JP3539594B2 - 有機ジスルフィド化合物を含有する正極を有する二次電池の充放電方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ジスルフィド化合物を金属銅あるいは金属銀と一体化した複合電極を正極とする二次電池の充放電方法に関する。特に、有機ジスルフィド化合物を金属銅あるいは金属銀と複合一体化した複合電極を正極とし、金属リチウムを負極とするリチウム二次電池の充放電方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1971年に導電性のポリアセチレンが発見されて以来、導電性高分子を電極材料に用いると、軽量で高エネルギー密度の電池や、大面積のエレクトロクロミック素子、微小電極を用いた生物化学センサー等の電気化学素子が期待できることから、導電性高分子電極が盛んに検討されている。ポリアセチレンは不安定で電極としては実用性に乏しいことから、他のπ電子共役系導電性高分子が検討され、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ポリチオフェンといった比較的安定な高分子が開発され、これらを正極に用いたリチウム二次電池が開発されるに及んでいる。これらの電池のエネルギー密度は40〜80Wh/kgと言われている。
【0003】
最近では、さらに高エネルギー密度が期待できる有機材料として、米国特許第4,833,048号に有機ジスルフィド系化合物が提案されている。この化合物は、最も簡単には M+−ーS−R−Sー−M+ と表される(Rは脂肪族あるいは芳香族の有機基、Sは硫黄、M+はプロトンあるいは金属カチオン)。この化合物は電解酸化により S−S 結合を介してお互いに結合し、
M+−ーS−R−S−S−R−S−S−R−Sー−M+
のような形でポリマー化する。こうして生成したポリマーは、電解還元により元のモノマーに戻る。カチオン(M+)を供給、捕捉する金属Mと有機ジスルフィド系化合物を組み合わせた金属ーイオウ二次電池が前述の米国特許に提案されている。150Wh/Kg以上と、通常の二次電池に匹敵あるいはそれ以上のエネルギー密度が期待できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような有機ジスルフィド化合物は、酸化還元(充放電)を繰り返すと、電極容量が徐々に減少してくる問題がある。有機ジスルフィド化合物を酸化(充電)すると、電気絶縁性でかつイオン伝導性に乏しいポリジスルフィド化合物が生成する。ポリジスルフィド化合物は、電解質に対する溶解性が乏しい。一方、このポリジスルフィド化合物が還元(放電)によりモノマー化した際に生成する有機ジスルフィドモノマーは、電解質に対する溶解性が高い。従って、酸化還元を繰り返すと、モノマー化したジスルフィドが一部電解質に溶解し、溶解したモノマーは、電極中にもともと位置していた場所と異なる場所でポリマー化する。そして、カーボン等の導電剤から離れてポリマー化して析出したポリジスルフィド化合物は、電極内の電子・イオン伝導のネットワークから孤立し、電極反応に関与しなくなる。酸化還元を繰り返すと、孤立するポリジスルフィド化合物が増加して、電池の容量が徐々に低下する。また、溶解性の高い有機ジスルフィドモノマーは、動きやすく、正極からセパレータあるいは電解質内、さらには負極側に散逸する。このため、有機ジスルフィド化合物を含む電極を正極に用いた電池では、充放電効率が下がったり、充放電サイクル寿命が短いという欠点を有していた。
【0005】
この欠点を補うために、本発明者らは、有機ジスルフィド化合物と金属銅あるいは金属銀とを一体化した複合電極を提案した。一体化することで、有機ジスルフィド化合物の酸化還元で生じた有機ジスルフィドの単量体あるいは多量体アニオンと、金属銅あるいは金属銀の酸化還元で生じた銅カチオンあるいは銀カチオンとが錯体を形成し、有機ジスルフィド化合物が複合電極から散逸するのを有効に防止し、優れた充放電サイクル特性が得られる。
本発明は、このような有機ジスルフィド化合物と金属銅あるいは金属銀とを一体化した複合電極を正極に用いた二次電池について、高い電池容量が安定して得られる充放電方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、正極中の有機ジスルフィド化合物の電気化学当量と重量から算出される容量を越えて二次電池を使用し、高い電池容量が安定して得られる充放電方法を提供するものである。すなわち、正極中の有機ジスルフィド化合物の電気化学当量(Qeq)と重量(W)より算出される電気容量(Q)の110%以上220%以下の範囲で電池を充放電する。
本発明の充放電方法が適用される二次電池は、有機ジスルフィド化合物とポリアニリンを含有する組成物を金属銅あるいは銀を含む支持体に担持一体化した有機ジスルフィド化合物を含有する複合電極、有機ジスルフィド化合物とポリアニリンと金属銅あるいは金属銀を含有する組成物を導電性支持体に担持一体化した有機ジスルフィド化合物を含有する複合電極、有機ジスルフィド化合物を金属銅あるいは銀を含む支持体に担持一体化した有機ジスルフィド化合物を含有する複合電極、あるいは、有機ジスルフィド化合物と金属銅あるいは金属銀を含有する組成物を導電性支持体に担持一体化した有機ジスルフィド化合物を含有する複合電極を正極とする二次電池である。
【0007】
ここで、電気化学当量(Qeq)は、Qeq=Mw/n(Mw:有機ジスルフィド化合物の分子量、n:有機ジスルフィド化合物の酸化還元反応電子数)で与えられる。電気容量(Q)は、Q(Ah)=W/Qeq×96500/3600の関係式で算出される。
【0008】
