JP2533760B2 - 混晶の製造方法 - Google Patents

混晶の製造方法

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JP2533760B2 JP61226277A JP22627786A JP2533760B2 JP 2533760 B2 JP2533760 B2 JP 2533760B2 JP 61226277 A JP61226277 A JP 61226277A JP 22627786 A JP22627786 A JP 22627786A JP 2533760 B2 JP2533760 B2 JP 2533760B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は電子材料の製作に関するもので、特に半導体
デバイスの製作に不可欠である半導体混晶の成長技術を
提供するものである。
〔従来の技術と発明が解決しようとする問題点〕
種々のセンサーや集積回路、および半導体レーザ、発
光ダイオード、フォトダイオードなどの光半導体デバイ
スに対して高性能化の要求が高まるとともに、Geおよび
Siなどの元素半導体や、GaAs,InP,GaPなどの化合物半導
体はもとより、元素半導体同士や、化合物半導体同士の
混晶半導体(以下混晶と略称する)ならびにそれらを組
合わせたヘテロ接合が重要な地位を占めるに至った。こ
れはこれまでの半導体の物性がその半導体固有のもので
あったのに対して、混晶半導体の物性が人工的に設計可
能であるためである。これまで種種の結晶成長法が開発
され、種子結晶となる基板が供給されるならば、その上
に格子整合の条件のもとで、所望の組成の混晶のエピタ
キシャル成長ができるような段階に達しつつある。しか
しその混晶やヘテロ接合の多くは大型単結晶の製造が容
易である元素半導体や化合物半導体結晶を種子結晶基板
として用いている。そのため、混晶を利用できる組成範
囲が元素半導体や化合物半導体の格子定数によって制限
をうけている。換言すれば、この制限のために混晶半導
体が優れた物性をもちながら、利用できるのはその一部
に限定されていた。
種子結晶基板用混晶としては、所定の格子定数、換言
すれば、組成をもち均質で高品質の大型単結晶が要求さ
れる。これまでこの要求を満す混晶が得られなかったの
は、混晶を構成する各成分元素または化合物の偏析係数
が異なるために、成長結晶の組成を一定にすることが困
難であったことに起因する。すなわち、これまでブリッ
ジマン法や、液体カプセルを用いた回転引上げ法で大型
バルク混晶を成長させようとする試みはなされたが、溶
液から偏析係数の大きな成分が早く析出し、成長が進む
につれて、溶液では偏析係数の小さな成分が増加し、し
たがって成長結晶中に組成勾配が生じてしまい、均質混
晶の成長はできなかった。
また、目的とする混晶組成をもつ多結晶を原料とし
て、帯熔融法や温度差法によって混晶を成長させようと
する試みもなされているが、これらの方法は開発途上に
あり、実用化には至っていない。帯熔融法や、温度差法
は空間的な温度分布を利用する方法であり、その温度分
布の一様化に対して高度の技術を要する点が問題であっ
た。また従来の方法では、同一装置内で複数の結晶を成
長することができなかった。さらに、混晶成長において
目的とする組成をもつような種子結晶用混晶そのものが
存在しない場合が多く、このことも大きな問題である。
本発明は、従来のこれらの問題を解決することを目的
としてなされたものである。具体的には 第1に、均質で充分な厚みと所定の組成をもつ混晶の
成長方法を提供することを目的とする。
第2に、目的とする混晶と異なる格子定数をもつ結晶
を種子結晶として使用するための格子定数緩和層を形成
する技術を提供することを目的とする。
第3に、同一装置内で複数の結晶の成長方法を提供す
ることを目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明の方法は、重力場と溶液の比重が当該溶液中に
含まれる溶質の濃度に依存することを利用したものであ
る。具体的には、種子結晶と目的とする混晶と同じ組成
をもつ原料結晶との間に成長溶液をサンドイッチ状に挿
入する。このとき溶質濃度が高くなる程溶液の比重が増
加する場合には種子結晶を溶液の下側になるように、ま
た逆に比重が減少する場合には溶液の上側に配置して、
結晶成長系を構成する。そしてこの成長系の温度を空間
的には均一になるように、そして時間的には周期的に上
下にある温度幅で変化させる。この周期的な温度サイク
ルの昇温時に、原料結晶から溶液へ溶質が供給される。
そして比重差に基づき、溶液の重力方向に種子結晶側で
溶質の濃度が高く、原料結晶側では濃度が低くなるよう
な濃度分布が形成される。勿論、重力の作用で、溶液の
水平方向の濃度分布は均一となる。したがって種子結晶
と溶液との固液界面近傍の溶質濃度は均一となる。周期
的な温度サイクルの降温時に、この均一な溶液から溶質
が種子結晶側に析出して、均一組成で均一厚みの成長層
が形成される。
原料結晶から種子結晶側への溶質の輸送は重力で加速
された拡散作用あるいは比重差に起因する対流によるた
め高速でおこなわれる。ただし、この対流が生ずるのは
低濃度の溶液層中のみである。この溶質の輸送によって
種子結晶近傍に形成された高い溶質濃度の溶液層は成層
圏として作用するから、この高濃度溶液層には対流は影
響を及ぼさない。
目的とする混晶と異なる格子定数をもつ種子結晶を用
いる場合には、まず、溶液組成を種子結晶と等しい格子
定数の固相を析出するように設定しておく。そして本発
明の方法で混晶の成長を開始する。成長温度サイクルの
第1回目の周囲では、種子結晶とほとんど格子整合に近
い組成の混晶層を析出する。そしてこの時原料結晶側か
らは、ほぼその析出量に見合った量の目的の組成をもつ
混晶が溶液へ溶解するから、溶液組成は、多少ではある
が目的とする混晶組成の固相に対応する液相組成へとず
れている。したがって、成長温度サイクルの第2周期目
で得られる成長混晶層の組成は目的とする混晶組成側へ
ずれたものになる。そして第1周期目の成長層と第2周
期目の成長層との間には、固相組成の違いに基づく格子
