JP3567655B2 - ビスカスヒータ - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘性流体をせん断により発熱させ、放熱室内を循環する循環流体に熱交換して暖房熱源に利用するビスカスヒータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、実開平3−98107号公報に能力可変のビスカスヒータが開示されている。このビスカスヒータでは、前部及び後部ハウジングが対設された状態で締結され、内部に発熱室と、この発熱室の外域にウォータジャケットとを形成している。ウォータジャケット内では循環水が入水ポートから取り入れられ、出水ポートから外部の暖房回路へ送り出されるべく循環されている。前部及び後部ハウジングには軸受装置を介して駆動軸が回動可能に支承され、駆動軸には発熱室内で回動可能なロータが固着されている。発熱室の壁面とロータの外面とは互いに近接する軸方向のラビリンス溝を構成し、これら発熱室の壁面とロータの外面との間隙にはシリコーンオイル等の粘性流体が介在される。
【0003】
また、このビスカスヒータの特徴的な構成として、前部及び後部ハウジングの下方には内部にダイアフラムを備えた上下カバーが設けられ、上カバーとダイアフラムとにより制御室が区画されている。発熱室は前部及び後部ハウジングの上端に貫設された貫通孔により大気と連通されているとともに、上下カバーに設けられた連通管により制御室と連通されており、ダイアフラムはマニホールド負圧及びコイルスプリング等により制御室の内部容積を調整可能になされている。
【0004】
車両の暖房装置に組み込まれたこのビスカスヒータでは、駆動軸がエンジンにより駆動されれば、発熱室内でロータが回動するため、粘性流体が発熱室の壁面とロータの外面との間隙でせん断により発熱する。この発熱はウォータジャケット内の循環水に熱交換され、加熱された循環水が暖房回路で車両の暖房に供されることとなる。
【0005】
ここで、このビスカスヒータの能力変化は同公報によれば以下の作用となる。すなわち、暖房が過強である場合、マニホールド負圧でダイアフラムを下方に変位させて制御室の内部容積を拡大する。これにより、発熱室内の粘性流体が制御室内に回収されるため、発熱室の壁面とロータの外面との間隙の発熱量が減少し、暖房が弱められることとなる。逆に、暖房が過弱である場合、気圧調整孔及びコイルスプリングの作用でダイアフラムを上方に変位させて制御室の内部容積を縮小する。これにより、制御室内の粘性流体は発熱室内に送り出されるため、発熱室の壁面とロータの外面との間隙の発熱量が増大し、暖房が強められることとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の能力可変型ビスカスヒータでは、粘性流体を発熱室から制御室内に回収する際、これによる発熱室内の負圧を貫通孔から導かれる新たな空気により相殺している。粘性流体は、こうして能力縮小の度に新たな空気と接触することにより、酸化劣化が進行しやすくなり、また随時空気中の水分が補充される形となって、その水分による悪影響(トルク低下)を受ける。
【0007】
この点、本発明者らの先の提案に係るビスカスヒータ(特願平7−217035号)においては、発熱室を密閉状態としているため、発熱室に介在される粘性流体が新たな空気と接触することはなく、また随時空気中の水分が補充される訳ではないので、劣化や悪影響を受けることはない。
しかしながら、発熱室内の粘性流体は、ロータが回動されたままであれば、液面と直角に回動されることで、軸芯回りに集合するワイセンベルク効果(Weissenberg Effect)を生じる。このワイセンベルク効果は法線応力効果により生じると考えられている。他方、発熱室内の粘性流体は、その間、軸芯から遠ざかる遠心力も生じる。発明者らの試験結果によれば、これらワイセンベルク効果と遠心力による影響とは以下の挙動を示すことが明らかとなった。すなわち、駆動軸の回転数が比較的低い間は、図6(A)に示すように、ワイセンベルク効果Wが支配的であり、ほとんどこのワイセンベルク効果Wにより発熱室内で粘性流体の循環が行われる。そして、駆動軸の回転数が次第に高くなれば、図6(B)、(C)に示すように、遠心力による影響Cが大きくなり、ワイセンベルク効果Wと遠心力による影響Cとにより発熱室内で粘性流体の循環が行われる。そして、駆動軸の回転数が比較的高い間は、図6(D)に示すように、遠心力による影響Cが支配的であり、ほとんどこの遠心力による影響Cにより発熱室内で粘性流体の循環が行われる。
【0008】
ここで、上記提案のビスカスヒータにおいては、発熱室の前部壁面とロータの前部端面との間隙のみによって前部発熱室内の粘性流体が循環され、発熱室の後部壁面とロータの後部端面との間隙のみによって後部発熱室内の粘性流体が循環されることとなるが、発熱量を確保すべくそれらの間隙は非常に小さくされる必要性から、それらの循環が滑らかに行われにくい。この場合、周速の大きい外周域の粘性流体が上限なく高温化しやすく、耐熱限界を超えて劣化し、ひいてはビスカスヒータ全体として長期にわたって安定した発熱効率を確保できない。
【0009】
本発明の課題は、粘性流体が劣化や悪影響を受けることなく、かつ発熱量の確保の観点から発熱室の前後壁面とロータの前後端面との間隙を小さく維持しつつ、前部又は後部発熱室内の粘性流体が良好な循環を行い得るビスカスヒータを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(1)請求項1のビスカスヒータは、内部に発熱室及び該発熱室に隣接して循環流体を循環させる放熱室を形成するハウジングと、該ハウジングに軸受装置を介して回動可能に支承された駆動軸と、該発熱室内で該駆動軸により回動可能に設けられたロータと、該発熱室の壁面と該ロータの外面との間隙に介在され、該ロータの回動により発熱される粘性流体とを有するビスカスヒータにおいて、