複合電極の構成成分の一つである銅あるいは銀は、充放電反応により有機ジスルフィド化合物と錯体を形成し、有機ジスルフィド化合物あるいは有機ジスルフィド化合物とポリアニリンの複合体が電解質に溶解し、正極から散逸するのを防止する作用がある。このため、優れた充放電サイクル寿命を得ることができる。この作用について本発明者がさらに検討したところ、錯体形成によるこのような作用は、正極中の有機ジスルフィド化合物量より算出される電気容量を越えて、電気容量の110%以上、220%以下で電池を充放電すると、さらに有効に発揮できることを見いだした。
すなわち、複合電極を酸化(充電)すると、有機ジスルフィド化合物は重合しジスルフィドの多量体となり、この重合反応と並列して金属銅あるいは金属銀の銅カチオンあるいは銀カチオンへの酸化が進行する。そして、従来の110%未満の電気量の充放電では、有機ジスルフィド化合物の酸化が優先的に進行するため、銅カチオンあるいは銀カチオンの生成は十分でなく、有機ジスルフィド化合物の単量体アニオンあるいは多量体アニオンとの錯体形成が不十分となり、複合電極の効果が発揮され難いことが判明した。また、220%を越える電気量の充放電では、有機ジスルフィド化合物との錯体形成にあずからない過剰の銅カチオンあるいは銀カチオンが酸化(充電)により生成し、還元(放電)によって過剰の銅カチオンあるいは銀カチオンは元の金属銅あるいは金属銀に可逆的に戻らない。そして、充放電を繰り返すと、徐々に金属銅あるいは金属銀が減少し、有機ジスルフィド化合物との電気的接続が不良となり、充放電電圧が不安定になる。さらに、充放電を続けると、電池が作用しなくなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる有機ジスルフィド化合物としては、一般式(R(S)y)nで表される化合物を用いることができる。Rは脂肪族基または芳香族基、Sは硫黄、yは1以上の整数、nは2以上の整数である。HSCH2CH2SHで表されるジチオグリコール、C2N2S(SH)2で表される2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、C3H3N3S3で表されるs−トリアジンー2,4,6ートリチオール、C6H6N4S3で表される7ーメチルー2,6,8ートリメルカプトプリン、あるいはC4H6N4S2で表される4,5ージアミノー2,6ージメルカプトピリミジン等が用いられる。何れも市販品をそのまま用いることができる。また、これらの有機ジスルフィド化合物を、沃素、フェリシアン化カリウム、過酸化水素等の酸化剤を用いて化学重合法により、あるいは電解酸化法により重合した有機ジスルフィド化合物のダイマー、テトラマーを含む重合物を用いることができる。
【0010】
本発明に用いるポリアニリンとしては、アニリンあるいはその誘導体を化学重合法あるいは電解重合法により重合して得られるものが用いられる。特に、脱ドープ状態の還元性ポリアニリンは有機ジスルフィドモノマーを有効に捕捉するので好ましい。ポリアニリンの還元度(RDI)は、ポリアニリンをN−メチルー2ーピロリドンに微量溶解した溶液の340nm付近の短波長側に現れるパラ置換ベンゼン構造に起因する吸収ピークの強度(I340)と、640nm付近の長波長側に現れるキノンジイミン構造に起因する吸収ピークの強度(I640)との比により、RDI=I640/I340で表される。RDIが0.5以下のポリアニリンが好適に用いられる。ポリアニリンの脱ドープの程度は、伝導度により表される。伝導度が、10ー5S/cm以下のポリアニリンが好適に用いられる。
【0011】
本発明に用いるN−アルキルー2ーピロリドンとしては、市販の試薬をそのまま、あるいはゼオライト吸着剤により水分を20ppm以下に低減したものを用いることができる。ピロリドン、N−メチルー2ーピロリドン、N−エチルー2ーピロリドン、Nーブチルー2ーピロリドン等を用いることができる。
【0012】
本発明に用いる支持体の金属銅あるいは銀箔、有機ジスルフィド化合物を含む組成物中に添加される金属銅あるいは金属銀は、純銅あるいは純銀の他、銅または銀以外の金、インジウム、錫、鉛等の金属を含有する銅合金または銀合金の何れを用いてもよい。支持体の場合は、厚さは0.1μmから100μmの箔が好ましい。粉末状あるいは繊維状の金属銅、金属銀あるいは銅合金、銀合金の場合は、粒径、繊維径、繊維長が100オングストロームから10μmのものが好ましい。また、支持体は、銅箔あるいは銀箔をチタン、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属箔と積層したクラッド材や、銅メッキあるいは銀メッキしたチタン、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属箔を用いてもよい。これらの支持体は、平坦あるいは凹凸形状の表面、規則的あるいは不規則な複数の貫通孔を有するものも用いることができる。粉末の場合は、アクリル樹脂等の合成樹脂の粒子の表面を銅あるいは銀、銅合金あるいは銀合金でコーティングした材料を用いてもよい。
【0013】
有機ジスルフィド化合物とポリアニリンの割合は、有機ジスルフィド化合物1重量部に対し、ポリアニリン0.01〜10重量部が好ましい。金属銅あるいは金属銀の割合は、有機ジスルフィド化合物とポリアニリンとの合計量1重量部に対し0.01〜10重量部が好ましい。
本発明で用いる導電性支持体には、カーボンブラックとフッ素樹脂からなる多孔性のカーボンフィルム、チタン、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属箔、ポリアニリンやポリピロール等の導電性高分子膜フィルム、あるいは導電性高分子膜フィルムを塗着あるいは被覆した金属箔やカーボンフィルムを用いることができる。
有機ジスルフィド化合物が還元して塩を形成する際の金属カチオンM+には、前述の米国特許に述べられているアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンイオンに加えて、銅カチオン、銀カチオンを用いることができる。
【0014】
