JP3541410B2 - ジフルオロエチレン誘導体化合物、それを含有する液晶組成物および液晶電気光学素子 - Google Patents

ジフルオロエチレン誘導体化合物、それを含有する液晶組成物および液晶電気光学素子 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ジフルオロエチレン誘導体化合物それを含有する液晶組成物および液晶電気光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめ、近年では測定器、自動車用計器、複写器、カメラ、OA機器用表示装置、家電製品用表示装置等種々の用途に使用され始めており、広い動作温度範囲、低動作電圧、高速応答性、高コントラスト比、広視角、化学的安定性等の種々の性能要求がなされている。
【0003】
しかし、現在のところ、これら全ての特性を単独満たす化合物はなく、複数の液晶化合物、および非液晶化合物を混合して液晶組成物として要求性能を満たしている状態である。このため、各種特性のすべてではなく、一または二以上の特性に優れた液晶化合物または非液晶化合物の開発が望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
晶表示素子分野においては、低電圧駆動、高精細表示、高コントラスト比、広視角特性、低温応答特性、広動作温度範囲等の性能向上が望まれており、これらはいずれかを向上させると他のいずれかが犠牲になるという傾向がある。
【0005】
特に、最近、電池駆動においては低電圧駆動と高速応答、OA機器等においては高精細表示と高速応答、自動車用表示等においては低温応答特性または広動作温度範囲で高速応答というように、その応答速度の向上が望まれている。
【0006】
応答速度向上のためには、いくつかの改善方法が考えられるが、その一つとして低粘性の液晶組成物の採用がある。即ち、液晶組成物の粘性が低下すれば、応答速度は向上し、低温でも実用的な速度での表示が可能になる。また、従来と同じ応答速度でよければ、より低電圧で駆動できたり、より高いデューティ比の駆動が可能、即ち、高精細駆動が可能になる。
【0007】
このような目的のため、特開平3−41037または特開平3−294386に示されるようなp,p’−二置換ジフルオロスチルベン化合物が提案されている。この化合物は式(3)で示される化学構造を有る。
【0008】
【化
Figure 0003541410
【0009】
ただし、式(3)のRA、RBはn−アルキル基、n−アルコキシ基、n−アルコキシカルボニル基を意味する。
【0010】
(3)の化合物は、低粘性であり、フッ素置換されていないスチルベン化合物よりも光に対する安定性が向上している。しかし、通常使用されている一般の液晶化合物に比しては、光に対する安定性がまだ劣っており、使用環境が限定されたり、紫外線カットフィルターを併用せざるを得ないことが多かった。したがって、低粘性で光に対する安定性が高い液晶化合物が望まれていた。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決すべく、新規な材料を提供するものであり、下式(1)で表されるジフルオロエチレン誘導体化合物を提供する。
【0012】
R 1-(A1)m-Y1-A2-CF=CF-A3-Y2-(A4)n-R2 (1)
【0013】
ただし、式(1)中、A1、A2、A3、A4、Y1、Y2、R1、R2、m、nは下記のものを示す。
【0014】
3は1,4−フェニレン基を示し、A2はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を示し、A1、A4は相互に独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、または1,4−シクロヘキセニレン基を示し、これらの環基は夫々非置換であるかまたは置換基として1個以上のハロゲン原子もしくはシアノ基を有し、これらの環基中の環を構成する1個以上の=CH−基は窒素原子に置換されていてもよく、環を構成する1個以上の−CH2−基は酸素原子または硫黄原子に置換されていてもよい。
