JP3545944B2 - (メタ)アクリル系プレミックス、(メタ)アクリル系smc又はbmc、及び(メタ)アクリル系人工大理石の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形加工性に優れた(メタ)アクリル系プレミックス、高温成形に適し、成形加工性に優れ、増粘性が良好で、(メタ)アクリル系人工大理石の原料として特に有用な(メタ)アクリル系SMC又はBMC、及び、生産性が高く、外観、寸法安定性、耐熱水性、耐候性等の良好な(メタ)アクリル系人工大理石の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
(メタ)アクリル系樹脂に水酸化アルミニウム等の無機充填剤を配合した(メタ)アクリル系人工大理石は、優れた成形外観、柔らかな手触り及び耐候性等の各種の卓越した機能特性を有しており、キッチンカウンター等のカウンター類、洗面化粧台、防水パン、その他建築用途に広く使用されている。これらは一般に、(メタ)アクリル系シラップに無機充填剤を分散させたいわゆるプレミックスを成形型内に充填し、これを比較的低温で硬化重合させる注型法で製造されている。しかし、この(メタ)アクリル系シラップは沸点が低いので、硬化温度を低くせざるを得ず、これに起因して成形時間に長時間を要するので生産性が低く、また、プレミックスの型内への充填性に問題があるので成形品の形状が制限されるという欠点を有する。
【0003】
これらの問題を改良するため、樹脂シラップを増粘剤で増粘させて得られるSMC(シート・モールディング・コンパウンド)又はBMC(バルク・モールディング・コンパウンド)を加熱加圧成形することによって、(メタ)アクリル系人工大理石を短時間で製造する方法が、従来よりなされている。
【0004】
例えば、特開平5−32720号公報には、懸濁重合によって得られる特定の膨潤度を有する架橋重合体粉末を(メタ)アクリル系シラップに配合した、取り扱い性、成形加工性が良好な人工大理石用(メタ)アクリル系SMC又はBMCが開示されている。また、特開平6−298883号公報には、(メタ)アクリル系シラップに、この(メタ)アクリル系シラップに対して難溶性の熱可塑性(メタ)アクリル系樹脂粉末を配合した、加熱硬化時の低収縮性に優れる人工大理石用(メタ)アクリル系SMC又はBMCが開示されている。さらに、特開平6−313019号公報には、乳化重合で得られる架橋重合体を噴霧乾燥処理した樹脂粉末を(メタ)アクリル系シラップに配合することによって、成型時のクラック発生を防止し、成形品の外観や増粘安定性を向上させた人工大理石用(メタ)アクリル系SMC又はBMCが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これら従来技術におけるような(メタ)アクリル系SMC又はBMCを用いて人工大理石を製造しようとすると、重合時の収縮によって成形物表面にヒケが発生したり、成形品寸法が金型よりも非常に小さくなり、成形品寸法公差から外れるという不具合が発生しやすい。また、これら公報に開示されている成形品は、すべて厚みの均一な平板であり、これらに開示されている材料を用いて厚みに肉厚変化のある成形品を成形する場合や、成形品にインサートねじを入れて成形する場合には、インサートねじの表側や肉厚変化部でヒケ・白化が生じるという不具合が発生しやすい。このような傾向は、短時間で成形品を製造するために硬化温度を高くした場合において特に顕著である。
【0006】
また、これら従来技術における(メタ)アクリル系人工大理石は、耐熱水性や耐候性に劣る傾向にあり、特に高度な耐熱水性が要求されるバスタブ等の用途、耐候性が要求される屋外での用途等には使用が困難である。
【0007】
さらに、これら従来技術における(メタ)アクリル系SMC又はBMCは、増粘させるために長時間(24時間以上)の熟成が必要であり、生産性が低いという問題点がある。
【0008】
本発明の目的は、成形品の線収縮率が低く、寸法安定性が良好であり、インサートねじの表側や肉厚変化部でのヒケ・白化の発生がない、成形加工性に優れた(メタ)アクリル系人工大理石の原料として有用な(メタ)アクリル系プレミックス;さらに高温成形に適し、成形加工性に優れ、増粘性が良好で、(メタ)アクリル系人工大理石の原料として特に有用な(メタ)アクリル系SMC又はBMC;及び、生産性が高く、外観、寸法安定性、耐熱水性、耐候性等の良好な(メタ)アクリル系人工大理石の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について検討した結果、(メタ)アクリル系プレミックスに特定の構造を有する有機過酸化物を硬化剤として含有させることによって、成形品の線収縮率が低く、寸法安定性が良好であり、高温での成形加工性に優れた(メタ)アクリル系プレミックスを見出し、また、この特定の構造を有する有機過酸化物と特定の構造を有する(メタ)アクリル系単量体とを併用することによって、さらに低収縮率・耐熱水性・耐候性に優れた(メタ)アクリル系プレミックスを見い出し、さらにこの(メタ)アクリル系プレミックスに重合体粉末を含有させることによって、(メタ)アクリル系人工大理石の原料として特に有用な、増粘性の良好な(メタ)アクリル系SMC又はBMCを見出し、さらにこの(メタ)アクリル系SMC又はBMCを加熱加圧硬化することによって、生産性が高く、外観や寸法安定性が良好で、耐熱水性や耐候性等に優れた(メタ)アクリル系人工大理石の製造方法を見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、メチルメタクリレート又は(メタ)アクリル系単量体混合物(a)、及び、ポリメチルメタクリレート又は(メタ)アクリル系共重合体(b)を含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)100重量部、無機充填剤(B)1〜500重量部、並びに、下記一般式( II )、( III )および(V)の何れかで示される硬化剤(C)0.01〜20重量部を含有してなる(メタ)アクリル系プレミックスに関するものである。
【0012】
【化7】
(式中、R13はエチル基を表す。)
【0013】
【化8】
(式中、R14及びR15は水素原子又は炭素数4〜6の3級アルキル基を表し、シクロドデカン環は1個以上の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていても良い。)
【0015】
【化10】
(式中、R17及びR19は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R18は炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)。
【0016】
さらに本発明は、この(メタ)アクリル系プレミックスと重合体粉末とを含有してなることを特徴とするアクリル系SMC又はBMC;本発明の(メタ)アクリル系プレミックスを用いて、肉厚変化のある成形品を製造すること、またはインサート成形すること、を特徴とする(メタ)アクリル系人工大理石の製造方法;本発明の(メタ)アクリル系SMC又はBMCを105〜150℃の範囲内で加熱加圧硬化することを特徴とする(メタ)アクリル系人工大理石の製造方法;及び、そのように105〜150℃の範囲内で加熱加圧硬化し、肉厚変化のある成形品を製造すること、またはインサート成形すること、を特徴とする(メタ)アクリル系人工大理石の製造方法に関するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0018】
本発明の(メタ)アクリル系プレミックスを構成する(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)は、メチルメタクリレート又は(メタ)アクリル系単量体混合物(a)と、ポリメチルメタクリレート又は(メタ)アクリル系共重合体(b)とを含有してなる。
【0019】
