JP3539144B2 - トナー母粒子、及びトナー並びに現像剤 - Google Patents
トナー母粒子、及びトナー並びに現像剤 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷等に於ける静電潜像を現像する時に使用される静電荷像現像用トナー母粒子、及び該トナー母粒子を使用して形成される現像剤に関する。更に詳しくはマゼンタ、シアン、イエロー、及び黒色トナーを用いて複写等を行った時に、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られる静電荷像現像用トナー母粒子、及び該トナー母粒子を使用して形成されたトナー並びに現像剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、複写機及びプリンター等に於いてフルカラー画像への展開が急速に進みつつあり、その実用化も大きくなされている。しかし写真や印刷物等と比較すると、現在実用化されているフルカラー電子写真画像は、必ずしも満足し得る画質まで到達しているとは言い難い。また近年、コンピュータやハイビジョン等の進歩発展により、更に高精細なフルカラー画像を形成する方法が強く要望されている。この為に、フルカラー電子写真画像を更に高品質化することが強く求められている。
【0003】
電子写真法は、一般に静電潜像をトナーを用いて現像する。その方法には大きく分類して、トナーをキャリアと呼ばれる媒体に少量分散させた二成分系現像剤を用いる方法と、キャリアを用いない一成分系現像剤を用いる方法がある。フルカラーの電子写真の場合、キャリアとトナーを混合攪拌して用いる二成分系現像剤がしばしば使用される。
【0004】
フルカラー電子写真法によるカラー画像形成は、一般に3原色であるマゼンタ、シアン、イエローの3色、好ましくは墨入れ用としてブラックの4色のカラートナーを用いて全ての色の再現を行うものである。その方法は例えば、先ず原稿からの光をアナログ又はデジタル的に色分解し、感光体の光導電層に導き、1色目の静電潜像を形成する。続いて現像、転写工程を経てトナーは、紙等の被転写材上に保持される。更に2色目以降についても前述の工程を順次複数回行い、同一転写材上に複数色のトナーが重ね合わせられ、一回の定着によって最終のフルカラー画像が得られる。
【0005】
フルカラー複写機やフルカラープリンター等を使用して、オーバー・ヘッド・プロジェクター(以下、OHPと省略する。)用シートの様な透明基材上にフルカラー画像を形成することも増加してきた今日、フルカラーの画像形成に供されるトナーには、従来の最も一般的な黒色のトナーの場合と同様に、種々の特性、例えば安定した帯電性や良好な流動性が求められる他に、透明性、鮮明性、色再現性等がさらに要求される。
即ち、フルカラー画像は、上記したように被転写材上に複数色のトナーが重ね合わせられる事によって得られる為に、個々のトナーの光透過性が不足すると、色再現性が悪化し、鮮明な画像を得ることが困難となる。特にOHP用シートの様な透明基材上にフルカラー画像を形成した時にこの現象は著しく、良好な透明画像が得難い。
【0006】
その対策として顔料の分散の程度を上げる、即ちトナー中の顔料粒径をより小さくすることが考えられる。一般に顔料の粒子径を小さくして分散度を上げていくと顔料分散体の透明性が向上する。しかし、サンドミル、3本ロールミル、ボールミル、エクストルーダー等の通常の分散機は、主に顔料の二次粒子(一次粒子が弱く凝集している)を壊して一次粒子にするだけであり、これら通常の分散機では顔料をより微細化することは困難である。高速のサンドミル等を用いることによって、顔料の種類によってはさらに顔料を微細化することも可能ではあるが、非常に多大なエネルギーを必要とする。
【0007】
顔料を微細化する他の方法として、顔料と固形樹脂を加熱しながら2本ロールやバンバリーミキサー等で強力に練り込む方法も知られている。しかし、顔料は一般に高温下では結晶成長するので、かかる方法では機械的な破砕と結晶成長とが平衡状態になった時に終点となり、顔料の微細化には限界がある。
【0008】
更に顔料の一次粒子を細かくする方法として、顔料と食塩等の水溶性無機塩の混合物を少量の水溶性の溶剤で湿潤したものを、ニーダー等で強く練り込んだ後、無機塩と溶剤を水洗除去、乾燥して一次粒子の細かい顔料を得る方法がある。この方法は、一般には食塩を磨砕剤として用い、粗製銅フタロシアニンを水溶性の有機溶剤の共存下で機械的に磨砕するβ型銅フタロシアニンの顔料化方法として知られている。この場合水溶性の有機溶剤は、粘結剤としての働きとβ型結晶がニーダーによる機械的剪断力によりα型結晶に結晶転移するのを防ぐ為に用いられる。一般的には、この方法はソルベントソルトミリングと呼ばれ、単に磨砕剤を用いないで機械的に微細化する方法(ドライミリングと呼ばれている)とは区別されている。また、広義ではソルベントを用いないソルトミリングもドライミリングと呼ばれる。
