JP3548481B2 - 吸着剤の再生方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は吸着剤の再生方法、詳しくはアルカリ金属元素を含有する、窒素酸化および硫黄酸化物を吸着除去するための吸着剤を効率よく再生し、しかも再生の際に脱離する窒素酸化物を無害化して、その環境への影響をなくした吸着剤の再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ボイラなどの固定式窒素酸化物発生源からの窒素酸化物の除去方法に関しては、従来から、アンモニアを還元剤に用いて窒素酸化物を選択的に還元して無害な窒素と水とに変換する接触還元法が最も経済的な方法として広く用いられている。
【0003】
これに対し、道路トンネル、シェルター付道路、大深度地下空間、道路交差点などにおける換気ガスもしくは大気、および家庭内で使用される燃焼機器から排出されるガスなどに含まれる窒素酸化物の濃度は、5ppm程度と、ボイラ排ガス中の窒素酸化物濃度に比べて著しく低く、またガス温度は常温であり、しかもガス量は莫大なものである。このため、例えば道路トンネルの換気ガスに上記接触還元法を適用して窒素酸化物を効率よく除去するためには、この換気ガスの温度を300℃以上にすることが必要であり、その結果、多大なエネルギーが必要となることから、上記接触還元法をそのまま適用することには経済的に問題がある。
【0004】
このような事情から、上記のような道路トンネルの換気ガスなど、窒素酸化物の濃度が低い、例えば5ppm以下の排ガスから窒素酸化物を効率よく除去することが望まれている。そこで、低濃度の窒素酸化物を吸着剤に吸着させて除去する方法、およびこれに適した吸着剤が提案されている。本出願人も、上記のような低濃度の窒素酸化物含有ガスから窒素酸化物を吸着除去するに好適な吸着剤を提案している(特開平10−128105、特開平10−192698、特開平10−309435、特開平11−28351、特開平11−28352、特願平11−143361、特願平11−113365および特願平11−220687)。
【0005】
ところで、吸着剤を実際に使用する際には、窒素酸化物を吸着して吸着力が低下した吸着剤を再生して繰り返し使用できるようにすることは、経済的な面から不可欠である。このような吸着剤の再生に加熱処理が用いられていることはよく知られている。本出願人も、このような使用によって性能の低下した吸着剤を再生する方法を提案している(特願平11−149538)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本出願人が提案した上記再生方法はそれなりに有効なものではあるが、なお改善すべきと余地があることがわかった。すなわち、窒素酸化物と硫黄酸化物とを吸着して吸着力の低下した吸着剤を還元剤の存在下で加熱処理する(特願平11−149538)だけでは、硫黄酸化物を十分に除去することができないことがあり、また水洗処理する場合(特願平10−340139)、吸着剤上に吸着された窒素酸化物と硫黄酸化物とが同時に溶出するため、排水中には窒素成分が含まれ、この排水をそのまま廃棄することは環境浄化にならない(環境への影響をなくすためには、水洗処理の後に更に排水の処理工程が必要となる)。
【0007】
かくして、本発明は前記再生方法に対し更に改善された再生方法を提供しようとするものである。すなわち、本発明の目的は、アルカリ金属元素と銅とを含有する、窒素酸化物および硫黄酸化物の吸着剤であって、その使用によって吸着力の低下した吸着剤を効率よく再生して、新規吸着剤とほぼ同等の吸着力を有し、しかも繰り返して再生しても高い吸着力を保持した再生吸着剤を得ることができるようにした、またさらには再生の際に脱離する窒素酸化物を無害化して、その環境への影響をなくした再生方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らの研究によれば、(1)窒素酸化物と硫黄酸化物とを吸着して吸着力の低下した吸着剤を再生するにあたり、最初に還元剤の存在下に加熱処理(還元処理)して窒素酸化物を脱離させ、続いて水洗処理して硫黄酸化物を脱離させることにより、窒素酸化物と硫黄酸化物とを全て除去できる、(2)窒素酸化物と硫黄酸化物とを除去した吸着剤は、アルカリ金属元素を含浸させるか、もしくは吸着剤がさらに銅を含有する場合には、アルカリ金属元素を含浸させた後、再度還元剤の存在下で加熱処理するか、または有機酸アルカリ塩を含浸させた後、不活性ガス中で加熱処理することにより効率よく再生できる、(3)脱離した窒素酸化物は脱硝処理することにより、また硫黄成分を含む排水は中和することにより完全に無害化できる、ことがわかった。本発明は、これら知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
また、本発明は、アルカリ金属元素と銅とを含有する、窒素酸化物および硫黄酸化物を吸着除去するための吸着剤を再生するにあたり、該吸着剤を還元剤の存在下で加熱処理した後、水洗し、必要に応じて乾燥した後、アルカリ金属元素を含浸させ、再度還元剤の存在下で加熱処理することを特徴とする吸着剤の再生方法である。
【0011】
また、本発明は、アルカリ金属元素と銅とを含有する、窒素酸化物および硫黄酸化物を吸着除去するための吸着剤を再生するにあたり、該吸着剤を還元剤の存在下で加熱処理した後、水洗し、必要に応じて乾燥した後、有機酸アルカリ塩を含浸させ、不活性ガス中で加熱処理することを特徴とする吸着剤の再生方法である。
【0012】
さらに、本発明は、上記方法において還元剤の存在下での加熱処理により脱離した窒素酸化物を脱硝処理することを特徴とする吸着剤の再生方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の再生方法は、窒素酸化物と硫黄酸化物とを吸着除去するための吸着剤(以下、窒素酸化物等吸着剤ということもある。)であって、低濃度の窒素酸化物および硫黄酸化物を吸着して吸着性能の低下した吸着剤の再生に用いられるが、なかでも5ppm以下の低濃度の窒素酸化物および硫黄酸化物を含む大気またはガスの浄化に使用し、窒素酸化物および硫黄酸化物を吸着して吸着性能の低下した吸着剤の再生に好適に用いられる。なお、窒素酸化物とは、NOxとして示されるものであり、具体的にはNOおよびNO2を挙げることができる。また、硫黄酸化物とは、SOxとして示されるものであり、具体的にはSO2を挙げることができる。
【0022】
本発明のアルカリ金属元素と銅とを含有する吸着剤の代表例としては次のものを挙げることができる。
<吸着剤a>
(1)アルカリ金属元素、(2)銅、または銅とマンガン、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、および(3)チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも一種の元素を含有する吸着剤。
<吸着剤b>
(1)アルカリ金属元素、(2)銅、または銅とマンガン、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、(3)チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも一種の元素、および(4)白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも一種の元素を含有する吸着剤。
<吸着剤c>
(1)アルカリ金属元素、(2)銅、または銅とマンガン、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、および(3)白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも一種の元素を含有する吸着剤。
【0023】
上記吸着剤aないし吸着剤cのなかでも、吸着剤aおよび吸着剤bが好適である。吸着剤aのなかでも、耐久性が優れた吸着剤が得られるという点において、(1)アルカリ金属元素、(2)銅、または銅とニッケルおよび鉄から選ばれる少なくとも一種の元素、および(3)ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも一種の元素を含有する吸着剤が好適に用いられる。また、吸着剤bのなかでも、耐久性に優れた吸着剤が得られるという点において、(1)アルカリ金属元素、(2)銅、または銅とニッケルおよび鉄から選ばれる少なくとも一種の元素、(3)ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも一種の元素、および(4)ルテニウムを含有する吸着剤が好適に用いられる。
