JP3567027B2 - 巻線素子及びその組立方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トランスやノイズフィルタなどコイルを主要素とする巻線素子及びその組立方法に係り、特にトロイダル型コアコイルを端子台に組み付けて構成される巻線素子及びその組立方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電源装置や通信機器などの電子機器において回路を構成するトランスやノイズフィルタ、チョークコイルなどのコイルを主要素とする巻線素子としては、円環状のトロイダル型コアを端子台に組み付けて構成するものが知られている。図8(a)に示すように、トロイダル型コア2は、上部ケース6と下部ケース8との間に収装される。そして、図8(b)に示すように、2つのケース6,8の外周には、巻線10が捲回されて施されて、その捲回部からはリード部12が延出されて確保される。ここで巻線素子がトランスなどであれば、複数相の巻線10が施される。こうして巻線10の施されたトロイダル型コア2は、図8(c)に示すように、端子台4に形成された収納部14内などに接着などにより組み付けられ、巻線10の両端部は各々端子台4の端子16に接続される。そして、巻線素子17は反転されて平坦な裏面を上面とし、上面が吸引機で吸着されるなどして簡単なハンドリングにより実装される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記巻線素子では、巻線10が施されたトロイダル型コア2を端子台4に組み付ける構成になっているので、巻線10の端部を端子台4の端子16に巻き付けて接続する作業にあっては、複数の巻線それぞれがどの端子16に接続されるべきであるかを識別してから巻付け作業をする必要があったため、組立装置を用いて自動化するのは困難であり、目視による煩雑な手作業に頼らざるを得なかった。特に、トランスなどのように巻線10が複数相施されている場合には、巻線10の本数が増大し、各々どの相に属しているのかを特定するのが非常に困難となって、着色された巻線10を用いて1相毎に異なる配色とし、目視で簡単に区別できるようにする必要があった。
【0004】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、トロイダル型コアに施された巻線の端部を端子台の端子に接続する作業が軽減されるような巻線素子及びその組立方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明に係る巻線素子は、トロイダル型コアを上部ケースと下部ケースとの間に収装するとともに端子台に組み付けるようにしてなる巻線素子において、該下部ケースと該端子台との間に上下に貫通する空間部を残して両者を一体的に形成し、該下部ケースと該上部ケースとの間に該コアを収装して、該端子台と該下部ケースとの間の該空間部を通して該コアを収装した該上下部ケースの外周に巻線を施すとともに、該巻線の端部を該端子台の端子に接続する。
【0006】
このように、トロイダル型コアの下部ケースを端子台に一体的に形成することで、この下部ケースに対してトロイダル型コア及び上部ケースが組み付けられ、トロイダル型コアは端子台に位置決めされた状態で巻線が施されるようになるため、巻線作業に伴って巻線の端部の接続作業をも連続して行うことができる。これによって、従来のように複数の巻線それぞれがどの端子に接続されるべきであるかを識別する必要がなく、巻線作業に一連して巻線の端部を端子台の端子に巻き付けることができるため、従来に比べて巻線端部の接続作業が容易になる。特に、トランスなどのように複数相の巻線を施すような場合には、巻線作業と巻線端部の接続作業とを1相毎に行うことができるので、従来のように巻線を着色することなく接続ミスを防止することができる。また、巻線されたトロイダル型コアを端子台へ組み付ける作業が不要になったので、組立作業を簡略化できる。
【0007】
また、好ましくは、前記下部ケースと前記端子台との間の前記空間部が複数の円弧状の空間部として形成され、その円弧状の空間部を通じて巻線が施されてなる。
【0008】
これにより、下部ケースを複数箇所において端子台に安定的に支持した状態で巻線作業に必要な空間を確保することができる。
