6MPa、G(b)=0.203MPa)、200℃で最小54(G(a)=91.2MPa、G(b)=1.70MPa)であった。
【0033】
(比較例1)
実施例1において、非相溶ポリマーを添加しない以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。また紡糸速度を2000m/分とした以外は実施例1と同様の方法にて紡糸し未延伸糸を得た。得られた未延伸糸の繊維物性を評価し、表1に示した。
【0034】
実施例1と比較例1とを比べると、実施例1で得られた未延伸糸の繊維物性は、比較例1で得られた未延伸糸と同等であり、実施例1では紡糸速度が3000m/分であるのに対し比較例1では紡糸速度が2000m/分であることから、非相溶ポリマーとしてPSAMHを添加することにより紡糸速度で1.5倍の生産性向上の効果が得られた。
【0035】
(実施例2)
実施例1において、添加する非相溶ポリマーをガラス転移温度が135℃、数平均分子量が65000のスチレン/アクリロニトリル/N−フェニルマレイミド共重合体(重量比55/22/23)(PSAMLと略す)に代えた以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。引き続き、紡糸速度を2500m/分とした以外は実施例1と同様の方法にて紡糸し未延伸糸を得た。得られた未延伸糸の繊維物性を評価し、表1に示した。なお、紡糸機からの放流ポリマー中でのPSAMLの平均分散粒径は0.24μmで、紡糸時のトラブルもなかった。また200〜250℃でのポリエステルに対するPSAMLの剛性率比は表1に示した。なお、PSAMLの剛性率G(a)と本実施例におけるポリエステルと同一極限粘度を有するPSAMLを添加していないポリエステルの剛性率G(b)との剛性率比は225℃で最大44(G(a)=18.4MPa、G(b)=0.420MPa)、200℃で最小33(G(a)=56.7MPa、G(b)=1.70MPa)であった。
【0036】
実施例2と比較例1とを比べると、実施例2で得られた未延伸糸の繊維物性は、比較例1で得られた未延伸糸と同等であり、実施例2では紡糸速度が2500m/分であるのに対し比較例1では紡糸速度が2000m/分であることから、非相溶ポリマーとしてPSAMLを添加することにより紡糸速度で1.25倍の生産性向上の効果が得られた。
【0039】
実施例3〜4
非相溶ポリマーを添加しない以外は実施例1と同様にしてポリエステルを得た。得られたポリエステルにPSAMHをペレットの形態で紡糸時のポリエステルに添加量を変更して添加した。次いで溶融温度295℃で紡糸孔を36個有する紡糸口金より紡出し、紡糸速度3000m/分で巻き取り、133dtexの未延伸糸を得た。なお、紡糸機からの放流ポリマー中でのPSAMHの平均分散粒径は、PSAMHの添加量が0.5部の場合が0.38μm、0.8部の場合が0.42μmで、紡糸時のトラブルもなかった。得られた未延伸糸の繊維物性を表1に示した。また200〜250℃でのポリエステルに対するPSAMHの剛性率比も表1に示した。なお、PSAMHの剛性率G(a)と本実施例におけるポリエステルと同一極限粘度を有するPSAMHを添加していないポリエステルの剛性率G(b)との剛性率比は240℃で最大82(G(a)=16.6MPa、G(b)=0.203MPa)、200℃で最小54(G(a)=91.2MPa、G(b)=1.70MPa)であった。
【0040】
(比較例2〜3)
非相溶ポリマーを添加しない以外は実施例1と同様にしてポリエステルを得た。得られたポリエステルに非相溶ポリマーを添加せずに紡糸速度を2300m/分、1800m/分にそれぞれ変更して巻き取る以外は実施例3〜4と同様の条件にて未延伸糸を得た。得られた未延伸糸の物性を表1に示した。
【0041】
