JP3531399B2 - 磁気抵抗効果素子 - Google Patents
磁気抵抗効果素子Info
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感磁部に用いた磁気抵抗効果素子及びそれを用いた磁気
ヘッドに関する。
て、異方性磁気抵抗(以下AMRと称する)効果を用い
た磁気抵抗効果型磁気ヘッド(以下MR磁気ヘッドと称
する)が商品化されている。しかしながら、磁性膜にNi
Fe等のAMR効果膜を用いているため、磁気抵抗(M
R)変化率が約2%、感度が0.5%/Oeと低い。このた
め、さらに高MR変化率、高感度なMR膜が望まれてい
る。
年、巨大磁気抵抗効果(GMR効果)という新しい現象
が見出され、従来のAMR効果より大きな磁気抵抗変化
率が得られるということから、研究が進められている。
その中でも、スピンバルブ(SV)膜を用いたGMR効
果が注目されている。スピンバルブ膜は、強磁性膜/非
磁性金属膜/強磁性膜/反強磁性膜の膜構成からなる多
層膜であり、2〜5%/Oeの高感度な特性を示すため、次
世代磁気ヘッドにおける再生素子として注目され、実用
化研究が始められている。
縁膜/強磁性膜の接合構造を持ち、両強磁性膜の磁化の
相対角度に依存してトンネル効果があらわれる強磁性ト
ンネル効果という現象が見出され、この現象を利用した
磁気抵抗効果素子の研究及び開発が進められている。強
磁性トンネル効果膜は非常に高い磁場感度を有するた
め、10Gbit/inch2以上の超高密度磁気記録における再
生磁気ヘッドとして可能性がある。S.Maekawa and V.Ga
fvert等は、IEEE Trans. Magn., MAG-18,707(1982)に
おいて、磁性体/絶縁体/磁性体接合で両磁性膜の磁化
の相対角度に依存してトンネル効果が現れることが期待
されることを理論的、実験的に示した。
効果膜を有する磁気ヘッドを開示しており、従来のMR
磁気ヘッドにくらべ、微小な漏洩磁束の変化を高感度、
かつ、高分解能で検出できること、接合面積を狭めるこ
とにより、絶縁膜におけるピンホ−ルの発生確率を小さ
くして、再生感度を一層向上させることができることな
どを開示している。
反強磁性体からのバイアス磁界を印加する強磁性トンネ
ル効果膜およびそれを用いた磁気ヘッドを開示してい
る。
gn.Magn.Mater.139(1995)L231において、Fe/Al2O3/Fe
トンネル接合で室温においてMR変化率18%が得られ
たと報告している。また、M.Pomerantz,J.C.Sloczewski
及びE.Spiller等は、Fe/a-Carbon/Fe膜について開示
している。
トンネル接合には、磁気ヘッドとして利用するに当た
り、種々の解決すべき課題が存する。例えば、特開平4-
42417号などの公知文献では、強磁性トンネル効果膜を
用いた磁気抵抗効果素子で微少な磁束変化を高感度に検
出し、高い安定な出力を得るために、いくつかの手段を
開示している。その一つとして、多層構造の磁気抵抗効
果膜を形成する一対の磁性層のうち、媒体からの漏洩磁
束により磁化方向が変化する磁性層は、磁化回転が一斉
に起こるように異方性分散角度を小さくし、かつ、単磁
区化することが必要であると示されている。具体的に
は、BNなどの中間層を磁性層中に挿入することにより
単磁区化すると報告されている。
角度の小さい膜を形成しても、それを数μmの大きさに
パターニングして、数十MHz以上の高周波磁場で動作さ
せると、微少パターン膜の端部で、ミクロなスピン方向
の乱れが生じて、磁壁が形成されるため、単磁区構造が
崩れ、バルクハウゼンノイズなどが生じるという問題が
ある。
MR磁気ヘッドにおいては、磁気抵抗効果膜の両端部に
磁区制御膜を形成し、縦バイアスを加えることによりバ
ルクハウゼンノイズを防止する方法が開示されている
(公知文献:米国特許5,018,037、特公平8-21166号公
報)。これらの場合、磁区制御膜は感磁部全体の両端部
領域に直接接触して形成される。これは、AMR磁気ヘ
ッドやスピンバルブGMR磁気ヘッドにおいては、磁気
抵抗効果素子の面と平行となる方向に電流を流して使用
するため、磁区制御膜が感磁部の両端部と接触していて
も実用上問題を生じないことに基づく。
磁性膜、絶縁膜及び第2の強磁性膜を上下方向に積層し
てあって、積層方向にトンネル電流が流れることにより
磁気抵抗変化が生じるものである。したがって、従来の
ように感磁部の端部全体に磁区制御用のバイアス磁性層
が接触してしまうと、絶縁層によって分離されている上
下の強磁性層が電気的に短絡してしまい、トンネル電流
が流れなくなるため、磁気抵抗変化が得られなくなる。
は上記の強磁性トンネル効果膜と同一のものである。
性トンネル接合部に十分な大きさのトンネル電流を流す
ことができ、高いMR変化率を得ることのできる磁気抵
抗効果素子を提供することである。
良好な出力波形が得られる磁気抵抗効果素子を提供する
ことである。
のない安定した出力が得られる磁気抵抗効果素子を提供
することである。
ため、本発明に係る磁気抵抗効果素子は、強磁性トンネ
ル接合部と、磁区制御膜とを有する。前記強磁性トンネ
ル接合部は、絶縁膜と、第1の強磁性膜と、第2の強磁
性膜とを含み、前記第1の強磁性膜と前記第2の強磁性
膜とが前記絶縁膜を介して積層されている。そしてこの
絶縁膜のバリアポテンシャルは0.5〜3 eV である。前
記磁区制御膜は、第1の強磁性膜及び前記第2の強磁性
膜の何れか一方の両端部に、隣接して設けられている。
膜及び前記第2の強磁性膜の何れか一方の両端部に、隣
接して設けられているから、第1の強磁性膜及び第2の
強磁性膜の間に電気的短絡の生じる余地はない。したが
って、強磁性トンネル接合部に十分な大きさのトンネル
電流を流すことができる。このため、大きな磁気抵抗変
化率が得られる。
備えられた強磁性膜を単一磁区状態にすることができ
る。このため、出力波形歪みの原因となるバルクハウゼ
ンノイズの発生を抑えることができ、ノイズのない安定
した出力が得られる。
第2の強磁性膜のうち、前記磁区制御膜の設けられてい
ない強磁性膜は、磁化固定膜を有する。
2の強磁性膜の何れか一方を磁化固定膜を有するピン止
め強磁性膜とし、他方を自由強磁性膜として動作させ、
自由強磁性膜の磁化の動きのみで、第1の強磁性膜の磁
化の向きと第2の強磁性膜の磁化の向きに関して、相対
角度変化を生じさせることができる。この場合、外部磁
場に対して、自由強磁性膜の磁化容易軸が垂直となり、
ピン止め強磁性膜の磁化容易軸が平行となるように設定
するのがよい。こうすることにより、外部磁界が零の場
合に自由強磁性膜の磁化の方向と、ピン止め強磁性膜の
磁化の方向とが垂直になるため、対称性の良好な出力波
形が得られる。しかも、自由強磁性膜の磁化の方向が、