本発明の複合電極には、導電性をさらに高める目的で導電剤を添加してもよい。このような導電剤には、黒鉛粉末、黒鉛繊維、アセチレンブラック粉末等の炭素粉末あるいは繊維、ポリアニリン以外のポリピロールやポリチオフェン等の導電性高分子がある。特に、本発明の製造法で用いるN−アルキルー2ーピロリドンに可溶の分子式(1)で示すポリピロールは、複合電極の製膜性を高め、かつ良好な導電性が得られるので好ましい。
【0015】
【化1】
【0016】
(式中R=C4H9、C2H5で、C4H9:C2H5=1:2であり、n=200〜1000である。)
本発明の複合電極には、金属カチオンM+を含有する電解質を添加してもよい。このような電解質としては、有機ジスルフィドモノマーの拡散移動がしにくい固体状あるいは半固体状の高分子電解質が好ましい。ポリエチレンオキサイドにLiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2等のリチウム塩を溶解したポリマー固体電解質、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の非水溶媒中にLiClO4、LiCF3SO3、LiBF4、LiPF6、LiN(CF3SO2)2等のリチウム塩を溶解した電解液をポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリル酸のような高分子でゲル化した半固体状の高分子電解質が有効に用いられる。Nーアルキルー2ーピロリドンに前記リチウム塩を1M程度溶解した液体電解質を添加してもよい。
さらに、本発明の複合電極には、製膜性を高めかつ高い膜強度を得る目的で、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピリジン等の有機高分子バインダーを添加してもよい。
【0017】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
[実施例1]
2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール(以下DMcTで表す。)粉末2.0gをN−メチルー2ーピロリドン(以下NMPで表す。)7.0gに溶解したのち、ポリアニリン(日東電工製、商品名アニリード)をアルカリ溶液中で脱ドープしヒドラジンで還元して得た伝導度が10ー8S/cm、RDI値が0.26の脱ドープ還元ポリアニリン粉末1.0gをさらに溶解して青緑色の粘ちょうなDMcT−PAnーNMP溶液を得た。この溶液を、ギャップが150μmのアプリケータを用いて厚さ10μmの金属銅箔上に塗布した後、アルゴンガス気流中において80℃で15分間加熱し、さらに、80℃で60分間真空加熱し、厚さ35μmの複合電極を得た。得られた複合電極を2×2cm角に切断して複合電極Aを得た。
ここで、DMcTの分子量(Mw)は150、酸化還元反応電子数(n)は2、複合電極A中のDMcTの重量(W)は4.33mgであるので、複合電極の電気容量Qは(2/150)×96500×(1/3600)×4.33=1.55mAhと算出される。
【0018】
[実施例2]
DMcT粉末2.0gをNMP7.0gに溶解したのち、ポリアニリン(日東電工製、商品名アニリード)をアルカリ溶液中で脱ドープしヒドラジンで還元して得た伝導度が10ー8S/cm、RDI値が0.30の脱ドープ還元ポリアニリン粉末1.0gを溶解し、さらに、NMPを9.7g添加して青緑色のDMcT−PAnーNMP溶液を得た。さらに、ポリピロール(以下PPyで表す。)0.5gをNMP5.0gに溶解した溶液を加え、粘ちょうなDMcT−PAn−PPy−NMP溶液を得た。この溶液に、アセチレンブラック粉末を1.0g添加して均一に混合し黒色のインクを得た。この黒色のインクを、ギャップが250μmのアプリケータを用いて厚さ30μmの金属銅箔上に塗布した後、アルゴンガス気流中において80℃で15分間加熱し、さらに、80℃で60分間真空加熱し、厚さ35μの複合電極を得た。得られた複合電極を2×2cm角に切断して複合電極Bを得た。
【0019】
[実施例3]
2.0gのDMcTをNMP7.0gに溶解しDMcT−NMP溶液を得た。この溶液に、平均粒径が1μmの金属銅粉末0.5gを添加し、少し赤味を帯びたインクを得た。このインクにさらに、ポリアニリン(日東電工製、商品名アニリード)をアルカリ溶液中で脱ドープしヒドラジンで還元して得た伝導度が10ー8S/cm、RDI値が0.28の脱ドープ還元ポリアニリン粉末1.0gを添加して溶解した。得られたインクを、厚さ10μmのチタン箔上に150μmギャップのアプリケータを用いて塗布し、アルゴンガス気流中において80℃で15分加熱したのち、1cmHgの減圧下において80℃で60分間加熱処理し、厚さ35μmの複合電極を得た。得られた電極を2×2cm角に切断して複合電極Cを得た。
【0020】
[実施例4]
脱ドープ還元ポリアニリン粉末を添加しない以外は実施例1と同様にして複合電極Dを得た。
[実施例5]
脱ドープ還元ポリアニリン粉末を添加しない以外は実施例2と同様にして複合電極Eを得た。
[実施例6]
脱ドープ還元ポリアニリン粉末を添加しない以外は実施例3と同様にして複合電極Fを得た。
【0021】
[実施例7]
DMcT粉末2.0gをNMP7.0gに溶解したのち、ポリアニリン(日東電工製、商品名アニリード)をアルカリ溶液中で脱ドープしヒドラジンで還元して得た伝導度が10ー8S/cm、RDI値が0.26の脱ドープ還元ポリアニリン粉末1.0gをさらに溶解し青緑色の粘ちょうなDMcT−PAnーNMP溶液を得た。この溶液を、ギャップが150μmのアプリケータを用いて厚さ10μmの金属銀箔上に塗布した後、アルゴンガス気流中において80℃で15分間加熱し、さらに、80℃で60分間真空加熱し、厚さ35μmの複合電極を得た。得られた複合電極を2×2cm角に切断して複合電極Gを得た。
【0022】
[実施例8]
