JP3540073B2 - 結晶成長方法 - Google Patents

結晶成長方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3540073B2
JP3540073B2 JP30781195A JP30781195A JP3540073B2 JP 3540073 B2 JP3540073 B2 JP 3540073B2 JP 30781195 A JP30781195 A JP 30781195A JP 30781195 A JP30781195 A JP 30781195A JP 3540073 B2 JP3540073 B2 JP 3540073B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
crystal
solution
growth
seed crystal
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP30781195A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH09110576A (ja
Inventor
敏弘 楠木
茂夫 児玉
貴志 鈴木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujitsu Ltd
Original Assignee
Fujitsu Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujitsu Ltd filed Critical Fujitsu Ltd
Priority to JP30781195A priority Critical patent/JP3540073B2/ja
Publication of JPH09110576A publication Critical patent/JPH09110576A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3540073B2 publication Critical patent/JP3540073B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶成長方法に関し、より詳しくは、IV−IV族2元結晶又はIII-V族3元結晶のような結晶の成長法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体をはじめ、酸化物、金属等の結晶の機能を利用した電子素子、光学素子が多く使用されている。特に、化合物半導体及びその混晶は、その組成を変化させることによりエネルギーギャップ、屈折率、移動度、格子定数などの特性が変化するので、これを利用した超高速素子或いは受光・発光素子のような光素子として広く使用されている。これらの素子は、一般に、2元結晶の基板の上に2元以上の化合物半導体層をエピタキシャル成長して作成されるが、成長された結晶の格子定数が問題になる。
【0003】
基板結晶とその上の成長結晶の間で格子定数の差が大きくなると、成長された結晶層には欠陥が発生し易く、高性能の素子は実現できない。そこで、2元の基板結晶と格子整合するような3元或いは4元の混晶を成長させているのが現状であるが、混晶を選択する範囲は自ずから狭くなる。
従って、2元の基板結晶の格子定数とその上に成長する結晶層の格子定数とを整合させることを考えると、素子の効率向上や高速化を図った素子設計を最適化することができなくなる。
【0004】
このような不都合を解決し、素子特性の最適化を行えるのが3元以上の化合物半導体基板である。そのような化合物半導体基板の組成を変えることにより格子定数を任意に設定できれば、欠陥の少ない結晶成長が行え、高性能な素子を実現できる。
3つ以上の元素を含む融液又は溶液を用いて3元以上の化合物半導体結晶を成長する過程では、融液又は溶液(液相)の組成と成長した結晶(固相)中の組成とが相違して分配係数が「1」にならない。このため、そのような結晶方法によれば成長過程において、結晶中に取り込まれ易い元素の量が融液又は溶液内で徐々に少なくるので、成長した結晶での成長方向の組成分布は所謂ノーマルフリージングの状態になる。この結果、均一な組成分布をもつ3元以上の化合物半導体を厚く成長できないことになる。
【0005】
そこで、固相に析出することにより液相中で枯渇した特定の元素をその枯渇量に応じて外部から液相中に補給する方法が特開平4-114991号公報などに記載されている。例えば、InGaAsの液体封止引上成長法(LEC(liquid encapsulated czochralski) 法)では、成長中に枯渇するGaAsをルツボ内の融液に補給する方法が採られている。
【0006】
しかし、LEC法によれば、融液の温度のゆらぎを防止するために精度良い温度管理が要求される。
LEC法以外の3元結晶の成長方法として温度差成長法やゾーンメルト成長法がある。
温度差法では、まず図18(a) に示すように、ルツボ101 内に結晶成長材料102 と溶液104 と種結晶103 を順に隣接して封入した状態にする。その結晶成長材料102 には溶質が含まれている。また、溶液104 は、加熱炉105 の熱によって低融点材料が溶けたものである。
【0007】
その状態から加熱炉105 内のルツボ101 の加熱温度を上げてゆくと、溶融温度の違いから、種結晶103 及び結晶成長材料102 の溶液104 に接している表面部分が溶解する温度に達する。それらの種結晶103 及び結晶成長材料102 から溶けた溶質は溶液104 内で飽和状態になる。
そして、結晶成長材料102 が溶液104 よりも高温側になるように、図18(b) に示すような温度勾配を与えると、結晶成長材料102 の溶解度が高くなる。この結果、溶液104 の溶質の濃度は、種結晶103 側よりも結晶成長材料102 側の溶質の濃度が高くなって溶質濃度勾配が生じる。しかし、その後に溶質濃度勾配が無くなるように、溶質は低温側(種結晶103 側)に拡散する。この溶質拡散によって、種結晶103 側の溶液104 では溶質が過飽和状態になるので、種結晶103 に結晶が成長する。
【0008】
その結晶成長の結果、溶液104 中の溶質は未飽和となるため、結晶成長材料102 表面の溶解がさらに進む。
温度勾配を維持している状態で、この種結晶103 表面での成長、および結晶成長材料102 の溶解は継続する。また、成長速度と同じ速度で加熱炉105 を結晶成長材料102 側へ移動させて温度分布を変えれば、成長面の温度が一定になるため成長組成を均一に保つことができる。
【0009】
この温度差法によれば、溶液104 から種結晶103 に析出させる元素を結晶成長材料102 から供給することになるため成長材料全体で特定元素が枯渇することはない。
次に、InGaAs結晶成長を例にあげてゾーン法を説明する。
図17は、InAs−GaAs準2元系状態図である。この図からわかるように、x=0.05(図17中のa点)のInx Ga1-x As結晶を液相から析出させるためには、融点Tg1で固相と平衡を保つ液相の組成を選択しなけらばならない。この場合の固相の組成と液相の組成値xは大きく異なる。
【0010】
そこで、図18(a) に示す結晶材料102 として、図17中のa点の組成値x1 を持つ材料(又は平均としてa点の組成値x1 を持つ2種類以上の材料の集合体)を用いるとともに、融液104 として図17中のb点の組成値x2 を持つ材料を用いる。そして、図18(b) に示すように、融液104 の温度を高くするとともに、a点の組成値x1 を持つ種結晶103 が融解しないように融液104 の種結晶103 側が低温になるような温度分布を形成する。これにより、図17中のb点の組成を持った融液104 から種結晶103 上に結晶を成長させる。
【0011】
また、融液104 のうち種結晶103 側よりも結晶材料102 側の温度を高く分布させることにより、結晶材料102 を固相・液相界面で融解させて結晶成長により不足した原料を融液104 に補給する。その結晶成長にともない、成長速度と同じ速度で加熱炉105 を成長材料側に移動させると、結晶成長と融液補給の双方が進むことになる。
【0012】
なお、融液はIII-V族結晶を加熱溶融して得られたもので、また、溶液は全体としてIII-V族結晶の化学量論的組成を構成しない材料を加熱溶融して得られたものである。
ところで、例えば高周波特性又は発光特性の改善を目的として、以上のような3元結晶の他に、2元系混晶薄膜を用いたヘテロ接合バイポーラトランジスタ或いは量子井戸レーザへの適用が検討されている。
【0013】
例えば、SiGeのように全率固溶系をなす2元系単結晶は、その組成比を任意に設定して物性を制御できるため、非常に自由度の高い電子素子の設計が可能になる。
しかし、組成比の異なる2元系結晶は、格子定数も相違する。このため、かかる2元系混晶薄膜の結晶性又はヘテロ界面の特性を優れたものにするために、これら2元系混晶は、同一格子定数を有する2元系単結晶を基板として、その基板上に堆積することが望ましい。
【0014】
このため、任意の一定の格子定数を有する2元系単結晶、即ち任意に制御された組成比を有し、かつ組成比が全体について一定である2元系単結晶の製造方法が必要とされる。
