JP3557355B2 - 内接噛合歯車機構の内歯歯車用ピン保持リングの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内歯歯車の歯がピン(径の大きいローラの概念も含む)によって構成されており、その内歯歯車に対して外歯歯車を内接噛合させた内接噛合歯車機構において、前記ピンを保持するための内歯歯車用ピン保持リングの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
内接噛合歯車機構の例として、従来、第1軸と、該第1軸の回転によって回転する偏心体と、該偏心体にベアリングを介して取り付けられ偏心回転が可能とされた複数の外歯歯車と、該外歯歯車に外ピンで構成される内歯を介して内接噛合する内歯歯車と、前記外歯歯車に該外歯歯車の自転成分のみを取り出す内ピンを介して連結された第2軸と、を備えた複列式内接噛合遊星歯車構造が広く知られている。
【0003】
この構造の従来例を図9及び図10に示す。この従来例は、前記第1軸を入力軸とすると共に、第2軸を出力軸とし、且つ内歯歯車を固定することによって上記構造を「減速機」に適用したものである。
【0004】
入力軸1には所定位相差(この例では180°)をもって偏心体3a、3bが嵌合されている。この偏心体3a、3bは、それぞれ入力軸1(中心O1)に対して偏心量eだけ偏心している(中心O2)。それぞれの偏心体3a、3bにはベアリング4a、4bを介して2枚の外歯歯車5a、5bが複列に取り付けられている。この外歯歯車5a、5bには内ローラ孔6a、6bが複数設けられ、内ピン7及び内ローラ8が嵌入されている。
【0005】
外歯歯車を2枚(複列)にしているのは、主に伝達容量の増大、強度の維持、回転バランスの保持を図るためである。
【0006】
前記外歯歯車5a、5bの外周にはトロコイド歯形や円弧歯形の外歯9が設けられている。この外歯9はケーシング12に固定された内歯歯車20と内接噛合している。内歯歯車20は、内周に軸線方向に沿った複数の半円状のピン保持孔13を有するピン保持リング10と、前記ピン保持孔13に回転しやすく遊嵌され且つピン保持孔13から露出した部分で円弧状歯形を形成する外ピン11とから構成されている。
【0007】
前記外歯歯車5a、5bを貫通する内ピン7は、出力軸2付近のフランジ部に固着又は嵌入されている。
【0008】
入力軸1が1回転すると偏心体3a、3bが1回転する。この偏心体3a,3bの1回転により、外歯歯車5a、5bは入力軸1の周りで揺動回転を行おうとするが、内歯歯車20によってその自転が拘束されるため、外歯歯車5a、5bは、この内歯歯車20に内接しながらほとんど揺動のみを行うことになる。
【0009】
今、例えば外歯歯車5a、5bの歯数をN、内歯歯車20の歯数をN+1とした場合、その歯数差Nは1である。そのため、入力軸1の1回転毎に外歯歯車5a、5bは、ケーシング12に固定された内歯歯車20に対して1歯分だけずれる(自転する)ことになる。これは入力軸1の1回転が外歯歯車5a、5bの−1/Nの回転に減速されたことを意味する。
【0010】
この外歯歯車5a、5bの回転は内ローラ孔6a、6b及び内ピン7(内ローラ8)の隙間によってその揺動成分が吸収され、自転成分のみが該内ピン7を介して出力軸2へと伝達される。
【0011】
この結果、結局減速比−1/N(マイナスは逆回転を表す)の減速が達成される。
【0012】
なお、この内接噛合遊星歯車構造は、現在種々の減速機あるいは増速機に適用されている。例えば、上記構造においては、第1軸を入力軸、第2軸を出力軸とすると共に、内歯歯車を固定するようにしていたが、第1軸を入力軸、内歯歯車を出力軸とすると共に、第2軸を固定することによっても、減速機を構成することが可能である。更に、これらの構造において、入、出力軸を逆転させることにより、「増速機」を構成することもできる。