外部磁場により磁化回転モードで変化するため、高い感
度が得られると共に、スムーズな磁化反転が行なわれ、
磁壁移動に伴うバルクハウゼンノイズの発生を低減でき
る。
素子を模式的に示す斜視図、図2は図1の2−2線に沿
った断面図、図3は図1の3−3線に沿った断面図であ
る。図示するように、本発明に係る磁気抵抗効果素子
は、強磁性トンネル接合部21と、磁区制御膜214、
215とを有する。強磁性トンネル接合部21は、絶縁
膜210と、第1の強磁性膜211と、第2の強磁性膜
212とを含む。第1の強磁性膜211及び第2の強磁
性膜212は絶縁膜210の両側に積層されている。こ
れらは適当な絶縁支持基板4上に積層されている。磁区
制御膜214、215は、第1の強磁性膜211の両端
部に隣接して設けられている。この実施例では、第1の
強磁性膜211を微少外部磁場に対して磁化方向が自由
に変化する自由強磁性膜とし、第2の強磁性膜212を
微少外部磁場に対して磁化方向が動かないピン止め強磁
性膜とした場合について説明する。
おいて、強磁性トンネル接合部21は、微細な矩形状パ
ターンとして形成される。かかるパターンでは、パター
ン端部に磁気的な不安定部分が発生し、磁区が形成され
てしまうのを回避することができない。このため、磁壁
移動モードでの磁化反転が部分的に発生し、ノイズを発
生する。そこで、第1の強磁性膜211の両端部に、磁
区制御膜214、215を形成し、第1の強磁性膜21
1を単一磁区状態に保持する。実施例に示された磁区制
御膜214、215は磁気バイアス膜である。
子のトンネル接合部の動作を説明する図である。印加磁
場Hが零のとき、第2の強磁性膜212の磁化の向きM
2は、印加されるべき磁場Hに対して平行となる方向に
ピン止めされているものとする。第1の強磁性膜211
の磁化の向きM1は、磁区制御膜214、215によ
り、印加されるべき磁場Hと垂直となる方向に制御され
ている。この状態で、磁気ディスク等の磁気記録媒体か
ら磁場Hが印加された場合、ピン止めされている第2の
強磁性膜212の磁化の向きM2は変化しないが、第1
の強磁性膜211の磁化の向きM1は、例えば角度θだ
け変化する。これにより磁気抵抗効果が生じる。
1の強磁性膜211の両端部に隣接して設けられている
から、第1の強磁性膜211及び第2の強磁性膜212
の間に電気的短絡の生じる余地はない。したがって、強
磁性トンネル接合部21に十分な大きさのトンネル電流
を流すことができる。このため、大きな磁気抵抗変化率
が得られる。
られた第1の強磁性膜211を、単一磁区状態にするこ
とができる。このため、出力波形歪みの原因となるバル
クハウゼンノイズの発生を抑えることができ、ノイズの
ない安定した出力が得られる。
強磁性膜または反強磁性膜を用いることができる。磁区
制御膜214、215を構成する硬質強磁性膜として
は、外部擾乱磁界による影響を防ぐために、1kOe以上
の保磁力を有する強磁性膜が望ましい。硬質強磁性膜の
膜厚、材料は特に限定されるものではないが、所定の大
きさのバイアス磁界を発生させるためには、硬質強磁性
膜の膜厚tと残留磁束密度Brの積であるt・Brが所
定の大きさである必要がある。このため、材料としては
Co系合金が望ましく、中でもCoPt、 CoPtCr、 CoPtTa、
CoCrTa、CoPtTaCrなどが薄い膜厚でも高い保磁力が得ら
れるため、好ましい。
きくするために下地層を形成してもよい。これらの硬質
強磁性膜は基本的には最密六方晶構造の結晶構造を有
し、磁化容易軸はC軸である。そのため、膜面内方向に
効率的にバイアス磁界をかけるためにはC軸を面内方向
にするのが好ましい。その場合、何らかの下地層を設け
てもよい。下地層を形成することにより保磁力を更に大
きくすることができる。下地層はCo系合金との格子定
数が同じ程度の材料が好ましく、中でも体心立方構造を
有するCr、Mo、W、Ta、Zr及びこれらの合金が
好ましい。
膜を用いる場合は、第1の強磁性膜211との交換結合
により交換バイアス磁界を生じさせる。大きな交換バイ
アス磁界を生じさせるためには、強磁性層/反強磁性層
の界面において、良好な平坦性を実現すること、及び、
ミキシング層の形成を抑えることが重要である。
物系材料があり、金属系反強磁性材料としてはFeMn、Ni
MnなどのMn系合金やCrAl、CrSbなどのCr系合金を用
いるのがよい。また、酸化物系反強磁性材料としてはNi
O、CoO、Fe2O3などを用いればよい。特に好ましいのは
Mn系反強磁性材料であり、大きな交換バイアス磁界を
得ることができる。しかしながら、Mn系合金の中に
は、NiFeなどの強磁性膜上でエピタキシャル成長をさせ
なければ得られないものがあり、この場合は、図5及び
図6に示すように、反強磁性膜でなる磁区制御膜21
4、215が、強磁性トンネル接合部21の単一磁区状
態にすべき第1の強磁性膜211上に接する構造にする
ことが望ましい。あるいは、図7に示すように磁区制御
膜214、215の上に第1の強磁性膜211を設けて
もよい。
1の磁気抵抗変化は、第1の強磁性膜211及び第2の
強磁性膜212の磁化の相対角度に依存する。従って、
磁気ヘッドのように微少磁場で高出力、かつ、対称性の
良好な波形を得るため、第1の強磁性膜211の磁化方
向M1と、第2の強磁性膜212の磁化方向M2とは、
外部印加磁場が零の場合に互いに平行でないことが望ま
しい。
1の強磁性膜211の磁化容易軸が垂直、ピン止め強磁
性膜である第2の強磁性膜212の容易軸が平行になる
ように方向付ける手段としては、次の2つの手段があ
る。
る第1の強磁性膜211を低保磁力の軟質強磁性膜を用
い、ピン止め強磁性膜である第2の強磁性膜212に高
保磁力の硬質磁性膜を用いる方法である。
合、即ち、自由強磁性膜に低保磁力の軟質強磁性膜を用
い、ピン止め強磁性膜に高保磁力の硬質強磁性膜を用い
た場合の磁場−磁気抵抗(MR)変化率特性を示す図で
ある。図8において、円内に示された2つの矢印は、第
1の強磁性膜211の磁化の向き、及び、第2の強磁性
膜212の磁化の向きをそれぞれ示している。印加磁場
Hを、磁場(−H2)よりも低い値から徐々に大きくし
ていくと、低保磁力である自由強磁性膜211は磁場
(+H1)で磁化反転する。印加磁場Hを更に大きくし
ていくと、高保磁力であるピン止め強磁性膜212が磁
場(+H2)で磁化反転する。同様に、印加磁場Hを、
磁場H2より高い値から徐々に低くしていくと、磁場
(−H1)および(−H2)で強磁性膜211、212
が磁化反転する。
る範囲で、第1の強磁性膜211の磁化の向きと、第2
の強磁性膜の磁化の向きは反平行になり、印加磁場Hが
|H1|>HおよびH>|H2|の範囲で磁化の向きが
平行になる。電気抵抗は、磁化の向きが反平行状態の時
大きく、磁化の向きが平行状態であるとき小さくなる。
