JP2004237140A - 窒素酸化物等の吸着剤、その製造および再生方法、窒素酸化物等の除去方法、ならびに窒素酸化物含有ガスの浄化方法 - Google Patents
窒素酸化物等の吸着剤、その製造および再生方法、窒素酸化物等の除去方法、ならびに窒素酸化物含有ガスの浄化方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】(1)5ppm程度以下の低濃度の窒素酸化物等を吸着除去するに好適な吸着剤、(2)この吸着剤の製造方法、(3)この吸着剤の再生方法、(4)この吸着剤を用いた窒素酸化物等の除去方法、および(5)この吸着剤を用いた窒素酸化物含有ガスの浄化方法を提供する。
【解決手段】(1)鉄およびコバルトの合金を含有する窒素酸化物等の吸着剤、(2)各成分を含む吸着剤前駆体を還元剤の存在下で加熱して(1)の吸着剤を製造する、(3)還元剤の存在下で加熱して(1)の吸着剤を再生する、(4)窒素酸化物等を含むガスを(1)の吸着剤に接触させて窒素酸化物等を吸着除去する、(5)窒素酸化物を含むガスを(1)の吸着剤に接触させて、窒素酸化物を吸着除去し、次に窒素酸化物を吸着した吸着剤を還元剤の存在下で加熱して、窒素酸化物を脱離させるとともに吸着剤を再生し、さらに脱離した窒素酸化物を脱硝処理する。
【選択図】 図1
【解決手段】(1)鉄およびコバルトの合金を含有する窒素酸化物等の吸着剤、(2)各成分を含む吸着剤前駆体を還元剤の存在下で加熱して(1)の吸着剤を製造する、(3)還元剤の存在下で加熱して(1)の吸着剤を再生する、(4)窒素酸化物等を含むガスを(1)の吸着剤に接触させて窒素酸化物等を吸着除去する、(5)窒素酸化物を含むガスを(1)の吸着剤に接触させて、窒素酸化物を吸着除去し、次に窒素酸化物を吸着した吸着剤を還元剤の存在下で加熱して、窒素酸化物を脱離させるとともに吸着剤を再生し、さらに脱離した窒素酸化物を脱硝処理する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒素酸化物等の吸着剤、この吸着剤の製造および再生方法、この吸着剤を用いた窒素酸化物等の除去方法、ならびにこの吸着剤を用いた窒素酸化物含有ガスの浄化方法に関する。
【0002】
本発明の「窒素酸化物等」とは、窒素酸化物、または硫黄酸化物、もしくは窒素酸化物および硫黄酸化物を意味する。
【0003】
【従来の技術】
ボイラなどの固定式窒素酸化物発生源からの窒素酸化物の除去方法に関しては、従来から、アンモニアを還元剤に用いて窒素酸化物を選択的に還元して無害な窒素と水に変換する接触還元法が最も経済的な方法として広く用いられている。これに対し、道路トンネル、シェルター付道路、大深度地下空間、道路交差点、地下駐車場などにおける換気ガスもしくは大気、および家庭内で使用される燃焼機器から排出されるガスなどに含まれる窒素酸化物の濃度は、5ppm程度と、ボイラ排ガス中の窒素酸化物濃度に比べて著しく低く、またガス温度は常温であり、しかもガス量は莫大なものである。従来のアンモニア還元方法、例えば道路トンネルの換気ガスに上記接触還元法を適用して窒素酸化物を効率よく除去するためには、この換気ガスの温度を300℃以上にすることが必要であり、その結果、多大なエネルギーが必要となることから、上記接触還元法をそのまま適用することには経済的に問題がある。
このような事情から上記のアンモニア還元法は直接用いることはできず、道路トンネルの換気ガスなど、窒素酸化物の濃度が低い、例えば5ppm以下の排ガスから窒素酸化物を効率よく除去することが望まれている。そこで、低濃度の窒素酸化物を吸着剤に吸着させて除去する方法、およびこれに適した吸着剤が提案されている。
本出願人は、上記のような低濃度の窒素酸化物含有ガスから窒素酸化物を吸着除去するに好適な各種吸着剤を提案している(特許文献1〜10)。
また、本出願人は、窒素酸化物のほかに硫黄酸化物を含有するガスから窒素酸化物を効率よく除去する方法として、あらかじめ硫黄酸化物を除去した後、窒素酸化物用吸着剤に接触させて窒素酸化物を吸着除去する方法を提案している(特許文献11)。
さらに、本出願人は、使用によって性能の低下した吸着剤を還元剤の存在下で加熱して再生する方法も提案している(特許文献12)。
特許文献1:特開平10−128105号公報
特許文献2:特開平10−192698号公報
特許文献3:特開平10−309435号公報
特許文献4:特開平11−28351号公報
特許文献5:特開平11−28352号公報
特許文献6:特開2000−51655号公報
特許文献7:特開2000−225318号公報
特許文献8:特開2000−325780号公報
特許文献9:特開2001−38200号公報
特許文献10:特開2002−248348号公報
特許文献11:特開平10−76136号公報
特許文献12:特開2000−225317号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、(1)窒素酸化物等を吸着除去するに好適な、特に5ppm程度以下の低濃度の窒素酸化物等を吸着除去するに好適な吸着剤、(2)この吸着剤の製造方法、(3)この吸着剤の再生方法、(4)この吸着剤を用いた窒素酸化物等の除去方法、および(5)この吸着剤を用いた窒素酸化物含有ガスの浄化方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、下記の吸着剤が上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は次のとおりのものである。
(1)鉄およびコバルトの合金を含有することを特徴とする窒素酸化物等の吸着剤。
(2)更にアルカリ金属元素、銅、アルカリ土類金属元素、チタン、ケイ素、ジルコニウム、白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する上記(1)の吸着剤。
(3)各成分を含む吸着剤前駆体を還元剤の存在下で加熱することを特徴とする上記(1)または(2)の吸着剤の製造方法。
(4)上記(1)または(2)の吸着剤を再生する方法であって、該吸着剤を還元剤の存在下で加熱することを特徴とする吸着剤の再生方法。
(5)窒素酸化物等を含むガスを上記(1)または(2)の吸着剤に接触させて窒素酸化物等を吸着除去することを特徴とする窒素酸化物等の除去方法。
(6)窒素酸化物を含むガスを上記(1)または(2)の吸着剤に接触させて、窒素酸化物を吸着除去し、次に窒素酸化物を吸着した吸着剤を還元剤の存在下で加熱して、窒素酸化物を脱離させるとともに吸着剤を再生し、さらに脱離した窒素酸化物を脱硝処理することを特徴とする窒素酸化物を含むガスの浄化方法。
【0006】
上記(6)の発明において、窒素酸化物を含むガスは更に硫黄酸化物を含んでいてもよい。この場合は、窒素酸化物および硫黄酸化物を含むガスを上記(1)または(2)の吸着剤に接触させて、窒素酸化物および硫黄酸化物を吸着除去し、この窒素酸化物および硫黄酸化物を吸着した吸着剤を還元剤の存在下で加熱して、窒素酸化物を脱離させるとともに吸着剤を再生し、さらに脱離した窒素酸化物を脱硝処理する。
【0007】
また、窒素酸化物および硫黄酸化物を含むガスを最初に硫黄酸化物用吸着剤に接触させて硫黄酸化物を吸着除去し、次に残存する窒素酸化物を含むガスを上記(6)の発明に従って処理してもよい。
【0008】
本発明は、このような態様も包含するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の吸着剤は、5ppm以下の低濃度の窒素酸化物等、すなわち窒素酸化物および/または硫黄酸化物を吸着するためのものである。この窒素酸化物はNOxとして示されるものであり、具体的にはNOおよびNO2を挙げることができる。また、硫黄酸化物とはSOxで示されるものであり、具体的にはSO2を挙げることができる。本発明の吸着剤は、窒素酸化物と硫黄酸化物とを同時でも個別でも処理することができるが、特にNO2の吸着除去に優れている。
本発明の吸着剤は、鉄およびコバルトの合金(以下、鉄−コバルト合金と記載する。)を含有すること特徴とする窒素酸化物等の吸着剤である。
一般に合金とは、ある金属に他の金属元素あるいは非金属元素を添加したものであり、その形態には、固溶体、共晶、金属間化合物あるいはそれらが共存するものなどがあるが、本発明における合金とは、固溶体、金属間化合物あるいは固溶体と金属間化合物とが共存するもののうちの何れかを意味する。ここで、固溶体とは、ある一つの結晶相の格子点に存在する原子が全く不規則に別種の原子と置換するか、あるいは格子間隙に別種原子が統計的に分布されるように入り込んだ相であり、2成分あるいは3成分が結晶格子の特定の格子点をそれぞれ占めている場合は、別の新しい結晶相(金属間化合物)とみなし、固溶体とはいわない(例えば、化学大辞典3、706頁、1960年、共立出版株式会社)。また、金属間化合物とは、2種またはそれ以上の金属元素が簡単な整数比で結合し、成分の金属元素とは違った新しい性質を有する化合物のことであり、このとき金属として通常の金属のほかにホウ素、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、セレン、テルルなどのような非金属元素を含めることもある(例えば、化学大辞典2、915頁、1960年、共立出版株式会社)。
本発明の吸着剤は、窒素酸化物等を吸着するに有効な量の鉄−コバルト合金を含んでいればよい。吸着剤に窒素酸化物等を吸着するに有効な量の鉄−コバルト合金が含まれていることは、X線回折による格子面間隔(d値)を測定することにより確認することができる。すなわち、CoFeのd値は、2.018±0.005と1.428±0.005と1.166±0.005とにあり、またCo0.7Fe0.3のd値は、2.008±0.005と1.421±0.005と1.160±0.005とにあるので、吸着剤のX線回折図に上記d値に相当するピークが存在すれば、窒素酸化物等を吸着するに有効な量の鉄−コバルト合金が含まれているということができる。
なお、格子面間隔(d値)の測定装置および測定条件は次のとおりである。
(装置)
リガク RU−300シリーズ
(測定条件)
X線:CuKα1/50kV/300mA
ゴニオメータ:広角ゴニオメータ
アタッチメント:ACS−43(横型)
フィルタ:使用せず
カウンタモノクロメータ:湾曲結晶モノクロメータ
発散スリット:1deg
散乱スリット:1deg
受光スリット:0.3mm
カウンタ:シンチレーションカウンタ
走査モード:連続
スキャンスピード:4°/min
スキャンステップ:0.01°
走査軸:2θ/θ
走査範囲:20〜90°
θオフセット:0°
固定角:0°
(データ処理条件)
平滑化方法:加重平均
平滑化点数:25
バッククランド除去方法:Sonnevelt−Visserの方法
強度比(Kα2/Kα1):0.500
このように、本発明の吸着剤は、CoFeおよび/またはCo0.7Fe0.3なる組成式で示される鉄−コバルト合金を含む吸着剤が好適に用いられる。
本発明の吸着剤は、鉄−コバルト合金のほかに、アルカリ金属元素、銅、アルカリ土類金属元素、チタン、ケイ素、ジルコニウム、白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも1種を含有するのが好ましい。 本発明の吸着剤のうち代表的な吸着剤について以下に詳しく説明するが、本発明はこれら吸着剤に限定されるものではない。
<吸着剤1>
鉄(以下、成分(A)ということもある。)の少なくとも一部とコバルト(以下、成分(B)ということもある)の少なくとも一部とが鉄−コバルト合金を形成している吸着剤。
【0010】
この吸着剤1は、例えば、鉄成分およびコバルト成分を含む吸着剤前駆体を予め調製し、この前駆体を還元剤雰囲気下で加熱して、鉄成分の少なくとも一部とコバルト成分の少なくとも一部とを鉄−コバルト合金に変換することにより得られる。この調製方法については、後で詳しく説明する。
【0011】
鉄−コバルト合金を形成していない残余の鉄成分およびコバルト成分の形態については、金属(単体)、酸化物、複合酸化物、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩などいずれの形態にあってもよい。
【0012】
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜99.5質量%、好ましくは5〜99質量%であり、成分(B)は0.5〜99質量%、好ましくは1〜95質量%である(合計100質量%、以下同じ。)。
【0013】
成分(A)の出発原料としては、鉄の金属(単体)、酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、酢酸塩やシュウ酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。また、成分(B)の出発原料としては、コバルトの金属(単体)、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、酢酸塩やシュウ酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。
