JP3554627B2 - ポリエステルフイルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステルフイルム及び積層フイルムに関し、更に詳しくはパール調外観を有し、遮光性及び隠蔽性に優れ、金属缶の外面被覆用フイルム等に有用なポリエステルフイルム及び積層フイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンブラック等の黒色顔料を含有するポリエステルからなる黒色フイルム、酸化チタン等の白色顔料を高濃度で含有するポリエステルからなる白色フイルム、或いはアルミニウム等の金属を表面に蒸着した蒸着フイルムは、遮光性及び隠蔽性を有するフイルムとして包装材料や金属板、木工板の被覆用等に従来から用いられている。
【0003】
しかしながら、黒色フイルムは優れた遮光性や隠蔽性を有するが、フイルムが黒色であるため印刷等を施して用いる場合に鮮やかな色彩を付与することができない外観上の欠点がある。また、白色フイルムは厚みが薄いものは遮光性や隠蔽性が不足する欠点がある。更に、蒸着フイルムは蒸着層が薄いと遮光性や隠蔽性が不足する欠点があり、蒸着層が厚いとコストが過大となる欠点や、可撓性に乏しいためフイルムを成形加工した際に蒸着層の亀裂や剥離が生じる欠点がある。
【0004】
このように従来から用いられている遮光性や隠蔽性を有するフイルムは、上記の欠点があるためその用途が限られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を解消し、印刷を施した際に鮮やかな色彩を付与することができ、フイルム厚みが薄くても優れたパール調外観、遮光性、隠蔽性、可撓性を有し、特にブリキ、ティンフリースチール、アルミニウム等の金属板にラミネートした後、絞り加工等により製缶され印刷機により色彩を付与される金属缶の外面被覆フイルムに最適なポリエステルフイルムを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、上記の特性のうちパール調外観や遮光性、隠蔽性を更に優れたものとする積層フイルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のかかる目的は本発明によれば、
1.酸化チタン被覆処理を施した平均粒径が3〜20μmのマイカを2〜20重量%含有するポリエチレンテレフタレート共重合体(A)からなる厚さが5μm以上50μm以下のポリエステルフイルムであって、該ポリエチレンテレフタレート共重合体(A)の融点が210〜245℃、二次転移温度が60℃以上であり、かつ該フイルムが下記式(I)を満足するX線回折強度比を有することを特徴とするポリエステルフイルム。
【0008】
【数3】
Figure 0003554627
【0009】
並びに
2.酸化チタン被覆処理を施した平均粒径が3〜20μmのマイカを2〜20重量%含有するポリエチレンテレフタレート共重合体(A)からなる厚さが2μm以上48μm以下のポリエステル層(A)の少なくとも片面に、平均粒径が0.1〜0.5μmの酸化チタンを1〜40重量%含有するポリエチレンテレフタレート共重合体(B)からなる厚さが2μm以上48μm以下のポリエステル層(B)を積層した積層フイルムであって、該ポリエチレンテレフタレート共重合体(A)の融点が210〜245℃、二次転移温度が60℃以上であり、該ポリエチレンテレフタレート共重合体(B)の融点が210〜245℃、二次転移温度が60℃以上であり、かつ該積層フイルムが下記式(II)を満足するX線回折強度比を有することを特徴とする積層フイルム。
【0010】
【数4】
Figure 0003554627
【0011】
によって達成される。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0012】
ポリエチレンテレフタレート共重合体(A)]
本発明においてポリエステルフイルムの構成成分であるポリエチレンテレフタレート共重合体(A)は、ジカルボン酸成分とグリコール成分からなる線状ポリエステルであり、融点が210〜245℃、二次転移温度が60℃以上のポリエステルである。
【0014】