磁化の向きが平行である時の抵抗値Rsと、磁化の向き
が反平行から平行へ変化したときの抵抗の変化分ΔRの
比(ΔR/Rs)がMR変化率となり、これにより外部
印加磁界を検出することができる。
11及び第2の強磁性膜212の両者共、軟質強磁性膜
によって構成し、ピン止め強磁性膜である第2の強磁性
膜212に磁化固定膜を積層し、第2の強磁性膜212
の磁化の向きを固定する方法である。図9は第2の磁化
固定手段を採用した場合、即ち、自由強磁性膜およびピ
ン止め強磁性膜の両者共、軟質強磁性膜を用い、ピン止
め強磁性膜に隣接して磁化固定膜を積層した場合の磁場
ーMR変化率特性を示す図である。零磁場付近では自由
強磁性膜のみが磁化反転し、磁化固定膜と交換結合した
ピン止め強磁性膜は磁化反転しない。磁場を更に大きく
し、交換結合ではピン止めできなくなると、ピン止め強
磁性膜も磁化反転する。この場合は、磁場Hが+H5<
H<+H6の範囲で高いMR変化率が得られる。
磁化固定手段の具体例について説明する。
質強磁性膜または反強磁性膜の何れかを用いることがで
きる。磁化固定膜216として、硬質強磁性膜を用いた
場合には、磁化固定膜216及び第2の強磁性膜212
の間に強磁性膜ー強磁性膜による交換結合が生じ、第2
の強磁性膜212の磁化の向きが固定され、ピン止め強
磁性膜となる。磁化固定膜216として、反強磁性膜を
用いた場合には、磁化固定膜216及び第2の強磁性膜
212の間に反強磁性膜ー強磁性膜による交換結合が生
じ、第2の強磁性膜212の磁化の向きが固定され、ピ
ン止め強磁性膜となる。
ば、CoPt、 CoPtCr、 CoPtTa、 CoCrTa、CoPtTaCrなどを用
いることができる。反強磁性膜としては、金属系反強磁
性材料あるいは酸化物系反強磁性材料を用いることがで
きる。金属系反強磁性材料の例はMn合金である。利用
できるMn合金としてはFeMn、 NiMn、 PtMn、 RuMn、 RhM
n、 IrMn、 PdMn及びそれらの合金を挙げることができ
る。酸化物系反強磁性材料の例は、NiO、 NiCoO、 Fe2O3、
CoOである。
おける強磁性トンネル接合部21の別の例を示す断面
図、図11は図10の11−11線に沿った断面図、図
12は図10の12−12線に沿った断面図、図13は
図10〜図12に示した磁気抵抗効果素子のトンネル接
合部の動作を説明する図である。図において、図1〜図
3と同一の構成部分は、同一の参照符号を付し、詳細な
説明は省略する。
自由強磁性膜とし、第1の強磁性膜211をピン止め強
磁性膜とする。第2の強磁性膜212の両端部に、磁区
制御膜となる磁区制御膜214、215を形成する。外
部印加磁場Hに対し、第1の強磁性膜211の磁化容易
軸は平行方向、第2の強磁性膜212の磁化容易軸は垂
直方向になるように形成される。この場合、第1の強磁
性膜211は外部磁場Hに対し磁化M1が固定され、第
2の強磁性膜212は外部磁場Hに対し磁化方向M2が
自由に変化し得る。この場合も、図1〜図3に示した実
施例と同様の作用効果を奏する。
トンネル接合部21の別の例を示す断面図、図15は図
14の15−15線に沿った断面図、図16は図14の
16−16線に沿った断面図である。この実施例では、
第2の強磁性膜212の面上に磁化固定膜216を有す
る。従って、第2の強磁性膜212がピン止め強磁性膜
となり、第1の強磁性膜211が自由強磁性膜となる。
図示は省略するけれども、磁化固定膜216は第1の強
磁性膜211に設けてもよい。この場合は、第1の強磁
性膜211がピン止め強磁性膜となり、第2の強磁性膜
212が自由強磁性膜となる。
効果素子のトンネル接合部の動作を説明する図である。
実施例において、印加磁場ゼロのとき、第1の強磁性膜
211の磁化の向きM1が、印加されるべき磁場Hに対
して垂直であり、第2の強磁性膜212の磁化の向きM
2は、印加されるべき磁場Hと平行となる方向に固定さ
れている。この状態で、磁気ディスク等の磁気記録媒体
から磁場Hが印加された場合、磁化固定膜216により
ピン止めされている第2の強磁性膜212の磁化の向き
M2は変化しないが、第1の強磁性膜211の磁化の向
きM1は、例えば角度θだけ変化する。これにより磁気
抵抗効果が生じる。
第1の強磁性膜211の磁化の動きのみで、両強磁性膜
211、212の間に、磁化の向きに関して、相対角度
変化を生じさせることができる。この場合、外部磁場H
に対して、磁化M1の方向が自由に変化する自由強磁性
膜を構成する第1の強磁性膜211の磁化容易軸が垂直
となり、磁化M2の方向が固定化されているピン止め強
磁性膜を構成する第2の強磁性膜212の磁化容易軸が
平行となるように設定するのがよい。こうすることによ
り、自由強磁性膜である第1の強磁性膜211の磁化の
方向が、外部磁場により磁化回転モードで変化するた
め、高いMR感度が得られると共に、スムーズな磁化反
転が行なわれ、磁壁移動に伴うバルクハウゼンノイズの
発生を低減できる。
備えられた絶縁膜210は、高いMR変化率を再現性良
く得ること、及び、磁気ヘッドなどの磁気抵抗効果素子
の構造を簡素化するために、きわめて重要な役割を担っ
ている。特に、絶縁膜210によるバリアポテンシャル
を0.5〜3eVの範囲に設定したので、高いMR変化率
を再現性良く得るとともに、磁気抵抗効果素子の構造を
簡素化できる。次にこの点について述べる。
ピンの向きを保ったまま、第1の強磁性膜211から、
絶縁膜210を介して、第2の強磁性膜212に通り抜
けるとき、電子eの透過率はスピンを考慮して求めた波
動関数を用いて、入射波と透過波の振幅自乗比から求め
られ、そのトンネルコンダクタンスGは、 G=G0′(1+P1′・P2′)COSθ と表される。ここで、 P1′=[(K1 ↑−K1 ↓)/(K1 ↑+K1 ↓)]α1 P2′=[(K2 ↑−K2 ↓)/(K2 ↑+K2 ↓)]α2 G0′:両強磁性層内での電子の波数K1 ↑、K1 ↓、K2
↑、K2 ↓及びバリアポテンシャルの高さで定まる定数 α1、α2:バリアポテンシャルの高さに依存する係数 P1′、P2′:両強磁性膜1、2の有効スピン偏極度 P1、P2:両強磁性膜1、2のスピン偏極度(有効スピ
ン偏極度P1′、P2′の分数部分) である。トンネルコンダクタンスの変化率△G/G
0は、 △G/G0=2・P1′・P2′ となる。トンネルコンダクタンスの変化率△G/G0は
MR変化率と同義である。
に依存する係数α1、α2が小さくなるため、両強磁性膜
の有効スピン偏極度P1′、P2′も小さくなり、MR変
化率が低くなる。逆に、バリアポテンシャルが充分に高
いと、有効スピン偏極度P1′、P2′が、スピン偏極度
P1、P2に近づき、高いMR変化率が得られる。
にあるから、高いMR変化率を、再現性よく得ることが
できる。その理由の一つは、バリアポテンシャルを0.