吸着剤bを例に挙げて本発明の吸着剤を詳しく説明する。吸着剤bにおける前記の成分(1)〜(4)の形態については特に制限はなく、窒素酸化物等を吸着する機能が得られる限り、いずれの形態にあってもよい。また、出発原料によっても変わるので一概に特定することはできない。成分(1)の場合、例えば、水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩として含有される。成分(2)の場合、例えば、金属、酸化物または複合酸化物、もしくは成分(1)のアルカリ金属、または成分(3)のアルカリ土類金属との複合酸化物または複塩として含有される。成分(3)の場合、例えば、酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩または硫酸塩として含有される。また、成分(4)の場合、例えば、金属、酸化物または複合酸化物として含有される。
成分(1)〜(4)の出発原料としては、各成分を、例えば上記形態で含有する吸着剤を形成し得るものであればいずれも使用することができる。具体的には、成分(1)の出発原料としては、各元素の硝酸塩、亜硝酸塩、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩やシュウ酸塩、クエン酸塩、ソルビン酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。成分(2)の出発原料としては、各元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、酢酸塩やシュウ酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。成分(3)の出発原料としては、各元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、リン酸塩などを用いることができる。また、成分(4)の出発原料としては、各元素の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、アンモニウム錯体などを用いることができる。
上記成分の割合については、成分(1)(酸化物換算)は1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、成分(2)(酸化物換算)は0.5〜89質量%、好ましくは1〜75質量%、成分(3)(酸化物換算)は10〜98.5質量%、好ましくは20〜98質量%、そして成分(4)(金属換算)は0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%である(合計100質量%)。
上記吸着剤の調製方法には特に制限はなく、窒素酸化物等を吸着する機能を有する吸着剤が得られる限り、各種方法で調製することができる。成分(1)〜(4)を含有する吸着剤bについて、その代表的な調製方法を以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
成分(1)、(2)および(4)の出発原料の水溶液、または粉体を一般に用いられている成型助剤とともに成分(3)に加え、混合、攪拌し、押出成型機で成型する。得られた成型体は50〜120℃で乾燥した後、200〜600℃、好ましくは250〜500℃で1〜10時間、好ましくは2〜6時間空気中、あるいは窒素などの不活性ガス中などで焼成する。そのほか、成分(1)、(2)および(4)の少なくとも1つと成分(3)とを含有する成型体をあらかじめ作成し、この成型体に残りの成分を含浸担持させてもよい。例えば、成分(2)、(3)および(4)を含有する成型体をあらかじめ作成し、この成型体に残りの成分(1)を含浸させる。
本発明によれば、上記吸着剤aないし吸着剤bのような必須成分としてアルカリ金属元素と銅とを必須成分として含有する窒素酸化物等吸着剤は再生方法(A)または再生方法(B)によって好適に再生することができる。これら再生方法(A)および(B)は後で詳しく説明する。
【0024】
上記吸着剤のなかでも、銅の少なくとも一部が0価または1価である吸着剤は吸着力が優れている点において好ましく、本発明によれば、このような吸着剤であって吸着力の低下した吸着剤を後記の再生方法(A)または再生方法(B)によって効果的に再生することができる。なお、新規吸着剤中には銅の少なくとも一部が0価または1価の形態で含まれていないが、このような吸着剤の性能が低下したときにも、その再生に再生方法(A)および再生方法(B)が有効に適用できることはいうまでもないことである。そして、再生方法(A)または再生方法(B)によって得られる再生吸着剤においては、銅の少なくとも一部が0価または1価の形態で含有されている。
【0025】
吸着剤の形状については特に制限はなく、円柱状、円筒状、球状、板状、ハニカム状、その他一体に成型されたもののなかから適宜選択することができる。この成型には、一般的な成型方法、例えば打錠成型、押出成型などを用いることができる。球状の場合、その平均粒径は、通常、1〜10mmである。ハニカム状吸着剤の場合は、いわゆるモノリス担体と同様であり、押出成型法やシート状素子を巻き固める方法などにより製造することができる。そのガス通過口(セル形状)の形は、6角形、4角形、3角形、またはコルゲーション形のいずれであってもよい。セル密度(セル数/単位断面積)は、通常、25〜800セル/平方インチ(×2.54cm)であり、好ましくは25〜500セル/平方インチ(×2.54cm)である。
【0040】
次に、本発明の再生方法(A)および(B)について説明する。
<再生方法(A)>
この方法は次の工程からなるものである。
1) 還元剤の存在下での加熱処理
2) 水洗処理
3) 乾燥処理(任意)
4) アルカリ金属元素の含浸処理
5) 還元剤の存在下での加熱処理
工程1)においては、窒素酸化物と硫黄酸化物とを吸着して吸着力の低下した吸着剤を還元剤の存在下で加熱処理(還元処理)して吸着剤に吸着されている窒素酸化物を脱離させる。すなわち、工程1)は窒素酸化物の脱離処理に係わるものである。
上記還元剤とは、水素および燃焼性有機化合物を意味する。燃焼性有機化合物の代表例としては、含酸素有機化合物、具体的には脂肪酸類、アルコール類およびアルデヒド類、好ましくは炭素数1〜4の低級脂肪酸類、炭素数1〜4の低級アルコール類、および炭素数1〜4の低級アルデヒド類を挙げることができる。そのほか、炭素数1〜4の飽和または不飽和の炭化水素類を用いることができる。これらのなかでも、上記の低級脂肪酸類、低級アルコール類および低級アルデヒド類が好ましく、特に低級脂肪酸類が好適に用いられる。上記燃焼性有機化合物は単独でも、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。かくして、本発明では、水素または低級脂肪酸類が還元剤として好適に用いられる。
上記低級脂肪酸類の代表例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などのモノまたはジー、もしくは飽和または不飽和のカルボン酸を挙げることができる。
上記還元剤は、通常、他のガスで希釈して、例えば、窒素などの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。具体的には、還元剤として水素を用いる場合、水素と窒素、ヘリウムなどの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。この混合ガス中の水素の濃度は、通常、0.1〜20容量%であり、好ましくは0.5〜10容量%である。なお、空気との混合ガスとすることもできるが、爆発の危険があるので、一般的には、上記のような不活性ガスとの混合ガスとして使用するのがよい。燃焼性有機化合物の場合には、不活性ガスとの混合ガスとしてもよいが、通常、空気との混合ガスとして用いるのが再生効率(酸化効率)が上がって好ましい。この混合ガス中の燃焼性有機化合物の濃度は、通常、0.001〜1容量%であり、好ましくは0.01〜0.5容量%である。なお、燃焼性有機化合物が固体の場合には、水に溶解させて、水溶液として噴霧して、供給すればよい。
上記還元剤の希釈に用いることのできるガスとしては、上記の窒素、ヘリウムなどの不活性ガスおよび空気のほかに、水蒸気(H 2 O)、二酸化炭素ガスなどを挙げることができる。かくして、上記混合ガスの代表例としては、水素と不活性ガスとの混合ガス、燃焼性有機化合物と空気、または空気および水蒸気との混合ガスを挙げることができる。
加熱温度は、通常、200〜600℃であり、好ましくは300〜500℃、より好ましくは300〜400℃である。なお、再生すべき吸着剤は、通常、常温であるが、上記加熱温度までの昇温速度には特に制限はなく、適宜決定することができる。
加熱時間は、窒素酸化物等の吸着の程度、加熱温度などによって変わるので一概に特定できないが、通常、30分〜10時間、好ましくは30分〜5時間の範囲で適宜選ぶことができる。