しかし、この方法では乾燥の際に顔料が強い二次凝集を起こし易く、顔料粒径が大きくなってしまう問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来の方法の問題点を解決し、フルカラーの複写機やプリンター等を使用してフルカラー画像を形成した時に、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られる静電荷像現像用トナー母粒子、及び該トナー母粒子を用いて成る現像剤を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、有機顔料(A)、水溶性の無機塩(B)、水溶性の溶剤(C)、及びテルペンフェノール樹脂(D)の少なくとも4つの成分からなる混合物を機械的に混練して有機顔料(A)を微細化し、その後水溶性の無機塩(B)及び水溶性の溶剤(C)を水洗除去して得られる処理顔料(E)を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー母粒子である。
【0011】
第2の発明は、水溶性の溶剤(C)に対して、水溶性の無機塩(B)を重量比で2〜20倍使用することを特徴とする第1の発明記載の静電荷像現像用トナー母粒子である。
【0012】
第3の発明は、有機顔料が、キナクリドン系、フタロシアニン系、イソインドリノン系、ジアンスラキノニルレッド系、スレン系、ペリレン系から成る群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする第1又は第2の発明記載の静電荷像現像用トナー母粒子である。
【0013】
第4の発明は、第1ないし第3の発明いずれか記載の静電荷像現像用トナー母粒子と、外添剤とを混合して成ることを特徴とする静電荷像現像用トナーである。
【0014】
第5の発明は、第4の発明記載の静電荷像現像用トナーと、キャリアとを混合して成ることを特徴とする現像剤である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明では、ソルベントソルトミリング時にテルペンフェノール樹脂(D)を用いることが重要である。本発明は、有機顔料(A)とテルペンフェノール樹脂(D)及び水溶性の無機塩(B)の混合物に湿潤剤として少量の水溶性の溶剤(C)を加え、ニーダー等で強く練り込んだ後、水中に投入し水溶性の無機塩(B)、水溶性の溶剤(C)を溶解させスラリー状とし、次にこのスラリーの濾過、水洗を繰り返して無機塩(B)と溶剤(C)を除去することによって、テルペンフェノール樹脂(D)が微細化された有機顔料の表面を被覆し、乾燥による凝集を防止し得るようになり、かかる処理顔料(E)をトナー母粒子の着色剤として用いることによって、従来法より透明で且つ鮮明性に優れた画像を得ることができるようになったものである。
【0016】
本発明では有機顔料(A)として、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッドの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bの溶性アゾ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンのフタロシアニン系、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタのキナクリドン系、ペリレンレッド、ペリレンスカーレットのペリレン系、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジのイソインドリノン系、ジアンスラキノニルレッドが用いられる。
【0017】
具体的には下記の有機顔料が例示出来る。カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示す。C.I.ピグメントエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86 93、109、110、117、125、137、138、147、148、153、154、166、168、C.I.ピグメントオレンジ13、16、36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26、建染染料から誘導されるスレン系有機顔料が例示出来る。
【0018】
本発明のトナー母粒子のうち、黒色のトナー母粒子の場合は、イエロー、シアン、レッドの3色の処理顔料を得、これら3色の処理顔料を着色剤として用いればよい。
尚、本発明のトナー母粒子のうち、黒色のトナー母粒子の場合は、着色剤としてカーボンブラックの使用を妨げるものではない。
【0019】
本発明に用いられる水溶性の無機塩(B)としては、食塩、塩化カリウム、芒硝が挙げられる。
【0020】
本発明に用いられる水溶性の溶剤(C)は、水溶性であれば特に限定されないが、ソルトミリング時に温度が上昇し、溶剤が蒸発し易い状態に成る為に、安全性の点から高沸点の溶剤が好ましい。水溶性の溶剤は粘結剤、結晶防止効果の為に加えるので、その量は水溶性の溶剤に対して水溶性の無機塩を重量比で2〜20倍使用する。より好ましくは3〜10倍である。
【0021】
水溶性溶剤の例として、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコールが用いられる。
【0022】
