JP3635894B2 - トナー母粒子、及びトナー並びに現像剤 - Google Patents

トナー母粒子、及びトナー並びに現像剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷等に於ける静電潜像を現像する時に使用される静電荷像現像用トナー母粒子、及び該トナー母粒子を使用して形成されるトナー並びに現像剤に関する。更に詳しくはマゼンタ、シアン、イエロー、及び黒色トナーを用いて複写等を行った時に、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られる静電荷像現像用トナー母粒子、及び該トナー母粒子を使用して形成されたトナー並びに現像剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、複写機及びプリンター等に於いてフルカラー画像への展開が急速に進みつつあり、その実用化も大きくなされている。しかし写真や印刷物等と比較すると、現在実用化されているフルカラー電子写真画像は、必ずしも満足し得る画質まで到達しているとは言い難い。また近年、コンピュータやハイビジョン等の進歩発展により、更に高精細なフルカラー画像を形成する方法が強く要望されている。この為に、フルカラー電子写真画像を更に高品質化することが強く求められている。
【0003】
電子写真法は、一般に静電潜像をトナーを用いて現像する。その方法には大きく分類して、トナーをキャリアと呼ばれる媒体に少量分散させた二成分系現像剤を用いる方法と、キャリアを用いない一成分系現像剤を用いる方法がある。フルカラーの電子写真の場合、キャリアとトナーを混合攪拌して用いる二成分系現像剤がしばしば使用される。
【0004】
フルカラー電子写真法によるカラー画像形成は、一般に3原色であるマゼンタ、シアン、イエローの3色、好ましくは墨入れ用としてブラックの4色のカラートナーを用いて全ての色の再現を行うものである。その方法は例えば、先ず原稿からの光をアナログ又はデジタル的に色分解し、感光体の光導電層に導き、1色目の静電潜像を形成する。続いて現像、転写工程を経てトナーは、紙等の被転写材上に保持される。更に2色目以降についても前述の工程を順次複数回行い、同一被転写材上に複数色のトナーが重ね合わせられ、一回の定着によって最終のフルカラー画像が得られる。
【0005】
フルカラー複写機やフルカラープリンター等を使用して、オーバー・ヘッド・プロジェクター(以下、OHPと省略する。)用シートの様な透明基材上にフルカラー画像を形成することも増加して来た今日、フルカラーの画像形成に供されるトナーには、従来の最も一般的な黒色のトナーの場合と同様に、種々の特性、例えば安定した帯電性や良好な流動性が求められる他に、透明性、鮮明性、色再現性等が更に要求される。
即ち、フルカラー画像は、上記したように被転写材上に複数色のトナーが重ね合わさられることによって得られる為に、個々のトナーの光透過性が不足すると、色再現性が悪化し、鮮明な画像を得ることが困難となる。特にOHP用シートの様な透明基材上にフルカラー画像を形成した時にこの現象は著しく、良好な透明画像は得難い。
【0006】
その対策として顔料の分散の程度を上げる、即ちトナー中の顔料粒径をより小さくすることが考えられる。一般に顔料の粒子径を小さくして分散度を上げていくと顔料分散体の透明性が向上する。しかし、サンドミル、3本ロールミル、ボールミル、エクストルーダー等の通常の分散機は、主に顔料の二次粒子(一次粒子が弱く凝集している)を壊して一次粒子にするだけであり、此れ等の通常の分散機では、顔料をより微細化することは困難である。高速のサンドミル等を用いることによって、顔料の種類によっては更に顔料を微細化することも可能ではあるが、非常に多大なエネルギーを必要とする。
【0007】
顔料の一次粒子を微細化する手段として、顔料を濃硫酸、ポリリン酸等の強酸に溶解したものを冷水に投入して、顔料を微細粒子として析出させる方法が知られている。この方法では顔料の強酸に対する溶解性や安定性の点で、用い得る顔料が著しく限定される。又、この方法で微細化した顔料は、乾燥すると強い二次凝集を起こす為に、乾燥したものを一次粒子まで再分散することは非常に困難であり、また分散性を改良する方法としてはアルコール等の溶剤中で加熱処理することが知られているが、望ましくない結晶成長を起こし、顔料粒径が大きくなる。
【0008】
他の方法として、顔料と固形樹脂を加熱しながら2本ロールやバンバリーミキサー等で強力に練り込む方法も知られている。しかし、顔料は一般に高温下では結晶成長する為に、本方法では機械的な破砕力と結晶成長が平衡状態になった時に終点となり、顔料の微細化には限界がある。
