JP3565124B2 - 同期モータの脱調を判定する装置および方法 - Google Patents
同期モータの脱調を判定する装置および方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、同期モータの運転時において脱調を検出するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
交流モータのひとつである同期モータにより所望のトルクを得るためには、ロータの位置、即ち電気角に応じて巻線に流す多相交流を制御する必要がある。電気角の検出誤差が大きくなり、電圧が印加される方向が本来印加すべき方向からずれると、同期モータは所望のトルクが得られなくなる。ずれが更に大きくなると、完全に制御不能となり、いわゆる脱調状態となることがある。脱調が生じた場合には制御処理をリセットして運転を再開するなどの処理を施す必要がある。
【0003】
従来、脱調の検出方法としては、モータの回転中に生じる逆起電圧を利用した検出方法、コイルに流れる電流の実効値と力率角、即ち印加した電圧の位相と電流の位相との差とを組み合わせて脱調の有無を判定する技術などが提案されている(例えば、特開平9−294390記載の技術など)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、モータの回転中に生じる逆起電圧を利用した技術では、モータが高速回転している場合や停止中には脱調検出を的確に行うことができない場合があった。また、コイルに流れる電流の実効値と力率角とを組み合わせて利用する技術では、実効値や力率角について非常に複雑な演算が必要であり、モータ制御装置の負荷が大きかった。近年では、電気角をセンサレスで検出し、同期モータを制御する技術も提案されている。かかる場合、制御装置には、電気角を検出するための演算負荷もかけられるため、脱調検出のための負荷は特に看過し得ないものとなっていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、同期モータが脱調しているか否かを、幅広い運転状態において軽い負荷で検出可能とする技術を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明では、電気角を検出し、該電気角に応じてコイルに多相交流を流して同期モータの駆動を制御する際における脱調を検出する第1の構成の脱調検出装置として、
前記同期モータに単位時間当たりに入力または出力されるエネルギのうち少なくとも一方の予想値を求める予想値特定手段と、
前記同期モータで消費される電力を検出する消費電力検出手段と、
前記同期モータのトルク指令値および回転数に応じて、前記予想値と前記検出された電力との偏差を含む所定のパラメータと、予め設定された所定の閾値との大小関係とを比較し、前記同期モータの脱調が発生しているか否かを判定する脱調判定手段とを備え、
前記予想値は、前記同期モータのトルク指令値および回転数に基づいて決定される電流と電圧の設定値から算出される予想消費電力であるものとした。
【0007】
また、第2の構成の脱調検出装置として、
前記同期モータに単位時間当たりに入力または出力されるエネルギのうち少なくとも一方の予想値を求める予想値特定手段と、
前記同期モータで消費される電力を検出する消費電力検出手段と、
前記同期モータの回転数に応じて、前記予想値と前記検出された電力との比を含む所定のパラメータと予め設定された所定の閾値との大小関係とを比較し、前記同期モータの脱調が発生しているか否かを判定する脱調判定手段とを備え、
前記予想値は、前記同期モータのトルク指令値および回転数に基づいて決定される電流と電圧の設定値から算出される予想消費電力であるものとした。
【0008】
本発明の基本概念は、同期モータの制御時に、同期モータに本来入力されるべきエネルギ、または同期モータから本来出力されるべきエネルギと、実際に入力または出力されるエネルギとの相違に基づいて脱調の有無を判定しようとするものである。なお、制御処理においては、こうした判断は単位時間当たりのエネルギで行われるのが通常であるから、本明細書では、エネルギとは単位時間当たりにモータで入出力されるエネルギを意味するものとする。その意味で、本明細書においては、エネルギは仕事率、動力、電力と同義である。
【0009】
正常運転時には、本来入力または出力されるべきエネルギ(以下、「予想エネルギ」という)と、実際に入出力されるエネルギの検出値(以下、「検出エネルギ」)とは、熱による損失、制御の時間遅れ、電気角の検出誤差などに起因する若干の相違が存在する程度である。これに対し、脱調時には、両者の相違は、正常時とは明らかに区別できる程に大きく異なる。従って、予想エネルギと検出エネルギの相違を所定の基準で評価することにより脱調の有無を検出することができる。予想エネルギおよび検出エネルギは、共にモータのトルク、回転数、電圧、電流の乗算で求められるものであり、演算負担が非常に軽い。従って、本発明によれば、軽い負担で脱調を検出することが可能となる。
【0010】
モータに入出力されるエネルギには、大きく機械的なエネルギ、即ち動力と、電気的なエネルギ、即ち電力とがある。機械的なエネルギを用いることも可能ではあるが、本発明では、いずれの脱調検出装置においても、検出エネルギとしては、モータで消費される電力を用いる。消費電力は、通常のモータ制御時に必要なセンサを用いて検出することができるため、新たなハードウェアの追加が不要であるという利点がある。
【0011】