【0015】
1、Y2は相互に独立して−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−OCH2−、−CH2O−または単結合を示す。
【0016】
2はフッ素原子を示し、R1は炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子またはシアノ基を示し、R1がアルキル基の場合には、このアルキル基中の炭素−炭素結合間またはこのアルキル基と環基との間の炭素−炭素結合間に酸素原子、カルボニルオキシ基またはオキシカルボニル基が挿入されてもよく、のアルキル基中の炭素−炭素結合の一部が三重結合または二重結合にされていてもよく、のアルキル基の1個の−CH2−基がカルボニル基に置換されていてもよく、のアルキル基中の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい。
【0017】
m、nは相互に独立して0または1を示す。
【0018】
また、本発明は、下式)(ただし、式)中A2、A3、R1およびR2については、式(1)と同じものを示す)で表されるジフルオロエチレン誘導体化合物を提供する。
【0019】
R 1-A2-CF=CF-A3-R2 (4)
【0020】
さらに、本発明は、式(1)または式)の化合物からなる液晶化合物および式(1)または式)の化合物を少なくとも1種含有する液晶組成物、さらには、液晶組成物を電極付基板間に挟持してなる液晶電気光学素子を提供する。
【0021】
本発明の式(1)の化合物は、低粘性であり、かつ、他の液晶化合物または非液晶化合物との相溶性に優れ、化学的にも安定な化合物である。
【0022】
さらに、本発明の式(1)の化合物は、前述した式(3)の化合物と比較し、光に対して安定であり耐久性が向上する、弾性係数(K33/K11)が増加し高コントラス化する、液晶上限温度即ちN−I点(TC)が上昇し液晶温度幅が増大する、粘度(η)が減少し高速応答に有利になる等、各特性が改善された化合物である。
【0023】
特に高速スーパーツイストネマチック(STN)型液晶電気光学素子用化合物として、式(3)の化合物より優位性があり、有用である。
【0024】
本発明の化合物としては、以下のような化合物がある。環の数が2個の化合物として以下のような化合物がある。
【0025】
R 1-A2-CF=CF-A3-R2 (4)
【0026】
(4)の化合物としては、より具体的には、以下のような化合物がある。なお、以下の説明においては、式(4)の化合物に限らず、「−Ph−」は1,4−フェニレン基を表し、「−Cy−」はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表し、「−Ch−」は1,4−シクロヘキセニレン基を表し、「−PhF」はモノフルオロ−1,4−フェニレン基またはポリフルオロ−1,4−フェニレン基を表す
【0027】
R 1-Cy-CF=CF-Ph-R2 (4A)
R1-Cy-CF=CF-PhF-R2 (4B)
【0028】
また、環の数が3個の化合物として、以下のような化合物がある。
【0029】
R 1-A1-A2-CF=CF-A3-R2 (51)
R1-A2-CF=CF-A3-A4-R2 (52)
【0030】
(5、式(52)の化合物としては、より具体的には以下のような化合物がある。
【0031】
R 1-Ph-Cy-CF=CF-Ph-R2 (5A)
R1-Cy-Cy-CF=CF-Ph-R2 (5B)
R1-Ch-Cy-CF=CF-Ph-R2 (5C)
R1-PhF-Cy-CF=CF-Ph-R2 (5D)
R1-Ph-Cy-CF=CF-PhF-R2 (5E)
R1-Cy-Cy-CF=CF-PhF-R2 (5F)
R1-Ch-Cy-CF=CF-PhF-R2 (5G)
R1-Cy-CF=CF-Ph-Ph-R2 (5H)
R1-Cy-CF=CF-Ph-Cy-R2 (5I)
R1-Cy-CF=CF-Ph-Ch-R2 (5J)
R1-Cy-CF=CF-PhF-Ph-R2 (5K)