(a)成分は、好ましくはメチルメタクリレートを10〜100重量%の範囲で含有する不飽和単量体あるいは不飽和単量体混合物である。(a)成分の含有量は特に制限ないが、本発明の(メタ)アクリル系プレミックスの作業性、及びこの(メタ)アクリル系プレミックスを(メタ)アクリル系人工大理石の原料として使用した場合の機械的強度等の物性を考慮に入れると、本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物(A)中、10〜90重量%の範囲が好ましい。これは、(a)成分の含有量を10重量%以上とすることによって、(メタ)アクリル系プレミックスが低粘度となり、その取り扱い性が良好となり、また、(a)成分の含有量を90重量%以下とすることによって、硬化時の収縮率が低くなる傾向にあるためである。より好ましくは15〜85重量%、特に好ましくは20〜80重量%の範囲である。
【0020】
(a)成分で使用されるメチルメタクリレート以外の単量体としては、例えば、炭素数2〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、シクロヘキサン環を持つエステル基を有する(メタ)アクリレート[例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート]、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビシクロ環を持つエステル基を有する(メタ)アクリレート[例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート]、トリシクロ環を持つエステル基を有する(メタ)アクリレート[例えば、トリシクロ[5・2・1・02,6]デカニル(メタ)アクリレート]、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸金属塩、フマル酸、フマル酸エステル、マレイン酸、マレイン酸エステル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、無水マレイン酸等の単官能性単量体が挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは「メタクリル及び/又はアクリル」を意味する。これらは必要に応じて単独であるいは二種以上を併用して使用できる。
【0021】
(C)成分として、一般式( II )および( III )の何れかで示される硬化剤を用いる場合は、(a)成分としては、シクロヘキサン環を持つエステル基を有する(メタ)アクリレート、ビシクロ環を持つエステル基を有する(メタ)アクリレート、トリシクロ環を持つエステル基を有する(メタ)アクリレートが、耐熱水性及び耐候性の面から好ましく、中でも、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5・2・1・02,6]デカニル(メタ)アクリレートがより好ましく、特に、イソボルニル(メタ)アクリレート又はトリシクロ[5・2・1・02,6]デカニル(メタ)アクリレートを使用すると、さらに低収縮となる傾向にあるため好ましい。
【0022】
さらに、(a)成分中に多官能性単量体を含有させると、得られる成形品に優れた強度、耐溶剤性、耐熱性、耐熱水性、寸法安定性等が付与される傾向にあり好ましい。多官能性単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、1,1−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及び、(メタ)アクリル酸と多価アルコール[例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等]との多価エステル、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能性単量体が挙げられる。これらは、必要に応じて単独であるいは2種以上を併用して使用することができる。特に、ネオペンチルグリコールジメタクリレート及び/又は1,3−ブチレングリコールジメタクリレートを使用すると、極めて表面光沢の優れた成形品が得られ、また、成形品の耐熱水性が良好となる傾向にあり、好ましい。この場合、ネオペンチルグリコールジメタクリレート及び/又は1,3−ブチレングリコールジメタクリレートと他の多官能性単量体を併用しても良い。
【0023】
多官能性単量体の使用量は特に制限されないが、上記の効果を有効に得るためには、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)中、1〜50重量%の範囲内で使用するのが好ましい。より好ましくは3〜40重量%の範囲内であり、特に好ましくは5〜30重量%の範囲内である。
【0024】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)を構成するポリメチルメタクリレート又は(メタ)アクリル系共重合体(b)は、好ましくはメチルメタクリレート構造単位の繰り返しが50〜100モル%の範囲であるポリメチルメタクリレート又は(メタ)アクリル系共重合体である。
【0025】
(b)成分の含有量は特に制限されるのもではないが、本発明の(メタ)アクリル系プレミックスの作業性、及びこの(メタ)アクリル系プレミックスを(メタ)アクリル系人工大理石の原料として使用した場合の機械的強度等の物性を考慮に入れると、本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物(A)中、10〜90重量%の範囲が好ましい。より好ましくは15〜85重量%、特に好ましくは20〜80重量%の範囲である。
【0026】
(b)成分は、架橋重合体でも非架橋重合体でも良く、必要に応じて適宜選択することができる。得られる(メタ)アクリル系プレミックスの流動性や、得られる成形品の機械的強度を考慮に入れると、その重量平均分子量は15,000〜2,000,000の範囲内であることが好ましい。より好ましくは25,000〜1,000,000の範囲である。
【0027】
(b)成分で使用されるメチルメタクリレート以外の構成成分(重合に使用する単量体等)としては、例えば、先に(a)成分の例として列挙した各主成分等が挙げられる。これらも、2種以上を併用でき、必要に応じて多官能性単量体を共重合させることもできる。(b)成分は、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の公知の重合法により製造することができる。
【0028】
本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)は、(a)成分中に(b)成分を溶解したものでも良いし、(a)成分を部分重合することによって(a)成分中にその重合体である(b)成分を生成したものでも良いし、あるいは、この部分重合したものにさらに(a)成分を添加したもの、又は部分重合したものにさらに(b)成分を添加したものでも良い。
【0029】
本発明の(メタ)アクリル系プレミックスを構成する(B)成分は、無機充填剤である。この(B)成分の含有量は、本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)100重量部に対して、1〜500重量部の範囲内で使用する。これは、無機充填剤の使用量を1重量部以上とすることによって、得られる成形品の耐熱性が良好となるとともに線収縮率が低くなる傾向にあり、また、500重量部以下とすることによって、成形品に大理石調の深みのある良好な質感を付与することが可能となるとともに、成形品のインサートねじの表側や肉厚変化部でのヒケ・白化の発生が抑制される傾向にあるからである。より好ましくは50〜350重量部の範囲内であり、特に好ましくは、100〜250重量部の範囲内である。
【0030】
無機充填剤としては、水酸化アルミニウム、シリカ、溶融シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸価チタン、リン酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、ガラスパウダー等を必要に応じて適宜使用できる。特に、本発明の(メタ)アクリル系プレミックスを人工大理石用成形材料として使用する場合には、無機充填剤としては、水酸化アルミニウム、シリカ、溶融シリカ、ガラスパウダーが好ましい。
【0031】
本発明の(メタ)アクリル系プレミックスを構成する前記一般式( II )、( III )および(V)に示される硬化剤(C)は、成形品の線収縮率を低減し、インサートねじの表側や肉厚変化部でのヒケ・白化の発生を抑制できる。また、前記一般式( II )および( III )に示される硬化剤は、さらに成形品に優れた耐熱水性と耐候性を付与することもでき、特に本発明の(a)成分として、シクロヘキサン環、ビシクロ環、またはトリシクロ環を持つエステル基を有する(メタ)アクリレートの少なくとも1種を併用すると、耐熱水性及び耐候性がより一層向上するため好ましい。
