JP3564916B2 - ビスカスヒータ - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハウジング内に区画された発熱室及び放熱室を備え、駆動軸に作動連結されたロータを、粘性流体を収容した発熱室内で回転させて粘性流体の剪断作用に基づく熱を発生させ、その熱を放熱室を流れる循環流体に熱交換するビスカスヒータに関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
本件出願人は、車載用の補助熱源として、車両のエンジンの駆動力を利用するビスカスヒータを種々提案している。例えば、ハウジング内に区画された発熱室及びウォータジャケット(放熱室)、並びに、駆動軸を介してエンジンに作動連結されたロータを備え、このロータにより発熱室内に収容された粘性流体(例えば、高粘性シリコーンオイル)を剪断して流体摩擦に基づく熱を発生させ、その熱でウォータジャケットを流れる循環流体(例えば、エンジン冷却水)を加熱するビスカスヒータがある。
【0003】
この種のビスカスヒータでは略円盤状のロータを採用することが多く、ロータ軸芯付近のロータ中心部よりも、軸芯から離れたロータの外周部ほど粘性流体の剪断速度が大きくなる。このため、ロータ中心部が位置する発熱室の中心域にある粘性流体の温度よりも、ロータ外周部あたりの発熱室の周域における粘性流体の温度の方が高くなる傾向にある。そして、粘性流体がその耐熱限界を超えるほど過度の高温に達すると、粘性流体が急速に劣化し、剪断による発熱作用を発揮することができなくなる。このように、この種のビスカスヒータは、ロータの形状により程度の差こそあれ、発熱室の周域における粘性流体の局部劣化という問題を内包している。
【0004】
また、ビスカスヒータが運転されると、発熱室で生じる熱のために、発熱室内に配設される駆動軸及びロータが熱膨張する。かかる熱膨張にもかかわらず、両者の圧入固定状態を維持するためにロータの構成材料は駆動軸と同じ材料(例えば、炭素鋼:熱伝導率35〜60W/(mK))が用いられることが多い。しかしながら、炭素鋼よりなるロータは、成形加工や切削加工がしにくく、また、製品の軽量化にも不都合である。
【0005】
この発明の目的は、発熱室内における粘性流体の過加熱による劣化を未然に防止して、優れた発熱性能を持続的に発揮することができると共に、加工性を高め軽量化を実現したロータを装着したビスカスヒータを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、ハウジングと、該ハウジング内に区画された発熱室及び放熱室と、前記発熱室内に回動可能に設けられた駆動軸及びロータとを備え、前記発熱室内に収納された粘性流体を前記ロータで剪断することにより発生した熱を前記放熱室内の循環流体に熱交換するビスカスヒータにおいて、前記ロータは、熱伝導率が100W/(mK)以上の材料で構成されることをその要旨とする。
【0007】
このビスカスヒータに装着されるロータの構成材料は、熱伝導率100W/(mK)以上の比較的に熱伝導率の高い材料が採用される。従って、ロータ自体が伝熱体としての役割を果たすため、発熱室の中心域と周域との間に生じる温度格差が緩和され、発熱室内の温度均一化に貢献する。故に、過加熱を原因とする粘性流体の局部劣化が未然に防止され、期待される発熱能力が持続的に発揮される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のビスカスヒータにおいて、熱伝導率が100W/(mK)以上の材料は、アルミニウム系金属であることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、例えば、炭素鋼等を用いる場合に比べて、成形加工性や切削加工性の向上が実現されると共に、ロータの軽量化が達成される。尚、アルミニウム系金属とは、純アルミニウムとアルミニウム含有合金とを含む概念であり、その具体例は後述する。また、アルミニウム系金属の熱伝導率は、100〜222W/(mK)の範囲にある。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のビスカスヒータにおいて、前記ロータには、当該ロータを前記駆動軸に圧入固定するためのボス部が一体形成されていることを特徴とする。
【0011】
ロータの構成材料(例えば、アルミニウム系金属)の熱膨張率が、駆動軸の構成材料(例えば、炭素鋼)の熱膨張率を上回る場合、発熱時にはロータの方が膨張傾向となるものの、ロータが駆動軸に圧入固定されることと、ボス部の一体形成に伴って駆動軸とロータとの締めしろ(接触面積)が大きく確保されることの相乗効果により、駆動軸に対するロータの締め付け力は過度に弱まらない。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のビスカスヒータにおいて、前記ロータは、駆動軸と直交する方向を半径方向とする略円盤形状をなしていることを特徴とする。
【0013】
