JP3549929B2 - 印刷版用感光性組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、感光性平版印刷版に適した感光性組成物に関するものである。詳しくは、印刷に用いられる処理薬品に対する耐性に優れ、高い感度と現像許容性に優れているのみならず、BP適性と硬調性にも優れた感光性平版印刷版に適した感光性組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポジ型の感光性平版印刷版は、印刷の際使用される種々の処理薬品、例えばプレートクリーナー等に含まれる溶剤に対して耐性が低く、その結果として耐刷力が低下するという欠点を有している。また、ポジ型の感光性平版印刷版の現像処理は、通常アルカリ水溶液から成る現像液中で行われるが、現像液の現像能力は種々の条件で変動を受け易く、例えば大量処理による疲労や空気酸化による劣化で現像能力が低下し、処理しても印刷版の非現像部の感光層が完全に溶解されなくなる場合がある。このような処理能力が低下した現像液でも、標準現像液で処理した場合と同様の現像性を示す幅広い現像許容性を有することが望まれている(以下、適性な現像結果が得られる現像能力低下の許容範囲を「アンダー現像性」という。)。
【0003】
印刷に用いられる処理薬品に対する耐性を向上させる試みとして、感光性組成物にフェノール性水酸基を有するTg100〜300℃のビニル系高分子あるいはアクリル系高分子を添加することが知られている(特開平1−291245、特開平1−291244)。しかし、このフェノール性水酸基を有するTg100〜300℃のビニル系高分子あるいはアクリル系高分子は、感度が低く、現像許容性が低いという欠点を有していた。
【0004】
また、感光性平版印刷版を使用して原稿フィルムより露光する際、該原稿フィルムや感光性平版印刷版にゴミ等の異物が付着していると、その付着部分から極少量の光が入り込みジャープなレジスト像が形成できなくなる恐れがあった(焼きボケ現象)。
更に、従来の平版印刷版を白色灯(蛍光灯)下で長時間(10分程度)露光、現像等の作業をすると、感光により印刷版の感光層の膜減りが起こり、未露光部も現像されてしまうという問題があった(セーフライト性)。
そこで、原稿フィルムや感光性平版印刷版にゴミ等の異物が付着しても、シャープなレジスト像が得られるような硬調性に優れた平版印刷版の開発が進められている。
【0005】
従来より、硬調化技術の1つとして、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等の界面活性剤を感光性組成物に添加したり、オルトキノンジアジド基を含む化合物としてo−ナフトキノンジアジドー4ースルホン酸を用いる方法があった。
【0006】
しかしながら、従来の砂目処理を施した支持体にこのような硬調な感光層を塗設しても、露光現像後に支持体上に露光層の膜が残ってしまうなど現像性に問題があった。
従って、上述の焼きボケ現象やセーフライト性といった作業性が改善されると共に、現像性も損なわれないような感光性平版印刷版の出現がのぞまれている。
【0007】
他方、oーナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを含む感光性平版印刷版の感度を高める試みについては従来種々提案されてきた。例えば、環式酸無水物の添加(特開昭52ー80022)や有機強酸を添加(特開昭60ー88942)する試みがあるが、感度はあがるが現像許容性が悪くなるという欠点を生ずる。また、現像許容性を損なわず感度を上げる試みをしてはビスフェノールAの添加(特開昭60ー150047)が知られているが、効果は満足できるものではない。
【0008】
更に、ボールペンは感光性平版印刷版を焼付する際に位置合わせのためのトンボをかくために使用されるが、ビスフェノールAを感度が上がる添加量まで入れると、そのボールペン(以下BPと略記する。)描画に対する耐性が悪くなるという欠点を生じる。
【0009】
感光性組成物に使用されるバインダー樹脂としてはノボラック樹脂が知られている。従来より、ノボラック樹脂の様々な改良が試みられ、その中で、酸触媒による重縮合反応で合成されるノボラック樹脂に比べ、オルソーオルソ結合を多く含む、所謂ハイオルソノボラック樹脂と呼ばれる樹脂が知れている。この樹脂はフォトレジスト分野に使用され、γ値を高める試みをしたり(特公平4ー2181)、高い感度で広いデフォーカスラチチュードとスカムの発生しにくい感電離放射線性樹脂組成物(特開平3ー253859)或いは露光時の微細発泡によるパターンの欠陥が生じ難くまたスカムによる微細欠陥も生じ難いポジ型フォトレジスト組成物(特開平3ー253860)が提案されている。