このうち特に、ポリエチレンテレフタレート共重合体が好ましい。このポリエチレンテレフタレート共重合体における共重合成分は、ジカルボン酸成分であってもグリコール成分であってもよく、ジカルボン酸成分としては例えばイソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の如き芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等を挙げることができ、グリコール成分としては例えばブタンジオール、ヘキサンジオール等の如き脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等を挙げることができる。
【0015】
これらの共重合成分は単独または二種以上を使用することができる。ポリエチレンテレフタレート共重合体における共重合成分の割合は、共重合成分の種類にもよるが、結果として融点が210〜245℃、二次転移温度が60℃以上となる割合であることが好ましい。
【0016】
ポリエチレンテレフタレート共重合体(A)の融点が210℃未満であるとフイルムの耐熱性が不足し、例えば印刷工程における加熱に耐えられない。一方融点が245℃より高い270℃を超えると、ポリマーの結晶性が高すぎてフイルムのX線回折強度比が小さくなりすぎ、即ち配向性が高くなりすぎて可撓性が低下する欠点や、マイカの高濃度添加が困難になる欠点が生じる。また、二次転移温度が60℃未満であると、溶融押出しによりフイルムを製造する際に溶融ポリマーが冷却ドラムに粘着するため安定してフイルムを製造することができず、また冷却ドラムの表面に低分子量物が付着堆積するため均一な表面のフイルムを得ることができない。
【0017】
ポリエチレンテレフタレート共重合体(B)]
本発明における積層フイルムは、ポリエステル層(A)の少なくとも片面に、ポリエステル層(B)を積層した積層フイルムであるが、ポリエステル層(B)の構成成分であるポリエチレンテレフタレート共重合体(B)は、ジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合ポリエステルであり、融点が210〜245℃、二次転移温度が60℃以上の線状ポリエステルである。
【0019】
このうち特に、共重合ポリエチレンテレフタレートが好ましい。共重合ポリエチレンテレフタレートにおける共重合成分は、ジカルボン酸成分であってもグリコール成分であってもよく、このジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の如き芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸等を挙げることができる。また、グリコール成分としては例えばブタンジオール、ヘキサンジオール等の如き脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等を挙げることができる。これらの共重合成分は単独または二種以上を使用することができる。
【0020】
ポリエチレンテレフタレート共重合体(B)における共重合成分の割合は、その種類にもよるが、結果として融点が210〜245℃、二次転移温度が60℃以上となる割合である。この融点が210℃未満であると積層フイルムの耐熱性が不足し、例えば印刷工程における加熱に耐えられない。一方融点が245℃を超えると、ポリマーの結晶性が高すぎてフイルムのX線回折強度比が小さくなりすぎ、即ち配向性が高くなりすぎて可撓性が低下する欠点や、酸化チタンの高濃度添加が困難になる欠点が生じる。また、二次転移温度が60℃未満であると、溶融押出しによりフイルムを製造する際に溶融ポリマーが冷却ドラムに粘着するため安定してフイルムを製造することができず、また冷却ドラムの表面に低分子量物が付着堆積するため均一な表面のフイルムを得ることができない。
【0021】
ポリエチレンテレフタレート共重合体
本発明におけるポリエチレンテレフタレート共重合体ポリエチレンテレフタレート共重合体(A)およびポリエチレンテレフタレート共重合体(B))は、その製法によって限定されることはない。例えばポリエチレンテレフタレート共重合体の製法としては、テレフタル酸、エチレングリコール及び共重合成分をエステル化反応させ、得られた反応生成物を更に重縮合反応させてポリエチレンテレフタレート共重合体とする方法、或いはジメチルテレフタレート、エチレングリコール及び共重合成分をエステル交換反応させ、得られる反応生成物を更に重縮合反応させてポリエチレンテレフタレート共重合体とする方法が好ましく用いられる。