DMcT粉末2.0gをNMP7.0gに溶解したのち、ポリアニリン(日東電工製、商品名アニリード)をアルカリ溶液中で脱ドープしヒドラジンで還元して得た伝導度が10ー8S/cm、RDI値が0.30の脱ドープ還元ポリアニリン粉末1.0gを溶解し、さらに、NMPを9.7g添加して青緑色のDMcT−PAnーNMP溶液を得た。さらに、PPy0.5gをNMP5.0gに溶解した溶液を加え、粘ちょうなDMcT−PAn−PPy−NMP溶液を得た。この溶液に、アセチレンブラック粉末を1.0g添加して均一に混合し黒色のインクを得た。この黒色のインクを、ギャップが250μmのアプリケータを用いて厚さ30μmの金属銀箔上に塗布した後、アルゴンガス気流中において80℃で15分間加熱し、さらに、80℃で60分間真空加熱し、厚さ35μの複合電極を得た。得られた複合電極を2×2cm角に切断して複合電極Hを得た。
【0023】
[実施例9]
DMcT2.0gをNMP7.0gに溶解した。この溶液に、平均粒径が1μmの金属銀粉末0.5gを添加・混合した。次に、ポリアニリン(日東電工製、商品名アニリード)をアルカリ溶液中で脱ドープしヒドラジンで還元して得た伝導度が10ー8S/cm、RDI値が0.28の脱ドープ還元ポリアニリン粉末1.0gを添加・溶解し、粘ちょうなインクを得た。このインクを、厚さ10μmのチタン箔上に150μmギャップのアプリケータを用いて塗布し、アルゴンガス気流中において80℃で15分加熱したのち、1cmHgの減圧下で80℃で60分間加熱処理し、厚さ35μmの複合電極を得た。得られた電極を2×2cm角に切断して複合電極Iを得た。
【0024】
[実施例10]
脱ドープ還元ポリアニリン粉末を添加しない以外は実施例7と同様にして複合電極Jを得た。
[実施例11]
脱ドープ還元ポリアニリン粉末を添加しない以外は実施例8と同様にして複合電極Kを得た。
[実施例12]
脱ドープ還元ポリアニリン粉末を添加しない以外は実施例9と同様にして複合電極Lを得た。
【0025】
以上の実施例1〜12で得た電極A〜Lを正極、厚み0.3mmの金属リチウムを負極とし、厚み0.6mmのゲル電解質をセパレータ層として2×2cm角の電池A〜Lを構成した。ここに用いたゲル電解質は、LiBF4を1M溶解したプロピレンカーボネート/エチレンカーボネート(1:1容積比)溶液20.7gでポリアクリロニトリル3.0gをゲル化したものである。
これらの電池A〜Lを20℃において、0.2mAの一定電流で、4.65〜2.0Vの範囲で繰り返し充放電し、各充放電サイクルにおける放電容量(Q、単位:mAh)を測定し、充放電サイクル特性を評価した。
【0026】
図1は、電池Aを、複合電極中のDMcTの電気化学当量と重量から算出される電気量の90%、100%、105%、110%、125%、150%、200%、220%、225%、250%に相当する電気量で充放電試験を行った際に得られた放電量と充放電サイクル数との関係を示す。
図2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12は、それぞれ電池B、C、D、E、F、G、H、I、J、KおよびLを、複合電極中のDMcTの電気化学当量と重量から算出される電気量の90%、100%、105%、110%、125%、150%、200%、220%、225%、250%に相当する電気量で充放電試験を行って得られた放電量と充放電サイクル数との関係を示す。
【0027】
以上の結果から明らかなように、本発明に従い充放電を110%から220%で行うと、50サイクル後もほとんど放電容量の劣化がない、高い容量の優れた電池特性が得られる。
【0028】
【発明の効果】
本発明の二次電池の充放電方法によれば、充放電中において正極活物質中の有機ジスルフィド化合物と金属銅あるいは金属銀との錯体形成が良好に進行し、正極内からの有機ジスルフィド化合物の散逸が有効に軽減され、充放電中の放電容量の低下の少ない、かつ高い容量の二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図2】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図8】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図9】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図10】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図11】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図12】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ジスルフィド化合物を金属銅あるいは金属銀と一体化した複合電極を正極とする二次電池の充放電方法に関する。特に、有機ジスルフィド化合物を金属銅あるいは金属銀と複合一体化した複合電極を正極とし、金属リチウムを負極とするリチウム二次電池の充放電方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1971年に導電性のポリアセチレンが発見されて以来、導電性高分子を電極材料に用いると、軽量で高エネルギー密度の電池や、大面積のエレクトロクロミック素子、微小電極を用いた生物化学センサー等の電気化学素子が期待できることから、導電性高分子電極が盛んに検討されている。ポリアセチレンは不安定で電極としては実用性に乏しいことから、他のπ電子共役系導電性高分子が検討され、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ポリチオフェンといった比較的安定な高分子が開発され、これらを正極に用いたリチウム二次電池が開発されるに及んでいる。これらの電池のエネルギー密度は40〜80Wh/kgと言われている。
【0003】
