JP4576571B2 - 固溶体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、長尺・均一組成の固溶体(混晶)を製造する方法に関するものである。特に、長尺・均一組成の固溶体単結晶を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、均一組成の固溶体(混晶)を育成する試みは数多くなされてきたが、まだ良い方法は見つかっていない。従来法のいくつかを、InAsとGaAsの混晶であるInx Ga1-x Asを例にとって説明する。一方向凝固法は、最も簡便な結晶成長の方法の1つとして従来から数多くの結晶育成に用いられてきている。この一方向凝固法を前記Inx Ga1-x As(x=0.3)に適用した場合の、成長結晶の軸方向InAs濃度を図1に示す。この軸方向に沿うInAs濃度は、結晶成長とともに漸次増加し、結晶のどの部分を取っても均一な場所がないことがわかる。これは、図2に示したInAs−GaAsの擬似2元系相図からも明らかなように、液相線と固相線が大きく乖離しており、成長する結晶組成がそれと平衡な融液組成と一致しないこと(偏析)と、融液内の対流が析出により固液界面の融液側に排出されたInAsを残余の融液と混ぜあわせてしまうために生じる現象である。
【0003】
前記融液内対流を抑制する方法として、従来、溶融域を狭くする部分溶融法が用いられてきた(例えば、石川浩、中嶋一雄:応用物理68(1999)294参照)。しかしながらこの方法では、溶融帯の幅に合わせてInAsの仕込み量を調整するために、InAsの仕込み量に限界があり、目的とするIn0.3Ga0.7As組成の結晶は5〜7mm長が長さの限界であるという欠点があった(図3参照)。図4に従来の部分溶融法の概略を示す。溶融ゾーンを形成するためのInAsと原料のGaAsおよび一方向凝固法により育成した単結晶とを仕込む。一方向凝固法により育成した単結晶は軸方向にInAsの濃度分布を有するが、InAsを0.3モル以上含むところまで成長させたものを使用する。この一方向凝固法育成単結晶の後端とInAsの接する領域の温度を目的の組織の固相線温度(例えばx=0.3のIn0.3Ga0.7Asを得ようとするならば1018℃)と一致するように加熱すると、InAsの融点は960℃であるので、InAsは溶融される。この状態で十分長時間保持するとGaAsがInAsに溶け込みIn0.83Ga0.17As近傍組成の融液帯が種結晶に接して形成されて平衡状態に達する。この状態から結晶成長用容器を0.1mm/h程度の速度で低温側へ移動させていくと、一方向凝固法育成単結晶と接した融液が冷やされて固化し、該単結晶の方位を引き継いだIn0.3Ga0.7As単結晶が成長してくる。しかしながら、前述したようにInAsの仕込み量が限られているために結晶の成長とともにInAsが枯渇し、5〜7mm結晶成長したところで成長は停止する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、長尺の均一組成単結晶取得を可能ならしめる新しい固溶体単結晶の製造方法を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明では固溶体を形成する複数成分を長手軸方向に予め制御した濃度分布となるようにして仕込んであるので結晶成長に伴って原料成分の1つが枯渇することがなく、また低い温度勾配の下で加熱するので原料全体が溶融されるのではなく融点温度の低い成分を多く含み低融点となった所のみが溶融されて狭い融液帯を形成するので、融液帯中の対流が抑制されて長尺の均一組成固溶体が得られる利点を有することを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示し、本発明をさらに詳しく説明する。
【0007】
それぞれ純度99.9999%のIn,Ga,Asを使用して、In0.4Ga0.6Asの組成となるように秤量した後、石英管に真空封入した。該石英管を電気炉内において約1200℃にまで加熱してIn0.4Ga0.6As組成の融液を作製した後、該石英管を電気炉より取り出し、水中に浸して急冷し、In0.4Ga0.6As組成の多結晶体を合成した。その後、該多結晶体を別な石英管に真空封入し直し、温度勾配炉中で高温部を約1200℃、低温部を約800℃に加熱して形成した約40℃/cmの温度勾配を利用して、約1mm/hの固化温度で一方向凝固させた。得られた結晶中のInAs濃度分布は、図1に似たものとなった。すなわち、InAsは結晶成長の初期段階では約0.08モルの比較的均一な濃度となったが、目的のIn0.4Ga0.6As組成よりも低濃度であり、In0.4Ga0.6As組成近傍ではInAs濃度は結晶成長軸方向に漸次増加し、均一組成領域はどこにも見当たらない。
