JP3565560B2 - 音発生装置 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は音発生装置に関する。
背景技術
圧電振動板として円形をなす薄肉金属板の一側面上にのみ圧電セラミック層を形成したユニモルフ、および円形をなす薄肉金属板の両側面上に圧電セラミック層を形成したバイモルフが知られている。これらユニモルフやバイモルフのような圧電振動板は圧電セラミック層に印加すべき電圧を変動させると圧電振動板の中心部が交互に反対方向に湾曲する屈曲振動を生ずる。そこでこのような圧電振動板の屈曲振動を利用して音を発生させるようにしたスピーカが従来より公知である。このような従来のスピーカでは通常圧電振動板の周縁部をスピーカのフレームにより支持し、圧電振動板の中心部を音響振動板に連結し、この音響振動板を圧電振動板により振動させることによって音響振動板から音を発生させるようにしている(例えば特開昭60−182300号公報参照)。
ところがこの圧電振動板は固有振動数が高いと共に共振点におけるQの値が高く、振動数が低くなるにつれて音圧レベルが低くなるという特性を有している。従って従来のように単に圧電振動板の振動そのものを直接音響振動板に伝達すると共振点において音が歪むと共に低音の音圧レベルが不十分であるという問題がある。
発明の開示
本発明の目的は低音領域であっても十分に高い音圧レベルを得ることができる音発生装置を提供することにある。
本発明によれば、軸線方向において互いに間隔を隔てて配置されかつ互いに逆向きに湾曲せしめられる一対の圧電振動板の中心部を連結ロッドにより互いに連結し、一方の圧電振動板の外周縁を音響振動板に連結し、他方の圧電振動板の外周縁にこの外周縁から外方に延びる弾性部材を取付けた音発生装置が提供される。
更に本発明によれば、軸線方向において互いに間隔を隔てて配置されかつ互いに逆向きに湾曲せしめられる一対の圧電振動板の外周縁を環状スペーサにより互いに連結し、一方の圧電振動板の中心部を音響振動板に連結し、他方の圧電振動板の中心部に連結ロッドを介して弾性板を取付けた音発生装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
図1はタイプIのモジュールの側面断面図、図2は図1に示されるモジュールの正面図、図3は図1に示されるモジュールの作動を説明するための図、図4はタイプIIのモジュールの側面断面図、図5は図4に示されるモジュールの斜視図、図6は図4に示されるモジュールの作動を説明するための図、図7は種々の駆動装置を示す図、図8は図1に示されるタイプIのモジュールを使用したスピーカの側面断面図、図9は図8の一部拡大側面断面図、図10は別の実施例を示すスピーカの一部の側面断面図、図11は更に別の実施例を示すスピーカの一部の側面断面図、図12は図4に示されるタイプIIのモジュールを使用したスピーカの側面断面図、図13は図12の一部拡大側面断面図、図14はタイプIIのモジュールの斜視図、図15は別の実施例を示すスピーカの一部の側面断面図、図16は更に別の実施例を示すスピーカの一部の側面断面図、図17は更に別の実施例を示すスピーカの一部の側面断面図、図18は更に別の実施例を示すスピーカの一部の側面断面図、図19は図18の変形例を示すスピーカの一部の側面断面図、図20は更に別の実施例を示すスピーカの一部の側面断面図、図21は更に別の実施例を示すスピーカの側面断面図、図22は図21の一部拡大側面断面図、図23は周波数fと音圧レベルPとの関係を示す図、図24は更に別の実施例を示すスピーカの正面図、図25は図24のXXV−XXV線に沿ってみた断面図である。
発明を実施するための最良の形態
図1および図2は音発生装置の音響振動板を駆動するための駆動装置の一例を示している。図1および図2を参照するとこの駆動装置は軸線方向において互いに間隔を隔てて対面配置された一対の円形状をなす金属製の圧電振動板1,2からなり、これら圧電振動板1,2の中央部は金属製或いは合成樹脂製連結ロッド3により互いに連結されている。各圧電振動板1,2の両側面上には夫々環状をなす圧電セラミック層4が形成されており、従って図1および図2に示す例では各圧電振動板1,2はバイモルフからなる。