R1-Cy-CF=CF-PhF-Cy-R2 (5L)
R1-Cy-CF=CF-PhF-Ch-R2 (5M)
【0032】
また、環の数が4個の化合物として、以下のような化合物がある。
【0033】
R 1-A1-A2-CF=CF-A3-A4-R2 (6)
【0034】
(6)の化合物としては、より具体的には以下のような化合物がある。
【0035】
R 1-Ph-Cy-CF=CF-Ph-Ph-R2 (6A)
R1-Ph-Cy-CF=CF-Ph-Cy-R2 (6B)
R1-Ph-Cy-CF=CF-Ph-Ch-R2 (6C)
R1-Cy-Cy-CF=CF-Ph-Ph-R2 (6D)
R1-Cy-Cy-CF=CF-Ph-Cy-R2 (6E)
R1-Cy-Cy-CF=CF-Ph-Ch-R2 (6F)
R1-Ch-Cy-CF=CF-Ph-Ph-R2 (6G)
R1-Ch-Cy-CF=CF-Ph-Cy-R2 (6H)
R1-Ch-Cy-CF=CF-Ph-Ch-R2 (6I)
R1-Ph-Cy-CF=CF-PhF-Ph-R2 (6J)
R1-Ph-Cy-CF=CF-PhF-Cy-R2 (6K)
R1-Ph-Cy-CF=CF-PhF-Ch-R2 (6L)
R1-Cy-Cy-CF=CF-PhF-Ph-R2 (6M)
R1-Cy-Cy-CF=CF-PhF-Cy-R2 (6N)
R1-Cy-Cy-CF=CF-PhF-Ch-R2 (6O)
R1-Ch-Cy-CF=CF-PhF-Ph-R2 (6P)
R1-Ch-Cy-CF=CF-PhF-Cy-R2 (6Q)
R1-Ch-Cy-CF=CF-PhF-Ch-R2 (6R)
【0036】
このほか、3環以上の化合物の場合、環と環との間のY1、Y2を単結合以外に変更した以下のような化合物もある。
【0037】
R 2-Ph-C≡C-Ph-CF=CF-Cy-R1 (7A)
R2-Ph-CH2CH2-Ph-CF=CF-Cy-R1 (7B)
R2-Ph-OCH2-Ph-CF=CF-Cy-R1 (7C)
R2-Ph-CH2O-Ph-CF=CF-Cy-R1 (7D)
R2-Ph-COO-Ph-CF=CF-Cy-R1 (7E)
R2-Ph-OCO-Ph-CF=CF-Cy-R1 (7F)
R1-Ph-C≡C-Cy-CF=CF-Ph-R2 (7G)
R1-Ph-CH2CH2-Cy-CF=CF-Ph-R2 (7H)
R1-Ph-OCH2-Cy-CF=CF-Ph-R2 (7I)
R1-Ph-CH2O-Cy-CF=CF-Ph-R2 (7J)
R1-Ph-COO-Cy-CF=CF-Ph-R2 (7K)
R1-Ph-OCO-Cy-CF=CF-Ph-R2 (7L)
【0038】
R 2-Ph-C≡C-Ph-CF=CF-Cy-Ph-R1 (8A)
R2-Ph-CH2CH2-Ph-CF=CF-Cy-Ph-R1 (8B)
R2-Ph-OCH2-Ph-CF=CF-Cy-Ph-R1 (8C)
R2-Ph-CH2O-Ph-CF=CF-Cy-Ph-R1 (8D)
R2-Ph-COO-Ph-CF=CF-Cy-Ph-R1 (8E)
R2-Ph-OCO-Ph-CF=CF-Cy-Ph-R1 (8F)
R2-Ph-C≡C-Ph-CF=CF-Cy-Cy-R1 (8G)
R2-Ph-CH2CH2-Ph-CF=CF-Cy-Cy-R1 (8H)
R2-Ph-OCH2-Ph-CF=CF-Cy-Cy-R1 (8I)
R2-Ph-CH2O-Ph-CF=CF-Cy-Cy-R1 (8J)
R2-Ph-COO-Ph-CF=CF-Cy-Cy-R1 (8K)
R2-Ph-OCO-Ph-CF=CF-Cy-Cy-R1 (8L)
R2-Ph-C≡C-Ph-CF=CF-Cy-Ch-R1 (8M)
R2-Ph-CH2CH2-Ph-CF=CF-Cy-Ch-R1 (8N)
R2-Ph-OCH2-Ph-CF=CF-Cy-Ch-R1 (8O)
R2-Ph-CH2O-Ph-CF=CF-Cy-Ch-R1 (8P)
R2-Ph-COO-Ph-CF=CF-Cy-Ch-R1 (8Q)
R2-Ph-OCO-Ph-CF=CF-Cy-Ch-R1 (8R)
【0039】
