JP3705955B2 - 窒素酸化物等吸着剤の再生方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は窒素酸化物等吸着剤の再生方法、詳しくはアルカリ金属元素を含有する窒素酸化物等吸着剤を効率よく再生する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ボイラなどの固定式窒素酸化物発生源からの窒素酸化物の除去方法に関しては、従来から、アンモニアを還元剤に用いて窒素酸化物を選択的に還元して無害な窒素と水とに変換する接触還元法が最も経済的な方法として広く用いられている。
【0003】
ところで、道路トンネル、シェルター付道路、大深度地下空間、道路交差点などにおける換気ガスもしくは大気、および家庭内で使用される燃焼機器から排出されるガスなどに含まれる窒素酸化物の濃度は、5ppm程度と、ボイラ排ガス中の窒素酸化物濃度に比べて著しく低く、またガス温度は常温であり、しかもガス量は莫大なものである。このため、例えば道路トンネルの換気ガスに上記接触還元法を適用して窒素酸化物を効率よく除去するためには、この換気ガスの温度を300℃以上にすることが必要であり、その結果、多大なエネルギーが必要となることから、上記接触還元法をそのまま適用することには経済的に問題がある。
【0004】
このような事情から、上記のような道路トンネルの換気ガスなど、窒素酸化物の濃度が低い、例えば5ppm以下の排ガスから窒素酸化物を効率よく除去することが望まれている。そこで、低濃度の窒素酸化物を吸着剤に吸着させて除去する方法、およびこれに適した吸着剤が提案されている。本出願人も、上記のような低濃度の窒素酸化物含有ガスから窒素酸化物を吸着除去するに好適な吸着剤として、アルカリ金属元素を含有する吸着剤を提案している(特開平10−128105、特開平10−192698、特開平10−309435、特開平11−28351、特開平11−28352および特願平10−340140)。
【0005】
吸着剤を実際に使用する際には、窒素酸化物を吸着して吸着力が低下した吸着剤を再生して繰り返し使用できるようにすることは、経済的な面から、不可欠である。そして、このような吸着剤の再生に、加熱処理法が用いられていることはよく知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、アルカリ金属元素を含有する窒素酸化物吸着剤について、その加熱処理法による再生を検討した結果、次のことが分かった。
【0007】
▲1▼ 吸着剤の加熱再生には、600℃を超える高温が必要である。
【0008】
▲2▼ しかし、このような高温で加熱すると吸着剤の比表面積の低下、細孔容積の減少などの物性の変化、また吸着剤成分の結晶型の変化などが起こる。このため、加熱処理して再生した吸着剤の吸着力は、使用前の新規吸着剤の吸着力に比べて低く、特に、繰り返して再生すると吸着力は著しく低下して実用的でなくなる。
【0009】
かくして、本発明は、アルカリ金属を含有する窒素酸化物吸着剤の再生方法、詳しくは吸着力の低下した吸着剤を効率よく再生し、しかも繰り返して再生しても高い吸着力を保持した再生吸着剤を得ることのできる新規な再生方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、更に検討した結果、アルカリ金属を含有する窒素酸化物吸着剤を再生するに当り、この再生を還元剤の存在下に行うと、600℃以下の温度で効率よく吸着された窒素酸化物を脱離させ得ること、また再生後の吸着剤は新規吸着剤と同程度の吸着力(すなわち、初期吸着性能と同程度の吸着性能)を有し、しかも繰り返し再生した後も高い吸着力を保持することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(イ)(1)マンガン、銅、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、(2)チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素、(3)アルカリ金属元素、および(4)白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する窒素酸化物等吸着剤を再生するにあたり、該吸着剤を還元剤の存在下に加熱することを特徴とする窒素酸化物等吸着剤の再生方法、
(ロ)(1)マンガン、銅、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、(2)チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素、および(3)アルカリ金属元素を含有する(ただし、マンガンと、チタン、アルミニウムおよびジルコニウムから選ばれる少なくとも1種との組み合わせを除く。)窒素酸化物等吸着剤を再生するにあたり、該吸着剤を還元剤の存在下に加熱することを特徴とする窒素酸化物等吸着剤の再生方法、および