【0035】
一般式(II)に示される硬化剤(C)の具体例としては、R13が炭素数2のエチル基であるt−アミルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート(化薬アクゾ(株)製、商品名カヤエステルAN、10時間半減期温度=95℃)を挙げることができる。
【0036】
一般式(III)のR14、R15としては、例えば、水素原子、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−ヘキシル基等が挙げられ、R14とR15は異なる基であっても良い。中でも、t−ブチル基が好ましい。
【0037】
一般式(III)に示される硬化剤(C)の具体例としては、R14とR15がt−ブチル基である1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン(日本油脂(株)製、商品名パーヘキサCD、10時間半減期温度=95℃)を挙げることができる。
【0040】
一般式(V)のR17、R19としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基等を挙げることができ、R17とR19は異なる基であっても良い。中でも、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、R18としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、i−プロピレン基、n−ブチレン基、i−ブチレン基、sec−ブチレン基、t−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−へキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基等を挙げることができる。中でも、炭素数2〜6のアルキレン基が好ましく、n−へキシレン基がより好ましい。
【0041】
一般式(V)に示される硬化剤(C)の具体例としては、R17及びR19が炭素数1のメチル基で、R18が炭素数6のn−へキシレン基である1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン(化薬アクゾ(株)製、商品名カヤレン6−70、10時間半減期温度=97℃)を挙げることができる。
【0042】
以上列挙した一般式( II )、( III )および(V)に示される硬化剤(C)は、単独、又は同じ一般式の2種類以上のものや異なる一般式の2種以上のものを組み合わせて使用できる。また、一般式( II )、( III )および(V)に示される硬化剤(C)と共に、それ以外の有機過酸化物やアゾ系化合物等の各種硬化剤を、必要に応じて併用しても良い。
【0043】
本発明の(メタ)アクリル系プレミックスを構成する(C)成分の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)100重量部に対して、0.01〜20重量部の範囲内である。これは、(C)成分の含有量を0.01重量部以上とすることによって、本発明の(メタ)アクリル系プレミックスの硬化性が十分となり、得られる成形品の線収縮率が小さくなり、また、一般式( II )および( III )に示される硬化剤を用いた場合は、さらに耐熱水性及び耐候性が良好となる傾向にあり一方、20重量部以下とすることによって、インサートねじの表側や肉厚変化部でのヒケ・白化の発生がない成形外観が得られる傾向にあるからである。より好ましくは0.1〜10重量部の範囲内である。
【0044】
また、本発明の(メタ)アクリル系プレミックスに、さらに無機充填剤含有樹脂粒子を配合し成形することにより、石目模様を有する御影石調人工大理石を得ることができる。無機充填剤含有樹脂粒子の配合量は、特に制限されないが、(メタ)アクリル系プレミックス100重量部に対して0.1〜200重量部の範囲内であることが好ましい。これは、無機充填剤含有樹脂粒子の配合量を0.1重量部以上とすることによって、意匠性の良好な石目模様が得られる傾向にあり、200重量部以下とすることによって、(メタ)アクリル系プレミックスの製造時における混練性が良好となる傾向にあるためである。より好ましくは1〜100重量部の範囲内である。
【0045】
無機充填剤含有樹脂粒子を構成する樹脂は、メチルメタクリレートに溶解しない樹脂ならば何でも良く、例えば、架橋(メタ)アクリル樹脂、架橋ポリエステル樹脂、架橋ポリスチレン樹脂等を挙げることができる。本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物との親和性が高く、美しい外観をした成形品が得られることから、架橋(メタ)アクリル樹脂が好ましい。また、この架橋(メタ)アクリル樹脂は、非架橋(メタ)アクリル系重合体を含有するものでも良い。
【0046】
無機充填剤含有樹脂粒子を構成する無機充填剤は、無機充填剤含有樹脂粒子を構成する樹脂100重量部に対して1〜500重量部の範囲内で使用されるのが好ましい。これは、無機充填剤の使用量を1重量部以上とすることによって、得られる成形品の耐熱性が良好となり、また、無機充填剤の使用量を500重量部以下とすることによって、成形品に大理石調の深みのある良好な質感を付与することが可能となる傾向にあるためである。
【0047】
この無機充填剤としては、水酸化アルミニウム、シリカ、溶融シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸価チタン、リン酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、ガラスパウダー等を必要に応じて適宜使用できる。特に、御影石調人工大理石を製造する場合には、無機充填剤としては、水酸化アルミニウム、シリカ、溶融シリカ、ガラスパウダーが好ましい。
【0048】
無機充填剤含有樹脂粒子の製造方法は特に限定されないが、例えば、熱プレス法、注型法などによって重合硬化して得られる無機充填剤入りの樹脂成形物を粉砕し、ふるいにより分級する方法が挙げられる。例えば、(メタ)アクリル系人工大理石を粉砕し、分級する方法が好ましい。
【0049】
本発明においては、1種類、あるいは色や粒径の異なる2種以上の無機充填剤含有樹脂粒子を使用することができる。また、無機充填剤含有樹脂粒子の粒径は、成形品の肉厚以下であれば特に制限されない。
【0050】
本発明の(メタ)アクリル系プレミックスは、そのまま注型法により加熱硬化又はレドックス硬化させても良く、また、増粘剤を添加して(メタ)アクリル系SMC又はBMCとした後に加熱加圧硬化させても良いが、生産性の面から、(メタ)アクリル系SMC又はBMCとした後に加熱加圧硬化させるのが好ましい。
【0051】
本発明の(メタ)アクリル系プレミックスを(メタ)アクリル系SMC又はBMCとして使用する場合の増粘剤としては、特に制限はなく、例えば、酸化マグネシウム粉末や重合体粉末等を使用できる。ただし、成形物の耐熱水性が優れる傾向にある点から、重合体粉末の使用が好ましい。
【0052】
増粘剤として使用可能な重合体粉末としては、特に制限はなく、必要に応じて適宜選択できる。例えば、前記の無機充填剤含有樹脂粒子を増粘剤として使用することもできる。しかし、嵩密度が0.1〜0.7g/mlの範囲内であり、アマニ油に対する吸油量が60〜200mg/100gの範囲内であり、メチルメタクリレートに対する膨潤度が16倍以上である重合体粉末の使用が好ましい。このような特定の重合体粉末を増粘剤として使用すると、ハンドリング性や生産性に優れた(メタ)アクリル系SMC又はBMCが得られ、また、外観の良好な成形品が得られる傾向にある。
【0053】
これは、重合体粉末の嵩密度を0.1g/ml以上とすることによって、重合体粉末が飛散しにくくなり、その製造時における歩留まりが良好となり、重合体粉末を(メタ)アクリル系プレミックスに添加、混合する際の粉立ちが減少し、作業性が良好になるためであり、また、0.7g/ml以下とすることによって、少量の重合体粉末の使用で十分な増粘効果を得ることが可能となり、さらに増粘時間が短時間で済むので、生産性が向上し、コスト的にも有利になるためである。好ましくは、0.15〜0.65g/mlの範囲内であり、さらに好ましくは、0.2〜0.6g/mlの範囲内である。