【0010】
しかしながら、これらの特許明細書には感光性平版印刷版で問題となる耐薬品性、現像許容性、BP描画に対する耐性に関しては何等記載されてなく、むしろこれらのフォトレジストに適した組成物では、感光性平版印刷版に求められる特性を満たすことはできない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、印刷に用いられる処理薬品に対する耐性にすぐれ、高感度で現像許容性に優れ且つBP適性と硬調性に優れた感光性平版印刷版に適した感光性組成物を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、感光性平版印刷版に要求される諸特性を考慮し、バインダー樹脂としてのノボラック樹脂について鋭意改良を検討した結果、特定のフェノール類とアルデヒド或いはケトンとを共縮合させて得られるノボラック樹脂で、そのミクロ構造が特定の要件を満たすものをキノンジアジド化合物と組み合わせた組成物が平版印刷版に極めて適していることを見いだし本発明に到達した。
【0013】
即ち、本発明は、キノンジアジド化合物及びバインダー樹脂を含む印刷版用感光性組成物において、該樹脂が、下記の(1)〜(3)からなるフェノール成分及びアルデヒド類またはケトン類を、触媒として二価金属の有機酸塩、二価金属の酸化物、二価金属の水酸化物またはトリエチルアミンを用いて縮合させたノボラック樹脂であり、且つ、この樹脂の重水素化ジメチルスルホキシド溶液の13C−NMRスペクトルにおいて、23.0〜31.0ppmまでのピークの積分値をA、23.0〜37.0ppmまでのピークの積分値をBとした際に、X=A/Bの値がX≧0.57であることを特徴とする印刷版用感光性組成物を要旨とするものである。
フェノール成分
(1)フェノール 55〜75モル%
(2)m−クレゾールを95モル%以上含むm−アルキルフェノール 10〜45モル%
(3)p−クレゾールを95モル%以上含むp−アルキルフェノール 0〜30モル%
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明では、特定組成のフェノール成分とアルデヒド類またはケトン類を共縮合することにより製造され、且つ前記に規定する所定のX値を有するノボラック樹脂からなるバインダー樹脂を使用することを要件とし、このいずれか一方が欠けても本発明の効果が得られない。このような樹脂を製造する際、フェノール成分は、(1)フェノール55〜75モル%、(2)m−アルキルフェノール10〜45モル%、(3)p−アルキルフェノール0〜30モル%の範囲から選ばれる。m−またはp−アルキルフェノールのアルキル基は、低級アルキル基であり、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル基等である。
【0016】
これらフェノール成分の具体例としては、(1)のフェノールとしてはフェノールの他カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール等の一価、二価及び三価フェノールが挙げられるが、一価フェノールが好ましい。(2)のm−アルキルフェノールとしては、m−クレゾール、3,5,−キシレノール、カルバクロール、チモール等が挙げられ、(3)のp−アルキルフェノールとしてはp−クレゾール、2,4−キシレノール等が挙げられるが、これらは単独でも混合しても使用できる。しかしながら、フェノールとしては一価のフェノールを95モル%以上含むものを使用するのが好ましく、m−アルキルフェノールとしてはm−クレゾールを95モル%以上含み、また、p−アルキルフェノールとしてはp−クレゾールを95モル%以上含むものを使用する。
【0017】
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒド、アクロレインジメチルアセタール、フルフラール等があげられるが、好ましいのはホルムアルデヒドまたはベンズアルデヒドである。ホルムアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド水溶液(ホルマリン)、ホルムアルデヒドのオリゴマーであるパラホルムアルデヒドを用いることができる。特に37%ホルマリンが工業的に多量に生産されており好都合である。
ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0018】