このように、駆動軸と直交する方向(半径方向)に広がる円盤型ロータを採用した場合には、発熱室の内部形状もそれに応じて半径方向に広がるため、発熱室の中心域と周域との温度格差を是正することの必要性が大きいという事情があり、この点で本発明の意義が特に認められる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態について図1及び図2に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すように、ビスカスヒータの外郭は前部ハウジング本体1及び後部ハウジング本体2によって構成されている。前部ハウジング本体1は、前方(図示左方)に向かって突出した中空筒状のボス部1aと、該ボス部1aの基端部から後方に向かって大きく碗形状に延在した円筒部1bとを有している。後部ハウジング本体2は、前記円筒部1bの開口側を覆う蓋形状とされている。前部ハウジング本体1と後部ハウジング本体2とは、前部ハウジング本体1の円筒部1b内に一対の前部区画プレート5及び後部区画プレート6を内装しつつ、複数本のボルト3によって締結されている。このように、ビスカスヒータのハウジングは、前部ハウジング本体1、後部ハウジング本体2、前部区画プレート5及び後部区画プレート6から構成されている。
【0016】
前部区画プレート5と後部区画プレート6とはそれぞれ、その外周部に環状のリム部5a,6aを有している。これらリム部5a,6aを相互連結される両ハウジング本体1,2の対向壁面間に挟着することにより、両ハウジング本体1,2内に両区画プレート5,6が移動不能に収納されている。また、前部区画プレート5の後端側はそのリム部5aに対して凹んだ形状となっており、両区画プレート5,6の相互接合によって両者間には発熱室7が形成される。
【0017】
前部区画プレート5は、その前端側において、その中央部に形成された支持筒部5bと、当該支持筒部5bの外側に沿って周方向に延びる同心円弧状に形成された複数のガイドフィン5cとを有している。前部区画プレート5は、支持筒部5bの一部が前部ハウジング本体1の内壁部と密接するように、前部ハウジング本体1内に嵌め込まれている。この結果、前部ハウジング本体1の内壁部と前部区画プレート5の本体部との間には、発熱室7の前側に隣接する放熱室としての円環状の前部ウォータジャケット8が区画される。この前部ウォータジャケット8内において、前記リム部5a、支持筒部5b及びガイドフィン5cは、循環流体としての循環水の流れをガイドするガイド壁の役目を果たし、前側放熱室内における循環水の流通経路を設定する。
【0018】
後部区画プレート6は、その後端側において、その中央部に形成された筒部6bと、当該筒部6bの外側に沿って周方向にのびる同心円弧状に形成された複数のガイドフィン6cとを有している。後部区画プレート6が前部区画プレート5と共に前部ハウジング本体1内に嵌め込まれた状態では、後部区画プレート6の筒部6bが後部ハウジング本体2の環状壁2aと密接する。この結果、後部ハウジング本体2と後部区画プレート6の本体部との間には、発熱室7の後側に隣接する放熱室としての円環状の後部ウォータジャケット9、及び、筒部6b内側に位置する貯留室としての副オイル室10が区画される。この後部ウォータジャケット9内において、前記リム部6a,筒部6b及びガイドフィン6cは、循環流体としての循環水の流れをガイドするガイド壁の役目を果たし、後側放熱室内における循環水の流通経路を設定する。
【0019】
また、前部ハウジング本体1の側壁部には、車両内に設けられた暖房回路(図示略)から前部及び後部ウォータジャケット8,9の各々に循環水を取り入れる入水ポート(図示略)と、前部及び後部ウォータジャケット8,9から循環水を前記暖房回路に送り出す出水ポート(図示略)とが並設されている。
【0020】
図1に示すように、前部ハウジング本体1及び前部区画プレート5には、軸受け11及びシール付き軸受け12を介して駆動軸13が回動可能に支承されている。シール付き軸受け12は、前部区画プレート5の支持筒部5bの内周面と、駆動軸13の外周面との間に介在され、発熱室7の前方を封止している。
【0021】
駆動軸13の後端部には、発熱室7内に収容されるロータ14が一体回転可能に圧入固定されている。ロータ14は、略円盤形状をなしており、平円板状の本体部14aと、当該本体部14aの中央に位置するボス部14bとからなる。平円板状の本体部14aは、全体にわたり均一な厚みを有する。ボス部14bの厚み(軸方向長さ)は、前記本体部14aよりも厚く、その追加厚み分だけボス部14bは前方に向かって突出している。また、ボス部14b中央の孔の内半径(即ち、駆動軸13の半径)をr1、ボス部14bの半径をr2とすると、ボス部14bの半径方向における厚みは、(r2−r1)で表される。この半径方向の厚み(r2−r1)は、ボス部14bの軸方向の長さLをL=r1としたときには、駆動軸13の半径r1の0.9〜1.2倍範囲となるように設定されている。ロータ14の周縁近傍には前後に貫通する複数のロータ連通孔14cが形成されている。これらロータ連通孔14cは、駆動軸13の中心軸線から等距離の位置において、駆動軸13を取り囲んで等角度間隔にて配置されている。
【0022】
