JP3613319B2 - 液相エピタキシャル成長方法及びそれを実施する装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光素子や受光素子に用いる三族−五族、二族−六族などの多元化合物半導体結晶に於ける厚さ方向の組成分布を制御して液相エピタキシャル成長させる方法及びそれを実施する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の液相エピタキシャル成長(liquid phase epitaxy:LPE)法は、開管式のLPE法、即ち、ボート・スライド法で実施していたが、蒸気圧が高い元素、例えばHg、As、Pなどを含む半導体結晶の成長させる場合には、蒸気圧の制御を行う必要があり、その場合、キャリヤ・ガスの制御精度に問題があることから、開管式のLPE法では、良質の半導体結晶を成長させることができない。
【0003】
そこで、閉管式のLPE法を適用して蒸気圧の変動を抑止することが行なわれるのであるが、一般に、LPE法では、成長用溶液(メルト)の組成と、析出する化合物半導体結晶の組成とは異なる為、成長が進行するにつれてメルトの組成が変化し、従って、析出する化合物半導体結晶の組成も変化し、エピタキシャル成長層の厚さ方向に組成勾配が生成されてしまう。
【0004】
例えば、Hg1−x Cdx Te結晶では、エピタキシャル成長層が厚くなるにつれてx値は小さくなり、エネルギ・バンド・ギャップも小さくなるので、結晶表面にデバイスを形成すると漏れ電流が大きいものとなってしまう。
【0005】
前記のような組成勾配の生成を低減させる手段として、メルト量を多くして、相対的に組成変動を小さくすることが行なわれているのであるが、メルト量を多くするにも限度がある。
【0006】
また、一つのメルト組成では、析出する結晶の組成を変える場合、成長温度を上昇して基板のメルト・バックを行なって組成を上げるか、或いは、成長温度を低下させ過冷却状態で予めダミー基板に結晶を析出させた後、本来の基板に成長を行なうことで組成を下げるしか手段がなかった。
【0007】
ところで、本出願人に於いては、本発明が係わる技術分野で長年に亙って開発及び研究を行ってきた関係で、数多くの発明が実現され、そのなかには、本発明に対する公知例とはなり得ないが、相違点を明らかにしておく必要がある発明が少なからず存在するので、以下、それ等について記述するが、これを理解するには、少なくとも課題を解決するための手段に挙げられた本発明の内容を把握した後にした方が容易と思われる。
【0008】
○ 特開平3−50840号公報に開示された発明(公知例1)について
封管内でCdTe/サファイアを基板とし、HgCdTeのTeリッチ・メルトを用いて等温気相成長を行ない、CdTe/サファイアを厚さ方向の組成が全て均一なHgCdTe/サファイアにする方法が開示されている。
【0009】
この公知例1が本発明と関連をもつのは、メルト温度と基板温度を同一にして気相成長を行う場合の現象を開示した点である。
【0010】
然しながら、この公知例1では、サファイアを拡散の防止に利用していて、サファイアなしでは、組成が変動する通常の気相拡散に依るHgCdTe層になってしまう。また、気相拡散のみでHgCdTe層を形成している為、HgCdTe層の厚さは、CdTe層の厚さで決まってしまい、自由に制御することはできない。更にまた、結晶中の不純物がCdTe層の不純物で支配される為、高純度化が困難である。
【0011】
これに対し、本発明では、LPE成長で厚さ方向に組成が略均一で、且つ、厚さが任意に選択された化合物半導体結晶層を形成することができ、また、LPE成長であるから、高純度の化合物半導体結晶、例えば、HgCdTeを容易に得ることができ、その上で、気相拡散を利用し、短時間で組成を更に均一化することができる。
【0012】
○ 特開平3−214635号公報に開示された発明(公知例2)について
封管内でCdTe/サファイアを基板とし、HgCdTeのTeリッチ・メルトを用いて等温気相成長(基板とメルトの温度を変える)を行ない、CdTe/サファイアを厚さ方向の組成が全て均一なHgCdTe/サファイアにする方法が開示されている。
【0013】
この公知例2の発明でも、HgCdTe組成を決定する温度を選択する自由度は公知例1に比較して広くはなるが、欠点は公知例1と同じである。
【0014】
○ 特開平2−263432号公報に開示された発明(公知例3)について
封管内でCdTe(薄層)/サファイアを基板とし、HgCdTeのTeリッチ・メルトを用いて等温気相成長を行ない、CdTe/サファイアをHgCdTe/サファイアにした後、所定温度でLPE成長する方法が開示されている。
【0015】
公知例3の発明では、CdTe/サファイアをHgCdTe/サファイアにした部分は厚さ方向の組成が均一になるが、LPE成長したHgCdTe層には、通常のLPE成長層と同様、厚さ方向に組成勾配が発生する。
【0016】
○ 特開平2−263433号公報に開示された発明(公知例4)について