本発明のノボラック樹脂の製造法は、この種反応に使用されている公知の方法、特にハイオルソノボラック樹脂を製造する方法を適宜適用することができる。例えば、特公平4−2181に示されているような特定の二価金属の有機酸塩を触媒に用い、pH4〜7の条件下で、m−/p−混合クレゾールを含むフェノール類をアルデヒドと付加縮合する方法、或いは二価金属の有機酸塩を触媒としてフェノール類とアルデヒド類を部分的に付加縮合した後、さらに酸を触媒に用いて付加縮合する方法がある。
また、J.appl.Chem 1957年、第676〜688頁に記載されている通り、二価金属の水酸化物または酸化物を触媒に用いフェノール類をアルデヒドと付加縮合する方法、或いは二価金属の水酸化物または酸化物を触媒としてフェノール類とアルデヒド類を部分的に付加縮合した後、さらに酸を触媒に用いて付加縮合する方法がある。
【0019】
また、m−/p−クレゾールを所定の割合で混合して調整したフェノール類にホルマリン水溶液を添加し、トリエチルアミンを用いて縮合する方法(特開平3ー253859、特開平3ー253860)、フェノール類とパラホルムアルデヒドをトルエンのような非極性溶媒に溶解し、加圧条件下で高温に加熱する方法等がある。ノボラック樹脂の製造にシュウ酸等の酸触媒は広く使用されているが、ハイオルソノボラック樹脂の製造法により製造した樹脂は、通常のノボラック樹脂の製造法で得られた樹脂に比べ、前記X値は高くなる傾向がある。本発明では、触媒として二価金属の有機酸塩又は酸化物を使用する方法を適用するのが好ましい。
【0020】
本発明のノボラック樹脂は、この樹脂の重水素化ジメチルスルホキシド溶液の13C−NMRスペクトルにおいて、23.0〜31.0ppmまでのピークの積分値をA、23.0〜37.0ppmまでのピークの積分値をBとした際に、X=A/Bの値がX≧0.57であることを要件とする。
ここで、13C−NMRの測定は次の条件で行う。JOEL製 EX−270型フーリエ変換核磁気共鳴装置(共鳴周波数 67.00MHz)を用い、逆ゲーテッド・デカップリング法(非NOEデカップリング測定)を適用する。測定温度は、22〜24℃、パルス幅6.8μs(約45度)、待ち時間3秒、観測周波数幅 20000Hz、データポイント数33K,積算回数4000回以上、基準はテトラメチルシランを0.0ppmとする。
【0021】
ここで規定する13C−NMRスペクトルのピークはいずれも芳香環同志のメチレン結合に帰属されるべきものであり、上記ピーク比、X値は二つの異なる、あるいは同じ環の、配置も含めた両者の特定の結合様式に対応するものと解釈される。
しかし、現実にはフェノールとアルキルフェノールとの混合ノボラック樹脂においては、この部分のスペクトルは幅広く、多くのピークの混合からなっている。その個々の帰属は未だ定かではなく、上記X値に含まれる結合の様式には様々なものが含まれているが、大略は、フェノールとアルキルフェノール同志が互いにオルソ位置で結合したものの割合に相関しているものと思われる。
本発明のノボラック樹脂は、上記X値がX≧0.57であるが、X≧0.60を満たすものがより好ましい。
【0022】
本発明のノボラック樹脂の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定してポリスチレン換算の表示を行ったときに、3.0×102〜3.0×104の範囲にあるのが好ましく、特に1.0×103〜1.0×104の範囲にあるのが好ましい。一般に、3.0×102未満では、成膜性に劣り、3.0×104を越えると感度が著しく低下してしまう。
【0023】
本発明のノボラック樹脂中における未反応モノマー量は、5モル%以下、好ましくは2モル%以下である。未反応モノマー量が5モル%を越えると、耐薬品性が悪くなったり、あるいは印刷性能が低下する可能性があるので好ましくない。樹脂の未反応モノマー量を2モル%以下にするためには、例えば縮合反応後、減圧度を高めることにより目的を達成することができる。
【0024】
本発明の印刷版用感光性組成物(感光層形成時)におけるノボラック樹脂の占める割合は、通常30〜95重量%であり、より好ましくは50〜90重量%である。
【0025】
本発明に使用されるキノンジアジド化合物としては、例えばo−ナフトキノンジアジドスルホン酸と、フェノール類とアルデヒド又はケトンの重縮合樹脂とのエステルが挙げられる。これら重縮合樹脂のフェノール類としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、3,5,−キシレノール、カルバクロール、チモール等の一価のフェノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等の二価フェノール、ピロガロール、フロログルシン等の三価フェノール等が挙げられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、フルフラール等が挙げられる。また、ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0026】