後部区画プレート6の筒部6bと後部ハウジング本体2の後端壁とによって囲まれる領域には、貯留室としての副オイル室10が提供されている。後部区画プレート6は、その本体部を前後に貫通する回収通路としての上側連通孔6d及び供給通路としての下側連通孔6e、並びに、該区画プレート6の前面において半径方向に延びる誘導溝6fを有している。発熱室7と副オイル室10とは、上側及び下側連通孔6d,6eを介して相互に連通する。尚、下側連通孔6eの連通断面積は、上側連通孔6dのそれよりも大きく設定されている。
【0023】
下側及び上側連通孔6e,6dを介して相互に連通する発熱室7と副オイル室10とは、ヒータのハウジング内において液密な内部空間を形成する。この内部空間には、粘性流体としてのシリコーンオイルが所要量入れられている。シリコーンオイルの量は、その常温時充填率が前記内部空間内の空き容積に対して、5〜8割となるように決められている。かかる充填量にもかかわらず、ロータ14の回転時にはシリコーンオイルの伸張粘性のためにシリコーンオイルが下側連通孔6e及び誘導溝6fを介して副オイル室10から引き出されて発熱室7の内壁面とロータ14の外面との間の微少なクリアランスの全体に万遍なく行き渡る。尚、シリコーンオイルの充填時において、回収通路としての上側連通孔6dは、副オイル室10内に貯留されたシリコーンオイルの液位よりも上方に位置し、供給通路としての下側連通孔6eは当該液位よりも下方に位置する。
【0024】
駆動軸13の前端部にはボルト15によってプーリ16が固着されている。プーリ16はその外周部に巻き掛けられるVベルト(図示略)を介して、外部駆動源としての車両のエンジンと駆動連結される。
【0025】
次に、このビスカスヒータの機械的な作用を説明する。エンジンの起動前、即ち駆動軸13の停止時において、発熱室7と副オイル室10とにおけるシリコーンオイル(粘性流体)の液位は等しい。故に、駆動軸13の起動時にはロータ14の粘性流体との接触面積は小さく、小さなトルクで、プーリ16、駆動軸13及びロータ14を起動することができる。プーリ16を介してのエンジンの駆動力によって駆動軸13と共にロータ14が一体回転されるに伴い、シリコーンオイルが発熱室7の内壁面とロータ14の外面との間隙において剪断されて発熱する。発熱室7で生じた熱は、各区画プレート5,6を介して前部及び後部ウォータジャケット8,9を流れる循環水に熱交換される。加熱された循環水は、暖房回路(図示略)を介して車室内の暖房等に供される。
【0026】
このビスカスヒータでは、副オイル室10は上側連通孔6dを介して発熱室7の中央域と連通すると共に、ロータ14の回転によって発熱室7内のシリコーンオイルは駆動軸13に向かって移動する傾向(ワイセンベルク効果)を見せる。このため、シリコーンオイルが上側連通孔6dを介して発熱室7から副オイル室10内に回収される。他方、副オイル室10に回収されたシリコーンオイルの自重と、シリコーンオイルの伸張粘性に起因するロータ14のオイル引き込みから発熱室7にシリコーンオイルが供給される。
【0027】
このように、駆動軸13及びロータ14の駆動時には、発熱室7と副オイル室10との間でシリコーンオイルの入れ替え循環が行われる。この場合、下側連通孔6eは上側連通孔6dよりも大きな連通断面積を有しているため、シリコーンオイルの副オイル室10への回収量よりも発熱室7への供給量の方が多くなる。故に、副オイル室10に貯留されていたシリコーンオイルは、誘導溝6fを経由して発熱室7の外周域に迅速かつ滑らかに供給され、発熱室7の外周域に供給されたシリコーンオイルは、ワイセンベルク効果により迅速に発熱室7の中央域に達するので、発熱室7の内壁面とロータ14の外面との間のクリアランスの全域にシリコーンオイルが万遍なく行き渡る。
【0028】
また、上側連通孔6dを介して発熱室7から副オイル室10内に回収されたシリコーンオイルは、入れ替え循環のサイクルタイムに応じた一定時間だけ、副オイル室10に滞在する。発熱室7から回収直後のシリコーンオイルは高温状態にあるが、副オイル室10での滞在中にその熱量の一部を副オイル室10の区画部材(後部区画プレート6)に伝達することで、シリコーンオイルは熱を奪われる。その結果、高温のシリコーンオイルは冷却(除熱)されて長時間の熱保持による劣化から守られる。
【0029】
本実施形態の特徴は、ロータ14の構成材料として、熱伝導率が比較的に高い材料を用いたことにある。以下、本実施形態において使用可能な材料を例示する。尚、以下に示す各材料の熱伝導率T(W/(mK))は、日本機械学会編「機械工学便覧」B4材料学工業材料からの引用である。
【0030】
ロータ14に用い得る比較的に熱伝導率が高い材料としては、アルミニウム系金属及び銅系金属があげられる。特に、好ましいアルミニウム系金属としては、工業用純アルミニウム(例:A1100−H18(Alが99重量%以上),T=222W/(mK))、ジュラルミン(例:A2017−T4(Al−4.0Cu−0.6Mg−0.5Si−0.6Mn),T=201W/(mK))、アルミニウム鋳物用合金(例:AC4CH−T6(Al−7.0Si−0.3Mg),T=151W/(mK))、アルミニウムダイカスト用合金(例:ADC12(Al−11Si−2.5Cu),T=100W/(mK))があげられる。また、好ましい銅系金属としては、銅の純度が99.9重量%以上のもの、例えば、無酸素銅(例:C1020,T=384W/(mK))やタフピッチ銅(例:C1100,384W/(mK))があげられる。尚、銅系金属が採用される場合、アルミニウム系金属に比べ熱伝導率がさらに高いため、発熱室7内の温度均一化に大きく寄与するという長所を有する一方、アルミニウム系金属が採用される場合には、発熱室7内の温度均一化と共に、ロータ14の軽量化や加工性の向上に寄与するという長所を有する。
