JP3546460B2 - 軸受ブラケットの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、軸受ブラケットの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
電気ドリルなどの電動工具にあっては、通常、図7に示すように、内部にモータ(100) が設けられ、該モータ(100) における回転子(101) に伴ってシャフト (102) が回転し、この回転により各種の工具ビット(図示せず)が回転する構造となっている。なお、回転子(101) は左右両側(図では左側のみ)において軸受(103) により回転自在に支承され、またこれら軸受(103) は、軸受ブラケット(104) における軸受収納空間(軸受ハウジング)、すなわち軸受穴(105) に配され保持される。
【0003】
ところで、前記した軸受ブラケット(104) が、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛合金などよりなるダイキャストで構成されたタイプの電動工具が数多く存する。このような電動工具にあっては、軸受(103) の正確な位置決めのため、該軸受(103) を軸受穴(105) 内に配する前に軸受穴(105) を正確に(精度良く)加工しなければならないが、このための手段として、従来より切削加工法という面倒で生産性の低下を招く加工方法が採られていた。
【0004】
さらに、前記切削加工方法を採用することにより、またこれによって生産性が上がらないことにより、軸受ブラケットにかかるコストが増大し、電動工具など最終製品のコスト高を招いた。
【0005】
[発明の目的]
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、軸受穴を切削加工することなく正確な軸受の位置決めが達成されてなる軸受ブラケットの製造方法を提供するところにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の軸受ブラケットの製造方法は、ダイカストよりなる軸受ブラケットの製造方法であって、軸受穴の内壁面から突出する複数のリブを前記軸受ブラケットと一体成形し、前記複数のリブにより形成する軸受収納空間の大きさは、実際に配設しようとする軸受の大きさより小さく、前記軸受穴内に軸受を配する前に、前記リブを押圧してリブ突出度を前記軸受に見合った寸法に矯正することを特徴とする製造方法である。
【0007】
請求項2のように、前記リブが、前記軸受穴の内壁面における周面と側面の双方に設けられていることが好適である。
【0008】
請求項3のように、前記リブにおける突出端部が、断面三角形状に尖っている
ことが好ましい。
【0009】
請求項4のように、配すべき軸受と同形状をなす部材を前記軸受穴に圧入することにより、複数のリブの突出度を一度に矯正できるようにすることも可能である。
【0010】
【作用】
請求項1記載の軸受ブラケットの製造方法において、前述したように軸受穴を切削加工して高い精度を得る代わりに、上記軸受ブラケットと一体成形した複数個のリブを押圧して該リブの突出度を前記軸受に見合った寸法に矯正する。このように、軸受穴に軸受を配する際において、該軸受穴を面倒な切削加工する必要がないので、大幅な加工時間の短縮化がなされ、生産性の向上がはかれる。
【0011】
なお、上記複数個のリブにより形成する仮想軸受収納空間の大きさを、実際に配設しようとする軸受の大きさより僅かに小さくしておく必要がある。
【0012】
軸受穴の内壁面にいくつのリブを設けるかは、該リブの大きさ等により異なり一概にはいえないが、4〜24個のリブを設けることが好適である。4個未満の場合、加工精度を高めることが難しくなり、24個を超える場合、比較的大きな押圧力が必要となり、加工時間が長くなる可能性が生じる。
【0013】
また、複数のリブを軸受穴の内壁面のどの箇所に設けるかは特に限定はなく、前記内壁面における内周面に設けてもよいし、円形状をなす側面に設けてもよいし、双方に設けてもよい。複数のリブを前記内周面に設ける場合、軸方向に延びるように設けることが、加工しやすいという点で好ましい。特に、内周面と側面との両方にリブを設ける場合、軸受穴における軸方向および半径方向の両方向の精度確保が可能となる(請求項2)。
【0014】
また、内周面と側面との両方にリブを設ける場合、内周面に設けたリブを側面に設けたリブと連続させて配してもよいし、両者不連続に配してもよい。いずれにしろ、複数のリブを、所定間隔ごとに配することが、高い精度が得られるとい
う点で好ましい。
【0015】