【0054】
また、これは、重合体粉末のアマニ油に対する吸油量を60ml/100g以上とすることによって、少量の重合体粉末の使用で十分な増粘効果を得ることが可能となり、さらに増粘が短時間で済むので、生産性が向上し、コスト的にも有利になるためであり、また、200ml/100g以下とすることによって、重合体粉末の(メタ)アクリル系プレミックスに対する分散性が良好となり、(メタ)アクリル系SMC又はBMCを製造する際の混練性が良好になるためである。好ましくは、70〜180ml/100gの範囲内であり、さらに好ましくは、80〜140ml/100gの範囲内である。
【0055】
また、これは、重合体粉末のメチルメタクリレートに対する膨潤度を16倍以上とすることによって、(メタ)アクリル系プレミックスを増粘させる効果が十分なものとなるためである。より好ましくは20倍以上である。
【0056】
さらに、これは、重合体粉末が非架橋重合体粉末であることによって、十分な増粘効果が短時間で得られ、この重合体粉末を含む(メタ)アクリル系SMC又はBMCを御影石調人工大理石の製造に使用する際には、石目模様の鮮明性が良くなり、また、石目の模様ムラがなくなる傾向にあるためである。このような傾向は、非架橋重合体粉末が(メタ)アクリル系プレミックス中で膨潤した後、すみやかにその一部又は全部が、室温においても溶解することに起因すると考えられる。なお、本発明において、非架橋重合体粉末とは、少なくとも表層部が非架橋重合体から構成されている重合体粉末を示す。
【0057】
本発明で使用される重合体粉末の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、10万〜200万の範囲であることが好ましい。これは、重量平均分子量を10万以上とすることによって、十分な増粘効果が短時間で得られ、この重合体粉末を含む(メタ)アクリル系SMC又はBMCを御影石調人工大理石の製造に使用する際には、石目模様の鮮明性が良くなり、石目の模様ムラがなくなる傾向にあり、また、200万以下とすることによって、得られる成形品のインサートねじの表側や肉厚変化部でのヒケ・白化の発生が抑制される傾向にあるためである。より好ましくは、30万〜200万の範囲内であり、特に好ましくは40万〜100万の範囲内である。
【0058】
重合体粉末の使用量は、特に制限されないが、アクリル系樹脂組成物(A)100重量部に対して、0.1〜100重量部の範囲内であることが好ましい。これは、重合体粉末の使用量が0.1重量部以上で高い増粘効果が発現される傾向にあり、100重量部以下で重合体粉末の分散性が良好になり、また、コスト的に有利になる傾向にあるためである。より好ましくは1〜80重量部の範囲内である。
【0059】
また、本発明で使用される重合体粉末の比表面積は、特に限定されるものではないが、1〜100m2/gの範囲内であることが好ましい。これは、重合体粉末の比表面積を1m2/g以上とすることによって、重合体粉末の(メタ)アクリル系プレミックスへの溶解性が格段に向上し、室温でもその一部又は全部がアクリル系プレミックスに溶解するようになるため、少量の重合体粉末の使用で十分な増粘効果が得られ、増粘が短時間で可能となり、生産性が向上する傾向にあるからであり、さらに、この重合体粉末を含む(メタ)アクリル系SMC又はBMCを御影石調人工大理石の製造に使用する際には、石目模様の鮮明性が良くなり、石目の模様ムラがなくなる傾向にあるからであり、また、100m2/g以下とすることによって、重合体粉末の(メタ)アクリル系プレミックスに対する分散性が良好となり、(メタ)アクリル系SMC又はBMCを製造する際の混練性が良好となる傾向にあるためである。より好ましくは、3〜100m2/gの範囲内であり、特に好ましくは5〜100m2/gの範囲内である。
【0060】
また、重合体粉末の平均粒子径は、特に限定されないが、1〜250μmの範囲内であることが好ましい。これは、平均粒子径を1μm以上とすることによって、粉末の粉立ちが減少し、重合体粉末の取り扱い性が良好となる傾向にあり、250μm以下とすることによって、得られる成形材料の外観、特に光沢と表面平滑性が良好となる傾向にあるためである。より好ましくは5〜150μmの範囲内であり、特に好ましくは10〜70μmの範囲内である。
【0061】
本発明で使用される重合体粉末は、一次粒子同士が凝集した二次凝集体であることが好ましい。これは、重合体粉末が二次凝集体の形状を有する場合には、(a)成分の吸収速度が速く、増粘性が極めて良好となる傾向にあるためである。
【0062】
また、この場合においては、重合体粉末の一次粒子の平均粒子径は0.03〜1μmの範囲内であることが好ましい。これは、一次粒子の平均粒子径を0.03μm以上とすることによって、二次凝集体である重合体粉末製造時の歩留まりが良好となる傾向にあり、1μm以下とすることによって、少量の重合体粉末の使用で十分な増粘効果が得られ、増粘が短時間で可能となり、生産性が向上し、さらに、この重合体粉末を含む(メタ)アクリル系SMC又はBMCを御影石調人工大理石の製造に使用する際には、石目模様の鮮明性が良くなり、石目の模様ムラがなくなる傾向にあるためである。より好ましくは、0.07〜0.7μmの範囲である。
【0063】
重合体粉末を構成する重合体としては、種々のものを必要に応じて適宜選択して使用でき、特に限定されるものではないが、得られる(メタ)アクリル系人工大理石の外観等を考慮に入れると、(メタ)アクリル系重合体であることが好ましい。
【0064】
重合体粉末の構成成分としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸金属塩、(メタ)アクリル酸アミド、フマル酸、フマル酸エステル、マレイン酸、マレイン酸エステル、芳香族ビニル、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、無水マレイン酸等が挙げられる。これらは、必要に応じて単独で重合しても良いし、二種以上を併用して共重合しても良い。(メタ)アクリル系プレミックスを構成する単量体成分との親和性を考慮に入れると(メタ)アクリル系単量体が好ましい。
【0065】
さらに、本発明で使用される重合体粉末は、それらを形成する重合体の化学的組成、構造、分子量等が互いに異なったコア相とシェル相から構成された、いわゆるコア/シェル構造を有する重合体粉末とすることもできる。この場合、コア相は非架橋重合体であっても架橋重合体であっても良いが、シェル相は非架橋重合体であることが好ましい。
【0066】
重合体粉末のコア相及びシェル相の構成成分としては、例えば、先に重合体粉末の構成成分の例として列挙した各主成分等が挙げられる。これらも、必要に応じて単独で重合しても良いし、2種以上を併用して共重合しても良い。(メタ)アクリル系プレミックスを構成する単量体成分との親和性が高まる点から、シェル相にはメチルメタクリレートを主成分として用いることが好ましい。
【0067】
また、コアを架橋させる場合には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、1,1−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及び、(メタ)アクリル酸と多価アルコール[例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等]との多価エステル、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能性単量体を構成成分として使用でき、これらは、単独あるいは二種以上を併用して使用できる。
【0068】
また、重合体粉末は、無機充填剤を含有していても良いが、増粘効果をより高いものにするためには、無機充填剤を含有していない方が好ましい。
【0069】
重合体粉末の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合等の公知の方法が挙げられる。中でも、乳化重合で得られたエマルションに噴霧乾燥、フリーズドライ、酸/塩凝固沈殿等の処理を行って重合体粉末を得る方法が、製造効率が良好であり好ましい。
【0070】