【0013】
ところで、この種の内接噛合遊星歯車機構を小型化、高負荷能力化するためには、噛み合い部や摺動部を持つ部品のうち、内歯歯車20は高力特性を有し、外歯歯車5a、5b、外ピン11、内ローラ8、内ピン7、軸受4a、4b、偏心体3a、3bは高力特性と高硬度特性を有するように作らなければならない。そこで、通常は、そのような特性を持つ金属材料で上記の部品を製作している。
【0014】
しかし、高力特性、高硬度特性を有する金属材料は、通常比較的高い摩擦係数を持つため、これらの金属材料を使用した摺動接触面は、油やグリースで潤滑しておく必要があり、潤滑は接触面に油膜を形成して行うことから、そのための隙間を伝動機構の接触面同士の間に作っておく必要がある。この隙間は、動力伝達時の弾性変形や部品の加工誤差を吸収するためにも必要なものである。
【0015】
このような隙間は機構全体の遊びやガタを作ることになり、一方側の回転がすぐに他方側の回転となって現れなくなくなってしまう。このような応答の遅れを以下、角度バックラッシュということにする。このような角度バックラッシュは伝動機構が制御機構として使用されたときには制御精度を低下させるものとなってしまう。このような角度バックラッシュを無くすには隙間を小さくしなければならず、このことは潤滑油保持の面から見て潤滑性能を低下させるものとなるから好ましいものとは言えず、結局、角度バックラッシュの低減と潤滑性能向上とは相反するものとなっている。特に制御機構は頻繁に起動、停止を繰り返すものであるから、接触面での摩擦が小さいものが望ましいが、その反面において摩擦を低減させるためには、潤滑が避けられない技術的事項となっているので、結局角度バックラッシュの低減は非常に困難な技術的事項となっていると言える。
【0016】
他方、摺動部分に燐酸塩皮膜等の化成処理皮膜を形成し、摺動部分の摩擦係数を低下させることも公知である。この化成処理皮膜はそれ自体が低摩擦係数ではなく、微小な凹凸に多量の潤滑油を保持しているために低摩擦係数となるものである。
【0017】
伝動機構の噛み合い、摺動接触面に上記公知の化成処理皮膜を形成することも考えられるが、化成処理皮膜はそれ自体摩耗しやすく、皮膜が短時間ではがれてしまう欠点がある。
【0018】
本出願人は、伝動機構の接触面の隙間を小さくし、且つ潤滑油の保持を長期に亘って維持できるようにした接触面の構造及びその製造方法を提供することを目的にして、特願昭60−271649号(特公平2−36825号公報、特許1623717号)で歯形の研削目の歯筋方向及び該研削目の歯筋方向と交差する方向に凹凸面が形成された接触面と、この凹凸の高さよりも低い膜厚で前記接触面に形成された化成処理皮膜とからなる接触面を提案した。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、公知のこれらの方法はいずれも、外歯歯車と内歯歯車との歯形の接触面の摩擦係数を小さくすることにより高効率、長寿命を達成しようとするものであり、ピン保持孔に対するピンの滑り回転を良くする(流体潤滑させる)という発想を持つものではなかった。
【0020】
したがって従来では、ピン保持孔13は、ブローチ加工、もしくはギヤシェーパ加工、特に精度を必要とする場合は、図11に示すような小径砥石40を用いた内径研削加工によって加工しているのみであった。
【0021】
具体的に言うと、従来公知のブローチによる切削は、加工の最終工程までが切削(素材の剪断加工)によるので、図12に示すように、ピン保持孔13の周方向の粗さは、ブローチの摩耗状態と加工条件による切れ味によっても異なるが、おおよそ5μm程度が限界であった。同様に、ギヤシェーパ加工した場合でも、図13に示すように、ピン保持孔13の周方向粗さは、おおよそ1〜2μm程度が限界であった。更に、これらの加工品を図11に示すように研削加工した場合にも、加工の最終工程が素材の剪断加工によることには変わりがないので、ピン保持孔13の周方向粗さは、1〜2μmが限界であった。