本発明において用いられるテルペンフェノール樹脂(D)は、テルペン類とフェノールとをBF3 、AlCl3 の様なフリーデルクラフト触媒の存在下で、水素の移動による不均一付加反応で合成する事ができ、重量平均分子量は600〜1000であることが好ましい。テルペンフェノール樹脂(D)の原料であるテルペン類としては、モノテルペンとしてα−ピネン、ジテルペンとしてカンホレン、モノテルペンのアルコールとしてボルネオール、ジテルペンのアルコールとしてヒノキトール更にケトン類としてスギオールが挙げられる。二種類以上をテルペン類を併用してフェノールとの重合物を作成しても構わない。フェノール類としてクレゾール、ジオキシナフタレン、アルキルフェノール、ハロゲン化フェノール、アリルフェノール、ポリクレゾールが挙げられる。同様に二種類以上をフェノール類を併用して重合しても構わない。得られたテルペンフェノール樹脂(D)は、熱可塑性樹脂でEVC、エポキシ樹脂、脂肪酸系ポリアミド樹脂の極性を有する樹脂との相溶性が良い。
【0023】
本発明において用いられるテルペンフェノール樹脂(D)は、有機顔料(A)100重量部に対して1〜100重量部用いることが望ましい。より望ましくは5〜50重量部である。1重量部よりも少ないと顔料表面の被覆効果が小さく、凝集によって顔料粒径が大きくなり易い。
【0024】
処理顔料(E)は、レーザー散乱による測定において平均粒径が1.0μm以下であることが好ましく、さらに0.2μm以下であることが好ましい。このように処理顔料(E)が小さいと、画像を形成した時に透明性及び鮮明性が極めて優れる。
【0025】
本発明のトナー母粒子は、常法に従い、得ることができる。即ち、上記処理顔料(E)を濾過して、乾燥粉砕し、かかる乾燥処理顔料(E)にバインダー樹脂、必要に応じてその他荷電制御剤や添加剤等を加えて、ヘンシェルミキサー等で予備混合を行い、その後エクストルーダー等を用いて溶融混練を行う。
次いで冷却後ハンマーミル等で粗粉砕し、ジェットミル等で微粉砕すし、風力分級機等で分級し、平均粒径5〜20μm程度の所定の粒度分布を有する分級品を得ればよい。
【0026】
本発明のトナー母粒子のバインダー樹脂としては、従来公知のものが広く使用可能であるが、画像の透明性を考慮すると無色透明の樹脂がより好適である。
例えばポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ロジン・エステル、ロジン等を挙げる事が出来る。何れの樹脂もその製造方法は特に制約されるものではない。
【0027】
本発明のトナー母粒子は、荷電制御剤を配合することも好ましい。
荷電制御剤としては、正・負帯電いずれも公知のものが全て使用出来るが、画像の色調に影響を与えない無色又は淡色の荷電制御剤が好ましい。例えばアルキル置換サリチル酸の金属錯体(例えばジターシャリーブチルサリチル酸のクロム錯体、アルミニウム錯体、又は亜鉛錯体等)の様な有機金属錯体等が好適に使用できる。
【0028】
本発明のトナー母粒子には、流動性向上剤、クリーニング助剤等として、種々の粒子を外添剤として配合することも好ましい。
外添剤としては公知のものが全て使用出来る。例えば0.01〜0.5μmのシリカ、アルミナ、酸化チタン等の金属酸化物、炭化珪素、炭化タングステン等の研磨剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩等の滑剤、その他1〜50μmのポリテトラフロロエチレン、ポリビニリデンフロライド、ポリメタアクリレート、ポリスチレン、シリコーン等の微粉末を添加することが好適である。此れ等の混合物、更に此れ等微粉末を各種表面処理した外添剤を添加することも好適である。
【0029】
本発明の現像剤は、上記トナーとキャリアとを混合してなるものであり、従来公知の方法で得ることができ、特に制約されるものではない。
本発明の現像剤に用いられるキャリアとしては、既知のキャリアは全て使用可能である。一般に二成分現像剤を構成するキャリアは導電性キャリアと絶縁性キャリアに大別される。
導線性キャリアとしては、通常、酸化又は未酸価の鉄粉等が用いられる。
絶縁性キャリアとしては、一般に強磁性体より成るキャリアコア材粒子の表面を絶縁性樹脂により均一に被覆したキャリアが代表的である。キャリアのコア材としては、例えば、酸化鉄(マグネタイト)、還元鉄、銅、フェライト、ニッケル、コバルト等やこれらと亜鉛、アルミニウム等との合金の粒子を挙げることが可能である。被覆樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、アミノ樹脂等の公知の材料のいずれのものでもよい。キャリアとしては20〜200μm程度の大きさのものが好ましい。
また、一般的に現像剤中にはトナーを1〜30重量%含有することが好ましい。
【0030】
【実施例】
以下実施例に基づいて本発明を説明する。例中部とあるは、重量部を示す。
[実施例1]
粗製銅フタロシアニン :250部
(リオノールブルーKLH−T、東洋インキ製造製)
塩化ナトリウム :2500部
テルペンフェノール樹脂 :100部
(ヤスハラケミカル製、マイティエースG125、平均分子量約600)
ジエチレングリコール :200部
をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、3時間混練した。次にこの混合物を2.5リットルの温水に投入し、約80℃まで加熱、攪拌した。約1時間撹拌してスラリー状とした後、濾過、水洗を5回繰り返して塩化ナトリウム及び溶剤を除き、固形分50%の顔料のウエットケーキを得た。かかるウエットケーキを乾燥粉砕して、処理顔料(E1)を得た。
【0031】
上記処理顔料(E1) 3.0部
不飽和ポリエステル樹脂 100.0部
負帯電荷電制御剤 3.0部
上記各処方量をヘンシェルミキサーで予備混合を行い、二軸エクストルーダーにて溶融混練を行う。冷却後、ハンマーミルを用いて粗粉砕し、更にジェットミルにて微粉砕した後、風力分級機で平均粒径10.0μmのトナー母粒子を得る。
上記トナー母粒子100.0部に0.05μmの酸化チタン微粉末を0.4部添加し、ヘンシェルミキサーで混合してトナーを得る。
【0032】
得られたトナーをフェライト100部に対し6部加え、ボールミル混合機で混合して現像剤を得た。
この現像剤を用い市販のフルカラー複写機(CLC350、キャノン製)により画像を得たところ、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られた。又、得られたトナーを熱プレスにより溶融させ、ガラス板上に均一な薄層を作り、光学顕微鏡により顔料の分散状態を観察したところ、凝集の無い非常に良好な分散状態を呈していた。
【0033】
[実施例3]実施例1の粗製銅フタロシアニンの代わりに、赤色顔料(ホスターパーム ピンクE:キナクリドン系、ヘキスト製)260部を用いて実施例1と同様にして処理顔料(E3)を作成し、トナー母粒子、トナー、及び現像剤を得、実施例1と同様にしてフルカラー複写機を用いて画像を形成したところ、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られた。又、得られたトナーの分散状態も良好であった。
【0034】
〔比較例1〕実施例3で用いた処理顔料(E3)の代わりにソルベントソルトミリング処理を施さない赤顔料を用いて、実施例3と同様にしてトナー母粒子、トナー及び現像剤を得、同様に市販のフルカラー複写機を用いて画像を形成したところ、画質が著しく低下した。
【0035】
〔比較例2〕実施例3においてテルペンフェノール樹脂を用いなかった以外は同様にして処理顔料(E3’)を用いて、実施例3と同様にしてトナー母粒子、トナー及び現像剤を得、同様に市販のフルカラー複写機を用いて画像を形成したところ、比較例1よりは画質の改善はあったものの、実施例よりは劣り、テルペンフェノール樹脂の存在下におけるソルベントソルトミリングの有効性が確認できた。
【0036】
[実施例4]
黄色顔料 :250部
(パリオトールイエローD−1819:イソインドリノン系、BASF製)
塩化ナトリウム :2500部
テルペンフェノール樹脂 :100部
(ヤスハラケミカル製、マイティエースG150、平均分子量約700)
ジエチレングリコール :200部
を用いて実施例1と同様にして処理顔料(E4)、トナー母粒子、トナー及び現像剤を得、実施例1と同様に市販のフルカラー複写機を用いて画像を形成したところ、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られた。又、得られたトナーを熱プレスにより溶融させ、ガラス板上に均一な薄層を作り、光学顕微鏡により顔料の分散状態を観察したところ、良好な分散状態を呈していた。
【0037】
[実施例5、6、7]
実施例1の粗製銅フタロシアニンの代わりに、赤色顔料(クロモフタルレッドA−2B:ジアミノジアントラニル系、CIBA製)240部(実施例5)、青色顔料(リオノゲンブルー6505:インダンスレン系、東洋インキ製造製)200部(実施例6)、赤色顔料(パリオトール レッドL3670:ペリレン系、CIBA製)250部(実施例7)を用いて実施例1と同様にして処理顔料(E5)、(E6)、(E7)を作成し、トナー母粒子、トナー、及び現像剤を得、実施例1と同様にしてフルカラー複写機を用いて画像を形成したところ、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られた。又、得られたトナーの分散状態も良好であった。
【0038】
【発明の効果】
本発明により、トナー中の顔料粒径が小さく、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られる静電荷像現像用トナー母粒子、及びトナー並びに現像剤が得られた。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷等に於ける静電潜像を現像する時に使用される静電荷像現像用トナー母粒子、及び該トナー母粒子を使用して形成される現像剤に関する。更に詳しくはマゼンタ、シアン、イエロー、及び黒色トナーを用いて複写等を行った時に、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られる静電荷像現像用トナー母粒子、及び該トナー母粒子を使用して形成されたトナー並びに現像剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、複写機及びプリンター等に於いてフルカラー画像への展開が急速に進みつつあり、その実用化も大きくなされている。しかし写真や印刷物等と比較すると、現在実用化されているフルカラー電子写真画像は、必ずしも満足し得る画質まで到達しているとは言い難い。また近年、コンピュータやハイビジョン等の進歩発展により、更に高精細なフルカラー画像を形成する方法が強く要望されている。この為に、フルカラー電子写真画像を更に高品質化することが強く求められている。