また、本発明の(メタ)アクリル系プレミックスには、上述した重合体粉末(増粘剤)以外にも、必要に応じてガラス繊維や炭素繊維等の強化繊維、着色剤、低収縮剤、内部離型剤、重合禁止剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0071】
本発明の(メタ)アクリル系プレミックスを得るための各構成成分の混合方法は、高粘度の物質を効率よく混合できる方法であれば特に限定されない。例えば、ニーダー、ミキサー、ロール、押し出し機等を使用することができる。
【0072】
本発明の(メタ)アクリル系プレミックスを(メタ)アクリル系SMC又はBMCとした後に加熱加圧硬化させて人工大理石を製造する場合には、圧縮成形法、射出成形法、トランスファー成形法、押し出し成形法等の公知の方法で製造することができる。
【0073】
この場合、加熱温度としては特に制限はないが、105〜150℃の範囲内が好ましい。これは、加熱温度を105℃以上とすることによって、水蒸気による加熱が可能となり、加熱コストがやすくなるからであり、また、硬化時間を短縮することができ、生産性が高くなる傾向にあるからであり、150℃以下とすることによって、得られる成形品の線収縮率が低くなる傾向にあり、また、得られる成形品のインサートねじの表側や肉厚変化部でのヒケ・白化の発生が抑制される傾向にあるためである。より好ましくは105〜140℃の範囲内であり、特に好ましくは110〜130℃の範囲内である。また、加熱加圧硬化させる場合には、上記の温度範囲内で上金型と下金型に温度差をつけて加熱しても良い。また、加熱加圧硬化による線収縮率は0.8%以下となるように条件設定することが好ましい。
【0074】
加圧圧力としては、10〜200kg/cm2の範囲内であることが好ましい。これは、加圧圧力を10kg/cm2以上とすることによって、(メタ)アクリル系SMC又はBMCの金型内への充填性が良好となる傾向にあり、200kg/cm2以下とすることによって、白化のない良好な成形外観が得られる傾向にあるためである。より好ましくは20〜150kg/cm2の範囲内である。なお、成形時間は成形品の厚みによって適宜選択すればよい。
【0075】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明する。例中の部および%は、全て重量基準である。
<成形品の線収縮率の測定>
成形品の実寸法(Lmm)を測定し、金型寸法(L0mm)に対してどれくらい収縮したかを次式により求めた。
【0076】
線収縮率(%)={(L0−L)/L0}×100(%)
<成形品の耐熱水性>
成形した板を98℃の熱水中に120時間浸漬し、浸漬前の板と色変化(白色度、色差、黄変度)を比較した。
<成形品の耐候性>
スガ試験機(株)製サンシャインウエザオメーターWEL−SUN−DC型を用い、ブラックパネル温度は63℃、降雨(スプレー)は60分中12分、時間は500時間の条件で、成形品を促進曝露試験し、試験前と試験後での成形品の色変化(白色度、色差、黄変度)をJIS Z 8730−1980に基づいて評価した。
<重合体粉末の物性>
・平均粒子径:レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−910、堀場製作所製)を用いて測定した。
・嵩密度:JIS R 6126−1970に基づいて測定した。
・吸油量:JIS K 5101−1991に基づいて測定し、パテ状塊がアマニ油の最後の一滴で急激に柔らかくなる直前を終点とした。
・比表面積:表面積計SA−6201(堀場製作所製)を用いて、窒素吸着法で測定した。
・重量平均分子量:GPC法による測定値(ポリスチレン換算)を求めた。
・膨潤度:100mlのメスシリンダーに重合体粉末を投入し、数回軽くたたいて5ml詰めた後、10℃以下に冷却したメチルメタクリレートを全量が100mlとなるように投入し、全体が均一になるように素早く攪拌し、その後、メスシリンダーを25℃の恒温槽で1時間保持し、膨潤後の重合体粉末層の体積を求めて、膨潤前の重合体粉末層の体積(5ml)との比によって示した。
【0077】
(1)重合体粉末(P−1)の製造例
冷却管、温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管を備えた反応装置に、純水925部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(花王(株)製、商品名ペレックスSS−H)5部、及び過硫酸カリウム1部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃に加熱した。これに、メチルメタクリレート500部及びジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王(株)製、商品名ペレックスOT−P)5部からなる混合物を3時間かけて滴下した後、1時間保持し、さらに80℃に昇温して1時間保持して乳化重合を終了し、ポリマーの一次粒子の平均粒子径が0.08μmのエマルションを得た。
【0078】
得られたエマルションを大川原化工機社製L−8型噴霧乾燥装置を用いて入口温度/出口温度=150℃/90℃で噴霧乾燥処理し、二次凝集体粒子の平均粒子径が30μmの非架橋重合体粉末(P−1)を得た。得られた重合体粉末(P−1)の嵩密度は0.40g/mlであり、アマニ油に対する吸油量は100ml/100gであり、メチルメタクリレートに対する膨潤度は20倍以上であり、比表面積は51m2/gであり、重量平均分子量は60万であった。
【0079】
(2)重合体粉末(P−2)の製造例
冷却管、温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管を備えた反応装置に、純水925部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム5部、及び過硫酸カリウム1部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃に加熱した。これに、メチルメタクリレート149.85部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.15部、及びジアルキルスルホコハク酸ナトリウム5部からなる混合物を1.5時間かけて滴下した後、1時間保持し、続いてメチルメタクリレート350部を3.5時間かけて滴下した後、1時間保持し、さらに80℃に昇温後、1時間保持して乳化重合を終了し、ポリマーの一次粒子の平均粒子径が0.10μmのエマルションを得た。
【0080】
得られたエマルションを大川原化工機社製L−8型噴霧乾燥装置を用いて入口温度/出口温度=150℃/90℃で噴霧乾燥処理し、二次凝集体粒子の平均粒子径が20μmで、コア相が架橋重合体、シェル相が非架橋重合体であるコア/シェル構造を有する重合体粉末(P−2)を得た。得られた重合体粉末(P−2)の嵩密度は0.38g/mlであり、アマニ油に対する吸油量は100ml/100gであり、メチルメタクリレートに対する膨潤度は20倍以上であり、比表面積は51m2/gであり、シェル相の重量平均分子量は60万であった。
【0081】
(3)重合体粉末(P−3)の製造例
過硫酸カリウムの仕込量が0.25部、滴下する単量体がメチルメタクリレート497.5部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート2.5部、及びジアルキルスルホコハク酸ナトリウム5部からなる混合物である以外は、重合体粉末(P−1)の製造例と同様な方法で乳化重合を行い、ポリマーの一次粒子の平均粒子径が0.18μmのエマルションを得た。得られたエマルションを重合体粉末(P−1)と同様の方法で噴霧乾燥を行い、二次凝集体粒子の平均粒子径が18μmの架橋重合体粉末(P−3)を得た。得られた架橋重合体粉末(P−3)の嵩密度は0.38g/mlであり、アマニ油に対する吸油量は95ml/100gであり、メチルメタクリレートに対する膨潤度は20倍以上であり、比表面積は24m2/gであった。
【0082】
(4)重合体粉末(P−4)の製造例