上記加熱処理は還元剤の通風下で行うことが好ましい。還元剤の通風下で再生処理を行う場合、通風の程度については特に制限はなく、新たな還元剤が供給されるような条件下にすればよい。一般的には、吸着剤を充填した装置(吸着剤層)に、その入口側から還元剤を導入して、出口側に流通されればよい。
工程2)においては、工程1)で窒素酸化物を脱離させた吸着剤を水洗して硫黄酸化物を脱離させる。すなわち、工程2)は硫黄酸化物の脱離処理に係わるものである。
水洗の方法および条件には特に制限はなく、吸着された硫黄酸化物を十分に除去し得るような方法および条件で行えばよい。代表的な方法としては、吸着剤を水槽に漬ける方法、シャワーリングを用いて吸着剤に水を噴霧する方法などを挙げることができる。水温には特に制限はないが、通常、10〜80℃であり、好ましくは20〜50℃である。
工程3)の乾燥は必須でないが、水洗後乾燥するのが好ましい。乾燥の方法および条件には特に制限はなく、次の工程4)でのアルカリ金属元素の含浸を支障なく行える程度に乾燥すればよい。しかし、アルカリ金属元素の含浸を、吸着剤をアルカリ金属化合物の水溶液に浸漬して行う場合には、乾燥が不十分だとその後のアルカリ金属元素の含浸が効果的に行われず、消失したアルカリ金属元素を十分に補給できないこともあるので、吸着剤中の水分を実質的に除去するのがよい。通常、通風下での乾燥が好適である。通風すべきガスとしては、窒素などの不活性ガスを用いてもよいが、空気を用いるのが一般的である。乾燥温度は、通常、50〜200℃であり、好ましくは80〜150℃である。
工程4)においては、工程2)での水洗によりアルカリ金属元素が溶出するので、これを補充するために、水洗後の吸着剤にアルカリ金属元素を含浸させる。このアルカリ金属元素の含浸は、吸着剤から水洗により消失したアルカリ金属元素を吸着剤に補給し得るものであれば、いずれの方法によって行ってもよい。代表的な方法は、アルカリ金属化合物を有機溶剤または水に溶解し、得られる溶液、好ましくはアルカリ金属化合物の水溶液に上記の水洗、乾燥後の吸着剤を含浸するものである。なお、補給すべきアルカリ金属元素は、吸着剤から消失したアルカリ金属元素と異なっていてもよいが、一般的には同一なものを使用する。
上記アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属元素の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩や、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ソルビン酸塩などの有機酸塩を用いることができる。具体的には、アルカリ金属元素がカリウムの場合、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酢酸カリウム、シュウ酸カリウムなどを挙げることができる。
アルカリ金属元素の含浸による補給の程度については、通常、再生吸着剤中のアルカリ金属元素含量が前記のアルカリ金属元素(成分(1))の含量、すなわち1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%(酸化物換算)の範囲となるようにする。したがって、上記アルカリ金属化合物の水溶液の濃度、浸漬時間などの条件については、再生吸着剤中のアルカリ金属元素含量が、上記のように、1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%の範囲となるように適宜選択すればよい。
上記のように再生した吸着剤は、通常、乾燥して再使用する。乾燥温度には特に制限はなく、例えば、50〜120℃の範囲の温度で乾燥すればよい。さらに、必要に応じて、例えば、200〜600℃、好ましくは250〜500℃の範囲の温度で1〜10時間、好ましくは2〜6時間空気中で焼成してもよい。
工程4)において、含浸処理後の吸着剤は、通常、乾燥するにとどめておき、焼成はしない。
【0041】
工程5)では、還元剤の存在下で加熱処理することにより吸着剤中の銅の少なくとも一部を0価または1価に還元するものである。この工程5)での還元処理は工程1)での還元処理と同様にして行うことができる。工程5)での還元処理は工程1)での還元処理と同一でも、あるいは異なっていてもよく、各工程での目的(窒素酸化物の脱離および銅の少なくとも一部の0価または1価への還元)に応じて最適な条件を選べばよい。
【0042】
この再生方法(A)により、吸着力に優れた再生吸着剤を得ることができる。すなわち、再生方法(A)によって得られる再生吸着剤は、銅の少なくとも一部が0価または1価の形態にあり、新規吸着剤とほぼ同等の吸着力を有し、しかも繰り返し再生しても高い吸着力を保持したものである。
【0043】
再生吸着剤が0価または1価の銅を含有していることはX線回折による格子面間隔(d値)を測定することにより確認することができる。Cu(0価)のd値は、2.09±0.01と1.81±0.01と1.28±0.01とにあり、Cu2O(1価)のd値は2.47±0.01と2.14±0.01と1.51±0.01とにある。
<再生方法(B)>
この方法は次の工程からなるものである。
1) 還元剤の存在下での加熱処理
2) 水洗処理
3) 乾燥処理(任意)
4) 有機酸アルカリ塩の含浸処理
5) 不活性ガス中での加熱処理
工程1)ないし工程3)は再生方法(A)で説明したと同じである。
【0044】
工程4)は、アルカリ金属元素を補充するために、アルカリ金属化合物の溶液または水溶液、好ましくはアルカリ金属化合物の水溶液を吸着剤に含浸させるにあたり、アルカリ金属化合物として有機酸アルカリ塩を用いる点を除けば、再生方法(A)の工程4)と同様に行うことができる。
【0045】
すなわち、工程▲2▼の水洗処理により、溶出したアルカリ金属元素を補充する際に、アルカリ金属化合物として有機酸アルカリ塩を使用する場合には、還元剤の存在下での加熱処理の代わりに、不活性ガス中での加熱処理によっても銅の少なくとも一部を0価または1価に還元できるというものである。もちろん、有機酸アルカリ塩を用いた場合でも、還元剤の存在下での加熱処理によって銅の少なくとも一部を0価または1価に還元することができる。有機酸アルカリ塩としては、酢酸、シュウ酸、クエン酸、ソルビン酸などの有機酸のアルカリ塩を用いることができる。
【0046】
工程5)では、工程4)で有機酸アルカリ塩を含浸させた吸着剤を不活性ガス中で加熱処理する。この加熱処理は、再生方法(A)の工程5)での加熱処理と同様の条件で行うことができる。
【0047】
この再生方法(B)により、吸着力に優れた再生吸着剤を得ることができる。すなわち、再生方法(B)によって得られる再生吸着剤は、銅の少なくとも一部が0価または1価の形態にあり、新規吸着剤とほぼ同等の吸着力を有し、しかも繰り返し再生しても高い吸着力を保持したものである。
【0048】
吸着剤の再生処理の際には脱離した窒素酸化物を含むガス(排ガス)が発生するので、この排ガス中の窒素酸化物を除去して無害化した後に、大気中に放出するのが好ましい。この排ガス中の窒素酸化物の除去方法、すなわち脱硝方法には特に制限はなく、従来公知の脱硝方法によって行うことができる。具体的には、例えば、排ガスにアンモニアを還元剤として添加し、脱硝触媒に接触させて窒素酸化物を窒素と水とに還元すればよい。
【0049】
一方、硫黄酸化物は、水洗に使用した水に溶解して排水として回収できる。この排水中には、窒素成分が含まれないので、適宜排水を中和処理して無害化した後、廃棄できる。中和処理については特に制限はなく、一般に用いられている方法にしたがって行うことができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明の再生方法によれば、新規吸着剤とほぼ同等の吸着力を有し、しかも繰り返し再生しても高い吸着力を保持した再生吸着剤が得られる。
【0051】
本発明の再生方法においては、再生時に発生する窒素酸化物および硫黄酸化物を無害化して、その環境への影響をなくすことができる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
調製例1
塩基性炭酸銅(日本化学産業(株)製、銅金属を50質量%含有)239.6g、炭酸カルシウム850gに適量の水に添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成形した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、500℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを4N−KNO2水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥し、400℃で2時間水素/窒素(5/95容量%)の雰囲気下で加熱処理(還元処理)した。
【0054】