前記発熱室は密閉状態とされ、前記ハウジングには前記間隙の容積を超える前記粘性流体を収容可能な貯留室が配設され、該発熱室と該貯留室とは、該発熱室の外周域と接続されて該発熱室内の該粘性流体を該貯留室に回収する回収通路と、該発熱室の中央域と接続されて該貯留室内の該粘性流体を該発熱室に供給する供給通路とにより連通されていることを特徴とする。
【0011】
このビスカスヒータでは、発熱室の外周域と貯留室とが回収通路によって連通されている。発熱室の外周域では中央域に比べて周速が大きいことから粘性流体が熱膨張して高圧になっており、発熱室の外周域と貯留室との圧力差から、発熱室内の粘性流体はその回収通路によって貯留室に速やかに回収される。また、このビスカスヒータでは、発熱室の中央域と貯留室とが供給通路によって連通されている。発熱室の中央域では外周域に比べて周速が小さいことから粘性流体が熱収縮して低圧になっており、発熱室の内周域と貯留室との圧力差から、貯留室内の粘性流体はその供給通路によって発熱室に速やかに供給される。このため、発熱量を確保すべく発熱室の前後壁面とロータの前後端面との間隙を小さく維持しても、前部及び後部発熱室の少なくとも一方において循環が行われる。こうして、周速の大きい外周域の粘性流体は、中央域に循環されて上限なく高温化することが回避されるため、耐熱限界を超えて劣化することはなく、ひいてはビスカスヒータ全体として長期にわたって安定した発熱効率を確保できる。
【0012】
また、このビスカスヒータでは、発熱室が密閉状態であるため、発熱室に介在される粘性流体が新たな気体と接触することはなく、また随時気体中の水分が補充される訳ではないので、劣化や悪影響を受けることはない。
さらに、このビスカスヒータでは、貯留室内に間隙の容積を超える粘性流体を収納可能であることから、せん断される粘性流体の量に余裕を生じ、特定の粘性流体のみを常にせん断することにならないため、粘性流体の劣化遅延を図ることが可能になる。こうして、このビスカスヒータでは、発熱室と貯留室との間で粘性流体を確実に入れ換えつつ、十分な発熱量の発揮と、十分な軸封能力の確保とが実現される。
【0013】
また、このビスカスヒータでは、貯留室が間隙の容積を超える粘性流体を収容可能であるため、粘性流体の厳しい収容量管理が不要となる。
(2)請求項2のビスカスヒータは、請求項1記載のビスカスヒータにおいて、回収通路は、発熱室の開口位置が径方向で異なる複数のものであることを特徴とする。
【0014】
このビスカスヒータでは、駆動軸の回転数が比較的低い間は中央域側の回収通路がワイセンベルク効果を利用し、駆動軸の回転数が高くなれば外周域側の回収通路が遠心力を利用できるため、駆動軸の回転数にかかわらず、発熱室内の粘性流体を貯留室に確実に回収することができる。
(3)請求項3のビスカスヒータは、請求項1又は2記載のビスカスヒータにおいて、発熱室は外周側にロータの前後壁面側を連通させる連通部を有し、外周域の回収通路は該連通部に開放されていることを特徴とする。
【0015】
このビスカスヒータでは、発熱室におけるロータの前後壁面側の粘性流体が連通部により相互に繋がれる。ここで、連通部が粘性流体の循環量の多い発熱室の外周側に位置し、連通部の圧力が発熱室の内周に比べ大きくなっていることから、この傾向は特に駆動軸の回転数が高いことにより遠心力が大きく作用する間に大きい。そして、外周域の回収通路がこの連通部に開放されているため、貯留室が発熱室の前方又は後方に位置する場合でも、ロータの前後壁面側の粘性流体をその貯留室に回収しやすい。
【0016】
(4)請求項4のビスカスヒータは、請求項3記載のビスカスヒータにおいて、発熱室の内壁面及びロータの端面の少なくとも一方には、該発熱室内の粘性流体を内周域から外周域に移送する移送手段が設けられていることを特徴とする。このビスカスヒータでは、発熱室内の粘性流体が移送手段によって内周域から外周域に移送されるため、発熱室の外周域の圧力を高めやすい。このため、粘性流体の循環が行われやすい。
【0017】
(5)請求項5のビスカスヒータは、請求項4記載のビスカスヒータにおいて、移送手段は発熱室の内壁面に凹設された溝部からなり、該溝部は連通部に接続すべく内周側から外周側に延在されていることを特徴とする。
このビスカスヒータは請求項4の手段を具体化したものである。すなわち、このビスカスヒータでは、溝部が内周側から外周側に延在されているため、中央域の粘性流体が効果的に外周域に移送される。そして、粘性流体はひき続き連通部を介して効果的に循環される。
【0018】
(6)請求項6のビスカスヒータは、請求項5記載のビスカスヒータにおいて、回収通路は溝部に開放されていることを特徴とする。
このビスカスヒータでは、溝部内を移送される粘性流体が直接に回収通路に導かれることとなるため、発熱室内の粘性流体がより迅速に貯留室に回収されることとなり、さらに効果的に循環される。
【0019】
(7)請求項7のビスカスヒータは、請求項1、2、3、4、5又は6記載のビスカスヒータにおいて、発熱室と放熱室とは区画部材により区画され、該区画部材には循環流体の流路を区画する隔壁が設けられ、回収通路は該隔壁内に配設されていることを特徴とする。
このビスカスヒータでは、ハウジング内における放熱室の容積を十分に確保することが可能になる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、各請求項記載の発明を具体化した実施形態1、2を図面を参照しつつ説明する。
(実施形態1)
実施形態1のビスカスヒータでは請求項1、3〜7を具体化している。
【0021】