【0009】
更に顔料の一次粒子を細かくする方法として、顔料と食塩等の水溶性無機塩の混合物を少量の水溶性の溶剤で湿潤したものを、ニーダー等で強く練り込んだ後、無機塩と溶剤を水洗除去、乾燥して一次粒子の細かい顔料を得る方法がある。この方法は、一般には食塩を磨砕剤として用い、粗製銅フタロシアニンを水溶性の有機溶剤の共存下で機械的に磨砕するβ型銅フタロシアニンの顔料化方法として知られている。この場合、水溶性の有機溶剤は、粘結剤としての働きとβ型結晶がニーダーによる機械的剪断力によるα型結晶に結晶転移するのを防ぐ為に用いられる。一般的には、この方法はソルベントソルトミリングと呼ばれ、単に磨砕剤を用いないで機械的に微細化する方法(ドライミリングと呼ばれている)とは区別されている。又、広義ではソルベントを用いないソルトミリングもドライミングと呼ばれる。
しかし、この方法では乾燥の際に顔料の強い二次凝集を起こし易く、顔料粒径が大きくなってしまう問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来の方法の問題点を解決し、フルカラーの複写機やプリンター等を使用してフルカラー画像を形成した時に、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られる静電荷像現像用トナー母粒子、及び該トナー母粒子を用いて成るトナー並びに現像剤の提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決する手段】
本発明は、有機顔料(A)、室温で固体で且つ水不溶性の合成樹脂(B)、水溶性の無機塩(C)、及び(B)を少なくとも一部溶解する水溶性の溶剤(D)の少なくとも4つの成分から成る混合物を機械的に混練し、その後(C)及び(D)を水洗除去して成る処理顔料(E)を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー母粒子である。
【0012】
第2の発明は、有機顔料(A)が、キナクリドン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、アゾ系有機顔料から成る群より選ばれる1種であることを特徴とする第1の発明記載の静電荷像現像用トナー母粒子である。
【0013】
第3の発明は、有機顔料(A)100重量部に対して、室温で固体で且つ水不溶性の合成樹脂(B)を5〜50重量部使用すること特徴とする第1又は第2の発明記載の静電荷像現像用トナー母粒子である。
【0014】
第4の発明は、水溶性の溶剤(D)に対して、水溶性の無機塩(C)を重量比で2〜20倍使用することを特徴とする第1乃至第3の発明何れか記載の静電荷像現像用トナー母粒子である。
【0015】
第5の発明は、第1乃至第4の発明何れか記載の静電荷像現像用トナー母粒子と、外添剤とを混合して成ることを特徴とする静電荷像現像用トナーである。
【0016】
第6の発明は、第5の発明記載の静電荷像現像用トナーと、キャリアとを混合して成ることを特徴とする現像剤である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明は、静電荷像現像用トナー及び該トナーとキャリアを含有する現像剤を使用してフルカラー画像を形成した時に透明性を得る為に、無機塩を破砕助剤とし、有機顔料の一次粒子を機械的に細かくした(以降この工程をソルトミリングと呼ぶ。)ものを着色剤として使用して形成した静電荷現像用トナー及び該トナーとキャリアを含有する現像剤であり、この破砕工程に於いて、合成樹脂を併用することによって、従来法より鮮明で且つ著しい透明性を与えることに成功したものである。
【0018】
上記ソルトミリングの方法について、更に具体的には、有機顔料(A)と室温で固体で且つ水不溶性の合成樹脂(B)及び水溶性の無機塩(C)の混合物に湿潤剤として少量の溶剤(D)を加え、ニーダー等で強く練り込んだ後、水中に投入し、ハイスピードミキサー等で撹拌しスラリー状とする。次に、このスラリーの濾過、水洗を繰り返して無機塩(C)と溶剤(D)を除去する。
この方法により合成樹脂(B)に被覆された顔料(以降、処理顔料と呼ぶ)が得られる。この処理顔料をトナー製造時の着色剤として用いる。