このようにして得られた吸着剤の組成は、Cu:Ca:K(CuO:CaO:K2Oとして)=22.2:70.1:7.7(質量%)であった。以下、この吸着剤を吸着剤−1という。この吸着剤のX線回折図を図5に示す。
調製例2
塩基性炭酸銅(日本化学産業(株)製、銅金属を50質量%含有)239.6g、炭酸カルシウム850gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、350℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。更にこのペレットを4N−CH3COOK水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥し、400℃で2時間、窒素雰囲気下で焼成した。
【0055】
このようにして得られた吸着剤の組成はCu:Ca:K(CuO:CaO:K2Oとして)=22.2:70.1:7.7(質量%)であった。以下、この吸着剤を吸着剤−2とする
調製例3
塩基性炭酸銅(日本化学産業(株)製、銅金属を50質量%含有)159.7g、シュウ酸鉄(II)2水和物225.3g、炭酸カルシウム750gに適量の水に添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成形した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、500℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを4N−CH3COOK水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥し、400℃で2時間窒素雰囲気下で焼成した。
【0056】
このようにして得られた吸着剤の組成は、Cu:Fe:Ca:K(CuO:Fe2O3:CaO:K2Oとして)=14.9:14.9:62.7:7.5(質量%)であった。以下、この吸着剤を吸着剤−3という。
【0057】
調製例4
酸化ルテニウム(田中貴金属(株)製、ルテニウム金属を65質量%含有)1.5g、塩基性炭酸銅(日本化学産業(株)製、銅金属を50質量%含有)239.6g、炭酸カルシウム800gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、500℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを4N−CH3COOK水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥し、400℃で2時間、窒素雰囲気下で焼成した。
【0058】
このようにして得られた吸着剤の組成は、Ru:Cu:Ca:K(Ru:CuO:CaO:K2Oとして)=0.2:23.2:69.2:7.4(質量%)であった。以下、この吸着剤を吸着剤−4とする。
実施例1
吸着剤−1について、その使用前の吸着性能(初期吸着性能)および再生後の吸着性能を下記の方法により評価した。なお、後記の再生処理−1とは、窒素酸化物を脱離させるための還元剤の存在下での加熱処理(前記の工程1)に相当する)を、また再生処理−2とは、その後の水洗処理を含む再生処理(前記の工程2)およびそれ以降の工程に相当する)を意味する。
【0059】
最初に吸着剤の初期性能を評価した。
<初期吸着性能の評価>
吸着剤35mlを内径30mmのSUS316製反応管に充填し、この吸着剤層に下記組成の合成ガスを下記条件下に導入した。
合成ガス組成
一酸化窒素(NO):0.9ppm、二酸化窒素(NO2):0.1ppm、二酸化硫黄:(SO2)0.05ppm、H2O:1.9容量%、残り空気
処理条件
ガス量17.3NL/min、処理温度25℃、空間速度(SV)30,000hr−1(STP)、ガス湿度60%RH
通ガス1時間後、上記吸着剤層の入口および出口における合成ガス中の窒素酸化物(NOおよびNO2)濃度を化学発光式NOx計により、また硫黄酸化物濃度を紫外線吸収式SO2計で測定し、次式にしたがってNO、NO2およびSO2除去率を算出した。
NO除去率(%)=(入口NO濃度−出口NO濃度)/(入口NO濃度)(×100)
NO2除去率(%)=(入口NO2濃度−出口NO2濃度)/(入口NO2濃度)(×100)
SO2除去率(%)=(入口SO2濃度−出口SO2濃度)/(入口SO2濃度)(×100)
上記初期性能の評価結果を図1に示す(再生回数0)。この数値は吸着剤の初期吸着性能を示す。
【0060】
次に、吸着剤−1の再生後の吸着性能を下記の方法により評価した。
<再生後の吸着性能の評価>
上記の吸着剤層に下記の合成ガスを下記条件下に導入して、加速吸着試験を行った。
合成ガス組成
一酸化窒素(NO):2.7ppm、二酸化窒素(NO2):0.3ppm、二酸化硫黄(SO2):0.15ppm、H2O:1.9容量%、残り空気
処理条件
ガス量17.3NL/min、処理温度25℃、空間速度(SV)30,000hr−1(STP)、ガス湿度60%RH
上記加速吸着試験を300時間行った後の吸着剤について、吸着剤層に導入する合成ガスおよび処理条件を下記に変更して吸着剤の再生処理−1を行った。
再生ガス組成
水素:5容量%、残り窒素
処理条件
ガス量17.3NL/min、昇温速度250℃/min、処理温度400℃、処理時間1時間
上記再生処理−1終了後、吸着剤を室温まで冷却した後、反応管から取り出し、次の再生処理−2を行った。
<再生処理−2>
2)吸着剤を水200mlに20分間浸漬した後取り出す操作を3回繰り返した後、3)120℃で5時間乾燥し、次いで4)4N−KNO 2 水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥し、さらに5)400℃で2時間水素/窒素(5/95容量%)の雰囲気下で加熱処理(還元処理)する。
【0061】
上記のように再生処理−1および再生処理−2(この再生方法は再生方法(A)に相当する)を行った吸着剤を再び反応管に充填し、上記初期吸着性能の評価に用いたと同じ合成ガスを、同じ処理条件下に導入して、再生後の吸着剤の吸着性能を評価した。
【0062】
上記のような吸着−再生の操作を5回繰り返した。結果を図1に示す。
【0063】
再生吸着剤のX線回折図を図6に示す。
実施例2
実施例1において、吸着剤−1の代わりに吸着剤−2を用い、再生処理−2を次のように変更した以外は、実施例1と同様の評価試験を行った。結果を図2に示す。この実施例における再生方法は再生方法(B)に相当する。
<再生処理−2>
2)吸着剤を水200mlに20分間浸漬した後取り出す操作を3回繰り返した後、3)120℃で5時間乾燥し、次いで4)4N−CH3COOK水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥し、さらに5)400℃で2時間窒素雰囲気下で加熱処理(還元)する。
【0064】
再生吸着剤のX線回折図を図7に示す。
実施例3
実施例2において、吸着剤−2の代わりに吸着剤−3を用い、実施例2と同様の評価試験を行った。結果を図3に示す。この実施例における再生方法は再生方法(B)に相当する。
実施例4
実施例2において、吸着剤−2の代わりに吸着剤−4を用いた以外は実施例2と同様の評価試験を行った。結果を図4に示す。この実施例における再生方法は再生方法(B)に相当する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における再生回数に対する除去率を示す。
【図2】実施例2における再生回数に対する除去率を示す。
【図3】実施例3における再生回数に対する除去率を示す。
【図4】実施例4における再生回数に対する除去率を示す。
【図5】調製例1で得られた吸着剤のX線回折図である。
【図6】実施例1で得られた再生吸着剤のX線回折図である。
【図7】実施例2で得られた再生吸着剤のX線回折図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は吸着剤の再生方法、詳しくはアルカリ金属元素を含有する、窒素酸化および硫黄酸化物を吸着除去するための吸着剤を効率よく再生し、しかも再生の際に脱離する窒素酸化物を無害化して、その環境への影響をなくした吸着剤の再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ボイラなどの固定式窒素酸化物発生源からの窒素酸化物の除去方法に関しては、従来から、アンモニアを還元剤に用いて窒素酸化物を選択的に還元して無害な窒素と水とに変換する接触還元法が最も経済的な方法として広く用いられている。
【0003】