予想エネルギと検出エネルギの相違について、第1の構成では、両者の偏差を含むパラメータを用い、第2の構成では、両者の比を含むパラメータを用いるものとした。両者の偏差または両者の比に適宜、所定の係数を乗じたパラメータや、両者の偏差または両者の比を含む関数として設定されたパラメータを用いることができる。
【0012】
本発明では、これらのパラメータと予め設定された所定の閾値との大小関係に基づき脱調が発生しているか否かを判定するが、第1の構成においては、大小関係の判定をトルク指令値および回転数に応じて行い、第2の構成においては、回転数に応じて行う。「応じて」とは、パラメータ自体をトルク指令値、回転数などに基づいて補正した上で所定の閾値と比較する態様、所定の閾値をトルク指令値、回転数との関係で設定する態様の両者が含まれる。
【0013】
本願の発明者は、本発明を完成するに当たり、上述のパラメータと脱調との関係を精緻に調査した。その結果、従来、報告されて来なかった事象として、予想エネルギと検出エネルギの偏差を含むパラメータを用いた場合には、該パラメータの値が、トルク指令値、回転数に応じて変動する現象を見出した。第1の構成は、かかる観点から実現されており、トルク指令値および回転数に応じて、パラメータの値と所定の閾値とを比較することにより、脱調の有無を的確に判断することができる。
【0014】
同じく、従来、報告されて来なかった事象として、予想エネルギと検出エネルギの比を含むパラメータを用いた場合には、該パラメータの値が、回転数に応じて変動するものの、トルク指令値の影響をほとんど受けない現象を見出した。第2の構成は、かかる観点から実現されており、回転数に応じて、パラメータの値と所定の閾値とを比較することにより、脱調の有無を的確に判断することができる。第2の構成によれば、トルク指令値を考慮する必要がない利点がある。
【0015】
前述の通り、予想エネルギには、機械的エネルギと電気的エネルギの双方が利用可能であるから、
前記予想値は、前記同期モータのトルク指令値および回転数に基づいて算出される該同期モータに入力または出力される機械的動力とすることもできるが、
本発明の脱調検出装置においては、
前記予想値は、前記同期モータのトルク指令値および回転数に基づいて決定される電流と電圧の設定値から算出される予想消費電力であるものとしている。
【0016】
トルク指令値、回転数は同期モータを制御する際に必ず入力される値であるから、前者の態様では、これを利用して直ちに予想エネルギを求めることができる利点がある。後者の態様では、トルク指令値および回転数での運転を実現するために消費される電力をテーブルまたは関数などを参照して求める必要が生じる。但し、モータの制御では、トルク指令値に応じてモータの各相に流す電流の設定はテーブルを参照して行われるのが通常であるから、消費される電力もこれと併せて行うものとすれば、比較的軽い負荷で求めることができる利点がある。また、同期モータは停止中でもロータにトルクを作用させることができ、この場合、前者の態様では機械的動力が0となるため、脱調判定が困難となるが、後者の態様は、かかる弊害なく脱調の検出を適切に行うことができる利点がある。
【0017】
本発明の脱調検出装置は、電気角をホール素子などを利用したセンサによって検出しながらモータの運転を制御する場合に適用することもできるが、前記電気角の検出がセンサレスで行われる場合に、より有効に適用することができる。センサレスで電気角を検出して運転を制御する場合には、電気角の検出値に誤差が生じやすく脱調しやすいからである。また、同期モータの回転中に適用されるセンサレスでの電気角の検出方法は、一般に誤差が所定範囲内に収まっている場合に安定して電気角を検出できるように設定されており、一旦検出誤差が大きくなり脱調が生じると、電気角を検出して運転制御を通常の状態に修復することが非常に困難となるからである。更に、本発明の脱調検出装置は、非常に軽い負荷で脱調の判定を行うことができるため、電気角の検出時の処理負担が比較的大きいセンサレス制御においても、制御装置に過度な負荷がかかることを回避できる利点がある。
【0018】
以上では、本発明を脱調検出装置として構成した場合について説明した。本発明は、かかる態様に限らず種々の態様で構成可能である。例えば、上記脱調検出装置を組み込んだモータ制御装置として構成してもよいし、該モータ制御装置およびモータを適用した車両、産業機械などの装置として構成してもよい。また、脱調検出方法、モータ制御方法などの態様で構成することも可能である。
【0019】
これらの態様において、脱調が検出された場合においてモータの運転を通常の状態に戻すための対処手段を備えるものとしてもよい。対処手段は、例えば、モータの運転制御処理をリセットし、運転を再開することによって通常の状態に復帰させる手段として構成することができる。また、該モータを搭載した装置の運転者に対し、脱調が生じたことを報知する手段を設け、通常の状態への復帰を促す態様で構成するものとしてもよい。このように対処手段は、モータの制御上、脱調検出装置よりも上位の階層に位置する制御部に対し、通常の運転状態への復帰を促す種々の構成を適用することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、実施例に基づき、以下の順序で説明する。最初に、制御ゲインの設定対象となるモータ制御装置の構成およびその制御処理について説明し、その後、制御ゲインの設定方法について説明する。
A.装置の構成:
B.モータ制御処理:
C.電気角検出処理:
D.電流制御処理:
E.脱調判定処理:
F.第1実施例の変形例:
G.第2実施例:
H.第2実施例の変形例:
【0021】
A.装置の構成:
図1は実施例としてのモータ制御装置10の概略構成を示す説明図である。脱調検出装置は、モータ制御装置10のハードウェアを利用しており、モータ制御装置の一機能として構成されている。制御対象となるモータ40は種々の同期モータを適用可能であり、本実施例では、ロータに永久磁石を貼付した突極型の三相同期モータを用いた。モータ制御装置10は、トランジスタインバータ130をスイッチングして、電源としてのバッテリ132からモータ40のU,V,W相に流れる電流を制御することで、その運転を制御する。本実施例ではモータ40について、ロータの電気角を検出するセンサを設けず、センサレスで電気角を算出して制御するものとしている。
【0022】
モータ制御装置10は、制御ユニット100、三相同期モータ40のU相電流iu、V相電流ivを検出する電流センサ102、103、検出された電流の高周波ノイズを除去するフィルタ106、107、検出した電流値をディジタルデータに変換する2個のアナログディジタル変換器(ADC)112、113を備え、これらによって各相に流れる電流を検出する。W相について電流センサ、フィルタ、ADCを備えないのは、三相交流の場合、U,V,W相の電流の総和は常に値0に保たれているため、W相の電流iwについては検出しなくても、U,V相の電流値から算出可能だからである。また、モータ40の回転数を検出する回転数センサ41が備えられており、検出された回転数は制御ユニット100に入力される。
【0023】
制御ユニット100の内部には、図示するように、算術論理演算を行うCPU120、このCPU120が行う処理や必要なデータを予め記憶したROM122、処理に必要なデータ等を一時的に読み書きするRAM124、計時を行うクロック126等が設けられており、バスにより相互に接続されている。このバスには、入力ポート116や出力ポート118も接続されており、CPU120は、これらのポート116を介して、三相同期モータ40のU,Vの各相に流れる電流iu,ivを読み込むことができる。また、制御ユニット100には、トルク指令が別途入力される。
【0024】
制御ユニット100の出力ポート118からは、トランジスタインバータ130のU,V,W相について設けられた各トランジスタをいわゆるPWM制御するための制御出力Vu,Vv,Vwが出力される。この制御出力に応じて各トランジスタがオン・オフされると、同期モータ40のU,V,W相のコイルには擬似正弦波の交流が流れ回転磁界を生じ、その作用によってモータ40が回転する。
【0025】
B.モータ制御処理:
次に、本実施例におけるモータ制御処理について説明する。図2は三相同期モータ40の等価回路である。三相同期モータ40は、図示する通り、U,V,Wの三相コイルと、永久磁石を有するロータで表される。この等価回路において永久磁石のN極側を正方向として貫く軸をd軸と呼び、d軸に直交する軸をq軸と呼ぶ。電気角はU相コイルを貫く軸とd軸との角度θとなる。
【0026】
モータ40の運転をベクトル制御する場合、要求されたトルクによってd軸方向、q軸方向に流すべき電流値がそれぞれ決まる。かかる電流を実現するためには、各相に流れる電流を電気角に応じて変化させる必要がある。ところが、モータ40をセンサレスで制御する場合、電気角θは制御ユニット100にとっては未知数である。従って、制御ユニット100は、従前の電気角とモータ40の回転速度から現時点での電気角θcを推定して電圧を印加し、その電圧に応じて各相に流れる電流値を用いた所定の演算式によって電気角の誤差Δθを補正して真値θを検出する。こうして検出された電気角θに基づいて各相に流れる電流を制御するのである。なお、正常に運転している場合には、電気角の誤差が比較的小さいため上述の処理により安定してモータ40を駆動することができる。しかしながら、何らかの原因により電気角の検出誤差が極端に大きくなると、上述の制御を安定して行うことができなくなり、モータ40の運転を制御できなくなることがある。かかる状態を脱調と呼ぶ。本実施例のモータ制御装置10は、モータ40の駆動制御と併せて脱調が生じているか否かの判定を行うことにより、その対処も可能としている。本実施例におけるモータ制御は、以下に示すフローチャートにより実現される。
【0027】
図3はモータ制御処理ルーチンのフローチャートである。制御ユニット100のCPU120が繰り返し実行する処理である。この処理では、まずトルク指令値、およびモータ40の回転数を入力し、電気角検出処理を行ってモータ40の電気角を検出する(ステップS10、S20)。その後、要求トルクを出力するための電流を検出された電気角に応じて流す電流制御処理を行う(ステップS30)。最後に、脱調の有無を判定する脱調判定処理を行う(ステップS40)。なお、図3の例では、モータ制御処理ルーチンを実行する度に脱調判定処理を行う場合を例示したが、脱調判定処理は、このルーチンを数回実行するごとに行うものとしてもよい。以下、各ルーチンについて説明する。
【0028】
C.電気角検出処理:
図4は電気角検出処理ルーチンのフローチャートである。本実施例では、軽い演算負荷で精度良く電気角を検出可能な方法を用いた。即ち、モータ40のコイルについて成立する電圧方程式に基づいて求められるd軸電流のモデル値と実際に検出されたd軸電流の値との偏差を少なくとも含む単一のパラメータを用いた演算式で電気角を検出するものとした。
【0029】
電気角検出処理は、以下の手順で行われる。この処理が開始された時点では、これまでに行ってきた制御に基づいてCPU120は電気角をあるモデル値θcに推定している(図2参照)。また、モータ40の各コイルには、これまでに行ってきた制御により、要求トルクに応じた電流が流れている。この状態で、CPU120はd軸の電流Id、q軸の電流Iqを検出する(ステップS21)。これらの電流は、図1に示した電流センサ102,103により検出されるU相、V相の電流値を3相/2相変換することにより得られる。