従来、顔料をソルトミリング工程で処理した小粒径のものが得られても、その後乾燥すると、顔料が凝集を起こして大きな粒径のものと成り易い。これを再び小粒径のものに分散するには、非常に大きなエネルギーを必要とする。ソルトミリング時に特定の合成樹脂を併用するにより、乾燥工程を導入しても顔料の凝集を防止し、フルカラー画像を形成した時に、鮮明かつ透明性に優れ十分な色再現性、発色性の画像を得ることができるようになった。
【0019】
本発明に用いられる有機顔料(A)は水に溶解しなければ特に限定されないが、硬度が破砕助剤の無機塩より大きいか、余り差のない無機顔料は一般に顔料の一次粒子を細かくすることは困難であり、硬度の低い有機染顔料を用いるのが好ましい。但し、一般に体質顔料として用いられている硫酸バリウム、シリカ等の無機顔料をソルトミリング時、又はその後の分散時に併用することは差し支えない。
【0020】
有機顔料(A)の例としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系、チオインジゴ系、縮合アゾ系、チオインジゴ系、その他の顔料として、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が用いられる。
【0021】
このような顔料としては、下記の顔料が例示できる。
カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示す。C.I.ピグメントエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、125、137、138、147、148、153、154、166、168、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26、等が例示出来る。
上記化合物の他に、ソルトミリング時に分散剤、可塑剤等の添加剤を併用しても良く、また2種以上の顔料を混合して処理しても良い。
【0022】
その中で特にキナクリドン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、アゾ系有機顔料からなる群より選ばれる1種であることが好適である。
【0023】
本発明にトナー母粒子にうち、黒色のトナー母粒子の場合は、イエロー、シアン、レッドの3色の処理顔料を得、此れ等3色の処理顔料を着色剤として用いればよい。
尚、本発明にトナー母粒子にうち、黒色のトナー母粒子の場合は、着色剤としてカーボンブラックの使用を妨げるものではない。カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック等公知のものが全て使用可能である。
【0024】
本発明に於いて用いられる室温で固体で且つ水不溶性の合成樹脂(B)とは、純合成高分子の他に、繊維素誘導体、ゴム誘導体、タンパク誘導体等の半合成高分子及びそれらのオリゴマーも含む。但し室温で固体で、水不溶性で、且つソルトミリング時の湿潤剤に用いる水溶性溶剤に可溶である必要がある。
二種類以上の高分子を併用してソルトミリングをすることも出来る。又、その際一部液状の高分子を用いても良い。此れらの樹脂の中でも、特にエポキシ樹脂及び(メタ)アクリル樹脂が汎用性が広く、又、ソルトミリングの効果が大である。
【0025】
本発明に於いて用いられるエポキシ樹脂とは、分子中にエポキシ基を1個以上含むエポキサイドをいい、硬化剤で架橋したエポキシ樹脂は一般に溶解性が殆どなく、後述する水溶性の溶剤(D)に殆ど溶解しない為に、本発明には用いられない。エポキサイドとしてはビスフェノール系、ノボラック系、アルキルフェノール系、レゾルシン系、ポリグリコール系、エステル系、N−グリシジルアミンなどのグリシジル型や、環状脂肪族エポキサイド等が用いられる。
【0026】
本発明において用いられる(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマー1種以上との共重合体で、60モル%以下のスチレン、酢酸ビニル、無水マレイン酸等のラジカル重合性のモノマーとの共重合体も含まれる。しかし、多官能モノマーとの共重合体の様に、三次元架橋されたポリマーは溶解性が劣り、後述する水溶性の溶剤(D)に殆ど溶解しない為に、本発明には適さない。
【0027】
本発明に於いて用いられる室温で固体で且つ水不溶性の合成樹脂(B)は、有機顔料(A)100重量部に対して、5〜50重量部用いることが望ましい。5重量部よりも少ないと被覆効果が小さく、画像を形成した時の透明性が得にくい。一方50重量部よりも多くなると、トナーのバインダー樹脂として別の種類の樹脂を用いた時に、樹脂どうしの相溶性が低下してトナ−となった時に所定の静電特性が得られないことが起き易い。