これに対し、道路トンネル、シェルター付道路、大深度地下空間、道路交差点などにおける換気ガスもしくは大気、および家庭内で使用される燃焼機器から排出されるガスなどに含まれる窒素酸化物の濃度は、5ppm程度と、ボイラ排ガス中の窒素酸化物濃度に比べて著しく低く、またガス温度は常温であり、しかもガス量は莫大なものである。このため、例えば道路トンネルの換気ガスに上記接触還元法を適用して窒素酸化物を効率よく除去するためには、この換気ガスの温度を300℃以上にすることが必要であり、その結果、多大なエネルギーが必要となることから、上記接触還元法をそのまま適用することには経済的に問題がある。
【0004】
このような事情から、上記のような道路トンネルの換気ガスなど、窒素酸化物の濃度が低い、例えば5ppm以下の排ガスから窒素酸化物を効率よく除去することが望まれている。そこで、低濃度の窒素酸化物を吸着剤に吸着させて除去する方法、およびこれに適した吸着剤が提案されている。本出願人も、上記のような低濃度の窒素酸化物含有ガスから窒素酸化物を吸着除去するに好適な吸着剤を提案している(特開平10−128105、特開平10−192698、特開平10−309435、特開平11−28351、特開平11−28352、特願平11−143361、特願平11−113365および特願平11−220687)。
【0005】
ところで、吸着剤を実際に使用する際には、窒素酸化物を吸着して吸着力が低下した吸着剤を再生して繰り返し使用できるようにすることは、経済的な面から不可欠である。このような吸着剤の再生に加熱処理が用いられていることはよく知られている。本出願人も、このような使用によって性能の低下した吸着剤を再生する方法を提案している(特願平11−149538)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本出願人が提案した上記再生方法はそれなりに有効なものではあるが、なお改善すべきと余地があることがわかった。すなわち、窒素酸化物と硫黄酸化物とを吸着して吸着力の低下した吸着剤を還元剤の存在下で加熱処理する(特願平11−149538)だけでは、硫黄酸化物を十分に除去することができないことがあり、また水洗処理する場合(特願平10−340139)、吸着剤上に吸着された窒素酸化物と硫黄酸化物とが同時に溶出するため、排水中には窒素成分が含まれ、この排水をそのまま廃棄することは環境浄化にならない(環境への影響をなくすためには、水洗処理の後に更に排水の処理工程が必要となる)。
【0007】
かくして、本発明は前記再生方法に対し更に改善された再生方法を提供しようとするものである。すなわち、本発明の目的は、アルカリ金属元素と銅とを含有する、窒素酸化物および硫黄酸化物の吸着剤であって、その使用によって吸着力の低下した吸着剤を効率よく再生して、新規吸着剤とほぼ同等の吸着力を有し、しかも繰り返して再生しても高い吸着力を保持した再生吸着剤を得ることができるようにした、またさらには再生の際に脱離する窒素酸化物を無害化して、その環境への影響をなくした再生方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らの研究によれば、(1)窒素酸化物と硫黄酸化物とを吸着して吸着力の低下した吸着剤を再生するにあたり、最初に還元剤の存在下に加熱処理(還元処理)して窒素酸化物を脱離させ、続いて水洗処理して硫黄酸化物を脱離させることにより、窒素酸化物と硫黄酸化物とを全て除去できる、(2)窒素酸化物と硫黄酸化物とを除去した吸着剤は、アルカリ金属元素を含浸させるか、もしくは吸着剤がさらに銅を含有する場合には、アルカリ金属元素を含浸させた後、再度還元剤の存在下で加熱処理するか、または有機酸アルカリ塩を含浸させた後、不活性ガス中で加熱処理することにより効率よく再生できる、(3)脱離した窒素酸化物は脱硝処理することにより、また硫黄成分を含む排水は中和することにより完全に無害化できる、ことがわかった。本発明は、これら知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
また、本発明は、アルカリ金属元素と銅とを含有する、窒素酸化物および硫黄酸化物を吸着除去するための吸着剤を再生するにあたり、該吸着剤を還元剤の存在下で加熱処理した後、水洗し、必要に応じて乾燥した後、アルカリ金属元素を含浸させ、再度還元剤の存在下で加熱処理することを特徴とする吸着剤の再生方法である。
【0011】
また、本発明は、アルカリ金属元素と銅とを含有する、窒素酸化物および硫黄酸化物を吸着除去するための吸着剤を再生するにあたり、該吸着剤を還元剤の存在下で加熱処理した後、水洗し、必要に応じて乾燥した後、有機酸アルカリ塩を含浸させ、不活性ガス中で加熱処理することを特徴とする吸着剤の再生方法である。
【0012】
さらに、本発明は、上記方法において還元剤の存在下での加熱処理により脱離した窒素酸化物を脱硝処理することを特徴とする吸着剤の再生方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の再生方法は、窒素酸化物と硫黄酸化物とを吸着除去するための吸着剤(以下、窒素酸化物等吸着剤ということもある。)であって、低濃度の窒素酸化物および硫黄酸化物を吸着して吸着性能の低下した吸着剤の再生に用いられるが、なかでも5ppm以下の低濃度の窒素酸化物および硫黄酸化物を含む大気またはガスの浄化に使用し、窒素酸化物および硫黄酸化物を吸着して吸着性能の低下した吸着剤の再生に好適に用いられる。なお、窒素酸化物とは、NOxとして示されるものであり、具体的にはNOおよびNO2を挙げることができる。また、硫黄酸化物とは、SOxとして示されるものであり、具体的にはSO2を挙げることができる。
【0022】
本発明のアルカリ金属元素と銅とを含有する吸着剤の代表例としては次のものを挙げることができる。
<吸着剤a>
(1)アルカリ金属元素、(2)銅、または銅とマンガン、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、および(3)チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも一種の元素を含有する吸着剤。
<吸着剤b>
(1)アルカリ金属元素、(2)銅、または銅とマンガン、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、(3)チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも一種の元素、および(4)白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも一種の元素を含有する吸着剤。
<吸着剤c>
(1)アルカリ金属元素、(2)銅、または銅とマンガン、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、および(3)白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも一種の元素を含有する吸着剤。
【0023】
上記吸着剤aないし吸着剤cのなかでも、吸着剤aおよび吸着剤bが好適である。吸着剤aのなかでも、耐久性が優れた吸着剤が得られるという点において、(1)アルカリ金属元素、(2)銅、または銅とニッケルおよび鉄から選ばれる少なくとも一種の元素、および(3)ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも一種の元素を含有する吸着剤が好適に用いられる。また、吸着剤bのなかでも、耐久性に優れた吸着剤が得られるという点において、(1)アルカリ金属元素、(2)銅、または銅とニッケルおよび鉄から選ばれる少なくとも一種の元素、(3)ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも一種の元素、および(4)ルテニウムを含有する吸着剤が好適に用いられる。
吸着剤bを例に挙げて本発明の吸着剤を詳しく説明する。吸着剤bにおける前記の成分(1)〜(4)の形態については特に制限はなく、窒素酸化物等を吸着する機能が得られる限り、いずれの形態にあってもよい。また、出発原料によっても変わるので一概に特定することはできない。成分(1)の場合、例えば、水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩として含有される。成分(2)の場合、例えば、金属、酸化物または複合酸化物、もしくは成分(1)のアルカリ金属、または成分(3)のアルカリ土類金属との複合酸化物または複塩として含有される。成分(3)の場合、例えば、酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩または硫酸塩として含有される。また、成分(4)の場合、例えば、金属、酸化物または複合酸化物として含有される。