定数のわずかな違いが生ずる。したがって、この格子定
数の不整による転位が発生するがこのようなわずかな格
子整合の場合には発生したほとんどすべての転位はこの
二つの成長層の界面で緩和されてしまい成長層側へは伝
わらない。同様に、第3周期目の成長層、第4周期目の
成長層と成長温度サイクルの進行と共に成長層が重ねら
れていき、その組成も目的の混晶組成に向って段階的に
変化していく。そして目的とする混晶組成に到達したと
ころから一定組成の混晶層に転ずるわけである。このよ
うな段階的組成勾配層を種子結晶を目的とする混晶組成
をもつ成長結晶層との間に挿入することによって、両者
の間の格子不整合に基づく転位は全て緩和され、目的と
する一定組成の成長層には、その転位が伝搬されない。
したがって目的とする混晶と異なる格子定数の種子結晶
を用いた場合でも本発明の方法によって高品質の混晶が
成長できるわけである。
本発明の方法では、一つの成長系の温度が空間的には
同一温度でよいから、同一組成の混晶を成長する場合に
は、複数個の結晶を入れても成長できることは明白であ
る。
以上述べたように、本発明の方法によって従来の問題
点がすべて解決できることが明白である。
〔発明の構成〕
以下本発明の構成を図面に基づいて説明する。
第1図は本発明の結晶成長方法の原理を説明するため
のもので、溶媒に溶解された溶質の濃度が高くなる程、
溶液の比重が減少する場合を示す。第1図(A)(B)
(C)(D)(E)および(F)は第1図(G)に示す
成長の温度プロセスの各段階に対応する。種子結晶1、
所要の混晶組成をもつ原料結晶2および溶液3の様子を
模式的に示したものである。種子結晶1と原料結晶2と
の間に溶液3がサンドイッチ状に挿入されている。溶液
3とそれぞれ接触している種子結晶1および原料結晶2
の表面は研磨ならびに化学的エッチをおこなうことによ
り、平坦でかつ充分清浄化されている。とくに種子結晶
1の表面は格子欠陥の原因となる機械的加工層が充分除
去されている。また第1図において種子結晶1と原料結
晶2との間から溶液3が流れ出さないように、これらを
適当な材料で形成した坩堝やボート中に設置したり、溶
液自体のもつ表面張力を利用したりしている。図中の矢
印gは重力の働く方向を示すものである。溶液3の上側
に種子結晶1を溶液と種子結晶との固液界面が水平とな
るごとく配置し、また溶液3の下側に原料結晶2が配置
されている。そして種子結晶1、原料結晶2、成長溶液
3、およびこれらを設置するための坩堝またはボートな
どから構成されたこれらの結晶成長系(以下成長系と略
称する)は、酸化や不純物による汚染を防ぐために、高
真空中や、高純度水素ガス、窒素アルゴン、ヘリウムな
どの高純度不活性ガスを通じた電気炉中に設置してあ
る。第1図(G)はこれらの成長系に加える温度サイク
ルの一例を示すものである。横軸tは成長系の加熱開始
からの時間を示し、縦軸Tは成長系の温度を示す。い
ま、この成長系に対して時刻t=0で加熱を開始する
が、成長系の温度が成長温度に達するまでの期間、成長
系は過渡的状態にある。このため種子結晶基板の溶解に
よる表面の乱れや、種子結晶基板および原料結晶の溶解
による溶液組成の変化が起り易い。これらを防止するた
めに、昇温初期のt=0からt=tSまでの期間中には
種子結晶1と原料結晶2との間の溶液3は挿入しないで
おき、t=tSで挿入できるように工夫してある。第1
図(G)に示すように時間tSに達する以前に成長系の
温度がこの系に加える成長の温度サイクルの最高温度Th
よりもΔTだけ高いTh+ΔTに達しているものとす
る。そしてこの時、溶液3用の溶液はこの温度Th+Δ
Tで原料結晶2に含まれる成分元素と同一成分元素(た
だし成分が零の場合も含む)から構成され、かつ種子結
晶と等しい格子定数をもつような混晶を溶質とする飽和
溶液(飽和溶液を図中に記号LSで示している)、ある
いは飽和に近い状態に達するようになされている。第1
図(G)に示すごとくt=tSから冷却を開始し、温度
がΔT降下した時間t=t3Sのところで、種子結晶基板
1と原料結晶2との間に第1図(A)に示すごとく溶液
3を挿入する。このとき溶液3はこの温度ΔTの冷却
(過冷却)によって飽和溶液(LS)から過飽和溶液
(LSS)に変化する。第1図(A)のLSSは溶液3が過
飽和溶液になっていることを示す。そのため、この溶液
が挿入されると直ちに種子結晶基板1の表面に当該種子
結晶と同じ面方位をもち、且つそれに格子整合した成長
層が素早く形成されるため、種子結晶基板の溶解が防止
できる。成長系は、サイクルの最低温度Tlまで平均冷却
速度Vc=(Th−Tl)/(t4S−t3S)で冷却されるか
ら、溶液3中で過飽和になった溶質は種子結晶基板1の
近傍にある溶液からは種子結晶基板1へ、また原料結晶
2の近傍にある溶液からは原料結晶2の表面へ析出を開
始する。そしてこの析出によって種子結晶基板と溶液と
の固液界面近傍および原料結晶と溶液との固液界面近傍
では溶質濃度が過飽和状態から飽和濃度まで低下し、第
1図(B)に示すごとく飽和溶液層LSが形成される。
そしてこの溶質濃度の低下によって、この場合飽和溶液
層の比重は増加する。原料結晶側では固液界面に溶質濃
度が低くかつ比重の大きな飽和溶液(LS)層があり、
その上に溶質濃度が高くかつ比重の小さな過飽和溶液
(LSS)層があるから原料結晶側への溶質の輸送は浮力
に逆らった拡散によっておこなわれる。それ故、Tlまで
の冷却によって溶液3中で過飽和となった溶質のうちで
原料結晶から拡散長程度の範囲内にあるものが原料結晶
側へ析出する。一方、種子結晶側では第1図(B)に示
すごとく固液界面近傍に比重の大きな飽和溶液(LS
層が形成され、その下側に比重の小さな過飽和溶液(L
SS)層が存在するから、その過飽和溶液層はいわゆる逆
転層となり、過飽和となった溶質が種子結晶側へ拡散と
第1図(B)に矢印FBで示す浮力とによって高速に輸
送される。そのため時間t4Sに至る温度Tlまでの冷却
によって溶液中で過飽和となった溶質のうちで可成りの
部分が種子結晶側へ析出することになる。時刻t4Sまで
冷却し、成長系の温度が成長の温度サイクルの最低温度
lになったところで冷却を止めて、一定温Tlに保持
し、第1図(B)の過飽和溶液(LSS)層に含まれてい