全率固溶系のように固相線と液相線とが分離している2元系では分配係数が1と異なるため、チョクラルスキー法によっては均一な組成の単結晶を製造することは難しい。かかる問題は、ゾーンメルティング法若しくはフローティング法によって解決される。以下、組成を均一化するための従来法について説明する。
【0015】
図19は全率固溶2元系相図であり、Si−Ge2元系の液相線及び固相線、並びに溶液から析出する2元系単結晶の組成を表している。
図19に示すように、融点の低い元素と融点の高い元素とからなる組成比xsの2元系単結晶、例えばGeとSiからなる組成比xsのSixsGe1-XS2元系単結晶を成長するには、組成比xsに対応する固相線ロの温度Tg2に、その温度Tg2で組成比xsの固相と平衡状態にある組成比xsの溶液を保持し、温度Tg2の飽和溶液からSiGe単結晶を析出させることによりなされる。
【0016】
かかる飽和溶液から2元系単結晶を析出させる単結晶製造方法では、溶液温度により一義的に単結晶の組成比が定まるために、溶液温度を一定に制御、保持することにより、組成比を精密に制御した結晶を容易に製造できる。
以下に、SixsGe1-XS単結晶の製造の従来方法について説明する。
図20は、従来例説明図であり、ブリッジマン炉を用いて飽和溶液から2元系単結晶を製造する方法を表している。なお、図20(a) は、単結晶製造工程途中のアンプルの断面を表し、図20(b) では、その時点でのブリッジマン炉内の温度分布を表している。
【0017】
図20(a) に示すように、円筒状のアンプル111 内にアンプル111 の先端111a部分に種結晶112 を、種結晶112 に接して結晶材料棒114 を後端部分に挿入し、アンプル111 の先端111a及び後端111bを封止する。この結晶材料棒114 は通常、組成比xsのSi−Geの焼結体として形成される。
ついで、アンプル111 をブリッジマン炉に挿入して結晶成長温度Tg2まで昇温して、種結晶112 と結晶材料棒114 との界面に組成比xmの溶液帯115aを形成する。かかる溶液帯115aは、種結晶112 と結晶材料棒114 との界面に結晶材料棒114 より低融点の材料、例えばGeの薄片を挟み込むことで形成される。即ち、原材料としてGeの薄片と結晶材料棒114 を用いる。他の溶液帯115aの形成方法には、種結晶112 結晶材料棒114 との界面近傍を局部的に加熱溶融した後、溶液温度をTg2に降温して保持する方法もある。いずれの方法によっても溶液帯115aの溶液は、組成xmの結晶材料棒114 と温度Tg2で熱平衡し、飽和溶液となる。
【0018】
成長開始時には、図20(b) に示すように、溶液帯115a及び結晶材料棒114 は、結晶成長温度、即ち溶液温度Tg2に保持される。他方、種結晶112 は、溶液帯115aとの界面で温度Tg2に保持され、同時にアンプル先端111aから冷却され、結晶成長のために必要な温度勾配が与えられる。
ついで、アンプル111 を先端111a方向に移動する。このとき、SiGe結晶が溶液中から種結晶112 上に析出するとともに、一方では結晶材料棒114 が溶液帯115a中に溶解して溶液帯115aの組成xmを一定に保持しつつ、溶液帯115aは炉に対する一定位置に留まる。即ち、アンプル111 に対して、溶液帯115aは後端111bに向けて移動する。この結果、図20(a) に示すように、種結晶112 からエピタキシャル成長した2元系単結晶116aが製造される。このとき、図20(b) に示すように、2元系単結晶の成長面、即ち2元系単結晶と溶液帯115aとの界面Aの温度をTg2に保持することにより、常に一定の組成xsを有するSixsGe1-XS単結晶が製造される。
【0019】
他の従来の2元系単結晶の製造方法は、溶液帯115aを形成し移動させるためにゾーンメルティング法又はフローティングゾーン法を用いる。これらの方法では炉内の温度分布に代えて、溶液帯115aの部分のみを高周波加熱等により局部的に加熱することで溶液帯115aを形成する。
ところで、上述した2元系単結晶の製造方法では、組成比xsの均質な組成を有する結晶材料棒が必要になる。しかし、全率固溶の2元系において、均質な組成の結晶材料棒を製造することは困難である。例えば、SiとGeは比重が異なるため、混合して溶融しても容易には均一に混合された溶液にはならない。また、溶液から析出するときの分配係数が1と異なるため、初期に固化した部分はSiに富むために融点が高く、最後に固化した部分はGeに富むために融点の低いものとなる。このため、溶液を固化して製造した結晶材料棒は、通常は不均一な組成を有する。さらに、粉体のSi及びGeを焼結する方法は、不純物の汚染を生じるおそれが大きく、電子素子材料の製造いは好ましくない。また、かかる汚染を少なくするために、粒子の大きな粉体を用いると十分に焼結せず、Si又はGeの粒子がそのまま残存することになる。
【0020】
このような不均質な結晶材料棒を用いた場合、図20(a) に示すように、本来は固体であるべき結晶材料棒114 の内部に、Geに富む低融点部分が溶融して、液滴115 が発生する。この液滴115 が、結晶材料棒114 の溶液帯115aとの界面に到達すると結晶材料棒114 の界面に凹凸が生じ、結晶成長条件を擾乱し、良質の結晶を成長する障害となる。また、例えば液滴に至らなくても、組成が異なる部分が溶液に溶解する際に、溶液組成の一時的な変動を招き、結晶組成の変動要因となる。
【0021】
ゾーンメルト法又はフローティングゾーン法では、溶液帯のみ高温に加熱されるため結晶材料棒中の組成変動の影響は比較的小さい。しかし、溶液帯と結晶材料棒との界面、或いは、結晶成長界面における温度勾配が大きいため、温度変動の影響を受けやすく良質の結晶の製造が難しい。また、小さいとはいえ、溶液帯の界面に凹凸を生じることは避けられない。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した3元結晶成長法によれば、結晶成長を行う場合に目的とする結晶と同一組成で均一な結晶材料102 が必要となるが、そのような2元以上の化合物の材料を得ることは従来では難しい状態にある。
また、上記したような2元系単結晶の製造方法では、均一な組成の結晶材料棒114 を製造することが難しいため、結晶材料棒内の組成不均一に起因して溶液帯と結晶材料棒との界面に凹凸を生じ、良質の結晶の製造ができない。
【0023】
本発明は、組成が均一な結晶材料を使用せずに良質の化合物結晶を成長させる結晶成長方法を提供することを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
(手段)
上記した課題は、図1,2、図5,6に例示するように、種結晶2,12の隣に該種結晶2,12よりも融点の低い第1の材料3,13と該第1の材料3,13よりも融点の高い第2の材料4,14とを交互に複数層づつ配置してこれらを容器1,11内に収納し、該容器1,11を加熱雰囲気に入れて前記第1の材料3,13及び前記第2の材料4,14の構成元素を出発材料として結晶2a,12aを該種結晶表面に成長することを特徴とする結晶成長方法によって解決する。
【0025】
この結晶成長方法において、図1、図2に例示するように、前記種結晶2が溶解せず、かつ前記第1の材料3が溶解するような温度勾配を前記加熱雰囲気に与え、前記第1の材料3を溶解して溶液3aとするとともに、該溶液3aに接する前記第2の材料4の面の少なくとも一方を溶解して構成元素を該溶液3aに供給し、前記温度勾配の分布を前記種結晶2側から前記第2の材料4側に向けて移動させて前記溶液3a中の複数元素の溶解度の温度依存性を利用して前記種結晶2上に前記結晶2aを成長させることを特徴とする。
【0026】
この場合、前記種結晶2は2成分又は3成分からなるIII-V族の3元化合物結晶であり、前記溶液3aは III族又はV族の元素の1、2又は3成分の元素を含み、前記第2の材料4はIII-V族の2元化合物からなることを特徴とする。
上記した結晶成長方法において、前記結晶12aはIII-V族の3元化合物からなり、前記第1の材料13と前記第2の材料14はそれぞれ III族元素又はV族元素のいずれかが異なるIII-V族多元化合物であって、前記第1の材料13の全体が融解し、前記第2の材料14全体が融解せず、前記種結晶12側がその融点以下になる温度分布を前記加熱雰囲気に与え、前記温度勾配の分布を前記種結晶12側から前記第2の材料14側に向けて移動させて、前記第2の材料14からの溶融元素が加わった前記第1の材料13の融液13a内の化合物が前記種結晶12上で固相となって前記結晶12aを成長することを特徴とする。
【0030】
上記した課題は、図14に例示するように、種結晶41の隣に該種結晶41よりも融点の低い第1の材料42と該第1の材料42よりも融点の高い第2の材料43とを交互に複数層づつ配置してこれらを容器44内に収納し、前記種結晶41が溶融せず且つ前記第1の材料42の融点以上の温度で前記第1の材料42及び前記第2の材料43を加熱する温度分布を持つ加熱雰囲気中に該容器44を入れ、これにより、前記第1の材料42を溶融して液体にするとともに、前記第1の材料42の少なくとも前記種結晶41側の面を溶解し、前記温度分布を前記種結晶41から前記第2の材料43に向けて移動することにより前記液体中の構成元素を出発材料として該種結晶4表面に結晶46を成長し、前記第1の材料42は、前記種結晶41に接する前記液体45が前記結晶46の成長により消失した時点で同時に消失する厚さを有することを特徴とする結晶成長方法により解決する。
【0031】