成分(1)〜(4)の出発原料としては、各成分を、例えば上記形態で含有する吸着剤を形成し得るものであればいずれも使用することができる。具体的には、成分(1)の出発原料としては、各元素の硝酸塩、亜硝酸塩、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩やシュウ酸塩、クエン酸塩、ソルビン酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。成分(2)の出発原料としては、各元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、酢酸塩やシュウ酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。成分(3)の出発原料としては、各元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、リン酸塩などを用いることができる。また、成分(4)の出発原料としては、各元素の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、アンモニウム錯体などを用いることができる。
上記成分の割合については、成分(1)(酸化物換算)は1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、成分(2)(酸化物換算)は0.5〜89質量%、好ましくは1〜75質量%、成分(3)(酸化物換算)は10〜98.5質量%、好ましくは20〜98質量%、そして成分(4)(金属換算)は0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%である(合計100質量%)。
上記吸着剤の調製方法には特に制限はなく、窒素酸化物等を吸着する機能を有する吸着剤が得られる限り、各種方法で調製することができる。成分(1)〜(4)を含有する吸着剤bについて、その代表的な調製方法を以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
成分(1)、(2)および(4)の出発原料の水溶液、または粉体を一般に用いられている成型助剤とともに成分(3)に加え、混合、攪拌し、押出成型機で成型する。得られた成型体は50〜120℃で乾燥した後、200〜600℃、好ましくは250〜500℃で1〜10時間、好ましくは2〜6時間空気中、あるいは窒素などの不活性ガス中などで焼成する。そのほか、成分(1)、(2)および(4)の少なくとも1つと成分(3)とを含有する成型体をあらかじめ作成し、この成型体に残りの成分を含浸担持させてもよい。例えば、成分(2)、(3)および(4)を含有する成型体をあらかじめ作成し、この成型体に残りの成分(1)を含浸させる。
本発明によれば、上記吸着剤aないし吸着剤bのような必須成分としてアルカリ金属元素と銅とを必須成分として含有する窒素酸化物等吸着剤は再生方法(A)または再生方法(B)によって好適に再生することができる。これら再生方法(A)および(B)は後で詳しく説明する。
【0024】
上記吸着剤のなかでも、銅の少なくとも一部が0価または1価である吸着剤は吸着力が優れている点において好ましく、本発明によれば、このような吸着剤であって吸着力の低下した吸着剤を後記の再生方法(A)または再生方法(B)によって効果的に再生することができる。なお、新規吸着剤中には銅の少なくとも一部が0価または1価の形態で含まれていないが、このような吸着剤の性能が低下したときにも、その再生に再生方法(A)および再生方法(B)が有効に適用できることはいうまでもないことである。そして、再生方法(A)または再生方法(B)によって得られる再生吸着剤においては、銅の少なくとも一部が0価または1価の形態で含有されている。
【0025】
吸着剤の形状については特に制限はなく、円柱状、円筒状、球状、板状、ハニカム状、その他一体に成型されたもののなかから適宜選択することができる。この成型には、一般的な成型方法、例えば打錠成型、押出成型などを用いることができる。球状の場合、その平均粒径は、通常、1〜10mmである。ハニカム状吸着剤の場合は、いわゆるモノリス担体と同様であり、押出成型法やシート状素子を巻き固める方法などにより製造することができる。そのガス通過口(セル形状)の形は、6角形、4角形、3角形、またはコルゲーション形のいずれであってもよい。セル密度(セル数/単位断面積)は、通常、25〜800セル/平方インチ(×2.54cm)であり、好ましくは25〜500セル/平方インチ(×2.54cm)である。
【0040】
次に、本発明の再生方法(A)および(B)について説明する。
<再生方法(A)>
この方法は次の工程からなるものである。
1) 還元剤の存在下での加熱処理
2) 水洗処理
3) 乾燥処理(任意)
4) アルカリ金属元素の含浸処理
5) 還元剤の存在下での加熱処理
工程1)においては、窒素酸化物と硫黄酸化物とを吸着して吸着力の低下した吸着剤を還元剤の存在下で加熱処理(還元処理)して吸着剤に吸着されている窒素酸化物を脱離させる。すなわち、工程1)は窒素酸化物の脱離処理に係わるものである。
上記還元剤とは、水素および燃焼性有機化合物を意味する。燃焼性有機化合物の代表例としては、含酸素有機化合物、具体的には脂肪酸類、アルコール類およびアルデヒド類、好ましくは炭素数1〜4の低級脂肪酸類、炭素数1〜4の低級アルコール類、および炭素数1〜4の低級アルデヒド類を挙げることができる。そのほか、炭素数1〜4の飽和または不飽和の炭化水素類を用いることができる。これらのなかでも、上記の低級脂肪酸類、低級アルコール類および低級アルデヒド類が好ましく、特に低級脂肪酸類が好適に用いられる。上記燃焼性有機化合物は単独でも、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。かくして、本発明では、水素または低級脂肪酸類が還元剤として好適に用いられる。
上記低級脂肪酸類の代表例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などのモノまたはジー、もしくは飽和または不飽和のカルボン酸を挙げることができる。
上記還元剤は、通常、他のガスで希釈して、例えば、窒素などの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。具体的には、還元剤として水素を用いる場合、水素と窒素、ヘリウムなどの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。この混合ガス中の水素の濃度は、通常、0.1〜20容量%であり、好ましくは0.5〜10容量%である。なお、空気との混合ガスとすることもできるが、爆発の危険があるので、一般的には、上記のような不活性ガスとの混合ガスとして使用するのがよい。燃焼性有機化合物の場合には、不活性ガスとの混合ガスとしてもよいが、通常、空気との混合ガスとして用いるのが再生効率(酸化効率)が上がって好ましい。この混合ガス中の燃焼性有機化合物の濃度は、通常、0.001〜1容量%であり、好ましくは0.01〜0.5容量%である。なお、燃焼性有機化合物が固体の場合には、水に溶解させて、水溶液として噴霧して、供給すればよい。
上記還元剤の希釈に用いることのできるガスとしては、上記の窒素、ヘリウムなどの不活性ガスおよび空気のほかに、水蒸気(H 2 O)、二酸化炭素ガスなどを挙げることができる。かくして、上記混合ガスの代表例としては、水素と不活性ガスとの混合ガス、燃焼性有機化合物と空気、または空気および水蒸気との混合ガスを挙げることができる。
加熱温度は、通常、200〜600℃であり、好ましくは300〜500℃、より好ましくは300〜400℃である。なお、再生すべき吸着剤は、通常、常温であるが、上記加熱温度までの昇温速度には特に制限はなく、適宜決定することができる。
加熱時間は、窒素酸化物等の吸着の程度、加熱温度などによって変わるので一概に特定できないが、通常、30分〜10時間、好ましくは30分〜5時間の範囲で適宜選ぶことができる。
上記加熱処理は還元剤の通風下で行うことが好ましい。還元剤の通風下で再生処理を行う場合、通風の程度については特に制限はなく、新たな還元剤が供給されるような条件下にすればよい。一般的には、吸着剤を充填した装置(吸着剤層)に、その入口側から還元剤を導入して、出口側に流通されればよい。
工程2)においては、工程1)で窒素酸化物を脱離させた吸着剤を水洗して硫黄酸化物を脱離させる。すなわち、工程2)は硫黄酸化物の脱離処理に係わるものである。
水洗の方法および条件には特に制限はなく、吸着された硫黄酸化物を十分に除去し得るような方法および条件で行えばよい。代表的な方法としては、吸着剤を水槽に漬ける方法、シャワーリングを用いて吸着剤に水を噴霧する方法などを挙げることができる。水温には特に制限はないが、通常、10〜80℃であり、好ましくは20〜50℃である。