【0030】
こうして検出された電流値Id,Iqを用いて、CPU120は次式(1)〜(4)により、ΔId、ΔIqを算出する(ステップS22)。
ΔId=Id(n)−Idm …(1);
Idm=Id(n−1)+t{Vd−R・Id(n−1)+ω・Lq・Iq(n−1)}/Ld …(2);
ΔIq=Iq(n)−Iqm …(3);
Iqm=Iq(n−1)+t{Vq−R・Iq(n−1)−ω・Ld・Id(n−1)−E(n−1)}/Lq …(4);
ここで、各変数は次の内容を意味する。
Id(n)は現タイミングにおける磁化電流の値;
Idmは磁化電流のモデル値;
Id(n−1)は前タイミングにおける磁化電流の値;
Iq(n)は現タイミングにおけるトルク電流の値;
Iqmはトルク電流のモデル値;
Iq(n−1)は前タイミングにおけるトルク電流の値;
Ldは磁化電流の方向のインダクタンス;
Lqはトルク電流の方向のインダクタンス;
Rはコイルの抵抗値;
Eはコイルに生じる起電力;
Vdは磁化電流方向の電圧値;
Vqはトルク電流方向の電圧値;
tは演算の実行周期;
ωはモータの回転角速度[rad/sec];
【0031】
次にCPU120は、ΔId、ΔIqの補正を行う(ステップS23)。本実施例では、要求トルクと補正量との関係がROM122にテーブルとして記憶されており、CPU120は要求トルクに基づいてこのテーブルを参照してΔId、ΔIqの補正量を求めている。この補正は、要求トルクが大きくなった場合にモータ40のコイルに磁束飽和が生じ、電流の偏差ΔId、ΔIqが(1)〜(4)式からずれるのを補償するための補正である。補正量は電気角が誤差0のときにΔId,ΔIqが値0となるように、要求トルクに応じて実験的に設定される。コイルに流れる電流が比較的小さい場合には、かかる補正を省略するものとしてもよい。後述する通り、本実施例では、「ΔId+ΔIq」なるパラメータを用いて電気角の算出を行うから、補正テーブルはこのパラメータに合わせ、「ΔId+Iq」に対して備えるものとしてもよい。更に、パラメータによっては、「α・ΔId+β・ΔIq(α、βは係数)」の形で補正テーブルを備えることもできる。
【0032】
こうして求められたΔId、ΔIqを用いて、次式(5)(6)により電気角θ(n)を求め(ステップS24)、式(7)によりωを算出する(ステップS25)。こうして算出された電気角θ(n)および角速度ωは、次のタイミングにおける制御処理において用いられる。
θ=θ(n−1)+Kp・PM+Ki・ΣPM …(5);
PM=α・ΔId+β・ΔIq …(6);
ω=(Kp・PM+Ki・ΣPM)/t …(7);
つまり、ΔId、ΔIqの多項式を一つのパラメータとする比例積分制御によって電気角θを算出していることになる。なお、α、βは任意の実数であり、本実施例ではα=β=1とした。Kp,Kiは制御ゲインであり、実験的または解析的に適切な値を設定すればよい。
【0033】
かかる処理によれば、単一のパラメータPMを用いた比例積分式で電気角を検出することができるため、高速に処理することができる。また、制御ゲインKp,Kiの設定次第で非常に高い精度で電気角を検出できることが確認されている。なお、電気角をセンサレスで検出する方法は、他にも種々の方法が知られており、これらのいずれを適用しても構わない。一例として、電圧方程式の微分項を時間差分に置き換えた演算式を用いて電気角を検出する方法を適用することができる。
【0034】
D.電流制御処理:
図5は電流制御処理ルーチンのフローチャートである。トルク指令値T*、回転数Nに応じて各相に流れる電流を制御する処理である。この処理では、CPU120は、まずトルク指令値T*、回転数Nおよび電気角θを入力する(ステップS31)。そして、各相の電流iu,iv,iwを検出する(ステップS32)。検出された各相電流を3相/2相変換すれば、d軸、q軸方向に流れている電流を求めることができる。電気角θは、この3相/2相変換に用いられる。次に、トルク指令値T*,回転数Nに基づいて、その運転状態を実現するためのd軸電流、q軸電流を設定する(ステップS33)。トルク指令値、回転数とd軸電流、q軸電流との対応関係を予め2次元テーブルの形で用意し、このテーブルを参照してd軸電流、q軸電流を設定する。こうして各軸方向に流すべき電流が設定されると、検出されたd軸電流、q軸電流との偏差に基づいて印加電圧を設定する(ステップS34)。印加電圧の設定は、種々の方法で行うことができるが、ここでは、偏差に基づく比例積分制御で印加電圧を設定した。d軸、q軸電圧をトルク指令値T*、回転数Nの2次元テーブルで与え、開ループ制御するものとしてもよい。これらの方法により、d軸方向、q軸方向の印加電圧が設定されると、CPU120は、2相/3相変換により、各相への印加電圧に変換し、この電圧を実現するようにインバータのスイッチングを制御する信号を生成する(ステップS35)。
【0035】
E.脱調判定処理:
本実施例における脱調判定の考え方は次の通りである。電気角の検出誤差が小さい場合、電流制御においてd軸、q軸には設定通りの電圧が印加され、設定された電流が流れるはずである。この結果、モータ40はトルク指令値、回転数に応じた状態で回転する。つまり、モータ40からは「トルク指令値×回転数」で表される機械的な動力が出力されるはずである。このとき、モータ40で消費される電力とモータ40から出力されるべき動力(以下、期待動力と呼ぶ)との差違は、電気角検出誤差や制御の時間遅れに起因する若干の誤差に伴う損失分や熱で失われる損失分程度の比較的小さい範囲に収まる。
【0036】