冷却管、温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた反応装置に、純水800部、ポリビニルアルコール(けん化度88%、重合度1000)1部を溶解させた後、メチルメタクリレート400部、アゾビスイソブチロニトリル0.5部を溶解させた単量体溶液を投入し、窒素雰囲気下、500rpmで攪拌しながら1時間で80℃に昇温し、そのまま2時間加熱した。その後、90℃に昇温し2時間加熱後、さらに120℃に加熱して残存モノマーを水と共に留去してスラリーを得て、懸濁重合を終了した。得られたスラリーを濾過、洗浄した後、50℃の熱風乾燥機で乾燥し、一次粒子の平均粒子径が30μmの非架橋重合体粉末(P−4)を得た。得られた重合体粉末(P−4)の嵩密度は0.58g/mlであり、アマニ油に対する吸油量は50ml/100gであり、メチルメタクリレートに対する膨潤度は1.2であり、比表面積は0.2m2/gであり、重量平均分子量は120万であった。
【0083】
(5)重合体粉末(P−5)の製造例
投入する単量体溶液が、メチルメタクリレート398部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート2部、ノルマルドデシルメルカプタン0.4部、及びアゾビスイソブチロニトリル1.2部からなること以外は重合体粉末(P−4)と同様の方法で懸濁重合を行い、一次粒子の平均粒子径が30μmの架橋重合体粉末(P−5)を得た。得られた重合体粉末(P−5)の嵩密度は0.57g/mlであり、アマニ油に対する吸油量は50ml/100gであり、メチルメタクリレートに対する膨潤度は5.6であり、比表面積は0.2m2/gであった。
【0084】
(6)ポリメチルメタクリレート(B−1)の製造例
冷却管、温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた反応装置に、純水800部、ポリビニルアルコール(けん化度88%、重合度1000)1部を溶解させた後、メチルメタクリレート400部、ノルマルドデシルメルカプタン2部及びアゾビスイソブチロニトリル2部を溶解させた単量体溶液を投入し、窒素雰囲気下、400rpmで攪拌しながら1時間で80℃に昇温し、そのまま2時間加熱した。その後、90℃に昇温し2時間加熱後、さらに120℃に加熱して残存モノマーを水と共に留去してスラリーを得て、懸濁重合を終了した。得られたスラリーを濾過、洗浄した後、50℃の熱風乾燥機で乾燥し、一次粒子の平均粒子径が93μmのポリメチルメタクリレート(B−1)を得た。得られたポリメチルメタクリレート(B−1)の嵩密度は0.70g/mlであり、アマニ油に対する吸油量は45ml/100gであり、メチルメタクリレートに対する膨潤度は1.2であり、比表面積は0.07m2/gであり、重量平均分子量は4万であった。
【0085】
(7)無機充填剤含有樹脂粒子の製造例
メチルメタクリレート69%、エチレングリコールジメタクリレート2%、上記製造例(6)で得たポリメチルメタクリレート(B−1)29%からなるアクリル系樹脂組成物100部に、硬化剤としてtーブチルパーオキシベンゾエート(日本油脂(株)製、商品名パーブチルZ)2.0部、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛0.5部、及び白色無機顔料又は黒色無機顔料0.25部を添加した後に、無機充填剤として水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、商品名ハイジライトH−310)200部を添加し、さらに上記製造例(1)で得た重合体粉末(P−1)30部を添加し、ニーダーで10分間混練して(メタ)アクリル系BMCを得た。次にこの(メタ)アクリル系プレミックスを200mm角の平型成形用金型に充填し、金型温度130℃、圧力100kg/cm2の条件で10分間加熱加圧硬化させ、厚さ10mmの(メタ)アクリル系人工大理石を得た。得られた(メタ)アクリル系人工大理石をクラッシャーで粉砕し、平均粒子径が350μmの白色又は黒色の無機充填剤含有樹脂粒子を得た。
【0094】
[比較例1]
硬化剤として、t−ブチルパーオキシベンゾエート(日本油脂(株)製、商品名パーブチルZ、10時間半減期温度=104℃)2.8部を用い、その他の組成は表1に示す組成としたこと以外は、後述する参考例 II −1と同様の方法で(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。評価結果を表2に示す。
【0095】
[比較例2]
硬化剤として、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(化薬アクゾ(株)製、商品名トリゴノックス121−50、10時間半減期温度=70℃)1.8部を用い、その他の組成は表1に示す組成としたこと以外は、後述する参考例 II −1と同様の方法で(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。評価結果を表2に示す。
【0096】
[比較例3]
硬化剤として、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(日本油脂(株)製、商品名パーブチルO、10時間半減期温度=72℃)0.8部を用い、その他の組成は表1に示す組成としたこと以外は、後述する参考例 II −1と同様の方法で(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。評価結果を表2に示す。
【0097】
[比較例4]
硬化剤として、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン(日本油脂(株)製、商品名パーヘキサ22、10時間半減期温度=103℃)12部、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日本油脂(株)製、商品名パーロイルTCP、10時間半減期温度=41℃)2部、及びジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名パークミルD、10時間半減期温度=116℃)1.6部の混合物を用い、その他の組成は表1に示す組成としたこと以外は、後述する参考例 II −1と同様の方法で、(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。評価結果を表2に示す。
【0101】
[比較例5]
硬化剤として、t−ブチルパーオキシベンゾエート2.8部を用い、その他の組成は表1に示す組成としたこと以外は、後述する実施例 II −7と同様の方法で御影石調アクリル系人工大理石成形品を得た。評価結果を表2に示す。
【0102】
[比較例6]
メチルメタクリレート20%、スチレン15%、トリメチロールプロパントリメタクリレート25%、及び製造例(6)で得たポリメチルメタクリレート(B−1)40%からなる(メタ)アクリル系樹脂組成物100部に、硬化剤としてt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(商品名パーブチルO)0.5部、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛0.5部を添加した後に、無機充填剤として水酸化アルミニウム220部と上記製造例(7)で得た黒色と白色の無機充填剤含有樹脂粒子合わせて100部を添加し、ニーダーで10分間混練して(メタ)アクリル系BMCを得た。そのプレミックスの増粘性の結果を表2に示す。このプレミックスを用い、後述する実施例 II −7と同様な方法で御影石調(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。その評価結果を表2に示す。
【0103】
[参考例II−1]
メチルメタクリレート55%、1 , 3−ブチレングリコールジメタクリレート10%、及び製造例(6)で得たポリメチルメタクリレート(B−1)35%からなる(メタ)アクリル系樹脂組成物100部に、硬化剤として一般式(II)でR13が炭素数1のメチル基であるt−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート(化薬アクゾ(株)製、商品名トリゴノックス42、10時間半減期温度=100℃)2.8部、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛0 . 5部を添加した後に、無機充填剤として水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、商品名ハイジライトH−310)195部を添加し、さらに上記製造例(1)で得た重合体粉末(P−1)25部を添加し、ニーダーで10分間混練して(メタ)アクリル系BMCを得た。得られた(メタ)アクリル系BMCは、混練直後でもべたつきがなく取り扱い性が極めて良好であった。