すなわち、このビスカスヒータでは、図1に示すように、前部プレート2と後部プレート3とが間にOリング5を介して前部ハウジング本体1内に収容され、前部ハウジング本体1はOリング6を介して複数本の通しボルト7により後部ハウジング本体4で閉塞されている。ここで、前部プレート2及び後部プレート3が区画部材である。
【0022】
前部プレート2の後端面に円形に凹設された凹部は後部プレート3の前端面とともに発熱室8を形成している。また、前部プレート2の前面外周側には円弧状のフィン2aが前方に突出されているとともに、各フィン2aの両端部間には上方に向かって隔壁としてのリブ2bが延在され、前部プレート2の前面外周側と前部ハウジング本体1の内面外周側とで発熱室8の前部に隣接する前部放熱室としての前部ウォータジャケットFWを形成している。他方、後部プレート3の後面外周側にも、図4にも示すように、円弧状のフィン3eが後方に突出されているとともに、各フィン3eの両端部間には上方に向かって隔壁としてのリブ3fが延在され、後部プレート3の後面外周側と後部ハウジング本体4の内面外周側とで発熱室8の後部に隣接する後部放熱室としての後部ウォータジャケットRWを形成しており、後部プレート3の後面内周側と後部ハウジング本体4の内面内周側とが貯留室SRを形成している。前部ハウジング本体1の外周面には入水ポート1a及び出水ポート1bが隣接して形成され、入水ポート1aと出水ポート1bとは前部及び後部ウォータジャケットFW、RWに連通されている。
【0023】
さらに、図1に示すように、前部プレート2のボス2dには発熱室8に隣接する軸封装置内蔵の軸受装置9が設けられ、前部ハウジング本体1のボス1cにはグリス封入式の軸受装置10が設けられ、これら軸受装置9、10により駆動軸12が回動可能に支承されている。また、前部ハウジング本体1のボス1cには、電磁クラッチMCが装着されている。ここで、電磁クラッチMCでは、ボス1cに軸受装置21を介してプーリ22が回転可能に支承されているとともに、プーリ22内に位置すべく励磁コイル23が設けられている。そして、駆動軸12にボルト24を螺合させるとともにキー25を圧入することによりハブ26が固定され、ハブ26はゴム部材27及びフランジ28を介してアーマチュア29と固定されている。プーリ22は図示しない車両のエンジンによりベルトで回転されるようになっている。
【0024】
駆動軸12の後端部には発熱室8内で回動可能な平板形状のロータ13が圧入されている。ここで、前部プレート2の凹部はロータ13の外径より大きな内径で凹設されているため、発熱室8の内周面はロータ13の外周面とともにロータ13の前後壁面側を連通させる連通部8aを形成している。かかる連通部8aは前部プレート2に凹部を簡易に凹設するだけで形成される。
【0025】
そして、後部プレート3には、図2にも示すように、後部発熱室8側が開口し、後部発熱室8の中央域上方からロータ13の上方外周に向かって直線状に延在する後部移送手段としての後部溝部3dが凹設されている。この後部溝部3dは、ロータ13の径方向に対し、二点鎖線で示すロータ13の回転方向前方側に傾斜されており、ロータ13の外径を超えて延在されているため、その外端が連通部8aに開放されている。また、この後部溝部3dの外端かつロータ13の回転方向前方端には、図1及び図4にも示すように、貯留室SRの上方まで屈曲しつつ貫通する回収通路としての回収孔3aがリブ3f内において貫設されている。こうして、このビスカスヒータでは、後部プレート3及び後部ハウジング本体4内において、後部ウォータジャケットRWの容積を十分に確保している。また、後部プレート3には後部発熱室8の中央域下方から貯留室SRまで貫通する供給通路としての供給孔3bが後端面まで貫設されている。
【0026】
他方、前部プレート2には、図3にも示すように、後部発熱室8側が開口し、前部発熱室8の中央域上方からロータ13の上方外周に向かって直線状に延在する前部移送手段としての前部溝部2cが凹設されている。この前部溝部2cは、ロータ13の径方向に対しロータ13の回転方向前方側に傾斜されており、ロータ13の外径を超えて延在されているため、その外端が連通部8aに開放されている。
【0027】
そして、図1に示す貯留室SR及び発熱室8の壁面とロータ13の外面との間隙には、空気とともに粘性流体としてのシリコーンオイルが介在されている。ここで、このビスカスヒータでは、貯留室SRが間隙の容積を超えるシリコーンオイルを収容可能であるため、シリコーンオイルの厳しい収容量管理が不要となる。
【0028】
車両の暖房装置に組み込まれたこのビスカスヒータでは、駆動軸12が電磁クラッチMCを介してエンジンにより駆動されれば、発熱室8内でロータ13が回動するため、シリコーンオイルが発熱室8の壁面とロータ13の外面との間隙でせん断により発熱される。そして、この発熱は前部及び後部ウォータジャケットFW、RW内の循環流体としての循環水に熱交換され、加熱された循環水が暖房回路で車両の暖房に供されることとなる。
【0029】
この間、このビスカスヒータでは、エンジンの回転数が低いことにより駆動軸12の回転数が比較的低くロータ13が回動されたままであれば、発熱室8内のシリコーンオイルは、遠心力よりも支配的なワイセンベルク効果により、中央域に集合しようとする。特に、上記形状の発熱室8及びロータ13の採用により、シリコーンオイルは軸芯と直角の液面の面積が大きいことから、このワイセンベルク効果を確実に生じることとなる。
【0030】