【0014】
吸着剤1としては、上記吸着剤のほか、市販または予め調製した鉄−コバルト合金を用いることもできる。
<吸着剤2>
吸着剤1において、さらにアルカリ金属元素(Li、Na、K、RbおよびCsから選ばれる少なくとも1種の元素)(以下、成分(C)ということもある。)を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有する吸着剤。
【0015】
吸着剤1にアルカリ金属元素成分を加えることにより、吸着剤の窒素酸化物等の吸着性能の経時的な低下が抑制され、耐久性が向上する。また、アルカリ金属元素成分は鉄−コバルト合金の生成を容易にする効果がある。
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜98.5質量%、好ましくは5〜98質量%であり、成分(B)は0.5〜98質量%、好ましくは1〜94質量%であり、成分(C)は1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%である。
成分(C)のアルカリ金属元素の形態については特に制限はなく、吸着剤として窒素酸化物等を吸着し得るものであれば、いずれの形態にあってもよい。例えば、水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩の形態で含有される。成分(C)の出発原料としては、各元素の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、亜硝酸塩などのほか、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ソルビン酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。
<吸着剤3>
吸着剤1において、さらに銅成分(以下、成分(D)ということもある。)を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)および成分(D)を含有する吸着剤。
【0016】
吸着剤1に銅成分を加えることにより、吸着剤の窒素酸化物等の吸着(除去)効率が向上する。
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜98.5質量%、好ましくは5〜98質量%であり、成分(B)は0.5〜98質量%、好ましくは1〜94質量%であり、成分(D)は1〜98.5質量%、好ましくは1〜94質量%である。
【0017】
成分(D)の銅の形態は、上記効果を有するものであればいずれの形態であってもよいが、なかでも、その少なくとも一部が0価または1価の原子価を有することが好ましい。具体的には、(イ)銅の実質的に全てが0価である、(ロ)銅の実質的に全てが1価である、(ハ)銅の一部が0価であり、残余が1価である、(ニ)銅の一部が0価であり、残余が2価である、(ホ)銅の一部が0価であり、残余が1価および2価であるものを挙げることができる。銅は必ずしもその全てが0価または1価である必要はなく、本発明の効果が得られる程度の有効量が0価または1価であればよい。銅成分が0価または1価の形態を有していることは、X線回折による格子面間隔(d値)を測定することにより確認することができる。Cu(0価)のd値は、2.09±0.01と1.81±0.01と1.28±0.01とにあり、Cu2O(1価)のd値は2.47±0.01と2.14±0.01と1.51±0.01とにある。
吸着剤3のなかでも、鉄−コバルト合金、好ましくはCoFeおよび/またはCo0.7Fe0.3なる組成式で示される鉄−コバルト合金と、その少なくとも一部が0価または1価に変換された銅成分とを含有する吸着剤が好適である。
【0018】
上記のような吸着剤は、例えば、後記のように、鉄成分、コバルト成分および銅成分を含有する吸着剤前駆体を予め調製し、この前駆体を還元雰囲気下で加熱処理することにより得られる。
成分(D)の出発原料としては、銅の金属(単体)、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、酢酸塩やシュウ酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。
<吸着剤4>
吸着剤1において、さらにアルカリ金属元素および銅を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を含有する吸着剤。
【0019】
アルカリ金属元素成分および銅成分を加えることにより前記のような効果が得られる。
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜97.5質量%、好ましくは5〜97質量%であり、成分(B)は0.5〜97質量%、好ましくは1〜93質量%であり、成分(C)は1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%であり、成分(D)は1〜97.5質量%、好ましくは1〜93質量%である。
<吸着剤5>
吸着剤1において、さらにアルカリ土類金属元素(Be、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種の元素)、チタン、ケイ素およびジルコニウム(以下、これら元素を総称してアルカリ土類金属元素等という。)から選ばれる少なくとも1種の元素(以下、成分(E)ということもある。)を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)および成分(E)を含有する吸着剤。
【0020】
吸着剤1にアルカリ土類金属元素等成分を加えることにより、吸着剤の窒素酸化物等の吸着(除去)効率が向上する。また、アルカリ土類金属元素等成分は成分元素の分散性を高める効果があるものと考えられる。
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜89.5質量%、好ましくは5〜85質量%であり、成分(B)は0.5〜89質量%、好ましくは1〜81質量%であり、成分(E)は10〜98.5質量%、好ましくは14〜94質量%である。
成分(E)の形態については、窒素酸化物等を吸着する性能が得られる限り、いずれの形態であってもよい。例えば、酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩などとして含有される。成分(E)の出発原料としては、各元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、リン酸塩などを用いることができる。
成分(E)のなかでも、耐久性に優れた吸着剤が得られるという点において、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素、特にアルカリ土類金属元素が好適に用いられる。
<吸着剤6>
吸着剤1において、さらにアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素等を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(E)を含有する吸着剤。
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜89.5質量%、好ましくは5〜85質量%であり、成分(B)は0.5〜89質量%、好ましくは1〜81質量%であり、成分(C)は1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%であり、成分(E)は9〜97.5質量%、好ましくは13〜93質量%である。<吸着剤7>
吸着剤1において、さらに銅およびアルカリ土類金属元素等を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)、成分(D)および成分(E)を含有する吸着剤。
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜89.5質量%、好ましくは5〜85質量%であり、成分(B)は0.5〜89質量%、好ましくは1〜81質量%であり、成分(D)は1〜89.5質量%、好ましくは1〜81質量%であり、成分(E)は9〜97.5質量%、好ましくは13〜93質量%である。
<吸着剤8>
吸着剤1において、さらにアルカリ金属元素、銅、およびアルカリ土類金属元素等を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)および成分(E)を含有する吸着剤。
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜89.5質量%、好ましくは5〜85質量%であり、成分(B)は0.5〜89質量%、好ましくは1〜81質量%であり、成分(C)は1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%であり、成分(D)は1〜89.5質量%、好ましくは1〜81質量%であり、成分(E)は8〜96.5質量%、好ましくは12〜92質量%である。
なお、上記吸着剤1〜8における各成分の割合については、成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)は酸化物換算であり、具体的には、鉄はFe2O3、コバルトはCo3O4、銅はCuO、アルカリ金属はX2O(Xはアルカリ金属)、アルカリ土類金属はYO(Yはアルカリ土類金属)として換算する。
<吸着剤9>
吸着剤1、2または5において、さらに白金、金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、マンガン、ニッケル、亜鉛、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも1種の元素、好ましくは白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも1種の元素(以下、成分(F)ということもある。)を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)および成分(F)、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(F)、または(A)、成分(B)、成分(E)および成分(F)を含有する吸着剤。
【0021】
上記成分(F)の含有量については、吸着剤の各成分の合計量に対し、白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムの場合は金属換算として0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%添加することができる。また、マンガン、ニッケル、亜鉛、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデンおよびタングステンの場合は酸化物換算(MnO2、NiO、ZnO、V2O5、Nb2O5、CrO3、MoO3およびWO3)として0.5〜30質量%、好ましくは1〜20質量%添加することができる。
【0022】
これら元素は、例えば金属、酸化物、複合酸化物などの形態で含有される。これら元素のなかでも、白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムが好ましく、特にルテニウムが好適に用いられる。
【0023】
これら元素成分の出発原料としては、各元素の金属(単体)、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、酢酸塩やシュウ酸塩などの有機酸塩、アンミン錯体などを用いることができる。
上記吸着剤1〜9のなかでも、吸着剤6および吸着剤8が好ましい。具体的には、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(E)を含有する吸着剤、および成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)および成分(E)を含有する吸着剤が好適に用いられる。
【0024】
本発明の吸着剤は、鉄−コバルト合金が得られる限りいずれの方法によっても調製することができる。以下、吸着剤2および吸着剤8を例に挙げて、代表的な調製方法について説明する。
<吸着剤2>