る過飽和の溶質を充分析出させる。このようにして、第
1図(C)に示すごとく種子結晶の下面に種子結晶と同
じ面方位をもつ成長層40が形成され、また原料結晶2の
表面に析出結晶層5が形成される。この時、この過飽和
な溶質の析出によって、溶液3は第1図にLSで示すご
とく、温度Tlでの飽和溶液、あるいはそれに近い状態
になっている。
以上の温度プロセスによって、溶液3の挿入に伴なう
初期的な成長プロセスが終了した。
つぎに、第1図(G)に示す時刻t11から本発明の周
期的温度サイクルを用いた成長プロセスに入る。すなわ
ち、時刻t11から周期をτとする温度サイクルの昇温を
開始する。第1図(C)に示すごとく、温度Tlで飽和
状態(LS)あるいはそれに近い状態にあった溶液3は
温度上昇によって溶解度が増加するため第1図(D)に
示すごとく未飽和溶液(LN)の状態にある。したがっ
て、原料結晶2および種子結晶1の固液界面近傍の部分
が当該溶液に溶解しはじめる。そして第1図(D)に示
すごとく、原料結晶2に隣接した溶液3中に溶質を高濃
度に含んだ飽和溶液層(LS)、同様に種子結晶1に隣
接した溶液3中に高濃度溶液層(飽和溶液層)7を形成
する。この場合、溶液中の溶質が高濃度になる程溶液の
比重が小さくなるから、重量gの作用で飽和溶液層6お
よび7それぞれに浮力FBが生ずる。高濃度溶液層7は
比重の大きな溶液3中の未飽和溶液(LN)層の上に浮
いており、種子結晶1と未飽和溶液(LN)層との直接
接触するのを妨げるので種子結晶の溶解は停止する。一
方高濃度溶液層6は比重の大きな未飽和溶液層の下にあ
るので、この層を構成する溶液が第1図(D)の矢印F
Bで示すごとく浮力によって上昇し、それに含まれる溶
質を種子結晶近傍に形成された高濃度溶液層7に供給す
る。このように原料結晶からの溶質の供給によって、高
濃度溶液層7は急速に肥大する。そして、この高濃度溶
液が上昇したあとに未飽和溶液層から比重の大きな未飽
和溶液が下降してくる。したがって、原料結晶近傍の高
濃度溶液層はすぐに消滅するかあるいは消滅に近い状態
になる。原料結晶側では、このように下降してきた未飽
和溶液と接触するので、先ず初期成長層5、引続いて原
料結晶2が溶解して、その近傍に再び高濃度溶液層6を
形成する。すると、この高濃度溶液層に浮力が作用し、
この層を構成する溶液が上昇して溶質を高濃度溶液層7
に供給する。そして、上昇して溶質を高濃度溶液層7に
供給する。この上昇したあとへ未飽和溶液層から未飽和
溶液が降下して来て入れ替るということを繰り返しおこ
なう。この結果、原料結晶から種子結晶近傍に形成され
る高濃度溶液層7へ溶質を高速に供給することが可能で
ある。このようにして第1図(G)に示すごとく時刻t
11からt21までの昇温によって成長系の温度をTlから
hまで昇温したあと、時刻t21からt31まで温度を一
定に保持する。このように温度Thに保つ期間を設けた
のは高濃度溶液層7の溶解度が温度Thで充分飽和溶解
度に達するようにするためである。時刻t11からt21
での昇温期間と、時刻t21からt31までの温度thで保
持する期間、すなわち第1図(G)の時刻t11からt31
に至る期間τhの温度プロセスを昇温プロセスと呼ぶこ
ととする。最高温度Th、昇温の温度巾ΔT=Th
l、平均昇温速度Vh=(Th−Tl)/(t21
11)、最高温度Thでの保持時間t31−t21を適当に
設定することにより、高濃度溶液層7に含まれる全溶質
量を調節できることは言うまでもない。このことは特に
種子結晶と目的とする混晶との間に格子不整を緩和する
ための階段的組成勾配層を設ける必要がある場合に重要
である。すなわち、1周期の成長温度サイクルで原料結
晶2から溶液3に供給される溶質の量、換言すれば、こ
の供給された溶質が溶液中に含まれる溶質の混晶組成に
関与するモル分率を変化させる度合が、階段的組成勾配
層を構成する各層間の組成階段の高さを決めるためであ
る。
また、種子結晶1および原料結晶2それぞれと、溶液
3との固液界面を水平に保つことは、高濃度溶液層7の
厚みを均一にする上で必要不可欠である。
このように昇温プロセスによって第1図(E)に示す
ごとく高濃度溶液層7の溶液が温度Thで飽和溶解度に
達した後、第1図(G)の時刻t31から適当な速度で冷
却をおこなう。高濃度溶液層7の溶液は、この冷却によ
って過飽和になり、その溶質が種子結晶1への初期成長
層40の下面に析出し始める。そして冷却が進行するにし
たがって、その析出した溶質は、第1図(F)に示すご
とく種子結晶1への初期成長層40の下面に種子結晶と同
じ面方位をもつエピタキシャル成長層41を形成する。時
刻t41まで冷却し、温度が温度サイクル最低温度Tl
なったところで冷却をとめて一定温度Tlに保持し、高
濃度溶液層7に含まれている過飽和の溶質をエピタキシ
ャル成長層41として充分に析出させる。この析出によっ
て、高濃度溶液層7中の溶液は温度Tlで飽和か、ある
いはそれに近い状態になる。このように時刻t31からt
41にわたる冷却とそれに引続いておこなった温度Tl
保持する温度プロセス、すなわち第1図(G)の期間τ
c内でおこなった温度プロセスを降温プロセスと呼ぶこ
とにする。
以上に述べたように、時刻t11からの昇温プロセスと
それに引続いておこなった時刻t31からの降温プロセス
とによって、1周期の成長温度サイクルを終了する。そ
して第1図(G)に示すごく時刻t12から再び昇温プロ
セスを開始して、第2周期目の温度サイクルに入り、第
1周期目と同様なことをくり返して、第1周期目で得ら
れた成長層41上に第2周期目の成長層42を積み上げる。
以下、このような成長の温度サイクルを必要回数繰り返
しおこなうことによって、所望の組成と厚みの混晶4を
成長させることができる。ここで混晶4は本発明の方法
で成長した成長層40,41,42…を総合したものを指す。
以上述べたように、本発明の成長法では、原料結晶か
ら供給した溶質を種子結晶に輸送して析出させるので、
結晶成長速度はこの輸送速度に支配される。その速度は
成長温度サイクルの周期、温度の振り巾、最低温度Tl
と最高温度Thそれぞれにおける飽和溶解度の差、およ
びそれぞれの温度における飽和溶液の比重差、および種