5〜3eVの範囲に保つことにより、均一性が良好で、ピ
ンホールの非常に少ない絶縁膜210の形成が保証され
るためと推測される。
範囲では、特に好ましい結果が得られた。
範囲では、第1の強磁性膜211と第2の強磁性膜21
2との間に、絶縁膜210を介して、安定した反強磁性
的結合を生じるためと推測される。
いMR変化率を得ることができなくなる。原因は明確で
はないが、3eVを越えるバリアポテンシャルの範囲で
は、トンネル電流が流れなくなるためではないかと推測
される。
くなると、この種の強磁性トンネル接合において期待さ
れる高いMR変化率を得ることができなくなる。その理
由は、絶縁膜210の均一性が劣化し、ピンホールが増
えるためと推測される。
となる範囲において、第1の強磁性膜211と第2の強
磁性膜212との間に、絶縁膜210を介して、安定し
た反強磁性結合を生じさせ得る可能性は、この強磁性ト
ンネル接合を、磁気ヘッドの読み取り用磁気変換素子に
用いる場合に大きな利点をもたらす。
の磁場ー磁気抵抗変化率特性を示す図である。図18に
示すように、反強磁性的結合を生じている場合、磁場ー
磁気抵抗曲線L1、L2が零磁場付近の領域△Hで、M
R変化率が最も高い値を示すようになる。従って、この
強磁性トンネル接合を磁気ヘッドの読み取り用磁気変換
素子として用いた場合、バイアス磁場を印加する必要が
なく、エレメント形状による反磁性と磁区制御膜の効果
で、零磁場付近で直線領域が得られる。このため、磁気
ヘッドの構造を簡素化することができる。
得る絶縁膜210の一例は、大気中で40〜100℃ア
ニールした酸化アルミニウム膜である。かかる酸化アル
ミニウム膜は、金属アルミニウムが局部的に存在しなく
なったため、上下の強磁性膜211−212間でブリッ
ジができなくなり、その結果、高いバリアポテンシャル
を有する極薄絶縁膜210を有する強磁性トンネル接合
が実現できる。
ンド状炭素膜(Diamond-like carbon膜、以下DLC膜と
称する)も、高いバリアポテンシャルを有する極薄の絶
縁膜210を実現するのに有効である。特に、プラズマ
CVD法で作製したDLC膜は、数十Åという非常に薄
い膜厚においても、均一、かつ、ピンホ−ルのない良好
な絶縁膜210が得られる。
E.Spiller等が開示した中間膜のC膜は、MBE法で作
製したアモルファス−C膜であり、プラズマCVD法で
作製したDLC膜とは異なる。具体的には、アモルファ
ス−C膜は炭素同士がネットワ−ク状に結合しているも
のであるが、本発明のDLC膜は炭素と水素がネットワ
−ク状に結合しており、本質的に異なるものである。
積及び絶縁膜210について、実施例を挙げて説明す
る。
ミニウム膜でなる絶縁膜210は、アルミニウム膜を大
気中において60℃、24時間の熱処理を行なって形成
した。強磁性トンネル接合の接合面積は0.25〜25
00μm2とした。
合を、各20個ずつ作製し、各接合面積毎のバリアポテ
ンシャル、MR変化率の平均値及びそのばらつきを調べ
た。また、歩留りについても調べた。次に、強磁性トン
ネル接合の作製方法を具体的に説明する。
10nmのNi80Fe20膜をRFスパッタ法で成膜し、レジス
トフォトリソ、Arイオンミリング、レジスト剥離の微
細加工技術を用いて、0.5〜50μm×0.5mmの矩
形状にパタ−ニングした。
い、第1の強磁性膜211を構成するNi80Fe20膜の表面
酸化膜を逆スパッタにより除去したあと、電子ビーム加
熱式真空蒸着法により、膜厚5nmのアルミニウム膜を成
膜した。
出して、大気中において60℃、24時間の熱処理を行
なった後、リフト・オフ・プロセスを経て、酸化アルミ
ニウム膜でなる絶縁膜210を形成した。
った後、第2の強磁性膜212として膜厚100nmのC
o膜をRFスパッタ法で成膜し、続いて、リフトオフプ
ロセスを経て、第1の強磁性膜211と直角方向に0.
5〜50μm×0.5mmの矩形状パタ−ンを持つ第2の
強磁性膜212を形成した。これにより、接合面積0.