最近では、さらに高エネルギー密度が期待できる有機材料として、米国特許第4,833,048号に有機ジスルフィド系化合物が提案されている。この化合物は、最も簡単には M+−ーS−R−Sー−M+ と表される(Rは脂肪族あるいは芳香族の有機基、Sは硫黄、M+はプロトンあるいは金属カチオン)。この化合物は電解酸化により S−S 結合を介してお互いに結合し、
M+−ーS−R−S−S−R−S−S−R−Sー−M+
のような形でポリマー化する。こうして生成したポリマーは、電解還元により元のモノマーに戻る。カチオン(M+)を供給、捕捉する金属Mと有機ジスルフィド系化合物を組み合わせた金属ーイオウ二次電池が前述の米国特許に提案されている。150Wh/Kg以上と、通常の二次電池に匹敵あるいはそれ以上のエネルギー密度が期待できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような有機ジスルフィド化合物は、酸化還元(充放電)を繰り返すと、電極容量が徐々に減少してくる問題がある。有機ジスルフィド化合物を酸化(充電)すると、電気絶縁性でかつイオン伝導性に乏しいポリジスルフィド化合物が生成する。ポリジスルフィド化合物は、電解質に対する溶解性が乏しい。一方、このポリジスルフィド化合物が還元(放電)によりモノマー化した際に生成する有機ジスルフィドモノマーは、電解質に対する溶解性が高い。従って、酸化還元を繰り返すと、モノマー化したジスルフィドが一部電解質に溶解し、溶解したモノマーは、電極中にもともと位置していた場所と異なる場所でポリマー化する。そして、カーボン等の導電剤から離れてポリマー化して析出したポリジスルフィド化合物は、電極内の電子・イオン伝導のネットワークから孤立し、電極反応に関与しなくなる。酸化還元を繰り返すと、孤立するポリジスルフィド化合物が増加して、電池の容量が徐々に低下する。また、溶解性の高い有機ジスルフィドモノマーは、動きやすく、正極からセパレータあるいは電解質内、さらには負極側に散逸する。このため、有機ジスルフィド化合物を含む電極を正極に用いた電池では、充放電効率が下がったり、充放電サイクル寿命が短いという欠点を有していた。
【0005】
この欠点を補うために、本発明者らは、有機ジスルフィド化合物と金属銅あるいは金属銀とを一体化した複合電極を提案した。一体化することで、有機ジスルフィド化合物の酸化還元で生じた有機ジスルフィドの単量体あるいは多量体アニオンと、金属銅あるいは金属銀の酸化還元で生じた銅カチオンあるいは銀カチオンとが錯体を形成し、有機ジスルフィド化合物が複合電極から散逸するのを有効に防止し、優れた充放電サイクル特性が得られる。
本発明は、このような有機ジスルフィド化合物と金属銅あるいは金属銀とを一体化した複合電極を正極に用いた二次電池について、高い電池容量が安定して得られる充放電方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、正極中の有機ジスルフィド化合物の電気化学当量と重量から算出される容量を越えて二次電池を使用し、高い電池容量が安定して得られる充放電方法を提供するものである。すなわち、正極中の有機ジスルフィド化合物の電気化学当量(Qeq)と重量(W)より算出される電気容量(Q)の110%以上220%以下の範囲で電池を充放電する。
本発明の充放電方法が適用される二次電池は、有機ジスルフィド化合物とポリアニリンを含有する組成物を金属銅あるいは銀を含む支持体に担持一体化した有機ジスルフィド化合物を含有する複合電極、有機ジスルフィド化合物とポリアニリンと金属銅あるいは金属銀を含有する組成物を導電性支持体に担持一体化した有機ジスルフィド化合物を含有する複合電極、有機ジスルフィド化合物を金属銅あるいは銀を含む支持体に担持一体化した有機ジスルフィド化合物を含有する複合電極、あるいは、有機ジスルフィド化合物と金属銅あるいは金属銀を含有する組成物を導電性支持体に担持一体化した有機ジスルフィド化合物を含有する複合電極を正極とする二次電池である。
【0007】
ここで、電気化学当量(Qeq)は、Qeq=Mw/n(Mw:有機ジスルフィド化合物の分子量、n:有機ジスルフィド化合物の酸化還元反応電子数)で与えられる。電気容量(Q)は、Q(Ah)=W/Qeq×96500/3600の関係式で算出される。
【0008】
複合電極の構成成分の一つである銅あるいは銀は、充放電反応により有機ジスルフィド化合物と錯体を形成し、有機ジスルフィド化合物あるいは有機ジスルフィド化合物とポリアニリンの複合体が電解質に溶解し、正極から散逸するのを防止する作用がある。このため、優れた充放電サイクル寿命を得ることができる。この作用について本発明者がさらに検討したところ、錯体形成によるこのような作用は、正極中の有機ジスルフィド化合物量より算出される電気容量を越えて、電気容量の110%以上、220%以下で電池を充放電すると、さらに有効に発揮できることを見いだした。
すなわち、複合電極を酸化(充電)すると、有機ジスルフィド化合物は重合しジスルフィドの多量体となり、この重合反応と並列して金属銅あるいは金属銀の銅カチオンあるいは銀カチオンへの酸化が進行する。そして、従来の110%未満の電気量の充放電では、有機ジスルフィド化合物の酸化が優先的に進行するため、銅カチオンあるいは銀カチオンの生成は十分でなく、有機ジスルフィド化合物の単量体アニオンあるいは多量体アニオンとの錯体形成が不十分となり、複合電極の効果が発揮され難いことが判明した。また、220%を越える電気量の充放電では、有機ジスルフィド化合物との錯体形成にあずからない過剰の銅カチオンあるいは銀カチオンが酸化(充電)により生成し、還元(放電)によって過剰の銅カチオンあるいは銀カチオンは元の金属銅あるいは金属銀に可逆的に戻らない。そして、充放電を繰り返すと、徐々に金属銅あるいは金属銀が減少し、有機ジスルフィド化合物との電気的接続が不良となり、充放電電圧が不安定になる。さらに、充放電を続けると、電池が作用しなくなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる有機ジスルフィド化合物としては、一般式(R(S)y)nで表される化合物を用いることができる。