【0008】
次に、前述のようにして作製した結晶試料をさらに別な結晶成長用容器内に真空封入し直し、最終段階の結晶成長を行った。図5はこの段階における結晶成長用容器の断面図である。
【0009】
結晶成長用容器1は、黒鉛製のルツボ2と、単結晶化を助長するヒートシンク3、およびこれらの外側にあって真空封入の役目をする石英容器4から成っている。黒鉛製のルツボ2は、先端がコニカル状に加工されており、コニカル部5の形成は1つの結晶核だけを生成させて、単結晶化するための手段である。予め一方向凝固させた結晶試料6は、InAs濃度が一方の端面7から他方の端面8に向かって減少しており、InAs濃度が高い方の端面7がコニカル部5の方向を向くようにルツボ2内に挿入されている。すなわち、前記工程で作製した結晶試料は、その前後を入れ替えてルツボ2内に挿入されており、図6に示す濃度分布となっている。
【0010】
図7は、本段階における結晶成長の概要を示すグラフであり、炉内温度分布を示す曲線9と結晶成長用容器内黒鉛製ルツボ2の配置関係を併せて示したものである。すなわち、電気炉は、縦型炉で下部が低温領域、上部が高温領域となるよう加熱され、温度勾配は、結晶成長用容器の長手軸方向に5〜40℃/cmになるよう、また結晶成長開始の段階では、コニカル部5がIn0.3Ga0.7Asの固相線温度である1018℃となるように、炉内温度分布9とルツボ2の位置が調節されている。この図面の温度分布では、コニカル部の温度勾配は約15℃/cmであるので、長さ10cmの結晶試料6を用いた場合はInAs濃度が0.8モル以上となる低融点の約1cmが溶融されるが、残りの部分はInAs濃度が低く、融点温度が高いために溶けない。すなわち、狭い幅の融液帯10が形成されることになる。融液帯の幅が狭いことに加え、この温度分布では低温の比重の高い融液が下部へ来ることになり、熱対流は抑制される。
【0011】
この加熱状態で一定時間保持すると、InAsとGaAsの相互拡散によりInAsは結晶後端のGaAs高温度部へ輸送されていくのでコニカル部のInAs濃度がだんだん低濃度となり、そのモル分率が0.83となったところで融液が固化し始め、In0.3Ga0.7As組成の結晶が成長してくる(図2の平衡状態図参照)。融液が形成されてから結晶成長が始まるまでの時間は、仕込んだ結晶試料のInAs濃度分布と炉内温度分布によって変化するが、図6に示す濃度分布の結晶試料を図7の温度分布下で溶融した場合では約3時間で結晶成長が始まった。
【0012】
図8は、本段階における結晶成長の進行の状態を示す概略図である。横軸は温度、縦軸は炉内の位置を示す。溶融開始から約3時間経つとルツボ先端に単結晶11が成長し始めるので、結晶成長用容器1を0.5mm/h程度の速度で降下させると溶融帯10が次第にルツボ後端まで進み、ついには全体にわたって単結晶11が成長するが、その様子をステップ1〜ステップ4に分けて示してある。ステップ1は溶融開始から約3時間経ってコニカル部5に単結晶11が成長し始めた状態を示す模式図、ステップ2は結晶成長がルツボ中程まで進んだ状態を示す模式図、ステップ3は結晶成長が終盤に差しかかった状態を示す模式図、ステップ4は結晶成長が完了し、試料全体が単結晶11となった状態を示す模式図である。図2のInAs−GaAs擬似2元系平衡状態図からも明らかなように、In0.83Ga0.17As組成の融液からIn0.3Ga0.7As組成の結晶が晶出してくるので、結晶化に際して、InAsが析出される。この析出されたInAsが拡散によって結晶試料後端へ輸送されるため、融液帯は順次結晶試料の後端方向へ移動することになり、結晶成長が進む。したがって、均一組成を実現するためには、InAsの試料後端への拡散速度と結晶成長用容器の低温側への移動速度のバランスを取ることが重要となる。
【0013】
上述の方法により得られた単結晶の軸方向InAs濃度分布を図9に示す。結晶成長初期からInAsモル分率は0.3近傍であり、しかもその一定組成が成長結晶の8割以上の長さにわたって維持されていることがわかる。
【0014】