【0022】
尚、ポリエステルを製造する際に、必要に応じ他の添加剤、例えば蛍光増白剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等も添加することができる。
【0023】
[被覆処理マイカ]
本発明に用いる酸化チタン被覆処理を施したマイカ(以下『被覆処理マイカ』と略記する)は、平均粒径が3〜20μmのものである。この平均粒径とは被覆処理マイカの長径(板状粒子の平面方向における最大径)の平均値のことである。この平均粒径が3μm未満であると、被覆処理マイカがフイルムの面方向に充分配向せず、ポリエステルフイルムの光の反射特性(遮光性)が不足する。一方、平均粒径が20μmを超えると、被覆処理マイカの大きさが大き過ぎて溶融押出の際に濾過が困難になったりフイルム中に被覆処理マイカの凝集物による異物が生じてフイルムの品質を損ねる。
【0024】
上記の被覆処理マイカとしては、例えばメルク社(ドイツ)製のイリノジン(登録商標)やマール社(アメリカ)製のMearlin(登録商標)等を挙げることができる。
【0025】
[ポリエステルフイルム]
本発明におけるポリエステルフイルムは、フイルムのX線回折強度比が下記式(I)を満足するものである。
【0026】
【数5】
Figure 0003554627
【0027】
このX線回折強度比が0.10未満のであると、フイルムを成形加工する場合の可撓性に乏い等の欠点が生じる。一方、X線回折強度比が0.20を超えるとフイルムを成形加工性が不均一になること、フイルムの寸法安定性が不十分となること等の欠点が生じる。
【0028】
かかるX線回折強度比を有するポリエステルフイルムは、未延伸フイルムを二軸延伸することにより得ることができる。例えば、上述の被覆処理マイカを含むポリエチレンテレフタレート共重合体(A)を溶融し冷却ドラム上にキャストして未延伸フイルムとし、該未延伸フイルムを縦方向もしくは横方向に延伸倍率2〜7倍で延伸して一軸延伸フイルムとし、得られた一軸延伸フイルムを横方向もしくは縦方向に延伸倍率2〜7倍で逐次延伸して二軸延伸フイルムとすることにより得ることができる。または、前記未延伸フイルムを縦方向および横方向にそれぞれ延伸倍率2〜7倍で同時に二軸延伸して二軸延伸フイルムとすることができる。尚、二軸延伸フイルムは必要に応じて熱固定すること、或いは更に縦方向及び/又は横方向に再延伸することもできる。
【0029】
上記の延伸温度はポリエチレンテレフタレート共重合体の二次転移温度(Tg)以上の温度とすることが好ましい。尚、二軸延伸フイルムの面積延伸倍率は4倍以上、特に6倍以上とするのが好ましく、面積延伸倍率の上限は、フイルムの用途にもよるが、25倍迄、特に16倍迄とするのが好ましい。延伸後に熱処理して配向結晶化を完結させることもできる。
【0030】
また、本発明におけるポリエステルフイルムは被覆処理マイカの含有割合が2〜20重量%である。被覆処理マイカの含有量が2重量%以下であるとフイルムの遮光性が不足し、20重量%を超えると被覆処理マイカの2次凝集物が多くなり安定して製膜することができない。ポリエステルフイルムには被覆処理マイカと共に酸化チタンや硫酸バリウム等の白色顔料を配合させることができる。
【0031】
また、本発明のポリエステルフイルムは厚さが5μm以上50μm以下のものである。この厚さが5μm未満であるとフイルムの遮光性が不足し、或いは被覆処理マイカを十分に包含することができないため製膜の際にフイルムの破断やフイルムの孔あき等の欠点が生じる。また、フイルムの厚さが50μmを超えると、コストが過大となる欠点や、フイルムを成形加工する際にフイルムに亀裂や剥離等の欠点が生じる。
【0032】
[積層フイルム]
本発明においては、フイルムのパール調外観や遮光性、隠蔽性を更に優れたものとするため積層フイルムとすることができる。この積層フイルムは、酸化チタン被覆処理を施した平均粒径が3〜20μmのマイカを2〜20重量%含有するポリエチレンテレフタレート共重合体(A)からなる厚さが2μm以上48μm以下のポリエステル層(A)の少なくとも片面に、平均粒径が0.1〜0.5μmの酸化チタンを1〜40重量%含有するポリエチレンテレフタレート共重合体(B)からなる厚さが2μm以上48μm以下のポリエステル層(B)を積層した積層フイルムであって、該ポリエチレンテレフタレート共重合体(A)の融点が210〜245℃、二次転移温度が60℃以上であり、該ポリエチレンテレフタレート共重合体(B)の融点が210〜245℃、二次転移温度が60℃以上でありかつ該積層フイルムが下記式(II)を満足するX線回折強度比を有することを特徴とする積層フイルムである。