そして、前部発熱室8の中央域のシリコーンオイルは、図3に示すように、ロータ13の回転により前部溝部2cを介して外周域に移送された後、連通部8aに導かれる。また、後部発熱室8の中央域のシリコーンオイルも、図2に示すように、ロータ13の回転により後部溝部3dを介して外周域に移送された後、連通部8aに導かれる。こうして、発熱室8におけるロータ13の前後壁面側のシリコーンオイルが連通部8aにより相互に繋がれる。ここで、連通部8aがシリコーンオイルの循環量の多い発熱室8の外周側に位置し、連通部8aの圧力が発熱室8の内周に比べ大きくなっていることから、この傾向は特に駆動軸12の回転数が高いことにより遠心力が大きく作用する間に大きい。そして、回収孔3aがこの連通部8aに開放されているため、貯留室SRが発熱室8の後方に位置する場合でも、ロータ13の前後壁面側のシリコーンオイルは直接に回収孔3aに導かれる。ここで、ロータ13の単なる外周域では、シリコーンオイルはその粘性によりロータ13の回動によって発熱室8内に留まろうとするため、回収孔3aを介した回収効率はさほど期待できない。ところが、本実施形態のように連通部8aが外周域のうち最外周に形成されておれば、ロータ13の回動による影響を受け難いため、その回収効率を高めることができる。これにより発熱室8内のシリコーンオイルは、貯留室SRに引き込まれ、迅速に回収される。なお、回収孔3aがリブ3f内に貫設されていることから、高温のシリコーンオイルはこの間を移動する間に後部ウォータジャケットRWに放熱することができる。他方、貯留室SR内のシリコーンオイルは供給孔3bにより発熱室8内に供給される。
【0031】
こうして、このビスカスヒータでは、発熱室8の外周域と中央域とが供給孔3b、貯留室SR、後部溝部3d、前部溝部2c及び回収孔3aによって連通されるため、シリコーンオイルがそれらによって循環される。このため、発熱量を確保すべく発熱室8の前後壁面とロータ13の前後端面との間隙を小さく維持しても、少なくとも後部発熱室8においては循環が滑らかに行われる。こうして、周速の大きい外周域のシリコーンオイルは、中央域に循環されて上限なく高温化することが回避されるため、耐熱限界を超えて劣化することはなく、ひいてはビスカスヒータ全体として長期にわたって安定した発熱効率を確保できる。
【0032】
また、このビスカスヒータでは、貯留室SR内に間隙の容積を超えるシリコーンオイルを収納可能であることから、せん断されるシリコーンオイルの量に余裕を生じ、特定のシリコーンオイルのみを常にせん断することにならないため、シリコーンオイルの劣化遅延を図ることが可能になる。こうして、このビスカスヒータでは、発熱室8と貯留室SRとの間でシリコーンオイルを確実に入れ換えつつ、十分な発熱量の発揮と、十分な軸封能力の確保とが実現される。
【0033】
さらに、このビスカスヒータでは、発熱室8及び貯留室SRが密閉状態であるため、発熱室8及び貯留室SRに介在されるシリコーンオイルが新たな空気と接触することはなく、また随時空気中の水分が補充される訳ではないので、劣化や悪影響を受けることはない。
(実施形態2)
実施形態2のビスカスヒータでは、請求項1〜3、7を具体化している。すなわち、このビスカスヒータでは、図5に示すように、実施形態1と同位置に貫設された外周域の回収通路としての外周回収孔3aの他、中央域の回収通路としての中央回収孔3cとを後部プレート3に貫設している。中央回収孔3cは発熱室8の中央域上方に開口されている。他の構成は実施形態1と同一としている。
【0034】
このビスカスヒータでは、駆動軸12の回転数が比較的低い間は中央回収孔3cがワイセンベルク効果を利用し、駆動軸12の回転数が高くなれば外周回収孔3aが遠心力を利用できるため、駆動軸12の回転数にかかわらず、発熱室8内のシリコーンオイルを貯留室SRに確実に回収することができる。他の作用及び効果は実施形態1と同様である。
【0035】
なお、上記実施形態1、2において、回収孔3a、3c又は及び供給孔3bを開閉可能にして能力可変型としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1のビスカスヒータの縦断面図である。
【図2】実施形態1のビスカスヒータのII−II矢視断面図である。
【図3】実施形態1のビスカスヒータのIII−III矢視断面図である。
【図4】実施形態1のビスカスヒータに係り、後部プレートの後面図である。
【図5】実施形態2のビスカスヒータに係り、図1と同様の縦視断面図である。
【図6】発熱室内の粘性流体の循環のようすを示す模式図である。
【符号の説明】
1、2、3、4…ハウジング(1…前部ハウジング本体、2、3…区画部材(2…前部プレート、3…後部プレート)、4…後部ハウジング本体)
8…発熱室
FW、RW…放熱室(FW…前部ウォータジャケット、RW…後部ウォータジャケット)
9、10…軸受装置
12…駆動軸
13…ロータ
SR…貯留室
3a、3c…回収通路(回収孔(3a…外周回収孔、3c…中央回収孔))
3b…供給通路(供給孔)
2c、3d…移送手段(溝部(2c…前部溝部、3d…後部溝部)
8a…連通部
2b、3f…隔壁(リブ)
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘性流体をせん断により発熱させ、放熱室内を循環する循環流体に熱交換して暖房熱源に利用するビスカスヒータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、実開平3−98107号公報に能力可変のビスカスヒータが開示されている。このビスカスヒータでは、前部及び後部ハウジングが対設された状態で締結され、内部に発熱室と、この発熱室の外域にウォータジャケットとを形成している。ウォータジャケット内では循環水が入水ポートから取り入れられ、出水ポートから外部の暖房回路へ送り出されるべく循環されている。前部及び後部ハウジングには軸受装置を介して駆動軸が回動可能に支承され、駆動軸には発熱室内で回動可能なロータが固着されている。発熱室の壁面とロータの外面とは互いに近接する軸方向のラビリンス溝を構成し、これら発熱室の壁面とロータの外面との間隙にはシリコーンオイル等の粘性流体が介在される。