子結晶と原料結晶との距離に依存する。成長速度は溶解
度差、および比重差が大きく、また種子結晶と原料結晶
との距離が近い程大きくなる。種子結晶と原料結晶との
接近可能な距離は種子結晶および原料結晶それぞれの表
面の平坦度にもよる。種子結晶と原料結晶との距離、す
なわち間隙は1cm程度以内にすれば充分な成長速度が得
られるが、さらに成長速度をあげるには500μm以内に
することが重要である。特にこの間隙は成長速度のみな
らず種子結晶と目的とする混晶との間に格子不整緩和の
ための段階的組成勾配層を設ける場合重要である。この
間隙を狭くする程、階段的組成勾配層の厚みを薄くでき
ることは言うまでもない。
第1図(G)に示す成長の温度サイクルは一例を示す
ものであって、勿論これ以外でも差支えない。たとえ
ば、昇温プロセスや降温プロセスの途中で昇温や降温の
速度を適宜変化させてもよい。たとえば、これによって
析出する混晶組成や不純物濃度、およびpおよびnの導
電型を変化させることが可能である。さらに温度サイク
ルの周期や振幅を変化させたり、一周期の平均温度(T
a)たとえば昇温プロセスと降温プロセスが対称な場合
にはTa=(Th+Tl)/2を徐々に変化させてもよいこと
は言うまでもない。特にこれらは組成勾配層を形成した
り、デバイスを製作する場合に有効である。
第2図は、以上に述べた第1図の場合とは逆に、溶液
中で溶質の濃度が高くなる程、溶質の比重が増加する場
合を示す。この場合には、第1図の場合とは逆に、第2
図(A)に示すごとく原料結晶2を溶液3の上に配置
し、種子結晶1を溶液3の下側に配置する。このように
原料結晶2と種子結晶1の配置を第1図の場合と反対に
した理由は、溶液中で溶質の濃度が増加する程比重が増
加し、この高濃度の溶液が溶液3の下の方へ沈下してく
るためである。すなわち第1図(G)と同じような成長
プロセスをとった場合に、その各段階に対応する種子結
晶1、所要の混晶組成をもつ原料結晶2および溶液3の
様子を模式的に第2図に示す。時刻t3sで溶液を種子結
晶基板1と原料基板2との間に第2図(A)のごとく挿
入する。この時溶液3は過飽和の状態(LSS)になって
いる。そのため、種子結晶1および原料結晶2それぞれ
の固液界面近傍の溶液からこの過飽和分がそれぞれの固
相へ析出する。そしてこのΔTの過冷却を含む降温プロ
セスにより第2図(B)に示すごとく種子結晶1および
原料結晶2の固液界面近傍に飽和状態(LS)の溶液層
が形成される。この飽和溶液(LS)層の比重は過飽和
溶液(LSS)層の比重よりも小さい。この比重差によっ
て、種子結晶1の固液界面近傍では、過飽和溶液
(LSS)層と飽和溶液(LS)層との間で比重差による
逆転層が形成される。したがって過飽和溶液層から種子
結晶1の固液界面への溶質の輸送が濃度差に基づく拡散
と比重差による沈下とによっておこなわれる。過飽和溶
液層から種子結晶1側への溶質の輸送速度は極めて大き
くなる。一方、第2図(B)に示す原料結晶側では、比
重の大きな過飽和溶液(LSS)層の上に比重の小さな飽
和溶液(LS)層があるため、過飽和溶液層から原料結
晶への溶質の輸送は重力に逆った拡散作用でおこなわれ
る。それ故種子結晶1側への溶質の輸送速度に比較して
遅くなる。そのため時刻t11までの降温プロセスによっ
て第2図(C)に示すごとく種子基板1に成長した成長
層40の厚みに比べて原料結晶2に析出した成長層5の厚
みは可成り薄くなる。以上の温度プロセスによって初期
的成長プロセスを終了させ、第1図(G)に示すごとく
時刻t11から周期をτとする成長の温度サイクルの昇温
プロセスに入る。このとき温度Tlで飽和状態にあった
溶液3はこの昇温によって未飽和溶液状態(LN)とな
る。このため、この溶液へ原料結晶2が溶解し、第2図
(D)に示すごとく原料結晶2に隣接した部分に高濃度
溶液層6が形成される。しかし、この高濃度溶液はその
下にある未飽和溶液LNより比重が大きいから、重力に
よって沈降し、その代りに下方から比重の小さな未飽和
溶液が浮上してきて入れ替る。したがって高濃度溶液層
6は消滅するが、この入れ替った未飽和溶液へ原料結晶
が溶解するので再び高濃度溶液層6を形成する。そして
上記のごとく沈降し、下方から浮上してくる未飽和溶液
と入れ替ることを繰り返す。このため昇温プロセスによ
って、原料結晶2から溶液へ溶質の供給がおこなわれ
る。このようにして供給された溶質は溶液の比重を増加
させるので第2図(D)に矢印で示すごとく沈降し、種
子結晶1に隣接した部分に高濃度溶液層7を形成する。
この高濃度溶液層7は昇温プロセスが進み温度が最高温
度Thに達すると、第2図(E)に示すごとくその温度
で飽和溶液(LS)となる。したがって第1図の場合と
同様につぎの降温プロセスにおいて、その高濃度溶液は
過飽和となる。そしてこの過飽和分が先に種子結晶1に
形成された初期成長層40に析出して第2図(F)に示す
ごとく成長層41を形成する。一方原料結晶側では降温プ
ロセスにおいて、それに隣接する部分は比重の小さな未
飽和の溶液で占められているので、溶質の析出はほとん
どおこらない。したがって、第1図(G)に示すごとく
昇温プロセスとそれに引続く降温プロセスを1周期とし
た成長の温度サイクルをこの成長系に繰り返し、周期的
におこなうことによって種子結晶1の上へ所望の組成と
厚みをもつ混晶4を成長できるわけである。
以上溶質の濃度が増加する程、溶液の比重が減少する
場合と、その逆の溶液の比重が増加する場合とに別け
て、本発明の混晶の製造方法について説明した。それに
よって、本発明の主旨が明らかにされたが、それを一層
明白にするために、以下に具体的実施例を示す。
〔具体的実施例〕
実施例1 種子結晶の格子定数と目的とする混晶の格子定数が異
る場合の実施例としてSiを種子結晶基板としたGeSi混晶
の成長を例にとって説明する。第3図は本発明を実施す
るための成長装置の一例を示す。この装置は種子結晶1
と原料結晶2の間に溶液3を挿入するのにピストン19を
用いている。20は適当な材料、例えば高純度カーボンを
用いたボートで、その一部にピストン19を挿入できるよ
うにしたシリンダ17を備えている。このボートは第3図
に示すごとく電気炉10を備えた石英管16の中に設置され