これら重縮合樹脂の具体的な例としては、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、m−,p−混合クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ベンズアルデヒド樹脂、ピロガロール・アセトン樹脂等が挙げられる。
o−ナフトキノンジアジド化合物の重縮合樹脂中のフェノール類のOH基に対するo−ナフトキノンジアジドスルホン酸のエステル化率(OH基1個に対する反応率)は、15〜80%が好ましく、より好ましくは20〜45%である。
【0027】
更に、本発明に用いられるキノンジアジド化合物としては特開昭58ー43451号公報明細書に記載されている以下の化合物を使用することが出来る。すなわち、例えば1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸エステル、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸アミド、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミドなどの公知の1,2−キノンジアジド化合物等である。
【0028】
さらに具体的にはジェイ・コサール(J.Kosar)著「ライト・センシティブ システムズ」(“Light−Sensitive Systems”)第339〜352頁(1965年)、ジョン・ウィリー アンド サンズ(John Wiley & Sons)社(ニューヨーク)やダブリュー・エス・ディー・フォレスト(W.S.De Forest)著「フォトレジスト」(“Photoresist”)第50巻、(1975年)、マグローヒル(Mc Graw−Hill)社(ニューヨーク)に記載されている1,2−ベンゾキノンジアジドー4ースルホン酸フェニルエステル、1,2,1′,2′ージー(ベンゾキノンジアジドー4ースルホニル)ージヒドロキシビフェニル、1,2ーベンゾキノンジアジドー4ー(Nーエチル−N−βーナフチル)ースルホンアミド、1,2ーナフトキノンジアジドー5ースルホン酸シクロヘキシルエステル、1−(1,2ーナフトキノンジアジドー5ースルホニル)ー3,5ージメチルピラゾール、1,2−ナフトキノンジアジドー5ースルホン酸ー4″−ヒドロキシジフェニル−4″−アゾ−β−ナフトールエステル、N,N−ジ−(1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル)−アニリン、2′−(1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルオキシ)−1−ヒドロキシーアントラキノン、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸−2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンエステル、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸−2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンエステル、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド2モルと4,4′−ジアミノベンゾフェノン1モルの縮合物、1,2−ナフトキノンジアジドー5ースルホン酸クロリド2モルと4,4′−ジヒドロキシ−1,1′−ジフェニルスルホン1モルの縮合物、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド1モルとプルプロガリン1モルの縮合物、1,2−ナフトキノンジアジド−5−(N−ジヒドロアビエチル)−スルホンアミドなどの1,2−キノンジアジド化合物を例示することができる。また特公昭37−1953号、同37−3627号、同37−13109号、同40−26126号、同40−3801号、同45−5604号、同45−27345号、同51−13013号、特開昭48−96575号、同48−63802号、同48−63803号各公報に記載された1,2−キノンジアジド化合物をも挙げることができる。