【0022】
そのため、外歯歯車5a、5bと内歯歯車20の噛み合いに伴ってピン保持孔13内で外ピン11が滑り回転するときの摩擦損失が大きくなり、それが、特に起動時の効率を低下させたり、部品寿命を短くしたり、騒音を増大させたりする要因になっていた。
【0023】
本発明は、上記事情を考慮し、ピン保持孔内における外ピンの滑り回転を良くし、ピンとピン保持孔間の摩擦損失を低減することにより、効率の向上、長寿命化、低騒音化を図ることのできる内接噛合歯車機構の内歯歯車用ピン保持リングの製造方法を提供することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明は、外歯歯車と内歯歯車の動力伝達特性を考察し、外歯歯車の歯形と内歯歯車の歯形(ピン)との噛み合いはほとんどが転がり接触であるが、ピン(外ピン)とピン保持孔の間は滑り接触であることに着目し、ピンとピン保持孔との間の潤滑を、より流体潤滑に近づけることにより、高効率と長寿命と低騒音とを低コストで実現するようにしたものである。
【0025】
本発明は、内周に軸線方向に沿った複数の半円状のピン保持孔を有するピン保持リングと、前記各ピン保持孔に回転可能に嵌合され且つ前記ピン保持孔から露出した部分で円弧状歯形を形成するピンとから内歯歯車が構成されており、該内歯歯車に、前記円弧状歯形に対応する歯形を有した外歯歯車が内接噛合された内接噛合歯車機構の前記内歯歯車用のピン保持リングの製造方法において、前記ピン保持孔を全円孔として包含し得る内径のピン保持リング基材に対して前記ピン保持孔を全円孔として切削加工する工程と、該切削加工工程後に各ピン保持孔の内面をローラバニッシング加工により塑性加工仕上げする工程と、該塑性加工仕上げ工程後に前記ピン保持リングの内径を仕上径まで拡大加工することにより、全円孔として内面仕上げした前記各ピン保持孔のリング内周側部分を開口して、前記半円状のピン保持孔とする工程と、を含むことにより、上記課題を解決したものである。
又、本発明は、内周に軸線方向に沿った複数の半円状のピン保持孔を有するピン保持リングと、前記各ピン保持孔に回転可能に嵌合され且つ前記ピン保持孔から露出した部分で円弧状歯形を形成するピンとから内歯歯車が構成されており、該内歯歯車に、前記円弧状歯形に対応する歯形を有した外歯歯車が内接噛合された内接噛合歯車機構の前記内歯歯車用のピン保持リングの製造方法において、前記ピン保持リングの内周側に開口した半円状のピン保持孔を切削加工する工程と、該切削工程後にピン保持リングの内周に、自身の外周にピン保持孔に対する半円孔が形成された円形のガイドを嵌めることで、該ガイドの外周に形成した半円孔とピン保持リング側の半円状のピン保持孔とで全円孔を構成する工程と、該ガイド嵌合工程後に前記ガイド及びピン保持リングの合体によってできる前記全円孔の内面をローラバニッシング加工により塑性加工仕上げする工程と、該塑性加工仕上げ工程後に前記ガイドをピン保持リングから取り外す工程と、を含むことにより、同じく上記課題を解決したものである。
【0026】
ここで、ローラバニッシング加工とは、滑らかな表面をもつ転圧ローラをピン保持孔の内面に押し付けながら回転させ、ピン保持孔の内面に塑性変形と加工硬化を生じさせながら、ピン保持孔の内面を滑らかな仕上面に加工する方法である。
【0027】
このローラバニッシング加工を行うことにより、ピン保持孔の内面の凹凸の高さを0.5μm未満にすることができると共に、ピン保持孔の表面の金属組織を緻密にすることができて、結果的に、高効率と長寿命を実現することができる。
【0028】