ている。石英管16の両端はフランジ13および13′で密閉
されており、石英管の中にはガス配管14および14′を通
じて、矢印8で示すごとく高純度雰囲気ガス、例えば水
素、窒素あるいはアルゴンが適当な流量で流れている。
勿論ピストン19の操作棒がフランジ13′を貫通している
部分は、操作棒が可動可能でかつ密閉度が高くなるよう
な構造になっている。まず種子結晶1として適当な面方
位と厚みをもつ板状のSi結晶、たとえば(111)面方位
をもち厚さ500μm程度のSiウェハーを通常の方法で研
磨、エッチング、洗浄処理で充分清浄にした後第3図の
ごとくボートに設置する。そしてこの種子結晶基板1を
蓋24で固定する。原料結晶2として、目的とするGe1-xS
ix混晶を成長させるには原子比でGe:Si=(1−x):x
の均一組成の合金たとえば、Ge:Si=6:4の合金を使用す
る。この合金は、Ge:Si=6:4となるごとく秤量したGeお
よびSiを高純度不活性ガス中で加熱して融解させ、それ
を攪拌して両者を充分混合させたあと急冷して調整す
る。勿論この合金は微視的にはGeおよびSiが偏析してい
るがその粒界の大きさはせいぜい100μm程度であり、
巨視的には充分均一と看做すことができる。種子結晶Si
基板と、目的とするGe0.6Si0.4混晶との間の格子不整合
緩和層の厚みを適当な値にするためには種子結晶1と原
料結晶2との間隙が重要である。本実施例では500μm
とした。成長に用いる溶媒としてSiに対してAl,In,Sn,G
a,Pbなどがあるが、本実施例ではGa-Snを用いた。まず
種子結晶1と原料結晶2との間に注入する溶液用合金材
料3′をボート20のシリンダー17内に仕込む。本実施例
では重量比でGa:Sn:Si=22:38:1.3の合金を用いた。電
気炉に通電して昇温し、第1図(G)に示すごとき温度
サイクルで成長をおこなった。具体的にはTh+ΔT=90
5℃として2〜3時間一定温度で保持して、シリンダー
内の溶液が充分均一になるようにした。その後1℃/分
で冷却をおこない900℃になったときピストン19を操作
して、シリンダー内に準備してあった溶液3′をシリン
ダーに設けた溶液注入孔21を通じて種子結晶1と原料結
晶2との内に注入した。なお小穴22はこの注入の際に成
長溶液3によって排除される雰囲気ガスならびに過剰溶
液の抜け穴である。そして23は過剰溶液の受皿として設
けたものである。このようにして成長を開始し、Tl=8
80℃まで降温し、10分間一定に保持した。つぎにTh=90
0℃まで1℃/分の速度で昇温し、その温度で10分間保
持すると言った温度サイクルで成長をおこなった。そし
て20周期この温度サイクルを繰返して成長を終了させ
た。この成長を終了させるための降温過程でも結晶が析
出する。これを防止するためにはボートを天地するとよ
い。この操作はこの析出を原料結晶側に転じるためであ
る。
本発明の効果を明確にするために、このようにしてSi
種子結晶基板に成長させた結晶の検査結果について述べ
る。成長した結晶を、種子結晶と成長結晶の界面に対し
て垂直に切断した断面を鏡面に研磨した後、ステンエッ
チして光学顕微鏡で観察したところ、温度サイクルに対
応した成長縞が観察させ、1周期当りの成長層の厚みが
約30μm程度で20周期の成長層厚さは600μmであるこ
とが判明した。電子線プローブマイクロアナライザー
(EPMA)の分析結果では第12層目迄は階段的にGeが増加
するごとく組成が変化し、13層目以降は組成は一定とな
り混晶組成x=0.4の均質なGe0.6Si0.4混晶が成長して
いた。X線トポグラフによれば格子不整合による転位が
階段的組成変化をする部分に集中して観測され、均一組
成部分には転位は少なかった。このことは本発明の方法
が有効であることを示すものである。
以上の実施例では温度サイクルの周期ならびに温度の
上下の振幅を一定、すなわち周期が60分で温度の振幅を
20℃とした場合について述べた。この両者を成長の途中
で変化できることは勿論である。例えばこの周期と振幅
で12周期成長したあとで昇温速度ならびに降温速度はそ
のままは変化せず周期を30分、温度の振幅を10℃にして
も差支えない。このように温度の振幅を小さくすること
は成長方向に対する組成のゆらぎを小さくするのに有効
である。勿論、同じ周期では温度の振幅を小さくする程
成長速度は遅くなるが、周期を短くすることによって、
成長速度の減少を少くするすることが可能である。
なお本実施例でGeSi混晶の成長にSn-Ga溶媒を用いた
が、それは次の理由による。GeおよびSiはGaに対して高
い溶解度を有するが、液体Geの比重と液体Gaの比重を較
べた場合900℃においてGeの比重が5.6g/ccに対してGaの
比重はこれより小さな値5.55g/ccである。このためGaの
みを溶媒として用いた場合には溶質としてのGeを目的と
する方向へ輸送することができない。一方Snの900℃に
おける比重は6.7g/ccであり、GeおよびSiの比重よりも
大きな値を有する。したがって溶媒へSnを適量混入する
ことにより溶媒の比重をGeの比重より大きくすることが
できる。すなわちSnは溶媒の比重を調整する役割を果た
している。
以上Siを種子結晶とし、それに格子定数の異なるGeSi
混晶を成長する場合も例にとって本発明を説明したが、
勿論これ以外でも本発明の方法が実施できることは言う
までもない。例えばGaP種子結晶へのInGaP(以下混晶名
/種子結晶基板たとえばInGaP/GaPと略記する)InGaAs/
GaAs,InGaSb/GaSb,InGaAs/InP,InAsSb/InAs,GaAsP/GaP,
InGaSb/InAs,GeSi/Si,GaAsP/Si,InGaP/Si,PbSnTe/PbTe,
HgCdTe/CdTe,ZnSSe/ZnS,ZnCdSe/ZnSeなどの成長が可能
である。勿論本発明は以上に上げた物質以外でも実施で
きることは言うまでもない。
実施例2 本発明の方法では成長系全体の温度を空間等には等温
にしたままで、時間に対して温度を周期的に上下するだ
けで成長できるので、複数枚の種子結晶基板上に同時に
混晶を成長させることが可能である。第4図はそれを実
施するためのボートの一例を示す。この実施例は溶液中