工程3)の乾燥は必須でないが、水洗後乾燥するのが好ましい。乾燥の方法および条件には特に制限はなく、次の工程4)でのアルカリ金属元素の含浸を支障なく行える程度に乾燥すればよい。しかし、アルカリ金属元素の含浸を、吸着剤をアルカリ金属化合物の水溶液に浸漬して行う場合には、乾燥が不十分だとその後のアルカリ金属元素の含浸が効果的に行われず、消失したアルカリ金属元素を十分に補給できないこともあるので、吸着剤中の水分を実質的に除去するのがよい。通常、通風下での乾燥が好適である。通風すべきガスとしては、窒素などの不活性ガスを用いてもよいが、空気を用いるのが一般的である。乾燥温度は、通常、50〜200℃であり、好ましくは80〜150℃である。
工程4)においては、工程2)での水洗によりアルカリ金属元素が溶出するので、これを補充するために、水洗後の吸着剤にアルカリ金属元素を含浸させる。このアルカリ金属元素の含浸は、吸着剤から水洗により消失したアルカリ金属元素を吸着剤に補給し得るものであれば、いずれの方法によって行ってもよい。代表的な方法は、アルカリ金属化合物を有機溶剤または水に溶解し、得られる溶液、好ましくはアルカリ金属化合物の水溶液に上記の水洗、乾燥後の吸着剤を含浸するものである。なお、補給すべきアルカリ金属元素は、吸着剤から消失したアルカリ金属元素と異なっていてもよいが、一般的には同一なものを使用する。
上記アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属元素の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩や、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ソルビン酸塩などの有機酸塩を用いることができる。具体的には、アルカリ金属元素がカリウムの場合、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酢酸カリウム、シュウ酸カリウムなどを挙げることができる。
アルカリ金属元素の含浸による補給の程度については、通常、再生吸着剤中のアルカリ金属元素含量が前記のアルカリ金属元素(成分(1))の含量、すなわち1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%(酸化物換算)の範囲となるようにする。したがって、上記アルカリ金属化合物の水溶液の濃度、浸漬時間などの条件については、再生吸着剤中のアルカリ金属元素含量が、上記のように、1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%の範囲となるように適宜選択すればよい。
上記のように再生した吸着剤は、通常、乾燥して再使用する。乾燥温度には特に制限はなく、例えば、50〜120℃の範囲の温度で乾燥すればよい。さらに、必要に応じて、例えば、200〜600℃、好ましくは250〜500℃の範囲の温度で1〜10時間、好ましくは2〜6時間空気中で焼成してもよい。
工程4)において、含浸処理後の吸着剤は、通常、乾燥するにとどめておき、焼成はしない。
【0041】
工程5)では、還元剤の存在下で加熱処理することにより吸着剤中の銅の少なくとも一部を0価または1価に還元するものである。この工程5)での還元処理は工程1)での還元処理と同様にして行うことができる。工程5)での還元処理は工程1)での還元処理と同一でも、あるいは異なっていてもよく、各工程での目的(窒素酸化物の脱離および銅の少なくとも一部の0価または1価への還元)に応じて最適な条件を選べばよい。
【0042】
この再生方法(A)により、吸着力に優れた再生吸着剤を得ることができる。すなわち、再生方法(A)によって得られる再生吸着剤は、銅の少なくとも一部が0価または1価の形態にあり、新規吸着剤とほぼ同等の吸着力を有し、しかも繰り返し再生しても高い吸着力を保持したものである。
【0043】
再生吸着剤が0価または1価の銅を含有していることはX線回折による格子面間隔(d値)を測定することにより確認することができる。Cu(0価)のd値は、2.09±0.01と1.81±0.01と1.28±0.01とにあり、Cu2O(1価)のd値は2.47±0.01と2.14±0.01と1.51±0.01とにある。
<再生方法(B)>
この方法は次の工程からなるものである。
1) 還元剤の存在下での加熱処理
2) 水洗処理
3) 乾燥処理(任意)
4) 有機酸アルカリ塩の含浸処理
5) 不活性ガス中での加熱処理
工程1)ないし工程3)は再生方法(A)で説明したと同じである。
【0044】
工程4)は、アルカリ金属元素を補充するために、アルカリ金属化合物の溶液または水溶液、好ましくはアルカリ金属化合物の水溶液を吸着剤に含浸させるにあたり、アルカリ金属化合物として有機酸アルカリ塩を用いる点を除けば、再生方法(A)の工程4)と同様に行うことができる。
【0045】
すなわち、工程▲2▼の水洗処理により、溶出したアルカリ金属元素を補充する際に、アルカリ金属化合物として有機酸アルカリ塩を使用する場合には、還元剤の存在下での加熱処理の代わりに、不活性ガス中での加熱処理によっても銅の少なくとも一部を0価または1価に還元できるというものである。もちろん、有機酸アルカリ塩を用いた場合でも、還元剤の存在下での加熱処理によって銅の少なくとも一部を0価または1価に還元することができる。有機酸アルカリ塩としては、酢酸、シュウ酸、クエン酸、ソルビン酸などの有機酸のアルカリ塩を用いることができる。
【0046】
工程5)では、工程4)で有機酸アルカリ塩を含浸させた吸着剤を不活性ガス中で加熱処理する。この加熱処理は、再生方法(A)の工程5)での加熱処理と同様の条件で行うことができる。
【0047】
この再生方法(B)により、吸着力に優れた再生吸着剤を得ることができる。すなわち、再生方法(B)によって得られる再生吸着剤は、銅の少なくとも一部が0価または1価の形態にあり、新規吸着剤とほぼ同等の吸着力を有し、しかも繰り返し再生しても高い吸着力を保持したものである。
【0048】
吸着剤の再生処理の際には脱離した窒素酸化物を含むガス(排ガス)が発生するので、この排ガス中の窒素酸化物を除去して無害化した後に、大気中に放出するのが好ましい。この排ガス中の窒素酸化物の除去方法、すなわち脱硝方法には特に制限はなく、従来公知の脱硝方法によって行うことができる。具体的には、例えば、排ガスにアンモニアを還元剤として添加し、脱硝触媒に接触させて窒素酸化物を窒素と水とに還元すればよい。
【0049】
一方、硫黄酸化物は、水洗に使用した水に溶解して排水として回収できる。この排水中には、窒素成分が含まれないので、適宜排水を中和処理して無害化した後、廃棄できる。中和処理については特に制限はなく、一般に用いられている方法にしたがって行うことができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明の再生方法によれば、新規吸着剤とほぼ同等の吸着力を有し、しかも繰り返し再生しても高い吸着力を保持した再生吸着剤が得られる。
【0051】
本発明の再生方法においては、再生時に発生する窒素酸化物および硫黄酸化物を無害化して、その環境への影響をなくすことができる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
調製例1
塩基性炭酸銅(日本化学産業(株)製、銅金属を50質量%含有)239.6g、炭酸カルシウム850gに適量の水に添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成形した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、500℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを4N−KNO2水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥し、400℃で2時間水素/窒素(5/95容量%)の雰囲気下で加熱処理(還元処理)した。
【0054】
このようにして得られた吸着剤の組成は、Cu:Ca:K(CuO:CaO:K2Oとして)=22.2:70.1:7.7(質量%)であった。以下、この吸着剤を吸着剤−1という。この吸着剤のX線回折図を図5に示す。
調製例2
塩基性炭酸銅(日本化学産業(株)製、銅金属を50質量%含有)239.6g、炭酸カルシウム850gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、350℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。更にこのペレットを4N−CH3COOK水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥し、400℃で2時間、窒素雰囲気下で焼成した。
【0055】
このようにして得られた吸着剤の組成はCu:Ca:K(CuO:CaO:K2Oとして)=22.2:70.1:7.7(質量%)であった。以下、この吸着剤を吸着剤−2とする