【0029】
上記化合物は、各々単独で用いてもよいし、2種以上組合わせて用いてもよい。キノンジアジド化合物の本発明の印刷版用感光性組成物(感光層形成時)中に占める割合は、5〜70重量%が好ましく、特に好ましいのは10〜50重量%である。
【0030】
本発明の感光性組成物は、前述の如き各素材のほか、必要に応じて他の添加剤を含むことができる。可塑剤としては各種低分子化合物類、例えばフタル酸エステル類、トリフェニルホスフェート類、マレイン酸エステル類、塗布性向上剤として界面活性剤、例えばフッ素系界面活性剤、エチルセルロースポリアルキレンエーテル等に代表されるノニオン活性剤等、更に露光により可視画像を形成させるためのプリントアウト材料等が挙げられる。
【0031】
プリントアウト材料は露光により酸もしくは遊離基を生成する化合物と、これと相互作用することによりその色調を変える有機染料よりなるもので、露光により酸もしくは遊離基を生成する化合物としては、例えば特開昭50−36209号公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニド、特開昭53−36223号公報に記載されているトリハロメチル−2−ピロンやトリハロメチル−トリアジン、特開昭55−6244号公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸のクロライドと電子吸引性置換基を有するフェノール類またはアニリン類とのエステル化合物、特開昭55−77742号公報に記載されているハロメチルービニルーオキサジアゾール化合物およびジアゾニウム塩等が挙げられる。
【0032】
前記の有機染料としては、例えばビクトリアピュアーブルーBOH[保土ケ谷化学]、オイルブルー#603[オリエント化学]、パテントピュアーブルー[住友三国化学]、クリスタルバイオレット、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、エリスロシンB、ベイシックフクシン、マラカイトグリーン、オイルレッド、m−クレゾールパープル、ローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、シアノーp−ジエチルアミノフェニルアセトアニリド等に代表されるトリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、オキサジン系、キサンテン系、イミノナフトキノン系、アゾメチン系またはアントラキノン系の色素が挙げられる。これらのうちトリフェニルメタン系色素が好ましい。
【0033】
又、感度を向上させるための増感剤も本発明の感光性組成物に添加することができる。増感剤としては、特開昭57−118237号公報に記載されている没食子酸誘導体、特開昭52−80022号公報に記載されているような5員環状酸無水物、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸等、及び特開昭58−11932号公報に記載されているような6員環状酸無水物、例えば無水グルタル酸及びその誘導体等が挙げられる。これらのうち、好ましいのは環状酸無水物であり、特に6員環状酸無水物が好ましい。
【0034】
更に、本発明の感光性組成物には、該感光性組成物の感脂性を向上するために親油性の樹脂を添加することもできる。
【0035】
以上の本発明感光性組成物の各成分は、下記に示すような溶媒に溶解させ、それを適当な支持体の表面に塗布乾燥することによって感光性層を設け、感光性平版印刷版を形成することができる。
【0036】
各成分を溶解する際に使用し得る溶媒としては、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブ、エチルセロソブアセテート等のセロソルブ類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、トリクロロエチレン、メチルエチルケトン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチルカルビトール等のカルビトール類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類、乳酸エチル等が挙げられる。これらのうち、人体への毒性の観点から、カルビトール類、プロピレングリコール類、乳酸エチル等を使用するのが好ましい。これらの溶媒は、単独でも2種以上を混合して使用しても良い。
【0037】