【0104】
次に、この得られた(メタ)アクリル系BMCを成形用金型に充填し、上金型温度125℃、下金型温度110℃、圧力100kg/cm 2 の条件で10分間加熱加圧硬化させ、肉厚に変化があり、かつ、直径15mm、長さ8mmのインサートねじを入れた200mm角の(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。得られた成形品の形状を図1に示す(P=200mm、Q=200mm、T 1 =13mm、T 2 =15mm)。成形品の表面は光沢が極めて高く、欠陥が全くない鏡面状態で表面平滑性が極めて高かった。また、インサートねじの表側や肉厚変化部の表側には白化が全く認められず、また、ヒケも認められず、外観は良好であった。また、成形品の線収縮率は0.80%と低く、成形品の耐熱水性及び耐候性も良好であった。これら評価結果を表4に示す。
【0105】
[実施例II−2〜II−6]
硬化剤として一般式(II)でR13が炭素数2のエチル基であるt−アミルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート(化薬アクゾ(株)製、商品名カヤエステルAN、10時間半減期温度=95℃)を用い、その他の組成は表3に示す組成としたこと以外は、参考例II−1と同様の方法で(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。評価結果を表4に示す。
【0106】
[実施例II−7〜II−8]
実施例 II −7においては、メチルメタクリレート50%、1 , 3−ブチレングリコールジメタクリレート15%、及び上記製造例(6)で得たポリメチルメタクリレート(B−1)35%からなる(メタ)アクリル系樹脂組成物100部に、硬化剤としてt−アミルパーオキシ3 , 5 , 5−トリメチルヘキサノエート(商品名カヤエステルAN)2 . 8部、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛0 . 5部を添加した後に、無機充填剤として水酸化アルミニウム165部と、上記製造例(7)で得た黒色と白色の無機充填剤含有樹脂粒子合わせて75部を添加し、さらに上記製造例(1)で得た重合体粉末(P−1)25部を添加し、ニーダーで10分間混練して、石目調(メタ)アクリル系BMCを得た。また、実施例 II −8においては、表3に示す組成としたこと以外は同様の方法で石目調(メタ)アクリル系BMCを得た。得られた石目調(メタ)アクリル系BMCは、混練直後でもべたつきがなく取り扱い性が極めて良好であった。
【0107】
次に、得られた石目調(メタ)アクリル系BMCを用い、参考例 II −1と同様な方法で御影石調(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。成形品の表面は光沢が極めて高く、欠陥が全くない鏡面状態で表面平滑性が極めて高かった。また、極めて鮮明な石目模様を有し、また石目模様にはムラが全くなかった。さらに、インサートねじの表側にはヒケ・白化が全く認められず、肉厚変化部の表側でもヒケ・白化が全く認められず、外観は極めて良好であった。また、成形品の収縮率は0.74%、0.62%と低く、成形品の耐熱水性及び耐候性も良好であった。それらの評価結果を表4に示す。
【0108】
[実施例III−1]
硬化剤として、一般式(III)でR14及びR15がt−ブチル基である1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン(日本油脂(株)製、商品名パーヘキサCD、10時間半減期温度=95℃)2.7部を用い、その他の組成は表5に示す組成としたこと以外は、参考例 II −1と同様にして、(メタ)アクリル系BMCを得た。得られた(メタ)アクリル系BMCは、混練直後でもべたつきがなく、取り扱い性が極めて良好であった。
【0109】
次に、この得られた(メタ)アクリル系BMCを成形用金型に充填し、上金型温度125℃、下金型温度110℃、圧力100kg/cm2の条件で10分間加熱加圧硬化させ、肉厚に変化があり、かつ、直径9mm、長さ11mmのインサートねじを入れた200mm角の(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。得られた成形品の形状を図2に示す(P=200mm、Q=200mm、T1=5mm、T2=10mm、T3=15mm)。成形品の表面は光沢が極めて高く、欠陥が全くない鏡面状態で表面平滑性が極めて高かった。また、インサートねじの表側や肉厚変化部の表側にはヒケ・白化が全く認められず、外観は極めて良好であった。また、成形品の線収縮率は0.75%と低く、成形品の耐熱水性及び耐候性も良好であった。それら評価結果を表6に示す。
【0110】
[実施例III−2〜III−6]
表5に示す組成としたこと以外は、実施例III−1と同様の方法で(メタ)アクリル系BMCを得た。このBMCの増粘性の結果を表6に示す。次に、この得られたBMCを用いて、実施例III−1と同様の方法で(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。それらの評価結果を表6に示す。
【0111】
[実施例III−7]
硬化剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン(商品名パーヘキサCD)を2.7部用い、その他の組成は表5に示す組成としたこと以外は、実施例II −7と同様にして、石目調(メタ)アクリル系BMCを得た。得られた石目調(メタ)アクリル系BMCは、混練直後でもべたつきがなく取り扱い性が極めて良好であった。
【0112】
次に、この得られた石目調(メタ)アクリル系BMCを用い、実施例III−1と同様な方法で御影石調(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。成形品の表面は光沢が極めて高く、欠陥が全くない鏡面状態で表面平滑性が極めて高かった。また、極めて鮮明な石目模様を有し、また石目模様にはムラが全くなかった。さらに、インサートねじの表側にはヒケ・白化が全く認められず、肉厚変化部の表側でもヒケ・白化が全く認められず、外観は極めて良好であった。また、成形品の収縮率は0.73%と低く、成形品の耐熱水性及び耐候性も良好であった。それらの評価結果を表6に示す。
【0113】
[実施例III−8、III−9]
表5に示す組成としたこと以外は、実施例III−7と同様の方法で御影石調(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。評価結果を表6に示す。
【0114】
[比較例7〜12]
比較例1〜6と同様にして(メタ)アクリル系BMC等を調製し、次いで、実施例III−1と同様の方法で図2に示す(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。評価結果を表6に示す。
【0122】
[実施例V−1]
硬化剤として、一般式(V)でR17及びR19が炭素数1のメチル基で、R18が炭素数6のへキシレン基である1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン(化薬アクゾ(株)製、商品名カヤレン6−70、10時間半減期温度=97℃)3.8部を用い、その他の組成は表9に示す組成としたこと以外は、参考例 II −1と同様にして、(メタ)アクリル系BMCを得た。得られた(メタ)アクリル系BMCは、混練直後でもべたつきがなく、取り扱い性が極めて良好であった。
【0123】
次に、この得られた(メタ)アクリル系BMCを用い、実施例III−1と同様にして、(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。成形品の表面は光沢が極めて高く、欠陥が全くない鏡面状態で表面平滑性が極めて高かった。また、インサートねじの表側や肉厚変化部の表側にはヒケ・白化が全く認められず、外観は極めて良好であった。また、成形品の線収縮率は0.79%と低かった。それら評価結果を表10に示す。
【0124】
[実施例V−2〜V−5]