鉄成分、コバルト成分およびアルカリ金属元素成分を含有する吸着剤前駆体を予め調製し、これを還元剤の存在下に加熱して、鉄の少なくとも一部とコバルトの少なくとも一部とを鉄−コバルト合金、好ましくはCoFeおよび/またはCo0.7Fe0.3なる組成式で示される鉄−コバルト合金に変換する。
【0025】
上記吸着剤前駆体は、例えば、前記の鉄成分およびコバルト成分の出発原料の水溶液、または粉体を一般に用いられている成型助剤とともに混合、攪拌し、押出成型機で成型した後、50〜120℃で乾燥した後、200〜600℃、好ましくは250〜500℃で1〜10時間、好ましくは2〜6時間、空気中または窒素などの不活性ガス中などで焼成して成型体を作製し、これにアルカリ金属元素成分を含浸担持させることにより容易に得られる。この場合、鉄成分は2価および/または3価の酸化物(Fe2O3やFe3O4)、またコバルト成分は2価および/または3価の酸化物(Co3O4やCoO)の形態にある。
【0026】
そのほか、空気中または窒素などの不活性ガス中などでの焼成を行うことなく、成型体にアルカリ金属元素成分を含浸担持させてもよい。この場合、鉄成分については、例えば、水酸化鉄、またコバルト成分については、水酸化コバルトの形態にある。
<吸着剤8>
鉄成分、コバルト成分、アルカリ金属元素成分、銅成分およびアルカリ土類金属元素等成分を含有する吸着剤前駆体を予め調製し、これを還元剤の存在下に加熱して、鉄の少なくとも一部とコバルトの少なくとも一部とを鉄−コバルト合金、好ましくはCoFeおよび/またはCo0.7Fe0.3なる組成式で示される鉄−コバルト合金に変換するとともに、銅成分の少なくとも一部を0価または1価に変換する。
【0027】
上記吸着剤前駆体は、例えば、鉄成分、コバルト成分、アルカリ金属元素成分および銅成分の各々の出発原料の水溶液、または粉体を一般に用いられている成型助剤とともにアルカリ土類金属元素成分に加え、混合、攪拌し、押出成型機で成型した後、50〜120℃で乾燥した後、200〜600℃、好ましくは250〜500℃で1〜10時間、好ましくは2〜6時間、空気中または窒素などの不活性ガス中などで焼成することにより容易に得られる。この場合、少なくとも鉄成分、コバルト成分および銅成分は、それぞれ、鉄の2価および/または3価の酸化物(Fe2O3やFe3O4)、コバルトの2価および/または3価の酸化物(Co3O4やCoO)、および銅の2価の酸化物(CuO)の形態にある。
【0028】
なお、吸着剤2と同様に、空気中または窒素などの不活性ガス中などで焼成を行わなくてもよい。この場合には、少なくとも鉄成分、コバルト成分および銅成分は、それぞれ、鉄の2価および/または3価の化合物、コバルトの2価および/または3価の化合物、および銅の2価の化合物の形態にある。
そのほか、鉄成分、コバルト成分、アルカリ金属元素成分および銅成分のうちの少なくとも一つとアルカリ土類金属元素成分とを含有する成型体を予め作製し、この成型体に残りの成分を含浸担持させてもよい。例えば、鉄成分、コバルト成分、銅成分およびアルカリ土類金属元素成分からなる成型体を上記のように作製した後、アルカリ金属元素成分を含浸担持させる。
【0029】
本発明の吸着剤前駆体とは、前記のように、銅成分を含まない吸着剤の場合には、鉄成分およびコバルト成分に関し、それぞれ、鉄の2価および/または3価化合物、特に鉄の2価および/または3価の酸化物(Fe2O3やFe3O4)およびコバルトの2価および/または3価の化合物、特にコバルトの2価および/または3価の酸化物(Co3O4やCoO)の形態で含有するものを意味する。
【0030】
また、銅成分を含む吸着剤の場合には、鉄成分、コバルト成分および銅成分に関し、それぞれ、鉄の2価および/または3価の化合物、特に鉄の2価および/または3価の酸化物(Fe2O3やFe3O4)、コバルトの2価および/または3価の化合物、特に2価および/または3価の酸化物(Co3O4やCoO)、および銅の2価の化合物、特に2価の酸化物(CuO)の形態で含有するものを意味する。
前記還元剤とは、水素および燃焼性有機化合物を意味する。この燃焼性有機化合物としては、炭化水素類、好ましくは炭素数1〜4の飽和または不飽和の炭化水素類を挙げることができる。本発明では、水素または炭化水素類、特に水素が還元剤として好適に用いられる。上記炭化水素類の代表例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどの飽和または不飽和の炭化水素類を挙げることができる。
上記還元剤は、通常、他のガスで希釈して、例えば、窒素などの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。具体的には、還元剤として水素を用いる場合、水素と窒素、ヘリウムなどの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。この混合ガス中の水素の濃度は、通常、0.1〜20容量%であり、好ましくは0.5〜10容量%である。なお、空気との混合ガスとすることもできるが、一般的には、上記のような不活性ガスとの混合ガスとして使用するのがよい。燃焼性有機化合物の場合にも、窒素などの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。この混合ガス中の燃焼性有機化合物の濃度は、通常、0.001〜1容量%であり、好ましくは0.01〜0.5容量%である。
上記還元剤の希釈に用いることのできるガスとしては、上記の窒素、ヘリウムなどの不活性ガスおよび空気のほかに、水蒸気(H2O)、二酸化炭素ガスなどを挙げることができる。かくして、上記混合ガスの代表例としては、水素と不活性ガス、燃焼性有機化合物と不活性ガスとの組み合わせを挙げることができる。
加熱温度は、通常、200〜600℃であり、好ましくは300〜500℃、より好ましくは300〜400℃である。なお、吸着剤前駆体は、通常、常温であるが、上記加熱温度までの昇温速度には特に制限はなく、適宜決定することができる。加熱時間は、一概には特定できないが、通常、30分〜10時間、好ましくは30〜5時間の範囲で適宜選ぶことができる。
本発明の加熱処理は、還元剤の通風下で行うのが好ましい。還元剤の通風下で加熱処理を行う場合、通風の程度については特に制限はなく、新たな還元剤が供給されるような条件下にすればよい。
本発明の吸着剤の形状については特に制限はなく、円柱状、円筒状、球状、板状、ハニカム状、その他一体に成型されたもののなかから適宜選択することができる。この成型には、一般的な成型方法、例えば打錠成型、押出成型などを用いることができる。球状の場合、その平均粒径は、通常、1〜10mmである。ハニカム状吸着剤の場合は、いわゆるモノリス担体と同様であり、押出成型法やシート状素子を巻き固める方法などにより製造することができる。そのガス通過口(セル形状)の形は、6角形、4角形、3角形、またはコルゲーション形のいずれであってもよい。セル密度(セル数/単位断面積)は、通常、25〜800セル/平方インチ(×2.54cm)であり、好ましくは25〜500セル/平方インチ(×2.54cm)である。
本発明の方法によれば、窒素酸化物等を含むガスを上記吸着剤に接触させて窒素酸化物等を吸着せしめてガスを浄化する。上記ガスの代表例は、前記の道路トンネルなどからの換気ガスないしは大気ガスであり、本発明の方法は、窒素酸化物および硫黄酸化物の濃度が5ppm以下という濃度が低いガスからの窒素酸化物および硫黄酸化物の吸着除去に好適に用いられる。
上記ガスと吸着剤との接触方法については特に制限はなく、通常、この吸着剤からなる層中にガスを導入して行う。この処理条件については、処理すべきガスの性状などにより異なるので一概に特定できないが、例えば、吸着剤層に供給するガスの温度は、通常、0〜100℃であり、特に0〜50℃とするのが好ましい。また、吸着剤層に供給するガスの空間速度(SV)は、通常、1,000〜100,000hr−1(STP)であり、4,000〜60,000hr−1(STP)の範囲が好ましい。
本発明の再生とは、窒素酸化物等を吸着して吸着力の低下した吸着剤を再生するというものである。例えば、道路トンネルなどにおける換気ガスもしくは大気中には、通常、窒素酸化物と硫黄酸化物が含まれているので、このような所で使用する吸着剤は、窒素酸化物と硫黄酸化物とを吸着して吸着力が低下するが、本発明によれば、このように吸着された窒素酸化物を効率よく脱離させることができる。
本発明の再生処理に用いる還元剤とは、水素および燃焼性有機化合物を意味する。燃焼性有機化合物の代表例としては、炭化水素類、好ましくは炭素数1〜4の飽和または不飽和の炭化水素類、または、含酸素有機化合物、具体的には脂肪酸類、アルコール類およびアルデヒド類、好ましくは炭素数1〜4の低級脂肪酸、炭素数1〜4の低級アルコール類、炭素数1〜4の低級アルデヒド類をを挙げることができる。これらの中でも、炭素数1〜4の飽和または不飽和の炭化水素類、低級脂肪酸類が好適に用いられる。上記燃焼性有機化合物は単独でも、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。本発明では水素、炭素数1〜4の飽和または不飽和の炭化水素類または低級脂肪酸類、特に水素が還元剤として好適に用いられる。
上記炭化水素類の代表例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどの飽和または不飽和の炭化水素類を挙げることができる。また、上記低級脂肪酸の代表例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などのモノまたはジー、もしくは飽和または不飽和のカルボン酸を挙げることができる。
上記還元剤は、通常、他のガスで希釈して、例えば、窒素などの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。具体的には、還元剤として水素を用いる場合、水素と窒素、ヘリウムなどの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。この混合ガス中の水素の濃度は、通常、0.1〜20容量%であり、好ましくは0.5〜10容量%である。なお、空気との混合ガスとすることもできるが、一般的には、上記のような不活性ガスとの混合ガスとして使用するのがよい。燃焼性有機化合物の場合にも、窒素などの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。この混合ガス中の燃焼性有機化合物の濃度は、通常、0.001〜1容量%であり、好ましくは0.01〜0.5容量%である。なお、燃焼性有機化合物が固体の場合には、水に溶解させて、水溶液として噴霧して、供給すればよい。
上記還元剤の希釈に用いることのできるガスとしては、上記の窒素、ヘリウムなどの不活性ガスおよび空気のほかに、水蒸気(H2O)、二酸化炭素ガスなどを挙げることができる。かくして、上記混合ガスの代表例としては、水素と不活性ガス、燃焼性有機化合物と不活性ガスとの組み合わせを挙げることができる。
再生処理における加熱温度については、本発明によれば、600℃以下で再生可能である。加熱温度は、通常、200〜600℃であり、好ましくは300〜500℃、より好ましくは300〜450である。なお、再生すべき吸着剤は、通常、常温であるが、上記加熱温度までの昇温速度には特に制限はなく、適宜決定することができる。
加熱時間は、窒素酸化物等の吸着の程度、加熱温度などによって変わるので一概には特定できないが、通常、30分〜10時間、好ましくは30〜5時間の範囲で適宜選ぶことができる。
本発明の再生処理は、還元剤の通風下で行うのが好ましい。還元剤の通風下で再生処理を行う場合、通風の程度については特に制限はなく、新たな還元剤が供給されるような条件下にすればよい。一般的には、吸着剤を充填した装置(吸着剤層)に、その入口側から還元剤を導入して、出口側に流通させればよい。
本発明の再生処理によって再生した吸着剤は、窒素酸化物等の吸着除去に再利用することができる。
吸着剤の再生処理の際には、脱離した窒素酸化物を含むガス(排ガス)が発生するので、この排ガス中の窒素酸化物を除去して無害化した後に、大気中に放出するのが好ましい。この排ガス中の窒素酸化物の除去方法、すなわち脱硝方法には特に制限がなく、従来公知の脱硝方法によって行うことができる。具体的には、例えば、排ガスにアンモニアを還元剤として添加し、脱硝触媒に接触させて窒素酸化物を窒素と水に還元すればよい。
窒素酸化物のほかに硫黄酸化物を含有するガスから窒素酸化物を効率よく除去してガスを浄化するに際しては、予め硫黄酸化物を除去した後、本発明の吸着剤に接触させて窒素酸化物を吸着除去すると吸着剤の耐久性が向上し、長期にわたって効果的に窒素酸化物を除去することができる。
硫黄酸化物の除去方法には特に制限はなく、ガスを水洗して除去する方法、ガスを硫黄酸化物吸着用の吸着剤に接触させて除去する方法などを用いることができる。なかでも、装置がコンパクトになる、消費エネルギーが少ないなどの点から、硫黄酸化物用吸着剤を用いる方法が好適に用いられる。