なお、他の1つの方法として、例えばブローチ加工における打抜き工具の最終段に径が大きめの鏡面部分を形成しておき、この大きめの径とされた鏡面の最終段にてピン保持孔の内面をつぶすようにして塑性加工する方法も考えられるが、この方法では前記打抜き工具を軸方向に移動するときに内面を軸方向に沿って加工するだけなため、十分な効果が得られないことが確認されている。本発明では切削の後、ローラバニシングにて鏡面加工しているため、良好な鏡面が得られる。
【0029】
ところで、塑性加工によってローラ保持孔の内面を仕上げするために、ローラバニッシング加工によって「半円状の」内面を仕上げしようとした場合、この加工法は切削加工と異なり、一般的には該半円状の内面を正確な芯を出しながら加工することが極めて難しいといる問題があるが、この点に関しても本発明は全く問題なく対応できる。
【0032】
なお、本発明では、更に、前記ピン保持リングの塑性加工仕上げが終了した後に、前記ピン保持孔の内面に対して化成処理皮膜を形成する工程を含むようにするのが好ましい。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
本実施形態の内接噛合遊星歯車機構の見かけ上の構成は、図9、図10に示したものとほとんど変わらず、変わる点は、内歯歯車20を構成しているピン保持リング10の細部の構成と、その製造方法である。そこで、まず、ピン保持リング110、210(本案のピン保持リングは、従来のピン保持リングの符号と下2桁が同一の符号で示す)の製造方法についての実施形態を説明する。
【0035】
一般に、この種の内接噛合遊星歯車機構の場合、噛み合い部分や摺動接触面は高強度部材で高精度に加工されていなければならないため、内歯歯車20のピン保持リング110、210は、一般にはJIS G5501で規定されるねずみ鋳鉄やJIS G5502で規定される球状黒鉛鋳鉄、あるいはJIS H5302で規定されるアルミ合金ダイカストで製作される。
【0036】
図1〜図5を用いて第1実施形態の製造方法を述べる。
【0037】
この製造方法では、第1工程で、図1に示すように、ピン保持リング基材151に適当数のボルト孔152を明ける。次いで、図2に示すように、多数のピン保持孔113aをピッチ円(直径がφPCDの円)上に全円孔としてドリル等で切削加工する。ドリル加工後に、リーマ加工またはファインボーリング加工を行うのがよい。ここでは、ピン保持リング基材151の内径φDAは、仕上径φDB(図5)よりも小径に設定されており、ピン保持孔113aを全円孔として加工した場合にも、十分な肉厚t(例えば2mm以上)を有するように設定されている。極端な場合は中心に孔がない(内径φDA=0)ピン保持リング基材を使用してもよい。
【0038】
次の工程では、全円孔として穿設した各ピン保持孔113aの内面を、図3及び図4に示すように、ローラバニッシング加工により仕上げる。具体的には、滑らかな表面をもつテーパ状の転圧ローラ155を、テーパ状のマンドレル156でピン保持孔113aに押し込み、その状態で回転させることにより、ピン保持孔113aの内面に材料の降伏点を超える圧力を加えて、塑性変形と加工硬化を生じさせながら、ピン保持孔113aの内面を滑らかな仕上面に塑性加工する。
【0039】
なお、マンドレル156のテーパと転圧ローラ155のテーパは互いに逆方向とされ、それぞれの軸心CL1とCL2は平行ではなく、(転圧ローラ155の最外周ラインがピン保持孔131aと平行となるように)転圧ローラ155の軸心CL2が若干傾けられている。
【0040】
そして、最後の工程で、図5に示すように、ピン保持リング基材151の内径をφDAから仕上径φDBに加工することにより、全円孔として内面仕上げした各ピン保持孔113aのリング内周側部分を開口して、半円状のピン保持孔113を有したピン保持リング110を得る。
【0041】