封管内でCdTe(薄層)/サファイアを基板とし、HgCdTeのTeリッチ・メルトを用いて等温気相成長を行ない、CdTe/サファイアをHgCdTe/サファイアにした後、所定温度でLPE成長する方法が開示されていて、CdTe層が若干厚い点を除き、公知例3の発明と同様である。
【0017】
公知例4の発明では、CdTe/サファイアをHgCdTe/サファイアにした部分は格子不整合が緩和されるのであるが、LPE成長したHgCdTe層には、通常のLPE成長層と同様、厚さ方向に組成勾配が発生する。
【0018】
○ 特開平3−237713号公報に開示された発明(公知例5)について
封管内でCdTe(薄層)/サファイアを基板とし、HgCdTeのTeリッチ・メルトを用いて等温気相成長を行ない、CdTe/サファイアをHgCdTe/サファイアにした後、所定温度でLPE成長する方法が開示されていて、公知例4と略同様な内容であって、等温気相成長温度とLPE成長温度を一致させ、格子不整合を小さくする。
【0019】
公知例5の発明では、CdTe/サファイアをHgCdTe/サファイアにした部分は格子不整合が緩和されるのであるが、LPE成長したHgCdTe層には、通常のLPE成長層と同様、厚さ方向に組成勾配が発生する。
【0020】
○ 特開平3−204923号公報に開示された発明(公知例6)について
封管内でCdTe(薄層)/サファイアを基板とし、HgCdTeのTeリッチ・メルトを用いて等温気相成長を行ない、CdTe/サファイアを組成が均一なHgCdTe/サファイアにした後、降温して、所定温度でLPE成長を行って第二層を形成する方法が開示されている。
【0021】
公知例6のでは、CdTe/サファイアをHgCdTe/サファイアにした部分は厚さ方向の組成が均一になるが、LPE成長したHgCdTe層には、通常のLPE成長層と同様、厚さ方向に組成勾配が発生する。
【0022】
○ 特開平4−320327号公報に開示された発明(公知例7)について
封管内でCdTeバルク結晶を基板とし、HgCdTeのTeリッチ・メルトを用いて等温気相成長を行ない、メルトの液相化温度よりも高温で等温気相成長層の一部を溶融し、液相化温度以下でLPE成長を行う。
【0023】
また、等温気相成長を行ない、メルトの液相化温度以下でLPE成長を行ない、そして、メルト分離後に温度を上昇させてメルトの液相化温度よりも高い温度で、再度、結晶の一部を溶融し、しかる後、降温してLPE成長を行うものであり、これは、メルト・バックに依って、結晶層に於ける不純物の除去を目的としている。
【0024】
公知例7の発明では、結晶層(第一層である気相拡散層)をメルト・バックするので、第一層の厚さを制御することができず、また、昇温時の保持工程がない為、エピタキシャル成長結晶層に於ける厚さ方向の組成を制御できない旨の欠点があり、また、第二層には、通常のLPE成長層のように、厚さ方向に組成勾配が発生する。
【0025】
○ 特開平4−324927号公報に開示された発明(公知例8)について
封管内でCdTe結晶(CdTe/サファイア)を基板とし、HgCdTeのTeリッチ・メルトを用いて液相化温度以下、即ち、400〔℃〕〜430〔℃〕でバッファ層をLPE成長し、基板とメルトを分離した後、液相化温度以上にした後、再び液相化温度以下、即ち、480〔℃〕〜475〔℃〕で活性層をLPE成長開始する方法である。
【0026】
公知例8の発明では、公知例7と同様、昇温時の保持工程がない為、エピタキシャル成長結晶層に於ける厚さ方向の組成を制御できない旨の欠点があり、また、活性層は、通常のLPE成長層のように、厚さ方向に組成勾配が発生する。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、LPE法に於ける基本的な問題とされているエピタキシャル成長層の厚さ方向に於ける組成勾配を制御可能とし、且つ、メルト組成を制御可能にしようとする。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明に於いては、メルト増量に依存することなく、エピタキシャル成長層の厚さ方向に於ける組成勾配を制御する為、LPE法でエピタキシャル成長した半導体結晶層をある条件から導出した温度に昇温し、結晶表面と結晶中の組成差に起因する相互拡散を利用して組成分布(組成勾配)を制御することが基本になっている。
【0029】
ここで、前記基本とするところを実現するのに必要な事項、或いは、留意すべき事項などを綜合して説明する。
【0030】
(A) 成長方法について
本発明では、LPE法に依る成長が終わった後、成長用基板からメルトを除去し、メルト及び成長結晶層の温度を所定の温度に昇温し、且つ、その温度を所定時間維持するのであるが、メルト部(メルト並びにメルトが存在する領域)の温度が基板部(基板並びにその基板が存在する領域)の温度以下となるようにするものであり、これに依り、メルトから成長結晶層表面に対する気相移動がなくなり、成長結晶層表面の汚染、即ち、メルト付着がなくなる。因みに、前記気相移動は高温から低温に向かって起こることは勿論である。
【0031】