(ハ)上記(ロ)の窒素酸化物等吸着剤がさらに(4)白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する、窒素酸化物等吸着剤の再生方法である。
【0012】
また、本発明は、アルカリ金属元素を含有する窒素酸化物等吸着剤を再生するに当り、該吸着剤を還元剤の存在下で加熱し、脱離した窒素酸化物を脱硝処理することを特徴とする窒素酸化物等吸着剤の再生方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の「窒素酸化物等吸着剤」とは、窒素酸化物および/または硫黄酸化物、代表的には窒素酸化物、または窒素酸化物と硫黄酸化物とを吸着除去するための吸着剤を意味する(以下、これを単に「吸着剤」という場合もある)。そして、本発明は、このような窒素酸化物および/または硫黄酸化物を吸着して吸着力の低下した吸着剤を再生するというものである。例えば、道路トンネルなどにおける換気ガスもしくは大気中には、通常、窒素酸化物と硫黄酸化物とが含まれているので、このような所で使用する吸着剤は、窒素酸化物と硫黄酸化物とを吸着して吸着力が低下するが、本発明によれば、このように吸着された窒素酸化物を効率よく脱離させることができる。なお、窒素酸化物とはNOxとして示されるものであり、具体的には、NOおよびNO2を挙げることができる。また、硫黄化合物とはSOxで示されるものであり、具体的には、SO2を挙げることができる。本発明のアルカリ金属元素を含有する窒素酸化物等吸着剤は、特にNO2の吸着除去に優れている。
【0014】
本発明の窒素酸化物等吸着剤の好適な例としては次のものを挙げることができる。
【0016】
<吸着剤(A)>
(1)マンガン、銅、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素(「成分B」という)、(2)少なくとも1種のアルカリ金属元素(「成分C」という)、(3)チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素(ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウム)から選ばれる少なくとも1種の元素(「成分D」という)、および(4)白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも1種の元素(「成分A」という)を含有する吸着剤。
【0017】
<吸着剤(B)>
(1)マンガン、銅、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、(2)チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素(ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウム)から選ばれる少なくとも1種の元素、および(3)少なくとも1種のアルカリ金属元素を含有する(ただし、マンガンと、チタン、アルミニウムおよびジルコニウムから選ばれる少なくとも1種との組み合わせを除く。)吸着剤。
【0018】
吸着剤(A)のなかでも、耐久性に優れた吸着剤が得られるという点において、(1)銅、ニッケルおよびコバルトから選ばれる少なくとも1種の元素、(2)少なくとも1種のアルカリ金属元素、(3)チタン、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素、および(4)白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する吸着剤が特に好適に用いられる。また、吸着剤(B)のなかでも、耐久性が優れた吸着剤が得られるという点において、(1)銅、ニッケルおよびコバルトから選ばれる少なくとも1種の元素、(2)チタン、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素、および(3)アルカリ金属元素を含有する吸着剤が特に好適に用いられる。
【0019】
そこで、吸着剤(A)を例に挙げて本発明の吸着剤を詳しく説明する。
【0020】