【0033】
【数6】
Figure 0003554627
【0034】
このX線回折強度比が0.10未満のであると、積層フイルムを成形加工する場合の可撓性に乏い等の欠点が生じる。一方、X線回折強度比が0.20を超えるとフイルムを成形加工性が不均一になること、積層フイルムの寸法安定性が不十分となること等の欠点が生じる。
【0035】
かかるX線回折強度比を有する積層フイルムは、未延伸積層フイルムを前記ポリエステルフイルムと同様の条件で二軸延伸することにより得ることができる。尚、未延伸積層フイルムは被覆処理マイカを含むポリエチレンテレフタレート共重合体(A)と、酸化チタンを含むポリエチレンテレフタレート共重合体(B)とを各々押出機により溶融し、各溶融ポリマーを導管内或いは成型用口金(ダイス)内部で合流させて多層状態とし、これを口金から吐出させ、冷却ドラムにて冷却固化させることにより得ることができる。
【0036】
上記のポリエステル層(B)は、酸化チタンを1〜40重量%、好ましくは5〜35重量%含有するものである。酸化チタンの割合が1重量%未満であると白色遮光性が不十分となり、一方、40重量%を超えると積層フイルムの可撓性が低下する。
【0037】
また、本発明の積層フイルムは、ポリエステル層(A)の厚さが2μm以上48μm以下、ポリエステル層(B)の厚さが2μm以上48μm以下のものである。ポリエステル層(A)の厚さが2μm未満であると、被覆処理マイカが脱落する欠点が生じ、48μmを超えるとコストが過大となる欠点や、フイルムを成形加工する際にフイルムに亀裂や剥離等の欠点が生じる。
【0038】
また、ポリエステル層(B)の厚さが2μm未満であると遮光性や隠蔽性が低下する欠点が生じ、48μmを超えるとパール調外観を損なう欠点が生じる。
【0039】
[酸化チタン]
本発明の積層フイルムに用いる酸化チタンは、平均粒径が0.1〜0.5μmのものである。この平均粒径が0.1μm未満であると、積層フイルムの遮光性が不足し、平均粒径が0.5μmを超えると遮光性の発現効率が低下するため酸化チタンを高濃度で配合しなければ遮光性を良好なものとすることができない欠点が生じる。
【0040】
上記の酸化チタンには、隠蔽性、遮光性に対する効果が大きく、安価であることから、ルチル型の二酸化チタンが特に好ましい。酸化チタンに加えて、一種以上の他の顔料を複数併用することもできる。
【0041】
[組成物]
本発明においては、ポリエステルフイルムにポリエチレンテレフタレート共重合体(A)と被覆処理マイカとの組成物を、また積層フイルムのポリエステル層(A)にポリエチレンテレフタレート共重合体(A)と被覆処理マイカとの組成物、ポリエステル層(B)にポリエチレンテレフタレート共重合体(B)と酸化チタンとの組成物を用いるが、かかる組成物ば、各種の方法を用いて得ることができる。その代表的な方法として、下記の方法を挙げることができる。
(ア)被覆処理マイカ、或いは酸化チタン、その他の白色顔料等をポリエステル合成の際のエステル交換終了前、またはエステル化反応の終了前に、もしくは重縮合反応開始前に添加する方法。
(イ)被覆処理マイカ、或いは酸化チタン、その他の白色顔料等をポリエステルに添加し、溶融混練する方法。
(ウ)上記(ア)、(イ)の方法において、被覆処理マイカ、或いは酸化チタン、その他の白色顔料等を多量に添加したマスターペレットを製造し、被覆処理マイカ、或いは酸化チタン、その他の白色顔料等を含有しないポリエステルと混練し、所定量の濃度含有させる方法。
【0042】
なお、(ア)のポリエステル合成の際に被覆処理マイカ、或いは酸化チタン、その他の白色顔料等を添加する方法を用いる場合には、これらをグリコールに分散させ、スラリーとして反応系に添加することが好ましい。
【0043】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に説明する。なお、例中の特性は次の方法で求めた。
【0044】
1.X線回折強度比
X線源としてCuK−αを用いて、発散スリット1/2°、散乱スリット1/2°受光スリット0.15mm、スキャンスピード1,000°/分の条件で測定し、Pseudo Voight ピールモデルを用いた多重ピール分離法により、