図1に各圧電振動板1,2の圧電セラミック層4の分極方向を矢印Kで示す。図1に示されるように図1に示される例では圧電振動板1,2は一方の圧電振動板1の圧電セラミック層4の分極方向Kと他方の圧電振動板2の圧電セラミック層4の分極方向Kとが互いに逆向きになるように連結ロッド3により連結されている。各圧電振動板2は例えばリード線5を介して接地されており、各圧電セラミック層4の表面に形成された薄膜電極にはリード線6を介して同一の駆動電圧が印加される。
各圧電振動板1,2の圧電セラミック層4の薄膜電極に電圧を印加すると各圧電振動板1,2の一側に形成された圧電セラミック層4は半径方向に伸長し、他側に形成された圧電セラミック層4は半径方向に収縮し、その結果各圧電振動板1,2は湾曲することになる。図1に示す例では上述したように各圧電振動板1,2の圧電セラミック層4の分極方向Kは互いに逆向きであり、この場合リード線6を介して各圧電セラミック4の薄膜電極に正電圧と負電圧を交互に印加すると各圧電振動板1,2は図3(A)および(B)に示されるように互いに逆向きに湾曲することになる。即ち、図3(A)に示すように各圧電振動板1,2が外方に向けて凸となる状態と、図3(B)に示すように各圧電振動板1,2が内方に向けて凸となる状態が交互に繰返されることになる。
この場合、図3(A)に示す状態での各圧電振動板1,2の周縁部の間隔をS1とし、図3(B)に示す状態での各圧電振動板1,2の周縁部の間隔をS2とすると各圧電振動板1,2の周縁部の変位量ΔSはΔS=S2−S1となる。従ってこの変位量を駆動装置の出力として使用すれば駆動装置の出力のストロークはΔS(=S2−S1)となる。このストロークは一枚の圧電振動板を用いたときに得られるストロークの2倍であり、従って図1に示される駆動装置では一枚の圧電振動板を用いた場合に比べて2倍のストロークの出力を発生することができることになる。
このように一対の圧電振動板1,2を用いると出力ストロークを増大することができる。この場合図1に示される一対の圧電振動板1,2は出力ストロークを増大させることのできる圧電振動板の組合せの最小単位を示しており、この組合せの最小単位をモジュールと称する。なお、図1に示されるように一対の圧電振動板1,2の中央部を互いに連結することによって得られたモジュールを以下タイプIのモジュールと称する。
図4および図5は図1に示すモジュールとは異なる構造のモジュールを示している。なお、図4および図5において図1と同様な構成要素は同一の符号で示す。
図4および図5を参照すると、一対の圧電振動板1,2の外周縁が圧電振動板1,2の外周縁に沿って延びる金属製環状スペーサ7に固定されている。従って図4および図5に示す例では一対の圧電振動板1,2が環状スペーサ7を介して互いに連結されることになる。図4および図5に示す例でも一方の圧電振動板1の圧電セラミック層4の分極方向Kは他方の圧電振動板2の圧電セラミック層4の分極方向Kと逆向きになっており、各セラミック層4の薄膜電極にはリード線6を介して同一の駆動電圧が印加される。従ってこの場合にも各圧電セラミック層4の薄膜電極に交互に正電圧および負電圧を印加すると図6(A)および(B)に示されるように各圧電振動板1,2は交互に逆向きに湾曲することになる。
この場合、図6(A)に示す状態での各圧電振動板1,2の中心部の間隔をS1とし、図6(B)に示す状態での各圧電振動板1,2の中心部の間隔をS2とすると各圧電振動板1,2の中心部の変位量ΔSはΔS=S2−S1となる。従ってこの変位量を駆動装置の出力として使用すれば駆動装置の出力のストロークはΔS(=S2−S1)となる。このストロークは一枚の圧電振動板を用いたときに得られるストロークの2倍であり、従って図4に示される駆動装置でも一枚の圧電振動板を用いた場合に比べて2倍のストロークの出力を発生することができることになる。なお、図4に示されるように一対の圧電振動板1,2の周縁部を互いに連結することによって得られたモジュールを以下タイプIIのモジュールと称する。