このピン保持リング110によれば、転圧されたピン保持孔113の内面の周方向表面粗さを、図6に示すように、容易に0.1〜0.5μm(もしくは<0.1μm)にすることができ、しかも正確な寸法の半円を得ることができる。従って、このピン保持リング110を組み込んで、図9、図10のような内接噛合遊星歯車機構を製作した場合、ピン11とピン保持孔113との間に、流体潤滑状態を形成することができ、ピン11の滑り回転を良くすることができる。
【0042】
この結果、外歯歯車4とより良好なころがり接触を維持できるようになり、高効率、長寿命、低騒音の内接噛合歯車機構を低コストで得ることができる。
【0043】
なお、外歯歯車4、外歯歯車5a、5bの歯形形状については、トロコイド歯形以外に円弧状歯形であってもよい。
【0044】
次に、図7、図8を用いて第2実施形態の製造方法を述べる。
【0045】
この製造方法では、第1工程で、図7に示すように、ピン保持リング基材251に適当数のボルト孔252を明けると共に、該リング基材251の内径を仕上径φDBに加工し、このピン保持リング基材251に対して、半円状のピン保持孔213aを、ピン保持リング基材251の内周からブローチ加工、ギヤシェーパ加工、ないしは研削加工によって加工する。
【0046】
次の工程では、図8に示すように、ピン保持リング基材251の内周に円形のガイド255を嵌める。このガイド255には自身の外周にピン保持孔231aに対応する半円孔256が形成されており、該ガイド255の外周に形成した半円孔256とピン保持リング基材251側の半円状のピン保持孔213aとで全円孔257を構成する。
【0047】
そして、次の工程で、ガイド255及びピン保持リング基材251の合体によってできる全円孔257に対して、図3、図4と同様のローラバニッシング加工を施すことにより、全円孔257の内面を仕上げる。
【0048】
そして、仕上げが完了した段階で、最後にガイド255をピン保持リング基材251から取り外すことにより、半円状のピン保持孔213を有したピン保持リング210を得る。
【0049】
この方法によっても、図6と同様のピン保持孔213の表面粗さと正確な半円寸法を得ることができ、内接噛合遊星歯車機構に組み込んだ際に同様の効果を奏する。
【0050】
なお、このようにして加工されたピン保持リング110、210の全体、あるいはピン保持孔113、213部分のみに燐酸塩皮膜(化成処理皮膜)を形成してもよい。そうすると、表面粗さは若干荒れてくる(悪くなる)が、燐酸塩の性質により多量の油滑油を保持することができ、焼き付きにくくすることができる。また、化成処理段階において、ピン保持孔113、213の表面が平滑なので、凹凸部分での燐酸塩の成長がなくなり、薄い皮膜による初期焼き付き防止と表面粗さの改善による流体潤滑の確保の両立が可能になる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ピン保持孔とピンの間に流体潤滑状態を作り出すことができるので、ピンの滑り回転を良くすることができる。特に、同じ油温であれば、高い荷重までピンとピン保持孔の間に油膜を確保することができ、同じ荷重であれば、高温領域までピンとピン保持孔の間に油膜を確保することができる。従って、摺動部分の損失が小さくなることから、停止状態からの起動効率と運転状態での動的効率の両方を向上させることができる。また、効率が上がるので、温度上昇が少なくなり、減速機等のコンパクト化が可能になる。さらに、潤滑の改善により、部品寿命が延びると共に、騒音を減らすことができる上、角度バックラシュを小さくすることもできる。また、ピン保持孔の仕上げ精度を上げるという簡単な構成で、コンパクト性を維持しながら、大出力化を達成することができる。また、化成処理皮膜を施した場合は、初期の焼き付き防止と表面粗さ改善による流体潤滑の確保の両立が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態のピン保持リングの製造方法の説明に使用するピン保持リング基材の平面図