上記した課題は、図14に例示するように、成長しようとする化合物Yx 1-X (xは組成比)よりなる結晶46を成長するために、原子量又は分子量がMY であって比重dY の材料Yよりなる第1の材料板42と、原子量又は分子量がMZ であって比重dZ の材料Zよりなる第2の材料板43を使用し、容器44内において、種結晶41の隣に、次式の関係を満たす厚さtY の前記第1の材料板42と厚さtZ 前記該第2の材料板43とを順に1層又は複数層交互に配置し、
Z ≦(MZ ・dY /MY ・dZ )・((1−x) /x) ・tY
前記種結晶41が溶融せず且つ前記材料Yの融点以上の温度で前記第1の材料板42及び前記第2の材料板43を加熱する温度分布を持つ加熱雰囲気中に前記容器44を入れ、これにより、前記第1の材料板42を溶融して液体45にするとともに、前記第2の材料板42の少なくとも前記種結晶41側の面を融解し、前記温度分布を前記種結晶41から前記第2の材料43に向けて移動することにより前記液体45中の構成元素を出発材料として該種結晶41表面に結晶46を成長することを特徴とする結晶成長方法によって解決する。
【0032】
(作用)
本発明によれば、温度差成長法、ゾーン成長法において、種結晶の隣に配置する成長材料として種類の異なる例えば2元化合物の第1及び第2の成長材料を使用し、融点の低い第1の成長材料が種結晶側になるようにそれらの成長材料を交互に複数層づつ配置するとともに、これらを加熱雰囲気に置いて第1の成長材料を溶融して溶液又は融液に変え、低温の種結晶上に化合物結晶を成長するようにしている。
【0033】
この場合、種結晶上に結晶が成長する一方で、第2の成長材料の一部が溶融して第1の成長材料からなる溶液又は融液中に混合するので、その液体中では多元の成長材料が育成される。その成長材料は、結晶成長により消費されることになる。
したがって、作成の困難な3元以上の成長材料を使用することなく、組成均一性の高い多元材料が種結晶に供給されることになるので、種結晶上に組成の均一な結晶を成長できる。種結晶上に成長する多元結晶の厚さは、第1の成長材料と第2の成長材料を複数交互に配置することにより厚くなる。
【0034】
また、別の発明によれば、種結晶の隣に配置する成長材料として種類の異なる単元素からなる第1及び第2の成長材料を使用し、融点の低い第1の成長材料が種結晶側になるようにそれらの成長材料を交互に複数層づつ配置するとともに、これらを加熱雰囲気に置いて第1の成長材料を溶融して融液に変え、低温の種結晶上に2元系結晶を成長するようにしている。
【0035】
この場合にも、2元系結晶が種結晶上に成長する一方で、第2の成長材料の一部が溶融して第1の成長材料からなる融液中に混合するので、その融液中では2元の成長材料が育成される。その成長材料は結晶成長により消費されることになる。
したがって、作成の困難な2元の成長材料を使用することなく、組成均一性の高い2元材料を種結晶に供給することができるので、種結晶上に組成の均一な2元結晶を成長できる。種結晶上に成長する2元結晶の厚さは、第1の成長材料と第2の成長材料を複数交互に配置することにより厚くなる。
【0036】
また、さらに別の発明によれば、上記した発明における第1の材料と第2の材料の厚さを最適化しているために、第2の材料が結晶中に残ることはなくなり、しかも、成長した結晶の組成が不均一になることもない。
【0037】
【発明の実施の形態】
そこで、以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1(a) は、本発明の第1実施形態として温度差成長法を改善した3元結晶の成長方法に使用する半導体成長装置の概要構成図、図1(b) はその半導体成長装置の加熱炉の温度分布を説明する断面図である。
【0038】
まず、図1(a) に示すように、アンプル1内の一端側に III族又はV族の元素A、B、Cのうちの2又は3成分からなる種結晶2を入れるとともに、その種結晶2の隣からアンプル1内の他端に向けて出発材料である溶液材料3と第一の成長材料4とを交互に収納した後に、そのアンプル1の全体を閉じた状態にする。III族元素としてはAl、Ga、Inがあり、V族元素としてはP 、As、Abがある(第2実施形態でも同じ)。
【0039】
溶液材料3は元素A、B、Cのうち少なくとも1成分からなり、また、第一の成長材料4は元素A、B、Cのうちの2成分からなる。溶液材料3は種結晶2と第一の成長材料4のいずれよりも融点が低い材料からなる。種結晶2として例えば単結晶のInGaAsを使用し、溶液材料3として例えばInかInGa、或いはInGaリッチなInGaAsを使用し、第一の成長材料4として例えばGaAsを使用する。なお、溶液材料3は、その全体がIII-V族化合物半導体の化学量論的組成からは構成されてはおらず、III 族又はV族元素がリッチな状態となっている。
【0040】
この状態でアンプル1を加熱炉5に入れる。
アンプル1を筒状の加熱炉5に入れて温度を上げると、まず、所定温度T1 で溶液材料3が溶けて溶液3aとなり(図2(a))、さらに温度を上げるとその溶液3aに接触している種結晶2の表面と第一の成長材料4の表面が溶解し、ついには溶液3aは元素A、B、Cを含むようになって飽和する(図2(b))。
【0041】
そして、種結晶2が低温側になるように、図1(b) に示すような温度勾配を与える。即ち、種結晶2では、液晶材料3の融点と同じかそれよりも低い温度に設定される。また、溶液材料3では、溶液材料3の融点かそれよりも高い温度で加熱され、しかも種結晶2に近い領域の温度が低くなるように設定される。また、第一の成長材料4では、隣接する溶液材料3の加熱温度と同じかそれよりも高い温度であって、しかも種結晶2に近い領域の温度が低くなるように設定される。
【0042】
この温度勾配によると、図2(c) に示すように、温度差成長法の原理によって種結晶2上に元素A、B、Cよりなる3元の結晶2aが成長する。また、溶液3aの温度の低い側に接する第一の成長材料4の表面には元素A、B、Cよりなる第二の成長材料6が析出する。一方、溶液3aの温度の高い側に接する第一の成長材料4の表面では溶解が生じ、溶解した材料は溶液3aに供給される。
【0043】
なお、図2(c) は、図1(b) の温度勾配を維持しながら、アンプル1又は加熱炉5の少なくとも一方を僅かに移動して種結晶2表面での3元結晶2aの成長を進めた状態を示している。
このような温度勾配を維持しながら、アンプル1と加熱炉5の少なくとも一方をさらに移動して、成長速度と同じ速度で種結晶2を低温側に移動させて成長を続けると図2(d) のように溶液3aに隣接する第一の成長材料4は全て溶けて無くなる。しかし、第一の成長材料4の表面に育成された3元素からなる第二の成長材料6が第一の成長材料4の代わりに存在するので、不足した元素は第二の成長材料6から溶液3a中に少しずつ溶ける。この結果、種結晶2表面には3元結晶2aがさらに成長する。
【0044】
ところで、成長初期は、溶液材料3を溶解させて溶液3aとし、この溶液3aの材料と第一の成長材料4の表面から溶けた材料に基づいて3元結晶2aを析出させているために、その溶液材料3に含まれる1つの元素が徐々に減少する。例えばGaAsを第一の成長材料4に用い、In−Gaを溶液3aに用いてInGaAsを種結晶2の表面に析出させる場合には、種結晶2表面でInGaAsの結晶成長が進むにつれて溶液3a内のInが減少し、この結果、成長する3元結晶2aのIn組成も徐々に減少する。
【0045】
しかし、図2(d) に示す段階まで進むと、溶液3aの隣に成長した3元の第二の成長材料(例えばInGaAs)6の表面が溶けて、そこから不足した元素(In)が途切れずに溶液3aに供給されるので溶液3aの組成変動が少なくなり、組成の均一性が向上した3元結晶成長が可能になる。
アンプル1を加熱炉5に入れる場合には、実際はアンプル1を石英製アンプルに収納するので、その具体例を図3に基づいて説明する。
【0046】
本例では、内径20mm、外径24mm、長さ14mmの円筒状のアンプル1を使用し、その中に2mm厚のIn0.1G0.9As 単結晶よりなる種結晶2を入れ、その上に、In0.9Ga0.1よりなる2mm厚さの溶液材料3とGaAsよりなる2mm厚さの第一の成長材料4を順に2層ずつ交互に重ねる。
次に、内径25mm、外径28mmの円筒状の石英製アンプル7の1つの開放端からアンプル1をその中に入れ、続いて真空ポンプにより石英製アンプル内を5×10-7Torr以下に減圧する。そして、石英製アンプル7の開放端を溶接によって閉塞すると図3(a) のようになる。なお、図3(a) 中で符号7aは溶接部を示している。
【0047】
続いて、図3(b) に示す温度勾配を有する図1(a) の加熱炉5、例えば電気加熱炉の中に石英製アンプル7を入れ、種結晶2内から種結晶2と溶液材料3の境界にかけて10℃/cmの温度勾配をつけた熱分布とし、その境界の温度が約800℃になるようにするとともに、その境界及び種結晶2から遠くなるにつれて温度が僅かずつ増えるような温度分布とする。この温度分布で溶液材料3が溶解して溶液3aとなり、また種結晶2及び第一の成長材料4は溶液3aに接する表面が溶解する。
【0048】
そして、石英製アンプル7を低温側の方向(図中矢印方向)に2.5μm/min の速度で移動させる。なお、石英製アンプル7を固定して加熱炉5をその逆方向に同じ速度で移動させてもよい。
このような移動状態を続けて、図2に示すような成長を26時間行ったところ種結晶2表面に直径20mm、長さ4mmのInx Ga1-x As結晶2aが成長した。成長した結晶の固相成長は、成長界面から2mm厚まではxが0.1から0.09まで徐々に減少したが、その後の成長では0.1と一定であった。