Rは脂肪族基または芳香族基、Sは硫黄、yは1以上の整数、nは2以上の整数である。HSCH2CH2SHで表されるジチオグリコール、C2N2S(SH)2で表される2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、C3H3N3S3で表されるs−トリアジンー2,4,6ートリチオール、C6H6N4S3で表される7ーメチルー2,6,8ートリメルカプトプリン、あるいはC4H6N4S2で表される4,5ージアミノー2,6ージメルカプトピリミジン等が用いられる。何れも市販品をそのまま用いることができる。また、これらの有機ジスルフィド化合物を、沃素、フェリシアン化カリウム、過酸化水素等の酸化剤を用いて化学重合法により、あるいは電解酸化法により重合した有機ジスルフィド化合物のダイマー、テトラマーを含む重合物を用いることができる。
【0010】
本発明に用いるポリアニリンとしては、アニリンあるいはその誘導体を化学重合法あるいは電解重合法により重合して得られるものが用いられる。特に、脱ドープ状態の還元性ポリアニリンは有機ジスルフィドモノマーを有効に捕捉するので好ましい。ポリアニリンの還元度(RDI)は、ポリアニリンをN−メチルー2ーピロリドンに微量溶解した溶液の340nm付近の短波長側に現れるパラ置換ベンゼン構造に起因する吸収ピークの強度(I340)と、640nm付近の長波長側に現れるキノンジイミン構造に起因する吸収ピークの強度(I640)との比により、RDI=I640/I340で表される。RDIが0.5以下のポリアニリンが好適に用いられる。ポリアニリンの脱ドープの程度は、伝導度により表される。伝導度が、10ー5S/cm以下のポリアニリンが好適に用いられる。
【0011】
本発明に用いるN−アルキルー2ーピロリドンとしては、市販の試薬をそのまま、あるいはゼオライト吸着剤により水分を20ppm以下に低減したものを用いることができる。ピロリドン、N−メチルー2ーピロリドン、N−エチルー2ーピロリドン、Nーブチルー2ーピロリドン等を用いることができる。
【0012】
本発明に用いる支持体の金属銅あるいは銀箔、有機ジスルフィド化合物を含む組成物中に添加される金属銅あるいは金属銀は、純銅あるいは純銀の他、銅または銀以外の金、インジウム、錫、鉛等の金属を含有する銅合金または銀合金の何れを用いてもよい。支持体の場合は、厚さは0.1μmから100μmの箔が好ましい。粉末状あるいは繊維状の金属銅、金属銀あるいは銅合金、銀合金の場合は、粒径、繊維径、繊維長が100オングストロームから10μmのものが好ましい。また、支持体は、銅箔あるいは銀箔をチタン、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属箔と積層したクラッド材や、銅メッキあるいは銀メッキしたチタン、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属箔を用いてもよい。これらの支持体は、平坦あるいは凹凸形状の表面、規則的あるいは不規則な複数の貫通孔を有するものも用いることができる。粉末の場合は、アクリル樹脂等の合成樹脂の粒子の表面を銅あるいは銀、銅合金あるいは銀合金でコーティングした材料を用いてもよい。
【0013】
有機ジスルフィド化合物とポリアニリンの割合は、有機ジスルフィド化合物1重量部に対し、ポリアニリン0.01〜10重量部が好ましい。金属銅あるいは金属銀の割合は、有機ジスルフィド化合物とポリアニリンとの合計量1重量部に対し0.01〜10重量部が好ましい。
本発明で用いる導電性支持体には、カーボンブラックとフッ素樹脂からなる多孔性のカーボンフィルム、チタン、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属箔、ポリアニリンやポリピロール等の導電性高分子膜フィルム、あるいは導電性高分子膜フィルムを塗着あるいは被覆した金属箔やカーボンフィルムを用いることができる。
有機ジスルフィド化合物が還元して塩を形成する際の金属カチオンM+には、前述の米国特許に述べられているアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンイオンに加えて、銅カチオン、銀カチオンを用いることができる。
【0014】
本発明の複合電極には、導電性をさらに高める目的で導電剤を添加してもよい。このような導電剤には、黒鉛粉末、黒鉛繊維、アセチレンブラック粉末等の炭素粉末あるいは繊維、ポリアニリン以外のポリピロールやポリチオフェン等の導電性高分子がある。特に、本発明の製造法で用いるN−アルキルー2ーピロリドンに可溶の分子式(1)で示すポリピロールは、複合電極の製膜性を高め、かつ良好な導電性が得られるので好ましい。
【0015】
【化1】
【0016】
(式中R=C4H9、C2H5で、C4H9:C2H5=1:2であり、n=200〜1000である。)
本発明の複合電極には、金属カチオンM+を含有する電解質を添加してもよい。このような電解質としては、有機ジスルフィドモノマーの拡散移動がしにくい固体状あるいは半固体状の高分子電解質が好ましい。ポリエチレンオキサイドにLiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2等のリチウム塩を溶解したポリマー固体電解質、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の非水溶媒中にLiClO4、LiCF3SO3、LiBF4、LiPF6、LiN(CF3SO2)2等のリチウム塩を溶解した電解液をポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリル酸のような高分子でゲル化した半固体状の高分子電解質が有効に用いられる。Nーアルキルー2ーピロリドンに前記リチウム塩を1M程度溶解した液体電解質を添加してもよい。