【0028】
本発明に用いられる水溶性の無機塩(C)としては、食塩、塩化カリウム、芒硝等が挙げることは可能であるが、此れ等に限定されるものではない。
【0029】
本発明に用いられる水溶性の溶剤(D)は、水溶性であれば特に限定されないが、ソルトミリング時に温度が上昇し、溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点の溶剤が好ましい。
例として、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール等が用いられる。
上記化合物の他に、ソルトミリング時に分散剤、可塑剤等の添加剤を併用しても良く、また2種以上の有機顔料を混合して処理しても良い。
【0030】
本発明に於いて用いられる水溶性の無機塩(C)は、水溶性の溶剤(D)に対しての重量比で2〜20倍使用することが好ましく、3〜10倍を使用することがより好ましい。水溶性の無機塩(C)が水溶性の溶剤(D)に対して少ないと、有機顔料(A)を微細化する効果が少ない。逆に水溶性の溶剤(D)が水溶性の無機塩(C)に対して少ないと、ソルトミリング時の温度が上昇し易く、微細化した顔料粒子の再凝集を起こし易くなる。
【0031】
好ましい処理顔料(E)の粒子径としては、レーザー散乱法による測定に於いて平均粒径が1.0μm以下、更に好ましくは、0.2μm以下である。この様な粒径であると、画像を形成した時に、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られる。又、顔料の表面に官能基を付加させた表面処理顔料を用いても良い。
【0032】
本発明のトナー母粒子は、常法に従い、得ることが出来る。即ち、上記処理顔料(E)に結着樹脂、必要に応じてその他荷電制御剤や添加剤等を加えて、ヘンシェルミキサー等で予備混合を行う。その後エクストルーダー等により希釈、溶融混練を行う。
次いで冷却後ハンマーミル等で粗粉砕し、ジェットミル等で微粉砕する。その後に風力分級機等で分級し、平均粒径5〜20μm程度の所定の粒度分布を有する分級品、即ちトナー母粒子を得る。
【0033】
結着樹脂、即ちソルトミリング後の溶融混練に用いることの出来る樹脂として、公知のものを含めて広く使用出来る。画像の透明性を考慮して、無色透明の樹脂の方がより好適である。例えばポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ロジン・エステル、ロジン等を挙げることが出来る。何れの樹脂もその製造方法等は特に制約されるものではない。
【0034】
本発明のトナー母粒子に、荷電制御剤を配合することも好ましい。
トナー母粒子が黒色の場合には、荷電制御剤として、例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩、アルキルアミド、アルキル置換サリチル酸の金属錯体(例えばジターシャリーブチルサリチル酸のクロム錯体、アルミニウム錯体、又は亜鉛錯体等)のような有機金属錯体等を使用することが出来る。
また、トナー母粒子が黒色以外の場合には、画像の色調に影響を与えない無色又は淡色の荷電制御剤が好ましく、例えばアルキル置換サリチル酸の金属錯体(例えばジターシャリーブチルサリチル酸のクロム錯体、アルミニウム錯体、又は亜鉛錯体等)のような有機金属錯体等を使用することが出来る。
【0035】
本発明のトナー母粒子には、流動性向上剤、クリーニング助剤等として、種々の粒子を外添剤として配合することも好ましい。
外添剤としては公知のものが全て使用出来る。例えば0.01〜0.5μmのシリカ、アルミナ、酸化チタン等の金属酸化物、炭化珪素、炭化タングステン等の研磨剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩等の滑剤、その他1〜50μmのポリテトラフロロエチレン、ポリビニリデンフロライド、ポリメチルメタアクリレート、ポリスチレン、シリコーン等の微粉末を添加することが好適である。此れ等の混合物、更に此れ等の微粉末を各種表面処理した外添剤を添加することも好適である。
【0036】
本発明の現像剤は、上記トナーとキャリアとを混合して成るものであり、従来の公知の方法で得ることが可能で、特に制約されるものではない。
本発明に係わる現像剤に用いられるキャリアとしては、既知のキャリアは全て使用可能である。一般に二成分現像剤を構成するキャリアは導電性キャリアと絶縁性キャリアに大別される。
導電性キャリアとしては、通常、酸化又は未酸化の鉄粉が用いられる。