【0049】
ところで、上記した例では、溶液材料3と第一の成長材料4のそれぞれが交互に2層ずつ重ねられているが、図4(a) に示すように交互に複数層重ねてもよい。これによれば、より長尺の結晶成長を行うことができる。さらに、複数の溶液材料3の組成を変えることにより、成長方向に意図的に組成分布を与えることができ、また、ドーピングも可能である。
【0050】
ところで、溶液材料3と第一の成長材料4を交互に複数層重ね、温度勾配を一定にすると、その試料が長尺過ぎるために、種結晶2と反対側の端部の温度が高くなり過ぎるので、図4(b) に示すように結晶成長領域、例えば種結晶2の次から4層目までにのみ温度勾配をかけ、その他の溶液材料3及び第一の成長材料4では平坦な温度分布となるようにすると、過熱が回避される。
(第2実施形態)
図5(a) は、本発明の第2実施形態としてゾーン法を改善した3元結晶の成長方法に使用する半導体成長装置の概要構成図、図2(b) はその半導体成長装置の加熱炉の温度分布を説明する断面図である。
【0051】
まず、アンプル11内において、その一端側に3元混晶の種結晶12を入れ、その隣から他端に向けて出発材料である第一のIII-V族2元材料13と第二のIII-V族2元材料14とを交互に収納した後に、そのアンプル12の全体を閉じた状態にする。
種結晶12及び後述する成長結晶は第一のIII-V族2元材料13よりも融点が高く、また、第一のIII-V族2元材料13は第二のIII-V族2元材料14よりも融点が低い材料からなる。第一のIII-V族2元材料13と第二のIII-V族2元材料14は、 III族元素又はV族元素のいずれかが異なっている。種結晶12として例えば単結晶のInGaAsを使用し、第一のIII-V族2元材料13として例えばInAsを使用し、第二のIII-V族2元材料14として例えばGaAsを使用する。
【0052】
この状態で、加熱炉15に入れる。
アンプル11を筒状の加熱炉15に入れて温度を上げゆくと、まず、図6(a) に示すように、第一のIII-V族2元材料13の融点で第一のIII-V族2元材料13が溶けて融液13aとなる。
さらに第一のIII-V族2元材料13の加熱温度を例えば図17に示す種結晶12の融点Ta まで上げると、図6(b) に示すように、融液13aに接している種結晶12表面と第二のIII-V族2元材料14表面が融解し、ついには融液13aの組成は例えば図17のb点のものになる。
【0053】
このことを考慮して、種結晶12を温度Ta 以下、第一のIII-V族2元材料13を温度Ta 又はそれ以上の温度で加熱するとともに、種結晶12が温度Ta で低温側になり第二のIII-V族2元材料14が高温側になるように、図5(b) に示すような温度勾配を与える。その条件により、第二のIII-V族2元材料14のうち種結晶12側の第一面の元素が融液13a中に溶解する。
【0054】
これにより、融液13a中における特定の元素(例えばGa)の濃度は、種結晶12側の領域よりも第二のIII-V族2元材料14側の領域の方、即ち温度の高い方が高くなる。そこで、融液13a内においては、その特定の元素は濃度分布の差によって種結晶12側(低温側)に拡散し、ついには種結晶12寄りの温度Ta の領域で過飽和になるので図6(c) に示すように種結晶12に3元結晶12aが成長する。また、同様な現象によって、第二のIII-V族2元材料14のうちの種結晶12と反対側の第二の面にはIII-V族3元材料16が析出する。
【0055】
それら3元結晶12a、III-V族3元材料16の成長により、融液13a内の温度の高い側の領域では特定の元素が未飽和になるため、第二のIII-V族2元材料14の種結晶12側の第一の面はさらに融解する。
このような温度の勾配を維持しながら、アンプル11又は加熱炉15の少なくとも一方を移動して、成長速度と同じ速度で種結晶12を低温側に移動させて成長を続けると図6(d) のように融液13aに挟まれている第二のIII-V族2元材料14は全て溶ける。
【0056】
一方、第二のIII-V族2元材料14の表面に析出した3III-V族3元材料16が第二のIII-V族2元材料14の代わりに存在するので、その表面から3元材料が徐々に溶け出して融液13aに供給されるので、種結晶12の表面にさらに3元結晶12aが成長する。
成長初期は、第一のIII-V族2元材料13を溶解させて融液13aとし、この融液13aの材料と第二のIII-V族2元材料14の表面から溶けた材料から3元結晶12aを析出させるために、その溶液13aに含まれる1つの元素が徐々に減少する。例えば第二のIII-V族2元材料14としてGaAsを用い、融液13aとしてIn−Asを用いてInGaAsの3元結晶12aを析出させる場合には、結晶成長が進むにつれて融液13aのIn組成は減少し、このため、析出する3元結晶12aのIn組成も徐々に減少する。
【0057】
しかし、図6(d) の段階まで進むと、第二のIII-V族2元材料14の代わりに成長したIII-V族3元材料(例えばInGaAs)16の表面から不足した元素(In)が次々に供給されるので溶液13aの組成変動が少なくなるため、組成の均一性が向上した結晶成長が可能になる。
アンプル11を加熱炉15に入れる場合には、実際はアンプル11を石英製アンプルに収納するので、その具体例を図7(a) に基づいて説明する。
【0058】
本例では、内径20mm、外径24mm、長さ14mmの円筒状のアンプルを使用し、その中に2mm厚のInGaAs単結晶よりなる種結晶12を入れ、その上に、InAsよりなる1mm厚さの第一のIII-V族2元材料13とGaAsよりなる2mm厚さの第二のIII-V族2元材料14を順に2層ずつ交互に重ねる。
次に、内径25mm、外径28mmの円筒状の石英製アンプル17の開放された一端からアンプル11をその中に入れ、続いて真空ポンプにより石英製アンプル内を6.66×10 -5 Pa(5×10 -7 Torr 以下に減圧する。そして、石英製アンプル17の開放端を溶接によって閉塞して溶接部17aを形成する。
【0059】
続いて、図7(b) に示すような温度勾配を有する加熱炉15、例えば電気加熱炉の中に石英製アンプル17を入れてアンプル11を942℃で加熱すると、InAsよりなる第一のIII-V族2元材料13が融解して融液13aとなり、さらに温度を上げると、融液13aに接触しているInGaAsよりなる種結晶12表面とGaAsよりなる第二のIII-V族2元材料14表面が融解し、さらに昇温して1170℃まで達すると融液13aの組成はIn0.37Ga0.63Asになる(図17のb点)。
【0060】
融解が生じた結果、種結晶12の厚さは1.2mmとなり、また、第二のIII-V族2元材料13のうち種結晶12に近い側の1層目が0.4mmに減少し、種結晶12に遠い2層目側が1.2mmに減少した(図6(b))。
次に、種結晶12と融液13aの境界の温度を1170℃に保ち、その境界から種結晶12内までの範囲で10℃/cmの温度勾配をつけるとともに、種結晶12及びその境界から遠くなるにつれて温度が少しずつ上がるような温度分布とする。
【0061】
そして、石英製アンプル17を低温側の方向(図中矢印方向)に30μm/min の速度で移動させる。なお、加熱炉をその逆方向に同じ速度で移動させてもよい。
このような移動状態を続けて、図6に示すような成長を1時間行ったところ、種結晶12に直径20mm、長さ1.6mmのInx Ga1-x Asの3元結晶12aが成長した。この成長した3元結晶12aでは、単結晶12との界面から厚さ1.6mmの領域で組成比xが0.05と一定であった。
【0062】
ところで、上記した例では、第一のIII-V族2元材料13と第二のIII-V族2元材料14のそれぞれが交互に2層ずつ重ねられているが、図8(a) に示すように交互に複数層重ねてもよい。これによれば、より長尺の結晶成長を行うことができる。さらに、第一のIII-V族2元材料13と第二のIII-V族2元材料14の組成を変えることにより、成長方向に意図的に組成分布を与えることができ、また、ドーピングも可能である。
【0063】
このように第一のIII-V族2元材料13と第二のIII-V族2元材料14を交互に3層以上重ねる場合に、温度勾配が一定であると、アンプル11が長尺なために端部の温度が高くなり過ぎる。そこで、図8(b) に示すように結晶成長領域、例えば種結晶12の次から4層目までの領域にのみ温度勾配をかけ、その他の領域では温度変化を無くするようにすると、種結晶12の無い側の端部での過熱が回避される。
(第3実施形態)
図9は、本実施形態の原理を説明する断面工程図であり、図9(b) 〜(e) はアンプルの断面を、図9(a) は成長炉内の温度分布を表している。
【0064】
本発明の第一の構成では、図9に示すように、アンプル21内に種結晶22、溶液材料部23及びソース部24がこの順序で密着して封入される。溶液材料部23及びソース部24は、ともに二元系単結晶の原材料である第一の元素及び第二の元素からなる。溶液材料部23は二元系単結晶の組成よりも低融点元素である第一の元素に富み、結晶成長温度Tg3で液相をなす。他方、ソース部24は二元系単結晶の組成よりも高融点の第二の元素に富み、結晶成長温度Tg3で固体をなす。
【0065】