また、結晶層の成長終了後に冷却する際、メルト部の温度を基板部分の温度以下とすることで、メルトから成長結晶層表面に対する気相移動がなくなり、成長結晶層表面の汚染を防ぐことができる。
【0032】
成長結晶層の組成を更に正確に制御する手段として、上記した本発明方法の要点に加え、LPE成長開始温度をメルトの液相化温度よりも低くして、成長開始前にメルトから結晶核をメルト部に析出させた後にLPE成長を行ない、LPE成長終了後、即ち、基板からメルトを除去した後、メルト中に析出した結晶核を再溶融する。
【0033】
このとき、メルト中への結晶核の再溶融を促進する為、攪拌機構を設けてメルトを攪拌すれば、短時間で再溶融することが可能であり、再溶融時の再溶融温度と時間は、上記LPE成長後の保持工程に相当する。
【0034】
この際、再溶融温度がメルトの液相化温度以下の温度であれば、相図のみから正確に平衡組成を求めることができるから、その平衡組成をもとに再溶融温度を制御すれば良い。
【0035】
上記説明は単層を成長させる場合であるが、複数層を成長させる場合には、第一層のLPE成長開始温度をメルトの液相化温度よりも低い温度とし、成長開始前にメルトから結晶核をメルト部に析出させた後にLPE成長を行ない、LPE成長終了後、即ち、基板からメルトから除去した後、メルト中に析出した結晶核を再溶融する。
【0036】
このときの再溶融時の再溶融温度と時間は、上記LPE成長後の保持工程に相当し、再溶融温度はメルトの液相化温度以下にする。
【0037】
第一層のLPE成長を行なって、所定の温度保持工程が終了したら、再び、液相化温度以下の任意の成長開始温度にして第二層のLPE成長を行うか、或いは、LPE成長と再昇温して保持する工程を繰り返すことに依り、組成を異にする複数の結晶層を成長し、結晶の厚さ方向に於ける組成分布、即ち、組成勾配を制御することが可能となる。
【0038】
(B) 転位について
前記成長方法を採った場合、転位が増加するのではないか、との懸念がもたれるところであるが、これについては全く問題はない。
【0039】
一般に、平衡蒸気圧が高い化合物半導体結晶では、結晶表面の平衡蒸気圧よりも雰囲気ガスの平衡蒸気圧が低くなった場合、結晶中に空孔が生成され、また、空孔が集合して転位となり易い。
【0040】
そこで、転位の増加を防止する手段として、上記成長方法に於いて、LPE成長後の化合物半導体結晶の表面組成と、LPE成長後の昇温保持工程での三相平衡組成で、LPE成長後の昇温保持温度に於ける平衡分圧の差を約50〔%〕以下となる範囲で昇温保持温度を設定することで転位の増加を防止することができる。
【0041】
目的とする表面組成の場合に、昇温保持温度に於ける平衡分圧の差を約50〔%〕以下となるようにする為には、1回の昇温保持温度を低くし、昇温保持工程を複数回繰り返すことで目的とする表面組成にすれば、転位の増加を防止することができる。
【0042】
(C) 成長装置について
化合物半導体結晶の閉管式LPE成長装置に於いて、閉管内に成長用の基板、及び、成長用メルトをセットし、LPE成長時は、メルトと基板を同一温度にすることが可能で、LPE成長後に基板からメルトを除去した後、メルト部温度と基板部温度を所要の温度に独立して制御できる構成をもつことが必要である。
【0043】
メルト部温度と基板部温度とを所要の温度に独立に制御することができる具体的な構成として、炉の加熱装置(ヒータ)に加えて、メルト部又は基板部、或いは、メルト部と基板部の両方に冷却用ガスや冷却用液体を独立して流し得る構造とし、各部に設けた温度モニタで検知した各部の温度に合わせて冷却用流体の流量を制御することで温度調節する手段が有効であり、このようにすることで、狭い領域でも自由且つ独立に温度を制御することができる。
【0044】
前記構造であれば、LPE成長後の昇温保持工程終了後、メルト部温度が基板部温度以下となる条件で閉管全体を急冷することができる構造も兼ねることができる。
【0045】
更に、メルト中への結晶核の再溶融を促進する為、攪拌板などを設けてメルトを攪拌することで短時間で再溶融することが可能となる。
【0046】
図1は本発明の原理を説明する為の成長装置の状態を表す要部説明図であり、(A)はLPE成長時の状態、(B)は気相拡散時(昇温保持工程)の状態をそれぞれ示している。
【0047】
図に於いて、1は石英アンプルである閉管、2は半導体結晶からなる成長用基板、3は成長用溶液であるメルト、4は独立に温度制御可能な温度調節部、5はエピタキシャル成長結晶層をそれぞれ示している。尚、(A)の状態、即ち、LPE成長時に於いては、メルト部と基板部に於ける温度は同一であり、(B)の状態、即ち、気相拡散時(昇温保持工程)に於いては、メルト部は基板部に比較して低温になっている。
【0048】
図1に於いて、閉管式LPE成長方法が、閉管1を傾けるネルソン式、閉管1を回転させるティッピング式、閉管1内で基板2をメルト3に浸漬するディッピング式の何れであっても良い。
【0049】
図2は本発明を実施する場合の成長温度と時間の関係を表す線図であり、横軸には時間の推移を、また、縦軸には温度をそれぞれ採ってある。尚、この図については、後に詳細に説明する。