【0003】
電子写真法は、一般に静電潜像をトナーを用いて現像する。その方法には大きく分類して、トナーをキャリアと呼ばれる媒体に少量分散させた二成分系現像剤を用いる方法と、キャリアを用いない一成分系現像剤を用いる方法がある。フルカラーの電子写真の場合、キャリアとトナーを混合攪拌して用いる二成分系現像剤がしばしば使用される。
【0004】
フルカラー電子写真法によるカラー画像形成は、一般に3原色であるマゼンタ、シアン、イエローの3色、好ましくは墨入れ用としてブラックの4色のカラートナーを用いて全ての色の再現を行うものである。その方法は例えば、先ず原稿からの光をアナログ又はデジタル的に色分解し、感光体の光導電層に導き、1色目の静電潜像を形成する。続いて現像、転写工程を経てトナーは、紙等の被転写材上に保持される。更に2色目以降についても前述の工程を順次複数回行い、同一転写材上に複数色のトナーが重ね合わせられ、一回の定着によって最終のフルカラー画像が得られる。
【0005】
フルカラー複写機やフルカラープリンター等を使用して、オーバー・ヘッド・プロジェクター(以下、OHPと省略する。)用シートの様な透明基材上にフルカラー画像を形成することも増加してきた今日、フルカラーの画像形成に供されるトナーには、従来の最も一般的な黒色のトナーの場合と同様に、種々の特性、例えば安定した帯電性や良好な流動性が求められる他に、透明性、鮮明性、色再現性等がさらに要求される。
即ち、フルカラー画像は、上記したように被転写材上に複数色のトナーが重ね合わせられる事によって得られる為に、個々のトナーの光透過性が不足すると、色再現性が悪化し、鮮明な画像を得ることが困難となる。特にOHP用シートの様な透明基材上にフルカラー画像を形成した時にこの現象は著しく、良好な透明画像が得難い。
【0006】
その対策として顔料の分散の程度を上げる、即ちトナー中の顔料粒径をより小さくすることが考えられる。一般に顔料の粒子径を小さくして分散度を上げていくと顔料分散体の透明性が向上する。しかし、サンドミル、3本ロールミル、ボールミル、エクストルーダー等の通常の分散機は、主に顔料の二次粒子(一次粒子が弱く凝集している)を壊して一次粒子にするだけであり、これら通常の分散機では顔料をより微細化することは困難である。高速のサンドミル等を用いることによって、顔料の種類によってはさらに顔料を微細化することも可能ではあるが、非常に多大なエネルギーを必要とする。
【0007】
顔料を微細化する他の方法として、顔料と固形樹脂を加熱しながら2本ロールやバンバリーミキサー等で強力に練り込む方法も知られている。しかし、顔料は一般に高温下では結晶成長するので、かかる方法では機械的な破砕と結晶成長とが平衡状態になった時に終点となり、顔料の微細化には限界がある。
【0008】
更に顔料の一次粒子を細かくする方法として、顔料と食塩等の水溶性無機塩の混合物を少量の水溶性の溶剤で湿潤したものを、ニーダー等で強く練り込んだ後、無機塩と溶剤を水洗除去、乾燥して一次粒子の細かい顔料を得る方法がある。この方法は、一般には食塩を磨砕剤として用い、粗製銅フタロシアニンを水溶性の有機溶剤の共存下で機械的に磨砕するβ型銅フタロシアニンの顔料化方法として知られている。この場合水溶性の有機溶剤は、粘結剤としての働きとβ型結晶がニーダーによる機械的剪断力によりα型結晶に結晶転移するのを防ぐ為に用いられる。一般的には、この方法はソルベントソルトミリングと呼ばれ、単に磨砕剤を用いないで機械的に微細化する方法(ドライミリングと呼ばれている)とは区別されている。また、広義ではソルベントを用いないソルトミリングもドライミリングと呼ばれる。
しかし、この方法では乾燥の際に顔料が強い二次凝集を起こし易く、顔料粒径が大きくなってしまう問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来の方法の問題点を解決し、フルカラーの複写機やプリンター等を使用してフルカラー画像を形成した時に、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られる静電荷像現像用トナー母粒子、及び該トナー母粒子を用いて成る現像剤を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、有機顔料(A)、水溶性の無機塩(B)、水溶性の溶剤(C)、及びテルペンフェノール樹脂(D)の少なくとも4つの成分からなる混合物を機械的に混練して有機顔料(A)を微細化し、その後水溶性の無機塩(B)及び水溶性の溶剤(C)を水洗除去して得られる処理顔料(E)を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー母粒子である。