さらに、本発明の複合電極には、製膜性を高めかつ高い膜強度を得る目的で、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピリジン等の有機高分子バインダーを添加してもよい。
【0017】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
[実施例1]
2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール(以下DMcTで表す。)粉末2.0gをN−メチルー2ーピロリドン(以下NMPで表す。)7.0gに溶解したのち、ポリアニリン(日東電工製、商品名アニリード)をアルカリ溶液中で脱ドープしヒドラジンで還元して得た伝導度が10ー8S/cm、RDI値が0.26の脱ドープ還元ポリアニリン粉末1.0gをさらに溶解して青緑色の粘ちょうなDMcT−PAnーNMP溶液を得た。この溶液を、ギャップが150μmのアプリケータを用いて厚さ10μmの金属銅箔上に塗布した後、アルゴンガス気流中において80℃で15分間加熱し、さらに、80℃で60分間真空加熱し、厚さ35μmの複合電極を得た。得られた複合電極を2×2cm角に切断して複合電極Aを得た。
ここで、DMcTの分子量(Mw)は150、酸化還元反応電子数(n)は2、複合電極A中のDMcTの重量(W)は4.33mgであるので、複合電極の電気容量Qは(2/150)×96500×(1/3600)×4.33=1.55mAhと算出される。
【0018】
[実施例2]
DMcT粉末2.0gをNMP7.0gに溶解したのち、ポリアニリン(日東電工製、商品名アニリード)をアルカリ溶液中で脱ドープしヒドラジンで還元して得た伝導度が10ー8S/cm、RDI値が0.30の脱ドープ還元ポリアニリン粉末1.0gを溶解し、さらに、NMPを9.7g添加して青緑色のDMcT−PAnーNMP溶液を得た。さらに、ポリピロール(以下PPyで表す。)0.5gをNMP5.0gに溶解した溶液を加え、粘ちょうなDMcT−PAn−PPy−NMP溶液を得た。この溶液に、アセチレンブラック粉末を1.0g添加して均一に混合し黒色のインクを得た。この黒色のインクを、ギャップが250μmのアプリケータを用いて厚さ30μmの金属銅箔上に塗布した後、アルゴンガス気流中において80℃で15分間加熱し、さらに、80℃で60分間真空加熱し、厚さ35μの複合電極を得た。得られた複合電極を2×2cm角に切断して複合電極Bを得た。
【0019】
[実施例3]
2.0gのDMcTをNMP7.0gに溶解しDMcT−NMP溶液を得た。この溶液に、平均粒径が1μmの金属銅粉末0.5gを添加し、少し赤味を帯びたインクを得た。このインクにさらに、ポリアニリン(日東電工製、商品名アニリード)をアルカリ溶液中で脱ドープしヒドラジンで還元して得た伝導度が10ー8S/cm、RDI値が0.28の脱ドープ還元ポリアニリン粉末1.0gを添加して溶解した。得られたインクを、厚さ10μmのチタン箔上に150μmギャップのアプリケータを用いて塗布し、アルゴンガス気流中において80℃で15分加熱したのち、1cmHgの減圧下において80℃で60分間加熱処理し、厚さ35μmの複合電極を得た。得られた電極を2×2cm角に切断して複合電極Cを得た。
【0020】
[実施例4]
脱ドープ還元ポリアニリン粉末を添加しない以外は実施例1と同様にして複合電極Dを得た。
[実施例5]
脱ドープ還元ポリアニリン粉末を添加しない以外は実施例2と同様にして複合電極Eを得た。
[実施例6]
脱ドープ還元ポリアニリン粉末を添加しない以外は実施例3と同様にして複合電極Fを得た。
【0021】
[実施例7]
DMcT粉末2.0gをNMP7.0gに溶解したのち、ポリアニリン(日東電工製、商品名アニリード)をアルカリ溶液中で脱ドープしヒドラジンで還元して得た伝導度が10ー8S/cm、RDI値が0.26の脱ドープ還元ポリアニリン粉末1.0gをさらに溶解し青緑色の粘ちょうなDMcT−PAnーNMP溶液を得た。この溶液を、ギャップが150μmのアプリケータを用いて厚さ10μmの金属銀箔上に塗布した後、アルゴンガス気流中において80℃で15分間加熱し、さらに、80℃で60分間真空加熱し、厚さ35μmの複合電極を得た。得られた複合電極を2×2cm角に切断して複合電極Gを得た。
【0022】
[実施例8]
DMcT粉末2.0gをNMP7.0gに溶解したのち、ポリアニリン(日東電工製、商品名アニリード)をアルカリ溶液中で脱ドープしヒドラジンで還元して得た伝導度が10ー8S/cm、RDI値が0.30の脱ドープ還元ポリアニリン粉末1.0gを溶解し、さらに、NMPを9.7g添加して青緑色のDMcT−PAnーNMP溶液を得た。さらに、PPy0.5gをNMP5.0gに溶解した溶液を加え、粘ちょうなDMcT−PAn−PPy−NMP溶液を得た。この溶液に、アセチレンブラック粉末を1.0g添加して均一に混合し黒色のインクを得た。この黒色のインクを、ギャップが250μmのアプリケータを用いて厚さ30μmの金属銀箔上に塗布した後、アルゴンガス気流中において80℃で15分間加熱し、さらに、80℃で60分間真空加熱し、厚さ35μの複合電極を得た。得られた複合電極を2×2cm角に切断して複合電極Hを得た。
【0023】
[実施例9]
DMcT2.0gをNMP7.0gに溶解した。この溶液に、平均粒径が1μmの金属銀粉末0.5gを添加・混合した。次に、ポリアニリン(日東電工製、商品名アニリード)をアルカリ溶液中で脱ドープしヒドラジンで還元して得た伝導度が10ー8S/cm、RDI値が0.28の脱ドープ還元ポリアニリン粉末1.0gを添加・溶解し、粘ちょうなインクを得た。このインクを、厚さ10μmのチタン箔上に150μmギャップのアプリケータを用いて塗布し、アルゴンガス気流中において80℃で15分加熱したのち、1cmHgの減圧下で80℃で60分間加熱処理し、厚さ35μmの複合電極を得た。得られた電極を2×2cm角に切断して複合電極Iを得た。
【0024】