上記硫黄酸化物用吸着剤としては、SOxを吸着し得るものであればいずれでもよく、なかでも活性炭、遷移金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種を含有する吸着剤が好適に用いられる。遷移金属の代表例としては、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Zn、Cuなどを挙げることができる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属の代表例としては、Li、Na、KおよびMg、Ca、Baを挙げることができる。これら元素の吸着剤中の形態については特に制限はなく、SOxを吸着し得るものであれば、どのような形態であってもよい。具体的には、例えば、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、塩化物および水酸化物を挙げることができる。
上記硫黄酸化物用吸着剤は、担体として、アルカリ土類金属、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、シリカ−アルミナ、アルミナ−ジルコニア、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニアおよびチタニア−ジルコニアの少なくとも1種を含んでいてもよい。
本発明の好適な態様は、窒素酸化物および硫黄酸化物を含むガスを最初に硫黄酸化物用吸着剤に接触させて硫黄酸化物を吸着除去し、次いで本発明の吸着剤に接触させて窒素酸化物を吸着除去してガスを浄化することからなるものである。これにより、本発明の吸着剤の耐久性が向上する。
【0031】
【発明の効果】
本発明の吸着剤は、窒素酸化物等、特に低濃度の窒素酸化物等に対して高い吸着性能を有し、しかも優れた耐久性を示す。
【0032】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、X線回折は下記の装置を用い、また下記の条件下に行った。
(装置)
リガク RU−300シリーズ
(測定条件)
X線:CuKα1/50kV/300mA
ゴニオメータ:広角ゴニオメータ
アタッチメント:ACS−43(横型)
フィルタ:使用せず
カウンタモノクロメータ:湾曲結晶モノクロメータ
発散スリット:1deg
散乱スリット:1deg
受光スリット:0.3mm
カウンタ:シンチレーションカウンタ
走査モード:連続
スキャンスピード:4°/min
スキャンステップ:0.01°
走査軸:2θ/θ
走査範囲:20〜90°
θオフセット:0°
固定角:0°
(データ処理条件)
平滑化方法:加重平均
平滑化点数:25
バッククランド除去方法:Sonnevelt−Visserの方法
強度比(Kα2/Kα1):0.500
実施例1
α−Fe2O3300.0g、Co3O4150.0gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを6N−酢酸カリウム水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥してペレット状の吸着剤前駆体を得た。この吸着剤前駆体の組成は、Fe:Co:K(Fe2O3:Co3O4:K2Oとして)=59.8:29.9:10.3(質量%)であった。
次いで、この吸着剤前駆体を400℃で2時間、水素/窒素(5/95容量%)の流通下で加熱処理して吸着剤(1)を得た。吸着剤(1)のX線回折図を図1に示す。図1から吸着剤(1)はCoFeおよび/またはCo0.7Fe0.3を含有していることがわかる。
実施例2
α−Fe2O3225.0g、Co3O4112.5g、CuO112.5gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを6N−酢酸カリウム水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥してペレット状の吸着剤前駆体を得た。この吸着剤前駆体の組成は、Fe:Co:K:Cu(Fe2O3:Co3O4:K2O:CuOとして)=44.9:22.4:10.3:22.4(質量%)であった。
次いで、この吸着剤前駆体を400℃で2時間、水素/窒素(5/95容量%)の流通下で加熱処理して吸着剤(2)を得た。吸着剤(2)のX線回折を図2に示す。図2から吸着剤(2)はCoFeおよび/またはCo0.7Fe0.3と0価の銅を含有していることがわかる。
実施例3
α−Fe2O390.0g、Co3O445.0g、炭酸カルシウム315.0gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを6N−酢酸カリウム水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥してペレット状の吸着剤前駆体を得た。この吸着剤前駆体の組成は、Fe:Co:K:Ca(Fe2O3:Co3O4:K2O:CaOとして)=25.9:13.0:10.3:50.8(質量%)であった。
次いで、この吸着剤前駆体を400℃で2時間、水素/窒素(5/95容量%)の流通下で加熱処理して吸着剤(3)を得た。
実施例4
α−Fe2O390.0g、Co3O445.0g、CuO45.0g、炭酸カルシウム270.0gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを6N−酢酸カリウム水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥してペレット状の吸着剤前駆体を得た。この吸着剤前駆体の組成は、Fe:Co:K:Cu:Ca(Fe2O3:Co3O4:K2O:CuO:CaOとして)=24.4:12.2:10.3:12.2:40.9(質量%)であった。
次いで、この吸着剤前駆体を400℃で2時間、水素/窒素(5/95容量%)の流通下で加熱処理して吸着剤(4)を得た。
比較例1
実施例1において、水素/窒素(5/95容量%)の流通下での加熱処理の代わりに、加熱処理を窒素雰囲気下で行った以外は実施例1と同様にして表1に示す組成の吸着剤(比較1)のペレットを得た。なお、比較1の吸着剤のX線回折を図3に示す。図3から吸着剤(比較1)はCoFeおよびCo0.7Fe0.3を含有していないことがわかる。
比較例2および3
実施例2および4において、水素/窒素(5/95容量%)の流通下での加熱処理の代わりに、加熱処理を窒素雰囲気下で行った以外は実施例2および4と同様にして表1に示す組成の吸着剤(比較2)および(比較3)のペレットを得た。
上記のようにして得られた吸着剤(1)〜(4)および比較吸着剤(比較1)〜(比較3)の組成をまとめて表1に示す。
なお、表1において、成分A、B、C、DおよびEは、酸化物として示してある。
実施例5
吸着剤(1)〜(4)および比較吸着剤(比較1)〜(比較3)の窒素酸化物吸着能および硫黄酸化物吸着能を下記の方法により評価した。
(評価方法(1))
吸着剤17.3mlを内径30mmのガラス製反応管に充填した。この吸着剤層に下記組成の合成ガス(A)を下記条件下に導入した。
合成ガス(A)組成
一酸化窒素(NO):0.9ppm、二酸化窒素(NO2):0.1ppm、二酸化硫黄(SO2):0.05ppm、H2O:1.9容量%、残り:空気
処理条件
ガス量:17.3NL/min、処理温度:25℃、空間速度(SV):60,000hr−1(STP)、ガス湿度:60%RH
上記合成ガスを導入してから1時間後、上記吸着剤層の入口および出口における合成ガス中の窒素酸化物(NO2)濃度を化学発光式NOx計により、また、硫黄酸化物(SO2)濃度を紫外線吸収式SO2計で測定し、次式に従ってNO2およびSO2除去率を算出した。
NO2除去率(%)={(入口NO2濃度−出口NO2濃度)/(入口NO2濃度)}×100
SO2除去率(%)={(入口SO2濃度−出口SO2濃度)/(入口SO2濃度)}×100
合成ガス(A)を導入してから1時間後、上記吸着剤層の入口および出口における合成ガス中の窒素酸化物(NO2)濃度および硫黄酸化物(SO2)濃度を測定し、NO2およびSO2除去率を算出した。評価試験の結果を表2に示す。(評価方法(2))
評価方法(1)と同様の方法で各吸着剤の窒素酸化物吸着能および硫黄酸化物吸着能を測定した後、ガス組成を変更して下記の加速耐久試験を行った。
<加速耐久試験>
吸着剤層に下記組成の合成ガス(B)を下記条件下に導入した。
合成ガス(B)組成
一酸化窒素(NO):2.7ppm、二酸化窒素(NO2):0.3ppm、二酸化硫黄(SO2):0.15ppm、H2O:1.9容量%、残り:空気
処理条件
ガス量:17.3NL/min、処理温度:25℃、空間速度(SV):60,000hr−1(STP)、ガス湿度:60%RH
上記加速耐久試験を200時間行った後、合成ガス(A)を導入してから1時間後、上記吸着剤層の入口および出口における合成ガス中の窒素酸化物(NO2)濃度および硫黄酸化物(SO2)濃度を評価方法(1)と同様にして測定し、NO2およびSO2除去率を算出した。評価試験の結果を表2に示す。
実施例6
実施例5において加速耐久試験後の吸着剤(1)を用いて再生試験を行い、再生後の窒素酸化物除去能および硫黄酸化物除去能を下記の方法により評価した。<再生試験>
加速耐久試験後の各吸着剤に下記組成の再生ガスを下記条件下に導入した。
再生ガス組成
水素:5容量%、残り窒素
処理条件
ガス量:1.7NL/min、昇温速度:250℃/hr、処理温度:400℃、処理時間:1時間
上記再生を行った後、室温まで冷却し、評価方法(1)と同様の方法で吸着剤の窒素酸化物吸着能および硫黄酸化物吸着能を測定して、再生後の吸着剤の吸着性能を評価した。結果を表3に示す。
実施例7および8
実施例6において、吸着剤(1)の代わりに吸着剤(3)および(4)を用いた以外は実施例6と同様にして、その窒素酸化物吸着能および硫黄酸化物吸着能を評価した。結果を表3に示す。
表2および表3の結果から再生後には吸着性能が回復していることがわかる。
実施例9
(硫黄酸化物用吸着剤の調製)
水400リットルにアンモニア水(NH3、25%)286リットルを添加し、これにスノーテックスNCS−30(日産化学(株)製シリカゾル、SiO2を約30質量%含有)を24kg加えた。得られた溶液中に硫酸チタニルの硫酸水溶液(TiO2として250g/リットル含有。全硫酸濃度1,100g/リットル)153リットルを水300リットルに添加して希釈したチタン含有硫酸水溶液を攪拌下、徐々に添加し共沈ゲルを得た。このゲルを濾過し、水洗した後、200℃で10時間乾燥した。次いで、600℃で6時間空気雰囲気下で焼成し、更にハンマーミルを用いて粉砕し、分級機で分級して平均粒径10μmの粉体を得た。得られた粉体(以下、TS−1と称す)の組成はTi:Si=4:1(原子比)であった。
TS−1粉体500gに適量の水を添加しつつニーダーでよく練った後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成形した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、350℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを6N−炭酸ナトリウム水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥した。このようにして得られた硫黄酸化物用吸着剤の組成は、TS−1:Na(TS−1:Na2Oとして)=76.1:23.9(質量%)であった。
(評価方法)
実施例5の評価方法(1)および評価方法(2)において、ガスの流れに対して前段に上記硫黄酸化物用吸着剤を19ml、後段に実施例3で得た吸着剤(3)を17.3ml充填した以外は実施例5の評価方法(1)および評価方法(2)と同様にして、その窒素酸化物吸着能および硫黄酸化物吸着能を評価した。結果を表4に示す。
表2および表4の結果より、前段に硫黄酸化物用吸着剤を設置することにより吸着剤(3)の耐久性能が向上することがわかる。
実施例10
実施例9の評価方法において、後段の吸着剤として実施例4で得た吸着剤(4)を用いた以外は実施例9と同様にして、その窒素酸化物吸着能および硫黄酸化物吸着能を評価した。結果を表4に示す。
表2および表4の結果より、前段に硫黄酸化物用吸着剤を設置することにより吸着剤(4)の耐久性能が向上することがわかる。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた吸着剤(1)のX線回折図である。
【図2】実施例2で得られた吸着剤(2)のX線回折図である。
【図3】比較用吸着剤(比較1)のX線回折図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒素酸化物等の吸着剤、この吸着剤の製造および再生方法、この吸着剤を用いた窒素酸化物等の除去方法、ならびにこの吸着剤を用いた窒素酸化物含有ガスの浄化方法に関する。
【0002】
本発明の「窒素酸化物等」とは、窒素酸化物、または硫黄酸化物、もしくは窒素酸化物および硫黄酸化物を意味する。
【0003】
【従来の技術】
ボイラなどの固定式窒素酸化物発生源からの窒素酸化物の除去方法に関しては、従来から、アンモニアを還元剤に用いて窒素酸化物を選択的に還元して無害な窒素と水に変換する接触還元法が最も経済的な方法として広く用いられている。これに対し、道路トンネル、シェルター付道路、大深度地下空間、道路交差点、地下駐車場などにおける換気ガスもしくは大気、および家庭内で使用される燃焼機器から排出されるガスなどに含まれる窒素酸化物の濃度は、5ppm程度と、ボイラ排ガス中の窒素酸化物濃度に比べて著しく低く、またガス温度は常温であり、しかもガス量は莫大なものである。従来のアンモニア還元方法、例えば道路トンネルの換気ガスに上記接触還元法を適用して窒素酸化物を効率よく除去するためには、この換気ガスの温度を300℃以上にすることが必要であり、その結果、多大なエネルギーが必要となることから、上記接触還元法をそのまま適用することには経済的に問題がある。
このような事情から上記のアンモニア還元法は直接用いることはできず、道路トンネルの換気ガスなど、窒素酸化物の濃度が低い、例えば5ppm以下の排ガスから窒素酸化物を効率よく除去することが望まれている。そこで、低濃度の窒素酸化物を吸着剤に吸着させて除去する方法、およびこれに適した吸着剤が提案されている。
本出願人は、上記のような低濃度の窒素酸化物含有ガスから窒素酸化物を吸着除去するに好適な各種吸着剤を提案している(特許文献1〜10)。
また、本出願人は、窒素酸化物のほかに硫黄酸化物を含有するガスから窒素酸化物を効率よく除去する方法として、あらかじめ硫黄酸化物を除去した後、窒素酸化物用吸着剤に接触させて窒素酸化物を吸着除去する方法を提案している(特許文献11)。
さらに、本出願人は、使用によって性能の低下した吸着剤を還元剤の存在下で加熱して再生する方法も提案している(特許文献12)。
特許文献1:特開平10−128105号公報
特許文献2:特開平10−192698号公報
特許文献3:特開平10−309435号公報
特許文献4:特開平11−28351号公報
特許文献5:特開平11−28352号公報
特許文献6:特開2000−51655号公報
特許文献7:特開2000−225318号公報
特許文献8:特開2000−325780号公報
特許文献9:特開2001−38200号公報
特許文献10:特開2002−248348号公報
特許文献11:特開平10−76136号公報
特許文献12:特開2000−225317号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、(1)窒素酸化物等を吸着除去するに好適な、特に5ppm程度以下の低濃度の窒素酸化物等を吸着除去するに好適な吸着剤、(2)この吸着剤の製造方法、(3)この吸着剤の再生方法、(4)この吸着剤を用いた窒素酸化物等の除去方法、および(5)この吸着剤を用いた窒素酸化物含有ガスの浄化方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、下記の吸着剤が上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は次のとおりのものである。
(1)鉄およびコバルトの合金を含有することを特徴とする窒素酸化物等の吸着剤。
(2)更にアルカリ金属元素、銅、アルカリ土類金属元素、チタン、ケイ素、ジルコニウム、白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する上記(1)の吸着剤。
(3)各成分を含む吸着剤前駆体を還元剤の存在下で加熱することを特徴とする上記(1)または(2)の吸着剤の製造方法。
(4)上記(1)または(2)の吸着剤を再生する方法であって、該吸着剤を還元剤の存在下で加熱することを特徴とする吸着剤の再生方法。
(5)窒素酸化物等を含むガスを上記(1)または(2)の吸着剤に接触させて窒素酸化物等を吸着除去することを特徴とする窒素酸化物等の除去方法。
(6)窒素酸化物を含むガスを上記(1)または(2)の吸着剤に接触させて、窒素酸化物を吸着除去し、次に窒素酸化物を吸着した吸着剤を還元剤の存在下で加熱して、窒素酸化物を脱離させるとともに吸着剤を再生し、さらに脱離した窒素酸化物を脱硝処理することを特徴とする窒素酸化物を含むガスの浄化方法。
【0006】
上記(6)の発明において、窒素酸化物を含むガスは更に硫黄酸化物を含んでいてもよい。この場合は、窒素酸化物および硫黄酸化物を含むガスを上記(1)または(2)の吸着剤に接触させて、窒素酸化物および硫黄酸化物を吸着除去し、この窒素酸化物および硫黄酸化物を吸着した吸着剤を還元剤の存在下で加熱して、窒素酸化物を脱離させるとともに吸着剤を再生し、さらに脱離した窒素酸化物を脱硝処理する。
【0007】
また、窒素酸化物および硫黄酸化物を含むガスを最初に硫黄酸化物用吸着剤に接触させて硫黄酸化物を吸着除去し、次に残存する窒素酸化物を含むガスを上記(6)の発明に従って処理してもよい。
【0008】
本発明は、このような態様も包含するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の吸着剤は、5ppm以下の低濃度の窒素酸化物等、すなわち窒素酸化物および/または硫黄酸化物を吸着するためのものである。この窒素酸化物はNOxとして示されるものであり、具体的にはNOおよびNO2を挙げることができる。また、硫黄酸化物とはSOxで示されるものであり、具体的にはSO2を挙げることができる。本発明の吸着剤は、窒素酸化物と硫黄酸化物とを同時でも個別でも処理することができるが、特にNO2の吸着除去に優れている。
本発明の吸着剤は、鉄およびコバルトの合金(以下、鉄−コバルト合金と記載する。)を含有すること特徴とする窒素酸化物等の吸着剤である。
一般に合金とは、ある金属に他の金属元素あるいは非金属元素を添加したものであり、その形態には、固溶体、共晶、金属間化合物あるいはそれらが共存するものなどがあるが、本発明における合金とは、固溶体、金属間化合物あるいは固溶体と金属間化合物とが共存するもののうちの何れかを意味する。ここで、固溶体とは、ある一つの結晶相の格子点に存在する原子が全く不規則に別種の原子と置換するか、あるいは格子間隙に別種原子が統計的に分布されるように入り込んだ相であり、2成分あるいは3成分が結晶格子の特定の格子点をそれぞれ占めている場合は、別の新しい結晶相(金属間化合物)とみなし、固溶体とはいわない(例えば、化学大辞典3、706頁、1960年、共立出版株式会社)。また、金属間化合物とは、2種またはそれ以上の金属元素が簡単な整数比で結合し、成分の金属元素とは違った新しい性質を有する化合物のことであり、このとき金属として通常の金属のほかにホウ素、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、セレン、テルルなどのような非金属元素を含めることもある(例えば、化学大辞典2、915頁、1960年、共立出版株式会社)。
本発明の吸着剤は、窒素酸化物等を吸着するに有効な量の鉄−コバルト合金を含んでいればよい。吸着剤に窒素酸化物等を吸着するに有効な量の鉄−コバルト合金が含まれていることは、X線回折による格子面間隔(d値)を測定することにより確認することができる。すなわち、CoFeのd値は、2.018±0.005と1.428±0.005と1.166±0.005とにあり、またCo0.7Fe0.3のd値は、2.008±0.005と1.421±0.005と1.160±0.005とにあるので、吸着剤のX線回折図に上記d値に相当するピークが存在すれば、窒素酸化物等を吸着するに有効な量の鉄−コバルト合金が含まれているということができる。
なお、格子面間隔(d値)の測定装置および測定条件は次のとおりである。
(装置)
リガク RU−300シリーズ
(測定条件)
X線:CuKα1/50kV/300mA
ゴニオメータ:広角ゴニオメータ
アタッチメント:ACS−43(横型)
フィルタ:使用せず
カウンタモノクロメータ:湾曲結晶モノクロメータ
発散スリット:1deg
散乱スリット:1deg
受光スリット:0.3mm
カウンタ:シンチレーションカウンタ
走査モード:連続
スキャンスピード:4°/min
スキャンステップ:0.01°
走査軸:2θ/θ
走査範囲:20〜90°
θオフセット:0°
固定角:0°
(データ処理条件)
平滑化方法:加重平均
平滑化点数:25
バッククランド除去方法:Sonnevelt−Visserの方法
強度比(Kα2/Kα1):0.500
このように、本発明の吸着剤は、CoFeおよび/またはCo0.7Fe0.3なる組成式で示される鉄−コバルト合金を含む吸着剤が好適に用いられる。
本発明の吸着剤は、鉄−コバルト合金のほかに、アルカリ金属元素、銅、アルカリ土類金属元素、チタン、ケイ素、ジルコニウム、白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも1種を含有するのが好ましい。 本発明の吸着剤のうち代表的な吸着剤について以下に詳しく説明するが、本発明はこれら吸着剤に限定されるものではない。
<吸着剤1>
鉄(以下、成分(A)ということもある。)の少なくとも一部とコバルト(以下、成分(B)ということもある)の少なくとも一部とが鉄−コバルト合金を形成している吸着剤。
【0010】
この吸着剤1は、例えば、鉄成分およびコバルト成分を含む吸着剤前駆体を予め調製し、この前駆体を還元剤雰囲気下で加熱して、鉄成分の少なくとも一部とコバルト成分の少なくとも一部とを鉄−コバルト合金に変換することにより得られる。この調製方法については、後で詳しく説明する。
【0011】
鉄−コバルト合金を形成していない残余の鉄成分およびコバルト成分の形態については、金属(単体)、酸化物、複合酸化物、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩などいずれの形態にあってもよい。
【0012】
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜99.5質量%、好ましくは5〜99質量%であり、成分(B)は0.5〜99質量%、好ましくは1〜95質量%である(合計100質量%、以下同じ。)。
【0013】
成分(A)の出発原料としては、鉄の金属(単体)、酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、酢酸塩やシュウ酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。また、成分(B)の出発原料としては、コバルトの金属(単体)、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、酢酸塩やシュウ酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。
【0014】
吸着剤1としては、上記吸着剤のほか、市販または予め調製した鉄−コバルト合金を用いることもできる。
<吸着剤2>
吸着剤1において、さらにアルカリ金属元素(Li、Na、K、RbおよびCsから選ばれる少なくとも1種の元素)(以下、成分(C)ということもある。)を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有する吸着剤。
【0015】
吸着剤1にアルカリ金属元素成分を加えることにより、吸着剤の窒素酸化物等の吸着性能の経時的な低下が抑制され、耐久性が向上する。また、アルカリ金属元素成分は鉄−コバルト合金の生成を容易にする効果がある。
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜98.5質量%、好ましくは5〜98質量%であり、成分(B)は0.5〜98質量%、好ましくは1〜94質量%であり、成分(C)は1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%である。
成分(C)のアルカリ金属元素の形態については特に制限はなく、吸着剤として窒素酸化物等を吸着し得るものであれば、いずれの形態にあってもよい。例えば、水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩の形態で含有される。成分(C)の出発原料としては、各元素の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩、亜硝酸塩などのほか、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ソルビン酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。
<吸着剤3>
吸着剤1において、さらに銅成分(以下、成分(D)ということもある。)を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)および成分(D)を含有する吸着剤。
【0016】
吸着剤1に銅成分を加えることにより、吸着剤の窒素酸化物等の吸着(除去)効率が向上する。
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜98.5質量%、好ましくは5〜98質量%であり、成分(B)は0.5〜98質量%、好ましくは1〜94質量%であり、成分(D)は1〜98.5質量%、好ましくは1〜94質量%である。
【0017】
成分(D)の銅の形態は、上記効果を有するものであればいずれの形態であってもよいが、なかでも、その少なくとも一部が0価または1価の原子価を有することが好ましい。具体的には、(イ)銅の実質的に全てが0価である、(ロ)銅の実質的に全てが1価である、(ハ)銅の一部が0価であり、残余が1価である、(ニ)銅の一部が0価であり、残余が2価である、(ホ)銅の一部が0価であり、残余が1価および2価であるものを挙げることができる。銅は必ずしもその全てが0価または1価である必要はなく、本発明の効果が得られる程度の有効量が0価または1価であればよい。銅成分が0価または1価の形態を有していることは、X線回折による格子面間隔(d値)を測定することにより確認することができる。Cu(0価)のd値は、2.09±0.01と1.81±0.01と1.28±0.01とにあり、Cu2O(1価)のd値は2.47±0.01と2.14±0.01と1.51±0.01とにある。
吸着剤3のなかでも、鉄−コバルト合金、好ましくはCoFeおよび/またはCo0.7Fe0.3なる組成式で示される鉄−コバルト合金と、その少なくとも一部が0価または1価に変換された銅成分とを含有する吸着剤が好適である。
【0018】
上記のような吸着剤は、例えば、後記のように、鉄成分、コバルト成分および銅成分を含有する吸着剤前駆体を予め調製し、この前駆体を還元雰囲気下で加熱処理することにより得られる。
成分(D)の出発原料としては、銅の金属(単体)、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、酢酸塩やシュウ酸塩などの有機酸塩などを用いることができる。
<吸着剤4>
吸着剤1において、さらにアルカリ金属元素および銅を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)を含有する吸着剤。
【0019】
アルカリ金属元素成分および銅成分を加えることにより前記のような効果が得られる。
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜97.5質量%、好ましくは5〜97質量%であり、成分(B)は0.5〜97質量%、好ましくは1〜93質量%であり、成分(C)は1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%であり、成分(D)は1〜97.5質量%、好ましくは1〜93質量%である。
<吸着剤5>
吸着剤1において、さらにアルカリ土類金属元素(Be、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種の元素)、チタン、ケイ素およびジルコニウム(以下、これら元素を総称してアルカリ土類金属元素等という。)から選ばれる少なくとも1種の元素(以下、成分(E)ということもある。)を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)および成分(E)を含有する吸着剤。
【0020】
吸着剤1にアルカリ土類金属元素等成分を加えることにより、吸着剤の窒素酸化物等の吸着(除去)効率が向上する。また、アルカリ土類金属元素等成分は成分元素の分散性を高める効果があるものと考えられる。
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜89.5質量%、好ましくは5〜85質量%であり、成分(B)は0.5〜89質量%、好ましくは1〜81質量%であり、成分(E)は10〜98.5質量%、好ましくは14〜94質量%である。
成分(E)の形態については、窒素酸化物等を吸着する性能が得られる限り、いずれの形態であってもよい。例えば、酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩などとして含有される。成分(E)の出発原料としては、各元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、リン酸塩などを用いることができる。
成分(E)のなかでも、耐久性に優れた吸着剤が得られるという点において、ジルコニウムおよびアルカリ土類金属元素、特にアルカリ土類金属元素が好適に用いられる。
<吸着剤6>
吸着剤1において、さらにアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素等を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(E)を含有する吸着剤。
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜89.5質量%、好ましくは5〜85質量%であり、成分(B)は0.5〜89質量%、好ましくは1〜81質量%であり、成分(C)は1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%であり、成分(E)は9〜97.5質量%、好ましくは13〜93質量%である。<吸着剤7>
吸着剤1において、さらに銅およびアルカリ土類金属元素等を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)、成分(D)および成分(E)を含有する吸着剤。
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜89.5質量%、好ましくは5〜85質量%であり、成分(B)は0.5〜89質量%、好ましくは1〜81質量%であり、成分(D)は1〜89.5質量%、好ましくは1〜81質量%であり、成分(E)は9〜97.5質量%、好ましくは13〜93質量%である。
<吸着剤8>
吸着剤1において、さらにアルカリ金属元素、銅、およびアルカリ土類金属元素等を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)および成分(E)を含有する吸着剤。
吸着剤中の各成分の割合については、成分(A)は1〜89.5質量%、好ましくは5〜85質量%であり、成分(B)は0.5〜89質量%、好ましくは1〜81質量%であり、成分(C)は1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%であり、成分(D)は1〜89.5質量%、好ましくは1〜81質量%であり、成分(E)は8〜96.5質量%、好ましくは12〜92質量%である。
なお、上記吸着剤1〜8における各成分の割合については、成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)は酸化物換算であり、具体的には、鉄はFe2O3、コバルトはCo3O4、銅はCuO、アルカリ金属はX2O(Xはアルカリ金属)、アルカリ土類金属はYO(Yはアルカリ土類金属)として換算する。
<吸着剤9>
吸着剤1、2または5において、さらに白金、金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、マンガン、ニッケル、亜鉛、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも1種の元素、好ましくは白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも1種の元素(以下、成分(F)ということもある。)を加えてなる吸着剤。すなわち、成分(A)、成分(B)および成分(F)、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(F)、または(A)、成分(B)、成分(E)および成分(F)を含有する吸着剤。
【0021】
上記成分(F)の含有量については、吸着剤の各成分の合計量に対し、白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムの場合は金属換算として0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%添加することができる。また、マンガン、ニッケル、亜鉛、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデンおよびタングステンの場合は酸化物換算(MnO2、NiO、ZnO、V2O5、Nb2O5、CrO3、MoO3およびWO3)として0.5〜30質量%、好ましくは1〜20質量%添加することができる。
【0022】
これら元素は、例えば金属、酸化物、複合酸化物などの形態で含有される。これら元素のなかでも、白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムが好ましく、特にルテニウムが好適に用いられる。
【0023】
これら元素成分の出発原料としては、各元素の金属(単体)、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、有機金属塩、酢酸塩やシュウ酸塩などの有機酸塩、アンミン錯体などを用いることができる。
上記吸着剤1〜9のなかでも、吸着剤6および吸着剤8が好ましい。具体的には、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(E)を含有する吸着剤、および成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)および成分(E)を含有する吸着剤が好適に用いられる。
【0024】
本発明の吸着剤は、鉄−コバルト合金が得られる限りいずれの方法によっても調製することができる。以下、吸着剤2および吸着剤8を例に挙げて、代表的な調製方法について説明する。
<吸着剤2>
鉄成分、コバルト成分およびアルカリ金属元素成分を含有する吸着剤前駆体を予め調製し、これを還元剤の存在下に加熱して、鉄の少なくとも一部とコバルトの少なくとも一部とを鉄−コバルト合金、好ましくはCoFeおよび/またはCo0.7Fe0.3なる組成式で示される鉄−コバルト合金に変換する。
【0025】
上記吸着剤前駆体は、例えば、前記の鉄成分およびコバルト成分の出発原料の水溶液、または粉体を一般に用いられている成型助剤とともに混合、攪拌し、押出成型機で成型した後、50〜120℃で乾燥した後、200〜600℃、好ましくは250〜500℃で1〜10時間、好ましくは2〜6時間、空気中または窒素などの不活性ガス中などで焼成して成型体を作製し、これにアルカリ金属元素成分を含浸担持させることにより容易に得られる。この場合、鉄成分は2価および/または3価の酸化物(Fe2O3やFe3O4)、またコバルト成分は2価および/または3価の酸化物(Co3O4やCoO)の形態にある。
【0026】
そのほか、空気中または窒素などの不活性ガス中などでの焼成を行うことなく、成型体にアルカリ金属元素成分を含浸担持させてもよい。この場合、鉄成分については、例えば、水酸化鉄、またコバルト成分については、水酸化コバルトの形態にある。
<吸着剤8>
鉄成分、コバルト成分、アルカリ金属元素成分、銅成分およびアルカリ土類金属元素等成分を含有する吸着剤前駆体を予め調製し、これを還元剤の存在下に加熱して、鉄の少なくとも一部とコバルトの少なくとも一部とを鉄−コバルト合金、好ましくはCoFeおよび/またはCo0.7Fe0.3なる組成式で示される鉄−コバルト合金に変換するとともに、銅成分の少なくとも一部を0価または1価に変換する。
【0027】
上記吸着剤前駆体は、例えば、鉄成分、コバルト成分、アルカリ金属元素成分および銅成分の各々の出発原料の水溶液、または粉体を一般に用いられている成型助剤とともにアルカリ土類金属元素成分に加え、混合、攪拌し、押出成型機で成型した後、50〜120℃で乾燥した後、200〜600℃、好ましくは250〜500℃で1〜10時間、好ましくは2〜6時間、空気中または窒素などの不活性ガス中などで焼成することにより容易に得られる。この場合、少なくとも鉄成分、コバルト成分および銅成分は、それぞれ、鉄の2価および/または3価の酸化物(Fe2O3やFe3O4)、コバルトの2価および/または3価の酸化物(Co3O4やCoO)、および銅の2価の酸化物(CuO)の形態にある。
【0028】
なお、吸着剤2と同様に、空気中または窒素などの不活性ガス中などで焼成を行わなくてもよい。この場合には、少なくとも鉄成分、コバルト成分および銅成分は、それぞれ、鉄の2価および/または3価の化合物、コバルトの2価および/または3価の化合物、および銅の2価の化合物の形態にある。
そのほか、鉄成分、コバルト成分、アルカリ金属元素成分および銅成分のうちの少なくとも一つとアルカリ土類金属元素成分とを含有する成型体を予め作製し、この成型体に残りの成分を含浸担持させてもよい。例えば、鉄成分、コバルト成分、銅成分およびアルカリ土類金属元素成分からなる成型体を上記のように作製した後、アルカリ金属元素成分を含浸担持させる。
【0029】
本発明の吸着剤前駆体とは、前記のように、銅成分を含まない吸着剤の場合には、鉄成分およびコバルト成分に関し、それぞれ、鉄の2価および/または3価化合物、特に鉄の2価および/または3価の酸化物(Fe2O3やFe3O4)およびコバルトの2価および/または3価の化合物、特にコバルトの2価および/または3価の酸化物(Co3O4やCoO)の形態で含有するものを意味する。
【0030】
また、銅成分を含む吸着剤の場合には、鉄成分、コバルト成分および銅成分に関し、それぞれ、鉄の2価および/または3価の化合物、特に鉄の2価および/または3価の酸化物(Fe2O3やFe3O4)、コバルトの2価および/または3価の化合物、特に2価および/または3価の酸化物(Co3O4やCoO)、および銅の2価の化合物、特に2価の酸化物(CuO)の形態で含有するものを意味する。
前記還元剤とは、水素および燃焼性有機化合物を意味する。この燃焼性有機化合物としては、炭化水素類、好ましくは炭素数1〜4の飽和または不飽和の炭化水素類を挙げることができる。本発明では、水素または炭化水素類、特に水素が還元剤として好適に用いられる。上記炭化水素類の代表例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどの飽和または不飽和の炭化水素類を挙げることができる。
上記還元剤は、通常、他のガスで希釈して、例えば、窒素などの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。具体的には、還元剤として水素を用いる場合、水素と窒素、ヘリウムなどの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。この混合ガス中の水素の濃度は、通常、0.1〜20容量%であり、好ましくは0.5〜10容量%である。なお、空気との混合ガスとすることもできるが、一般的には、上記のような不活性ガスとの混合ガスとして使用するのがよい。燃焼性有機化合物の場合にも、窒素などの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。この混合ガス中の燃焼性有機化合物の濃度は、通常、0.001〜1容量%であり、好ましくは0.01〜0.5容量%である。
上記還元剤の希釈に用いることのできるガスとしては、上記の窒素、ヘリウムなどの不活性ガスおよび空気のほかに、水蒸気(H2O)、二酸化炭素ガスなどを挙げることができる。かくして、上記混合ガスの代表例としては、水素と不活性ガス、燃焼性有機化合物と不活性ガスとの組み合わせを挙げることができる。
加熱温度は、通常、200〜600℃であり、好ましくは300〜500℃、より好ましくは300〜400℃である。なお、吸着剤前駆体は、通常、常温であるが、上記加熱温度までの昇温速度には特に制限はなく、適宜決定することができる。加熱時間は、一概には特定できないが、通常、30分〜10時間、好ましくは30〜5時間の範囲で適宜選ぶことができる。
本発明の加熱処理は、還元剤の通風下で行うのが好ましい。還元剤の通風下で加熱処理を行う場合、通風の程度については特に制限はなく、新たな還元剤が供給されるような条件下にすればよい。
本発明の吸着剤の形状については特に制限はなく、円柱状、円筒状、球状、板状、ハニカム状、その他一体に成型されたもののなかから適宜選択することができる。この成型には、一般的な成型方法、例えば打錠成型、押出成型などを用いることができる。球状の場合、その平均粒径は、通常、1〜10mmである。ハニカム状吸着剤の場合は、いわゆるモノリス担体と同様であり、押出成型法やシート状素子を巻き固める方法などにより製造することができる。そのガス通過口(セル形状)の形は、6角形、4角形、3角形、またはコルゲーション形のいずれであってもよい。セル密度(セル数/単位断面積)は、通常、25〜800セル/平方インチ(×2.54cm)であり、好ましくは25〜500セル/平方インチ(×2.54cm)である。
本発明の方法によれば、窒素酸化物等を含むガスを上記吸着剤に接触させて窒素酸化物等を吸着せしめてガスを浄化する。上記ガスの代表例は、前記の道路トンネルなどからの換気ガスないしは大気ガスであり、本発明の方法は、窒素酸化物および硫黄酸化物の濃度が5ppm以下という濃度が低いガスからの窒素酸化物および硫黄酸化物の吸着除去に好適に用いられる。
上記ガスと吸着剤との接触方法については特に制限はなく、通常、この吸着剤からなる層中にガスを導入して行う。この処理条件については、処理すべきガスの性状などにより異なるので一概に特定できないが、例えば、吸着剤層に供給するガスの温度は、通常、0〜100℃であり、特に0〜50℃とするのが好ましい。また、吸着剤層に供給するガスの空間速度(SV)は、通常、1,000〜100,000hr−1(STP)であり、4,000〜60,000hr−1(STP)の範囲が好ましい。
本発明の再生とは、窒素酸化物等を吸着して吸着力の低下した吸着剤を再生するというものである。例えば、道路トンネルなどにおける換気ガスもしくは大気中には、通常、窒素酸化物と硫黄酸化物が含まれているので、このような所で使用する吸着剤は、窒素酸化物と硫黄酸化物とを吸着して吸着力が低下するが、本発明によれば、このように吸着された窒素酸化物を効率よく脱離させることができる。
本発明の再生処理に用いる還元剤とは、水素および燃焼性有機化合物を意味する。燃焼性有機化合物の代表例としては、炭化水素類、好ましくは炭素数1〜4の飽和または不飽和の炭化水素類、または、含酸素有機化合物、具体的には脂肪酸類、アルコール類およびアルデヒド類、好ましくは炭素数1〜4の低級脂肪酸、炭素数1〜4の低級アルコール類、炭素数1〜4の低級アルデヒド類をを挙げることができる。これらの中でも、炭素数1〜4の飽和または不飽和の炭化水素類、低級脂肪酸類が好適に用いられる。上記燃焼性有機化合物は単独でも、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。本発明では水素、炭素数1〜4の飽和または不飽和の炭化水素類または低級脂肪酸類、特に水素が還元剤として好適に用いられる。
上記炭化水素類の代表例としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどの飽和または不飽和の炭化水素類を挙げることができる。また、上記低級脂肪酸の代表例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸などのモノまたはジー、もしくは飽和または不飽和のカルボン酸を挙げることができる。
上記還元剤は、通常、他のガスで希釈して、例えば、窒素などの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。具体的には、還元剤として水素を用いる場合、水素と窒素、ヘリウムなどの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。この混合ガス中の水素の濃度は、通常、0.1〜20容量%であり、好ましくは0.5〜10容量%である。なお、空気との混合ガスとすることもできるが、一般的には、上記のような不活性ガスとの混合ガスとして使用するのがよい。燃焼性有機化合物の場合にも、窒素などの不活性ガスとの混合ガスとして使用する。この混合ガス中の燃焼性有機化合物の濃度は、通常、0.001〜1容量%であり、好ましくは0.01〜0.5容量%である。なお、燃焼性有機化合物が固体の場合には、水に溶解させて、水溶液として噴霧して、供給すればよい。
上記還元剤の希釈に用いることのできるガスとしては、上記の窒素、ヘリウムなどの不活性ガスおよび空気のほかに、水蒸気(H2O)、二酸化炭素ガスなどを挙げることができる。かくして、上記混合ガスの代表例としては、水素と不活性ガス、燃焼性有機化合物と不活性ガスとの組み合わせを挙げることができる。
再生処理における加熱温度については、本発明によれば、600℃以下で再生可能である。加熱温度は、通常、200〜600℃であり、好ましくは300〜500℃、より好ましくは300〜450である。なお、再生すべき吸着剤は、通常、常温であるが、上記加熱温度までの昇温速度には特に制限はなく、適宜決定することができる。
加熱時間は、窒素酸化物等の吸着の程度、加熱温度などによって変わるので一概には特定できないが、通常、30分〜10時間、好ましくは30〜5時間の範囲で適宜選ぶことができる。
本発明の再生処理は、還元剤の通風下で行うのが好ましい。還元剤の通風下で再生処理を行う場合、通風の程度については特に制限はなく、新たな還元剤が供給されるような条件下にすればよい。一般的には、吸着剤を充填した装置(吸着剤層)に、その入口側から還元剤を導入して、出口側に流通させればよい。
本発明の再生処理によって再生した吸着剤は、窒素酸化物等の吸着除去に再利用することができる。
吸着剤の再生処理の際には、脱離した窒素酸化物を含むガス(排ガス)が発生するので、この排ガス中の窒素酸化物を除去して無害化した後に、大気中に放出するのが好ましい。この排ガス中の窒素酸化物の除去方法、すなわち脱硝方法には特に制限がなく、従来公知の脱硝方法によって行うことができる。具体的には、例えば、排ガスにアンモニアを還元剤として添加し、脱硝触媒に接触させて窒素酸化物を窒素と水に還元すればよい。
窒素酸化物のほかに硫黄酸化物を含有するガスから窒素酸化物を効率よく除去してガスを浄化するに際しては、予め硫黄酸化物を除去した後、本発明の吸着剤に接触させて窒素酸化物を吸着除去すると吸着剤の耐久性が向上し、長期にわたって効果的に窒素酸化物を除去することができる。
硫黄酸化物の除去方法には特に制限はなく、ガスを水洗して除去する方法、ガスを硫黄酸化物吸着用の吸着剤に接触させて除去する方法などを用いることができる。なかでも、装置がコンパクトになる、消費エネルギーが少ないなどの点から、硫黄酸化物用吸着剤を用いる方法が好適に用いられる。
上記硫黄酸化物用吸着剤としては、SOxを吸着し得るものであればいずれでもよく、なかでも活性炭、遷移金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1種を含有する吸着剤が好適に用いられる。遷移金属の代表例としては、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Zn、Cuなどを挙げることができる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属の代表例としては、Li、Na、KおよびMg、Ca、Baを挙げることができる。これら元素の吸着剤中の形態については特に制限はなく、SOxを吸着し得るものであれば、どのような形態であってもよい。具体的には、例えば、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、塩化物および水酸化物を挙げることができる。
上記硫黄酸化物用吸着剤は、担体として、アルカリ土類金属、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、シリカ−アルミナ、アルミナ−ジルコニア、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニアおよびチタニア−ジルコニアの少なくとも1種を含んでいてもよい。
本発明の好適な態様は、窒素酸化物および硫黄酸化物を含むガスを最初に硫黄酸化物用吸着剤に接触させて硫黄酸化物を吸着除去し、次いで本発明の吸着剤に接触させて窒素酸化物を吸着除去してガスを浄化することからなるものである。これにより、本発明の吸着剤の耐久性が向上する。
【0031】
【発明の効果】
本発明の吸着剤は、窒素酸化物等、特に低濃度の窒素酸化物等に対して高い吸着性能を有し、しかも優れた耐久性を示す。
【0032】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、X線回折は下記の装置を用い、また下記の条件下に行った。
(装置)
リガク RU−300シリーズ
(測定条件)
X線:CuKα1/50kV/300mA
ゴニオメータ:広角ゴニオメータ
アタッチメント:ACS−43(横型)