【0045】
【外1】
Figure 0003554627
【0046】
ただし、X線回折強度は各結晶面の回折ピークの面積を求め、この面積をX線回折強度とした。また酸化チタン等の顔料に起因する反射ピーク(アナターゼ(101)、ルチル(110))がI(100)の近くにあるが、これを除いて面積を求めた。
【0047】
2.融点
Du Pont Instruments社製・910型・DSCを用い、約20mgのサンプルを常温から20℃/分の昇温速度で昇温させて得られる融解ピークのピーク頂温度を融点とする方法により測定した。
【0048】
3.二次転移温度
Du Pont Instruments社製・910型・DSCを用い、約20mgのサンプルを常温から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し2分間保持した後常温以下まで急冷し、再度、昇温速度20℃/分で昇温した際の吸熱、発熱の変曲点を二次転移温度とする方法により測定した。
【0049】
4.光線透過率(遮光性)
ボイック積分球式光線透過率計を用いてフイルムの光線透過率測定し、得られた結果から遮光性を下記の基準で評価した。
光線透過率が30%未満 ……遮光性極めて良好
光線透過率が30%以上50%未満……遮光性良好
光線透過率が50%以上75%未満……遮光性やや良好
光線透過率が75%以上 ……遮光性不良
【0050】
5.隠蔽性
硬度HBの鉛筆で文字を筆記した紙の上にフイルムを1枚重ね、上から観察した際に紙に筆記された文字が読み取れない場合を隠蔽性良好、読み取れなる場合を隠蔽性不良とした。
【0051】
6.パール調外観
フイルムを目視で観察し、真珠状の光沢を呈するものをパール調外観が良好であると判定した。
【0052】
[実施例1]
イソフタル酸を12モル%共重合した融点228℃のポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.64、二次転移温度75℃)に酸化チタン処理を施した平均粒径15μmのマイカ(メルク社製・イリオジン111)を10重量%添加し、280℃で溶融押出し急冷固化して厚み158μmの未延伸フイルムを得、該未延伸フイルムを温度110℃に加熱し縦方向に3.2倍延伸し、次いで温度120℃で横方向に3.3倍延伸し、引き続き190℃で熱固定して、厚み15μm、X線回折強度比0.16の二軸配向フイルムを得た。このフイルムの光線透過率は35.9%で遮光性に優れたものであり、また優れた隠蔽性およびパール調外観を呈した。
【0053】
[比較例1]
酸化チタン処理を施したマイカを添加しない以外は実施例1と同様にして二軸配向フイルムを得た。このフイルムの光線透過率は88.9%で遮光性に劣るものであった。
【0054】
[比較例2]
酸化チタン処理を施したマイカを1重量%添加した以外は実施例1と同様にして二軸配向フイルムを得た。このフイルムの光線透過率は77.5%で遮光性に劣るものであり、またパール調外観に乏しいものであった。
【0055】
[実施例2]
酸化チタン処理を施したマイカを2重量%添加した以外は実施例1と同様にして二軸配向フイルムを得た。このフイルムの光線透過率は71.0%で遮光性にやや優れたものであり、またパール調外観を呈した。
【0056】
[実施例3]
酸化チタン処理を施したマイカを15重量%添加した以外は実施例1と同様にして二軸配向フイルムを得た。このフイルムの光線透過率は23.8%で遮光性に優れたものであり、また優れた隠蔽性およびパール調外観を呈した。
【0057】
[実施例4]
酸化チタン処理を施したマイカを20重量%添加した以外は実施例1と同様にして二軸配向フイルムを得た。このフイルムの光線透過率は14.0%で極めて優れた遮光性を有し、また優れた隠蔽性およびパール調外観を呈した。尚、この二軸配向フイルムを製造する際、横方向に延伸するときにフイルムの破断がまれに認められた。
【0058】
[比較例3]
酸化チタン処理を施したマイカを25重量%添加した以外は実施例1と同様にして二軸配向フイルムの製造を試みたが、横方向に延伸するときにフイルムの破断が頻発し、二軸配向フイルムを製造することができなかった。
【0059】
[比較例4]