吸着剤(A)における前記の成分A、成分B、成分Cおよび成分Dの形態については特に制限はなく、窒素酸化物および/または硫黄酸化物を吸着する機能が得られる限り、いずれの形態にあってもよい。また、出発原料によっても変わるので一概に特定することはできない。成分Aの場合、例えば、金属、酸化物または複合酸化物として含有される。成分Bの場合、例えば、金属、酸化物または複合酸化物、もしくは成分Cのアルカリ金属、または成分Dのアルカリ土類金属との複合酸化物または複塩として含有される。成分Cの場合、例えば、水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩として含有される。また、成分Dの場合、例えば、酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩または硫酸塩として含有される。成分A、成分B、成分Cおよび成分Dの出発原料としては、各成分を、例えば上記形態で含有する吸着剤を形成し得るものであればいずれも使用することができる。具体的には、成分Aの出発原料としては、各元素の酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、アンモニウム錯体などを用いることができる。成分Bの出発原料としては、各元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸鉛、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、酢酸塩やシュウ酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。成分Cの出発原料としては、各元素の硝酸塩、亜硝酸塩、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩やシュウ酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。また、成分Dの出発原料としては、各元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、リン酸塩などを用いることができる。上記成分の割合については、成分A(金属換算)は0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、成分B(酸化物換算)は0.5〜89重量%、好ましくは1〜75重量%、成分C(酸化物換算)は1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、そして成分D(酸化物換算)10〜98.5重量%、好ましくは20〜98重量%である(合計100重量%)。
【0021】
上記吸着剤の調製方法には特に制限はなく、窒素酸化物および/または硫黄酸化物を吸着する機能を有する吸着剤が得られる限り、各種方法で調製することができる。成分A、成分B、成分Cおよび成分Dを含有する吸着剤について、その代表的な調製方法を以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
成分A、成分Bおよび成分Cの出発原料の水溶液、または粉体を一般に用いられている成型助剤とともに成分Dに加え、混合、撹拌し、押出成型機で成型する。得られた成型物は、50〜120℃で乾燥した後、200〜600℃、好ましくは250〜500℃で1〜10時間、好ましくは2〜6時間空気中、窒素などの不活性ガス中などで焼成することにより本発明の吸着剤が得られる。そのほか、成分A〜Cの少なくとも1つと成分Dとを含有する成型体をあらかじめ作成し、この成型体に残りに成分を含浸担持させ、その後は上記と同様にして、吸着剤を得ることもできる。
【0023】
吸着剤(B)も上記吸着剤(A)の方法に準じて調製することができる。
【0024】
本発明の再生方法が適用できる窒素酸化物等吸着剤は、上記吸着剤(A)および(B)に限定されるものではなく、そのほかの、使用によって性能(吸着力)の低下して吸着剤の再生にも本発明の方法が適用できることはいうまでもない。例えば、吸着剤(A)および(B)を還元剤の存在下に加熱処理して、すなわち還元処理して吸着性能を向上させた吸着剤、特に吸着剤(B)を還元処理して吸着性能を向上させた吸着剤であって、使用により吸着力の低下した吸着剤の再生にも本発明の方法は好適に用いられる。
【0025】
吸着剤の形状については特に制限はなく、円柱状、円筒状、球状、板状、ハニカム状、その他一体に成型されたもののなかから適宜選択することができる。この成型には、一般的な成型方法、例えば打錠成型、押出成型などを用いることができる。球状の場合、その平均粒径は、通常、1〜10mmである。ハニカム状吸着剤の場合は、いわゆるモノリス担体と同様であり、押出成型法やシート状素子を巻き固める方法などにより製造することができる。そのガス通過口(セル形状)の形は、6角形、4角形、3角形、またはコルゲーション形のいずれであってもよい。セル密度(セル数/単位断面積)は、通常、25〜800セル/平方インチであり、好ましくは25〜500セル/平方インチである。
【0026】