また、A2をトランス−1,4−シクロヘキシレン基の水素原子の一部をハロゲン原子またはシアノ基に置換した基にしてもよい。また、A1、A3、A4の環基の水素原子の一部をハロゲン原子もしくはシアノ基に置換した基にしたり、環を構成する=CH−基の一部を窒素原子に置換したり、または、環を構成する−CH2−基の一部を酸素原子もしくは硫黄原子に置換した例として以下のような化合物が挙げられる。
【0040】
【化
Figure 0003541410
【0041】
本発明の式(1)の化合物は、その少なくとも1種を他の液晶化合物および/または非液晶化合物と混合して液晶組成物にして使用される。それにより、液晶組成物を低粘性とすることができ、液晶電気光学素子とした場合に高速応答が可能になる。
【0042】
本発明の化合物と混合させる化合物としては、例えば以下のようなものがある。なお、以下の式でのRC、RDはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基等の基を表す。また、「−NON−」はアゾキシ基を表す。
【0043】
R C-Cy-Cy-RD
RC-Cy-Ph-RD
RC-Ph-Ph-RD
RC-Cy-COO-Ph-RD
RC-Ph-COO-Ph-RD
RC-Cy-CH=CH-Ph-RD
RC-Ph-CH=CH-Ph-RD
RC-Cy-CH2CH2-Ph-RD
RC-Ph-CH2CH2-Ph-RD
RC-Ph-N=N-Ph-RD
RC-Ph-NON-Ph-RD
RC-Cy-COS-Ph-RD
RC-Cy-Ph-Ph-RD
RC-Cy-Ph-Ph-Cy-RD
RC-Ph-Ph-Ph-RD
RC-Cy-COO-Ph-Ph-RD
RC-Cy-Ph-COO-Ph-RD
RC-Cy-COO-Ph-COO-Ph-RD
RC-Ph-COO-Ph-COO-Ph-RD
RC-Ph-COO-Ph-OCO-Ph-RD
【0044】
【化
Figure 0003541410
【0045】
なお、これらの化合物は単なる例示であり、環構造または末端基の水素原子をハロゲン原子、シアノ基、メチル基等に置換してもよく、シクロヘキサン環、ベンゼン環他の六員環、五員環、例えば、ピリジン環、ジオキサン環等に置換してもよく、さらに環と環の間の結合基を変更することもでき、所望の性能に合わせて種々の化合物が選択使用されればよい。
【0046】
本発明の液晶組成物は、液晶セルに注入する等して、電極付の基板間に挟持され、液晶電気光学素子を構成する。
【0047】
代表的な液晶電気光学素子としては、ツイストネマチック(TN)型液晶電気光学素子がある。なお、ここで液晶電気光学素子と表現しているのは、表示用途以外、例えば、調光窓、光シャッター、偏光交換素子等にも使用できるためである。
【0048】
上記液晶電気光学素子は、TN方式、ゲスト・ホスト(GH)方式、動的散乱方式、フェーズチェンジ方式、DAP方式、二周波駆動方式、強誘電性液晶表示方式等種々のモードで使用できる。
【0049】
以下に、液晶電気光学素子の構成および製法の具体例を示す。
プラスチック、ガラス等の基板の表面に、必要に応じてSiO2、Al23等のアンダーコート層やカラーフィルター層を形成する。そしてIn23−SnO2(ITO)、SnO2等の電極を設け、パターニングした後、必要に応じてポリイミド、ポリアミド、SiO2、Al23等のオーバーコート層を形成し、配向処理する。これにシール材を印刷し、電極面が相対向するように配して周辺をシールし、シール材を硬化して空セルを形成する。
【0050】
この空セルに、本発明の液晶組成物を注入し、注入口を封止剤で封止して液晶セルを構成する。この液晶セルに必要に応じて偏光板、カラー偏光板、光源、カラーフィルター、半透過反射板、反射板、導光板、紫外線カットフィルター等を積層する、文字、図形等を印刷する、ノングレア加工する等して液晶電気光学素子とする。
【0051】
なお、上述の説明は、本発明の液晶電気光学素子の基本的な構成および製法を示したものでありその他例えば2層電極を用いた基板、2層の液晶層を形成した2層液晶セル、TFT、MIM等の能動素子を形成したアクティブマトリクス基板を用いたアクティブマトリクス素子等、種々の構成のものが挙げられる。