【0031】
図2のグラフは、発熱室7内のオイル温度分布について、ロータ14を構成する材料に炭素鋼を採用した場合と、アルミニウム系金属を採用した場合とを比較した結果を示す。このグラフからわかるように、熱伝導率が相対的に低い炭素鋼を用いた場合、ロータ14の中心からの距離rが小さい領域(発熱室7の中心域)とロータ14の中心からの距離rが大きい領域(発熱室7の周域)との間で相当大きな温度格差が生じる。これに対し、熱伝導率が炭素鋼よりも大きいアルミニウム系金属を用いた場合、発熱室7の中心域と周域とで温度差があまり生じない。これは、ロータ14自体が良熱伝導体となって、発熱室7の周域の熱量を発熱室7の中心域に伝え、発熱室7全体の温度均一化に貢献するためである。
【0032】
以下に本実施形態の効果について説明する。
○ 駆動軸13及びロータ14の回転時においては、発熱室7の中心域にあるシリコーンオイルの温度よりも、発熱室7の周域におけるシリコーンオイルの温度の方が高くなる傾向にある。しかし、本実施形態におけるロータ14は、熱伝導率の高い材料から構成される。このため、ロータ14が伝熱体としての役割を果たし、発熱室7の周域の温度を低減する結果、発熱室7でのロータ14半径方向におけるシリコーンオイルの温度格差を緩和することができる。従って、シリコーンオイルの局所(特に周域)における過熱が抑制され、シリコーンオイルの耐熱限界超過を未然に防止でき、その結果としてシリコーンオイルの劣化を防止することができる。このことは、ビスカスヒータの寿命(耐久性)を延ばすことに繋がる。
【0033】
○ ロータ14はアルミニウム系金属により構成されているため、炭素鋼等を用いる場合に比べて、成形加工や切削加工が簡易となる。また、ロータ14の重量低減化にも寄与することができる。ちなみに、炭素鋼よりなるロータ14と比較した場合、アルミニウム系金属製のロータ14の重量は、炭素鋼製のロータ14の約3分の1の重量になる。
【0034】
○ 駆動軸13は炭素鋼からなり、炭素鋼の熱膨張係数は、アルミニウム系金属の熱膨張係数よりも小さい。このため、発熱時には、駆動軸13よりもロータ14の方が熱膨張傾向が大きい。しかし、ロータ14は、駆動軸13に対して圧入により固定されていることと、ロータ14に形成されたボス部14bによって、駆動軸13とロータ14との締めしろ(接触面積)を大きく確保していることのために、駆動軸13に対するロータ14の締め付け力が過度に緩むことがない。
【0035】
○ 発熱室7以外の副オイル室10にシリコーンオイルを追加収容することができ、ロータ14の剪断に供されるシリコーンオイルの量に余裕が生じる。また、ヒータの作動時には、発熱室7と副オイル室10との間でシリコーンオイルを入れ替え循環させることができる。従って、特定のシリコーンオイルのみが常に剪断される状況を回避しながら、シリコーンオイルの一部を休ませつつ使用することができるため、シリコーンオイルの熱劣化を防止することができる。
【0036】
尚、「粘性流体」とは、ロータの剪断作用を受けて流体摩擦に基づく熱を発生するあらゆる媒体を意味するものであり、高粘度の液体や半流動体に限定されず、ましてやシリコーンオイルに限定されるものではない。
【0037】
【発明の効果】
各請求項に記載のビスカスヒータによれば、ロータが100W/(mK)以上の熱伝導率が高い材料から構成されることに伴って、ロータ自体が伝熱体としての役割を果たすため、発熱室内でのロータ半径方向における粘性流体の温度均一化に大きく貢献することができる。従って、粘性流体の局所における過熱が抑制され、粘性流体の劣化を防止することができる。故に、ビスカスヒータの寿命(耐久性)を延ばすことができる。また、ロータにアルミニウム系金属を採用した場合、成形加工や切削加工が簡易化し、ロータの重量低減化も達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に従うビスカスヒータの縦断面図。
【図2】発熱室内のオイル温度分布を示すグラフ。
【符号の説明】
1…前部ハウジング本体、2…後部ハウジング本体、7…発熱室、8…放熱室しての前部ウォータジャケット、9…放熱室としての後部ウォータジャケット、13…駆動軸、14…ロータ、14b…ボス部。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハウジング内に区画された発熱室及び放熱室を備え、駆動軸に作動連結されたロータを、粘性流体を収容した発熱室内で回転させて粘性流体の剪断作用に基づく熱を発生させ、その熱を放熱室を流れる循環流体に熱交換するビスカスヒータに関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