本発明の再生処理に用いる還元剤とは、水素および燃焼性有機化合物を意味する。燃焼性有機化合物の代表例としては、含酸素有機化合物、具体的には脂肪酸類、アルコール類およびアルデヒド類、好ましくは炭素数1〜4の低級脂肪酸類、炭素数1〜4の低級アルコール類、および炭素数1〜4の低級アルデヒド類を挙げることができる。そのほか、炭素数1〜4の飽和または不飽和の炭化水素類を用いることができる。これらのなかでも、上記の低級脂肪酸類、低級アルコール類および低級アルデヒド類が好ましく、特に低級脂肪酸類が好適に用いられる。上記燃焼性有機化合物は単独でも、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。かくして、本発明では、水素または低級脂肪酸類が還元剤として好適に用いられる。
【0027】
上記低級脂肪酸類の代表例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などのモノまたはジー、もしくは飽和または不飽和のカルボン酸を挙げることができる。
【0028】
上記還元剤は、通常、他のガスで希釈して、例えば、窒素などの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。具体的には、還元剤として水素を用いる場合、水素と窒素、ヘリウムなどの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。この混合ガス中の水素の濃度は、通常、0.1〜20容量%であり、好ましくは0.5〜10容量%である。なお、空気との混合ガスとすることもできるが、爆発の危険があるので、一般的には、上記のような不活性ガスとの混合ガスとして使用するのがよい。燃焼性有機化合物の場合には、不活性ガスとの混合ガスとしてもよいが、通常、空気との混合ガスとして用いるのが再生効率(酸化効率)が上がって好ましい。この混合ガス中の燃焼性有機化合物の濃度は、通常、0.001〜1容量%であり、好ましくは0.01〜0.5容量%である。なお、燃焼性有機化合物が固体の場合には、水に溶解させて、水溶液として噴霧して、供給すればよい。上記還元剤の希釈に用いることのできるガスとしては、上記の窒素、ヘリウムなどの不活性ガスおよび空気のほかに、水蒸気(H2O)、二酸化炭素ガスなどを挙げることができる。かくして、上記混合ガスの代表例としては、水素と不活性ガス、燃焼性有機化合物と空気、または空気および水蒸気との組み合せを挙げることができる。
【0029】
再生処理における加熱温度については、前記のとおり、本発明によれば、600℃以下の温度で再生可能である。加熱温度は、通常、200〜600℃であり、好ましくは300〜500℃、より好ましくは300〜400℃である。なお、再生すべき吸着剤は、通常、常温であるが、上記加熱温度までの昇温速度には特に制限はなく、適宜決定することができる。
【0030】
加熱時間は、窒素酸化物および/または窒素酸化物の吸着の程度、加熱温度などによって変わるので一概に特定できないが、通常、30分〜10時間、好ましくは30分〜5時間の範囲で適宜選ぶことができる。
【0031】
本発明の再生処理は還元剤の存在下に行うことが必要であり、さらに還元剤の通風下で行うことが好ましい。還元剤の通風下で再生処理を行う場合、通風の程度については特に制限はなく、新たな還元剤が供給されるような条件下にすればよい。一般的には、吸着剤を充填した装置(吸着剤層)に、その入口側から還元剤を導入して、出口側に流通されればよい。
【0032】
かくして、本発明の特に好適な態様は、(1)マンガン、銅、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、(2)チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素、(3)アルカリ金属元素、および(4)白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する窒素酸化物等吸着剤、または(1)マンガン、銅、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、(2)チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素、および(3)少なくとも1種のアルカリ金属元素を含有する(ただし、マンガンと、チタン、アルミニウムおよびジルコニウムから選ばれる少なくとも1種との組み合わせを除く。)窒素酸化物等吸着剤であって、その性能の低下したものを、水素または炭素数1〜4の低級脂肪酸から選ばれる少なくとも1種の還元剤の存在下、600℃以上の温度で加熱することにより再生するものである。
【0033】
本発明の再生処理によって再生した吸着剤は、窒素酸化物および/または硫黄酸化物の吸着除去に再利用することができる。窒素酸化物と硫黄酸化物とを含有するガスの処理に際しては、あらかじめ硫黄酸化物を除去した後、本発明で得られる再生吸着剤と接触させて窒素酸化物を吸着除去するのが好ましい。これにより、再生吸着剤の性能低下を効果的に抑制することができ、長期にわたり安定して窒素酸化物と硫黄酸化物とを吸着除去することができる。なお、硫黄酸化物の吸着除去に使用する吸着剤としては、硫黄酸化物を吸着し得るものであれば特に制限はなく、いずれの硫黄酸化物吸着剤を使用することができる。
【0034】
吸着剤の再生処理の際には脱離した窒素酸化物を含むガス(排ガス)が発生するので、この排ガス中の窒素酸化物を除去して無害化した後に、大気中に放出するのが好ましい。この排ガス中の窒素酸化物の除去方法、すなわち脱硝方法には特に制限はなく、従来公知の脱硝方法によって行うことができる。具体的には、例えば、排ガスにアンモニアを還元剤として添加し、脱硝触媒に接触させて窒素酸化物を窒素と水とに還元すればよい。
【0035】
【発明の効果】
本発明の主たる効果を列挙すると次のとおりである。
【0036】
▲1▼ 還元剤の存在下に再生処理を行うので600℃以下の温度で再生処理を行うことができる。このため、比表面積の低下、細孔容積の減少などの物性の変化、および吸着剤成分の結晶型の変化などを効果的に抑制することができる。
【0037】
▲2▼ 吸着剤それ自体が優れた吸着性能を示し、再生吸着剤もまた高い吸着力を有する。
【0038】
▲3▼ 繰り返し再生した後も再生吸着剤は高い吸着力を保持している。
【0039】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0040】
調製例1
塩基性炭酸銅(日本化学産業(株)製、銅金属を50重量%含有)239.6g、炭酸カルシウム850gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成形した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、500℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを4N−K2CO3水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥し、500℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。
【0041】
このようにして得られた吸着剤の組成は、Cu:Ca:K(CuO:CaO:K2Oとして)=22.2:70.1:7.7(重量%)であった。以下、この吸着剤を吸着剤−1という。
【0042】
調製例2
塩基性炭酸ニッケル(ニッケル金属を35重量%含有)336.8g、酸化ジルコニウム850gに適量の水に添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成形した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、500℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを4N−K2CO3水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥し、500℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。
【0043】
このようにして得られた吸着剤の組成は、Ni:Zr:K(NiO:ZrO2:K2Oとして)=14.3:80.7:5.0(重量%)であった。以下、この吸着剤を吸着剤−2という。
【0044】
調製例3
酸化ルテニウム(田中貴金属(株)社製、ルテニウム金属を65重量%含有)4.6g、炭酸マンガン396.7g、酸化チタン697gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型た。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、350℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。更にこのペレットを4N−K2CO3水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥した。
【0045】
このようにして得られた吸着剤の組成はRu:Mn:Ti:K(Ru:MnO2:TiO2:K2Oとして)=0.3:28.0:64.9:6.8(重量%)であった。以下、この吸着剤を吸着剤−3とする
調製例4
酸化ルテニウム(田中貴金属(株)社製、ルテニウム金属を65重量%含有)4.6g、塩基性炭酸銅(日本化学産業(株)社製、銅金属を50重量%含有)479.2g、炭酸カルシウム597g、炭酸バリウム100gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、500℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。更にこのペレットを4N−K2CO3水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥し、500℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。
【0046】
このようにして得られた吸着剤の組成は、Ru:Cu:Ca:Ba:K(Ru:CuO:CaO:BaO:K2Oとして)=0.4:39.3:43.9:10.2:6.2(重量%)であった。以下、この吸着剤を吸着剤−4とする。
【0047】
実施例1
吸着剤−1について、その使用前の吸着性能(初期吸着性能)および再生後の吸着性能を下記の方法により評価した。
【0048】
最初に吸着剤の初期性能を評価した。
【0049】
<初期吸着性能の評価>
吸着剤35mlを内径30mmのSUS316製反応管に充填し、この吸着剤層に下記組成の合成ガスを下記条件下に導入した。
合成ガス組成
一酸化窒素(NO):0.9ppm、二酸化窒素(NO2):0.1ppm、二酸化硫黄:(SO2)0.05ppm、H2O:1.9容量%、残り空気
処理条件
ガス量17.3NL/min、処理温度25℃、空間速度(SV)30,000hr-1(STP)、ガス湿度60%RH
通ガス1時間後、上記吸着剤層の入口および出口における合成ガス中の窒素酸化物(NOおよびNO2)濃度を化学発光式NOx計により、また硫黄酸化物濃度を紫外線吸収式SO2計で測定し、次式にしたがってNO、NO2およびSO2除去率を算出した。
【0050】
NO除去率(%)=(入口NO濃度−出口NO濃度)/(入口NO濃度)(×100)
NO2除去率(%)=(入口NO2濃度−出口NO2濃度)/(入口NO2濃度)(×100)
SO2除去率(%)=(入口SO2濃度−出口SO2濃度)/(入口SO2濃度)(×100)
上記初期性能の評価結果を図1に示す(再生回数0)。この数値は吸着剤の初期吸着性能を示す。
【0051】
次に、吸着剤−1の再生後の吸着性能を下記の方法により評価した。
【0052】
<再生後の吸着性能の評価>
上記の吸着剤層に下記の合成ガスを下記条件下に導入して、加速吸着試験を行った。
【0053】
合成ガス組成
一酸化窒素(NO):2.7ppm、二酸化窒素(NO2):0.3ppm、二酸化硫黄(SO2):0.15ppm、H2O:1.9容量%、残り空気
処理条件
ガス量17.3NL/min、処理温度25℃、空間速度(SV)30,000hr-1(STP)、ガス湿度60%RH
上記加速吸着試験を300時間行った後の吸着剤について、吸着剤層に導入する合成ガスおよび処理条件を下記に変更して吸着剤の再生を行った。
【0054】
再生ガス組成
水素:5容量%、残り窒素
処理条件
ガス量17.3NL/min、昇温速度250℃/min、処理温度400℃、処理時間1時間
上記再生を行った後、室温まで冷却し、初期吸着性能の評価に用いたと同じ合成ガスを、同じ処理条件下に導入して、再生後の吸着剤の吸着性能を評価した。
上記のような吸着−再生の操作を5回繰り返した。結果を図1に示す。
【0055】
実施例2〜4
吸着剤−1の代わりに吸着剤−2(実施例2)、吸着剤−3(実施例3)および吸着剤−4(実施例4)を用いた以外は実施例1と同様の評価試験を行った。結果を図2〜4に示す。
【0056】
実施例5〜6
実施例4において、再生ガス組成を下記のように変更した以外は実施例4と同様の評価試験を行った。
【0057】
再生ガス組成
(実施例5)酢酸:1,000ppm(容量)、H2O:5容量%、残り空気(実施例6)シュウ酸:1,000ppm(容量)、H2O:5容量%、残り空気
評価結果を図5(実施例5)および図6(実施例6)に示す。
【0058】
比較例1〜4
比較例1〜4は、再生ガス組成をいずれも下記のように変更した以外はそれぞれ実施例1〜4と同様の評価試験を行った。
【0059】
再生ガス組成
H2O:5容量%、残り空気
評価結果を図7〜図10に示す。
【0060】
実施例7
(硫黄酸化物用吸着剤の調製)
水400Lにアンモニア水(NH3、25%)286Lを添加し、これにスノーテックスNCS−30(日産化学(株)社製シリカゾル、SiO2を約30重量%含有)24kg加えた。得られた溶液中に硫酸チタニルの硫酸水溶液(TiO2として250g/L含有。全硫酸濃度1,100g/L)153Lを水300Lに添加して希釈したチタン含有硫酸水溶液を撹拌下、徐々に添加し、共沈ゲルを得た。更にそのまま15時間放置してTiO2−SiO2ゲルを得た。このゲルをろ過し、水洗した後、200℃で10時間乾燥した。次いで、600℃で6時間空気雰囲気下で焼成し、更にハンマーミルを用いて粉砕し、分級機で分級して平均粒径10μm粉体を得た。得られた粉体は(以下、TS−1と称す)の組成はTi:Si=4:1(原子比)であった。
【0061】
このTS−1粉体1000gに適量の水を添加しつつニーダーでよく練った後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、350℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。更に、このペレットを6N−炭酸ナトリウム水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥した。
【0062】
このようにして得られた硫黄酸化物用吸着剤の組成は、TS−1:Na(TS−1:Na2Oとして)=76.1:23.9(重量%)であった。
【0063】
実施例1の(初期性能の評価)において、ガスの流れに対して前段に上記硫黄酸化物用吸着剤を19ml、後段に実施例2で得た吸着剤−2を35ml充填した以外は(初期性能の評価)と同様にして、その窒素酸化物吸着能および硫黄酸化物吸着能を評価した。評価結果を図7に示す。再生回数0の数値は吸着剤の初期性能を示す。更に、(再生後の吸着性能の評価)において、耐久加速試験を行った後、後段の吸着剤−2のみに再生ガスを導入した以外は実施例1と同様にして吸着剤層の再生を行った。更に、上記再生を行った後、室温まで冷却し、ガスの流れに対して前段に未使用の上記硫黄酸化物用吸着剤を19ml、後段に再生後の吸着剤−2を35ml充填し、初期吸着性能の評価に用いたと同じ合成ガスを、同じ処理条件下に導入して、再生後の吸着剤の吸着性能を評価した。上記のような吸着−再生の操作を5回繰り返した。結果を図11に示す。
【0064】
図2と図11とを比較して、前段に硫黄酸化物用吸着剤を設置することにより再生後の吸着性能の低下が抑制されていることがわかる。
【0065】
実施例8
吸着剤−2の代わりに吸着剤−4を用いた以外は実施例7と同様の評価試験を行った。結果を図12に示す。
【0066】
図4と図12とを比較して、前段に硫黄酸化物用吸着剤を設置することにより再生後の吸着性能の低下が抑制されていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1における再生回数に対する除去率を示す。
【図2】 実施例2における再生回数に対する除去率を示す。
【図3】 実施例3における再生回数に対する除去率を示す。
【図4】 実施例4における再生回数に対する除去率を示す。
【図5】 実施例5における再生回数に対する除去率を示す。
【図6】 実施例6における再生回数に対する除去率を示す。
【図7】 比較例1における再生回数に対する除去率を示す。
【図8】 比較例2における再生回数に対する除去率を示す。
【図9】 比較例3における再生回数に対する除去率を示す。
【図10】 比較例4における再生回数に対する除去率を示す。
【図11】 実施例7における再生回数に対する除去率を示す。
【図12】 実施例8における再生回数に対する除去率を示す。
Claims (5)
- (1)マンガン、銅、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、(2)チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素、(3)アルカリ金属元素、および(4)白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する窒素酸化物等吸着剤を再生するにあたり、該吸着剤を還元剤の存在下に加熱することを特徴とする窒素酸化物等吸着剤の再生方法。
- (1)マンガン、銅、ニッケル、コバルト、鉄、鉛およびセリウムから選ばれる少なくとも1種の元素、(2)チタン、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素、および(3)アルカリ金属元素を含有する(ただし、マンガンと、チタン、アルミニウムおよびジルコニウムから選ばれる少なくとも1種との組み合わせを除く。)窒素酸化物等吸着剤を再生するにあたり、該吸着剤を還元剤の存在下に加熱することを特徴とする窒素酸化物等吸着剤の再生方法。
- 窒素酸化物等吸着剤がさらに(4)白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する請求項2記載の窒素酸化物等吸着剤の再生方法。
- 還元剤が水素または炭素数1〜4の脂肪酸の少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の窒素酸化物等吸着剤の再生方法。
- 請求項1〜4のいずれかにより窒素酸化物等吸着剤を再生するにあたり、該吸着剤を還元剤の存在下で加熱し、脱離した窒素酸化物を脱硝処理することを特徴とする窒素酸化物等吸着剤の再生方法。
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