絶縁性キャリアとしては、一般に強磁性体よりなるキャリアコア材粒子表面を絶縁性樹脂により均一に被覆したキャリアが代表的である。キャリアをコア材としては、例えば酸化鉄(マグネタイト)、還元鉄、銅、フェライト、ニッケル、コバルト等や此れ等と亜鉛、アルミニウム等の合金等の粒子を挙げることが可能である。被覆樹脂としてはアクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネイト樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、アミノ樹脂等の公知の材料の何れのものでもよい。キャリアの粒径としては20〜200μm程度のものが好ましい。又、一般的に現像剤中にはトナーを1〜30%含有することが好ましい。
【0037】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明を更に詳細に説明する。但し、これによって本発明の実施の形態が何等限定されるものではない。実施例及び比較例中、部及び%は、重量部及び重量%をそれぞれ表す。
【0038】
[実施例1]
粗製銅フタロシアニン(リオノールブルーSL、東洋インキ製造製):250部、塩化ナトリウム:2500部、不飽和ポリエステル樹脂:90部及びポリエチレングリコール300(東京化成製):160部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、3時間混練した。次に、この混合物を2.5リットルの温水に投入し、約80℃に加熱しながらハイスピードミキサーで約1時間撹拌してスラリー状とした後、濾過、水洗を5回繰り返して塩化ナトリウム及び溶剤を除き、固形分50%の顔料分散体(ポリエステル樹脂処理顔料分散体)を得た。それを乾燥粉砕して、トナーの着色剤として用いる。
【0039】
上記処理顔料 3.0部
不飽和ポリエステル樹脂 100.0部
負帯電荷電制御剤 3.0部
上記各処方量をヘンシェルミキサーで予備混合を行い、二軸エクストルーダーにて溶融混練を行う。冷却後、ハンマーミルを用いて粗粉砕し、更にジェットミルで微粉砕した後、風力分級機で平均粒径10.0μmの着色剤含有微粒子、即ちトナー母粒子を得る。上記着色剤含有微粒子100重量部に酸化チタン微粉末を0.4部重量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して、シアントナーを得る。
【0040】
得られたトナーをフェライト100部に対し6部加え、ボールミル混合機で混合した現像剤を得た。この現像剤を用い市販のフルカラー複写機(CLC350、キャノン製)により画像を形成し、評価した。
【0041】
[実施例2]
実施例1の粗製銅フタロシアニンの代わりに、黄色顔料(リオノールイエローGR、東洋インキ製造製)260部を用いて実施例1と同様にして顔料分散体を得た。その後の工程も実施例1と同様に、トナーを作成した。更に実施例1と同様に市販のフルカラー複写機にて画像を形成して評価した。
【0042】
[実施例3]
粗製銅フタロシアニン(リオノールブルーSL、東洋インキ製造製):250部、塩化ナトリウム:900部、スチレン−アクリル樹脂:100部及びジエチレングリコール(東京化成製):160部を実施例1記載のニーダーに仕込み、2時間混練した。これを実施例1と同様の操作で固形分50%のアクリル処理顔料水性分散体を得た。その後の工程も実施例1と同様に、但し樹脂はスチレン−アクリルを使用して、トナーを作成した。更に実施例1と同様に市販のフルカラー複写機にて画像を形成し、評価した。
【0043】
〔実施例4〕
実施例1の粗製銅フタロシアニンの代わりに、キナクリドン顔料(リオノールレッド6B4206−P、東洋インキ製造製)280部を用いて実施例1と同様にして処理して固形分50%のアクリル処理顔料水性分散体を得た。その後の工程も実施例1と同様に、但し樹脂はスチレン−アクリルを使用して、トナーを作成した。更に実施例1と同様に市販のフルカラー複写機にて画像を形成し、評価した。
【0044】
〔比較例1〕
通常の乾燥工程を経て形成した銅フタロシアニン顔料(リオノールブルーSL、東洋インキ製造製)を用い、実施例1と同一の樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)と荷電制御剤をスーパーミキサーで混合した後、エクストルーダーで溶融混練した。それ以降は実施例1と同一工程を経て、トナー及び現像剤を形成した。更に実施例1と同様に市販のフルカラー複写機にて画像を形成し、評価した。