【0003】
また、このビスカスヒータの特徴的な構成として、前部及び後部ハウジングの下方には内部にダイアフラムを備えた上下カバーが設けられ、上カバーとダイアフラムとにより制御室が区画されている。発熱室は前部及び後部ハウジングの上端に貫設された貫通孔により大気と連通されているとともに、上下カバーに設けられた連通管により制御室と連通されており、ダイアフラムはマニホールド負圧及びコイルスプリング等により制御室の内部容積を調整可能になされている。
【0004】
車両の暖房装置に組み込まれたこのビスカスヒータでは、駆動軸がエンジンにより駆動されれば、発熱室内でロータが回動するため、粘性流体が発熱室の壁面とロータの外面との間隙でせん断により発熱する。この発熱はウォータジャケット内の循環水に熱交換され、加熱された循環水が暖房回路で車両の暖房に供されることとなる。
【0005】
ここで、このビスカスヒータの能力変化は同公報によれば以下の作用となる。すなわち、暖房が過強である場合、マニホールド負圧でダイアフラムを下方に変位させて制御室の内部容積を拡大する。これにより、発熱室内の粘性流体が制御室内に回収されるため、発熱室の壁面とロータの外面との間隙の発熱量が減少し、暖房が弱められることとなる。逆に、暖房が過弱である場合、気圧調整孔及びコイルスプリングの作用でダイアフラムを上方に変位させて制御室の内部容積を縮小する。これにより、制御室内の粘性流体は発熱室内に送り出されるため、発熱室の壁面とロータの外面との間隙の発熱量が増大し、暖房が強められることとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の能力可変型ビスカスヒータでは、粘性流体を発熱室から制御室内に回収する際、これによる発熱室内の負圧を貫通孔から導かれる新たな空気により相殺している。粘性流体は、こうして能力縮小の度に新たな空気と接触することにより、酸化劣化が進行しやすくなり、また随時空気中の水分が補充される形となって、その水分による悪影響(トルク低下)を受ける。
【0007】
この点、本発明者らの先の提案に係るビスカスヒータ(特願平7−217035号)においては、発熱室を密閉状態としているため、発熱室に介在される粘性流体が新たな空気と接触することはなく、また随時空気中の水分が補充される訳ではないので、劣化や悪影響を受けることはない。
しかしながら、発熱室内の粘性流体は、ロータが回動されたままであれば、液面と直角に回動されることで、軸芯回りに集合するワイセンベルク効果(Weissenberg Effect)を生じる。このワイセンベルク効果は法線応力効果により生じると考えられている。他方、発熱室内の粘性流体は、その間、軸芯から遠ざかる遠心力も生じる。発明者らの試験結果によれば、これらワイセンベルク効果と遠心力による影響とは以下の挙動を示すことが明らかとなった。すなわち、駆動軸の回転数が比較的低い間は、図6(A)に示すように、ワイセンベルク効果Wが支配的であり、ほとんどこのワイセンベルク効果Wにより発熱室内で粘性流体の循環が行われる。そして、駆動軸の回転数が次第に高くなれば、図6(B)、(C)に示すように、遠心力による影響Cが大きくなり、ワイセンベルク効果Wと遠心力による影響Cとにより発熱室内で粘性流体の循環が行われる。そして、駆動軸の回転数が比較的高い間は、図6(D)に示すように、遠心力による影響Cが支配的であり、ほとんどこの遠心力による影響Cにより発熱室内で粘性流体の循環が行われる。
【0008】
ここで、上記提案のビスカスヒータにおいては、発熱室の前部壁面とロータの前部端面との間隙のみによって前部発熱室内の粘性流体が循環され、発熱室の後部壁面とロータの後部端面との間隙のみによって後部発熱室内の粘性流体が循環されることとなるが、発熱量を確保すべくそれらの間隙は非常に小さくされる必要性から、それらの循環が滑らかに行われにくい。この場合、周速の大きい外周域の粘性流体が上限なく高温化しやすく、耐熱限界を超えて劣化し、ひいてはビスカスヒータ全体として長期にわたって安定した発熱効率を確保できない。
【0009】
本発明の課題は、粘性流体が劣化や悪影響を受けることなく、かつ発熱量の確保の観点から発熱室の前後壁面とロータの前後端面との間隙を小さく維持しつつ、前部又は後部発熱室内の粘性流体が良好な循環を行い得るビスカスヒータを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(1)請求項1のビスカスヒータは、内部に発熱室及び該発熱室に隣接して循環流体を循環させる放熱室を形成するハウジングと、該ハウジングに軸受装置を介して回動可能に支承された駆動軸と、該発熱室内で該駆動軸により回動可能に設けられたロータと、該発熱室の壁面と該ロータの外面との間隙に介在され、該ロータの回動により発熱される粘性流体とを有するビスカスヒータにおいて、
前記発熱室は密閉状態とされ、前記ハウジングには前記間隙の容積を超える前記粘性流体を収容可能な貯留室が配設され、該発熱室と該貯留室とは、該発熱室の外周域と接続されて該発熱室内の該粘性流体を該貯留室に回収する回収通路と、該発熱室の中央域と接続されて該貯留室内の該粘性流体を該発熱室に供給する供給通路とにより連通されていることを特徴とする。
【0011】