【0011】
第2の発明は、水溶性の溶剤(C)に対して、水溶性の無機塩(B)を重量比で2〜20倍使用することを特徴とする第1の発明記載の静電荷像現像用トナー母粒子である。
【0012】
第3の発明は、有機顔料が、キナクリドン系、フタロシアニン系、イソインドリノン系、ジアンスラキノニルレッド系、スレン系、ペリレン系から成る群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする第1又は第2の発明記載の静電荷像現像用トナー母粒子である。
【0013】
第4の発明は、第1ないし第3の発明いずれか記載の静電荷像現像用トナー母粒子と、外添剤とを混合して成ることを特徴とする静電荷像現像用トナーである。
【0014】
第5の発明は、第4の発明記載の静電荷像現像用トナーと、キャリアとを混合して成ることを特徴とする現像剤である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明では、ソルベントソルトミリング時にテルペンフェノール樹脂(D)を用いることが重要である。本発明は、有機顔料(A)とテルペンフェノール樹脂(D)及び水溶性の無機塩(B)の混合物に湿潤剤として少量の水溶性の溶剤(C)を加え、ニーダー等で強く練り込んだ後、水中に投入し水溶性の無機塩(B)、水溶性の溶剤(C)を溶解させスラリー状とし、次にこのスラリーの濾過、水洗を繰り返して無機塩(B)と溶剤(C)を除去することによって、テルペンフェノール樹脂(D)が微細化された有機顔料の表面を被覆し、乾燥による凝集を防止し得るようになり、かかる処理顔料(E)をトナー母粒子の着色剤として用いることによって、従来法より透明で且つ鮮明性に優れた画像を得ることができるようになったものである。
【0016】
本発明では有機顔料(A)として、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッドの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bの溶性アゾ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンのフタロシアニン系、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタのキナクリドン系、ペリレンレッド、ペリレンスカーレットのペリレン系、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジのイソインドリノン系、ジアンスラキノニルレッドが用いられる。
【0017】
具体的には下記の有機顔料が例示出来る。カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示す。C.I.ピグメントエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86 93、109、110、117、125、137、138、147、148、153、154、166、168、C.I.ピグメントオレンジ13、16、36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26、建染染料から誘導されるスレン系有機顔料が例示出来る。
【0018】
本発明のトナー母粒子のうち、黒色のトナー母粒子の場合は、イエロー、シアン、レッドの3色の処理顔料を得、これら3色の処理顔料を着色剤として用いればよい。
尚、本発明のトナー母粒子のうち、黒色のトナー母粒子の場合は、着色剤としてカーボンブラックの使用を妨げるものではない。
【0019】
本発明に用いられる水溶性の無機塩(B)としては、食塩、塩化カリウム、芒硝が挙げられる。
【0020】
本発明に用いられる水溶性の溶剤(C)は、水溶性であれば特に限定されないが、ソルトミリング時に温度が上昇し、溶剤が蒸発し易い状態に成る為に、安全性の点から高沸点の溶剤が好ましい。水溶性の溶剤は粘結剤、結晶防止効果の為に加えるので、その量は水溶性の溶剤に対して水溶性の無機塩を重量比で2〜20倍使用する。より好ましくは3〜10倍である。
【0021】
水溶性溶剤の例として、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコールが用いられる。
【0022】
本発明において用いられるテルペンフェノール樹脂(D)は、テルペン類とフェノールとをBF3 、AlCl3 の様なフリーデルクラフト触媒の存在下で、水素の移動による不均一付加反応で合成する事ができ、重量平均分子量は600〜1000であることが好ましい。テルペンフェノール樹脂(D)の原料であるテルペン類としては、モノテルペンとしてα−ピネン、ジテルペンとしてカンホレン、モノテルペンのアルコールとしてボルネオール、ジテルペンのアルコールとしてヒノキトール更にケトン類としてスギオールが挙げられる。二種類以上をテルペン類を併用してフェノールとの重合物を作成しても構わない。フェノール類としてクレゾール、ジオキシナフタレン、アルキルフェノール、ハロゲン化フェノール、アリルフェノール、ポリクレゾールが挙げられる。同様に二種類以上をフェノール類を併用して重合しても構わない。得られたテルペンフェノール樹脂(D)は、熱可塑性樹脂でEVC、エポキシ樹脂、脂肪酸系ポリアミド樹脂の極性を有する樹脂との相溶性が良い。