【0045】
〔比較例2〕
通常の乾燥工程を経て形成した黄色顔料(リオノールイエローGR、東洋インキ製造製)を用い、実施例2と同一の樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)と荷電制御剤をヘンシェルミキサーで混合した後、エクストルーダーで溶融混練した。それ以降は実施例2と同一工程を経て、トナー及び現像剤を形成した。更に実施例1と同様に市販のフルカラー複写機にて画像を形成し、評価した。
【0046】
〔比較例3〕
通常の乾燥工程を経て形成した銅フタロシアニン顔料(リオノールブルーSL、東洋インキ製造製)を用い、実施例3と同一の樹脂(スチレン−アクリル樹脂)と荷電制御剤をヘンシェルミキサーで混合した後、エクストルーダーで溶融混練した。それ以降は実施例3と同一工程を経て、トナー及び現像剤を形成した。更に実施例1と同様に市販のフルカラー複写機にて画像を形成し、評価した。
【0047】
〔比較例4〕
通常の乾燥工程を経て形成したキナクリドン顔料(リオノールレッド6B4206−P、東洋インキ製造製)を用い、実施例4と同一の樹脂(スチレン−アクリル樹脂)と荷電制御剤をヘンシェルミキサーで混合した後、エクストルーダーで溶融混練した。それ以降は実施例4と同一工程を経て、トナー及び現像剤を形成した。更に実施例1と同様に市販のフルカラー複写機にて画像を形成し、評価した。
【0048】
実施例1〜4は、室温で固体で且つ水不溶性の合成樹脂(B)を添加し、ソルトミリング工程を経た例である。その画像は彩度が高く鮮明な画像が得られた。また、個々の色のトナーを使った中間色も鮮明な画像が得られた。特に、OHP用シートへ画像を形成した時に、著しく透明性が優れていた。又、得られたトナーを熱プレスにより溶融させ、ガラス板上に均一な薄層を作り、光学顕微鏡により分散状態を観察したところ、凝集の無い非常に良好な分散状態になっていることが確認出来た。
【0049】
比較例1〜4は、実施例1〜4で使用した同じ種類の顔料と結着樹脂を使い、同じ組み合わせで、通常の製法でトナーを形成した。即ち、室温で固体で且つ水不溶性の合成樹脂(B)も添加せず、ソルトミリングも行わずに、通常の工程で顔料を得、トナー母粒子等を形成した。此れ等の比較例は、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られず、例えば実施例1、比較例1と同じ顔料と結着樹脂を使用した例を並べてその画像を比較すると、その差は明白であった。
【0050】
【発明の効果】
本発明により、顔料粒子径が小さく、鮮明で十分な色再現性、発色性が得られる静電荷像現像用トナー及び現像剤が得られた。顕微鏡によるトナー中の顔料の分散状態を観察したところ、凝集の無い良好な分散状態になっていることが確認出来た。

Claims (6)

  1. 有機顔料(A)、室温で固体で且つ水不溶性の合成樹脂(B)、水溶性の無機塩(C)、及び(B)を少なくとも一部溶解する水溶性の溶剤(D)の少なくとも4つの成分から成る混合物を機械的に混練し、その後(C)及び(D)を水洗除去して成る処理顔料(E)を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー母粒子。
  2. 有機顔料(A)が、キナクリドン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、アゾ系有機顔料から成る群より選ばれる1種であることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー母粒子。
  3. 有機顔料(A)100重量部に対して、室温で固体で且つ水不溶性の合成樹脂(B)を5〜50重量部使用すること特徴とする請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナー母粒子。
  4. 水溶性の溶剤(D)に対して、水溶性の無機塩(C)を重量比で2〜20倍使用することを特徴とする請求項1乃至3何れか記載の静電荷像現像用トナー母粒子。
  5. 請求項1乃至4何れか記載の静電荷像現像用トナー母粒子と、外添剤とを混合して成ることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
  6. 請求項5記載の静電荷像現像用トナーと、キャリアとを混合して成ることを特徴とする現像剤。
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