【0052】
本発明の液晶組成物を液晶電気光学素子に用いることにより、高デューティ比の駆動を行っても、高速応答が期待できる。このため、近年注目されている高ツイスト角のSN型液晶電気光学素子に好適である。その他、多色性色素を用いたGH型液晶表示素子、強誘電性液晶電気光学素子等にも使用できる。
【0053】
本発明の式(1)の化合物は、例えば、次の方法に従って製造される。
【0054】
【化
Figure 0003541410
【0055】
なお、式中の記号は前記したものと同じ意味を示す。
【0056
【0057
【0058】
式(10)のカルボン酸誘導体をリチウムアルミニウムヒドリドによって還元して式(11)のアルコール誘導体とする。次に、この(11)の化合物をピリジニウムクロロクロメートにて酸化して、式(12)のアルデヒド誘導体とする。
【0059】
そして、得られた(12)の化合物をジブロモジフルオロメタンおよびトリスジメチルアミノホスフィンと反応させて、式(13)の1,1−ジフルオロエチレン化合物とする。次いで、三フッ化コバルトによってフッ素化して、式(14)の1,1,1,2−テトラフルオロエタン化合物とし、これをt−ブチルリチウムにて脱HFして式(15)のトリフルオロエチレン化合物とする。最後に式(16)のリチウム化合物と反応させることによって、式(1)のジフルオロエチレン誘導体化合物を得ることができる。
【0060】
また、式(1)の化合物のR1にアシル基を導入するは、R1が水素原子である式(1)の化合物とアシルハライドとのフリーデル・クラフツ反応を用いればよい。
また、シアノ基を導入するは、R1が臭素原子またはヨウ素原子である式(1)の化合物をシアン化銅(CuCNと反応させればよい。
また、式(1)の化合物のY1にビニン基(−C=C−)を導入するは、R1が塩素原子または臭素原子またはヨウ素原子である式(1)の化合物とアルケニルグリニア化合物とのカップリング反応を用いればよい。
また、式(1)の化合物のY1にエチニレン基(−C≡C−)を導入するは、R1が臭素原子またはヨウ素原子である式(1)の化合物とアルキニルリチウム化合物とのカップリング反応を用いればよい。
【0061】
【実施例】
以下において、例1〜4は実施例、例5および6は比較例である。
[例1]
<第1ステップ>
1リットルの四ツ口フラスコにリチウムアルミニウムヒドリドを22.3g(0.588mol)およびテトラヒドロフラン(THF)を300ml入れ、0℃に冷却した。ここにトランス−4−n−プロピルシクロヘキサンカルボン酸100g(0.588mol)をTHF300mlに溶解した溶液を、撹拌しながら10℃以下にて2時間かけて滴下した。さらに室温で12時間撹拌後、20%硫酸水溶液を200ml加え、エーテルで抽出し、水洗、乾燥後、溶媒を留去し、さらに減圧蒸留(88℃/4mmHg)によって、トランス−4−n−プロピルシクロヘキサンメタノール(n−C37−Cy−CH2OH)を89.3g(収率97%)得た。
【0062】
<第2ステップ>
次に、2リットルの四ツ口フラスコにピリジニウムクロロクロメート(PCC)を370.2g(1.717mol)、酢酸ナトリウムを23.5g(0.286mol)および塩化メチレン1.2リットル仕込み、室温下で、第1ステップで得られたトランス−4−n−プロピルシクロヘキサンメタノール89.3g(0.572mol)の塩化メチレン溶液を滴下した。室温で1時間撹拌後、エーテルを1リットル加え、さらに無水硫酸マグネシウム(MgSO4 を添加し、タール状物質を濾別した。濾液を減圧濃縮後、再びエーテルを200ml加えて、タール状物質を濾別した。濾液を減圧濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらに得られた粗液を減圧蒸留(64℃/3mmHg)して、トランス−4−n−プロピルシクロヘキサンアルデヒド(n−C37−Cy−CHO)を56.0g(収率64%)得た。
【0063】
<第3ステップ>