の溶質濃度が増加する程溶液の比重が減少する場合を示
すものである。勿論、この逆の溶液中の溶質濃度が増加
する程溶液の比重が増加する場合には種子結晶1と原料
結晶2とを入替えればよい。本実施例では第4図に示す
ごとく種子結晶1と原料結晶2が交互に多段の棚状に配
置してある。第4図において、最上段と最下段とを除い
て、種子結晶1と原料結晶2とが背中合わせに接触した
状態で配置されているが、勿論種子結晶1と原料結晶2
との間に適当なスペーサーを挿入してもよい。溶液3を
注入するには適当な方法を用いればよい。たとえば、第
3図に示したようなピストンによる注入方法がその一例
である。
実施例3 二種の半導体が二元合金系あるいは擬二元合金系を形
成する場合に、本発明を実施することにより混晶を成長
できる。第5図は本実施例における組成制御の原理を説
明するためのものである。第5図(b)は一例としてC
を共通元素とする二元化合物ACおよびBCによる擬二元合
金系状態図を模式的に示す。化合物BCの融点Tm2が化合
物ACの融点Tm1よりも高いものとしている。いまACおよ
びBCを分子比で(1−x):xで合金した混晶A1-xx
を成長する場合について説明する。第5図(b)のごと
く当該混晶の成長温度Tg(ただし、Tm1≦Tg≦Tm2
が決まれば、このAC-BC擬二元系平衡状態図において、
液相線Lと固相線Sとによって溶液組成Xと固相組成x
とが一義的に決定されることがわかる。第3図(a)は
溶液3となるA−B−C三元溶液中でB元素のモル分率
が増加するにしたがって溶液の比重が減少する場合に対
する結晶成長系を示す。第5図(a)において、種子結
晶1として組成x1のA1-x1x1C混晶を用い、原料結
晶2として組成x2のA1-x2x2C混晶を用いている。
いまこのような成長系を用いて本発明を実施した場合
について述べる。上述のごとく二元合金系あるいは擬二
元合金系においては熱平衡条件下ではギブスの相律より
自由度が1であるから温度Tg,混晶組成x,溶液組成X
の三つのパラメータのうちで一つを設定すれば、残りの
パラメータは従属的に決定される。本実施例ではこのこ
とに着目して成長する混晶組成の制御をおこなうもので
ある。すなわち、温度サイクルにおける温度の振り幅|
Th-Tl|を出来るかぎり小さくし、かつ状態図により成
長温度Tg1を目的とする混晶組成x1に対応するように
選んで結晶成長をおこなう。液相成長法における結晶成
長は、比較的熱平衡に近い条件下でおこなわれるため、
この温度Tg1で、溶液3の組成X1は第5図(b)に示
すごとく混晶(固相)組成x1に対応する値となってい
る。そして第5図(b)から明らかなように、この溶液
から組成x1の混晶を析出した場合、溶液3からはAC成
分よりも偏析係数の大きなBC成分が多く減少しようとす
るが、原料結晶2の溶解によってその減少分がただちに
補給されるので、溶液3の組成は常に一定に保持され、
したがって成長する混晶組成も、一定に制御される。こ
のことは、目的とする混晶組成x1を原料結晶x2の組成
が異なっていても、x2≧x1、すなわち原料結晶中のBC
成分のモル分率が目的とする混晶中に含まれる成分のモ
ル分率と等しいか、あるいは大きいかぎり成立する。た
だし、たとえばx1<x2のごとく両者の値が異なる場合
に溶液3からAC成分が消費されるため成長が進むにつれ
て溶液3の量が減少する。
以上述べたように混晶を構成する二元合金溶液、ある
いは一成分を共通する擬二元合金溶液を成長用溶液3と
することによって、成長混晶の組成を温度で制御できる
ことが明白になった。厳密には本発明の成長法におい
て、温度サイクルの振幅によって混晶組成は変調を受け
ることになるが、その振幅を小さくすることによってそ
の変調の度合を実用上無視できる程度にすることができ
る。勿論成長温度サイクルの一周期の平均温度を一定に
することによって成長混晶の組成を一定に制御できる。
逆に、この平均温度を徐々に変化させることによって、
成長方向に混晶組成の分布を付けることができることは
言うまでもない。第5図(b)から明らかなように温度
gを上げれば混晶においてBC成分が増加し、Tgを下げ
れば減少するわけである。
つぎに擬二元合金系を用いた具体例として、均質組成
のIn0.3Ga0.7Sbを成長する場合を例にとって説明する。
まず組成x=0.7のIn1-xGaxSb種子結晶を準備する。こ
の種子結晶の具体的製作法としては実施例1のように組
成勾配を付ける方法で作製すればよい。状態図、ならび
に成長実験から、目的とする組成の混晶を得るにはTg
=675℃とすればよいことがわかる。またこの温度に対
応する溶液組成はX=0.5となる。成長を具体的におこ
なうには第3図に示すようなボートを使用すればよい。
まずシリンダー内にX=0.5となるようなIn-Ga-Sb合金
を仕込む。そして、685℃でピストンによりこの溶液を
種子結晶基板1と原料結晶2との間に注入して成長を開
始し、Tl=670℃,Th=680℃、周期60分で50周期成長し
たところ、厚さ10mmの組成x=0.72の均質なInGaSb混晶
を成長できた。
本方法はInGaSb混晶以外の混晶にも応用できる。たと
えばGeSi,III−V族化合物半導体同志の擬二元混晶、た
とえばInSb,InAs,InP,GaSb,GaAs,GaP,AlSb,AlAs,AlPの
うちで二種を組み合わせかつ一成分元素を共通とする擬
二元混晶、II-VI化合物混晶、例えばHgCdTe,CdZnTe,CdT
eSe,IV-VI族化合物混晶たとえばPbSnTeなども応用可能
である。勿論これ以外の混晶に対して実施可能なことは
言うまでもない。なお、溶液3中でBCの濃度が増加する
程比重が増加する場合例えばPbSnTeなどの場合には種子
結晶1を溶液の下側に配置することは勿論である。
実施例4 第6図は帯溶融法と類似の装置で本発明を実施する場
合を示すものである。種子結晶1、原料結晶2、および
溶液3が竪型炉に設置されている。10は電気炉で均熱帯
が広いものを用いている。11は原料結晶の支持棒であ
り、適当な材料たとえば石英ガラス製で上部には成長系
を密閉するための石英容器9が取付けてあり、原料結晶
はその容器の中に設置されたホルダ15に固定できるよう