【0050】
本発明は、三族−五族、二族−六族などの三元以上の多元化合物半導体結晶の分野で有効であり、特に、蒸気圧が高い元素、例えば、Hg、As、Pなどを含む結晶を成長させる際、エピタキシャル成長結晶層に於ける厚さ方向の組成勾配を制御するのに好適である。
【0051】
更に詳細には、化合物半導体結晶がA1−x Bx Cの形で表記され、AがHg、BがCd、Mn、Zn、Fe、CがTe(四元の場合にはTe、Se、S)なる元素の何れかで構成される三元の化合物半導体結晶、或いは、上記A、B、Cの各元素からなる四元以上の化合物半導体結晶であり、そして、成長用基板がCdTe、CdZnTe、CdTeSe、CdMnTe、或いは、サファイア、シリコン、酸化マグネシウム、GaAs、AlMgO4 の何れかに前記成長用基板として挙げた何れかの材料からなる結晶層を形成したものであると良い。
【0052】
ここで、Hg1−x Cdx Teを成長させる場合を例にとって具体的に説明するが、この場合に必要なデータは、Teリッチ・コーナーの相図、及び、三相(気相、液相、固相)平衡状態に於ける圧力−温度(P−T)曲線である。
【0053】
図3はTeリッチ・コーナーの相図であり(要すれば、「T.Tung etal.,Journal of Electrochemical Society 128(1981)p.1608」、を参照)、横軸にCdの原子分率を、また、縦軸にHgの原子分率をそれぞれ採ってある。
【0054】
図4はP−T曲線を表す線図であり(要すれば、上記文献のp.1609及びp.1610、を参照)、横軸に温度103 /T(K)を、また、縦軸にはHg分圧をそれぞれ採ってある。
【0055】
まず、図3からTeリッチ・メルトの組成を決定することで、液相化温度及び析出する結晶の平衡組成が決まり、次に、成長開始温度、成長厚さを決めて、成長終了時の温度、メルト組成、メルトと平衡するHgCdTe組成をそれぞれ計算で求める。
【0056】
次いで、図4から最も蒸気圧が高いHgについて、Te飽和側のHgの平衡蒸気圧を調べるのであるが、P−T曲線では、温度と組成が決まるとTe飽和側の平衡蒸気圧が決まる。尚、この平衡蒸気圧は計算式で求めることもできる(要すれば、「J.C.Brice,Prog.Crystal Growth and Charact.Vol.13(1986)pp.39−61」、を参照すると良い)。
【0057】
但し、使用するメルトの液相化温度TL 以上の温度で気相拡散(昇温保持)工程を実施する場合、Hgの平衡蒸気圧は、メルトの液相化温度TL でのHgの平衡蒸気圧の点を通り、Hg単体の蒸気圧と比例する値をとることを考慮しておくことが必要である。
【0058】
また、その温度での平衡組成は、Hgの平衡蒸気圧がP−T曲線のTe飽和側に於けるHgの平衡蒸気圧と一致する値が平衡組成となる。
【0059】
更にまた、メルト部温度と基板部温度とが相違する場合は、メルト部温度に於けるHgの平衡蒸気圧と、基板部温度に於けるP−T曲線のTe飽和側のHgの平衡蒸気圧とが一致する値が平衡組成となる。
【0060】
次いで、結晶の厚さ方向の組成分布(組成勾配)を計算するのであるが、その組成分布計算では、LPE成長開始前の気相拡散、LPE成長層の付加と相互拡散、LPE成長後の昇温保持時の相互拡散、の三つの場合に分けて、平衡組成と温度から相互拡散の計算を行う。
【0061】
計算するには、Hg1−x Cdx Teの相互拡散係数D(x,T)に対し、
【0062】
【数2】
【0063】
で表される式で求められる値を用いた場合、温度400〔℃〕〜600〔℃〕の範囲では、実際の結晶に於ける厚さ方向の組成分布と5〔%〕以内の精度で良く一致することが実験に依って確認されている。
【0064】
ところで、式(1)に於いて、A=B=C=1とした場合には、既知の相互拡散係数になるのであるが(要すれば、「K.Zanio and T.Massopust,J.Electron.Mater.15,103(1986)」参照)、発表値では、組成が10〔%〕以上ずれてしまうことが判っている。
【0065】
実際の成長では、図2の(A)及び(B)に見られるように、LPE成長と気相拡散(昇温保持工程)を実行する。
【0066】
成長用メルトには、Teリッチ・メルト、即ち、Hg0.1610Cd0.00897 Te0.83004 (液相化温度482〔℃〕{480〔℃〕})で、平衡組成x=0.202{0.23}、平衡Hg分圧0.09〔atm〕{0.08〔atm〕}、平衡Te2 分圧0.006〔atm〕、平衡Cd分圧5×10−9〔atm〕であるものを60〔g〕用い、30〔mm〕×30〔mm〕の基板上に於けるメルト高さを3.5〔mm〕とした。
【0067】
前記数値のうち、{ }内の数値は、計算値でなく、実験値であり、計算式を該実験値に合わせて補正する必要がある。尚、例えば、組成がx=0.20とx=0.23の程度の差であれば、ある一点での実験値との差分を直線近似しても略同等である。
【0068】
LPE成長を30〔μm〕行った場合、成長終了温度は477.4{475.4}〔℃〕、結晶の厚さ方向に於ける組成分布δx =0.0004〔μm−1〕であって、成長終了組成はx=0.189{0.217}となる。