冷却管およびガス吹き込み管付きの1リットル四ツ口フラスコに、水素化カルシウム(CaH2 にて脱水したトリグライムを400ml入れ、0℃に冷却し、ジブロモジフルオロメタン(CF2Br2)を101g(0.481mol)吹き込んだ。次いで、0℃にて、トリスジメチルアミノホスフィン156.7g(0.961mol)200mlのトリグライムとの混合溶液を15分かけて滴下した。滴下後、室温で15分撹拌後、第2ステップで得られたトランス−4−n−プロピルシクロヘキサンアルデヒド37.0g(0.24mol)100mlのトリグライムとの混合溶液を、室温下、15分かけて滴下し、さらに85℃にて2時間反応させた。
【0064】
0℃に冷却後、水300mlを加え、n−ヘキサンで抽出し、水洗、乾燥後、溶媒を留去し、得られた粗液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらに得られた粗液を減圧蒸留(78℃/20mmHg)して、2−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)−1,1−ジフルオロエチレン(n−C37−Cy−CH=CF2)を28.6g(収率63%)得た。
【0065】
<第4ステップ>
2リットルのオートクレーブに第3ステップで得られた2−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)−1,1−ジフルオロエチレンを28.6g(0.152mol)、三フッ化コバルトを123.4g(1.06mol)、水1mlおよびFC−113(CCl2FCClF2)を1000ml仕込み、100℃にて3時間反応させた。冷却後、無機塩を濾別し、有機を10%重炭酸ナトリウム(NaHCO3 水溶液で洗浄し、さらに水洗後、溶媒を留去し、得られた粗液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、2−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)−1,1,1,2−テトラフルオロエタン(n−C37−Cy−CHFCF3)の粗液を15.5g(純度86%)得た。
【0066】
<第5ステップ>
1リットル四ツ口フラスコに、第4ステップで得られた2−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)−1,1,1,2−テトラフルオロエタンの粗液15.5gと乾燥THF200mlを仕込み、−78℃に冷却した。次いで、t−ブチルリチウムのn−ペンタン溶液(1.6mol/リットル)を44.2ml(0.07mol)、30分かけて滴下した。さらに、−78℃にて2時間反応させた後、室温まで昇温し、1N塩酸を500ml加え、有機を分離した。水をn−ヘキサンで抽出後、有機と合わせて水洗、乾燥後、溶媒を留去し、得られた粗液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、2−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)−1,1,2−トリフルオロエチレン(n−C37−Cy−CF=CF2)を7.53g(収率62%)得た。
【0067】
<第6ステップ>
300mlの四ツ口フラスコに4−フルオロヨードベンゼン5.59g(25.2mmol)および乾燥エーテル30mlを仕込み、−78℃に冷却した。次いで、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.63mol/リットル)を17ml(27.8mmol)、15分かけて滴下した。さらに、−78℃にて1時間撹拌後、テトラメチレンジアミン(TMEDA)3.8ml(25.5mmol)を加え、さらに第5ステップで得られた2−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)−1,1,2−トリフルオロエチレン1.3g(6.31mmol)乾燥THF60mlの混合溶液を30分かけて滴下した。さらに同温度で2時間反応させた後、室温まで昇温し、1N塩酸を500ml加え、有機を分離した。水をn−ヘキサンで抽出後、有機と合わせて水洗、乾燥後、溶媒を留去し、得られた粗液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらに得られた固体をメタノールより再結晶して、下記の(E)−1−(4−フルオロフェニル)−2−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)−1,2−ジフルオロエチレン(n−C37−Cy−CF=CF−Ph−F)を0.71g(収率40%)得た。