一対の圧電振動板1,2を用いた場合の代表的なモジュールは前述したタイプIのモジュールとタイプIIのモジュールである。これらのモジュールを基本として3枚以上の圧電振動板を種々に組合せた駆動装置を作成することができ、これら駆動装置の代表例を図7に示す。なお、図7において圧電振動板が2枚の欄に示されている駆動装置は前述したタイプIのモジュールとタイプIIのモジュールである。
図7を参照すると圧電振動板を3枚組合せた駆動装置はタイプIIIのものとタイプIVのものとがある。タイプIIIに示される駆動装置はタイプIIのモジュールと単独の圧電振動板8とを組合せたものであり、タイプIIのモジュールを構成する圧電振動板2の中央部と単独の圧電振動板8の中央部とを連結ロッド3により連結することによって形成されている。この駆動装置では駆動電圧が印加されたときに圧電振動板2と圧電振動板8とは互いに逆向きに湾曲し、斯くしてこの駆動装置は一枚の圧電振動板を用いたときの出力ストロークの3倍の出力ストロークを得ることができる。
タイプIVに示される駆動装置もタイプIIのモジュールと単独の圧電振動板9とを組合せたものであり、タイプIIのモジュールを構成する圧電振動板1の中央部と単独の圧電振動板9の中央部とを連結ロッド3により連結することによって形成されている。この駆動装置でも駆動電圧が印加されたときに圧電振動板1と圧電振動板9とは互いに逆向きに湾曲し、斯くしてこの駆動装置でも一枚の圧電振動板を用いたときの出力ストロークの3倍の出力ストロークを得ることができる。
一方、図7に示されるように圧電振動板を4枚組合せた駆動装置はタイプVのものとタイプVIのものがある。タイプVに示される駆動装置はタイプIIのモジュールと2枚の圧電振動板8,9とを組合せたものである。別の見方をするとタイプIのモジュールの一対の圧電振動板1,2の間にタイプIIのモジュールを挿入したものである。即ち、この駆動装置はタイプIIのモジュールを構成する一方の圧電振動板1の中央部と圧電振動板9の中央部とを連結ロッド3により連結し、タイプIIのモジュールを構成する他方の圧電振動板2の中央部と圧電振動板8の中央部とを連結ロッド3により連結することによって形成される。この駆動装置では駆動電圧が印加されると圧電振動板1と圧電振動板9とは互いに逆向きに湾曲し、圧電振動板2と圧電振動板8とは互いに逆向きに湾曲するので一枚の圧電振動板を用いたときの出力ストロークの4倍の出力ストロークを得ることができる。
一方、タイプVIに示される駆動装置はタイプIIのモジュールを2個組合せたものであり、互いに対面する各モジュールの圧電振動板1,2の中央部を連結ロッド3により連結することによって形成される。この駆動装置においても一枚の圧電振動板を用いたときの出力ストロークの4倍のストロークを得ることができる。
また、図7に示されるように圧電振動板を5枚組合せた駆動装置はタイプVIIのものとタイプVIIIのものとがあり、圧電振動板を6枚組合せた駆動装置はタイプIXのものとタイプXのものとがある。これらタイプVII,VIII,IX,Xの駆動装置の組合せ構造は図7から明らかであるので特に説明しないがいずれのタイプVII,VIII,IX,Xの駆動装置でも互いに隣接する圧電振動板1,2,8,9は駆動電圧が印加されたときに互いに逆向きに湾曲する。従ってタイプVII,VIIIの駆動装置では一枚の圧電振動板を用いたときの出力ストロークの5倍の出力ストロークが得られ、タイプIX,Xの駆動装置では一枚の圧電振動板を用いたときの出力ストロークの6倍の出力ストロークが得られる。なお、図7に示してはいないが同様にして7枚以上の圧電振動板からなる駆動装置を形成することができる。
次に図7に示す駆動装置を用いて音響振動板を駆動するようにした音発生装置の代表的な実施例について説明する。
図8および図9は本発明をスピーカに適用し、スピーカの駆動装置として図1に示されるタイプIのモジュールを使用した場合を示している。