一方、脱調が生じていると、電気角の検出誤差が非常に大きいため、電流制御においてd軸、q軸に設定通りの電圧が印加されなくなる。d軸、q軸は、電気角に応じて回転する軸であり、電気角の検出誤差が大きい場合には、制御ユニット100がd軸、q軸方向であると確信している方向と現実のd軸、q軸方向が大きく異なってしまうためである。この結果、各相に流れる電流が本来の電流と異なるだけでなく、通電によって生じた磁界がする仕事量が正常時と大きく異なることなどに起因して消費される電力も正常時と異なってくる。従って、モータ40で消費される電力とモータ40から出力されるべき動力との差違は、非常に大きくなる。こうした関係は、モータ40が回生運転されている場合にも成立する。回生運転している場合には、トルク指令値T*が負の値となるから期待動力は負の値となる。一方、モータ40では発電が行われるため、消費電力としては負の値となる。従って、双方が負の値同士で上述の関係が成立する。
【0037】
本実施例における脱調判定は、かかる性質を利用したものであり、モータ40の期待動力と実際に消費される電力との差違に基づいて脱調の有無を判定する。脱調判定は、具体的には次の処理により実現される。図6は脱調判定処理ルーチンのフローチャートである。この処理では、CPUは、トルク指令値T*、モータ40の回転数Nおよび電圧指令値vu,vv,vwを入力する(ステップS41)。電圧指令値vu,vv,vw[V]は、先に図3で示した電流制御処理で設定される値である。次に、各相の電流iu,iv,iw[A]を電流センサ102,103を利用して検出し、電圧指令値と電流値との各相ごとの積の総和から消費電力Pe[W]を演算する(ステップS42,S43)。即ち、「Pe=iu×vu+iv×vv+iw×vw」である。
【0038】
次に、トルク指令値と回転数との積から期待動力Pmを計算する(ステップS44)。ここで、期待動力Pmは電力Peと統一された単位系で演算される。本実施例では、トルク指令値[N・m]と回転数[rad/sec]とを用いて演算した。
【0039】
演算された電力Peと期待動力Pmとの差の絶対値をパラメータとし、このパラメータが所定の閾値Thよりも大きいか否かを判定する(ステップS45)。ここで、パラメータと閾値Thとの関係について説明する。図7は「Pe−Pm」と電気角の検出誤差との関係を示すグラフである。本願発明者がある同期モータを用いて行った実験結果である。ここでは、回転数N1[rpm]における4段階のトルク指令値T1,T2,T3,T4について結果を例示した。T1,T2,T3,T4の順にトルク指令値が大きくなる。電気角の検出誤差が0近傍、即ち、正常運転されている場合には、先に説明した通り、電力Peと期待動力Pmとの偏差もほぼ0に近い状態にあるが、電気角の検出誤差が大きくなるにつれて偏差の絶対値が大きくなることが分かる。検出誤差が極端に大きくなると制御が非常に不安定になり脱調に至る。
【0040】
脱調の判断基準となる検出誤差は、電気角検出処理や電流制御処理のモデルや要求される制御の精度に応じて任意に設定可能である。本実施例では、検出誤差の絶対値が90度よりも若干小さい値に脱調の判断基準Alimを設定した。従って、ステップS45で用いられる閾値Thは、この判断基準となる値Alimに対応する偏差を用いればよい。図示する通り、トルク指令値T4について、検出誤差「Alim」に対応する値は点P1における偏差である。検出誤差「−Alim」に対応する値は点P2における偏差である。本実施例では、両者が一致しないため、安全側に閾値を設定した。即ち、絶対値の小さい点P1に相当する値を閾値Thとして用いた。この結果、検出誤差が負側に現れる場合は、検出誤差「−Alim1」よりも負側になった時点で脱調と判定されることになる。
【0041】
図7の実験結果から明らかな通り、脱調の判断基準となる検出誤差と、それに対応する偏差との関係は、トルク指令値に応じて変動する。従って、本実施例では、ステップS45で用いられる閾値Thを、トルク指令値ごとに設定した。また、図7に示した実験結果は、ある回転数N1[rpm」におけるものであり、他の回転数N2,N3においては、起電力の相違などに起因して異なる実験結果が得られている。従って、本実施例では、ステップS45で用いられる閾値Thを、回転数によって異なる値に設定した。実際には、閾値Thをトルク指令値、回転数に応じた2次元テーブルの形で記憶し、ステップS45では、トルク指令値T*、回転数Nに応じてこの2次元テーブルを補間して閾値Th(T*、N)を求めた。
【0042】
図6に戻り、脱調判定処理について引き続き説明する。ステップS45において、パラメータの値が閾値Thよりも大きい場合には、脱調している可能性があると判断され、閾値Th以下である場合には、正常状態であると判断される。但し、ノイズの影響によりパラメータが瞬間的に閾値Thを超える可能性があるため、本実施例では、かかる原因による誤判断を回避すべく、パラメータが閾値Thを超える状態が一定期間継続した場合に初めて脱調が生じているものと判断する。
【0043】
この判断は、継続時間を表す変数tdを用いて行われる。ステップS45においてパラメータが閾値Thよりも大きい場合には、変数tdをΔtだけ増大させる(ステップS46)。Δtは、脱調判定処理ルーチンを前回実行してから今回までの経過時間である。通常、脱調判定処理ルーチンは、一定時間ごとに周期的に行われるから、かかる場合には、Δtはこのサンプリングタイムに相当する一定値を用いることができる。こうして徐々に増大する変数tdが所定の臨界値tlimを超えた場合に、脱調が生じたと判断して、脱調の検出フラグFrをオン、即ち値1にする(ステップS47,S48)。変数tdの値が臨界値tlim以下である間は、脱調が生じていないと判断して、検出フラグFrをオフ、即ち値0に設定する(ステップS50)。一方、ステップS45においてパラメータが閾値Th以下である場合には、脱調は生じていないと判断されるから、変数tdを値0にリセットするとともに(ステップS49)、検出フラグFrを値0に設定する(ステップS50)。