調製例3
塩基性炭酸銅(日本化学産業(株)製、銅金属を50質量%含有)159.7g、シュウ酸鉄(II)2水和物225.3g、炭酸カルシウム750gに適量の水に添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成形した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、500℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを4N−CH3COOK水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥し、400℃で2時間窒素雰囲気下で焼成した。
【0056】
このようにして得られた吸着剤の組成は、Cu:Fe:Ca:K(CuO:Fe2O3:CaO:K2Oとして)=14.9:14.9:62.7:7.5(質量%)であった。以下、この吸着剤を吸着剤−3という。
【0057】
調製例4
酸化ルテニウム(田中貴金属(株)製、ルテニウム金属を65質量%含有)1.5g、塩基性炭酸銅(日本化学産業(株)製、銅金属を50質量%含有)239.6g、炭酸カルシウム800gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、500℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを4N−CH3COOK水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥し、400℃で2時間、窒素雰囲気下で焼成した。
【0058】
このようにして得られた吸着剤の組成は、Ru:Cu:Ca:K(Ru:CuO:CaO:K2Oとして)=0.2:23.2:69.2:7.4(質量%)であった。以下、この吸着剤を吸着剤−4とする。
実施例1
吸着剤−1について、その使用前の吸着性能(初期吸着性能)および再生後の吸着性能を下記の方法により評価した。なお、後記の再生処理−1とは、窒素酸化物を脱離させるための還元剤の存在下での加熱処理(前記の工程1)に相当する)を、また再生処理−2とは、その後の水洗処理を含む再生処理(前記の工程2)およびそれ以降の工程に相当する)を意味する。
【0059】
最初に吸着剤の初期性能を評価した。
<初期吸着性能の評価>
吸着剤35mlを内径30mmのSUS316製反応管に充填し、この吸着剤層に下記組成の合成ガスを下記条件下に導入した。
合成ガス組成
一酸化窒素(NO):0.9ppm、二酸化窒素(NO2):0.1ppm、二酸化硫黄:(SO2)0.05ppm、H2O:1.9容量%、残り空気
処理条件
ガス量17.3NL/min、処理温度25℃、空間速度(SV)30,000hr−1(STP)、ガス湿度60%RH
通ガス1時間後、上記吸着剤層の入口および出口における合成ガス中の窒素酸化物(NOおよびNO2)濃度を化学発光式NOx計により、また硫黄酸化物濃度を紫外線吸収式SO2計で測定し、次式にしたがってNO、NO2およびSO2除去率を算出した。
NO除去率(%)=(入口NO濃度−出口NO濃度)/(入口NO濃度)(×100)
NO2除去率(%)=(入口NO2濃度−出口NO2濃度)/(入口NO2濃度)(×100)
SO2除去率(%)=(入口SO2濃度−出口SO2濃度)/(入口SO2濃度)(×100)
上記初期性能の評価結果を図1に示す(再生回数0)。この数値は吸着剤の初期吸着性能を示す。
【0060】
次に、吸着剤−1の再生後の吸着性能を下記の方法により評価した。
<再生後の吸着性能の評価>
上記の吸着剤層に下記の合成ガスを下記条件下に導入して、加速吸着試験を行った。
合成ガス組成
一酸化窒素(NO):2.7ppm、二酸化窒素(NO2):0.3ppm、二酸化硫黄(SO2):0.15ppm、H2O:1.9容量%、残り空気
処理条件
ガス量17.3NL/min、処理温度25℃、空間速度(SV)30,000hr−1(STP)、ガス湿度60%RH
上記加速吸着試験を300時間行った後の吸着剤について、吸着剤層に導入する合成ガスおよび処理条件を下記に変更して吸着剤の再生処理−1を行った。
再生ガス組成
水素:5容量%、残り窒素
処理条件
ガス量17.3NL/min、昇温速度250℃/min、処理温度400℃、処理時間1時間
上記再生処理−1終了後、吸着剤を室温まで冷却した後、反応管から取り出し、次の再生処理−2を行った。
<再生処理−2>
2)吸着剤を水200mlに20分間浸漬した後取り出す操作を3回繰り返した後、3)120℃で5時間乾燥し、次いで4)4N−KNO 2 水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥し、さらに5)400℃で2時間水素/窒素(5/95容量%)の雰囲気下で加熱処理(還元処理)する。
【0061】
上記のように再生処理−1および再生処理−2(この再生方法は再生方法(A)に相当する)を行った吸着剤を再び反応管に充填し、上記初期吸着性能の評価に用いたと同じ合成ガスを、同じ処理条件下に導入して、再生後の吸着剤の吸着性能を評価した。
【0062】
上記のような吸着−再生の操作を5回繰り返した。結果を図1に示す。
【0063】
再生吸着剤のX線回折図を図6に示す。
実施例2
実施例1において、吸着剤−1の代わりに吸着剤−2を用い、再生処理−2を次のように変更した以外は、実施例1と同様の評価試験を行った。結果を図2に示す。この実施例における再生方法は再生方法(B)に相当する。
<再生処理−2>
2)吸着剤を水200mlに20分間浸漬した後取り出す操作を3回繰り返した後、3)120℃で5時間乾燥し、次いで4)4N−CH3COOK水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥し、さらに5)400℃で2時間窒素雰囲気下で加熱処理(還元)する。
【0064】
再生吸着剤のX線回折図を図7に示す。
実施例3
実施例2において、吸着剤−2の代わりに吸着剤−3を用い、実施例2と同様の評価試験を行った。結果を図3に示す。この実施例における再生方法は再生方法(B)に相当する。
実施例4
実施例2において、吸着剤−2の代わりに吸着剤−4を用いた以外は実施例2と同様の評価試験を行った。結果を図4に示す。この実施例における再生方法は再生方法(B)に相当する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における再生回数に対する除去率を示す。
【図2】実施例2における再生回数に対する除去率を示す。
【図3】実施例3における再生回数に対する除去率を示す。
【図4】実施例4における再生回数に対する除去率を示す。
【図5】調製例1で得られた吸着剤のX線回折図である。
【図6】実施例1で得られた再生吸着剤のX線回折図である。
【図7】実施例2で得られた再生吸着剤のX線回折図である。
Claims (5)
- アルカリ金属元素と銅とを含有する、窒素酸化物および硫黄酸化物を吸着除去するための吸着剤を再生するにあたり、該吸着剤を還元剤の存在下で加熱処理した後、水洗し、必要に応じて乾燥した後、アルカリ金属元素を含浸させ、再度還元剤の存在下で加熱処理することを特徴とする吸着剤の再生方法。
- アルカリ金属元素と銅とを含有する、窒素酸化物および硫黄酸化物を吸着除去するための吸着剤を再生するにあたり、該吸着剤を還元剤の存在下で加熱処理した後、水洗し、必要に応じて乾燥した後、有機酸アルカリ塩を含浸させ、不活性ガス中で加熱処理することを特徴とする吸着剤の再生方法。
- アルカリ金属元素と銅とを含有する吸着剤が、(1)アルカリ金属元素、(2)銅、または銅とマンガン、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、および(3)チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも一種の元素を含有するものである請求項1または2記載の吸着剤の再生方法。
- アルカリ金属元素と銅とを含有する吸着剤が、(1)アルカリ金属元素、(2)銅、または銅とマンガン、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも一種の元素、(3)チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも一種の元素、および(4)白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも一種の元素を含有するものである請求項1または2記載の吸着剤の再生方法。
- 還元剤の存在下での加熱処理により脱離した窒素酸化物を脱硝処理する請求項1〜4のいずれかに記載の吸着剤の再生方法。
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