【0009】
更に好ましくは、前記巻線が施された前記上下部ケースと該上下部ケースから前記端子にかけて掛け渡された該巻線のリード部をモールド樹脂で覆う。あるいは、前記端子台の上面には相対する端子の方向に沿って延長する凹部が形成され、前記巻線が施された前記上下部ケースと該上下部ケースから該凹部を通って前記端子にかけて掛け渡された該巻線のリード部とを該凹部に取り付けられたカバー部材で覆う。これにより、コアの巻線及び巻線のリード部が外部に対して保護される。また、これらモールド樹脂あるいはカバー部材で巻線素子の外表面を所望の形状に成形すれば、簡単なハンドリングによる実装が可能になる。
【0010】
他方、前記目的を達成するために本発明に係る巻線素子の組立方法は、トロイダル型コアを上部ケースと下部ケースとの間に収装するとともに複数の端子を有する端子台に組み付ける巻線素子の組立方法において、該端子台に一体的に形成された該下部ケースと該上部ケースとの間に該コアを収装した後、該端子台の第1の該端子に巻線の一端部を接続し、該端子台と該下部ケースとの間の上下に貫通する空間部を通して該コアを収装する上下部ケースの外周に該巻線を施してから、該巻線の他端部を該端子台の第2の該端子に接続する。
【0011】
これにより、従来のように複数の巻線それぞれがどの端子に接続されるべきであるかを識別することなく、巻線の端部を巻き付けでき、従来に比べて巻線端部の接続作業が容易になる。また、トランスなどのように複数相の巻線を施すような場合には、巻線作業と巻線端部の接続作業とを1相毎に同時に行うことになり、従来のように巻線を着色することなく接続ミスを防止することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明に係る巻線素子及びその組立方法の実施の形態について、添付図面に基づき詳述する。ここでいう巻線素子とは、電源装置や通信機器などの電子機器で用いられるトランスやノイズフィルタ、チョークコイルなどといったコイルを主要素とし、プリント基板などに実装されるものなどである。尚、従来と同一の構成要素には同一符号を付してある。
【0013】
図1は、端子台20とトロイダル型コア2とを分解して示したものである。端子台20は、樹脂で直方体状に成形されており、その前後両側面からはそれぞれ複数の金属製の端子16が一列に突設されている。各端子16は、端子台20の側面から水平方向へと突出し、所定部位から斜め下方へと折曲されて、プリント基板に接続される先端部分において再び水平方向へと折曲されて形成されている。また、端子台20の上面には、前後方向に沿って凹部22が形成されている。この凹部22には後述するカバー部材が取り付けられるようになっている。
【0014】
端子台20の上面中央部には、下面側へと通じる断面略円形状の収納孔24が貫通形成されている。収納孔24の内部は、図2に示すように、トロイダル型コア2が収納されるようになっており、また内壁面に突設された結合突片26を介して下部ケース28が樹脂で一体的に形成されている。下部ケース28は、円環状のトロイダル型コア2に対応した円環状を呈しており、収納孔24に対し同軸状に配置されている。図2に示した結合突片26は、収納孔24の内壁面と下部ケース28との間に2箇所介設されているが、この他1箇所でも良く、下部ケース28をより確実に支持したい場合には3箇所介設させれば良い。
【0015】
円環状の下部ケース28は、図1及び図2に示すように、その上面側に環状空間30が形成されている。この環状空間30内には、トロイダル型コア2が挿入されてその下半部分が収容される。そして、下部ケース28に収容されたトロイダル型コア2の上側には、図1に示すように、下部ケース28と同様にトロイダル型コア2に対応した円環状を呈し下面側に環状空間を有する上部ケース6が、トロイダル型コア2の上半部分を収容して組み付けられる。このようにして、トロイダル型コア2は、下部ケース28と上部ケース6との間に収装されて円環状のコア部31が形成されている。
【0016】