【0044】
以上で説明した本実施例のモータ制御装置によれば、出力されるべき期待動力と実際の消費電力との偏差に基づいて脱調の有無を検出することができる。両者の値は、上述の通り、乗算、加算程度で求めることができるため、脱調検出を非常に軽い処理負担で実現することができる。この結果、モータの駆動制御の信頼性を向上することができる。特に、センサレスで電気角を検出してモータを制御する場合には、検出誤差が大きくなると、制御が非常に不安定になり、正常な運転状態に自然復帰させることが非常に困難である。従って、脱調判定処理を設けることが制御の信頼性確保のために必須である。特に本実施例のように軽い負担で脱調検出できれば、その有用性は非常に高い。
【0045】
本実施例では、脱調検出した結果をフラグFrに格納するのみであり、特別な対処を施してはいない。脱調が生じた場合の対処は、このフラグFrの値に基づいて、図3に示したモータ制御処理よりも上位の階層に位置するルーチンで行うことができる。処理内容は、種々の態様が考えられ、例えば、モータ40の運転制御を一旦リセットし、電気角の初期検出のための特別なルーチンから再度実行し直すものとすることができる。また、モータ40が搭載された装置の運転者に脱調が生じたことを音または表示などで報知し、運転の停止を促す処理を行うものとしてもよい。モータ40の代替となる動力源が備えられている装置の場合には、モータ40の運転を停止し、代替動力源への切り替えを行うことも可能である。もちろん、これらの対処は、脱調検出処理において併せて行うものとしても構わない。
【0046】
F.第1実施例の変形例:
実施例では、消費電力Peと期待動力Pmとの偏差を脱調判定のパラメータとして用いた場合を例示した。パラメータは、他にも種々の設定が可能である。変形例として、消費電力Peと期待動力Pmとの比を含むパラメータを用いる場合を例示する。
【0047】
図8はパラメータ「Pe/Pm」と電気角の検出誤差との関係を示すグラフである。先に図7で示したのと同様、4段階のトルク指令値T1,T2,T3,T4に対する結果を示した。図示する通り、電気角の検出誤差が0付近では、両者の比はほぼ1に近い値となる。検出誤差が大きくなるほど、両者の比は値1よりも小さくなる。実施例におけるパラメータ「Pe−Pm」の場合は、トルク指令値に応じて、検出誤差とパラメータの値とが異なる結果を示していた。これに対し、変形例では、検出誤差が±90度以内の範囲であれば、検出誤差とパラメータとの関係はトルク指令値に関わらず一致することが分かる。従って、変形例におけるパラメータ「Pe/Pm」を用いる場合には、脱調の判定基準となる閾値(図6のステップS45参照)は、トルク指令値に依存せず、回転数のみの関数として設定することができる。
【0048】
つまり、変形例におけるパラメータ「Pe/Pm」を用いて脱調判定を行う場合には、脱調判定の基準となるパラメータ値を回転数に応じた1次元のテーブルとして記憶しておけば済む。脱調判定は、実施例(図6参照)の処理をそのまま適用しつつ、ステップS45において、回転数のみとの関係で閾値Thを求めるようにすればよい。このため、変形例では、閾値を記憶するテーブルの容量を抑制することができ、補間などで閾値を求める処理を更に簡略化することができる利点がある。ここでは、「Pe/Pm」をパラメータとして用いた場合を例示したが、これに限らず「Pe/Pm」を含む多項式などをパラメータとして用いることができる。
【0049】
G.第2実施例:
次に第2実施例としてのモータ制御装置について説明する。モータ制御装置のハードウェア構成およびモータ制御処理の内容は、第1実施例と同じである(図1、図3参照)。第2実施例では、脱調判定処理ルーチンの処理内容、具体的には処理に用いるパラメータの種類が第1実施例と相違する。第1実施例では、モータ40で実際に消費される電力とモータ40から出力されるべき期待動力とを用いて脱調の判定を行った。これに対し、第2実施例では、期待動力に変えて消費電力の予想値、即ち、モータ40が正常に運転されている場合に消費されると予想される電力値を用いて脱調の検出を行う。先に説明した通り、正常に運転されている場合には、モータ40の期待動力と消費電力の予想値とは、ほぼ一致する物理量であるから、脱調判定の基本的な考え方も第1実施例と共通している。
【0050】
図9は第2実施例における脱調判定処理ルーチンのフローチャートである。この処理では、CPU120はモータ40のトルク指令値T*、回転数N、各相の電圧指令値vu,vv,vwに加えて予想消費電力P0を入力する(ステップS60)。予想消費電力P0は、モータ40の電流制御処理(図3のステップS30)で容易に求めることができる。先に説明した通り、電流制御処理では、d軸電流、q軸電流について予め設定されたテーブルを参照して、トルク指令値T*、回転数Nに対応したd軸電流id0、q軸電流iq0を設定し、この電流値を流すべく、d軸電圧vd0、q軸電圧vq0、ひいては各相に印加すべき電圧を算出する。ここで設定された電圧が印加されれば、上述のd軸電流id0、q軸電流iq0が各相に流れるはずである。従って、予想消費電力P0は、電流制御処理の過程において、設定されたd軸電流id0、q軸電流iq0、d軸電圧vd0、q軸電圧vq0を用いて次式で与えられる。
P0=id0×vd0+iq0×vq0;
【0051】