従って、図9(a) に示すように、アンプル21内の原材料20部分を結晶成長温度Tg3に保持することで、図9(c) に示すように、溶液材料部23は溶融して溶液帯25を形成する。この溶液帯25は、ソース部24の一部を溶解して高融点の第二元素を補給しつつその幅を広げ、組成比xmの溶液帯25となってソース部24と熱平衡状態に達する。
【0066】
ついで、アンプル21を成長炉(不図示)に対して相対的に先端21a方向に移動する。これにより、図9(d) に示すように、溶液帯25はソース部24を溶融しつつ後端21b方向に移動し、同時に種結晶22上に単結晶26が成長する。
本構成では、ソース部24は結晶成長温度Tg3で溶融しない組成の材料から形成される。従って、ソース部24内部にその一部が溶融して形成される液滴が発生しない。その結果、溶液帯25とソース部24との固相液相界面は結晶成長の間中平滑に保たれ、結晶成長条件が擾乱されないから、組成の均質な二元系結晶が製造される。
【0067】
かかるソース部24は高融点の第二の元素、例えばGe−Si系においては、Si単体とすることもできる。この方法では、ソース部24の組成分布を極めて均一に又は高純度にすることができる。
かかるソース部24は高融点の第二の元素、例えばGe−Si系においてはSi単体にすることもできる。この方法では、ソース部24の組成分布を極めて均一に又高純度にすることができる。
【0068】
他方、溶液材料部23は、結晶成長温度Tg3において確実に溶融するように、低融点の第一の元素、例えばGe−Si系においてはGeを、組成比xmよりも十分多く含有する組成にすることが好ましい。このように溶液材料部23に低融点の元素を多量に含ませることは、次に説明するように長尺の単結晶26を製造するためにも好ましい。これらの理由から、溶液材料部を低融点の第一の元素、例えばGe−Si系においてはGe単体とすることがより好ましい。
【0069】
単結晶と同一組成のソース部を用いる従来の方法では、単結晶の成長により溶液帯から消費される溶液中の元素は、単結晶と同一組成のソース部の溶解により消費量と同量が補給され、その結果、一定幅の溶液帯が保持される。
これに対して、本構成では、上述のようにソース部24は、成長する単結晶26の組成比xsよりも高融点の第二の元素を多く含有する。したがって、結晶成長中にソース部24から溶液帯25中に補給される低融点の第一の元素の量は、結晶成長で消費される第一の元素の量よりも少ない。このため、溶液帯25に含まれる低融点の第一の元素の絶対量は結晶成長とともに減少する。他方、溶液帯25は結晶成長温度Tg3で常に組成比xmを保持するから、図9(d) に示すように、溶液帯25は結晶成長とともにその幅が縮小し、図9(e) に示すように、最後は溶液帯25も固化して消失する。
【0070】
即ち、本構成により製造しうる結晶の長さは、溶液材料部23の低融点の第一の元素の絶対量及びソース部24の組成比に依存する。従って、溶液材料部23は低融点の第一の元素を多く含む組成、例えば第一の元素単体とすることが、長い単結晶を製造するために好ましい。
なお、図9(e) に示すように、結晶成長終了時にソース部24の一部を残すことにより、結晶終了後に単結晶26の端面に接する溶液を固化するための急冷を不要とし、また、溶液を結晶成長終了まで安定に保持することができる。これにより高温において急激な熱的又は機械的衝撃を単結晶26aに与えることが回避され、結晶品質の劣化を防止できる。なお、結晶成長終了時にソース部24の一部を残すことは、本実施形態において必ずしも必要ではない。
【0071】
本実施形態の第二の構成は、長尺単結晶を製造するための第一の構成の改良に関する。
第二の構成では、図10(a) に示すように、ソース部24をアンプル21の軸に垂直に分割し、分割面に溶液形成板27を挟持させた積層ソース部24Aを形成する。この溶液形成板板27は、少なくとも結晶成長温度Tg3で液体になる低融点材料からなる。このソース部24及び溶液形成板27はそれぞれ第一の構成で示したソース部24及び溶液材料部23と同じ材料から構成され、Si及びGeにすることが材料組成の均一性及び純度の観点から好ましい。
【0072】
かかる構成では、アンプル21を結晶成長温度Tg3に保持したとき、図10(b) に示すように、種結晶22に接して形成される溶液帯25aの他に、溶液形成板27が溶融することで積層ソース部24Aの各分割部分に溶液帯25b〜25dが形成される。
これらの溶液帯25a、25bは、図10(c) に示すように、アンプル21をその先端21a方向に移動することにより、溶液帯25a,25bの後端21a側に接するソース部24a〜24dを溶解しつつアンプル21に対して後端21a方向に移動し、溶液帯25a,25bの先端21b側に二元系結晶26a〜26dを析出する。このとき、種結晶22に接した溶液帯25aからは二元系単結晶26aが析出する。他方、ソース部24a〜24dに挟まれた溶液帯25b〜25dからは単結晶又は多結晶の二元系結晶26b〜26dが析出する。
【0073】
このソース部24a〜24dに挟まれた溶液帯25b〜25dから析出した二元系結晶26b〜26dは、各溶液帯25b〜25dの温度で定まる組成を有する。通常は、各融液帯25b〜25dの温度は、結晶成長温度Tg3よりも僅かに高温に保持される。従って、これらの二元系結晶26b〜26dは、結晶成長温度Tg3における結晶の平衡組成比xsより僅かに多くの高融点の第二の元素を含有する。
【0074】
他方、種結晶22に接した溶液帯25aから析出した二元系単結晶26aは、結晶成長温度Tg3における平衡組成比xsを有する。この溶液帯25aは、ソース部24aの組成がxsより高融点の第二の元素を多く含むために、二元系単結晶26aの成長とともに低融点の第一の元素が減少し、溶液帯25aの幅が短くなる。
【0075】
しかし、溶液帯25aが移動してソース部24aの端に到達し、二元系結晶26bを溶解し始めると、二元系結晶26bの組成比は二元系単結晶26aの組成比xsに極めて近いため、それ以後は溶液帯25aの幅は殆ど変化しない。このため、溶液帯25aの消失時点が大幅に延長される。従って、単一の溶液帯25aを用いる場合に較べ、長尺の二元系単結晶26aを製造できる。また、この二元系結晶26bは、溶液帯25bから析出して形成されるため、非常に均質な組成を有する。従って、溶液の急冷により又は粉体の焼結により製造したソース部24に比較して、均質な組成のソース部として機能するから、二元系単結晶26aの均質性を優れたものにできる。
【0076】
さらに、図10(a) に示すように、結晶長をより長くするために、溶液形成板27を複数個設けてもよい。また、溶液帯25a〜25dに挟まれるソース部24a〜24cの幅を、各溶液帯25a〜25dが消失することなく通過できる長さに設定してもよい。この場合、二元系単結晶26aの成長に直接関与する溶液帯25aが、組成変動の激変する領域を通過するのは、最初のソース部の通過時のみに留まるから、成長中の擾乱が少なく良質の結晶が製造される。
【0077】
なお、上述の第一、第二の構成の作用をSi−Ge系について説明したが、全率固溶する二元系であればよく、さらには一方の元素又は双方の元素をコングルエントな中間化合物に代えて適用してもよい。
さらに、本発明において、成長温度Tg3は必要な組成比xsを決定するものであり、必ずしも一定温度である必要はなく、必要に応じて成長途中に変動するものであっても差し支えない。
【0078】
次に、組成比xsが0.90であるSi0.90Ge0.10単結晶の製造について説明する。
図11は、図10に示す装置をより具体的に表した断面図であり、図11(a) はブリッジマン炉断面を、図11(b) はその垂直軸に沿った炉内温度分布を示している。
【0079】
まず、図11(a) に示すように、内径20mm、外径22mm、長さ50mmの石英管からなるアンプル21内に、種結晶22として厚さ5mmのシリコン単結晶板と、溶液材料部23として厚さ1mmのゲルマニュウム円板と、積層ソース部24Aとを順に挿入し、さらに真空封入する。
積層ソース部24Aは、厚さ2mmのシリコン単結晶円板からなるソース部24a〜24cと厚さ1mmのゲルマニウム円板からなる溶液形成板27a〜27cとを交互に重畳し、さらに終端21bに最も近いソース部24dとして厚さ5mmのシリコン単結晶円板を重畳して構成される。これらの部材は、図11(a) に示すように、アンプル21内の先端21a及び後端21b部分に設けられたカーボンブロック30により押止めされ、互いに密着して固定される。
【0080】
結晶成長には、図11(a) に示すように、内壁にヒータ28が設けられた管状の炉体29を有するブリッジマン炉を用いた。部材を封止したアンプル21を、炉体29内に吊り下げ、さらに昇温する。
図11(b) に示すように、炉体29内の温度分布は、炉入口は低温に保たれ、炉中央から下方にかけての温度分布は下方に僅かに高温となる温度勾配が与えられる。また、入口から一定距離下方に離れた位置Aにおいて成長温度Tg4となるように温度勾配が与えられる。
【0081】
初めに、アンプル21は、溶液材料部23が位置Aに位置するように吊り下げられる。従って、溶液材料部23、ソース部24a〜24d及び溶液成形板27a〜27cは、成長温度Tg4以上の温度に加熱される。その結果、図10(b) に示すように、溶液材料部23及び溶液形成板27a〜27cは溶融し、溶液帯25a〜25dを形成する。この溶液帯25a〜25dは、種結晶22及びソース部24c〜24dを溶解してその幅を広げ、熱平衡の組成に達して一定幅を維持する。このとき、炉内温度は下方に高温となる温度勾配を有するため、各溶液帯25a〜25dは主としてその下方に接するソース部24a〜24cの溶解は僅かに留まる。このとき、ソース部24c〜24dはシリコン単体の棒から構成されるため、組成の均一性は非常に優れ、ソース部24c〜24d内部に液滴を生じることはない。