フィルタ:使用せず
カウンタモノクロメータ:湾曲結晶モノクロメータ
発散スリット:1deg
散乱スリット:1deg
受光スリット:0.3mm
カウンタ:シンチレーションカウンタ
走査モード:連続
スキャンスピード:4°/min
スキャンステップ:0.01°
走査軸:2θ/θ
走査範囲:20〜90°
θオフセット:0°
固定角:0°
(データ処理条件)
平滑化方法:加重平均
平滑化点数:25
バッククランド除去方法:Sonnevelt−Visserの方法
強度比(Kα2/Kα1):0.500
実施例1
α−Fe2O3300.0g、Co3O4150.0gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを6N−酢酸カリウム水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥してペレット状の吸着剤前駆体を得た。この吸着剤前駆体の組成は、Fe:Co:K(Fe2O3:Co3O4:K2Oとして)=59.8:29.9:10.3(質量%)であった。
次いで、この吸着剤前駆体を400℃で2時間、水素/窒素(5/95容量%)の流通下で加熱処理して吸着剤(1)を得た。吸着剤(1)のX線回折図を図1に示す。図1から吸着剤(1)はCoFeおよび/またはCo0.7Fe0.3を含有していることがわかる。
実施例2
α−Fe2O3225.0g、Co3O4112.5g、CuO112.5gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを6N−酢酸カリウム水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥してペレット状の吸着剤前駆体を得た。この吸着剤前駆体の組成は、Fe:Co:K:Cu(Fe2O3:Co3O4:K2O:CuOとして)=44.9:22.4:10.3:22.4(質量%)であった。
次いで、この吸着剤前駆体を400℃で2時間、水素/窒素(5/95容量%)の流通下で加熱処理して吸着剤(2)を得た。吸着剤(2)のX線回折を図2に示す。図2から吸着剤(2)はCoFeおよび/またはCo0.7Fe0.3と0価の銅を含有していることがわかる。
実施例3
α−Fe2O390.0g、Co3O445.0g、炭酸カルシウム315.0gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを6N−酢酸カリウム水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥してペレット状の吸着剤前駆体を得た。この吸着剤前駆体の組成は、Fe:Co:K:Ca(Fe2O3:Co3O4:K2O:CaOとして)=25.9:13.0:10.3:50.8(質量%)であった。
次いで、この吸着剤前駆体を400℃で2時間、水素/窒素(5/95容量%)の流通下で加熱処理して吸着剤(3)を得た。
実施例4
α−Fe2O390.0g、Co3O445.0g、CuO45.0g、炭酸カルシウム270.0gに適量の水を添加しつつニーダーでよく混合した後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成型した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、450℃で5時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを6N−酢酸カリウム水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥してペレット状の吸着剤前駆体を得た。この吸着剤前駆体の組成は、Fe:Co:K:Cu:Ca(Fe2O3:Co3O4:K2O:CuO:CaOとして)=24.4:12.2:10.3:12.2:40.9(質量%)であった。
次いで、この吸着剤前駆体を400℃で2時間、水素/窒素(5/95容量%)の流通下で加熱処理して吸着剤(4)を得た。
比較例1
実施例1において、水素/窒素(5/95容量%)の流通下での加熱処理の代わりに、加熱処理を窒素雰囲気下で行った以外は実施例1と同様にして表1に示す組成の吸着剤(比較1)のペレットを得た。なお、比較1の吸着剤のX線回折を図3に示す。図3から吸着剤(比較1)はCoFeおよびCo0.7Fe0.3を含有していないことがわかる。
比較例2および3
実施例2および4において、水素/窒素(5/95容量%)の流通下での加熱処理の代わりに、加熱処理を窒素雰囲気下で行った以外は実施例2および4と同様にして表1に示す組成の吸着剤(比較2)および(比較3)のペレットを得た。
上記のようにして得られた吸着剤(1)〜(4)および比較吸着剤(比較1)〜(比較3)の組成をまとめて表1に示す。
なお、表1において、成分A、B、C、DおよびEは、酸化物として示してある。
実施例5
吸着剤(1)〜(4)および比較吸着剤(比較1)〜(比較3)の窒素酸化物吸着能および硫黄酸化物吸着能を下記の方法により評価した。
(評価方法(1))
吸着剤17.3mlを内径30mmのガラス製反応管に充填した。この吸着剤層に下記組成の合成ガス(A)を下記条件下に導入した。
合成ガス(A)組成
一酸化窒素(NO):0.9ppm、二酸化窒素(NO2):0.1ppm、二酸化硫黄(SO2):0.05ppm、H2O:1.9容量%、残り:空気
処理条件
ガス量:17.3NL/min、処理温度:25℃、空間速度(SV):60,000hr−1(STP)、ガス湿度:60%RH
上記合成ガスを導入してから1時間後、上記吸着剤層の入口および出口における合成ガス中の窒素酸化物(NO2)濃度を化学発光式NOx計により、また、硫黄酸化物(SO2)濃度を紫外線吸収式SO2計で測定し、次式に従ってNO2およびSO2除去率を算出した。
NO2除去率(%)={(入口NO2濃度−出口NO2濃度)/(入口NO2濃度)}×100
SO2除去率(%)={(入口SO2濃度−出口SO2濃度)/(入口SO2濃度)}×100
合成ガス(A)を導入してから1時間後、上記吸着剤層の入口および出口における合成ガス中の窒素酸化物(NO2)濃度および硫黄酸化物(SO2)濃度を測定し、NO2およびSO2除去率を算出した。評価試験の結果を表2に示す。(評価方法(2))
評価方法(1)と同様の方法で各吸着剤の窒素酸化物吸着能および硫黄酸化物吸着能を測定した後、ガス組成を変更して下記の加速耐久試験を行った。
<加速耐久試験>
吸着剤層に下記組成の合成ガス(B)を下記条件下に導入した。
合成ガス(B)組成
一酸化窒素(NO):2.7ppm、二酸化窒素(NO2):0.3ppm、二酸化硫黄(SO2):0.15ppm、H2O:1.9容量%、残り:空気
処理条件
ガス量:17.3NL/min、処理温度:25℃、空間速度(SV):60,000hr−1(STP)、ガス湿度:60%RH
上記加速耐久試験を200時間行った後、合成ガス(A)を導入してから1時間後、上記吸着剤層の入口および出口における合成ガス中の窒素酸化物(NO2)濃度および硫黄酸化物(SO2)濃度を評価方法(1)と同様にして測定し、NO2およびSO2除去率を算出した。評価試験の結果を表2に示す。
実施例6
実施例5において加速耐久試験後の吸着剤(1)を用いて再生試験を行い、再生後の窒素酸化物除去能および硫黄酸化物除去能を下記の方法により評価した。<再生試験>
加速耐久試験後の各吸着剤に下記組成の再生ガスを下記条件下に導入した。
再生ガス組成
水素:5容量%、残り窒素
処理条件
ガス量:1.7NL/min、昇温速度:250℃/hr、処理温度:400℃、処理時間:1時間
上記再生を行った後、室温まで冷却し、評価方法(1)と同様の方法で吸着剤の窒素酸化物吸着能および硫黄酸化物吸着能を測定して、再生後の吸着剤の吸着性能を評価した。結果を表3に示す。
実施例7および8
実施例6において、吸着剤(1)の代わりに吸着剤(3)および(4)を用いた以外は実施例6と同様にして、その窒素酸化物吸着能および硫黄酸化物吸着能を評価した。結果を表3に示す。
表2および表3の結果から再生後には吸着性能が回復していることがわかる。
実施例9
(硫黄酸化物用吸着剤の調製)
水400リットルにアンモニア水(NH3、25%)286リットルを添加し、これにスノーテックスNCS−30(日産化学(株)製シリカゾル、SiO2を約30質量%含有)を24kg加えた。得られた溶液中に硫酸チタニルの硫酸水溶液(TiO2として250g/リットル含有。全硫酸濃度1,100g/リットル)153リットルを水300リットルに添加して希釈したチタン含有硫酸水溶液を攪拌下、徐々に添加し共沈ゲルを得た。このゲルを濾過し、水洗した後、200℃で10時間乾燥した。次いで、600℃で6時間空気雰囲気下で焼成し、更にハンマーミルを用いて粉砕し、分級機で分級して平均粒径10μmの粉体を得た。得られた粉体(以下、TS−1と称す)の組成はTi:Si=4:1(原子比)であった。
TS−1粉体500gに適量の水を添加しつつニーダーでよく練った後、押出成型機で直径5mm、長さ5mmのペレット状に成形した。このペレットを100℃で10時間乾燥した後、350℃で3時間空気雰囲気下で焼成した。さらに、このペレットを6N−炭酸ナトリウム水溶液に2分間含浸した後、120℃で5時間乾燥した。このようにして得られた硫黄酸化物用吸着剤の組成は、TS−1:Na(TS−1:Na2Oとして)=76.1:23.9(質量%)であった。
(評価方法)
実施例5の評価方法(1)および評価方法(2)において、ガスの流れに対して前段に上記硫黄酸化物用吸着剤を19ml、後段に実施例3で得た吸着剤(3)を17.3ml充填した以外は実施例5の評価方法(1)および評価方法(2)と同様にして、その窒素酸化物吸着能および硫黄酸化物吸着能を評価した。結果を表4に示す。
表2および表4の結果より、前段に硫黄酸化物用吸着剤を設置することにより吸着剤(3)の耐久性能が向上することがわかる。
実施例10
実施例9の評価方法において、後段の吸着剤として実施例4で得た吸着剤(4)を用いた以外は実施例9と同様にして、その窒素酸化物吸着能および硫黄酸化物吸着能を評価した。結果を表4に示す。
表2および表4の結果より、前段に硫黄酸化物用吸着剤を設置することにより吸着剤(4)の耐久性能が向上することがわかる。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた吸着剤(1)のX線回折図である。
【図2】実施例2で得られた吸着剤(2)のX線回折図である。
【図3】比較用吸着剤(比較1)のX線回折図である。
Claims (6)
- 鉄およびコバルトの合金を含有することを特徴とする窒素酸化物等の吸着剤。
- 更にアルカリ金属元素、銅、アルカリ土類金属元素、チタン、ケイ素、ジルコニウム、白金、金、ルテニウム、ロジウムおよびパラジウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する請求項1記載の吸着剤。
- 各成分を含む吸着剤前駆体を還元剤の存在下で加熱することを特徴とする請求項1または2の吸着剤の製造方法。
- 請求項1または2の吸着剤を再生する方法であって、該吸着剤を還元剤の存在下で加熱することを特徴とする吸着剤の再生方法。
- 窒素酸化物等を含むガスを請求項1または2の吸着剤に接触させて窒素酸化物等を吸着除去することを特徴とする窒素酸化物等の除去方法。
- 窒素酸化物を含むガスを請求項1または2の吸着剤に接触させて、窒素酸化物を吸着除去し、次に窒素酸化物を吸着した吸着剤を還元剤の存在下で加熱して、窒素酸化物を脱離させるとともに吸着剤を再生し、さらに脱離した窒素酸化物を脱硝処理することを特徴とする窒素酸化物を含むガスの浄化方法。
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JP2003025758A JP2004237140A (ja) | 2003-02-03 | 2003-02-03 | 窒素酸化物等の吸着剤、その製造および再生方法、窒素酸化物等の除去方法、ならびに窒素酸化物含有ガスの浄化方法 |
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JP2006192380A (ja) * | 2005-01-14 | 2006-07-27 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | 気体吸着合金 |
CN108178135A (zh) * | 2017-12-25 | 2018-06-19 | 黄华丽 | 一种脱硝固体产物的处理方法和装置 |
-
2003
- 2003-02-03 JP JP2003025758A patent/JP2004237140A/ja not_active Withdrawn
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