上記感光性組成物を支持体表面に塗布する際に用いる塗布方法としては、従来公知の方法、例えば回転塗布、ワイヤーバー塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、ブレード塗布及びカーテン塗布等が可能である。この際、塗布量は用途により異なるが、例えば固形分として0.5〜5.0g/m2が好ましい。
【0038】
本発明の感光性平版印刷版において感光層を設ける支持体としては、アルミニウム、亜鉛、鋼、銅等の金属板並びにクロム、亜鉛、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄等がメッキ又は蒸着された金属板、紙、プラスチックフィルム及びガラス板、樹脂が塗布された紙、アルミニウム等の金属箔が張られた紙、親水化処理したプラスチックフィルム等が挙げられる。このうち好ましいのはアルミニウム板である。本発明の感光性平版印刷版の支持体としては砂目立て処理、陽極酸化処理および必要に応じて封孔処理等の表面処理が施されているアルミニウム板を用いることがより好ましい。
これらの処理には公知の方法を適用することができる。
【0039】
砂目立て処理の方法としては、例えば機械的方法、電解によりエッチングする方法が挙げられる。機械的方法としては、例えばボール研磨法、ブラシ研磨法、液体ホーニングによる研磨法、バフ研磨法等が挙げられる。アルミニウム材の組成等に応じて上述の各種方法を単独あるいは組み合わせて用いることができる。好ましいのは電解エッチングによる方法である。
【0040】
電解エッチングは、リン酸、硫酸、塩酸、硝酸等の無機の酸を単独ないし2種以上混合した浴で行われる。砂目立て処理の後、必要に応じてアルカリあるいは酸の水溶液によってデスマット処理を行い中和して水洗する。
【0041】
陽極酸化処理は、電解液として、硫酸、クロム酸、シュウ酸、リン酸、マロン酸等を1種または2種以上含む溶液を用い、アルミニウム板を陽極として電解して行われる。形成された陽極酸化皮膜量は1〜50mg/dm2が適当であり、好ましくは10〜40mg/dm2である。陽極酸化皮膜量は、例えばアルミミウム板をリン酸クロム酸溶液(リン酸85%液:35ml,酸化クロム(VI):20gを1リットルの水に溶解して作製)に浸漬し、酸化皮膜を溶解し、板の皮膜溶解前後の重量変化測定等から求められる。
【0042】
封孔処理は、沸騰水処理、水蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理等が具体例として挙げられる。この他にアルミニウム板支持体に対して、水溶性高分子化合物や、フッ化ジルコン酸等の金属塩の水溶液による下引き処理を施すこともできる。
【0043】
本発明の感光性平版印刷版は、通常の方法で現像処理することができる。例えば、透明陽画フィルムを通して超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ等の光源により露光し、次いで種々のアルカリ現像液にて現像する。この結果未露光部分のみが支持体表面に残り、ポジーポジ型のレリーフ像が形成される。
【0044】
上記アルカリ現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸ナトリウム等のアルカリ金属塩の水溶液が挙げられる。アルカリ金属塩の濃度は0.1〜10重量%が好ましい。又、該現像液中に必要に応じてアニオン界面活性剤、両性界面活性剤やアルコール等の有機溶媒を加えることができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明の印刷版用感光性組成物は、特定の条件を満足するノボラック樹脂を使用することにより、良好な感度、現像許容性、BP適性及び硬調性のいずれにおいてもに優れ、更に印刷の際に使用される処理薬品に対する耐性も極めて良好である。
【0046】
次ぎに本発明を製造例及び実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの製造例及び実施例に限定されるものではない。
【0047】
[ノボラック樹脂の製造]
(製造例1)
300mlのセパラブルフラスコに、フェノール42.00g,メタクレゾール32.18g(フェノール/メタクレゾール=60/40(モル比))、ホルマリン(37%水溶液)35.88g,酢酸亜鉛二水和物0.80gを仕込、110℃の油浴で1時間加熱攪伴し反応させ、生成物を減圧乾燥してノボラック樹脂を得た。この樹脂のGPCクロマトグラフィーによる重量平均分子量は5000であった。
【0048】
(製造例2)