【0082】
ついで、図11(a) に示すように、炉体29を2mm/時の速度で下方に移動する。その結果、図11(b) に示すように、位置Aも下方に移動するから、この成長温度Tg4を保持する位置Aはアンプル21を上から下に走査するようにアンプル21の後端方向に向けて移動する。この位置Aの移動に追従して、図10(c) に示すように、溶液帯25a〜25bはアンプル21の後端21b方向に移動し、各溶液帯25a〜25bのアンプル1の先端21a側の固相液相界面に二元系結晶26a〜26dを析出する。
【0083】
このうち、もっとも先端21aに近い二元系結晶26aは、溶液温度が成長温度Tg4に保持された溶液帯25aから析出し、成長温度Tg4における平衡組成を有する組成比xsを有し、かつ種結晶22上に析出した二元系単結晶26aとなる。
本例では、成長温度Tg4を1350℃とし、組成比xm=0.75の溶液帯25aから組成比xs=0.90のSi0.90Ge0.10単結晶を製造した。他の溶液帯25b〜25dから析出する二元系結晶26b〜26dは、成長温度Tg4よりも僅かに高温の各溶液帯25b〜25dと平衡する組成比、即ち組成比xs=0.90よりも僅かに大きな組成比を有する単結晶として成長した。
【0084】
図10(d) は、アンプル1を2mm/時の速さで結晶成長開始位置から略3mm移動したときの状況を表している。図10(d) に示すように、溶液帯25a〜25dの間に挟まれたソース部24a〜24cは、溶液帯25a〜25cの通過により消失し、二元系結晶26b〜26cに変換されている。各溶液帯25a〜25cは、この変換された二元系結晶26b〜26cをソース源とし、さらに続けて、種結晶22上に析出する単結晶26aを含めて、二元系結晶26a〜26dを成長する。なお、アンプル21の後端21bに最接近する溶液帯25dはGeを消耗して消失している。また、最後端のソース部24dは幅が広いために溶液帯25dが通過することはない。
【0085】
さらに、アンプル21の移動が進行すると、図10(e) に示すように、種結晶22上に析出する組成比xs=0.90のSi0.90Ge0.10単結晶26aは、変換された二元系結晶26bをソース源として成長を続ける。一方、溶液帯25a〜25cは、Geを消耗して最高端に位置するものから順次消失する。最後の溶液帯25aの消失によりアンプル1内の全原料が固化し、結晶成長は終了する。
【0086】
これにより、略12mm長の結晶組成が均一なSi0.90Ge0.10単結晶を製造することができた。本例では、結晶成長終了時には全原料が固化しているため、その後の冷却過程で単結晶に欠陥が導入される危険が少ないという利点がある。
(第4実施形態)
本実施形態の構成は、第3実施形態の第一の構成をフローティングゾーン法に適用したもので、融点の低い第一の元素、例えばGeと融点の高い第二の元素、例えばSiとの二元系単結晶の製造方法に関する。
【0087】
以下、SiとGeよりなる二元系の実施形態を説明する。
本実施形態では、図12(a) 〜(c) に示すように、垂下されたSiからなるソース棒34Bの下端にGeよりなる溶液材料板33Bを挟んで種結晶32が設けられている。
ついで、溶液材料板33B近傍を高周波コイルを用いて誘導加熱し、溶液材料板33Bを溶融し、SiとGeとの混合溶液からなる溶液帯35を形成する。ついで、溶液帯35を上方に移動することで、種結晶32上にSi−Ge単結晶36が成長する。
【0088】
本構成では、ソース棒34Bは単体元素で作られているから、ソース棒34Bの組成変動は実用上無視することができる。このため、第3実施形態の第一の構造と同様に、溶液帯35とソース棒34Bとの界面の凹凸の発生を防止でき、品質の優れた単結晶が製造される。
次に、組成比xsが0.90であるSi0.90Ge0.10結晶の製造について説明する。
【0089】
図12(a) に示すように、ソース棒34Bとして直径20mm、長さ50mmのSi単結晶棒を垂下する。そのSi単結晶棒の下端に溶液材料板33Bとして直径20mm、長さ5mmのSi0.5Ge0.5多結晶円板を密着し、さらにその下端に種結晶32として直径20mm、長さ50mmのSi単結晶棒を下方から押圧し、密着して設けた。まず、溶液材料板33Bをその周囲か取り巻く高周波コイル31により加熱し、溶融して溶液帯35を形成する。ついで、図12(b) に示すように、溶液帯35の温度分布を均一にするため、種結晶32及びソース棒34Bを反対方向に垂直軸廻りにそれぞれ3回転/分で回転しながら、溶液帯35を温度1350℃に昇温する。この結果、溶液帯35は種結晶32及びソース棒34Bを溶融し、組成比がSi0.75Ge0.25の厚さ6.35mmの溶液帯35となり平衡した。
【0090】
ついで、種結晶32及びソース棒34Bを下方に2mm/時の速さで移動し、即ちコイル31を相対的に上方に移動することにより、溶液帯35の下方、種結晶32上に析出した組成がSi0.90Ge0.10の長さ10mmの二元系単結晶36が成長した。
(第5実施形態)
上記した第1〜第3の実施形態では、種結晶に結晶を成長させるために、種結晶に隣接して2つの成長材料を交互に配置している。
【0091】
それら2つの成長材料のうち溶液又は融液となる第一の成長材料の厚さと、溶液又は融液に原料を供給する第二の成長材料の厚さを適正に設定することは重要である。即ち、第二の成長材料が厚すぎると、成長した結晶中に第二の成長材料の分子又は原子が残っしまう。これに対して第二の成長材料が薄すぎると、溶液又は融液への材料の供給が途中で停止するために均一な組成をもつ2元結晶又は3元結晶を種結晶上に成長できなくなる。
【0092】
そこで以下に、必要とされる第一の材料と第二の材料のそれぞれを適正な厚さに設定した場合の結晶成長について説明する。
化学量論的組成を保っている融液を用いる結晶成長法において、YとZはそれぞれ原子又は分子とすると、Yx 1-X 結晶を成長するために必要とされるYとZの量は次のように計算される。なお、組成比xは、Y及びZの総原子数をYの総原子数で割った値、またはY及びZの総分子数をYの総分子数で割った値である。
【0093】
Yの総原子数(又は分子数)は、次の式(1)の関係がある。
(tY ・S・dY /MY )・A=(tYZ・S・x・dYZ /MYZ)・A
…(1)
Zの総原子数(又は分子数)は、次の式(1)の関係がある。
(tZ ・S・dZ /MZ )・A=(tYZ・S・(1−x)・dYZ /MYZ)・A
…(2)
ここに、tY は、Yの元素を有する第一の材料の厚さで、tZ は、Zの元素を有する第二の材料の厚さで、tYZは、種結晶上に成長する結晶の厚さで、Sはアンプルの断面積、dY は、Yの元素を有する第一の材料の比重で、dZ は、Zの元素を有する第二の材料の比重で、dYZは、種結晶上に成長した結晶の比重で、MY は、Yの元素を有する第一の材料の原子量(又は分子量)で、MZ は、Zの元素を有する第二の材料の原子量(又は分子量)で、MYZは、種結晶上に成長した結晶の分子量、Aはアボガドロ数である。
【0094】
従って、式(1) 及び(2) より原理的には次の式(3) が成立し、この式を満たすようにtY とtZ の厚さを設定する。
Z =(MZ ・dY /MY ・dZ )・((1−x) /x) ・tY …(3)
次に、第一の材料としてInAs板、第二の材料としてGaAs板を使用してInX Ga1-X Asを結晶成長する場合について説明する。
【0095】
InAs板の厚さを1mmにした場合に、上記した式(3) を満たすGaAs板の厚さtZ を図13に示す。そのような図13の関係を満たすようにGaAsの厚さtZ を設定することにより、原理的には、InAsとGaAsを交互に複数重ねてInGaAsの成長を無限に継続することができる。
図14(b) は、GaAs種結晶41の隣にInAsよりなる第一の材料42a,42b,42cとGaAsよりなる第二の材料43a,43b,43cを交互に3層ずつ配置し、これを石英アンプル44に入れ、そして、図14(a) に示すような温度分布を有する加熱炉(不図示)に入れる。その温度分布によって、結晶成長開始時には図14(b) に示すように、第一の材料42a,42b,42cと第二の材料43a,43b,43cの温度は、InAsの融点Tg5以上に高く且つ一定に設定される。
【0096】
これにより、図14(c) に示すように、第一の材料42a,42b,42cが融解して融液45a,45b,45cに変わるとともに、融液45a,45b,45cに接する第二の材料43a,43b,43cの両面でGaAsが融解する。この結果、GaAsが溶け込んだ融液45a,45b,45cはInGaAsよりなる三元融液となる。
【0097】
その後に、図14(d) に示すように、第一の材料42aから種結晶41に向く方向(以下、前方という)に石英アンプル44を移動させると、種結晶41の表面に単結晶のInx Ga1-x As結晶46が成長するとともに、最前の融液45a中の組成を一定にするように融液45aの後方の第二の材料43aからGaAsが溶け出し、これにより第二の材料43aは薄くなる。この時、最前の融液45aにはInAs成分は補給されないので、その融液45aも薄くなる。また、中央の融液45bは飽和状態になるので最前の第二の材料45aのGaAsが後方へ溶解することはない。