このビスカスヒータでは、発熱室の外周域と貯留室とが回収通路によって連通されている。発熱室の外周域では中央域に比べて周速が大きいことから粘性流体が熱膨張して高圧になっており、発熱室の外周域と貯留室との圧力差から、発熱室内の粘性流体はその回収通路によって貯留室に速やかに回収される。また、このビスカスヒータでは、発熱室の中央域と貯留室とが供給通路によって連通されている。発熱室の中央域では外周域に比べて周速が小さいことから粘性流体が熱収縮して低圧になっており、発熱室の内周域と貯留室との圧力差から、貯留室内の粘性流体はその供給通路によって発熱室に速やかに供給される。このため、発熱量を確保すべく発熱室の前後壁面とロータの前後端面との間隙を小さく維持しても、前部及び後部発熱室の少なくとも一方において循環が行われる。こうして、周速の大きい外周域の粘性流体は、中央域に循環されて上限なく高温化することが回避されるため、耐熱限界を超えて劣化することはなく、ひいてはビスカスヒータ全体として長期にわたって安定した発熱効率を確保できる。
【0012】
また、このビスカスヒータでは、発熱室が密閉状態であるため、発熱室に介在される粘性流体が新たな気体と接触することはなく、また随時気体中の水分が補充される訳ではないので、劣化や悪影響を受けることはない。
さらに、このビスカスヒータでは、貯留室内に間隙の容積を超える粘性流体を収納可能であることから、せん断される粘性流体の量に余裕を生じ、特定の粘性流体のみを常にせん断することにならないため、粘性流体の劣化遅延を図ることが可能になる。こうして、このビスカスヒータでは、発熱室と貯留室との間で粘性流体を確実に入れ換えつつ、十分な発熱量の発揮と、十分な軸封能力の確保とが実現される。
【0013】
また、このビスカスヒータでは、貯留室が間隙の容積を超える粘性流体を収容可能であるため、粘性流体の厳しい収容量管理が不要となる。
(2)請求項2のビスカスヒータは、請求項1記載のビスカスヒータにおいて、回収通路は、発熱室の開口位置が径方向で異なる複数のものであることを特徴とする。
【0014】
このビスカスヒータでは、駆動軸の回転数が比較的低い間は中央域側の回収通路がワイセンベルク効果を利用し、駆動軸の回転数が高くなれば外周域側の回収通路が遠心力を利用できるため、駆動軸の回転数にかかわらず、発熱室内の粘性流体を貯留室に確実に回収することができる。
(3)請求項3のビスカスヒータは、請求項1又は2記載のビスカスヒータにおいて、発熱室は外周側にロータの前後壁面側を連通させる連通部を有し、外周域の回収通路は該連通部に開放されていることを特徴とする。
【0015】
このビスカスヒータでは、発熱室におけるロータの前後壁面側の粘性流体が連通部により相互に繋がれる。ここで、連通部が粘性流体の循環量の多い発熱室の外周側に位置し、連通部の圧力が発熱室の内周に比べ大きくなっていることから、この傾向は特に駆動軸の回転数が高いことにより遠心力が大きく作用する間に大きい。そして、外周域の回収通路がこの連通部に開放されているため、貯留室が発熱室の前方又は後方に位置する場合でも、ロータの前後壁面側の粘性流体をその貯留室に回収しやすい。
【0016】
(4)請求項4のビスカスヒータは、請求項3記載のビスカスヒータにおいて、発熱室の内壁面及びロータの端面の少なくとも一方には、該発熱室内の粘性流体を内周域から外周域に移送する移送手段が設けられていることを特徴とする。このビスカスヒータでは、発熱室内の粘性流体が移送手段によって内周域から外周域に移送されるため、発熱室の外周域の圧力を高めやすい。このため、粘性流体の循環が行われやすい。
【0017】
(5)請求項5のビスカスヒータは、請求項4記載のビスカスヒータにおいて、移送手段は発熱室の内壁面に凹設された溝部からなり、該溝部は連通部に接続すべく内周側から外周側に延在されていることを特徴とする。
このビスカスヒータは請求項4の手段を具体化したものである。すなわち、このビスカスヒータでは、溝部が内周側から外周側に延在されているため、中央域の粘性流体が効果的に外周域に移送される。そして、粘性流体はひき続き連通部を介して効果的に循環される。
【0018】
(6)請求項6のビスカスヒータは、請求項5記載のビスカスヒータにおいて、回収通路は溝部に開放されていることを特徴とする。
このビスカスヒータでは、溝部内を移送される粘性流体が直接に回収通路に導かれることとなるため、発熱室内の粘性流体がより迅速に貯留室に回収されることとなり、さらに効果的に循環される。
【0019】
(7)請求項7のビスカスヒータは、請求項1、2、3、4、5又は6記載のビスカスヒータにおいて、発熱室と放熱室とは区画部材により区画され、該区画部材には循環流体の流路を区画する隔壁が設けられ、回収通路は該隔壁内に配設されていることを特徴とする。
このビスカスヒータでは、ハウジング内における放熱室の容積を十分に確保することが可能になる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、各請求項記載の発明を具体化した実施形態1、2を図面を参照しつつ説明する。
(実施形態1)
実施形態1のビスカスヒータでは請求項1、3〜7を具体化している。
【0021】
すなわち、このビスカスヒータでは、図1に示すように、前部プレート2と後部プレート3とが間にOリング5を介して前部ハウジング本体1内に収容され、前部ハウジング本体1はOリング6を介して複数本の通しボルト7により後部ハウジング本体4で閉塞されている。ここで、前部プレート2及び後部プレート3が区画部材である。
【0022】
前部プレート2の後端面に円形に凹設された凹部は後部プレート3の前端面とともに発熱室8を形成している。また、前部プレート2の前面外周側には円弧状のフィン2aが前方に突出されているとともに、各フィン2aの両端部間には上方に向かって隔壁としてのリブ2bが延在され、前部プレート2の前面外周側と前部ハウジング本体1の内面外周側とで発熱室8の前部に隣接する前部放熱室としての前部ウォータジャケットFWを形成している。他方、後部プレート3の後面外周側にも、図4にも示すように、円弧状のフィン3eが後方に突出されているとともに、各フィン3eの両端部間には上方に向かって隔壁としてのリブ3fが延在され、後部プレート3の後面外周側と後部ハウジング本体4の内面外周側とで発熱室8の後部に隣接する後部放熱室としての後部ウォータジャケットRWを形成しており、後部プレート3の後面内周側と後部ハウジング本体4の内面内周側とが貯留室SRを形成している。前部ハウジング本体1の外周面には入水ポート1a及び出水ポート1bが隣接して形成され、入水ポート1aと出水ポート1bとは前部及び後部ウォータジャケットFW、RWに連通されている。