図8および図9を参照すると、10はスピーカフレーム、11は音響振動板を夫々示す。音響振動板11の外周縁はスピーカフレーム10の外周上に接着され、更にこの音響振動板11の外周縁上にはパッキン11aが接着される。図8および図9に示される実施例では音響振動板11はコーン紙により形成されているがこの音響振動板11は木材、プラスチック或いは金属薄板から形成することができる。音響振動板11の内周縁は駆動装置12の一方の圧電振動板1の外周縁に連結され、駆動装置12の他の圧電振動板2の外周縁はスピーカフレーム10に連結される。
冒頭で述べたように圧電振動板は固有振動数が高く、振動数が低くなるにつれて音圧レベルが低下する。しかしながら図8および図9に示す実施例では駆動装置12によって音響振動板11に与えられる駆動ストロークが一枚の圧電振動板を用いたときの2倍になるので低周波領域においても音響振動板11の振巾が大きくなり、斯くして低音の音圧レベルを高めることができる。
また、一対の圧電振動板1,2を連結ロッド3により互いに連結すると駆動装置12の固有振動数は圧電振動板の固有振動数よりもかなり低くなり、その結果共振点が低周波数側に移行する。従ってこの点からも低周波領域における音響振動板11の振巾を大きくすることができ、斯くして低音の音圧レベルが一層高められる。
図10に別の実施例を示す。図10に示されるようにこの実施例では駆動装置13の固有振動数を低下させかつ音圧レベルを広い周波数領域に亘ってフラットにするためにゴムからなる環状の弾性部材13が圧電振動板2の外周縁に取付けられている。即ち、図10に示されるようにこの弾性部材13は比較的大きな質量を有しているので駆動装置13の固有振動数を更に低下させることができ、斯くして更に低い音まで音圧レベルを高めることができる。また、駆動装置13の固有振動数を低下させると低音領域において共振点が表われるがこの弾性部材13はこの共振点におけるQの値を低下させかつ高周波領域において表われる高次の共振点におけるQの値を低下させる機能を有している。
即ち、弾性部13は上述した如く比較的大きな質量を有しているのでこの弾性部材13はその慣性により圧電振動板2の周縁部が前後方向に移動するのを抑制する作用をなす。従って図10に示されるように弾性部材13がスピーカフレーム10により支持されていなくても各圧電振動板1,2が湾曲運動した際に音響振動板11が振動せしめられることになる。ところで圧電振動板2の湾曲運動速度が遅い場合には、即ち低周波領域では弾性部材13が圧電振動板2の周縁部の動きに応じて全体的に移動する。これに対して圧電振動板2の湾曲運動速度が速い場合には、即ち高周波領域では弾性部材13の全体が圧電振動板2の周縁部の動きに追従することができず、弾性部材13の内周縁の動きに対して弾性部材13の外周縁の動きが追従遅れを生ずる。その結果、弾性部材13が変形し、この変形運動が繰返されることになる。
このような弾性部材13の変形は振動エネルギによって生じ、従って弾性部材13の変形量が大きくなるほど弾性部材13を変形させるために消費される振動エネルギが増大することになる。云い換えると弾性部材13の変形量が大きいほど弾性部材13によって吸収される振動エネルギが大きくなることになる。ところで上述したように弾性部材13の変形量は周波数が高くなるほど大きくなる。従って図10に示すように弾性部材13を圧電振動板2に取付けるとこの弾性部材13によって高周波振動を減衰することができることになる。その結果、相対的に低周波の振巾を大きくすることができ、斯くして低音の音圧レベルを高めることができることになる。
一方、共振点においては振巾が大きくなるばかりでなく圧電振動板2の湾曲運動速度が速くなり、斯くして共振点における振動が弾性部材13によって減衰されることになる。従って弾性部材13を圧電振動板2に取付けるとQの値が小さくなり、斯くして音圧レベルを広い周波数領域に亘ってフラットにすることができることになる。
図11に更に別の実施例を示す。この実施例では環状弾性部材13の外周縁がスピーカフレーム10に固定される。このように弾性部材13の外周縁をスピーカフレーム10に固定すると高周波振動発生時における弾性部材13の変形量が更に大きくなり、斯くして高周波振動を一層減衰させることができると共にQの値を一層低下させることができる。また、弾性部材13の外周縁をスピーカフレーム10に固定すると低周波振動発生時における圧電振動板2の外周縁の前後方向の移動量を大巾に抑制することができる。その結果、低周波領域における音響振動板11の振巾を増大させることができ、斯くして低音の音圧レベルを増大することができる。