複数のリブ(押圧する前)における突出端部は各々、断面三角形状に尖っていることが、比較的小さな圧力でもリブ突出度が矯正できるという点で好ましい(請求項3)。
【0016】
前記リブを押圧する方法としては特に限定はないが、たとえば、矯正用の治具(これの先端部には、配しようとする軸受と同じ形状をなす硬質部材が取り付けられている)を軸受穴に圧入する方法が、複数個のリブを一度に押圧することができ作業能率が飛躍的に向上するという点で好ましい(請求項4)。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0018】
図1は軸受ブラケット(10)の要部拡大斜視図であり、図2はその正面図である。この軸受ブラケット(10)は円盤状をなし、例えば電気ドリル、電気グラインダ、電気カンナ、電気サンダ、電気ドライバーなどの電動工具におけるものであり、アルミニウム合金、亜鉛合金等の金属を通常の方法により鋳造して得られたもの、すなわちダイカストである。
【0019】
図に示されているように、軸受ブラケット(10)には軸受収納空間(軸受ハウジング)となる軸受穴(12)が設けられており、その周囲は円環状膨出部(16)となっている。軸受穴(12)の内壁面(14)は、前記円環状膨出部(16)の内面に相当する周面(18)と、円形状をなす側面(20)とにより構成されており、周面(18)から複数のリブ(22,22,…)が突出しているとともに、側面(20)からも複数のリブ(23,23,…)が突出している。
【0020】
前記複数のリブ(22)(23)は軸受ブラケット(10)と一体成形されたものである。周面(18)から突出するリブ(22)は各々軸方向に延びている。前記リブ(22)における軸受穴開口部側の端部は、該開口部に近づくに従って、次第にそ
の突出度が小さくなる傾斜部(22a)が形成している。これは、後述する矯正用
部材の嵌入を容易にするための工夫である。また、側面(20)から突出するリブ(23)は各々半径方向に延びており、その長さは各々、側面半径の略1/2 である。これらリブ(22)(23)により形成する仮想軸受収納空間の大きさは、実際に配設しようとする軸受の大きさより僅かに小さい。
【0021】
周面(18)から突出する複数のリブ(22)のうちの1つと、側面(20)から突出する複数のリブ(23)の1つとが互いに連続することにより1つのL字状をなすリブ体(24)を形成しており、このようなリブ体(24)が、軸受穴(12)において円周方向所定間隔ごとに12個(本)設けられている。
【0022】
また、リブ(22)(23)の突出端部(25)は、図に示されているように、断面三角形状に尖っており、そのなす角度は、例えば20〜70°である。
【0023】
なお、本実施例にあっては、軸受穴(12)のみならず、インロー部にもリブ体(26)が設けられている。すなわち、前記した円環状膨出部(16)の外面(16a)から突出する複数のL字状のリブ体(26)が円周方向所定間隔ごとに8個設けられている。この箇所は、例えばモータにおける固定子のコーナーが当接する箇所である(図7参照)。
【0024】
前記したリブ体(26)も、軸受穴(12)に設けたリブ(22)(23)と同様、その突出端部(25)が断面三角形状に尖っている。
【0025】
さて、上記構成の軸受穴(12)に軸受を配設する分けであるが、その前に、リブ(22)(23)における突出端部(25)を、配すべき軸受と同形状をなす硬質の矯正用部材を用いて押圧して該リブ(22)(23)を所定の寸法に矯正し、これにより該リブ(22)(23)の突出寸法を配設しようとする軸受に見合った寸法に調整する必要がある。
【0026】
すなわち、図3に示すように、エアーシリンダ、油圧シリンダー等の加圧装置(図示せず)より延びるストローク軸(30)の先端に、これから配設しようとする軸受と同形状をなす硬質の矯正用部材(32)を取り付けて該矯正用部材(32)を軸受穴(12)に対し接離自在となし、該矯正用部材(32)を軸受穴(12)内に圧入(嵌入)することによりリブ(22)(23)の突出端部(25)を押圧する。リブ(22)(23)を押圧する際、矯正用部材(32)を用いることは必ずしも必要で
はないが、このようにすることにより、複数のリブ(22)(23)の突出度を一度
に矯正することができるので好適である。
【0027】
そして、軸受穴(12)におけるリブ(22)(23)の矯正がなされた後(図4参照)は、通常の工程に従い、軸受穴(12)を切削加工した従来の場合と同様の作業を進めればよい。
【0028】
なお、インロー部に設けたリブ体(26)についても上記と同様であり、固定子鉄心のフレームに見立てた矯正用部材(図示せず)を用いて前記リブ体(26)の突出寸法を調整すればよい。
【0029】