【0068】
【化
Figure 0003541410
【0069】
本化合物の分析結果を表1に示す。
【0070】
1と同様にして、以下の化合物を得ることができる。
【0071】
CH3-Cy-CF=CF-Ph-F
n-C5H11-Cy-CF=CF-Ph-F
CF3-Cy-CF=CF-Ph-F
F-Cy-CF=CF-Ph-F
CH3O-Cy-CF=CF-Ph-F
n-C3H7O-Cy-CF=CF-Ph-F
CH2=CHCH2-Cy-CF=CF-Ph-F
CH3C≡C-Cy-CF=CF-Ph-F
C3H7-Cy-CF=CF-PhF-F
【0072】
[例2]
1の第6ステップにおいて、4−フルオロヨードベンゼン5.59gのかわりに4−フルオロ−4’−ヨードビフェニルを7.51g(25.2mmol)用いる以外は例1と同様に反応を行い、下記の(E)−1−(4−(4−フルオロフェニル)フェニル)−2−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)−1,2−ジフルオロエチレン(n−C37−Cy−CF=CF−PhPh−F)を0.68g(収率30%)得た。
【0073】
【化
Figure 0003541410
【0074】
本化合物の分析結果を表2に示す。
【0075】
2と同様にして、以下の化合物を得ることができる。
【0076】
CH3-Cy-CF=CF-Ph-Ph-F
n-C5H11-Cy-CF=CF-Ph-Ph-F
CF3-Cy-CF=CF-Ph-Ph-F
F-Cy-CF=CF-Ph-Ph-F
CH3O-Cy-CF=CF-Ph-Ph-F
n-C3H7O-Cy-CF=CF-Ph-Ph-F
CH2=CHCH2-Cy-CF=CF-Ph-Ph-F
CH3C≡C-Cy-CF=CF-Ph-Ph-F
C3H7-Cy-CF=CF-PhF-Ph-F
【0077】
[例3]
メルク社製液晶組成物「ZLI−1565」80wt%に、例で得られた化合物(E)−1−(4−フルオロフェニル)−2−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)−1,2−ジフルオロエチレンを20wt%加えて液晶組成物とした。得られた液晶組成物の液晶物性を表3に示す。
表3より明らかなように、本発明の液晶組成物は低粘性であり、高速STN液晶電気光学素子用の液晶組成物として有用である。
【0078】
[例〜6
メルク社製液晶組成物「ZLI−1565」80wt%に、例で得られた化合物を20wt%加えて液晶組成物(例4)とした。比較例として、メルク社製液晶組成物「ZLI−1565」のみの液晶組成物(例5)およびメルク社製液晶組成物「ZLI−1565」80wt%に(E)−1,2−ジフルオロ−1,2−ビス(4−n−プロピルフェニル)エチレンを20wt%加えた液晶組成物(例6)を作成した。これらを偏光板付きの液晶セルに封入して、STN型液晶表示素子を作した。
【0079】
の例4および例6の液晶表示素子の表示特性はほぼ同程度であり、例5の液晶表示素子に比べて高速応答が得られた。次いで、例4および例6の液晶表示素子紫外線カーボンアークランプを用いて紫外線を500時間照射した。照射後、各素子内の液晶組成物を分析した。
【0080】
その結果、例4の液晶組成物の場合には、0.3%のシス体である(Z)−1−(4−フルオロフェニル)−2−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)−1,2−ジフルオロエチレンが生成した。一方、例6の液晶組成物の場合には、6.3%のシス体である(Z)−1,2−ジフルオロ−1,2−ビス(4−n−プロピルフェニル)エチレンの生成が確認された。