本件出願人は、車載用の補助熱源として、車両のエンジンの駆動力を利用するビスカスヒータを種々提案している。例えば、ハウジング内に区画された発熱室及びウォータジャケット(放熱室)、並びに、駆動軸を介してエンジンに作動連結されたロータを備え、このロータにより発熱室内に収容された粘性流体(例えば、高粘性シリコーンオイル)を剪断して流体摩擦に基づく熱を発生させ、その熱でウォータジャケットを流れる循環流体(例えば、エンジン冷却水)を加熱するビスカスヒータがある。
【0003】
この種のビスカスヒータでは略円盤状のロータを採用することが多く、ロータ軸芯付近のロータ中心部よりも、軸芯から離れたロータの外周部ほど粘性流体の剪断速度が大きくなる。このため、ロータ中心部が位置する発熱室の中心域にある粘性流体の温度よりも、ロータ外周部あたりの発熱室の周域における粘性流体の温度の方が高くなる傾向にある。そして、粘性流体がその耐熱限界を超えるほど過度の高温に達すると、粘性流体が急速に劣化し、剪断による発熱作用を発揮することができなくなる。このように、この種のビスカスヒータは、ロータの形状により程度の差こそあれ、発熱室の周域における粘性流体の局部劣化という問題を内包している。
【0004】
また、ビスカスヒータが運転されると、発熱室で生じる熱のために、発熱室内に配設される駆動軸及びロータが熱膨張する。かかる熱膨張にもかかわらず、両者の圧入固定状態を維持するためにロータの構成材料は駆動軸と同じ材料(例えば、炭素鋼:熱伝導率35〜60W/(mK))が用いられることが多い。しかしながら、炭素鋼よりなるロータは、成形加工や切削加工がしにくく、また、製品の軽量化にも不都合である。
【0005】
この発明の目的は、発熱室内における粘性流体の過加熱による劣化を未然に防止して、優れた発熱性能を持続的に発揮することができると共に、加工性を高め軽量化を実現したロータを装着したビスカスヒータを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、ハウジングと、該ハウジング内に区画された発熱室及び放熱室と、前記発熱室内に回動可能に設けられた駆動軸及びロータとを備え、前記発熱室内に収納された粘性流体を前記ロータで剪断することにより発生した熱を前記放熱室内の循環流体に熱交換するビスカスヒータにおいて、前記ロータは、熱伝導率が100W/(mK)以上の材料で構成されることをその要旨とする。
【0007】
このビスカスヒータに装着されるロータの構成材料は、熱伝導率100W/(mK)以上の比較的に熱伝導率の高い材料が採用される。従って、ロータ自体が伝熱体としての役割を果たすため、発熱室の中心域と周域との間に生じる温度格差が緩和され、発熱室内の温度均一化に貢献する。故に、過加熱を原因とする粘性流体の局部劣化が未然に防止され、期待される発熱能力が持続的に発揮される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のビスカスヒータにおいて、熱伝導率が100W/(mK)以上の材料は、アルミニウム系金属であることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、例えば、炭素鋼等を用いる場合に比べて、成形加工性や切削加工性の向上が実現されると共に、ロータの軽量化が達成される。尚、アルミニウム系金属とは、純アルミニウムとアルミニウム含有合金とを含む概念であり、その具体例は後述する。また、アルミニウム系金属の熱伝導率は、100〜222W/(mK)の範囲にある。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のビスカスヒータにおいて、前記ロータには、当該ロータを前記駆動軸に圧入固定するためのボス部が一体形成されていることを特徴とする。
【0011】
ロータの構成材料(例えば、アルミニウム系金属)の熱膨張率が、駆動軸の構成材料(例えば、炭素鋼)の熱膨張率を上回る場合、発熱時にはロータの方が膨張傾向となるものの、ロータが駆動軸に圧入固定されることと、ボス部の一体形成に伴って駆動軸とロータとの締めしろ(接触面積)が大きく確保されることの相乗効果により、駆動軸に対するロータの締め付け力は過度に弱まらない。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のビスカスヒータにおいて、前記ロータは、駆動軸と直交する方向を半径方向とする略円盤形状をなしていることを特徴とする。
【0013】
このように、駆動軸と直交する方向(半径方向)に広がる円盤型ロータを採用した場合には、発熱室の内部形状もそれに応じて半径方向に広がるため、発熱室の中心域と周域との温度格差を是正することの必要性が大きいという事情があり、この点で本発明の意義が特に認められる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態について図1及び図2に基づいて説明する。
【0015】