25〜2500μm2の強磁性トンネル接合が得られた。
然酸化アルミニウム膜(成膜後、大気中において24時
間放置)を絶縁膜210としたNi80Fe20/酸化アルミニ
ウム/Co強磁性トンネル接合も同様に作製した。
の強磁性膜211および第2の強磁性膜212の成膜条
件は以下に示す通りである。また、アルミニウム膜は、
到達圧力3×10-5Pa、蒸着速度0.05nm/secで作
製した。
法で磁気抵抗(MR)曲線を測定した。なお、測定時の
最大印加磁場は±1kOeとし、−1kOeの磁場を印加させ
たのち、磁場を徐々に大きくして+1kOeまでかけ、再
び−1kOeに戻した。また、バリアポテンシャルはトン
ネル接合のV−I特性を測定し、直線領域からのずれを
もとめた。
μm2の強磁性トンネル接合の磁気抵抗曲線を示す。印加
磁場を−1kOeより大きくしていくと、+5Oeにおい
て、第1の強磁性膜211の磁化反転がおこり、第1の
強磁性膜211と第2の強磁性膜212のスピンが反平
行になるため、電気抵抗が大きくなる。バリアポテンシ
ャルを求めた結果0.5eVであり、作製した20個のう
ち16個において同様のMR曲線が得られた。MR変化
率は6.6〜8.1%であり、MR変化率の平均値は
7.6%で、変化率ばらつきは±7%であった。
10とした比較例の強磁性トンネル接合においては、バ
リアポテンシャルは0.2eVしか得られなかった。ま
た、4個しかMR曲線が観測できず、MR変化率平均値
は1.5%と低く、平均値ばらつき±88%と非常に大
きかった。種々の接合面積についても同様の評価を行な
った。これらの結果を表1ー1、1ー2に示す。
処理により形成した酸化アルミニウム膜を絶縁膜210
としての用いることにより、0.5〜3eVの高いバリア
ポテンシャルと高いMR変化率が得られ、しかもばらつ
きが少なく、高い歩留まりが得られる。特にバリアポテ
ンシャルが1.5〜2.5eVのとき歩留りが高い。ま
た、30〜250℃の温度範囲で大気中熱処理して得ら
れた酸化アルミニウム膜を絶縁膜210とした強磁性ト
ンネル接合のMR特性を調べた結果、40〜100℃熱
処理した場合に、高いMR変化率が得られ、しかも、ば
らつきが少なく、高い歩留まりが得られることがわかっ
た。
−50%atによって構成し、第2の強磁性膜212はC
oおよび絶縁膜210をDLC膜によって構成した。Co
50Fe50/DLC/Co強磁性トンネル結合を作製し、第1の
強磁性膜211の膜厚は10nm、第2の強磁性膜212
の膜厚は5nmにした。接合面積は0.25〜2500μ
m2とした。第1の強磁性膜211及び第2の強磁性膜2
12は実施例1と同様の方法で作製した。絶縁膜210
>を構成するDLC膜は、プラズマCVD法により、膜
厚5nmになるよう成膜し、リフトオフ法によりパタ−ニ
ングした。DLC膜の成膜条件は以下に示す。
210としたCo50Fe50/酸化アルミニウム/Co強磁性
トンネル接合を作製した。
て、直流4端子法でMR特性を測定して得られた結果を
表2ー1、2ー2に示す。
法で作製したDLC膜を、絶縁膜210として用いるこ
とにより、高いバリアポテンシャルおよび高いMR変化
率が得られ、しかも、ばらつきが少なく、高い歩留まり
が得られることがわかる。例えば、本実施例による接合
面積50×50μm2のサンプルについて、作製した20
個のうち、15個でMR曲線が得られた。MR変化率の
平均値は18.9%で、変化率のばらつきは±12%で
あった。また、実施例1と同様に、バリアポテンシャル
1.5〜2.5eVのとき特に歩留りが高かった。これに
対して、自然酸化アルミニウム膜を絶縁膜210とした
比較例の強磁性トンネル接合においては、バリアポテン
シャルは小さく、5個しかMR曲線が観測できず、MR
変化率平均値は3.3%と低く、ばらつきは±88%と
非常に大きかった。
て述べる。接合面積が小さいほど絶縁膜210のピンホ
ールなどの欠陥が少なくなるため高い歩留まりが得られ
ることは報告されている。表1および表2からわかるよ
うに、本実施例の強磁性トンネル接合において、接合面
積が小さいほどMR変化率は高く、また高い歩留まりが
得られる。特にバリアポテンシャル1.5〜2.5eVの
ときに歩留りが高くなる。
1の強磁性膜211の磁化が反転する磁場が、負の方向
にシフトしていくことがわかった。特に、接合面積が1
0μm2より小さくバリアポテンシャルが1.5〜2.5
eVのとき、零磁場において第1の強磁性膜211と第2
の強磁性膜212の各々の磁化が反平行状態になる。こ
のことは、両磁性膜間に反強磁性的結合力が作用してい
ることを示している。接合面積が10μm2より小さい場
合に高いMR変化率と高い歩留まりが得られたのは、均
一でピンホールの非常に少ない絶縁膜210を用い、か
つ、接合面積を小さくすることにより、両磁性膜間に反
強磁性的結合が生じたためと考えられる。また実施例1
−7及び実施例2−8に示すように、接合面積が10μ
m2以下でもバリアポテンシャルが2.5eVより大きい
と、両磁性膜間で反強磁性的接合は得られず、歩留りも
若干低下する。
図17に示した実施例では、第2の強磁性膜212の上
に磁化固定膜216を備えると共に、第1の強磁性膜2
11の両端に磁区制御膜214、215が設けられてい
る。従って、磁区制御及び磁化固定の両方の作用が得ら
れる。
を、磁気ヘッドへ適用した例について述べる。
である。図において、寸法は誇張されている。図示され
た本発明に係る磁気ヘッドは、スライダ1と、強磁性ト
ンネル接合を利用した磁気変換素子(以下強磁性トンネ
ル接合型磁気変換素子と称する)2と、更に、誘導型磁
気変換素子3とを含む。スライダ1は媒体対向面側にレ
ール部11、12を有し、レール部11、12の表面が
空気ベアリング面13、14を構成している。レール部
11、12は2本に限らない。1〜3本のレール部を有
することがあり、レール部を持たない平面となることも
ある。また、浮上特性改善等のために、空気ベアリング
面(以下ABS面と称する)に種々の幾何学的形状が付
されることもある。何れのタイプのスライダであって
も、本発明の適用が可能である。
2の一方または両者の媒体移動方向a1の端部に設けら
れている。媒体移動方向a1は、媒体が高速移動した時
に動く空気の流出方向と一致する。スライダ1の媒体移
動方向a1の端面には、強磁性トンネル接合型磁気変換
素子2に接続された取り出し電極41、42及び磁気変
換素子3に接続された取り出し電極43、44が設けら
れている。
変換素子部分の拡大断面図である。強磁性トンネル接合
型磁気変換素子2は再生素子であり、誘導型磁気変換素
子3は書き込み素子である。強磁性トンネル接合型磁気
変換素子2及び誘導型磁気変換素子3は、スライダ1を
構成するセラミック基体101の上に設けられた絶縁膜
102の上に積層されている。セラミック基体101
は、通常、Al2O3−TiCで構成される。Al2O3−TiCは導電