実施例3と比較例2とを比べると、実施例3で得られた未延伸糸の繊維物性は、比較例2で得られた未延伸糸と同等であり、実施例3では紡糸速度が3000m/分であるのに対し比較例2では紡糸速度が2300m/分であることから、PSAMHの添加により紡糸速度で1.30倍の生産性向上の効果が得られ、また、実施例4と比較例3とを比べると、実施例4で得られた未延伸糸の繊維物性は、比較例3で得られた未延伸糸と同等であり、実施例4では紡糸速度が3000m/分であるのに対し比較例3では紡糸速度が1800m/分であることから、非相溶ポリマーとしてPSAMHを添加することにより紡糸速度で1.67倍の生産性向上の効果が得られた。
【0042】
(比較例4)
PSAMHに代えてガラス転移温度が96℃、数平均分子量が67000のポリスチレン(PSと略す)を0.5部紡糸時に添加したこと以外は、実施例3〜4と同様にして紡糸(紡糸速度3000m/分)し未延伸糸を得た。得られた未延伸糸の物性を表1に示した。また200〜250℃でのポリエステルに対するPSの剛性率比も表1に示した。なお、PSの剛性率G(a)と本比較例におけるポリエステルと同一極限粘度を有するPSを添加していないポリエステルの剛性率G(b)との剛性率比は200℃で最大4(G(a)=6.17MPa、G(b)=1.70MPa)、250℃で最小2(G(a)=0.291MPa、G(b)=0.127MPa)であった。
【0043】
(比較例5)
非相溶ポリマーを添加しない以外は実施例1と同様にしてポリエステルを得た。得られたポリエステルに非相溶ポリマーを添加しない以外は比較例4と同じ紡糸条件にて紡糸し未延伸糸を得た。得られた未延伸糸の物性を表1に示した。
【0044】
比較例4と比較例5とを比べると、比較例4で得られた未延伸糸の繊維物性は、比較例5で得られた未延伸糸と同等であり、比較例4及び比較例5ではともに紡糸速度が3000m/分であることから、PSの添加によっても特段の生産性向上の効果は得られなかった。
【0045】
【表1】
Figure 0003568443
【0046】
【発明の効果】
本発明のポリエステル繊維は、繊維物性が良好で、かつその製糸時の生産性の高いポリエステル繊維であり、また、本発明の製造方法によれば、従来の技術では達成することができなかったポリエステル繊維の生産性向上を達成するものであり、紡糸及び延伸或いは延伸仮撚等を含む製糸工程での糸切れ等のトラブルもなく、紡糸速度を高めて生産性高くポリエステル繊維を得ることができる。

Claims (4)

  1. テレフタル酸を主とするジカルボン酸成分及びエチレングリコールを主とするジオール成分とからなるポリエステルに、200℃から250℃の範囲内での剛性率が該ポリエステルの20倍以上1000倍以下の、スチレン系化合物単位、(メタ)アクリロニトリル単位及びN−置換マレイミド単位を成分とする共重合ポリマーが、ポリエステル100重量部に対し0.01〜10重量部の比で含有されたポリエステルからなり、該共重合ポリマーが、繊維軸に対し平行に伸長した構造を有し、繊維軸に対し垂直方向の繊維横断面において共重合ポリマーのドメインの直径が0.12μm以下で、かつ平行方向の繊維縦断面において共重合ポリマーのドメインの長さが5.5μm以上であることを特徴とするポリエステル繊維。
  2. 共重合ポリマーが、数平均分子量10000〜500000のポリマーである請求項1記載のポリエステル繊維。
  3. 共重合ポリマーが、ガラス転移温度110℃以上、ポリエステルの融点以下のポリマーである請求項1又は請求項2記載のポリエステル繊維。
  4. テレフタル酸を主とするジカルボン酸成分及びエチレングリコールを主とするジオール成分とからなるポリエステルを溶融紡糸してポリエステル繊維を製造するに際し、該ポリエステルの生成中又は生成後の系に、200℃から250℃の範囲内での剛性率が該ポリエステルの20倍以上1000倍以下の、スチレン系化合物単位、(メタ)アクリロニトリル単位及びN−置換マレイミド単位を成分とする共重合ポリマーを、生成ポリエステル100重量部に対し0.01〜10重量部の比で添加することを特徴とするポリエステル繊維の製造方法。
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