【0069】
図5はLPE成長終了時に於ける結晶の厚さ方向の組成分布を表す計算例を線図にしたものであり、横軸にはHgCdTe層の厚さ(相対位置)〔μm〕を、また、縦軸には組成xをそれぞれ採ってあり、ここに表してある特性線は実験と大変良く一致することが確認されている。
【0070】
LPE成長が終了した場合、図1(B)に見られるように、メルト3と基板2とを分離し、図2に見られるように、昇温保持工程を実施し、その昇温保持工程に於いて、温度を490〔℃〕とし、2.5〔時間〕実施した場合、実際の表面平衡組成はx値は約0.24となる。
【0071】
この状態で急冷すると、図5に見られる組成分布となるが、炉内で徐冷した場合には、図5に見られる実験値のように表面の組成は小さくなるから、急冷すればするほど、表面組成は高x値となる。
【0072】
また、昇温保持工程及び冷却過程で、メルト部温度が基板部温度よりも高くなると、メルトが基板表面に付着することが判ったので、昇温保持工程及び冷却過程に於いては、メルト部温度を基板部温度以下にすることが必須である。
【0073】
本発明で、複数層の結晶成長を行うには、上記昇温保持工程を終了した後、再度、LPE成長から繰り返すことで実現される。
【0074】
前記工程で、組成制御性を向上させる為には、LPE成長及び昇温保持工程をメルトの液相化温度TL 以下で実施することにすれば、相図のみから組成を決定することができ、計算する場合、メルト・バック、過冷却を微小厚さで順次計算することでメルト組成が決まり、また、保持温度も決まる。その後は、昇温保持時間を相互拡散の計算から算出して図2を作成すれば良い。
【0075】
尚、Hg1−x Cdx Te結晶では、Teリッチ・メルトの液相化温度TL が420〔℃〕<TL <550〔℃〕であり、昇温時の保持温度Th が420〔℃〕<Th <570〔℃〕であり、保持時間th が0<th <50〔時間〕であれば略実用的な温度範囲をカバーできる。
【0076】
この場合、温度が高いと拡散速度が大きくなり、結晶の厚さ方向に於ける組成分布の制御が不能になり、また、温度が低いと拡散速度が小さくなり、矢張り、組成制御はできず、更にまた、Teリッチ・メルトの液相化温度TL の下限が410〔℃〕であることから、成長自体が不可能になる。
【0077】
結晶表面の組成xをx+δx(δx>0)と高くして、表面漏れ電流を小さくすることは、光起電力型素子用結晶を製造する場合に重要であり、組成増加量δx が0<δx <0.05であることが望ましい。若し、δx が大き過ぎると、格子不整転位が発生したり、格子不整に依って歪みが発生して、デバイス特性が悪くなる。
【0078】
前記したように、本発明では、結晶の厚さ方向の組成分布をLPE成長と昇温保持工程を組み合わせることに依って制御するものであり、換言すると、一つのメルト組成で、結晶の厚さ方向の組成分布を制御することができ、特に、結晶表面のx値が高い組成のエピタキシャル成長結晶層を形成することができる。
【0079】
前記したところでは、成長させる化合物半導体結晶としてHg1−x Cdx Teを例示したが、HgZnTe或いはHgCdZnTeなどについても同様に扱うことができ、また、成長用基板としてCdTe、CdZnTe、Cd(Zn)Te/Si、Cd(Zn)Te/サファイアなどを用いても、メルトがTeリッチ・メルトであれば、前記と同様、メルト組成、及び、適用温度の時間変化から結晶の厚さ方向の組成分布(組成勾配)を設計し且つ実現することができる。
【0080】
以上、記述したところから、本発明に依る液相エピタキシャル成長方法及びそれを実施する装置に於いては、
(1)
結晶成長用基板(例えば成長用基板2)並びに成長用溶液(例えば成長用溶液であるメルト3)を閉管(例えば石英アンプルである閉管1)内にセットしてLPE成長を行う工程(液相エピタキシャル成長工程)と、次いで、該基板と該溶液とを分離した後それぞれの温度を所定温度に昇温し且つ所定時間保持して成長結晶における厚さ方向の組成分布を制御する工程(昇温保持工程)とを含み、前記所定温度は、所望の表面組成から定まる該溶液(液相)と空間の雰囲気ガス(気相)と結晶表面(固相)の三相平衡状態の温度であり、前記所定時間は結晶中の相互拡散の計算から求めることを特徴とするか、又は、
【0081】
(2)
前記(1)に於いて、基板と溶液とを分離した後それぞれの温度を所定温度に昇温し且つ所定時間保持する工程で該溶液の温度が該基板部の温度以下であることを特徴とするか、又は、
【0082】
(3)
前記(1)或いは(2)に於いて、基板と溶液とを分離した後それぞれの温度を所定温度に昇温し且つ所定時間保持する工程で昇温温度を変えて再び所定時間保持する工程を少なくとも一回実施することを特徴とするか、又は、
【0083】
(4)
前記(1)乃至(3)の何れか1に於いて、LPE成長開始温度を溶液の液相化温度よりも低い温度にして成長開始前に溶液から結晶核を溶液部に析出させてからLPE成長を行ない、該LPE成長終了後、溶液部に析出した結晶核を溶液中に再溶融し、且つ、LPE成長後の保持温度を溶液の液相化温度以下の温度にして保持工程を実施することを特徴とするか、又は、