縦方向に2.5倍、横方向に2.5倍で延伸する以外は実施例1と同様にして二軸配向フイルムを得た。このフイルムは、X線回折強度比が0.23であり、フイルムの厚み斑および遮光性斑が著しいものであり、実用に供することができないものであった。
【0060】
[比較例5]
未延伸フイルムの厚みを158μmとし、縦方向に3.4倍、横方向に3.5倍で延伸する以外は実施例1と同様にして二軸配向フイルムを得た。このフイルムは、X線回折強度比が0.09、厚みが15μフイルムであったが、横方向に延伸するときにフイルムの破断が時折発生し、二軸配向フイルムを製造することが困難であった。
【0061】
[実施例5]
イソフタル酸を11モル%共重合した融点230℃のポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.68、二次転移温度74℃)に酸化チタン処理を施した平均粒径15μmのマイカ(マール社製・Mearlin3100)を10重量%添加したポリエチレンテレフタレート共重合体(A)を押出機に供給し、280℃で溶融押出した。一方、イソフタル酸を11モル%共重合した融点230℃のポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.68、二次転移温度74℃)に酸化チタン処理を10重量%添加したポリエチレンテレフタレート共重合体(B)を別の押出し機に供給し280℃で溶融押出した。各々の溶融ポリマーをダイス内部で合流させ2層構造とした後、口金から吐出させ、次いで20℃に保たれた冷却ドラムににより冷却固化させて2層の未延伸多層フイルム((A)層の厚み45μm、(B)層の厚み134μm)とした。次いで、該未延伸多層フイルムを実施例1と同様に二軸延伸および熱固定して、X線回折強度比0.15の二軸配向積層フイルム((A)層の厚み4.3μm、(B)層の厚み12.7μm)を得た。このフイルムの光線透過率は38.0%で遮光性に優れたものであり、また(A)層側から観察した際に優れたパール調外観を呈し、(B)層側から観察した際にパール調外観を呈するものであった。
【0062】
【発明の効果】
本発明のポリエステルフイルムや積層フイルムは、酸化チタンを被覆したマイカを高濃度で配合させるたものであるため、該マイカの偏平性により光線を吸収したり、屈折するのみでなく、反射させることができ、高機能のパール調外観、遮光性を発現させることができる。
【0063】
特に、金属缶の外面被覆用フイルムに用いた場合、パール調外観を有し、隠蔽性により金属表面の外観欠陥等を隠蔽でき、更に印刷による色彩付与が可能であるため金属缶の外観が優れたものになり、しかも遮光性により被覆したフイルムの金属との接着部の光による変質や劣化を防止できるため優れた機能を発揮できる。

Claims (4)

  1. 酸化チタン被覆処理を施した平均粒径が3〜20μmのマイカを2〜20重量%含有するポリエチレンテレフタレート共重合体(A)からなる厚さが5μm以上50μm以下のポリエステルフイルムであって、該ポリエチレンテレフタレート共重合体(A)の融点が210〜245℃、二次転移温度が60℃以上であり、かつ該フイルムが下記式(I)を満足するX線回折強度比を有することを特徴とするポリエステルフイルム。
    Figure 0003554627
  2. パール調外観を有する遮光性フイルムに用いる請求項1記載のポリエステルフイルム。
  3. 酸化チタン被覆処理を施した平均粒径が3〜20μmのマイカを2〜20重量%含有するポリエチレンテレフタレート共重合体(A)からなる厚さが2μm以上48μm以下のポリエステル層(A)の少なくとも片面に、平均粒径が0.1〜0.5μmの酸化チタンを1〜40重量%含有するポリエチレンテレフタレート共重合体(B)からなる厚さが2μm以上48μm以下のポリエステル層(B)を積層した積層フイルムであって、該ポリエチレンテレフタレート共重合体(A)の融点が210〜245℃、二次転移温度が60℃以上であり、該ポリエチレンテレフタレート共重合体(B)の融点が210〜245℃、二次転移温度が60℃以上であり、かつ該積層フイルムが下記式(II)を満足するX線回折強度比を有することを特徴とする積層フイルム。
    Figure 0003554627
  4. パール調外観を有する遮光性フイルムに用いる請求項3記載の積層フイルム。
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