にしてある。この成長系を密閉するための石英容器9は
解離圧の高い混晶を成長する場合に必要なもので、勿論
解離圧の低い混晶の場合には不必要である。支持棒11と
フランジ13との間は支持棒11を回転および上下方向に移
動できるように、しかも気密にシールされている。12は
種子結晶の支持棒であり、原料結晶の支持棒11と同様な
材料で製作され、先端部に種子結晶を固定するホルダと
密閉容器9に対する蓋が取付けてある。密閉容器9には
図示のごとく蓋を嵌め込む溝があり、そこにB2O3などの
液体封止剤が満たしてあるため密閉できるわけである。
成長時にこの密閉容器9の周りに解離圧と等しいガス圧
を加えておけばよい。
いま1例としてInGaAs混晶の成長についてのべる。種
子結晶として(111)B面を成長面とするInGaAs単結晶
を準備する。通常の方法で成長面を清浄化したあとこの
種子結晶1を支持棒12の先端に固定する。一方清浄化し
た所定の混晶組成をもつInGaAsたとえばIn0.6Ga0.4As原
料結晶2をホルダ15に固定する。そしてその上に原子比
でInAs:GaAs=95:5の合金を10μm〜1mmの範囲の適当な
厚さに調製したものを溶液3用のIn-Ga-As合金として設
置する。はじめ支持棒12を引きあげておく。そして石英
管16中を真空に排気し、その後高純度水素を流して、成
長系内の残留酵素を除去する。それから加熱し、封止剤
が融解したところで、支持棒12を下げて成長系を密閉す
ると共に種子結晶1と成長用溶液3と接触させる。成長
系の温度がTlに到達した時点で昇温を止める。本成長
例ではTl=975℃に設定した。この温度で2時間保持し
た後0.25℃/分の割合で昇温し、Th=985℃に達したと
ころで10分間保持した。つぎに0.25℃/分の割合で冷却
しTl=975℃に達したところで10分間保持した。このよ
うにすることによって種子結晶1にInGaAs混晶を成長さ
せることができるわけである。本実施例では以上の温度
サイクルを1周期として60周期成長をおこなった。その
結果厚さ18mmの成長混晶4を得ることが出来た。混晶組
成は原料結晶と同一のIn0.6Ga0.4Asであった。
このような装置によって、種々のIII−V族化合物混
晶たとえば、AlGaAs,AlGaP,AlGaSb,AlInAs,AlInP,AlInS
b,GaInP,GaInSb,GaAsP,InAsP,InSbAs,GaSbAsやIV-VI族
化合物混晶たとえばPbSnTe,II-VI族化合物混晶たとえば
ZnSSe,ZnCdSe,ZnCdTe,CdTeSeなどやその他の混晶例えば
GeSiなどを成長することができる。
実施例5 以上の実施例では予め準備した種子結晶を使用した
が、自然発生した結晶核を種子結晶として用いることが
できる。
第7図はその1例としてPbSnTe混晶に対する実施例を
示す。まず目的とする混晶組成をもつ原料結晶たとえば
Sn0.4Pb0.6Te多結晶と融解したときに溶液となる組成の
Sn0.58Pb0.42Te多結晶を準備する。
石英アンプル25は、初晶部での粒界発生を防ぐため、
先端を適当に尖らせたものを用いる。アンプル内壁は弗
酸:硝酸=1:2の溶液でエッチングしたあと、充分洗浄
する。そして真空ベーキングした後、アセトン等の熱分
解によりカーボン薄膜をコーテングする。これは結晶成
長終了後の冷却時に結晶と石英との密着によるクラック
の発生を防止するためである。このように処理したアン
プルに上述の清浄化した原料を仕込み、真空封止して第
7図のごとく電気炉10中に設置する。第5図において26
はアンプルに付けたヒートシンク、31は電気炉内の温度
分布を均一にするための蓋である。電気炉を872℃に昇
温後数時間保持して溶液となる素材を溶融して均一な溶
液3を形成した後冷却プロセスに入り、成長を開始し
た。成長はTh=872℃,Tl=868℃,τh=15分,τc=15
分の温度サイクルでおこなった。溶液3中でPbの濃度が
高くなる程比重が増加するから過飽和分がアンプルの尖
った部分に降下してたまり、この部分にまず結晶核が生
成され、それが成長することによって種子結晶1′が形
成される。このようにして、150時間成長をおこない。
直径20mmφ,長さ60mmのPb0.6Sn0.4Te単結晶を成長する
ことができた。
PbSnTeのように溶液中で溶質の濃度が増加する程比重
が増加する場合には第7図のような配置で成長できる。
たとえばPbSnSeなども同様に成長可能である。
実施例6 溶液中での溶質の濃度が増加する程溶液の比重が減少
する場合には、本発明の方法では溶液の上層部で過飽和
となる。そして、その部分に種子結晶が無い場合にはこ
の過飽和となった溶質によって結晶核が生成する。第8
図はこの結晶核を種子結晶として利用した実施例を示
す。図に示すようにまず、石英容器27中に目的とする混
晶組成をもつ原料結晶2を挿入する。28はこの石英容器
の栓で適当な材料例えば高純度のカーボンで構成されて
いる。この石英容器28は29の部分が括れて、細くなって
いる。石英アンプル25を封じ切り電気炉10に設置するま
ではこの石英容器27を水平におき、石英容器の開口部30
が上になるように保持しておく。成長用溶液3となる所
定量の材料をこの開口部30から石英容器27に挿入し、石
英アンプル25を真空封じする。そして、溶液3用の材料
が開口部30から出ないように注意して、このアンプルを
電気炉10中に設置する。その後電気炉を昇温し、溶液3
用材料を溶解する。この溶解した溶液は容器27の括れた
部分29を通って下に流れ落ち、原料結晶2の上に溶液3
を形成する。このときこの溶液は、石英容器27の括れた
部分29以下は完全に満し、かつ溶液3の一部3″が第8
図に示すごとく括れた部分29より上に存在するようにし
ておく。括れた部分の太さは出来るかぎり細くした方が
よく、具体的には1〜5mmφ程度とすればよい。このよ
うな配置で結晶成長の温度サイクルを開始すると、溶質
が下部に配置した原料結晶2から溶液に供給されそれが
浮上してくる。括れの部分が比較的太い場合にはそこを
通過し溶液3″の自由表面に達し、そこで過飽和分が析
出する。勿論これらは多結晶となるが、成長が進むにつ
れて成長速度の速い軸方向をもつものが下向に成長し、