インロー部に対する加工は、軸受穴(12)に対する加工と同時に行なってもよい。すなわち、図5に示すように、インロー部(40)に対する矯正用部材と、軸受穴(12)に対する矯正用部材とを1つの部材(42)により構成し、インロー部(40)に設けたリブ体(26)に対する押圧と、軸受穴(12)におけるリブ(22)(23)に対する押圧とを1つの工程で行なうことが、精度が高まるという点で好適である。もちろん、これら別々に行なっていもよい。別々に行なう場合、インロー部(40)に設けたリブ体(26)に対する押圧が終了したあと、軸受穴(12)におけるリブ(22)(23)に対する押圧を行なってもよいし、その逆でも構わない。
【0030】
上記実施例では、突出端部(25)が断面三角形状に尖ったリブ(22)(23)を軸受ハウジング(10)に設けたが、これに限らず、図6に示すように、断面四角形状のリブ(22´)を軸受穴(12)の周面(18)に軸方向に延びるように設けることもできる。
【0031】
また図示は省略するが、上記軸受ブラケット(10)における側面(20)の中央に、モータのシャフトが挿通される貫通孔を設けることもできる。
【0032】
【発明の効果】
本発明の軸受ブラケットの製造方法によれば、軸受ブラケットと一体成形した複数個のリブを押圧して、該リブの突出度を前記軸受に見合った寸法に矯正するので、面倒な切削加工が不要となり、大幅な加工時間の短縮化がなされ、生産性の向上がはかれる(請求項1)。
【0033】
請求項2に記載の製造方法のように、軸受穴の内壁面における内周面と側面と
の双方にリブを設けた場合、軸受穴における軸方向および半径方向の両方向の精
度確保が可能となる。
【0034】
請求項3に記載の製造方法のように、複数のリブにおける突出端部が各々、断面三角形状に尖っていれば、比較的小さな圧力でもリブ突出度が矯正できる。
【0035】
請求項4に記載の製造方法のように、配すべき軸受と同形状をなす部材を前記軸受穴に圧入することにより、複数のリブの突出度を一度に矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す軸受ブラケットの要部拡大斜視図である。
【図2】前図の正面図である。
【図3】矯正用部材を用いてリブを押圧し、これの突出度を矯正しようとする状態を示す側面図である。
【図4】リブを押圧し、その突出度が矯正された状態を示す模式拡大断面図である。
【図5】軸受穴に設けたリブに対する押圧と、インロー部に設けたリブに対する押圧とを、1つの矯正用部材により1工程として行なう状態を示す側面図である。
【図6】形状を変えたリブを示す拡大正面図である。
【図7】電気ドリルなどの電動工具の内部構造を示した部分平面図である。
【符号の説明】
10……軸受ブラケット
12……軸受穴
14……(軸受穴の)内壁面
18……(軸受穴内壁面における)周面
20……(軸受穴内壁面における)側面
22、23……リブ
25……突出端部
32……矯正用部材
Claims (4)
- ダイカストよりなる軸受ブラケットの製造方法であって、
軸受穴の内壁面から突出する複数のリブを前記軸受ブラケットと一体成形し、
前記複数のリブにより形成する軸受収納空間の大きさは、実際に配設しようとする軸受の大きさより小さく、
前記軸受穴内に軸受を配する前に、前記リブを押圧してリブ突出度を前記軸受に見合った寸法に矯正することを特徴とする軸受ブラケットの製造方法。 - 前記リブが、前記軸受穴の内壁面における周面と側面の双方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記リブにおける突出端部が、断面三角形状に尖っていることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
- 配すべき軸受と同形状をなす部材を前記軸受穴に圧入することにより、複数のリブの突出度を一度に矯正できるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
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JP02263494A JP3546460B2 (ja) | 1994-02-21 | 1994-02-21 | 軸受ブラケットの製造方法 |
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1994
- 1994-02-21 JP JP02263494A patent/JP3546460B2/ja not_active Expired - Fee Related
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