本実施例では、予め予想消費電力P0を算出しておき、トルク指令値T*、回転数Nに対応してd軸電流、q軸電流を与えるテーブルに併せて予想消費電力P0も与えるテーブルを用意した。電流制御処理では、このテーブルを参照することにより、d軸電流、q軸電流を設定するとともに予想消費電力P0を得ることができる。脱調判定処理ルーチンでは、この予想消費電力P0を入力するのである。なお、予想消費電力P0を、テーブルで与えるものとせず、上式を用いて毎回算出するものとしてもよい。
【0052】
脱調判定処理ルーチンでは、次に、各相の電流を検出し(ステップS61)、入力した電圧指令値との積をとって実際に消費されている電力Peを算出する(ステップS62)。この処理は、第1実施例と同様である。
【0053】
第2実施例では、脱調判定用のパラメータとして、消費電力Peと予想消費電力P0との偏差の絶対値を用いる。つまり、|Pe−P0|をパラメータとする。このパラメータが所定の閾値Thよりも大きくなる状態が、所定の期間tlimを超えるまでは脱調が生じていないものと判定して、フラグFrを値0に維持し、所定の期間tlimを超えた場合には脱調が生じたものと判定して、フラグFrに値1を設定する(ステップS63〜S66)。上記パラメータが閾値Th以下の場合には、脱調が生じていないものと判定して、継続時間を表す変数tdを0にリセットするとともに、フラグFrも0に維持する(ステップS63,S67,S68)。この処理も第1実施例と同じである。
【0054】
第2実施例におけるパラメータと閾値Thとの関係について説明する。図10は「Pe−P0」と電気角の検出誤差との関係を示すグラフである。4段階のトルク指令値T1,T2,T3,T4に対応する値を示した。図示する通り、検出誤差が0度の場合には、消費電力Peと予想消費電力P0とはほぼ一致し、「Pe−P0」は値0となる。検出誤差が大きくなるにつれて「Pe−P0」の値は0からずれる。但し、パラメータのずれ量は、トルク指令値に応じて異なる。また、回転数に応じても異なる。従って、第2実施例では、第1実施例と同様、トルク指令値、回転数の2次元テーブルとして閾値Thを設定した。ステップS63では、入力したトルク指令値、回転数に基づいてこの2次元テーブルを参照して閾値Thの値を求め、この値とパラメータ|Pe−P0|との大小関係を比較するものとした。
【0055】
以上で説明した第2実施例のモータ制御装置によれば、第1実施例と同様、比較的軽い負荷で脱調を的確に判定することができる。第1実施例では、脱調判定処理において期待動力の演算を要したが、第2実施例では、予想消費電力をテーブルで与えるものとしたため、脱調判定処理の負荷を更に軽減することができる。また、同期モータ40は、停止時にも回転軸にトルクを与えることができる。かかる場合、期待動力の値は0となるため、第1実施例では脱調判定が困難となるが、予想消費電力P0を用いる第2実施例では、かかる問題なく脱調判定をすることができる。
【0056】
H.第2実施例の変形例:
第2実施例では、消費電力Peと予想消費電力P0との偏差を脱調判定のパラメータとして用いた場合を例示した。第2実施例においても、パラメータは、他にも種々の設定が可能である。変形例として、消費電力Peと予想消費電力P0との比をパラメータとして用いる場合を例示する。
【0057】
図11はパラメータ「Pe/P0」と電気角の検出誤差との関係を示すグラフである。4段階のトルク指令値T1,T2,T3,T4に対する結果を示した。図示する通り、電気角の検出誤差が0付近では、両者の比は1よりも若干大きい値となる。検出誤差が大きくなるほど、両者の比は小さくなる。第2実施例におけるパラメータ「Pe−P0」の場合は、トルク指令値に応じて、検出誤差とパラメータの値とが異なる結果を示していた。これに対し、変形例では、検出誤差が±90度以内の範囲であれば、検出誤差とパラメータとの関係はトルク指令値に関わらず一致する。従って、変形例におけるパラメータ「Pe/P0」を用いる場合には、脱調の判定基準となる閾値(図9のステップS63参照)は、トルク指令値に依存せず、回転数のみの関数として設定することができる。
【0058】
このように、変形例におけるパラメータ「Pe/P0」を用いて脱調判定を行う場合には、脱調判定の基準となるパラメータ値を回転数に応じた1次元のテーブルとして記憶しておけば済む。脱調判定は、実施例(図6参照)の処理をそのまま適用しつつ、ステップS63において、回転数のみとの関係で閾値Thを求めるようにすればよい。このため、変形例では、閾値を記憶するテーブルの容量を抑制することができ、補間などで閾値を求める処理を更に簡略化することができる利点がある。ここでは、「Pe/P0」をパラメータとして用いた場合を例示したが、これに限らず「Pe/P0」を含む多項式など任意のパラメータを用いることができる。
【0059】
以上で説明した各実施例および変形例では、モータ40をセンサレスで制御する場合を対象とした。本発明は、かかる場合のみならず、モータ40の電気角を検出するためのセンサを備える場合にも適用可能である。この場合は、モータの制御処理(図3)における電気角検出処理がセンサの出力を入力する処理に変更されるのみであり、脱調判定処理を含むその他の処理は、実施例および変形例における処理内容をそのまま適用することができる。更に、本実施例および変形例で例示した脱調の検出方法は、電気角の検出誤差の大きさを判断する方法として用いることも可能であるから、これを用いて、モータのセンサレス制御の補正を行うこともできる。補正とは、電気角の定量的な補正を行う場合に限らず、検出誤差が所定値以上に大きくなったと判断された場合には、よりロバスト性の高い制御モデルを実現するように、センサレス制御のモデルまたはゲインを切り替えたりる方法をとってもよい。その他、安定した運転を実現するための種々の補正に適用することが可能である。また、本実施例および変形例は、脱調の検出を行うだけでなく、脱調状態にあることを当該モータが搭載された装置の運転者に警告する処理とともに用いたり、脱調状態の程度によってはモータの運転を禁止したり、減速したりする処理とともに用いたりすることも可能である。後者の例としては、例えば、通常の制御では脱調状態からの回復が不可能と判断される程、脱調が激しい場合に、モータの運転を禁止する処理が含まれる。