括れのところで、その方向だけが選択される。したがっ
て括れの部分を通過して溶液3の上部に延びて来た結晶
は単結晶となり、これを種子結晶1′として使用できる
わけである。容器27の括れの下の部分の形状を適当なも
のにすることによって種子結晶1′に成長した結晶は横
方向に拡がっていき、ブリッジマン法と同様に成長結晶
全体を単結晶とすることができる。
上述において括れの部分が細い場合には、その部分に
過飽和分が析出し、上記と同様に下方に向った成長速度
の速い結晶方向を選択できるわけである。
本方法によれば多くのIII−V族化合物混晶やII-VI族
化合物混晶や実施例5を適用できない多くの混晶の成長
が可能である。勿論本発明と従来の温度差法とを併用す
ることも可能であり、それによって両者の特徴を発揮で
きるような混晶製造技術を開発できることが当然期待で
きよう。
〔発明の効果〕
以上説明したように本発明によって、よく組成制御さ
れた混晶の製造が可能となった。具体的には本発明によ
って、任意の種子結晶基板上に、組成勾配を付けた格子
不整合緩和層を挾んで、目的とする組成の混晶が成長で
きるようになった。その上本発明の方法は混晶を量産す
る技術を提供するものである。これまで混晶の利用出来
る組成範囲が用いる種子結晶基板によって制限されてい
たが、本発明によって、この問題は解決された。これに
よって、本発明は二次元ガスを用いた超高周波半導体デ
バイスはもとより、各種センサー、受光素子、発光ダイ
オード、半導体レーザ、表示素子など、光通信や、情報
処理、メカトロニクス、太陽エネルギー変換素子など、
広い分野で使用される半導体デバイスの構成材料の製作
に対して、大きな効果をもたすことが期待される。
【図面の簡単な説明】
第1図および第2図は本発明の結晶成長方法の原理の説
明図で、第1図は溶質濃度の増加に対して、溶液の比重
が減少する場合を示し、第2図は逆に比重が増加する場
合に対するもの、第3図は本発明を実施するための混晶
製造装置の一例、第4図は複数枚の種子結晶基板を用い
て同時に混晶の製造をおこなった実施例、第5図は擬二
元系固溶体混晶の成長を実施するときの組成制御法の説
明図、第6図は帯溶融法に類似の装置を用いた実施例、
第7図および第8図は過飽和度の高い部分に発生させた
結晶核を種子結晶として利用した実施例を示す。 1……種子結晶(基板)、1′……結晶核を利用した種
子結晶、2……原料結晶、3(3′,3″)……溶液、4
(40,41,42,…)……成長結晶、5……原料結晶側への
析出層、6……原料結晶近傍の溶液層、7……種子結晶
近傍の溶液層、8……雰囲気ガス流、9……密閉容器、
10……電気炉、11……原料結晶の支持棒、12……種子結
晶の支持棒、13(13′)……フランジ、14(14′)……
ガス配管、15……原料結晶ホルダ、16……石英管、17…
…シリンダー、18……液体封止剤、19……ピストン、20
……ボート、21……溶液注入孔、22(22′)……ガス抜
穴、23……過剰溶液受皿、24(24′)……蓋、25……石
英アンプル、26……ヒートシンク、27……石英容器、28
……石英容器の栓、29……石英容器の括れ部、30……石
英容器の開口部、31……電気炉の蓋、L……液相線、S
……固相線、g……重力の加速度、t(ts,t11,t
21…)……時間、T(Th,Tl,Tg,Tm1,Tm2)……温度、
ΔT……過冷却度、τ……成長温度サイクルの1周期、
τc……降温プロセス期間、τh……昇温プロセス期間、
S……飽和状態または飽和溶液、LSS……過飽和状態
または過飽和溶液、LN……未過飽和状態または未飽和
溶液、FB……浮力、Vc……平均冷却速度、Vh……平
均昇温速度、x(x1,x2)……混晶組成、X……溶液組
成、AC,BC,化合物。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】種子結晶と成長を目的とする混晶組成をも
    つ原料結晶との少なくとも一つを上側に、また他の一つ
    を下側に配置し、種子結晶及び原料結晶との間を種子結
    晶上に固相を析出するごとき溶液で満たし、種子結晶、
    原料結晶及び溶液の温度をある温度幅で周期的に上下さ
    せることによって、原料結晶側から溶解させた溶質を種
    子結晶側へ輸送させ、その溶質を種子結晶に析出させる
    混晶の製造方法において、 前記種子結晶と該種子結晶と格子定数の異なる混晶との
    間に、混晶組成の勾配をもつ格子定数緩和層を成長させ
    ることを特徴とする混晶の製造方法。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項記載の混晶の製造方
    法において、前記周期的に上下させる温度の振幅を徐々
    に変化させ、混晶組成の勾配をもつ格子定数緩和層を成
    長させることを特徴とする混晶の製造方法。
  3. 【請求項3】特許請求の範囲第1項記載の混晶の製造方
    法において、前記周期的に上下させる温度の振幅ととも
    に、周期的温度変化の中心温度と周期の長さとの少なく
    とも一つを変化させ、混晶組成の勾配をもつ格子定数緩
    和層を成長させることを特徴とする混晶の製造方法。
  4. 【請求項4】特許請求の範囲第1項乃至第3項記載の混
    晶の製造方法において、前記溶液の中で、結晶の成長に
    関与する溶質の濃度が高くなるほど溶液の比重が減少す
    るとき、種子結晶を原料結晶の上側に配置することを特
    徴とする混晶の製造方法。
  5. 【請求項5】特許請求の範囲第1項乃至第3項記載の混
    晶の製造方法において、前記溶液の中で、結晶の成長に
    関与する溶質の濃度が高くなるほど溶液の比重が増加す
    るとき、種子結晶を原料結晶の下側に配置することを特
    徴とする混晶の製造方法。
  6. 【請求項6】特許請求の範囲第1項乃至第5項記載の混
    晶の製造方法において、前記種子結晶として、成長溶液
    の過飽和部に発生した結晶核を用いることを特徴とする
    混晶の製造方法。
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