フェノール40.25g,メタクレゾール34.19g(フェノール/メタクレゾール=57.5/42.5(モル比))、ホルマリン33.78gを用いた以外は製造例1と同様にしてノボラック樹脂を製造した。得られた樹脂の重量平均分子量は、3700であった。
【0049】
(製造例3)
フェノール52.50g,メタクレゾール20.11g(フェノール/メタクレゾール=75/25(モル比))、ホルマリン36.79gを用いた以外は製造例1と同様にしてノボラック樹脂を製造した。得られた樹脂の重量平均分子量は、6500であった。
【0050】
(製造例4)
フェノール42.00g,メタクレゾール24.13g、パラクレゾール8.04g(フェノール/メタクレゾール/パラクレゾール=60/30/10(モル比))、ホルマリン34.98gを用いた以外は製造例1と同様にしてノボラック樹脂を製造した。得られた樹脂の重量平均分子量は、6300であった。
【0051】
(製造例5)
フェノール42.00g,メタクレゾール16.09g、パラクレゾール16.09g(フェノール/メタクレゾール/パラクレゾール=60/20/20(モル比))、ホルマリン36.79gを用いた以外は製造例1と同様にしてノボラック樹脂を製造した。得られた樹脂の重量平均分子量は、3100であった。
【0052】
(製造例6)
フェノール42.00g,メタクレゾール8.04g、パラクレゾール24.13g(フェノール/メタクレゾール/パラクレゾール=60/10/30(モル比))、ホルマリン36.20gを用いた以外は製造例1と同様にしてノボラック樹脂を製造した。得られた樹脂の重量平均分子量は、6000であった。
【0053】
(製造例7)
フェノール28.00g,メタクレゾール48.26g(フェノール/メタクレゾール=40/60(モル比))、ホルマリン34.67gを用いた以外は製造例1と同様にしてノボラック樹脂を製造した。得られた樹脂の重量平均分子量は、2800であった。
【0054】
(製造例8)
フェノール31.50g,メタクレゾール44.24g(フェノール/メタクレゾール=45/55(モル比))、ホルマリン34.98gを用いた以外は製造例1と同様にしてノボラック樹脂を製造した。得られた樹脂の重量平均分子量は、3000であった。
【0055】
(製造例9)
フェノール3.50g,メタクレゾール45.84g、パラクレゾール30.56g(フェノール/メタクレゾール/パラクレゾール=5/57/38(モル比))、ホルマリン37.69gを用いた以外は製造例1と同様にしてノボラック樹脂を製造した。得られた樹脂の重量平均分子量は、2500であった。
【0056】
(製造例10)
製造例9において、酸触媒としてシュウ酸二水和物を用いた以外は同様にしてノボラック樹脂を製造した。得られた樹脂の重量平均分子量は3100であった。
【0057】
[実施例及び比較例]
(アルミニウム板の作製)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を5重量%の水酸化ナトリウム水溶液中で60℃で1分間脱脂処理を行った後、1リットルの0.5モル塩酸水溶液中において温度;25℃、電流密度;60A/dm2、処理時間;30秒間の条件で電解エッチング処理を行った。次いで、5重量%水酸化ナトリウム水溶液中で60℃、10秒間のデスマット処理を施した後、20重量%硫酸溶液中で温度;20℃、電流密度;3A/dm2、処理時間;1分間の条件で陽極酸化処理を行った。更に、80℃の熱水で20秒間、熱水封孔処理を行い、平版印刷版材料用支持体のアルミニウム板を作製した。
【0058】
(ポジ型感光性平版印刷版試料の作製)
上記のように作製したアルミニウム板に、キノンジアジド化合物及び上記製造例で製造したノボラック樹脂を含む下記組成の感光性組成物塗布液をワイヤーバーを用いて塗布し、90℃で4分間乾燥し、ポジ型感光性平版印刷版試料1〜10(表ー1に記載)を作製した。
【0059】
感光性組成物塗布液組成
(1) 下記式に示すキノンジアジド化合物 QD−1 1.4g
(QDを反応させる前の樹脂のMW=2500)
【0060】
【化1】
【0061】
【化2】
【0062】
(2) 製造例に示すノボラック樹脂 5.0g
(3) 2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)
−1,3,4−オキサジアゾール 0.11g
(4) ビクトリアピュアブルーBOH(保土ヶ谷化学(株)製) 0.07g
(5) メチルセロソルブ 100ml
【0063】
(現像許容性試験)