【図2】同ピン保持リング基材に対して全円孔としてのピン保持孔を形成した状態を示す平面図
【図3】全円孔として穿設したピン保持孔にローラバニッシング加工を施している状態を示す側断面図
【図4】図3のIV−IV矢視断面図
【図5】前記ピン保持リング基材の内径を拡大することによって完成した、半円状のピン保持孔を有するピン保持リングの平面図
【図6】バニッシング加工して得たピン保持孔の周方向の表面粗さを示す図
【図7】本発明の第2実施形態のピン保持リングの製造方法の説明に使用するピン保持リング基材の加工後の平面図
【図8】ピン保持リングの内周に円形のガイドを嵌めることで、ローラバニッシング加工の可能な全円孔状のピン保持孔を形成した状態を示す平面図
【図9】ここで問題とする内接歯車機構の従来例として示す内接噛合遊星歯車機構の断面図
【図10】図9のX −X 矢視断面図
【図11】従来のピン保持孔の加工方法の説明図
【図12】ブローチ加工した場合の従来のピン保持孔の周方向の表面粗さを示す図
【図13】研削加工した場合の従来のピン保持孔の周方向の表面粗さを示す図
【符号の説明】
5a,5b…外歯歯車
20…内歯歯車
10,110,210…ピン保持リング
11…ピン
13,113,113a,213,213a…ピン保持孔
151,251…ピン保持リング基材
255…ガイド
256…半円孔
257…全円孔
Claims (3)
- 内周に軸線方向に沿った複数の半円状のピン保持孔を有するピン保持リングと、前記各ピン保持孔に回転可能に嵌合され且つ前記ピン保持孔から露出した部分で円弧状歯形を形成するピンとから内歯歯車が構成されており、該内歯歯車に、前記円弧状歯形に対応する歯形を有した外歯歯車が内接噛合された内接噛合歯車機構の前記内歯歯車用のピン保持リングの製造方法において、
前記ピン保持孔を全円孔として包含し得る内径のピン保持リング基材に対して前記ピン保持孔を全円孔として切削加工する工程と、
該切削加工工程後に各ピン保持孔の内面をローラバニッシング加工により塑性加工仕上げする工程と、
該塑性加工仕上げ工程後に前記ピン保持リングの内径を仕上径まで拡大加工することにより、全円孔として内面仕上げした前記各ピン保持孔のリング内周側部分を開口して、前記半円状のピン保持孔とする工程と、を含むことを特徴とする内接歯車機構の内歯噛合歯車用ピン保持リングの製造方法。 - 内周に軸線方向に沿った複数の半円状のピン保持孔を有するピン保持リングと、前記各ピン保持孔に回転可能に嵌合され且つ前記ピン保持孔から露出した部分で円弧状歯形を形成するピンとから内歯歯車が構成されており、該内歯歯車に、前記円弧状歯形に対応する歯形を有した外歯歯車が内接噛合された内接噛合歯車機構の前記内歯歯車用のピン保持リングの製造方法において、
前記ピン保持リングの内周側に開口した半円状のピン保持孔を切削加工する工程と、
該切削工程後にピン保持リングの内周に、自身の外周にピン保持孔に対する半円孔が形成された円形のガイドを嵌めることで、該ガイドの外周に形成した半円孔とピン保持リング側の半円状のピン保持孔とで全円孔を構成する工程と、
該ガイド嵌合工程後に前記ガイド及びピン保持リングの合体によってできる前記全円孔の内面をローラバニッシング加工により塑性加工仕上げする工程と、
該塑性加工仕上げ工程後に前記ガイドをピン保持リングから取り外す工程と、
を含むことを特徴とする内接歯車機構の内歯噛合歯車用ピン保持リングの製造方法。 - 請求項1又は2において、更に、
前記ピン保持リングの塑性加工仕上げが終了した後に、前記ピン保持孔の内面に対して化成処理皮膜を形成する工程を含むことを特徴とする内接歯車機構の内歯歯車用ピン保持リングの製造方法。
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