【0023】
本発明において用いられるテルペンフェノール樹脂(D)は、有機顔料(A)100重量部に対して1〜100重量部用いることが望ましい。より望ましくは5〜50重量部である。1重量部よりも少ないと顔料表面の被覆効果が小さく、凝集によって顔料粒径が大きくなり易い。
【0024】
処理顔料(E)は、レーザー散乱による測定において平均粒径が1.0μm以下であることが好ましく、さらに0.2μm以下であることが好ましい。このように処理顔料(E)が小さいと、画像を形成した時に透明性及び鮮明性が極めて優れる。
【0025】
本発明のトナー母粒子は、常法に従い、得ることができる。即ち、上記処理顔料(E)を濾過して、乾燥粉砕し、かかる乾燥処理顔料(E)にバインダー樹脂、必要に応じてその他荷電制御剤や添加剤等を加えて、ヘンシェルミキサー等で予備混合を行い、その後エクストルーダー等を用いて溶融混練を行う。
次いで冷却後ハンマーミル等で粗粉砕し、ジェットミル等で微粉砕すし、風力分級機等で分級し、平均粒径5〜20μm程度の所定の粒度分布を有する分級品を得ればよい。
【0026】
本発明のトナー母粒子のバインダー樹脂としては、従来公知のものが広く使用可能であるが、画像の透明性を考慮すると無色透明の樹脂がより好適である。
例えばポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ロジン・エステル、ロジン等を挙げる事が出来る。何れの樹脂もその製造方法は特に制約されるものではない。
【0027】
本発明のトナー母粒子は、荷電制御剤を配合することも好ましい。
荷電制御剤としては、正・負帯電いずれも公知のものが全て使用出来るが、画像の色調に影響を与えない無色又は淡色の荷電制御剤が好ましい。例えばアルキル置換サリチル酸の金属錯体(例えばジターシャリーブチルサリチル酸のクロム錯体、アルミニウム錯体、又は亜鉛錯体等)の様な有機金属錯体等が好適に使用できる。
【0028】
本発明のトナー母粒子には、流動性向上剤、クリーニング助剤等として、種々の粒子を外添剤として配合することも好ましい。
外添剤としては公知のものが全て使用出来る。例えば0.01〜0.5μmのシリカ、アルミナ、酸化チタン等の金属酸化物、炭化珪素、炭化タングステン等の研磨剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩等の滑剤、その他1〜50μmのポリテトラフロロエチレン、ポリビニリデンフロライド、ポリメタアクリレート、ポリスチレン、シリコーン等の微粉末を添加することが好適である。此れ等の混合物、更に此れ等微粉末を各種表面処理した外添剤を添加することも好適である。
【0029】
本発明の現像剤は、上記トナーとキャリアとを混合してなるものであり、従来公知の方法で得ることができ、特に制約されるものではない。
本発明の現像剤に用いられるキャリアとしては、既知のキャリアは全て使用可能である。一般に二成分現像剤を構成するキャリアは導電性キャリアと絶縁性キャリアに大別される。
導線性キャリアとしては、通常、酸化又は未酸価の鉄粉等が用いられる。
絶縁性キャリアとしては、一般に強磁性体より成るキャリアコア材粒子の表面を絶縁性樹脂により均一に被覆したキャリアが代表的である。キャリアのコア材としては、例えば、酸化鉄(マグネタイト)、還元鉄、銅、フェライト、ニッケル、コバルト等やこれらと亜鉛、アルミニウム等との合金の粒子を挙げることが可能である。被覆樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、アミノ樹脂等の公知の材料のいずれのものでもよい。キャリアとしては20〜200μm程度の大きさのものが好ましい。
また、一般的に現像剤中にはトナーを1〜30重量%含有することが好ましい。
【0030】
【実施例】
以下実施例に基づいて本発明を説明する。例中部とあるは、重量部を示す。
[実施例1]
粗製銅フタロシアニン :250部
(リオノールブルーKLH−T、東洋インキ製造製)
塩化ナトリウム :2500部
テルペンフェノール樹脂 :100部
(ヤスハラケミカル製、マイティエースG125、平均分子量約600)
ジエチレングリコール :200部
をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、3時間混練した。次にこの混合物を2.5リットルの温水に投入し、約80℃まで加熱、攪拌した。約1時間撹拌してスラリー状とした後、濾過、水洗を5回繰り返して塩化ナトリウム及び溶剤を除き、固形分50%の顔料のウエットケーキを得た。かかるウエットケーキを乾燥粉砕して、処理顔料(E1)を得た。
【0031】
上記処理顔料(E1) 3.0部
不飽和ポリエステル樹脂 100.0部
負帯電荷電制御剤 3.0部
上記各処方量をヘンシェルミキサーで予備混合を行い、二軸エクストルーダーにて溶融混練を行う。冷却後、ハンマーミルを用いて粗粉砕し、更にジェットミルにて微粉砕した後、風力分級機で平均粒径10.0μmのトナー母粒子を得る。