端子台20のコア部31には、図3に示したように巻線32が施される。巻線にあたっては、まず、巻線32の一端部が端子台20の所定の端子16aの根元部分に巻きからげられて接続される。次に、一端部が接続された巻線32は、前記端子16aから凹部22の内側に掛け渡され、収納孔24内に挿入されてコア部31の外周に捲回される。ここでコア部31への捲回作業は、コア部31軸心部の貫通部34と、コア部31と収納孔24の内壁との間に形成された円弧状の空間部36とを通じて行われる。そして、コア部31に捲回された巻線32は、図4に示すように、収納孔24の内部から導出されて凹部22の内側に掛け渡され、その他端部が他の所定の端子16bに対して巻きからげられて接続される。これら2つの巻きからげ部分については、後にはんだによって確実に接続されるようになっている。さらに、巻線素子がトランスなどのように複数相の巻線32が施されるものであれば、図5に示すように、他の相に関しても同様にコア部31に対して巻線が行われ、巻線32の端部が各々所定の端子16に接続される。
【0017】
巻線が終了した後に、図6に示すように、端子台20の凹部22には、平板状のカバー部材38が取り付けられる。このカバー部材38の両側縁部には、それぞれほぼ中央部に突出部40が側方に張り出し形成されている。2つの突出部40は、端子台20の収納孔24の形成によって前記凹部22内側の両側壁にそれぞれ凹設された凹み42に各々対応している。そして、カバー部材38が凹部22の内側に差し込まれたとき、2つの突出部40はそれぞれ凹み42にはめ込まれる。このようにカバー部材28が取り付けられると、凹部22の内側に掛け渡された巻線32のリード部44やコア部31に施された巻線32は、カバー部材38により覆われ外部に対して保護され、その断線または擦傷が防止される。その上、平板状のカバー部材38の取付で巻線素子の上面は平坦になるため、巻線素子は、基板などに実装される際に、吸引機を用いた吸着による簡単なハンドリングが可能となる。また、他の保護形態としては、巻線素子に対して樹脂モールドが施されるものがあり、図7に示したように、端子だけが外面に突出してリード部44やコア部31の巻線32はモールド樹脂46で覆われて前記同様に外部に対して保護される。なお、ここでも、モールド樹脂46の成形で巻線素子の上面を平坦に形成することができるので、前述同様に簡単なハンドリングが可能となる。
【0018】
以上から、本発明の実施の形態にあっては、トロイダル型コア2の下部ケース28が端子台20に一体的に形成されているので、この下部ケース28に対してトロイダル型コア2が組み付けられ位置決めされた状態で巻線32が施され、これに伴い巻線32の端部が端子台20の端子16に接続されるため、従来のように複数の巻線それぞれがどの端子に接続されるべきであるかを識別する必要がなく、従来に比べて巻線端部の接続作業が容易になる。また、トランスなどのように複数相の巻線32を施す場合には、巻線作業とその接続作業とを1相毎に行うことができるので、従来のように巻線32を着色することなく接続ミスを防止することができる。また、巻線32の施されたトロイダル型コア2を組み付ける作業が不要になったので、組立作業を簡略化できる。
【0019】
【発明の効果】
以上発明の実施の形態で説明したように、本発明に係る巻線素子及びその組立方法によれば、トロイダル型コアの下部ケースを端子台に一体的に形成することで、巻線作業に一連して巻線の端部の接続作業を行うことができ、複数の巻線のそれぞれがどの端子に接続されるべきであるかを識別する必要がなくなるため、巻線端部の接続作業を容易に行うことができるとともに、この接続作業については組立装置による自動化も容易に可能になる。また、トランスなどのように複数相の巻線を施すような場合には、巻線作業と巻線端部の接続作業とを1相毎に行うことができるので、巻線を着色することなく接続ミスを簡単に防止することができる。他方、巻線の施されたトロイダル型コアの組付作業が必要なくなったので、組立作業を簡略化できる。従って、巻線素子のコストダウンを図ることができるとともに、その製品としての品質及び信頼性を向上させることができる。
【0020】
また、前記下部ケースと前記端子台との間に複数の円弧状の空間部が形成され、その空間部を通じて巻線が施される場合には、下部ケースを複数箇所において端子台に安定的に支持した状態で巻線作業に必要な空間を確保することができる。
【0021】