【0084】
(5)
前記(1)乃至(4)の何れか1に於いて、LPE成長後に於ける所定温度の保持工程を終了後、溶液の液相化温度以下の任意の成長開始温度を適用したLPE成長と再昇温と該温度の保持工程を少なくとも一回前記の順に実施して組成を異にする複数の結晶層を積層形成することを特徴とするか、又は、
【0085】
(6)
前記(1)乃至(5)の何れか1に於いて、LPE成長後に於ける所定温度の保持工程を終了後、閉管全体を溶液部温度が基板部温度以下となるように急冷することを特徴とするか、又は、
【0086】
(7)
前記(1)乃至(6)の何れか1に於いて、LPE成長後の化合物半導体結晶の表面組成及びLPE成長後の昇温保持工程での三層平衡組成に於いて、LPE成長後の昇温保持温度での平衡分圧の差が50〔%〕以下となる範囲で昇温保持温度を設定することを特徴とするか、又は、
【0087】
(8)
前記(1)乃至(7)の何れか1に於いて、Hg1−x Cdx Teの相互拡散係数D(x,T)として、
【数3】
で表される式で求められる値を用いてLPE成長結晶に於ける厚さ方向の組成分布を決定することを特徴とするか、又は、
【0088】
(9)
閉管内にセットした結晶成長用基板並びに成長用溶液のLPE成長を終了させ、該基板と該溶液とを分離後、該基板と該溶液との温度を所定温度に昇温し且つ所定時間保持するよう制御する制御部を有する液相エピタキシャル成長装置であって、前記所定温度は、所望の表面組成から定まる該溶液(液相)と空間の雰囲気ガス(気相)と結晶表面(固相)の三相平衡状態の温度であり、前記所定時間は結晶中の相互拡散の計算から求めることを特徴とするか、又は、
【0089】
(10)
前記(9)に於いて、基板部と溶液部との温度を所定温度に独立に制御する構造が炉に於けるヒータの他に該基板部或いは該溶液部或いはその両方に冷却用流体を独立に流す構造と該基板部位置と該溶液部位置とにそれぞれ設けられた温度モニタを含んでなることを特徴とするか、又は、
【0090】
(11)
前記(9)或いは(10)に於いて、溶液に析出した結晶核を溶液中に再溶融する際の時間を短縮する為に溶液の攪拌機構を備えてなることを特徴とするか、又は、
【0091】
(12)
前記(9)乃至(11)の何れか1に於いて、溶液部温度が基板部温度以下となるように閉管全体を急冷する構造を備えてなることを特徴とするか、又は、
【0092】
(13)
前記(9)乃至(12)の何れか1に於いて、溶液部及び基板部のそれぞれに冷却用流体を独立に流量制御して流す構造を備えてなることを特徴とする。
【0093】
前記手段を採ることに依り、LPE成長層の厚さ方向の組成を容易に制御すること、即ち、組成勾配をなくしたり、また、組成勾配を大きくすることも可能であり、更にまた、多層成長に於いても組成を均一にすることが可能であり、従って、成長結晶層表面の組成を制御して、漏れ電流が少ない良質のデバイスを製造するのに有効である。
【0094】
【発明の実施の形態】
第一実施例
Hg1−x Cdx Teを成長させる場合を説明する。
【0095】
○ 成長プロセス
予め所定の組成に秤量したTeリッチ・メルトを石英アンプルに真空封止し、約600〔℃〕の温度で50〔時間〕の熱処理を行って均一な合金化を行ない、冷却して固めて取り出す。
【0096】
次に、成長アンプルにメルト及びBr−メタノール液でエッチング済の基板をセットして真空封止し、成長炉に挿入し、約30〔分〕間で500〔℃〕の温度に昇温し、その温度を1〔時間〕程度維持してメルトを溶融する。尚、この際、基板部の温度も500〔℃〕にしておくものとする。
【0097】
次に、成長炉内全体の温度を0.1〔℃/分〕の降温速度で低下させ、480〔℃〕になった時点で基板をメルトに接触させ、LPE成長を行う。勿論、この際、メルト部の温度、及び、基板部の温度は同一温度である。
【0098】
ところで、本発明では、予め、成長条件、即ち、(LPE成長+昇温保持)の条件を計算に依って定めてあり、LPE成長を温度480〔℃〕で開始した場合には、厚さ30〔μm〕の成長を行った際の実成長終了温度は475.4〔℃〕となり、結晶の厚さ方向に於ける組成分布δx =0.0004〔μm−1〕で実成長終了組成はx=0.217となる。
【0099】
次に、LPE成長終了後、メルトと基板を分離し、図2に見られるように、昇温保持工程を実施し、490〔℃〕の温度で2.5〔時間〕の保持を行った場合に於ける実際の表面平衡組成x=約0.24となる。
【0100】
図5に見られるデータでは、LPE成長終了時、及び、昇温保持工程終了時に於ける結晶の厚さ方向の組成分布の計算値と実験値とはずれているが、実験値は基板を炉内で徐冷した場合であって、図から看取できるように、表面の組成は小さくなっている。
【0101】
然しながら、基板を急冷すれば計算例のような組成分布となることが確認されていて、急冷するほど結晶層の表面組成は高x値となるので、急冷の速度は、目的に合わせて選定すると良い。
【0102】