性があるので、電気絶縁をする手段として、例えばAl2O
3でなる絶縁膜102が付着されている。セラミック基
体101が高い絶縁性を有する場合は、絶縁膜102は
省略できる。
子2の部分の拡大断面図、図23はその拡大斜視図、図
24は図23の24−24線に沿った断面図である。強
磁性トンネル接合型磁気変換素子2は、強磁性トンネル
接合部21の構造が、図1〜図4に示した磁気抵抗効果
素子と実質的に同じものが用いられている。即ち、強磁
性トンネル接合型磁気変換素子2は、強磁性トンネル接
合部21と、電極膜22、23とを含み、スライダ1の
一部を構成する絶縁支持膜24、25によって支持され
ている。強磁性トンネル接合部21は、絶縁膜210
と、第1の強磁性膜211と、第2の強磁性膜212と
を含んでいる。第1の強磁性膜211と第2の強磁性膜
212とは、絶縁膜210を介して積層されている。磁
区制御膜214、215は、第1の強磁性膜211の両
端部に隣接して設けられている。
と、第2の電極膜23とを含んでいる。第1の電極膜2
2は第1の強磁性膜211に接続され、第2の電極膜2
3は第2の強磁性膜212に接続されている。
膜23は、ABS面13(または14)に露出しないよ
うに設けられている。その具体的手段として、実施例で
は、強磁性トンネル接合部21の先端面をABS面13
(または14)に位置させると共に、第1の電極膜22
及び第2の電極膜23を、強磁性トンネル接合部21の
先端面の位置するABS面13(または14)から、間
隔D1だけ後退させてある。
下部磁気シールド膜51と、上部磁気シールド膜52と
の間において、絶縁支持膜24、25の内部に配置され
ている。下部磁気シールド膜51はセラミック基体10
1に設けられた絶縁膜102の上に付着され、絶縁支持
膜24は下部磁気シールド膜51の上に付着されてい
る。
4)に第1の電極膜22及び第2の電極膜23が露出し
ない構造にすることにより、下部磁気シールド膜51及
び上部磁気シールド膜52と、強磁性トンネル接合型磁
気変換素子2、特に、第1の電極膜22及び第2の電極
膜23との間で、静電破壊が起こりにくくなり、耐電圧
が改善されることが解った。
ける下部磁気シールド膜51及び上部磁気シールド膜5
2と、感磁部となる強磁性トンネル接合部21との間の
間隔を狭くできるため、従来より高密度記録再生が可能
になる。
ル接合型磁気変換素子2と共に、書き込み素子となる誘
導型磁気変換素子3を有する複合型磁気ヘッドが図示さ
れている。誘導型磁気変換素子3は、強磁性トンネル接
合型磁気変換素子2に対する上部磁気シールド膜を兼ね
ている下部磁性膜52、上部磁性膜32、コイル膜3
3、アルミナ等でなるギャップ膜34、ノボラック樹脂
等の有機樹脂で構成された絶縁膜35及びアルミナ等で
なる保護膜36などを有している。下部磁性膜52及び
上部磁性膜32の先端部は微小厚みのギャップ膜34を
隔てて対向する下部ポール部P1及び上部ポール部P2
となっており、下部ポール部P1及び上部ポール部P2
において書き込みを行なう。下部磁性膜52及び上部磁
性膜32は、そのヨーク部が下部ポール部P1及び上部
ポール部P2とは反対側にあるバックギャップ部におい
て、磁気回路を完成するように互いに結合されている。
絶縁膜35の内部には、ヨーク部の結合部のまわりを渦
巻状にまわるように、コイル膜33を形成してある。コ
イル膜33の両端は、取り出し電極43、44に導通さ
れている。コイル膜33の巻数および膜数は任意であ
る。
子の別の実施例を示している。実施例に示された強磁性
トンネル接合型磁気変換素子2は、強磁性トンネル接合
部21の構造が、図10〜図12に示した磁気抵抗効果
素子と実質的に同じものが用いられている。即ち、強磁
性トンネル接合部21は、絶縁膜210と、第1の強磁
性膜211と、第2の強磁性膜212とを含んでいる。
第1の強磁性膜211と第2の強磁性膜212とは、絶
縁膜210を介して積層されている。磁区制御膜21
4、215は、第2の強磁性膜212の両端部に隣接し
て設けられている。
る場合の強磁性トンネル接合型磁気変換素子2の部分の
拡大断面図、図27はその拡大斜視図である。図におい
て、図22〜図24と同一の構成部分は同一の参照符号
を付して説明は省略する。実施例において、強磁性トン
ネル接合型磁気変換素子2は、強磁性トンネル接合部2
1の構造が、図14〜図16に示した磁気抵抗効果素子
と実質的に同じものが用いられている。即ち、強磁性ト
ンネル接合型磁気変換素子2は、強磁性トンネル接合部
21と、電極膜22、23とを含み、スライダ1の一部
を構成する絶縁支持膜24、25によって支持されてい
る。強磁性トンネル接合部21は、絶縁膜210と、第
1の強磁性膜211と、第2の強磁性膜212とを含ん
でいる。第1の強磁性膜211と第2の強磁性膜212
とは、絶縁膜210を介して積層されている。磁区制御
膜214、215は、第1の強磁性膜211の両端部に
隣接して設けられている。磁化固定膜216は第2の強
磁性膜212の上に設けらている。
と、第2の電極膜23とを含んでいる。第1の電極膜2
2は第1の強磁性膜211に接続され、第2の電極膜2
3は磁化固定膜216を介して第2の強磁性膜212に
接続されている。次に、本発明に係る強磁性トンネル接
合を磁気抵抗効果膜に用いた磁気ヘッドに適用した例に
ついて述べる。
酸化アルミナ膜/Co強磁性トンネル接合を磁気抵抗効
果膜に用い磁区制御膜を付与した再生用磁気抵抗型磁気
ヘッドと、付与しない磁気ヘッドを作製し、磁気記録媒
体に書き込まれた記録信号を読み出し、再生特性を比較
した。本実施例では第1の強磁性膜211をNi80Fe
20膜、中間の絶縁膜210を熱酸化アルミナ膜、第2の
強磁性膜212をCo膜とし、各々の膜厚は、Ni80Fe20
膜厚は20nm、酸化アルミナ膜は5nm、Co膜厚は5nm
になるようにした。次に、磁気ヘッドの作製方法につい
て説明する。まず、膜厚30μmのアルミナ絶縁膜10
2が形成されたAl2O3−TiC基板101(図示しない)上
に下部磁気シールド膜51として、DCスパッタ法をも
ちいて膜厚2μmのセンダスト膜を形成し、磁場中熱処
理後フォトリソおよびArイオンエッチングにより所定
の形状にした。
RFスパッタ法を用いて、膜厚80nmのアルミナ膜を形
成し、続いて、第1の電極膜22として、レジストパタ
ーニング後、Ta(10nm)/Cu(100nm)/Ta(1
0nm)膜をDCスパッタ法で成膜し、リフトオフ法で所
定の形状に加工した。
の強磁性膜211、膜厚5nmの熱酸化アルミナ膜でなる
中間の絶縁膜210および膜厚5nmのCo膜でなる第2
の強磁性膜212を積層した強磁性トンネル接合21を
形成した。強磁性トンネル接合の形成にはスパッタ膜と
蒸着膜を大気に晒すことなく連続して形成できるスパッ
タ/電子ビーム蒸着複合成膜装置を用いた。次に、強磁