また、トロイダル型コアに施された巻線及びコアから端子にわたり掛け渡された巻線リード部分については、モールド樹脂或いはカバー部材で覆った場合には、外部に対して保護することができ、巻線の断線または擦傷を防止することができる。また、これらモールド樹脂あるいはカバー部材で巻線素子の外表面を所望の形状に成形すれば、簡単なハンドリングによる実装が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る巻線素子のトロイダル型コアを端子台から分解して示した斜視図である。
【図2】本発明に係る巻線素子の端子台を示した上面図である。
【図3】巻線一端部が端子台の端子に接続されてトロイダル型コアの外周に巻線が施されるところを示した斜視図である。
【図4】1相分の巻線がトロイダル型コアに施されるとともに、巻線の両端部が各々端子接続されたところを示した斜視図である。
【図5】複数相の巻線が施された状態を示した斜視図である。
【図6】カバー部材が端子台に取り付けられるところを示した斜視図である。
【図7】モールド樹脂で覆われた巻線素子を示した斜視図である。
【図8】(a)トロイダル型コアとこれを収装する従来の2つのケースとを示した斜視図である。
(b)巻線された従来のトロイダル型コアを示した斜視図である。
(c)巻線されたトロイダル型コアが端子台に組み付けられた従来の巻線素子を示した斜視図である。
【符号の説明】
2 トロイダル型コア 6 上部ケース
16 端子 20 端子台
22 凹部 24 収納孔
26 結合突片 28 下部ケース
30 環状空間 31 コア部
32 巻線 34 貫通部
36 空間部 38 カバー部材
40 突出部 42 凹み
44 リード部 46 モールド樹脂

Claims (5)

  1. トロイダル型コア(2)を上部ケース(6)と下部ケース (28)との間に収装するとともに端子台(20)に組み付けるようにしてなる巻線素子において、該下部ケース(28)と該端子台(20)との間に上下に貫通する空間部(36)を残して両者を一体的に形成し、該下部ケース(28)と該上部ケース(6)との間に該コア(2)を収装して、該端子台(20)と該下部ケース(28)との間の該空間部(36)を通して該コア(2)を収装した該上下部ケース(6、28)の外周に巻線(32)を施すとともに、該巻線(32)の端部を該端子台(20)の端子(16)に接続してなることを特徴とする巻線素子。
  2. 前記下部ケース(28)と前記端子台(20)との間の前記空間部(36)が複数の円弧状の空間部(36)として形成され、その円弧状の空間部(36)を通じて巻線(32)が施されてなることを特徴とする請求項1に記載の巻線素子。
  3. 前記巻線(32)が施された前記上下部ケース(6、28)と該上下部ケース(6、28)から前記端子(16)にかけて掛け渡された該巻線(32)のリード部(44)とがモールド樹脂(46)で覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載の巻線素子。
  4. 前記端子台(20)の上面には相対する端子(16、16)の方向に沿って延長する凹部(22)が形成され、前記巻線(32)が施された前記上下部ケース(6、28)と該上下部ケース(6、28)から該凹部(22)を通って前記端子(16)にかけて掛け渡された該巻線(32)のリード部 (44)とが該凹部(22)に取り付けられたカバー部材(38)で覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載の巻線素子。
  5. トロイダル型コア(2)を上部ケース(6)と下部ケース (28)との間に収装するとともに複数の端子(16)を有する端子台(20)に組み付ける巻線素子の組立方法において、該端子台(20)に一体的に形成された該下部ケース(28)と該上部ケース(6)との間に該コア(2)を収装した後、該端子台(20)の第1の該端子(16a)に巻線(32)の一端部を接続し、該端子台(20)と該下部ケース(28)との間の上下に貫通する空間部(36)を通して該コア(2)を収装する上下部ケース(6、28)の外周に該巻線(32)を施してから、該巻線(32)の他端部を該端子台(20)の第2の該端子(16b)に接続することを特徴とする巻線素子の組立方法。
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