昇温保持工程及び冷却過程で、メルト部温度が基板部温度よりも高くなった場合、メルトが基板表面に気相で付着することが知得されたので、昇温保持工程及び冷却過程では、メルト部温度を基板部温度以下にすることが絶対的に必要である。この温度差を生成させるのに、基板部側に補助ヒータを設けて+1〔℃〕としたが、例えば、液体N2 の気化ガスを流す構造にして、その流量を制御して温度差を生起させるようにしても良い。
【0103】
第二実施例
複数層の成長について説明する。
前記説明した成長プロセスに於いて、保持工程が終了した後、再度、LPE成長から繰り返すことで実現することができる。
【0104】
複数層を成長する場合でも、組成制御性を向上するには、LPE成長、及び、昇温保持工程をメルトの液相化温度TL 以下で行うことを条件にすれば、組成は相図のみから決定することができ、計算方法は、メルト・バック、過冷却を微小厚さについて順次計算することでメルト組成が決まり、且つ、保持温度も決まることになり、後は、保持時間を相互拡散の計算から算出して図2を作成すれば良い。
【0105】
複数層を成長する場合、例えば、前記メルト、即ち、前記「○ 準備」に於いて説明した成長用メルトを用いるとし、成長開始温度を470〔℃〕とすると、初期組成x=0.197となる。この理由は、溶解中のメルトの組成はHg0.15612 Cd0.00727 Te0.83661 となって、x=0.23からx=0.197まで組成が変化した固相がメルト部に65〔μm〕析出して残ることに依る。
【0106】
さて、上記のようにしてHgCdTe層を30〔μm〕成長すると、成長終了温度は465.4〔℃〕、表面組成x=0.190となる。
【0107】
LPE成長終了後、メルトと基板を分離し、昇温保持工程を実施して、473〔℃〕の温度で2.0〔時間〕の保持を行った場合に於ける表面組成x=0.211となり、表面組成を大きくすることができる。
【0108】
更に、0.1〔℃/分〕の降温速度で温度を低下させ、472〔℃〕で第二層の成長を開始すると、その初期組成はx=0.208となり、そのまま第二層の成長を継続して厚さが10〔μm〕になったときの表面組成はx=0.204であり、成長終了温度は470.5〔℃〕である。
【0109】
この後、メルトと基板の分離を行ってから、第二層の昇温保持工程を実施し、473〔℃〕の温度で2.0〔時間〕の保持を行った場合に表面組成x=0.211となり、表面組成は大きくなる。
【0110】
前記のようにして形成した複数層に於ける第一層全体の組成はx=0.195であり、また、第二層全体の組成はx=0.207となる。
【0111】
Hg1−x Cdx Te結晶では、Teリッチ・メルトの液相化温度TL が420〔℃〕<TL <550〔℃〕であり、昇温時の保持温度Th を420〔℃〕<Th <570〔℃〕とし、保持時間th を0<th <50〔時間〕とすれば、実用的な成長に適する条件を略カバーすることができる。
【0012】
ここで、保持温度Th が高いと気相拡散速度が大きくなり、結晶の厚さ方向に於ける組成分布の制御が不能になり、また、保持温度Th が低いと気相拡散が遅くなり、同じく組成の制御ができず、また、Teリッチ・メルトに於ける液相化温度の下限が410〔℃〕であることから、成長自体が不可能になる。
【0113】
また、結晶表面の組成xをx+δx (δx >0)と高くして、表面漏れ電流を小さくすることは、複数層の成長であっても、光起電力型素子用結晶の製造で重要であり、組成増加量δx は、0<δx <0.05、であることが望ましい。
【0114】
この場合、δx が大き過ぎると、格子不整転位が発生したり、格子不整に依って歪みが発生し、デバイス特性が悪くなることは、単層の場合と同様である。
【0115】
前記したように、第二実施例に於いても、結晶の厚さ方向の組成分布をLPE成長と昇温保持工程を組み合わせることに依って制御することができ、換言すると、一つのメルト組成で、結晶の厚さ方向に於ける組成分布制御が可能であり、特に、結晶表面のx値が高い組成のエピタキシャル成長結晶層を形成することができる。
【0116】
また、成長させる化合物半導体結晶としてHg1−x Cdx Teを例示したが、HgZnTe或いはHgCdZnTeなどについても同様に扱うことが可能であり、更にまた、成長用基板としてCdTe、CdZnTe、Cd(Zn)Te/Si、Cd(Zn)Te/サファイアなどを用いても、メルトがTeリッチ・メルトであれば、前記と同様、メルト組成、及び、適用温度の時間変化から結晶の厚さ方向の組成分布(組成勾配)を設計し且つ実現できることも単層の場合と同様である。
【0117】
【発明の効果】
本発明の液相エピタキシャル成長方法及びそれを実施する装置に於いては、基板並びに溶液を閉管内にセットしてLPE成長を行い、基板と溶液とを分離した後それぞれの温度を昇温し且つ該温度を保持して溶液(液相)と空間の雰囲気ガス(気相)と結晶表面(固相)の三相平衡及び結晶中の相互拡散を利用して成長結晶に於ける厚さ方向の組成分布を制御する。
【0118】