上記トナー母粒子100.0部に0.05μmの酸化チタン微粉末を0.4部添加し、ヘンシェルミキサーで混合してトナーを得る。
【0032】
得られたトナーをフェライト100部に対し6部加え、ボールミル混合機で混合して現像剤を得た。
この現像剤を用い市販のフルカラー複写機(CLC350、キャノン製)により画像を得たところ、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られた。又、得られたトナーを熱プレスにより溶融させ、ガラス板上に均一な薄層を作り、光学顕微鏡により顔料の分散状態を観察したところ、凝集の無い非常に良好な分散状態を呈していた。
【0033】
[実施例3]実施例1の粗製銅フタロシアニンの代わりに、赤色顔料(ホスターパーム ピンクE:キナクリドン系、ヘキスト製)260部を用いて実施例1と同様にして処理顔料(E3)を作成し、トナー母粒子、トナー、及び現像剤を得、実施例1と同様にしてフルカラー複写機を用いて画像を形成したところ、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られた。又、得られたトナーの分散状態も良好であった。
【0034】
〔比較例1〕実施例3で用いた処理顔料(E3)の代わりにソルベントソルトミリング処理を施さない赤顔料を用いて、実施例3と同様にしてトナー母粒子、トナー及び現像剤を得、同様に市販のフルカラー複写機を用いて画像を形成したところ、画質が著しく低下した。
【0035】
〔比較例2〕実施例3においてテルペンフェノール樹脂を用いなかった以外は同様にして処理顔料(E3’)を用いて、実施例3と同様にしてトナー母粒子、トナー及び現像剤を得、同様に市販のフルカラー複写機を用いて画像を形成したところ、比較例1よりは画質の改善はあったものの、実施例よりは劣り、テルペンフェノール樹脂の存在下におけるソルベントソルトミリングの有効性が確認できた。
【0036】
[実施例4]
黄色顔料 :250部
(パリオトールイエローD−1819:イソインドリノン系、BASF製)
塩化ナトリウム :2500部
テルペンフェノール樹脂 :100部
(ヤスハラケミカル製、マイティエースG150、平均分子量約700)
ジエチレングリコール :200部
を用いて実施例1と同様にして処理顔料(E4)、トナー母粒子、トナー及び現像剤を得、実施例1と同様に市販のフルカラー複写機を用いて画像を形成したところ、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られた。又、得られたトナーを熱プレスにより溶融させ、ガラス板上に均一な薄層を作り、光学顕微鏡により顔料の分散状態を観察したところ、良好な分散状態を呈していた。
【0037】
[実施例5、6、7]
実施例1の粗製銅フタロシアニンの代わりに、赤色顔料(クロモフタルレッドA−2B:ジアミノジアントラニル系、CIBA製)240部(実施例5)、青色顔料(リオノゲンブルー6505:インダンスレン系、東洋インキ製造製)200部(実施例6)、赤色顔料(パリオトール レッドL3670:ペリレン系、CIBA製)250部(実施例7)を用いて実施例1と同様にして処理顔料(E5)、(E6)、(E7)を作成し、トナー母粒子、トナー、及び現像剤を得、実施例1と同様にしてフルカラー複写機を用いて画像を形成したところ、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られた。又、得られたトナーの分散状態も良好であった。
【0038】
【発明の効果】
本発明により、トナー中の顔料粒径が小さく、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られる静電荷像現像用トナー母粒子、及びトナー並びに現像剤が得られた。
Claims (5)
- 有機顔料(A)、水溶性の無機塩(B)、水溶性の溶剤(C)、及びテルペンフェノール樹脂(D)の少なくとも4つの成分からなる混合物を機械的に混練して有機顔料(A)を微細化し、その後水溶性の無機塩(B)及び水溶性の溶剤(C)を水洗除去して得られる処理顔料(E)を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー母粒子。
- 水溶性の溶剤(C)に対して、水溶性の無機塩(B)を重量比で2〜20倍使用することを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー母粒子。
- 有機顔料(A)が、キナクリドン系、フタロシアニン系、イソインドリノン系、ジアンスラキノニルレッド系、スレン系、ペリレン系から成る群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナー母粒子。
- 請求項1ないし3いずれか記載の静電荷像現像用トナー母粒子と、外添剤とを混合して成ることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
- 請求項4記載の静電荷像現像用トナーと、キャリアとを混合して成ることを特徴とする現像剤。
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