【0060】
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、以上の制御処理はソフトウェアで実現する他、ハードウェア的に実現するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例としてのモータ制御装置10の概略構成を示す説明図である。
【図2】三相同期モータ40の等価回路を示す説明図である。
【図3】モータ制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図4】電気角検出処理ルーチンのフローチャートである。
【図5】電流制御処理ルーチンのフローチャートである。
【図6】脱調判定処理ルーチンのフローチャートである。
【図7】パラメータ「Pe−Pm」と電気角の検出誤差との関係を示すグラフである。
【図8】パラメータ「Pe/Pm」と電気角の検出誤差との関係を示すグラフである。
【図9】第2実施例における脱調判定処理ルーチンのフローチャートである。
【図10】パラメータ「Pe−P0」と電気角の検出誤差との関係を示すグラフである。
【図11】パラメータ「Pe/P0」と電気角の検出誤差との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10…モータ制御装置
40…同期モータ
41…回転数センサ
100…制御ユニット
102,103…電流センサ
102…電流センサ
106…フィルタ
116…ポート
116…入力ポート
118…出力ポート
120…CPU
122…ROM
124…RAM
126…クロック
130…トランジスタインバータ
132…バッテリ
Claims (5)
- 電気角を検出し、該電気角に応じてコイルに多相交流を流して同期モータの駆動を制御する際における脱調を検出する脱調検出装置であって、
前記同期モータに単位時間当たりに入力または出力されるエネルギのうち少なくとも一方の予想値を求める予想値特定手段と、
前記同期モータで消費される電力を検出する消費電力検出手段と、
前記同期モータのトルク指令値および回転数に応じて、前記予想値と前記検出された電力との偏差を含む所定のパラメータと、予め設定された所定の閾値との大小関係とを比較し、前記同期モータの脱調が発生しているか否かを判定する脱調判定手段とを備え、
前記予想値は、前記同期モータのトルク指令値および回転数に基づいて決定される電流と電圧の設定値から算出される予想消費電力である、脱調検出装置。 - 電気角を検出し、該電気角に応じてコイルに多相交流を流して同期モータの駆動を制御する際における脱調を検出する脱調検出装置であって、
前記同期モータに単位時間当たりに入力または出力されるエネルギのうち少なくとも一方の予想値を求める予想値特定手段と、
前記同期モータで消費される電力を検出する消費電力検出手段と、
前記同期モータの回転数に応じて、前記予想値と前記検出された電力との比を含む所定のパラメータと予め設定された所定の閾値との大小関係とを比較し、前記同期モータの脱調が発生しているか否かを判定する脱調判定手段とを備え、
前記予想値は、前記同期モータのトルク指令値および回転数に基づいて決定される電流と電圧の設定値から算出される予想消費電力である、脱調検出装置。 - 請求項1または請求項2記載の脱調検出装置であって、
前記同期モータの駆動において、前記電気角の検出がセンサレスで行われることを特徴とする脱調検出装置。 - 電気角を検出し、該電気角に応じてコイルに多相交流を流して同期モータの駆動を制御する際における脱調を検出する脱調検出方法であって、
(a) 前記同期モータに単位時間当たりに入力または出力されるエネルギのうち少なくとも一方の予想値を求める工程と、
(b) 前記同期モータで消費される電力を検出する工程と、
(c) 前記同期モータのトルク指令値および回転数に応じて、前記予想値と前記検出された電力との偏差を含む所定のパラメータと予め設定された所定の閾値との大小関係とを比較し、前記同期モータの脱調が発生しているか否かを判定する工程とを備え、
前記工程(a)は、前記同期モータのトルク指令値および回転数に基づいて決定される電流と電圧の設定値から算出される予想消費電力を求める工程を含む、脱調検出方法。 - 電気角を検出し、該電気角に応じてコイルに多相交流を流して同期モータの駆動を制御する際における脱調を検出する脱調検出方法であって、
(a) 前記同期モータに単位時間当たりに入力または出力されるエネルギのうち少なくとも一方の予想値を求める工程と、
(b) 前記同期モータで消費される電力を検出する工程と、
(c) 前記同期モータの回転数に応じて、前記予想値と前記検出された電力との比を含む所定のパラメータと予め設定された所定の閾値との大小関係とを比較し、前記同期モータの脱調が発生しているか否かを判定する工程とを備え、
前記工程(a)は、前記同期モータのトルク指令値および回転数に基づいて決定される電流と電圧の設定値から算出される予想消費電力を求める工程を含む、脱調検出方法。
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