得られた感光性平版印刷版試料1〜10の各々に絵柄の入ったポジ型フィルムを密着して2KWメタルハライドランプ(日本電池社製SPG−1000)を光源として8.0mW/cmの条件で露光した。次に、この試料にSDR−1(コニカ(株)社製)を水で6倍に希釈した現像液(標準現像液)、及び9〜11倍に希釈した現像液(アンダー現像液)及び4倍に希釈した現像液(オーバー現像液)を用いて25℃にて40秒間現像処理を施した。処理後の試料表面を目視で観察して、下記に示す評価基準に従い評価を行った。その結果を表ー1に示す。
【0064】
アンダー現像性の評価基準
○:非画線部の感光層が完全に溶解除去されている。
△:非画線部の感光層が一部残存している。
×:非画線部の感光層がほとんど溶解していない。
オーバー現像性の評価基準
○:画線部のやられなし。
×:画線部の膜が減っている。
【0065】
(耐処理薬品性試験)
耐処理薬品性を検討するために、印刷中に非画像部に発生する地汚れを除去する洗浄液として用いられるウルトラプレートクリーナー(UPC)(A.B.C.ケミカル社製)に対する耐久性を調べた。画像が形成された印刷版を前記各処理液に室温で所定時間(UPC:2時間)浸漬した後、水洗し、浸漬前の画像部と比較することにより、画像部の処理薬品に対する侵食度を判定した。その結果を表−1に示す。
【0066】
耐処理薬品性の評価基準
○:画像部の侵食が無い。
△:画像部の侵食が一部起きている。
×:画像部の侵食が全体に起きている。
【0067】
(クリア感度及び硬調性評価試験)
次の方法に従いクリア感度を評価し、その結果を表−1に示した。
感光性平版印刷版に感度測定用ステップタブレット(イスートマン・コダック社製No.2、濃度差0.5ずつで21段階のグレースケール)を密着して、2KWメタルハライドランプ(日本電池社製SPG−1000)を光源として8.0mW/cmの条件で露光した。次にこの試料にSDR−1(コニカ(株)社製)を水で6倍に希釈した現像液(標準現像液)を用いて25℃にて40秒間現像処理を施した。処理後、上記ステップタブレットの完全に現像されている段数をクリア感度とした。
【0068】
硬調性の評価における「クリア段数」は、上記ステップタブレットの完全に現像されている段数をいい、また「ベタ段数」は上記ステップタブレットの完全に現像されていない段数をいう。硬調性はこのベタ段数−クリア段数の値で評価され、この値が小さい程硬調性にすぐれている。硬調性は、下記の評価基準に従って評価し、その結果を表−2に示す。
硬調性の評価基準
○:ベタ段数−クリア段数=7.0以下
△:ベタ段数−クリア段数=7.0〜8.0
【0069】
(BP適性試験)
得られた平版印刷版試料1〜10に筆圧50gでボールペン描画した後、6倍希釈したSDR−1現像液(コニカ(株)製)を用いて27℃で20秒間現像処理した。ボールペン描画部分の画像部のやられを表ー2に示す。
ボールペン描画やられの評価基準
○:やられ無し
△:画像部に欠けがある。
【0070】
表ー1及び表ー2の結果から明かなように、本発明の感光性組成物を使用して作成した平版印刷版は、処理薬品に対する耐性に優れ、クリヤー感度が高く、且つ現像許容性にも勝り、更にBP適性と硬調性にも優れている。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
Claims (3)
- キノンジアジド化合物及びバインダー樹脂を含む印刷版用感光性組成物において、該樹脂は、下記(1)〜(3)からなるフェノール成分及びアルデヒド類またはケトン類を、触媒として二価金属の有機酸塩、二価金属の酸化物、二価金属の水酸化物またはトリエチルアミンを用いて縮合させたノボラック樹脂であり、且つ、この樹脂の重水素化ジメチルスルホキシド溶液の13C−NMRスペクトルにおいて、23.0〜31.0ppmまでのピークの積分値をA、23.0〜37.0ppmまでのピークの積分値をBとした際に、X=A/Bの値がX≧0.57であることを特徴とする印刷版用感光性組成物。
フェノール成分
(1)フェノール 55〜75モル%
(2)m−クレゾールを95モル%以上含むm−アルキルフェノール 10〜45モル%
(3)p−クレゾールを95モル%以上含むp−アルキルフェノール 0〜30モル% - 請求項1において、該X値がX≧0.60であることを特徴とする印刷版用感光性組成物。
- キノンジアジド化合物がo−ナフトキノンジアジドスルホン酸と、フェノール類とアルデヒド又はケトンとの重縮合樹脂とのエステルであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の印刷版用感光性組成物。
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