【0023】
さらに、図1に示すように、前部プレート2のボス2dには発熱室8に隣接する軸封装置内蔵の軸受装置9が設けられ、前部ハウジング本体1のボス1cにはグリス封入式の軸受装置10が設けられ、これら軸受装置9、10により駆動軸12が回動可能に支承されている。また、前部ハウジング本体1のボス1cには、電磁クラッチMCが装着されている。ここで、電磁クラッチMCでは、ボス1cに軸受装置21を介してプーリ22が回転可能に支承されているとともに、プーリ22内に位置すべく励磁コイル23が設けられている。そして、駆動軸12にボルト24を螺合させるとともにキー25を圧入することによりハブ26が固定され、ハブ26はゴム部材27及びフランジ28を介してアーマチュア29と固定されている。プーリ22は図示しない車両のエンジンによりベルトで回転されるようになっている。
【0024】
駆動軸12の後端部には発熱室8内で回動可能な平板形状のロータ13が圧入されている。ここで、前部プレート2の凹部はロータ13の外径より大きな内径で凹設されているため、発熱室8の内周面はロータ13の外周面とともにロータ13の前後壁面側を連通させる連通部8aを形成している。かかる連通部8aは前部プレート2に凹部を簡易に凹設するだけで形成される。
【0025】
そして、後部プレート3には、図2にも示すように、後部発熱室8側が開口し、後部発熱室8の中央域上方からロータ13の上方外周に向かって直線状に延在する後部移送手段としての後部溝部3dが凹設されている。この後部溝部3dは、ロータ13の径方向に対し、二点鎖線で示すロータ13の回転方向前方側に傾斜されており、ロータ13の外径を超えて延在されているため、その外端が連通部8aに開放されている。また、この後部溝部3dの外端かつロータ13の回転方向前方端には、図1及び図4にも示すように、貯留室SRの上方まで屈曲しつつ貫通する回収通路としての回収孔3aがリブ3f内において貫設されている。こうして、このビスカスヒータでは、後部プレート3及び後部ハウジング本体4内において、後部ウォータジャケットRWの容積を十分に確保している。また、後部プレート3には後部発熱室8の中央域下方から貯留室SRまで貫通する供給通路としての供給孔3bが後端面まで貫設されている。
【0026】
他方、前部プレート2には、図3にも示すように、後部発熱室8側が開口し、前部発熱室8の中央域上方からロータ13の上方外周に向かって直線状に延在する前部移送手段としての前部溝部2cが凹設されている。この前部溝部2cは、ロータ13の径方向に対しロータ13の回転方向前方側に傾斜されており、ロータ13の外径を超えて延在されているため、その外端が連通部8aに開放されている。
【0027】
そして、図1に示す貯留室SR及び発熱室8の壁面とロータ13の外面との間隙には、空気とともに粘性流体としてのシリコーンオイルが介在されている。ここで、このビスカスヒータでは、貯留室SRが間隙の容積を超えるシリコーンオイルを収容可能であるため、シリコーンオイルの厳しい収容量管理が不要となる。
【0028】
車両の暖房装置に組み込まれたこのビスカスヒータでは、駆動軸12が電磁クラッチMCを介してエンジンにより駆動されれば、発熱室8内でロータ13が回動するため、シリコーンオイルが発熱室8の壁面とロータ13の外面との間隙でせん断により発熱される。そして、この発熱は前部及び後部ウォータジャケットFW、RW内の循環流体としての循環水に熱交換され、加熱された循環水が暖房回路で車両の暖房に供されることとなる。
【0029】
この間、このビスカスヒータでは、エンジンの回転数が低いことにより駆動軸12の回転数が比較的低くロータ13が回動されたままであれば、発熱室8内のシリコーンオイルは、遠心力よりも支配的なワイセンベルク効果により、中央域に集合しようとする。特に、上記形状の発熱室8及びロータ13の採用により、シリコーンオイルは軸芯と直角の液面の面積が大きいことから、このワイセンベルク効果を確実に生じることとなる。
【0030】
そして、前部発熱室8の中央域のシリコーンオイルは、図3に示すように、ロータ13の回転により前部溝部2cを介して外周域に移送された後、連通部8aに導かれる。また、後部発熱室8の中央域のシリコーンオイルも、図2に示すように、ロータ13の回転により後部溝部3dを介して外周域に移送された後、連通部8aに導かれる。こうして、発熱室8におけるロータ13の前後壁面側のシリコーンオイルが連通部8aにより相互に繋がれる。ここで、連通部8aがシリコーンオイルの循環量の多い発熱室8の外周側に位置し、連通部8aの圧力が発熱室8の内周に比べ大きくなっていることから、この傾向は特に駆動軸12の回転数が高いことにより遠心力が大きく作用する間に大きい。そして、回収孔3aがこの連通部8aに開放されているため、貯留室SRが発熱室8の後方に位置する場合でも、ロータ13の前後壁面側のシリコーンオイルは直接に回収孔3aに導かれる。ここで、ロータ13の単なる外周域では、シリコーンオイルはその粘性によりロータ13の回動によって発熱室8内に留まろうとするため、回収孔3aを介した回収効率はさほど期待できない。ところが、本実施形態のように連通部8aが外周域のうち最外周に形成されておれば、ロータ13の回動による影響を受け難いため、その回収効率を高めることができる。これにより発熱室8内のシリコーンオイルは、貯留室SRに引き込まれ、迅速に回収される。なお、回収孔3aがリブ3f内に貫設されていることから、高温のシリコーンオイルはこの間を移動する間に後部ウォータジャケットRWに放熱することができる。他方、貯留室SR内のシリコーンオイルは供給孔3bにより発熱室8内に供給される。