【0098】
そして、第一の材料42aと第二の材料43aが式(3) を満たしていると、図14(d) に示すように、最前の融液45aが無くなると同時に第二の材料43aが消失し、Inx Ga1-x As結晶46には二番目の融液45bが接触して結晶成長が進むことになる。
このような過程が繰り返され、図14(e),(f) に示すように、最後の融液45cに到達しての融液45cが消失した時点で結晶成長は終了する。
【0099】
以上の結晶成長過程において、成長界面の位置は殆ど移動しないので成長したInx Ga1-x As結晶46の組成はほぼ一定となる。
なお、第二の材料43a,43b,43cの後方には第2実施形態に示したような結晶は成長しない。これは、第一の材料42a,42b,42cと第二の材料43a,43b,43cの温度が均一になるような温度分布にしているので、融液45b,45cが飽和状態になった時点で第二の材料43b,43cの溶融が止まるからである。
【0100】
以上のように第二の材料43a,43b,43cの厚さを決定すると、第二の材料43a,43b,43cを構成するGaAs化合物が成長した結晶内に残ることはなくなり、成長する結晶の結晶性が向上する。また、第二の材料43a,43b,43cを構成する化合物が全て溶解するので、融液の組成が変動することもない。
【0101】
そして、InAsよりなる第一の材料42a,42b,42cとGaAsよりなる第二の材料43a,43b,43cを、それぞれほぼ100%の均一組成をもつInGaAs結晶の成長に寄与させることができるので、材料の無駄がなくなる。さらに、結晶成長の最終端において第二の材料43a,43b,43cの残留物がなくなるので、成長した結晶46と第二の材料43a,43b,43cとの格子不整合による歪みが生じることはなく、成長した結晶にクラックは発生しない。
【0102】
次に、InAsとGaAsを1組使用して固相組成0.1のInGaAs結晶を成長する例を図15(a) 〜(c) に基づいて説明する。
まず、図15(a) に示すように、GaAs種結晶51とInAs板52とGaAs板53を内径15mmの石英アンプル54内に順に真空封止する。InAs板52の厚さを2mm、GaAs板53の厚さを7mmとする。
【0103】
式(3) によると、GaAs板53の厚さは7.313mmとなるが、これよりも僅かに薄くして結晶成長過程においてGaAs板53を確実になくすようにする。
その後に、石英アンプル54を縦型成長炉55に入れてその中でArガスで3気圧に加圧する。
次に、図15(b) の実線で示すような温度分布になるように徐々に温度を上げる。その温度分布は、成長開始時に、種結晶51とInAs板52の界面でInAsの融点よりも僅かに低温に設定するとともに、InAs板52及びGaAs板53の温度をInAsの融点以上の1122℃に設定する。また、種結晶51とInAs板52の界面から種結晶51内に向けて加熱温度は20℃/cmの割合で徐々に低くなるような温度分布にする。これにより、種結晶51の表面からGaAsが殆ど溶け出さないようにする。
【0104】
この状態を1時間保持した後に、石英アンプル54を下方へ1mm/hourの速さで10時間移動させて結晶成長を終了する。これにより、図15(c) に示すような外径15mm、長さ8mmの均一組成を持つIn0.1Ga0.9As単結晶56が成長する。成長した結晶内部と最終端にはGaAsの残留がなく、結晶性の良いInGaAsが成長されている。
【0105】
なお、種結晶51として、成長しようとする結晶に格子定数が近いInGaAsを用いる方が好ましい。
図16(a) は、石英アンプル54内にInAs板52とGaAs板53を2層ずつ交互に配置した場合を示している。この場合も図16(b) に示すように前の例と同じような温度分布と同じ製造過程を経てIn0.1Ga0.9As単結晶56が成長する。成長中の石英アンプル54の移動時間は18時間である。
【0106】
これにより、図16(c) に示すような外径15mm、長さ16mmの組成が均一のInGaAs結晶が成長する。
なお、具体例としてIII-V族化合物半導体を結晶成長する場合について説明したが、第3実施形態に示したSi−Geのような偏析する2元系結晶を成長する場合にも同様な関係が成立する。
【0107】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、種結晶の隣に種類の異なる第1及び第2の成長材料を使用し、融点の低い第1の成長材料が種結晶側になるようにそれらの成長材料を交互に1層又は複数層配置するとともに、これらを加熱雰囲気に置いて第1の成長材料を溶融して溶液又は融液に変えるとともに、温度分布の調整によって、第2の成長材料の一部を溶融させて溶液又は融液に供給して成長材料を育成し、その成長材料を種結晶上に結晶成長するようにした。
【0108】
したがって、作成の困難な2元又は3元以上の成長材料を使用することなく、組成均一性の高い多元材料が種結晶に供給されることになるので、種結晶上に組成の均一な結晶を成長できる。
種結晶上に成長する2元又は多元の結晶の厚さは、第1の成長材料と第2の成長材料を複数交互に配置することにより厚くできる。
【0109】
また、第2の成長材料としてソース棒を使用し、第1の成長材料として溶液帯を使用して2元結晶を成長する場合に、ソース棒は単元材料であるので、そのソース棒内の組成変動は存在せず、ソース棒と溶液との界面の凹凸の発生を防止できる。
また、別の発明によれば、上記した第1の材料と第2の材料の厚さを最適化しているために、第2の材料が結晶中に残ることを防止し、成長した結晶の組成の均一性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に使用する結晶成長装置の概要構成図と加熱温度分布図である。
【図2】本発明の第1実施形態の結晶成長の過程を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に使用する結晶成長装置のより具体的な例を示す断面図とその加熱温度分布図である。
【図4】本発明の第1実施形態に使用する結晶成長装置の更に別な具体例を示す断面図とその加熱温度分布図である。
【図5】本発明の第2実施形態に使用する結晶成長装置の概要構成図と加熱温度分布図である。
【図6】本発明の第2実施形態の結晶成長の過程を示す断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に使用する結晶成長装置のより具体的な例を示す断面図とその加熱温度分布図である。
【図8】本発明の第2実施形態に使用する結晶成長装置の更に別な具体例を示す断面図とその加熱温度分布図である。
【図9】本発明の第3実施形態の結晶成長方法における加熱炉内温度分布図と、その温度分布下での結晶成長過程を示す断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態の結晶成長方法において、複数の溶液材料部とソース部を複数交互に配置する場合の結晶成長過程を示す断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態の結晶成長方法に使用する装置をより具体的に示した断面図と、その装置内の温度分布図である。
【図12】本発明の第4実施形態の結晶成長方法を示す断面図である。
【図13】本発明の第5実施形態の結晶成長方法において、InGaAs結晶を成長する際に使用するGaAs板とInAs板の膜厚の一例を示す図である。
【図14】本発明の第5実施形態の結晶成長方法における加熱炉内温度分布図と、その温度分布下での結晶成長過程を示す断面図である。
【図15】本発明の第5実施形態によりInGaAs結晶を成長する場合の加熱炉内温度分布図と、その温度分布下での結晶成長過程を示す断面図である。
【図16】本発明の第5実施形態によりInGaAs結晶を長く成長する場合の加熱炉内温度分布図と、その温度分布下での結晶成長過程を示す断面図である。
【図17】結晶成長の固相と液相の関係の一例を示すInAs−GaAs準2元系状態図である。
【図18】従来のIII-V族化合物半導体結晶成長に使用する装置の一例を示す概要構成図とその装置の炉内温度分布図である。
【図19】シリコン・ゲルマの全率固溶二元系図である。
【図20】従来のシリコン・ゲルマ結晶成長に使用する装置の一例を示す概要構成図とその装置の炉内温度分布図である。
【符号の説明】
1 アンプル
2 種結晶層
3 溶液材料層
4 成長材料層
5 加熱炉
6 第二の成長材料層
6a 3元の結晶
7 石英製アンプル
11 アンプル
12 種結晶層
13 第一のIII-V族2元材料層
14 第二のIII-V族2元材料層
15 加熱炉
16 III-V族3元材料層
16a 3元の結晶
20 原材料
21 アンプル
22 種結晶
23 溶液材料部
24、24a〜24d ソース部
25、25a〜25d 溶液帯
26、26a〜26d 単結晶(2元系結晶)
27、27a〜27d 溶液形成板
28 ヒータ
29 炉体
30 カーボンブロック 41、51 種結晶
42a、42b、42c、52 第一の材料
43a、43b、43c、53 第二の材料
44、54 アンプル
45a、45b、45c 融液
46、56 結晶
55 加熱炉

Claims (7)

  1. 種結晶の隣に該種結晶よりも融点の低い第1の材料と該第1の材料よりも融点の高い第2の材料とを交互に複数層づつ配置してこれらを容器内に収納し、