図12から図14はスピーカの駆動装置として図4に示されるタイプIIのモジュールを使用した場合を示している。
図12および図13を参照すると、タイプIIのモジュールからなる駆動装置14が音響振動板11とスピーカフレーム10の間に配置されている。タイプIIのモジュールを構成する一方の圧電振動板1の中央部は金属製或いは合成樹脂製連結ロッド3aを介して例えばナット15により音響振動板11の中央部に連結され、タイプIIのモジュールを構成する他方の圧電振動板2の中央部は金属製或いは合成樹脂製連結ロッド3bを介して例えばナット16によりスピーカフレーム10に連結される。この実施例でも駆動装置14によって音響振動板11に与えられる駆動ストロークが一枚の圧電振動板を用いたときの2倍になるので低周波領域においても音響振動板11の振巾が大きくなり、斯くして低音の音圧レベルを高めることができる。
また、この実施例におけるように一対の圧電振動板1,2を環状スペーサ7により互いに連結すると駆動装置14の固有振動数は圧電振動板の固有振動数よりもかなり低くなり、その結果共振点が低周波数側に移行する。従ってこの点からも低周波領域における音響振動板11の振巾を大きくすることができ、斯くして低音の音圧レベルが一層高められる。更にこの実施例では駆動装置13の固有振動数を低下させかつ音圧レベルを広い周波数領域に亘ってフラットにするために環状スペーサ7上に複数個の連通孔17が形成され、一対の圧電振動板1,2間には連通孔17を介して外気に連通したエアダンパ室18が形成されている。
即ち、圧電振動板1,2の湾曲運動によりエアダンパ室18内の容積が増大すると外気が連通孔17を介してエアダンパ室18に流入し、エアダンパ室18内の容積が減少するとエアダンパ室18内の空気が連通孔17を介して外気中に流出する。この場合、連通孔17からの空気の流出入作用には時間を要するために圧電振動板1,2の湾曲運動速度が速くなるほど、即ち振動の周波数が高くなるほど圧電振動板1,2は湾曲しずらくなってしまう。即ち、圧電振動板1,2が図6(B)に示されるように外方に凸となるように湾曲しようとするとエアダンパ室18内の圧力が低下するために圧電振動板1,2の湾曲運動が抑制され、圧電振動板1,2が図6(A)に示されるように内方に凸となるように湾曲しようとするとエアダンパ室18内の圧力が上昇するために圧電振動板1,2の湾曲運動が抑制される。
このようにエアダンパ室18によるダンパ作用によって圧電振動板1,2の湾曲運動速度が速くなるほど圧電振動板1,2の湾曲運動が抑制される。云い換えると圧電振動板1,2の湾曲運動速度が速くなるほど、即ち振動の周波数が高くなるほど圧電振動板1,2の振動が抑制されることになる。従ってこのようなエアダンパ室18を設けることによって相対的に低音の音圧レベルを上昇でき、しかも共振点におけるQの値を小さくすることができるので音圧レベルを広い周波数領域に亘ってフラットにすることができる。
図15に更に別の実施例を示す。この実施例では各圧電振動板1,2の周縁部を互いに連結する環状スペーサ19がゴムのような弾性部材から形成され、各圧電振動板1,2の周辺部にエアダンパ室18と外気とを連通する複数個の連通孔20が形成される。従ってこの実施例においてもエアダンパ室18による高周波振動の減衰作用によって相対的に低音の音圧レベルを上昇することができ、音圧レベルを広い周波数領域に亘ってフラットにすることができる。更にこの実施例では振動数が高くなるほど弾性部材19が変形する頻度が多くなるので振動数が高くなるほど弾性部材19による振動の吸収量が増大する。従ってこの実施例では高周波振動を更に減衰することができる。
図16に更に別の実施例を示す。図16を参照するとこの実施例ではゴムからなる弾性板21の中央部が連結ロッド3bを介してナット16により圧電振動板2の中央部に連結される。この弾性板21は図10に示す弾性部材13と同様な作用をなす。
即ち、弾性板21は比較的大きな質量を有しているのでこの弾性板21はその慣性により圧電振動板2の中央部が前後方向に移動するのを抑制する作用をなす。従って図16に示されるように弾性板21がスピーカフレーム10により支持されていなくても各圧電振動板1,2が湾曲運動した際に音響振動板11が振動せしめられることになる。一方、圧電振動板1,2の湾曲運動速度が遅い場合には、即ち低周波領域では弾性板21が圧電振動板2の中央部の動きに応じて全体的に移動する。これに対して圧電振動板1,2の湾曲運動速度が速い場合には、即ち高周波領域では弾性体21の全体が圧電振動板2の中央部の動きに追従することができず、弾性体21の中央部の動きに対して弾性体21の外周部の動きが追従遅れを生ずる。その結果、弾性体21が変形し、この変形運動が繰返されることになる。
ところでこの場合、弾性板21の変形量が大きいほど弾性板21によって吸収される振動エネルギが大きくなり、図16に示される弾性板21の変形量は周波数が高くなるほど大きくなる。従って図16に示すように弾性板21を圧電振動板2に取付けるとこの弾性板21によって高周波振動を減衰することができることになる。その結果、相対的に低周波の振巾を大きくすることができ、斯くして低音の音圧レベルを高めることができることになる。
また、前述したように共振点においては振巾が大きくなるばかりでなく圧電振動板1,2の湾曲運動速度が速くなり、斯くして共振点における振動が弾性板21によって減衰されることになる。従って弾性板21を圧電振動板2に取付けるとQの値が小さくなり、斯くして音圧レベルを広い周波数領域に亘ってフラットにすることができることになる。
図17に更に別の実施例を示す。この実施例では弾性板21の外周縁がスピーカフレーム10に固定される。このように弾性板21の外周縁をスピーカフレーム10に固定すると高周波振動発生時における弾性板21の変形量が更に大きくなり、斯くして高周波振動を一層減衰させることができると共にQの値を一層低下させることができる。また、弾性板21の外周縁をスピーカフレーム10に固定すると低周波振動発生時における圧電振動板2の中央部の前後方向の移動量を大巾に抑制することができる。その結果、低周波領域における音響振動板11の振巾を増大させることができ、斯くして低音の音圧レベルを増大することができる。
これまで本発明をタイプIのモジュールからなる駆動装置12およびタイプIIのモジュールからなる駆動装置14に適用した場合について説明してきたがこれまで説明してきた各実施例の構造は図7に示されるタイプIIIからタイプXに示す構造の各駆動装置に適用することができる。以下、これまで説明してきた各実施例の構造をタイプIIIからタイプXに示す構造の駆動装置に適用した場合の代表例について説明する。
図18はスピーカの駆動装置として図7に示されるタイプVIの駆動装置を使用した場合を示している。即ち、図18に示される実施例では駆動装置22が図4に示されるタイプIIのモジュールを二つ直列に接続した構造を有しており、4枚の圧電振動板1,2のうちで中央に位置する2枚の圧電振動板1,2の中央部が連結ロッド3cにより互いに連結されている。この実施例では前述したように一枚の圧電振動板を用いた場合の4倍の出力ストロークを得ることができる。
図19に図18に示される駆動装置22の変形例を示す。この変形例では4枚の圧電振動板1,2のうちで中央に位置する2枚の圧電振動板1,2の中央部が中空スリーブ23により連結されており、従ってこの実施例では各モジュール内に形成されるエアダンパ室18が中空スリーブ23を介して互いに連通せしめられている。
図20はスピーカの駆動装置として図7に示されるタイプIIIの駆動装置を用い、駆動装置24の高周波振動を減衰させるために図11に示す環状弾性部材13を用いた構造を適用した場合を示している。即ち、この駆動装置24ではタイプIIのモジュールを構成する圧電振動板2の中央部と単独の圧電振動板8の中央部とが連結ロッド3bを介して互いに連結されており、単独の圧電振動板8の周縁部がゴムからなる弾性部材13を介してスピーカフレーム10に連結されている。
図21および図22はスピーカの駆動装置として図7に示されるタイプVの駆動装置を用い、駆動装置25の高周波振動を減衰させるために図11に示す環状弾性部材13を用いた構造を適用した場合を示している。即ち、この駆動装置25ではタイプIIのモジュールを構成する圧電振動板2の中央部と単独の圧電振動板8の中央部とが連結ロッド3bを介してボルト26およびナット16により互いに連結されており、単独の圧電振動板8の周縁部がゴムからなる環状弾性部材13を介してスピーカフレーム10に連結されている。更にこの駆動装置25ではタイプIIのモジュールを構成する圧電振動板1の中央部と単独の圧電振動板9の中央部とが中空スリーブ27により互いに連結され、単独の圧電振動板9の外周縁が音響振動板11の内周縁に連結されている。
更にこの駆動装置25では中空スリーブ27の前端部が外部に開口しており、この中空スリーブ27の開口部が例えば合成樹脂材料からなるプラグ28によって閉塞されている。駆動装置25を組立てる前はこのプラグ28は挿入されておらず、駆動装置25の組立て時においてボルト26により圧電振動板2,8を締着した後に中空スリーブ27の開口部内にプラグ28が嵌着される。それによって圧電振動板1,2間にエアダンパ室18が形成される。また、この駆動装置25では単独の圧電振動板9を覆うようにダイアフラム29が取付けられている。
この駆動装置25では一枚の圧電振動板を用いた場合の4倍の出力ストロークが得られる。更にこの駆動装置25では駆動装置25の共振周波数はかなり小さくなり、またエアダンパ室18による高周波減衰作用および弾性部材13による高周波減衰作用によって高周波振動が大巾に減衰され、Qの値が大巾に低下せしめられる。その結果、音圧レベルを全体として高く維持しつつ広い周波数領域に亘ってフラットな音圧レベルを得ることができる。
図23は周波数fと音圧レベルPとの関係を調べた実験結果を示している。図23においてAは図12に示す構造のスピーカを示しており、Bは図21に示す構造のスピーカを示している。なお、図23は周波数fが1000Hzにおいて音圧レベルPがほぼ等しくなるような駆動電圧を各駆動装置14,25に印加した場合を示している。図23から、図21に示す構造のスピーカは広い周波数領域に亘って音圧レベルPがフラットになることがわかる。
図24および図25は更に別の実施例を示している。図24および図25を参照すると、30はスピーカフレームを示し、31は音響振動板を示している。この実施例では図7においてタイプVIで示される複数個の駆動装置22がスピーカフレーム30と音響振動板31との間に並列に配置されており、従ってこの実施例では音響振動板31が複数個の駆動装置22によって同時に駆動される。なお、この場合、各駆動装置22としては図7に示されるいずれのタイプの駆動装置も用いることができる。
本発明における圧電振動板を用いたスピーカは従来のダイナミックスピーカに比べて重量が大巾に軽くなるという利点があるばかりでなく、またダイナミックスピーカのような永久磁石を使用する必要がないので防磁装置が不要であるという利点がある。
なお、これまで本発明をスピーカに適用した場合について説明してきたが本発明は電話機やブザーを始めてとして音を発生させるための全ての音発生装置に適用することができる。また、圧電振動板としてユニモルフを使用しうることは云うまでもない。

Claims (2)

  1. 軸線方向において互いに間隔を隔てて配置されかつ互いに逆向きに湾曲せしめられる一対の圧電振動板の中心部を連結ロッドにより互いに連結し、一方の圧電振動板の外周縁を音響振動板に連結し、他方の圧電振動板の外周縁に該外周縁から外方に延びる弾性部材を取付けた音発生装置。
  2. 軸線方向において互いに間隔を隔てて配置されかつ互いに逆向きに湾曲せしめられる一対の圧電振動板の外周縁を環状スペーサにより互いに連結し、一方の圧電振動板の中心部を音響振動板に連結し、他方の圧電振動板の中心部に連結ロッドを介して弾性板を取付けた音発生装置。
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