【0081】
【表1】
Figure 0003541410
【0082】
【表2】
Figure 0003541410
【0083】
表3
Figure 0003541410
【0084】
【発明の効果】
本発明の式(1)で表される化合物は、粘性が低い。したがって本発明の化合物を液晶組成物として用いた場合、少量の添加でも該組成物を用いて作製された液晶電気光学素子は応答速度が向上する。また、低電圧駆動、高デューティ比の駆動、広温度域動作等が可能になる。
【0085】
また、本発明の化合物は、ジフルオロスチルベンタイプの化合物よりも、紫外光に対して安定であるため、本発明の液晶組成物の耐久性が向上する。また、弾性係数(K33/K11)が増加するため高コントラス化する、液晶上限温度即ちN−I点(TC)が上昇し液晶温度幅が増大する、粘度(η)が減少するため高速応答に有利になる等、本発明の化合物は、液晶電気光学素子の各特性改善する化合物である。
【0086】
本発明の化合物は、特に高速STN液晶電気光学素子用化合物として、ジフルオロスチルベン化合物より優位性があり、有用である。

Claims (5)

  1. 下式(1)で表されるジフルオロエチレン誘導体化合物。
    R 1-(A1)m-Y1-A2-CF=CF-A3-Y2-(A4)n-R2 (1)
    ただし、式(1)中、A1、A2、A3、A4、Y1、Y2、R1、R2、m、nは下記のものを示す。
    3は1,4−フェニレン基を示し、A2はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を示し、A1、A4は相互に独立してトランス−1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、または1,4−シクロヘキセニレン基を示し、これらの環基は夫々非置換であるかまたは置換基として1個以上のハロゲン原子もしくはシアノ基を有し、これらの環基中の環を構成する1個以上の=CH−基は窒素原子に置換されていてもよく、環を構成する1個以上の−CH2−基は酸素原子または硫黄原子に置換されていてもよい。
    1、Y2は相互に独立して−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH2CH2−、−CH=CH−、−OCH2−、−CH2O−または単結合を示す。
    2はフッ素原子を示し、R1は、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子またはシアノ基を示し、R1がアルキル基の場合には、このアルキル基中の炭素−炭素結合間またはこのアルキル基と環基との間の炭素−炭素結合間に酸素原子、カルボニルオキシ基またはオキシカルボニル基が挿入されてもよく、このアルキル基中の炭素−炭素結合の一部が三重結合または二重結合にされていてもよく、このアルキル基の1個の−CH2−基がカルボニル基に置換されていてもよく、このアルキル基中の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されていてもよい。
    m、nは相互に独立して0または1を示す。
  2. 下式)(ただし、式)中A2、A3、R1およびR2については、式(1)と同じものを示す)で表される請求項1に記載のジフルオロエチレン誘導体化合物。
    R 1-A2-CF=CF-A3-R2 (4)
  3. 請求項1または2に記載のジフルオロエチレン誘導体化合物から選ばれる液晶性を有するジフルオロエチレン誘導体化合物。
  4. 請求項1または3に記載のジフルオロエチレン誘導体化合物を少なくとも1種含有する液晶組成物。
  5. 求項4に記載の液晶組成物を電極付基板間に挟持してなる液晶電気光学素子。
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