前記構成を採ることに依り、LPE成長層の厚さ方向の組成を容易に制御すること、即ち、組成勾配をなくしたり、また、組成勾配を大きくすることも可能であり、更にまた、多層成長に於いても組成を均一にすることが可能であり、従って、成長結晶層表面の組成を制御して、漏れ電流が少ない良質のデバイスを製造するのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を説明する為の成長装置の状態を表す要部説明図である。
【図2】本発明を実施する場合の成長温度と時間の関係を表す線図である。
【図3】Teリッチ・コーナーの相図である。
【図4】P−T曲線を表す線図である。
【図5】LPE成長終了時に於ける結晶の厚さ方向の組成分布を表す計算例を線図にしたものである。
【符号の説明】
1 石英アンプルである閉管
2 半導体結晶からなる成長用基板
3 成長用溶液であるメルト
4 独立に温度制御可能な温度調節部
5 エピタキシャル成長結晶層
Claims (13)
- 結晶成長用基板並びに成長用溶液を閉管内にセットしてLPE成長を行う工程と、
次いで、該基板と該溶液とを分離した後それぞれの温度を所定温度に昇温し且つ所定時間保持して成長結晶における厚さ方向の組成分布を制御する工程とを含み、
前記所定温度は、所望の表面組成から定まる該溶液(液相)と空間の雰囲気ガス(気相)と結晶表面(固相)の三相平衡状態の温度であり、前記所定時間は結晶中の相互拡散の計算から求めること
を特徴とする液相エピタキシャル成長方法。 - 基板と溶液とを分離した後それぞれの温度を所定温度に昇温し且つ所定時間保持する工程で該溶液の温度が該基板部の温度以下であること
を特徴とする請求項1記載の液相エピタキシャル成長方法。 - 基板と溶液とを分離した後それぞれの温度を所定温度に昇温し且つ所定時間保持する工程で昇温温度を変えて再び所定時間保持する工程を少なくとも一回実施すること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の液相エピタキシャル成長方法。 - LPE成長開始温度を溶液の液相化温度よりも低い温度にして成長開始前に溶液から結晶核を溶液部に析出させてからLPE成長を行ない、該LPE成長終了後、溶液部に析出した結晶核を溶液中に再溶融し、且つ、LPE成長後の保持温度を溶液の液相化温度以下の温度にして保持工程を実施すること
を特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1記載の液相エピタキシャル成長方法。 - LPE成長後に於ける所定温度の保持工程を終了後、溶液の液相化温度以下の任意の成長開始温度を適用したLPE成長と再昇温と該温度の保持工程を少なくとも一回前記の順に実施して組成を異にする複数の結晶層を積層形成すること
を特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1記載の液相エピタキシャル成長方法。 - LPE成長後に於ける所定温度の保持工程を終了後、閉管全体を溶液部温度が基板部温度以下となるように急冷すること
を特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1記載の液相エピタキシャル成長方法。 - LPE成長後の化合物半導体結晶の表面組成及びLPE成長後の昇温保持工程での三層平衡組成に於いて、LPE成長後の昇温保持温度での平衡分圧の差が50〔%〕以下となる範囲で昇温保持温度を設定すること
を特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1記載の液相エピタキシャル成長方法。 - 閉管内にセットした結晶成長用基板並びに成長用溶液のLPE成長を終了させ、該基板と該溶液とを分離後、該基板と該溶液との温度を所定温度に昇温し且つ所定時間保持するよう制御する制御部を有する液相エピタキシャル成長装置であって、
前記所定温度は、所望の表面組成から定まる該溶液(液相)と空間の雰囲気ガス(気相)と結晶表面(固相)の三相平衡状態の温度であり、前記所定時間は結晶中の相互拡散の計算から求めること
を特徴とする液相エピタキシャル成長装置。 - 基板部と溶液部との温度を所定温度に独立に制御する構造が炉に於けるヒータの他に該基板部或いは該溶液部或いはその両方に冷却用流体を独立に流す構造と該基板部位置と該溶液部位置とにそれぞれ設けられた温度モニタを含んでなること
を特徴とする請求項9記載の液相エピタキシャル成長装置。 - 溶液に析出した結晶核を溶液中に再溶融する際の時間を短縮する為に溶液の攪拌機構を備えてなること
を特徴とする請求項9或いは請求項10記載の液相エピタキシャル成長装置。 - 溶液部温度が基板部温度以下となるように閉管全体を急冷する構造を備えてなること
を特徴とする請求項9乃至請求項11の何れか1記載の液相エピタキシャル成長装置。 - 溶液部及び基板部のそれぞれに冷却用流体を独立に流量制御して流す構造を備えてなること
を特徴とする請求項9乃至請求項12の何れか1記載の液相エピタキシャル成長装置。
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