図1に示すように、ビスカスヒータの外郭は前部ハウジング本体1及び後部ハウジング本体2によって構成されている。前部ハウジング本体1は、前方(図示左方)に向かって突出した中空筒状のボス部1aと、該ボス部1aの基端部から後方に向かって大きく碗形状に延在した円筒部1bとを有している。後部ハウジング本体2は、前記円筒部1bの開口側を覆う蓋形状とされている。前部ハウジング本体1と後部ハウジング本体2とは、前部ハウジング本体1の円筒部1b内に一対の前部区画プレート5及び後部区画プレート6を内装しつつ、複数本のボルト3によって締結されている。このように、ビスカスヒータのハウジングは、前部ハウジング本体1、後部ハウジング本体2、前部区画プレート5及び後部区画プレート6から構成されている。
【0016】
前部区画プレート5と後部区画プレート6とはそれぞれ、その外周部に環状のリム部5a,6aを有している。これらリム部5a,6aを相互連結される両ハウジング本体1,2の対向壁面間に挟着することにより、両ハウジング本体1,2内に両区画プレート5,6が移動不能に収納されている。また、前部区画プレート5の後端側はそのリム部5aに対して凹んだ形状となっており、両区画プレート5,6の相互接合によって両者間には発熱室7が形成される。
【0017】
前部区画プレート5は、その前端側において、その中央部に形成された支持筒部5bと、当該支持筒部5bの外側に沿って周方向に延びる同心円弧状に形成された複数のガイドフィン5cとを有している。前部区画プレート5は、支持筒部5bの一部が前部ハウジング本体1の内壁部と密接するように、前部ハウジング本体1内に嵌め込まれている。この結果、前部ハウジング本体1の内壁部と前部区画プレート5の本体部との間には、発熱室7の前側に隣接する放熱室としての円環状の前部ウォータジャケット8が区画される。この前部ウォータジャケット8内において、前記リム部5a、支持筒部5b及びガイドフィン5cは、循環流体としての循環水の流れをガイドするガイド壁の役目を果たし、前側放熱室内における循環水の流通経路を設定する。
【0018】
後部区画プレート6は、その後端側において、その中央部に形成された筒部6bと、当該筒部6bの外側に沿って周方向にのびる同心円弧状に形成された複数のガイドフィン6cとを有している。後部区画プレート6が前部区画プレート5と共に前部ハウジング本体1内に嵌め込まれた状態では、後部区画プレート6の筒部6bが後部ハウジング本体2の環状壁2aと密接する。この結果、後部ハウジング本体2と後部区画プレート6の本体部との間には、発熱室7の後側に隣接する放熱室としての円環状の後部ウォータジャケット9、及び、筒部6b内側に位置する貯留室としての副オイル室10が区画される。この後部ウォータジャケット9内において、前記リム部6a,筒部6b及びガイドフィン6cは、循環流体としての循環水の流れをガイドするガイド壁の役目を果たし、後側放熱室内における循環水の流通経路を設定する。
【0019】
また、前部ハウジング本体1の側壁部には、車両内に設けられた暖房回路(図示略)から前部及び後部ウォータジャケット8,9の各々に循環水を取り入れる入水ポート(図示略)と、前部及び後部ウォータジャケット8,9から循環水を前記暖房回路に送り出す出水ポート(図示略)とが並設されている。
【0020】
図1に示すように、前部ハウジング本体1及び前部区画プレート5には、軸受け11及びシール付き軸受け12を介して駆動軸13が回動可能に支承されている。シール付き軸受け12は、前部区画プレート5の支持筒部5bの内周面と、駆動軸13の外周面との間に介在され、発熱室7の前方を封止している。
【0021】
駆動軸13の後端部には、発熱室7内に収容されるロータ14が一体回転可能に圧入固定されている。ロータ14は、略円盤形状をなしており、平円板状の本体部14aと、当該本体部14aの中央に位置するボス部14bとからなる。平円板状の本体部14aは、全体にわたり均一な厚みを有する。ボス部14bの厚み(軸方向長さ)は、前記本体部14aよりも厚く、その追加厚み分だけボス部14bは前方に向かって突出している。また、ボス部14b中央の孔の内半径(即ち、駆動軸13の半径)をr1、ボス部14bの半径をr2とすると、ボス部14bの半径方向における厚みは、(r2−r1)で表される。この半径方向の厚み(r2−r1)は、ボス部14bの軸方向の長さLをL=r1としたときには、駆動軸13の半径r1の0.9〜1.2倍範囲となるように設定されている。ロータ14の周縁近傍には前後に貫通する複数のロータ連通孔14cが形成されている。これらロータ連通孔14cは、駆動軸13の中心軸線から等距離の位置において、駆動軸13を取り囲んで等角度間隔にて配置されている。
【0022】
後部区画プレート6の筒部6bと後部ハウジング本体2の後端壁とによって囲まれる領域には、貯留室としての副オイル室10が提供されている。後部区画プレート6は、その本体部を前後に貫通する回収通路としての上側連通孔6d及び供給通路としての下側連通孔6e、並びに、該区画プレート6の前面において半径方向に延びる誘導溝6fを有している。発熱室7と副オイル室10とは、上側及び下側連通孔6d,6eを介して相互に連通する。尚、下側連通孔6eの連通断面積は、上側連通孔6dのそれよりも大きく設定されている。
【0023】
下側及び上側連通孔6e,6dを介して相互に連通する発熱室7と副オイル室10とは、ヒータのハウジング内において液密な内部空間を形成する。この内部空間には、粘性流体としてのシリコーンオイルが所要量入れられている。シリコーンオイルの量は、その常温時充填率が前記内部空間内の空き容積に対して、5〜8割となるように決められている。かかる充填量にもかかわらず、ロータ14の回転時にはシリコーンオイルの伸張粘性のためにシリコーンオイルが下側連通孔6e及び誘導溝6fを介して副オイル室10から引き出されて発熱室7の内壁面とロータ14の外面との間の微少なクリアランスの全体に万遍なく行き渡る。尚、シリコーンオイルの充填時において、回収通路としての上側連通孔6dは、副オイル室10内に貯留されたシリコーンオイルの液位よりも上方に位置し、供給通路としての下側連通孔6eは当該液位よりも下方に位置する。
【0024】
駆動軸13の前端部にはボルト15によってプーリ16が固着されている。プーリ16はその外周部に巻き掛けられるVベルト(図示略)を介して、外部駆動源としての車両のエンジンと駆動連結される。
【0025】
次に、このビスカスヒータの機械的な作用を説明する。エンジンの起動前、即ち駆動軸13の停止時において、発熱室7と副オイル室10とにおけるシリコーンオイル(粘性流体)の液位は等しい。故に、駆動軸13の起動時にはロータ14の粘性流体との接触面積は小さく、小さなトルクで、プーリ16、駆動軸13及びロータ14を起動することができる。プーリ16を介してのエンジンの駆動力によって駆動軸13と共にロータ14が一体回転されるに伴い、シリコーンオイルが発熱室7の内壁面とロータ14の外面との間隙において剪断されて発熱する。発熱室7で生じた熱は、各区画プレート5,6を介して前部及び後部ウォータジャケット8,9を流れる循環水に熱交換される。加熱された循環水は、暖房回路(図示略)を介して車室内の暖房等に供される。
【0026】
このビスカスヒータでは、副オイル室10は上側連通孔6dを介して発熱室7の中央域と連通すると共に、ロータ14の回転によって発熱室7内のシリコーンオイルは駆動軸13に向かって移動する傾向(ワイセンベルク効果)を見せる。このため、シリコーンオイルが上側連通孔6dを介して発熱室7から副オイル室10内に回収される。他方、副オイル室10に回収されたシリコーンオイルの自重と、シリコーンオイルの伸張粘性に起因するロータ14のオイル引き込みから発熱室7にシリコーンオイルが供給される。
【0027】
このように、駆動軸13及びロータ14の駆動時には、発熱室7と副オイル室10との間でシリコーンオイルの入れ替え循環が行われる。この場合、下側連通孔6eは上側連通孔6dよりも大きな連通断面積を有しているため、シリコーンオイルの副オイル室10への回収量よりも発熱室7への供給量の方が多くなる。故に、副オイル室10に貯留されていたシリコーンオイルは、誘導溝6fを経由して発熱室7の外周域に迅速かつ滑らかに供給され、発熱室7の外周域に供給されたシリコーンオイルは、ワイセンベルク効果により迅速に発熱室7の中央域に達するので、発熱室7の内壁面とロータ14の外面との間のクリアランスの全域にシリコーンオイルが万遍なく行き渡る。
【0028】
また、上側連通孔6dを介して発熱室7から副オイル室10内に回収されたシリコーンオイルは、入れ替え循環のサイクルタイムに応じた一定時間だけ、副オイル室10に滞在する。発熱室7から回収直後のシリコーンオイルは高温状態にあるが、副オイル室10での滞在中にその熱量の一部を副オイル室10の区画部材(後部区画プレート6)に伝達することで、シリコーンオイルは熱を奪われる。その結果、高温のシリコーンオイルは冷却(除熱)されて長時間の熱保持による劣化から守られる。
【0029】
本実施形態の特徴は、ロータ14の構成材料として、熱伝導率が比較的に高い材料を用いたことにある。以下、本実施形態において使用可能な材料を例示する。尚、以下に示す各材料の熱伝導率T(W/(mK))は、日本機械学会編「機械工学便覧」B4材料学工業材料からの引用である。
【0030】
ロータ14に用い得る比較的に熱伝導率が高い材料としては、アルミニウム系金属及び銅系金属があげられる。特に、好ましいアルミニウム系金属としては、工業用純アルミニウム(例:A1100−H18(Alが99重量%以上),T=222W/(mK))、ジュラルミン(例:A2017−T4(Al−4.0Cu−0.6Mg−0.5Si−0.6Mn),T=201W/(mK))、アルミニウム鋳物用合金(例:AC4CH−T6(Al−7.0Si−0.3Mg),T=151W/(mK))、アルミニウムダイカスト用合金(例:ADC12(Al−11Si−2.5Cu),T=100W/(mK))があげられる。また、好ましい銅系金属としては、銅の純度が99.9重量%以上のもの、例えば、無酸素銅(例:C1020,T=384W/(mK))やタフピッチ銅(例:C1100,384W/(mK))があげられる。尚、銅系金属が採用される場合、アルミニウム系金属に比べ熱伝導率がさらに高いため、発熱室7内の温度均一化に大きく寄与するという長所を有する一方、アルミニウム系金属が採用される場合には、発熱室7内の温度均一化と共に、ロータ14の軽量化や加工性の向上に寄与するという長所を有する。
【0031】
図2のグラフは、発熱室7内のオイル温度分布について、ロータ14を構成する材料に炭素鋼を採用した場合と、アルミニウム系金属を採用した場合とを比較した結果を示す。このグラフからわかるように、熱伝導率が相対的に低い炭素鋼を用いた場合、ロータ14の中心からの距離rが小さい領域(発熱室7の中心域)とロータ14の中心からの距離rが大きい領域(発熱室7の周域)との間で相当大きな温度格差が生じる。これに対し、熱伝導率が炭素鋼よりも大きいアルミニウム系金属を用いた場合、発熱室7の中心域と周域とで温度差があまり生じない。これは、ロータ14自体が良熱伝導体となって、発熱室7の周域の熱量を発熱室7の中心域に伝え、発熱室7全体の温度均一化に貢献するためである。
【0032】
以下に本実施形態の効果について説明する。
○ 駆動軸13及びロータ14の回転時においては、発熱室7の中心域にあるシリコーンオイルの温度よりも、発熱室7の周域におけるシリコーンオイルの温度の方が高くなる傾向にある。しかし、本実施形態におけるロータ14は、熱伝導率の高い材料から構成される。このため、ロータ14が伝熱体としての役割を果たし、発熱室7の周域の温度を低減する結果、発熱室7でのロータ14半径方向におけるシリコーンオイルの温度格差を緩和することができる。従って、シリコーンオイルの局所(特に周域)における過熱が抑制され、シリコーンオイルの耐熱限界超過を未然に防止でき、その結果としてシリコーンオイルの劣化を防止することができる。このことは、ビスカスヒータの寿命(耐久性)を延ばすことに繋がる。
【0033】
○ ロータ14はアルミニウム系金属により構成されているため、炭素鋼等を用いる場合に比べて、成形加工や切削加工が簡易となる。また、ロータ14の重量低減化にも寄与することができる。ちなみに、炭素鋼よりなるロータ14と比較した場合、アルミニウム系金属製のロータ14の重量は、炭素鋼製のロータ14の約3分の1の重量になる。
【0034】
○ 駆動軸13は炭素鋼からなり、炭素鋼の熱膨張係数は、アルミニウム系金属の熱膨張係数よりも小さい。このため、発熱時には、駆動軸13よりもロータ14の方が熱膨張傾向が大きい。しかし、ロータ14は、駆動軸13に対して圧入により固定されていることと、ロータ14に形成されたボス部14bによって、駆動軸13とロータ14との締めしろ(接触面積)を大きく確保していることのために、駆動軸13に対するロータ14の締め付け力が過度に緩むことがない。
【0035】
○ 発熱室7以外の副オイル室10にシリコーンオイルを追加収容することができ、ロータ14の剪断に供されるシリコーンオイルの量に余裕が生じる。また、ヒータの作動時には、発熱室7と副オイル室10との間でシリコーンオイルを入れ替え循環させることができる。従って、特定のシリコーンオイルのみが常に剪断される状況を回避しながら、シリコーンオイルの一部を休ませつつ使用することができるため、シリコーンオイルの熱劣化を防止することができる。
【0036】
尚、「粘性流体」とは、ロータの剪断作用を受けて流体摩擦に基づく熱を発生するあらゆる媒体を意味するものであり、高粘度の液体や半流動体に限定されず、ましてやシリコーンオイルに限定されるものではない。
【0037】
【発明の効果】
各請求項に記載のビスカスヒータによれば、ロータが100W/(mK)以上の熱伝導率が高い材料から構成されることに伴って、ロータ自体が伝熱体としての役割を果たすため、発熱室内でのロータ半径方向における粘性流体の温度均一化に大きく貢献することができる。従って、粘性流体の局所における過熱が抑制され、粘性流体の劣化を防止することができる。故に、ビスカスヒータの寿命(耐久性)を延ばすことができる。また、ロータにアルミニウム系金属を採用した場合、成形加工や切削加工が簡易化し、ロータの重量低減化も達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に従うビスカスヒータの縦断面図。
【図2】発熱室内のオイル温度分布を示すグラフ。
【符号の説明】
1…前部ハウジング本体、2…後部ハウジング本体、7…発熱室、8…放熱室しての前部ウォータジャケット、9…放熱室としての後部ウォータジャケット、13…駆動軸、14…ロータ、14b…ボス部。
Claims (4)
- ハウジングと、該ハウジング内に区画された発熱室及び放熱室と、前記発熱室内に回動可能に設けられた駆動軸及びロータとを備え、前記発熱室内に収納された粘性流体を前記ロータで剪断することにより発生した熱を前記放熱室内の循環流体に熱交換するビスカスヒータにおいて、
前記ロータは、熱伝導率が100W/(mK)以上の材料で構成されることを特徴とするビスカスヒータ。 - 熱伝導率が100W/(mK)以上の材料は、アルミニウム系金属である請求項1に記載のビスカスヒータ。
- 前記ロータには、当該ロータを前記駆動軸に圧入固定するためのボス部が一体形成されている請求項1又は請求項2に記載のビスカスヒータ。
- 前記ロータは、駆動軸と直交する方向を半径方向とする略円盤形状をなしている請求項1〜3のいずれか一項に記載のビスカスヒータ。
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