性トンネル接合の形成について述べる。
ターニング後、第1の強磁性膜211としてNi80Fe
20(膜厚20nm)膜をRFスパッタ法で磁場中成膜によ
り形成した。続いて、大気に晒すことなく連続して電子
ビーム蒸着法により膜厚5nmのアルミニウム膜を成膜し
た。その後、大気中において、60℃、24時間の熱処
理を行った後、リフトオフプロセスを経て、熱酸化アル
ミニウム膜でなる絶縁膜210を形成した。そして、そ
の上に、磁区制御膜214、215を形成する部分を除
いた全面にレジストをパターニングし、不要なNi80Fe20
(20nm)/熱酸化アルミニウム膜(5nm)をArイオンエ
チングにより除去した。そして、磁区制御膜として下地
層Ti10W90(5nm)/硬質強磁性層Co80Pt20(15nm)をD
Cスパッタ法で成膜し、リフトオフ法でレジスト除去を
行い、磁区制御膜214、215を形成した。その後再
びレジストパターニングを行い、Arイオンエッチング
およびレジスト剥離により、第1の強磁性膜211、中
間の絶縁膜210と磁区制御膜214、215を所定の
形状に加工した。
ため、形成すべき強磁性トンネル接合部分21にレジス
トカバーを形成し、RFスパッタ法でアルミナ絶縁層
(層厚50nm)を成膜したのちにレジストをリフトオフ
し、短絡防止用絶縁膜213を形成した。短絡防止用絶
縁膜213は、強磁性トンネル接合部分21を規定の大
きさにして、強磁性トンネル接合部分21以外でトンネ
ル電流が流れないようにすることと、第1の電極膜22
と第2の電極膜23の絶縁、および第1の強磁性膜21
1と第2の強磁性膜212の絶縁をとるために設けた。
そして、第2の強磁性膜212を形成するためレジスト
パターニングを行い、第2の強磁性膜用として膜厚10
nmのCo膜をRFスパッタ法で磁場中成膜し、リフトオ
フ法により第2の強磁性膜212を形成した。このと
き、第2の強磁性膜を成膜する時の印加磁場方向は第1
の強磁性膜の成膜時と直行方向にかけた。
3を形成するためにレジストパターニングを行い、第2
の強磁性膜であるCo膜表面の酸化層を逆スパッタによ
り除去して、最終的な第2の強磁性膜212の膜厚が5
nmになるようにし、続いて、PtMn(15nm)/Ta(10n
m)/Cu(100nm)/Ta(10nm)膜をDCスパッタ法
で連続成膜し、リフトオフ法でPtMn磁化固定層216と
第2の電極膜23を形成した。なお、Ta(10nm)はプ
ロセス時の酸化防止層として形成した。
nmのアルミナ膜を成膜し、上部の絶縁支持膜25を形成
した。次に、上部磁気シールド膜52としてNiFe膜(膜
厚2μm)をDCスパッタ法で作製し、フォトリソおよび
エッチング技術により所定の形状にパターニングした。
最後に、めっき法でCuのパンプ電極膜を作製したの
ち、保護膜として膜厚30μmのアルミナ膜を被せた。
その後、所定の大きさに加工研磨して、ABS面に強磁
性トンネル接合部21を露出させた。以上のようにし
て、接合面積が幅1μm、長さ1μmの再生用磁気抵抗効
果型磁気ヘッドとした。即ち、磁気ヘッドのトラック幅
は1μmおよびMRハイトは1μm、MRシールド間隔は
0.19μmとした。
1の強磁性膜211と絶縁膜210をリフトオフ法で所
定の形状にしたのち、続いて、短絡防止用絶縁膜213
を同様の方法で形成する。それ以外のプロセスは磁区制
御膜を付与する場合とおなじである。
型磁気ヘッドのMR曲線と出力波形を調べた。図28に
磁区制御膜を付与した磁気ヘッドのMR曲線(測定磁
場:±40Oe)を、図29に磁区制御膜を付与しない磁
気ヘッドのMR曲線を示す。図からわかるように、磁区
制御膜を付与した磁気ヘッドはスムーズなMR曲線が得
られるが、磁区制御膜を付与していない磁気ヘッドはヒ
システリシスや階段状の変化がみられる不安定なMR曲
線となった。
の出力波形を示し、図31は磁区制御膜を付与しない磁
気ヘッドの出力波形を示す。図31に示すように磁区制
御膜を付与していない磁気ヘッドはベースラインが変化
したり、出力振幅が変化したりして不安定で、かつ、ノ
イズも大きいのに対し、磁区制御膜を付与することによ
り、図30に示すように安定な出力波形が得られる。
とにより、安定でノイズの無いMR曲線や出力波形が得
られることがわかる。
と従来のAMR磁気ヘッドについて特性を調べた。
Fe/DLC/Co強磁性トンネル接合を磁気抵抗効果膜に用
いた磁気ヘッドを作製し、再生感度および再生出力を調
べ、従来のNiFe膜(AMR)を磁気抵抗効果膜とする磁
気ヘッドと比較した。強磁性トンネル接合の膜構成につ
いては、第1の強磁性膜211はCo−50at%Fe,第
2の強磁性膜212はCo膜、中間の絶縁膜210をD
LC膜とした。このとき、第1の強磁性膜211の膜厚
は15nm、第2の強磁性膜212の膜厚は20nm、中間
の絶縁膜210の膜厚は5nmとした。
る。強磁性トンネル接合は実施例2で示した方法で形成
し、それ以外は実施例3と同じ方法で、上部磁気シール
ド膜まで形成した。下部絶縁支持膜24の膜厚は100
nm、上部の絶縁支持膜25の膜厚は120nmとし、MR
シールド間隔は0.26μmとした。また、強磁性トン
ネル接合型変換素子のトラック幅およびMRハイトは各
々1μmとなるようにした。
ールド膜上に書き込み素子となる誘導型磁気変換素子部
を形成した。以上のようにして、強磁性トンネル接合
を、磁気抵抗効果膜とする磁気ヘッドを作製した。
のため、SALバイアス方式のNiFe膜を磁気抵抗効果膜
とした、トラック幅1μm、MRハイト1μm、MRシ−
ルド間隔0.26μmの磁気ヘッドも作製した。作製方
法を以下に示す。下部の絶縁支持膜24までは本発明の
強磁性トンネル接合を用いた磁気ヘッドと同じである。
下部の絶縁支持膜24を形成した後、まずSAL膜とし
てNi73Fe18Rh9膜(膜厚10nm)、磁気分離膜としてTa
膜(膜厚8nm)、MR膜としてNi80Fe20(膜厚17nm)、
保護膜として膜としてTa膜(膜厚5nm)をDCスパッ
タ法で順次積層し、フォトリソ及びエッチングにより所
定の形状に加工した。その後、磁区制御膜としてTi10W
90(10nm)/Co80Pt20(50nm)、電極膜としてTa(1
0nm)/Cu(100nm)/Ta(10nm)をDCスパッタ
法で成膜し、リフトオフ法によりにより所定の形状に加
工した。その後、上部の絶縁支持膜25の形成からは本
発明の強磁性トンネル接合を用いた磁気ヘッドと同じで
ある。
00Oe、膜厚50nmの磁気記録媒体に信号を記録再生
し、出力波形を調べた。その結果、図32に示すよう
に、強磁性トンネル接合を用いた本発明の磁気ヘッドで
は歪みのない良好な波形が得られた。
と記録密度との関係を示す図である。曲線L3は本発明
に係る強磁性トンネル接合を用いた磁気ヘッドの特性、
曲線L4は比較例として作製した、従来のAMR膜を用
いた磁気ヘッドの特性をそれぞれ示している。すなわ
ち、本発明に係る磁気ヘッドは、従来のAMR膜を用い
た磁気ヘッドより4〜5倍の再生出力が得られた。
下のような効果が得られる。 (a)高いMR変化率を得ることのできる磁気抵抗効果
素子を提供することができる。 (b)ノイズのない安定した出力が得られる磁気抵抗効
果素子を提供することができる。
斜視図である。
ル接合部の動作を説明する図である。
模式的に示す斜視図である。
模式的に示す断面図である。
い、ピン止め強磁性膜に高保磁力の硬質強磁性膜を用い
た場合の磁場−磁気抵抗(MR)変化率特性を示す図で
ある。
共、軟質強磁性膜を用い、ピン止め強磁性膜に隣接して
磁化固定膜を積層した場合の磁場ーMR変化率特性を示
す図である。
性トンネル接合部の別の例を示す断面図である。
る。
る。
トンネル接合部の動作を説明する図である。
合部の別の例を示す断面図である。
る。
る。
トンネル接合部の動作を説明する図である。
気抵抗変化率特性を示す図である。
合の磁気抵抗曲線を示す。
ッドの斜視図である。
分の拡大断面図である。
磁気変換素子部分の拡大断面図である。
斜視図である。
る。
る。
ンネル接合型磁気変換素子の部分の拡大断面図である。
換素子の拡大斜視図である。
を示す図である。
線を示す図である。
を示す図である。
形を示す図である。
気ヘッドの出力波形を示す図である。
ドについて、単位トラック幅当たりの再生出力と記録密
度との関係を、比較して示す図である。
Claims (24)
- 【請求項1】 強磁性トンネル接合部と、磁区制御膜と
を有する磁気抵抗効果素子であって、 前記強磁性トンネル接合部は、絶縁膜と、第1の強磁性
膜と、第2の強磁性膜とを含み、前記第1の強磁性膜と
前記第2の強磁性膜とが前記絶縁膜を介して積層されて
おり、 前記絶縁膜によるバリアポテンシャルは0.5〜3eVの
範囲にあり、 前 記磁区制御膜は、前記第1の強磁性膜及び前記第2の
強磁性膜の何れか一方の両端部に、隣接して設けられて
いる磁気抵抗効果素子。 - 【請求項2】 請求項1に記載された磁気抵抗効果素子
であって、 前記磁区制御膜は、硬質強磁性膜である磁気抵抗効果素
子。 - 【請求項3】 請求項2に記載された磁気抵抗効果素子
であって、 前記硬質強磁性膜は、Co合金である磁気抵抗効果素
子。 - 【請求項4】 請求項3に記載された磁気抵抗効果素子
であって、 前記Co合金は、CoPt、CoPtCr、CoPtTa、CoCrTaまたは
CoPtTaCrから選択された少なくとも一種でなる磁気抵抗
効果素子。 - 【請求項5】 請求項1に記載された磁気抵抗効果素子
であって、 前記磁区制御膜は、反強磁性膜である磁気抵抗効果素
子。 - 【請求項6】 請求項5に記載された磁気抵抗効果素子
であって、 前記反強磁性膜は、金属系反強磁性材料または酸化物系
反強磁性材料の何れかでなる磁気抵抗効果素子。 - 【請求項7】 請求項6に記載された磁気抵抗効果素子
であって、 前記金属系反強磁性材料は、Mn合金である磁気抵抗効
果素子。 - 【請求項8】 請求項7に記載された磁気抵抗効果素子
であって、 前記Mn合金は、FeMn、NiMn、PtMn、RuMn、RhMn、IrM
n、PdMnまたはそれらの合金から選択された少なくとも
一種でなる磁気抵抗効果素子。 - 【請求項9】 請求項6に記載された磁気抵抗効果素子
であって、 前記酸化物系反強磁性材料は、NiO、NiCoOまたはFe2O3
から選択された少なくとも一種でなる磁気抵抗効果素
子。 - 【請求項10】 請求項1に記載された磁気抵抗効果素
子であって、 前記第1の強磁性膜の磁化方向と、前記第2の強磁性膜
の磁化方向とは、外部印加磁界が零の場合に互いに平行
でない磁気抵抗効果素子。 - 【請求項11】 請求項10に記載された磁気抵抗効果
素子であって、 前記第1の強磁性膜の磁化方向と、前記第2の強磁性膜
の磁化方向とは、互いに垂直である磁気抵抗効果素子。 - 【請求項12】 請求項1に記載された磁気抵抗効果素
子であって、 前記第1の強磁性膜の磁化容易軸と、前記第2の強磁性
膜の磁化容易軸とは、互いに平行でない磁気抵抗効果素
子。 - 【請求項13】 請求項12に記載された磁気抵抗効果
素子であって、 前記第1の強磁性膜の磁化容易軸と、前記第2の強磁性
膜の磁化容易軸とは互いに垂直である磁気抵抗効果素
子。 - 【請求項14】 請求項1に記載された磁気抵抗効果素
子であって、 前記第1の強磁性膜及び前記第2の強磁性膜のうち、何
れか一方の強磁性膜の磁化容易軸が外部印加磁界と垂直
であり、もう一方の強磁性膜の磁化容易軸が外部印加磁
界と平行である磁気抵抗効果素子。 - 【請求項15】 請求項1乃至14の何れかに記載され
た磁気抵抗効果素子であって、 前記第1の強磁性膜及び前記第2の強磁性膜のうち、前
記磁区制御膜の設けられていない強磁性膜は、前記磁区
制御膜の設けられている前記強磁性膜よりも高い保磁力
を有する硬質強磁性膜である磁気抵抗効果素子。 - 【請求項16】 請求項14に記載された磁気抵抗効果
素子であって、 前記磁区制御膜を備える強磁性膜の磁化容易軸が外部印
加磁界方向と垂直である磁気抵抗効果素子。 - 【請求項17】 請求項1乃至16の何れかに記載され
た磁気抵抗効果素子であって、 前記第1の強磁性膜及び前記第2の強磁性膜のうち、前
記磁区制御膜の設けられていない強磁性膜は、磁化固定
膜を有する磁気抵抗効果素子。 - 【請求項18】 請求項17に記載された磁気抵抗効果
素子であって、 前記磁化固定膜は、硬質強磁性膜である磁気抵抗効果素
子。 - 【請求項19】 請求項17に記載された磁気抵抗効果
素子であって、 前記磁化固定膜は、反強磁性膜である磁気抵抗効果素
子。 - 【請求項20】 請求項17に記載された磁気抵抗効果
素子であって、 前記第1の強磁性膜及び前記第2の強磁性膜のうち、前
記磁区制御膜を備える強磁性膜の磁化容易軸が外部印加
磁界方向と垂直であり、前記磁化固定膜を備える強磁性
膜の磁化容易軸が外部印加磁界方向と平行である磁気抵
抗効果素子。 - 【請求項21】 請求項1乃至20に記載された磁気抵
抗効果素子であって、 前記第1の強磁性膜および前記第2の強磁性膜は、前記
絶縁膜を介して、反強磁性的結合をしている磁気抵抗効
果素子。 - 【請求項22】 請求項1乃至20に記載された磁気抵
抗効果素子であって、 前記絶縁膜は、成膜後に大気中において40〜100℃
で熱処理して形成した酸化アルミニウム膜である磁気抵
抗効果素子。 - 【請求項23】 請求項1乃至20に記載された磁気抵
抗効果素子であって、 前記絶縁膜は、ダイアモンド状炭素膜である磁気抵抗効
果素子。 - 【請求項24】 磁気抵抗効果素子を有する磁気ヘッド
であって、 前記磁気抵抗効果素子は、請求項1〜24の何れかに記
載されたものでなる磁気ヘッド。
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