以上、前記実施の形態においては、III −V族化合物半導体のInAsとGaAsの固溶体(混晶)を例に取って説明したが、本発明の方法は、上記物質に限らずSiとGeのような元素同士の固溶体単結晶や、II−VI族化合物半導体のCdTe−HgTeの固溶体単結晶、あるいはIV−VI族化合物半導体のPbTe−SnTe固溶体単結晶の製造に適用できることは自明である。
【0015】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の方法によれば、固溶体を形成する複数成分を長手軸方向に予め制御した濃度分布となるようにして仕込んであるので、偏析による結晶成長中の組成変動を相殺して均一組成の結晶が成長するばかりでなく、結晶成長に伴って原料成分の1つが枯渇することがないので長尺の目的組成の単結晶が製造できる利点を有する。また低い温度勾配の下で加熱するので原料全体が溶融されるのではなく、融点温度の低い成分を多く含む所のみが溶融されて狭い融液帯を形成するので、融液帯中の対流が抑制されて組成均一性の向上が図られた高品質固液体単結晶が得られるという利点がある。
【0016】
本発明の方法は、特定の材料に限定されるものではなく、広く一般の固溶体の単結晶製造に応用できるが、特にInAs−GaAsやPbTe−SnTeなどの化合物半導体の固溶体は、レーザダイオードの作製用基板として高品質化や組成均一化が要求されるので、本発明の有望な応用分野である。
【図面の簡単な説明】
【図1】In0.3Ga0.7Asの均一組成多結晶原料を出発原料として一方向凝固させた場合のInAsの成長軸方向濃度分布を示すグラフである。
【図2】InAs−GaAs擬似二元系状態図である。
【図3】従来の方法で製造されたInx Ga1-x As結晶の成長軸方向のInAs濃度分布を示すグラフである。
【図4】従来の部分溶融法の概略を示す模式図である。
【図5】本発明の固溶体単結晶の製造方法の実施の形態において用いた結晶成長用容器の断面構成図である。
【図6】後工程において結晶成長用容器内に仕込まれた結晶試料の軸方向InAs濃度分布を示すグラフである。
【図7】本発明の第1の実施の形態の単結晶製造方法を説明するための図であり、結晶成長中の試料への印加温度の分布を示すグラフである。
【図8】本発明の第1の実施の形態の単結晶製造方法における結晶成長の進行の状態を示す線画である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における単結晶の成長軸方向に沿うInAs濃度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1 結晶成長用容器
2 ルツボ
3 ヒートシンク
4 石英容器
5 コニカル部
6 固溶体試料
7 固溶体試料のInAs濃度が高い端面
8 固溶体試料のInAs濃度が低い端面
9 電気炉内温度分布を示す曲線
10 融液帯
11 成長単結晶

Claims (4)

  1. 偏析係数の異なる2以上の成分からなる固溶体を用い、偏析係数が1より小さい成分の濃度が高い先端側から該偏析係数が1より小さい成分の濃度が低い後端側へ向けて固化を進行させる固溶体の製造方法において、
    前記偏析係数が1より小さい成分の比率が前記先端から後端に向かって減少するように調整した原料を用意し、
    前記先端側において前記原料の全体が融解しない程度の低い温度勾配の下で前記原料を加熱して先端部の一部のみを溶融させて所定の幅の溶融帯を形成し
    原料の加熱位置を前記原料の先端側と後端側との間で相対的に移動させ、
    前記溶融帯の先端側で固化が生じる際に排出される前記偏析係数が1より小さい成分を前記溶融帯中において前記後端へ拡散させつつ前記溶融帯を順次後端移動させる段階とを有することを特徴とする固溶体の製造方法。
  2. 前記固溶体の組成が、先端部から後端部にかけて成長結晶の8割以上にわたって均一な領域を含むことを特徴とする、請求項1に記載の固溶体の製造方法。
  3. 前記固溶体が多結晶又は単結晶であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の固溶体の製造方法。
  4. 前記温度勾配が40℃/cm以下であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の固溶体の製造方法。
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