表9に示す組成としたこと以外は、実施例V−1と同様の方法で(メタ)アクリル系BMCを得た。そのBMCの増粘性の結果を表10に示す。次に、この得られた(メタ)アクリル系BMCを用いて実施例V−1と同様の方法で(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。評価結果を表10に示す。
【0125】
[実施例V−6]
硬化剤として、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン(商品名カヤレン6−70)3.8部を用い、その他の組成は表9に示す組成としたこと以外は、参考例 II −1と同様にして、石目調(メタ)アクリル系BMCを得た。得られた石目調(メタ)アクリル系BMCは、混練直後でもべたつきがなく取り扱い性が極めて良好であった。
【0126】
次に、この得られた石目調(メタ)アクリル系BMCを用い、実施例III−1と同様にして御影石調(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。成形品の表面は光沢が極めて高く、欠陥が全くない鏡面状態で表面平滑性が極めて高かった。また、極めて鮮明な石目模様を有し、また石目模様にはムラが全くなかった。さらに、インサートねじの表側にはヒケ・白化が全く認められず、肉厚変化部の表側でもヒケ・白化が全く認められず、外観は極めて良好であった。また、成形品の収縮率は0.77%と低かった。それらの評価結果を表10に示す。
【0127】
[実施例V−7]
表9に示す組成としたこと以外は、実施例V−6と同様の方法で御影石調(メタ)アクリル系人工大理石成形品を得た。評価結果を表10に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】
【表5】
【0133】
【表6】
【0136】
【表9】
【0137】
【表10】
各表中の評価結果の符号は、以下の基準による。
<BMCの増粘性>
A:混練後、直ちに増粘し、べたつきのない取扱性が良好なBMCが得られた。
B:混練後、室温で熟成して必要な粘度まで増粘させるのに24時間以上要した。
C:混練後、室温で24時間以上熟成させたが、増粘しなかった。
<成形品の表面平滑性>
◎:ピンホールが全くなく、表面平滑性が極めて高い。
○:ピンホールがなく、表面平滑性が高い。
<成形品の石目の鮮明性>
◎:極めて鮮明で非常に意匠性に優れる。
○:鮮明で意匠性に優れる。
△:石目がややぼやけており、意匠性に劣る。
×:石目がぼやけており、非常に意匠性に劣る。
<成形品の石目の模様ムラ>
◎:模様ムラが全くなく、非常に意匠性に優れる。
○:模様ムラがなく、意匠性に優れる。
△:模様ムラがあり、意匠性に劣る。
×:模様ムラがひどく、非常に意匠性に劣る。
<インサートねじ表側の白化>
◎:白化が全くなく、表側からインサートねじの位置が全く判らない。
○+:白化がなく、表側からインサートねじの位置がほとんど判らない。
○:白化がなく、よく見ると表側からインサートねじの位置が判るが、実用上問題ない。
×:白化がひどく、一見して表側からインサートねじの位置が判る。
<インサートねじの表側のヒケ>
◎:ヒケが全くなく、表側からインサートねじの位置が全く判らない。
○:ヒケがなく、表側からインサートねじの位置が判らない。
△:ヒケが若干あり、表側からインサートねじの位置が判る。
×:ヒケがひどく、一見して表側からインサートねじの位置が判る。
<肉厚変化部表側の白化>
◎:白化が全くなく、表側から肉厚変化部の位置が全く判らない。
○+:白化がなく、表側から肉厚変化部の位置がほとんど判らない。
○:白化がなく、よく見ると表側から肉厚変化部の位置が判るが、実用上問題ない。
×:白化がひどく、一見して表側から肉厚変化部の位置が判る。
<肉厚変化部の表側のヒケ>
◎:ヒケが全くなく、表側から肉厚変化部の位置が全く判らない。
○:ヒケがなく、表側から肉厚変化部の位置が判らない。
△:ヒケが若干あり、表側から肉厚変化部の位置が判る。
×:ヒケがひどく、一見して表側から肉厚変化部の位置が判る。
<成形品の耐熱水性>
◎:色変化が極めて小さかった。
○+:色変化がかなり小さかった。
○:色変化が小さかった。
×:色変化が大きかった。
<成形品の耐候性>
◎:色変化が極めて小さかった。
○:色変化が小さかった。
×:色変化が大きかった。
【0138】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明においては硬化剤として特定の構造を有する過酸化物を用いることにより、成形品の線収縮率が低く、寸法安定性が良好であり、インサートねじの表側や肉厚変化部でのヒケ・白化の発生がない、成形加工性に優れた(メタ)アクリル系プレミックスを得ることができ、さらにこの特定の構造を有する有機過酸化物と特定の構造を有する(メタ)アクリル系単量体とを併用することによって、さらに低収縮率・耐熱水性・耐候性に優れた(メタ)アクリル系プレミックスを得ることが可能になる。
【0139】
また、重合体粉末を含有させることにより、さらに高温成形に適し、成形加工性に優れ、増粘性が良好で、(メタ)アクリル系人工大理石の原料として有用な(メタ)アクリル系SMC又はBMCを得ることが可能になる。
【0140】
また、SMC又はBMCを成形することにより、生産性が高く、外観、寸法安定性、耐熱水性、耐候性等の良好な(メタ)アクリル系人工大理石を製造することが可能となり、本発明は工業上非常に有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例IIで得た(メタ)アクリル系人工大理石成形品の形状を模式図的に示した図である。
【図2】実施例IIIおよびVで得た(メタ)アクリル系人工大理石成形品の形状を模式図的に示した図である。
【符号の説明】
1 インサートねじ:φ15mm×8mm(又はφ9mm×11mm)
P 幅 :200mm
Q 長さ:200mm
T1 厚さ:13mm(又は5mm)
T2 厚さ:15mm(又は10mm)
T3 厚さ:15mm
Claims (10)
- メチルメタクリレート又は(メタ)アクリル系単量体混合物(a)、及び、ポリメチルメタクリレート又は(メタ)アクリル系共重合体(b)を含有する(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)100重量部、無機充填剤(B)1〜500重量部、並びに、下記一般式( II )、( III )および(V)の何れかで示される硬化剤(C)0.01〜20重量部を含有してなる(メタ)アクリル系プレミックス。
- (C)成分が一般式( II )および( III )の何れかで示される硬化剤であり、(a)成分がシクロヘキサン環、ビシクロ環、またはトリシクロ環を持つエステル基を有する(メタ)アクリレートを含有する請求項1記載の(メタ)アクリル系プレミックス。
- 無機充填剤含有樹脂粒子をさらに含有する請求項1記載の(メタ)アクリル系プレミックス。
- 請求項1記載の(メタ)アクリル系プレミックスと重合体粉末とを含有してなることを特徴とする(メタ)アクリル系SMC又はBMC。
- 請求項1記載の(メタ)アクリル系プレミックスと重合体粉末とを含有してなる(メタ)アクリル系SMC又はBMCを105〜150℃の範囲内で加熱加圧硬化することを特徴とする(メタ)アクリル系人工大理石の製造方法。
- 請求項1記載の(メタ)アクリル系プレミックスと重合体粉末とを含有してなる(メタ)アクリル系SMC又はBMCを105〜150℃の範囲内で加熱加圧硬化し、加熱加圧硬化による線収縮率が0.8%以下である
ことを特徴とする(メタ)アクリル系人工大理石の製造方法。 - 請求項1記載の(メタ)アクリル系プレミックスを用いて、肉厚変化のある成形品を製造することを特徴とする(メタ)アクリル系人工大理石の製造方法。
- 請求項1記載の(メタ)アクリル系プレミックスを用いて、インサート成形することを特徴とする(メタ)アクリル系人工大理石の製造方法。
- 請求項4記載の(メタ)アクリル系SMC又はBMCを用いて、105〜150℃の範囲内で加熱加圧硬化し、肉厚変化のある成形品を製造することを特徴とする(メタ)アクリル系人工大理石の製造方法。
- 請求項4記載の(メタ)アクリル系SMC又はBMCを用いて、105〜150℃の範囲内で加熱加圧硬化し、インサート成形することを特徴とする(メタ)アクリル系人工大理石の製造方法。
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