[実施例10]
脱ドープ還元ポリアニリン粉末を添加しない以外は実施例7と同様にして複合電極Jを得た。
[実施例11]
脱ドープ還元ポリアニリン粉末を添加しない以外は実施例8と同様にして複合電極Kを得た。
[実施例12]
脱ドープ還元ポリアニリン粉末を添加しない以外は実施例9と同様にして複合電極Lを得た。
【0025】
以上の実施例1〜12で得た電極A〜Lを正極、厚み0.3mmの金属リチウムを負極とし、厚み0.6mmのゲル電解質をセパレータ層として2×2cm角の電池A〜Lを構成した。ここに用いたゲル電解質は、LiBF4を1M溶解したプロピレンカーボネート/エチレンカーボネート(1:1容積比)溶液20.7gでポリアクリロニトリル3.0gをゲル化したものである。
これらの電池A〜Lを20℃において、0.2mAの一定電流で、4.65〜2.0Vの範囲で繰り返し充放電し、各充放電サイクルにおける放電容量(Q、単位:mAh)を測定し、充放電サイクル特性を評価した。
【0026】
図1は、電池Aを、複合電極中のDMcTの電気化学当量と重量から算出される電気量の90%、100%、105%、110%、125%、150%、200%、220%、225%、250%に相当する電気量で充放電試験を行った際に得られた放電量と充放電サイクル数との関係を示す。
図2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12は、それぞれ電池B、C、D、E、F、G、H、I、J、KおよびLを、複合電極中のDMcTの電気化学当量と重量から算出される電気量の90%、100%、105%、110%、125%、150%、200%、220%、225%、250%に相当する電気量で充放電試験を行って得られた放電量と充放電サイクル数との関係を示す。
【0027】
以上の結果から明らかなように、本発明に従い充放電を110%から220%で行うと、50サイクル後もほとんど放電容量の劣化がない、高い容量の優れた電池特性が得られる。
【0028】
【発明の効果】
本発明の二次電池の充放電方法によれば、充放電中において正極活物質中の有機ジスルフィド化合物と金属銅あるいは金属銀との錯体形成が良好に進行し、正極内からの有機ジスルフィド化合物の散逸が有効に軽減され、充放電中の放電容量の低下の少ない、かつ高い容量の二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図2】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図7】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図8】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図9】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図10】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図11】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
【図12】本発明の実施例における電池の充放電試験中の放電容量と充放電サイクル数との関係を示す図である。
Claims (5)
- 電解還元により硫黄ー硫黄結合が開裂して硫黄ー金属イオン(プロトンを含む)結合を生成し、電解酸化により硫黄ー金属イオン結合が元の硫黄ー硫黄結合を再生する有機ジスルフィド化合物とポリアニリンを含む組成物を金属銅または銀を含む支持体に担持した有機ジスルフィド化合物を含有する複合電極を正極とする二次電池の充放電方法であって、前記正極中の有機ジスルフィド化合物の電気化学当量と重量から算出される電気量の110%以上220%以下の範囲で充電放電を行うことを特徴とする有機ジスルフィド化合物を含有する正極を有する二次電池の充放電方法。
- 電解還元により硫黄ー硫黄結合が開裂して硫黄ー金属イオン(プロトンを含む)結合を生成し、電解酸化により硫黄ー金属イオン結合が元の硫黄ー硫黄結合を再生する有機ジスルフィド化合物とポリアニリンと金属銅または銀を含有する組成物を導電性支持体に担持した有機ジスルフィド化合物を含有する複合電極を正極とする二次電池の充放電方法であって、前記正極中の有機ジスルフィド化合物の電気化学当量と重量から算出される電気容量の110%以上220%以下の範囲で充電放電を行うことを特徴とする有機ジスルフィド化合物を含有する正極を有する二次電池の充放電方法。
- 電解還元により硫黄ー硫黄結合が開裂して硫黄ー金属イオン(プロトンを含む)結合を生成し、電解酸化により硫黄ー金属イオン結合が元の硫黄ー硫黄結合を再生する有機ジスルフィド化合物を金属銅または銀を含む支持体に担持した有機ジスルフィド化合物を含有する複合電極を正極とする二次電池の充放電方法であって、前記正極中の有機ジスルフィド化合物の電気化学当量と重量から算出される電気容量の110%以上220%以下の範囲で充電放電を行うことを特徴とする二次電池の充放電方法。
- 電解還元により硫黄ー硫黄結合が開裂して硫黄ー金属イオン(プロトンを含む)結合を生成し、電解酸化により硫黄ー金属イオン結合が元の硫黄ー硫黄結合を再生する有機ジスルフィド化合物と金属銅または銀を含有する組成物を導電性支持体に担持した有機ジスルフィド化合物を含有する複合電極を正極とする二次電池の充放電方法であって、前記正極中の有機ジスルフィド化合物の電気化学当量と重量から算出される電気容量の110%以上220%以下の範囲で充電放電を行うことを特徴とする二次電池の充放電方法。
- 二次電池が、金属リチウムを負極とするリチウム二次電池である請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池の充放電方法。
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