【0031】
こうして、このビスカスヒータでは、発熱室8の外周域と中央域とが供給孔3b、貯留室SR、後部溝部3d、前部溝部2c及び回収孔3aによって連通されるため、シリコーンオイルがそれらによって循環される。このため、発熱量を確保すべく発熱室8の前後壁面とロータ13の前後端面との間隙を小さく維持しても、少なくとも後部発熱室8においては循環が滑らかに行われる。こうして、周速の大きい外周域のシリコーンオイルは、中央域に循環されて上限なく高温化することが回避されるため、耐熱限界を超えて劣化することはなく、ひいてはビスカスヒータ全体として長期にわたって安定した発熱効率を確保できる。
【0032】
また、このビスカスヒータでは、貯留室SR内に間隙の容積を超えるシリコーンオイルを収納可能であることから、せん断されるシリコーンオイルの量に余裕を生じ、特定のシリコーンオイルのみを常にせん断することにならないため、シリコーンオイルの劣化遅延を図ることが可能になる。こうして、このビスカスヒータでは、発熱室8と貯留室SRとの間でシリコーンオイルを確実に入れ換えつつ、十分な発熱量の発揮と、十分な軸封能力の確保とが実現される。
【0033】
さらに、このビスカスヒータでは、発熱室8及び貯留室SRが密閉状態であるため、発熱室8及び貯留室SRに介在されるシリコーンオイルが新たな空気と接触することはなく、また随時空気中の水分が補充される訳ではないので、劣化や悪影響を受けることはない。
(実施形態2)
実施形態2のビスカスヒータでは、請求項1〜3、7を具体化している。すなわち、このビスカスヒータでは、図5に示すように、実施形態1と同位置に貫設された外周域の回収通路としての外周回収孔3aの他、中央域の回収通路としての中央回収孔3cとを後部プレート3に貫設している。中央回収孔3cは発熱室8の中央域上方に開口されている。他の構成は実施形態1と同一としている。
【0034】
このビスカスヒータでは、駆動軸12の回転数が比較的低い間は中央回収孔3cがワイセンベルク効果を利用し、駆動軸12の回転数が高くなれば外周回収孔3aが遠心力を利用できるため、駆動軸12の回転数にかかわらず、発熱室8内のシリコーンオイルを貯留室SRに確実に回収することができる。他の作用及び効果は実施形態1と同様である。
【0035】
なお、上記実施形態1、2において、回収孔3a、3c又は及び供給孔3bを開閉可能にして能力可変型としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1のビスカスヒータの縦断面図である。
【図2】実施形態1のビスカスヒータのII−II矢視断面図である。
【図3】実施形態1のビスカスヒータのIII−III矢視断面図である。
【図4】実施形態1のビスカスヒータに係り、後部プレートの後面図である。
【図5】実施形態2のビスカスヒータに係り、図1と同様の縦視断面図である。
【図6】発熱室内の粘性流体の循環のようすを示す模式図である。
【符号の説明】
1、2、3、4…ハウジング(1…前部ハウジング本体、2、3…区画部材(2…前部プレート、3…後部プレート)、4…後部ハウジング本体)
8…発熱室
FW、RW…放熱室(FW…前部ウォータジャケット、RW…後部ウォータジャケット)
9、10…軸受装置
12…駆動軸
13…ロータ
SR…貯留室
3a、3c…回収通路(回収孔(3a…外周回収孔、3c…中央回収孔))
3b…供給通路(供給孔)
2c、3d…移送手段(溝部(2c…前部溝部、3d…後部溝部)
8a…連通部
2b、3f…隔壁(リブ)
Claims (7)
- 内部に発熱室及び該発熱室に隣接して循環流体を循環させる放熱室を形成するハウジングと、該ハウジングに軸受装置を介して回動可能に支承された駆動軸と、該発熱室内で該駆動軸により回動可能に設けられたロータと、該発熱室の壁面と該ロータの外面との間隙に介在され、該ロータの回動により発熱される粘性流体とを有するビスカスヒータにおいて、
前記発熱室は密閉状態とされ、前記ハウジングには前記間隙の容積を超える前記粘性流体を収容可能な貯留室が配設され、該発熱室と該貯留室とは、該発熱室の外周域と接続されて該発熱室内の該粘性流体を該貯留室に回収する回収通路と、該発熱室の中央域と接続されて該貯留室内の該粘性流体を該発熱室に供給する供給通路とにより連通されていることを特徴とするビスカスヒータ。 - 回収通路は、発熱室の開口位置が径方向で異なる複数のものであることを特徴とする請求項1記載のビスカスヒータ。
- 発熱室は外周側にロータの前後壁面側を連通させる連通部を有し、外周域の回収通路は該連通部に開放されていることを特徴とする請求項1又は2記載のビスカスヒータ。
- 発熱室の内壁面及びロータの端面の少なくとも一方には、該発熱室内の粘性流体を内周域から外周域に移送する移送手段が設けられていることを特徴とする請求項3記載のビスカスヒータ。
- 移送手段は発熱室の内壁面に凹設された溝部からなり、該溝部は連通部に接続すべく内周側から外周側に延在されていることを特徴とする請求項4記載のビスカスヒータ。
- 回収通路は溝部に開放されていることを特徴とする請求項5記載のビスカスヒータ。
- 発熱室と放熱室とは区画部材により区画され、該区画部材には循環流体の流路を区画する隔壁が設けられ、回収通路は該隔壁内に配設されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のビスカスヒータ。
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