    該容器を加熱雰囲気に入れて前記第1の材料及び前記第2の材料の構成元素を出発材料として結晶を該種結晶表面に成長することを特徴とする結晶成長方法。
  2. 前記種結晶が溶解せず、かつ前記第1の材料が溶解するような温度勾配を前記加熱雰囲気に与え、前記第1の材料を溶解して溶液とするとともに、該溶液に接する前記第2の材料の面の少なくとも一方を溶解して構成元素を該溶液に供給し、
    前記温度勾配の分布を前記種結晶側から前記第2の材料側に向けて移動させて前記溶液中の複数元素の溶解度の温度依存性を利用して前記種結晶上に前記結晶を成長させる
    ことを特徴とする請求項1記載の結晶成長方法。
  3. 前記種結晶は2成分又は3成分からなるIII-V族の3元化合物結晶であり、前記溶液は III族又はV族の元素の1、2又は3成分の元素を含み、前記第2の材料はIII-V族の2元化合物からなることを特徴とする請求項2記載の結晶成長方法。
  4. 前記結晶はIII-V族の3元化合物からなり、前記第1の材料と前記第2の材料はそれぞれ III族元素又はV族元素のいずれかが異なるIII-V族多元化合物であって、
    前記第1の材料の全体が融解し、前記第2の材料全体が融解せず、前記種結晶側がその融点以下になる温度分布を前記加熱雰囲気に与え、
    前記温度勾配の分布を前記種結晶側から前記第2の材料側に向けて移動させて、前記第2の材料からの溶融元素が加わった前記第1の材料の融液内の化合物が前記種結晶上で固相となって前記結晶を成長することを特徴とする請求項1記載の結晶成長方法。
  5. 前記第1の材料としてGeを含む部材を使用し、前記第2の材料としてSiを含む部材を使用することを特徴とする請求項2記載の結晶成長方法。
  6. 前記種結晶表面に成長する結晶がGeとSiとの2元化合物からなり、前記第1の材料がGeを含む部材からなり、前記第2の材料がSiを含む部材からなることを特徴とする請求項2記載の結晶成長方法。
  7. 成長しようとする化合物YX 1-X (xは組成比)よりなる結晶を成長するために、原子量又は分子量がMY であって比重dY の材料Yよりなる第1の材料板と、原子量又は分子量がMZ であって比重dZ の材料Zよりなる第2の材料板を使用し、
    容器内において、種結晶の隣に、次式の関係を満たす厚さtY の前記第1の材料板と厚さtZ の前記第2の材料板とを順に1層又は複数層交互に配置し、
    Z ≦(MZ ・dY /MY ・dZ )・((1−x) /x) ・tY
    前記種結晶が溶融せず且つ前記材料Yの融点以上の温度で前記第1の材料板及び前記第2の材料板を加熱する温度分布を持つ加熱雰囲気中に前記容器を入れ、これにより、前記第1の材料板を溶融して液体にするとともに、前記第2の材料板の少なくとも前記種結晶側の面を融解し、前記温度分布を前記種結晶から前記第2の材料に向けて移動することにより前記液体中の構成元素を出発材料として該種結晶表面に結晶を成長することを特徴とする結晶成長方法。
JP30781195A 1995-02-20 1995-11-27 結晶成長方法 Expired - Fee Related JP3540073B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP30781195A JP3540073B2 (ja) 1995-02-20 1995-11-27 結晶成長方法

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3107095 1995-02-20
JP7-199569 1995-08-04
JP19956995 1995-08-04
JP7-31070 1995-08-04
JP30781195A JP3540073B2 (ja) 1995-02-20 1995-11-27 結晶成長方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH09110576A JPH09110576A (ja) 1997-04-28
JP3540073B2 true JP3540073B2 (ja) 2004-07-07

Family

ID=27287198

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP30781195A Expired - Fee Related JP3540073B2 (ja) 1995-02-20 1995-11-27 結晶成長方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3540073B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6592663B1 (en) 1999-06-09 2003-07-15 Ricoh Company Ltd. Production of a GaN bulk crystal substrate and a semiconductor device formed on a GaN bulk crystal substrate
CN102925958A (zh) * 2012-08-16 2013-02-13 江西旭阳雷迪高科技股份有限公司 一种利用复熔工艺提高多晶晶体质量的方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH09110576A (ja) 1997-04-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4593099B2 (ja) 単結晶炭化ケイ素の液相エピタキシャル成長法及びそれに用いられる熱処理装置
TWI554659B (zh) SiC單晶的製造方法
TW200307066A (en) CdTe single crystal and cdTe polycrystal, and method for producing the same
JP3540073B2 (ja) 結晶成長方法
Zlomanov et al. Phase diagrams and growth of bulk lead chalcogenide crystals
Kletowski et al. Single crystal growth of (rare earth) Me3 compounds where Me≡ Sn, In and Pb
US5047112A (en) Method for preparing homogeneous single crystal ternary III-V alloys
Yashina et al. The application of VLS growth technique to bulk semiconductors
JP2001192289A (ja) 化合物半導体単結晶の製造方法
JP3435118B2 (ja) 化合物半導体バルク結晶の成長方法、および化合物半導体装置の製造方法
JP2001072488A (ja) 固溶体単結晶の製造方法
JP2533760B2 (ja) 混晶の製造方法
JP3557690B2 (ja) 結晶成長方法
JP2000178095A (ja) 結晶成長方法
US20010020441A1 (en) Single crystal-manufacturing equipment and a method for manufacturing the same
Chani Micro-Pulling-Down (μ-PD) and Related Growth Methods
JP2537322B2 (ja) 半導体結晶成長方法
JP4576571B2 (ja) 固溶体の製造方法
Kato et al. Effect of solution thickness on ZnSe crystals grown from Se/Te mixed solutions
JP2003267794A (ja) 結晶成長方法及び結晶成長装置
JP2001322890A (ja) 固溶体単結晶の製造方法
JPH0139997B2 (ja)
JP2000095599A (ja) 半導体結晶の作製方法
JPH0769773A (ja) 単結晶の製造方法
JP2001048691A (ja) 任意濃度分布試料およびその作成方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040209

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040323

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040324

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080402

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090402

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090402

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100402

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees