JP4403337B2 - トンネル磁気抵抗効果素子、及びトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッド - Google Patents

トンネル磁気抵抗効果素子、及びトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッド Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トンネル障壁層を介して一対の磁性層を積層し、一方の磁性層から他方の磁性層にトンネル電流が流れた際にこのトンネル電流のコンダクタンスが一対の磁性層の磁化の分極率に依存して変化するトンネル磁気抵抗効果素子、並びにトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、一対の磁性層で薄い絶縁膜層を挟持してなる層構造において、一対の磁性層を電極として所定の電圧を印加すると、絶縁膜層に流れるトンネル電流のコンダクタンスが一対の磁性金属層の磁化の相対角度に依存して変化するといった磁気トンネリング効果が報告されている。すなわち、一対の磁性層で薄い絶縁膜層を挟持してなる層構造では、絶縁膜層に流れるトンネル電流に対する磁気抵抗効果を示すのである。
【0003】
この磁気トンネリング効果では、一対の磁性層の磁化の分極率により磁気抵抗比を理論的に算出でき、特に、一対の磁性層にFeを用いた場合には、約40%の磁気抵抗比を期待することができる。
【0004】
このため、一対の磁性層で薄い絶縁膜層を挟持してなる層構造を有するトンネル磁気抵抗効果膜を用いたトンネル磁気抵抗効果素子が磁気抵抗効果素子として注目を集めている。
【0005】
また、磁気ヘッドの分野においては、高密度の磁気記録、主にハードディスクドライブ用の再生ヘッドとして、最近、GMRヘッドが広く用いられているが、今後の更なる高密度化に伴い、更に高感度、高出力のGMRヘッドが必要となる。そして、GMRヘッドとしての現在の主流は、スピンバルプヘッドであるが、更なる高出力化を目的として、上述したトンネル磁気抵抗効果を感磁素子として用いた磁気ヘッド、いわゆるトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッドが注目され、研究が進められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、トンネル磁気抵抗効果素子には、バリア層である絶縁膜層を備えているため電気抵抗が高くなるという問題がある。この問題を解決するため、絶縁膜層の低電気抵抗化を目的として、各種絶縁膜層の製造方法が検討され、低抵抗化が進められている。
【0007】
また、絶縁膜層の厚みを薄くすることにより電気抵抗を下げられるため、絶縁膜層の薄膜化についても検討が進められており、現在1nm以下というかなりの薄膜化がなされている。
【0008】
しかしながら、絶縁膜層を薄膜化する方法には、絶縁膜層の薄膜化に伴い発生する絶縁膜層の欠陥等により磁気抵抗効果が損なわれてしまうという問題がある。そこで、この絶縁膜層の欠陥を少なくするために、この絶縁膜層の平坦度を向上させることが重要となってきた。絶縁膜層の平坦度を向上させるためには、絶縁膜層を積層する界面の平坦度を良くすることが必要であり、単純に、機械加工などで基板面を平坦にすることや、特開平2000−11330号公報に記されているように、基板面にアモルファス金属層を配して、その上に形成する層を平坦に成長させるという方法等が提案されている。
【0009】
しかしながら、上述した方法では、基板面やアモルファス金属層から絶縁膜層までに積層した膜厚が厚い場合には、それらの結晶成長がすすむと、結局絶縁膜層での平坦性が低下してしまう可能性がある。したがって、絶縁膜層を薄膜化することにより絶縁膜層の電気抵抗を低抵抗化させ、且つ良好な磁気抵抗効果を有するトンネル磁気抵抗効果素子を作製する有効な方法は、未だ確立されていないのが実情である。
【0010】
そこで、本発明は上述した従来の実情に鑑みて創案されたものであり、電気抵抗が低く、良好な磁気抵抗効果を有するトンネル磁気抵抗効果素子、及びトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッドを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るトンネル磁気抵抗効果素子は、少なくとも基板上に第1の磁性層と当該第1の磁性層上に形成されたトンネル障壁層と当該トンネル障壁層上に形成された第2の磁性層とを備え、トンネル障壁層を介して第1の磁性層及び第2の磁性層の間にトンネル電流が流れるトンネル磁気抵抗効果素子であって、第1の磁性層は、磁化自由層であり、且つ、第2の磁性層が、磁化固定層である、トップスピンバルブ型の構造を有し、磁化自由層は、一対の強磁性層が非磁性層を介して積層されてなる積層フェリ構造を有し、積層フェリ構造は、トンネル障壁層を平坦化するRu―O層を備え、Ru―O層強磁性層を平坦化することで、強磁性層上に形成されるトンネル障壁層を平坦化する。
【0012】
本発明に係るトンネル磁気抵抗効果素子はトンネル障壁層よりも先にRu―O層が形成されている。そして、Ru―O層上に形成される層は、その粒子の粒径が小さいため、Ru―O層上に形成された層の表面粗さは、良好なものとなる。すなわち、Ru―O層上に形成された層の表面の平坦性は、他の各層表面の平坦性と比較して良好な状態に形成される。したがって、このRu―O層よりも上層に形成されているトンネル障壁層表面の平坦性は、良好な状態とされている。これにより、トンネル障壁層の厚みを薄く形成した場合においても、トンネル障壁層における欠陥や亀裂等の発生が防止されるため、これらに起因する磁気抵抗効果の損失が防止される。
【0013】
本発明に係るトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、基板上に一対の磁気シールド層と当該一対の磁気シールド層に当該一対の磁気シールド層間に当該一対の磁気シールド層にそれぞれ当接して形成された一対の磁気ギャップ層と当該一対の磁気ギャップ層間に形成されたトンネル磁気抵抗効果素子を備えてなり、トンネル磁気抵抗効果素子は、少なくとも基板上に第1の磁性層と当該第1の磁性層上に形成されたトンネル障壁層と当該トンネル障壁層上に形成された第2の磁性層とを備えトンネル障壁層を介して第1の磁性層及び第2の磁性層の間にトンネル電流が流れるトンネル磁気抵抗効果素子であって、第1の磁性層は、磁化自由層であり、且つ、第2の磁性層が、磁化固定層である、トップスピンバルブ型の構造を有し、磁化自由層は、一対の強磁性層が非磁性層を介して積層されてなる積層フェリ構造を有し、積層フェリ構造は、トンネル障壁層を平坦化するRu―O層を備え、Ru―O層強磁性層を平坦化することで、強磁性層上に形成されるトンネル障壁層を平坦化する。
【0014】
本発明に係るトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、上述した本発明に係るトンネル磁気抵抗効果素子を備えるため、トンネル障壁層表面の平坦性が良好な状態とされている。したがって、トンネル障壁層の厚みを薄く形成してトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッドを構成した場合においても、トンネル障壁層における欠陥や亀裂等の発生が防止されるため、これらに起因する磁気抵抗効果の損失が防止されるトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッドとされる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各部材の寸法比率が実際と同じであるとは限らない。
【0017】
まず、本発明を適用したトンネル磁気抵抗効果素子(以下、TMR素子と呼ぶ。)について説明する。図1に、本発明を適用したTMR素子の第1の実施例の要部斜視図を示す。
【0018】
TMR素子1は、基板2と、基板2上に形成された磁化固定層である第1の磁性金属層3と、この第1の磁性金属層3上に形成されたトンネル障壁層4と、このトンネル障壁層4上に形成された磁化自由層である第2の磁性金属層5とを備えて構成される。すなわち、このTMR素子1は、磁化固定層である第1の磁性金属層3と磁化自由層である第2の磁性金属層5とがトンネル障壁層4を介して積層されたいわゆるボトムスピンバルブ型の構造を有している。また、このTMR素子1では、第1の磁性金属層3と第2の磁性金属層5とがトンネル障壁層4を介して積層されることによりトンネル接合が形成されている。
【0019】
基板2は、TMR素子1を形成する際の台座となるものであり、例えば、Siからなる平滑な主面を有する基板等が用いられる。
【0020】
第1の磁性金属層3は、いわゆる磁化固定層あり、このTMR素子1では、基板2上に形成された反強磁性6層と、当該反強磁性層6上に形成された第1の強磁性層7と、当該第1の強磁性層7上に形成された金属酸化物層8と、当該金属酸化物層8上に形成された第2の強磁性層9との4層により構成されており、反強磁性層6によって強磁性層の磁化の方向が特定の方向に固定されている。ここで、金属酸化物層8は、第1の強磁性層7が酸化されて形成された金属酸化物の層を表す。
【0021】
このTMR素子1では、後述するトンネル障壁層4よりも下側、すなわちトンネル障壁層4と基板との間に、第1の強磁性層7が酸化された金属酸化物層8を備えてなる。
【0022】
金属酸化物層上に形成される層は、その粒子の粒径が小さいため、金属酸化物層8上に形成された層の表面粗さは、良好なものとなる。すなわち、金属酸化物層8上に形成された層の表面の平坦性は、他の各層表面の平坦性と比較して良好な状態に形成される。
【0023】
そこで、金属酸化物層8を形成することにより、当該金属酸化物層8上に形成される各層の表面の平坦性を良好なものとすることができる。すなわち、当該金属酸化物層8上に形成された層の表面の平坦性は、第1の強磁性層7の表面の平坦性よりも良好とされているため、当該金属酸化物層8上に形成される各層の表面の平坦性も、当該金属酸化物層8を形成しない場合に比べて良好なものとされる。すなわち、このTMR素子1では、磁化固定層である第1の磁性金属層3が、当該第1の磁性金属層3が備える第1の強磁性層7が酸化された金属酸化物層8を有することにより、後述するトンネル障壁層4を積層する直下の層、すなわち、第2の強磁性層9の平坦性が良好な状態とされる。更に、平坦性が良好な状態とされた第2の強磁性層9上に積層されるトンネル障壁層4もまた、その平坦性が良好なものとされる。そして、このTMR素子1は、トンネル障壁層4の平坦性が良好なものとされることにより、トンネル障壁層4の厚みを薄く形成した場合においても、トンネル障壁層4における欠陥や亀裂等の発生が防止されるため、これらに起因する磁気抵抗効果の損失が防止され、良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子1とされる。すなわち、このTMR素子1は、トンネル障壁層4よりも下層、すなわち基板2側に金属酸化物層8を備えているため、トンネル障壁層4を薄膜化することによるトンネル障壁層4の低電気抵抗化が可能とされ、且つ良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子1とされている。
【0024】
また、上記において、金属酸化物層8は、トンネル障壁層4に近い位置に形成されることが好ましい。具体的には、トンネル障壁層4から、2,3層程度下層に形成されることが好ましい。これは、金属酸化物層8が、トンネル障壁層4からあまり離れた位置に配された場合、基板2とトンネル障壁層4との間の厚みが厚くなり、トンネル障壁層を平坦性を向上させる効果が小さくなる虞があるからである。
【0025】
また、上記においては、金属酸化物層8が第1の強磁性層7が酸化された層とされているが、金属酸化物層は、これに限定されることなく、第1の強磁性層7と関連のない異なる種類の金属酸化物層であっても良い。
【0026】
上記において、反強磁性層6としては、交換結合磁界及びブロッキング温度の高い反強磁性材料を用いることができ、このような材料としては、例えばPtMnや、他のMn系不規則合金、Mn系規則合金、NiO、α−Fe23等の酸化物反強磁性材料、或いは硬磁性材料等を用いることができる。また、第1の強磁性層7及び第2の強磁性層9としては、良好な軟磁気特性を示す磁性材料を用いることができ、このような材料としては、例えばCoFe、NiFeや、Co、Ni、Feのうちの少なくとも一種を含む合金、又はそれらの積層体等を用いることができる。この場合、金属酸化物層としては、CoFe−O等を用いることができる。ここで、CoFe−Oは、CoFeの酸化物を表す。
【0027】
トンネル障壁層4は、第1の磁性金属層3と第2の磁性金属層4との間に流れる電流、いわゆるトンネル電流のトンネル障壁となるものである。トンネル障壁層4は、絶縁材料からなり、例えばAl−O等を用いることができる。ここで、Al−Oは、Alの酸化物等を表す。また、絶縁材料としては、Al−Oに限定されることはなく、他の金属の酸化物、炭化物、窒化物等を用いることもできる。
【0028】
第2の磁性金属層5は、いわゆる磁化自由層であり、外部磁界に応じて磁化方向が変化する。第2の磁性金属層5としては、良好な軟磁気特性を示す磁性材料を用いることができ、このような材料としては、例えばCoFe、NiFeや、Co、Ni、Feのうちの少なくとも一種を含む合金、又はそれらの積層体等を用いることができる。
【0029】
以上のように構成されたTMR素子1では、第1の磁性金属層3と第2の磁性金属層5との間に所定の電圧が印加されると、図1中矢印Aで示す方向、すなわち第2の磁性金属層5から第1の磁性金属層3の方向に、トンネル障壁層4を介してトンネル電流が流れる。
【0030】
ここで、このTMR素子1では、第1の磁性金属層3が磁化方向を変化させない磁化固定層となり、第2の磁性金属層5が外部磁界に対して自由に磁化方向を変化させる磁化自由層とされている。また、第1の強磁性層7は、反強磁性材料からなる反強磁性層6との間で交換結合しており、図1中矢印Bで示す方向に磁化方向が固定されている。一方、磁化自由層である第2の磁性金属層5は、図1中矢印Cで示す方向に一軸異方性を有するように形成されている。したがって、外部磁界が印加されない状態では、磁化固定層の磁化方向と磁化自由層の磁化方向とは、略直交することとなる。
【0031】
そして、TMR素子1は、この状態で図1中の矢印Dで示す方向に外部磁界が印加されると、磁化自由層である第2の磁性金属層5の磁化方向が変化して、磁化固定層である第1の磁性金属層3の磁化方向と所定の角度を有することとなる。
【0032】
更に、このTMR素子1では、磁化自由層の磁化方向と磁化固定層の磁化方向との成す角度に応じて、トンネル電流に対する電気抵抗が変化する。すなわち、磁化固定層の磁化方向と磁化自由層の磁化方向とが同一となるとき、すなわち順平行となるとき、電気抵抗は、最も小さくなり、逆に磁化固定層の磁化方向と磁化自由層の磁化方向とが互いに反対となるとき、すなわち反平行となるとき、電気抵抗は、最も大きくなる。また、両層の磁化方向の成す角度がこの中間の角度であるときには、電気抵抗は、磁化方向の成す角度に正弦的に変化する。
【0033】
したがって、このTMR素子1では、TMR素子1にトンネル電流を流し、このときの電気抵抗の変化を測定することにより外部磁界の変化を検出することができる。
【0034】
以上のように構成されたTMR素子1では、基板2とトンネル障壁層4との間に金属酸化物層が介在しているため、トンネル障壁層4を積層する直下の層、すなわち、第2の強磁性層9の平坦性が良好な状態とされている。これにより、平坦性が良好な状態にある第2の強磁性層9上に積層されたトンネル障壁層4もまた、その平坦性が良好なものとされている。そのため、このTMR素子1は、トンネル障壁層4の平坦性が良好なものとされることにより、トンネル障壁層4の厚みを薄く形成した場合においてもトンネル障壁層4における欠陥や亀裂等の発生が防止される。したがって、これらに起因する磁気抵抗効果の損失が防止され、良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子1とされている。すなわち、このTMR素子1は、トンネル障壁層4よりも下層、すなわち基板2とトンネル障壁層4との間に金属酸化物層が介在しているため、トンネル障壁層4を薄膜化することによるトンネル障壁層4の低電気抵抗化が可能とされ、且つ良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子1とされている。
【0035】
図2に、本発明を適用したTMR素子の第2の実施例を示す。ただし、図2においては、TMR素子を正面側から見た要部断面図を示す。
【0036】
第2の実施例のTMR素子11は、基板と、基板上に形成された磁化固定層である第1の磁性金属層と、当該第1の磁性金属層上に形成されたトンネル障壁層と、当該トンネル障壁層上に形成された磁化自由層である第2の磁性金属層とを備えて構成される。このTMR素子11は、磁化固定層である第1の磁性金属層と磁化自由層である第2の磁性金属層とが、トンネル障壁層を介して積層されたいわゆるボトムスピンバルブ型の構造を有している。
【0037】
基板2は、TMR素子11を形成する際の台座となるものであり、Si層12からなる平滑な主面を有する基板により形成されている。
第1の磁性金属層は、磁化固定層であり、PtMn層13と、当該PtMn層13上に形成されたCoFe層14と、当該CoFe層14上に形成されたCoFe−O層15と、当該CoFe−O層15上に形成されたCoFe層16とにより構成される。
【0038】
トンネル障壁層は、Al−O層17からなり、第1の磁性金属層3上に形成されている。ここでAl−Oは、Alの酸化物を表す。
【0039】
そして、トンネル障壁層であるAl−O層17上には、磁化自由層である第2の磁性金属層が形成されており、当該第2の磁性金属層は、トンネル障壁層であるAl−O層17に当接して形成されたCoFe層18と、当該CoFe層18上に形成されたNiFe層19との2層により構成される。ここで、CoFe層18は、補助自由層であり、スピン分極率を増加させる働きをする。このように磁化自由層を2層構造とすることにより、TMR素子11の磁気抵抗比を増大させることができる。
【0040】
以上のように構成された第2の実施例のTMR素子11は、第1の実施例のTMR素子1と同様に、トンネル障壁層であるAl−O層17よりも下側、すなわち、Si層12とAl−O層17との間に、第1の強磁性層であるCoFe層14が酸化された金属酸化物層であるCoFe−O層15が介在している。そして、当該CoFe−O層15上に形成される各層の表面の平坦性が、良好なものとされる。したがって、このTMR素子11では、Si層12とAl−O層17との間に第1の強磁性層であるCoFe層14が酸化された金属酸化物層、すなわちCoFe−O層15が介在することにより、第1の強磁性層であるCoFe層14が酸化されたトンネル障壁層であるAl−O層17を積層する直下の層、すなわち、第2の強磁性層であるCoFe層16の平坦性が良好な状態とされる。更に、平坦性が良好な状態にある第2の強磁性層であるCoFe層16上に積層されるトンネル障壁層であるAl−O層17もまた、その平坦性が良好なものとされる。そして、このTMR素子11は、トンネル障壁層の平坦性が良好なものとされることにより、トンネル障壁層の厚みを薄く形成した場合においても、トンネル障壁層における欠陥や亀裂等の発生が防止されるため、これらに起因する磁気抵抗効果の損失が防止され、良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子とされる。すなわち、このTMR素子は、トンネル障壁層よりも下層、すなわちSi層12とAl−O層17との間に、第1の強磁性層であるCoFe層14が酸化された金属酸化物層であるCoFe−O層15が介在しているため、トンネル障壁層を薄膜化することによるトンネル障壁層の低電気抵抗化が可能とされ、且つ良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子とされている。
【0041】
図3に、本発明を適用したTMR素子の第3の実施例を示す。ただし、図3においては、TMR素子を正面側から見た要部断面図を示す。
【0042】
第3の実施例のTMR素子21は、基板と、基板上に形成された磁化固定層である第1の磁性金属層と、当該第1の磁性金属層上に形成されたトンネル障壁層と、当該トンネル障壁層上に形成された磁化自由層である第2の磁性金属層2とを備えて構成される。このTMR素子21は、磁化固定層である第1の磁性金属層と磁化自由層である第2の磁性金属層2とが、トンネル障壁層を介して積層されたいわゆるボトムスピンバルブ型の構造を有している。
【0043】
基板は、TMR素子21を形成する際の台座となるものであり、Si層22からなる平滑な主面を有する基板により形成されている。
第1の磁性金属層は、磁化固定層であり、PtMn層23と、当該PtMn層23上に形成されたCoFe層24と、当該CoFe層24上に形成されたRu層25と、当該Ru層25上に形成されたRu−O層26と、当該Ru−O層26上に形成されたCoFe層27とにより構成される。
【0044】
このTMR21素子が、第2の実施例のTMR素子11と異なる点は、磁化固定層である第1の磁性金属層が積層フェリ構造を有することである。すなわち、このTMR素子21では、第1の磁性金属層が備えるCoFe層24と、当該CoFe層24上に形成されたRu層25と、当該Ru層25上に形成されたRu−O層26と、当該Ru−O層26上に形成されたCoFe層27とにより積層フェリ構造を構成している。磁化固定層を積層フェリ構造とすることにより、磁化固定層における磁気モーメントが低くなり、磁化自由層にかかる反磁界が小さくなる。積層フェリ構造は、上述したように2層の強磁性層の中間に非磁性層が形成された構造とされる。そして、この非磁性層の厚みを調整することにより、2層の強磁性層は、それぞれの磁化方向が反平行となるように結合する。なお、積層フェリ構造の中間に形成される非磁性層としては、Ruの他に、Rh、Ir、Re等も用いることができる。
【0045】
トンネル障壁層は、Al−O層28からなり、第1の磁性金属層上に形成されている。ここでAl−Oは、Alの酸化物を表す。
【0046】
そして、トンネル障壁層であるAl−O層28上には、磁化自由層である第2の磁性金属層が形成されており、当該第2の磁性金属層は、トンネル障壁層に当接して形成されたCoFe層29と、当該CoFe層29上に形成されたNiFe層30との2層により構成される。ここで、CoFe層29は、補助自由層であり、スピン分極率を増加させる働きをする。このように磁化自由層を2層構造とすることにより、TMR素子21の磁気抵抗比を増大させることができる。
【0047】
以上のように構成された第3の実施例のTMR素子21は、第1の実施例のTMR素子1と同様に、トンネル障壁層よりも下側、すなわち、基板であるSi層22とAl−O層28との間に積層フェリ構造中に備えられたRu25が酸化された金属酸化物層であるRu−O層26を備えてなる。そして、当該Ru−O層26上に形成される各層の表面の平坦性が良好なものとされる。したがって、このTMR素子21では、基板であるSi層22とAl−O層28との間に当該第1の磁性金属層が備える非磁性層であるRu層25が酸化された金属酸化物層、すなわちRu−O層26を有することにより、トンネル障壁層であるAl−O層28を積層する直下の層、すなわち、第2の強磁性層であるCoFe層27の平坦性が良好な状態とされる。更に、平坦性が良好な状態にある第2の強磁性層であるCoFe層27上に積層されるトンネル障壁層であるAl−O層28もまた、その平坦性が良好なものとされる。そして、このTMR素子21は、トンネル障壁層の平坦性が良好なものとされることにより、トンネル障壁層の厚みを薄く形成した場合においてもトンネル障壁層における欠陥や亀裂等の発生が防止されるため、これらに起因する磁気抵抗効果の損失が防止され、良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子とされる。すなわち、このTMR素子21は、トンネル障壁層よりも下層、すなわち基板とトンネル障壁層との間に金属酸化物層を備えているため、トンネル障壁層を薄膜化することによるトンネル障壁層の低電気抵抗化が可能とされ、且つ良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子とされている。
【0048】
図4に、本発明を適用したTMR素子の第4の実施例を示す。ただし、図4においては、TMR素子を正面側から見た要部断面図を示す。
【0049】
第4の実施例のTMR素子31は、第1の実施例のTMR素子1と反対に、磁化自由層である第1の磁性金属層と、磁化固定層である第2の磁性金属層とがトンネル障壁層を介して積層されたいわゆるトップスピンバルブ型の構造を有する。
【0050】
基板は、TMR素子31を形成する際の台座となるものであり、Si層32からなる平滑な主面を有する基板により形成されている。
第1の磁性金属層は、磁化自由層であり、NiFe層33と、当該NiFe層33上に形成されたNiFe−O34層と、当該NiFe−O層34上に形成されたNiFe層35と、当該NiFe層35上に形成された補助自由層であるCoFe層36とにより構成されている。
【0051】
トンネル障壁層は、Al−O層37からなり、第1の磁性金属層上に形成されている。ここでAl−Oは、Alの酸化物を表す。
【0052】
そして、トンネル障壁層であるAl−O層37上には、磁化固定層である第2の磁性金属層が形成されており、当該第2の磁性金属層は、トンネル障壁層であるAl−O層37に当接して形成されたCoFe層38と、当該CoFe層38上に形成されたPtMn層39との2層により構成される。ここで、CoFe層38は、強磁性層であり、反強磁性層であるPtMn層39により磁化の方向が固定されている。
【0053】
以上のように構成された第4の実施例のTMR素子31は、第1の実施例のTMR素子1とは逆に、トンネル障壁層であるAl−O層37よりも下側、すなわち、基板であるSi層32とAl−O層37との間に金属酸化物層であるNiFe−O層34を備えてなる。そして、当該NiFe−O層34上に形成される各層の表面の平坦性が、良好なものとされる。したがって、このTMR素子31では、基板であるSi層32とAl−O層37との間に金属酸化物層を備えることにより、トンネル障壁層を積層する直下の層、すなわち、補助自由層であるCoFe層36の平坦性が良好な状態とされる。更に、平坦性が良好な状態にある補助自由層であるCoFe層36上に積層されるトンネル障壁層もまた、その平坦性が良好なものとされる。そして、このTMR素子31は、トンネル障壁層の平坦性が良好なものとされることにより、トンネル障壁層の厚みを薄く形成した場合においてもトンネル障壁層における欠陥や亀裂等の発生が防止されるため、これらに起因する磁気抵抗効果の損失が防止され、良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子とされる。すなわち、このTMR素子31は、トンネル障壁層よりも下層、すなわち基板とトンネル障壁層との間に金属酸化物層を備えているため、トンネル障壁層を薄膜化することによるトンネル障壁層の低電気抵抗化が可能とされ、且つ良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子とされている。
【0054】
図5に、本発明を適用したTMR素子トンネル磁気抵抗効果素子の第5の実施例を示す。ただし、図5においては、TMR素子を正面側から見た要部断面図を示す。
【0055】
第5の実施例のTMR素子41は、第4の実施例のTMR素子31と同様に、磁化自由層である第1の磁性金属層と、磁化固定層である第2の磁性金属層とがトンネル障壁層を介して積層されたいわゆるトップスピンバルブ型の構造を有する。
【0056】
基板は、TMR素子41を形成する際の台座となるものであり、Si層42からなる平滑な主面を有する基板により形成されている。
第1の磁性金属層は、磁化自由層であり、NiFe層43と、当該NiFe層43上に形成されたRu層44と、当該Ru層44上に形成されたRu−O層45と、当該Ru−O層45上に形成されたNiFe層46と、当該NiFe層46上に形成された補助自由層であるCoFe層47とにより構成されている。
【0057】
このTMR素子41が、第4の実施例のTMR素子31と異なる点は、磁化自由層が積層フェリ構造を有することである。すなわち、このTMR素子では、第1の磁性金属層が備えるNiFe層43と、当該NiFe層43上に形成されたRu層44と、当該Ru層44上に形成されたRu−O層45と、当該Ru−O層45上に形成されたNiFe層46とにより積層フェリ構造を構成している。磁化自由層を積層フェリ構造とすることにより、磁化自由層における磁気モーメントが低くなり、磁化固定層にかかる反磁界が小さくなる。積層フェリ構造は、上記のように2層の強磁性層の中間に非磁性層が形成された構造とされる。そして、この非磁性層の厚みを調製することにより、2層の強磁性層は、それぞれの磁化方向が反平行となるように結合する。なお、積層フェリ構造の中間に形成される非磁性層としては、Ruの他に、Rh、Ir、Re等も用いることができる。
【0058】
トンネル障壁層は、Al−O層48からなり、第1の磁性金属層上に形成されている。ここでAl−Oは、Alの酸化物を表す。
【0059】
そして、トンネル障壁層であるAl−O層48上には、磁化固定層である第2の磁性金属層が形成されており、当該第2の磁性金属層は、トンネル障壁層であるAl−O層48に当接して形成されたCoFe層49と、当該CoFe層49上に形成されたPtMn層50との2層により構成される。ここで、CoFe層49は、強磁性層であり、反強磁性層であるPtMn層50により磁化の方向が固定されている。
【0060】
以上のように構成された第5の実施例のTMR素子41は、第1の実施例のTMR素子1とは逆に、トンネル障壁層であるAl−O層48よりも下側、すなわ基板であるSi層42とAl−O層48との間に積層フェリ構造中に備えられたRu層44が酸化された金属酸化物層であるRu−O層45を備えてなる。そして、当該Ru−O層45上に形成される各層の表面の平坦性が、良好なものとされる。したがって、このTMR素子41では、基板であるSi層42とAl−O層48との間に金属酸化物層、すなわちRu−O層45を備えることにより、トンネル障壁層であるAl−O層48を積層する直下の層、すなわち、補助自由層であるCoFe層49の平坦性が良好な状態とされる。更に、平坦性が良好な状態にある補助自由層であるCoFe層49上に積層されるトンネル障壁層であるAl−O層48もまた、その平坦性が良好なものとされる。そして、このTMR素子41は、トンネル障壁層の平坦性が良好なものとされることにより、トンネル障壁層の厚みを薄く形成した場合においてもトンネル障壁層における欠陥や亀裂等の発生が防止されるため、これらに起因する磁気抵抗効果の損失が防止され、良好な磁気抵抗効果を有するトンネル磁気抵抗効果素子とされる。すなわち、このTMR素子41は、トンネル障壁層よりも下層、すなわち基板とトンネル障壁層との間に金属酸化物層を備えているため、トンネル障壁層を薄膜化することによるトンネル障壁層の低電気抵抗化が可能とされ、且つ良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子とされている。
【0061】
以上のように構成されたTMR素子は、次のようにして作製することができる。ここでは、上述した第1の実施例のTMR素子1を例にとって説明する。
【0062】
このTMR素子1は、スパッタリング等の通常の薄膜形成工程によって作製することができる。
【0063】
TMR素子1は、上述した各層が数nm程度の非常に薄い層厚で形成され、積層構造とされてなる。したがって、磁気抵抗効果素子は、例えば超高真空スパッタ装置を用いて成膜することが望ましい。これにより、磁気抵抗効果素子は、各層の層質を良好なものとすることができるとともに、各層の層厚を精度良く形成することができる。
【0064】
ここで、超高真空スパッタ装置の一例を図6に示す。この超高真空スパッタ装置51は、基板準備室52と、逆スパッタによって基板クリーニングを行う予備プロセス室53と、スパッタリングによる成膜を減圧下にて行うことが可能な成膜室54との3室構造とされている。なお、成膜室54におけるバックグラウンドの到達真空度は、1.0×10-9Pa程度まで可能とされている。
【0065】
この超高真空スパッタ装置51は、スパッタリングカソード55として、誘導結合RFプラズマ支援マグネトロンカソードを使用しており、ターゲット上にRFコイルが配されている。これにより、低ガス圧下においても放電が可能となっており、高いイオン化率が得られるようになされている。
【0066】
また、超高真空スパッタ装置51の成膜室54には、スパッタリングカソード55が複数設けられている。そして、上述したTMR素子を製造する際には、これら各スパッタリングカソード55に、例えば、Pt(40原子%)−Mn(60原子%)ターゲット、Co(90原子%)−Fe(10原子%)ターゲット、Al23ターゲットをそれぞれ配して用いる。
【0067】
TMR素子1を製造する際には、基板2を成膜室54内に配置し、真空ポンプ(図示せず。)によって成膜室54内を十分に減圧し、例えば到達真空圧力を1×10-6Pa程度にする。ここで、成膜室54内を十分に減圧することにより、TMR素子1を作製する際に、TMR素子1の各層内に酸素などの不純物元素が含まれることを防止することができ、耐食性に優れた高品質のTMR素子1を作製することができる。そして、成膜室54内の真空度を調節しながらスパッタガスとしてArガスを導入する。そして、基板2が配置された陽極板(図示せず。)に正の電圧を印加し、例えばPt−Mnターゲットが配設されたスパッタリングカソード55に負の電圧を印加する。これにより、Pt−MnターゲットにArを衝突させてPtMnをスパッタし、基板2上に例えば膜厚20nmのPtMnからなる反強磁性層を積層する。
【0068】
次に、陽極板に正の電圧を印加し、例えばCo−Feターゲットが配設されたスパッタリングカソード55に負の電圧を印加する。これにより、反強磁性層上に例えば膜厚2nmのCo−Fe合金からなる第1の強磁性層を積層する。
【0069】
次に、第1の強磁性層を形成した基板2を超高真空スパッタ装置51から取り出し、大気中において所定の時間放置して第1の強磁性層の表面を酸化させることにより、例えば膜厚1nmのCoFe−O層からなる金属酸化物層8を形成する。
【0070】
次に、金属酸化物層8であるCoFe−O層を形成した基板2を再度成膜室54に配置し、上記と同様に超高真空スパッタ装置51の成膜室54内を減圧し、Arガスを導入する。そして、陽極板に正の電圧を印加し、例えばCo−Feターゲットが配設されたスパッタリングカソード55に負の電圧を印加する。これにより、金属酸化物層上に例えば膜厚2.2nmのCo−Fe合金からなる第2の強磁性層を積層する。以上により、磁化固定層である第1の強磁性層3を形成することができる。
【0071】
次に、例えばAl23ターゲットが配設されたスパッタリングカソード55にRF電力を印加する。これにより、第2の強磁性層上に、例えば膜厚1nmのAl23からなるトンネル障壁層4を積層する。
【0072】
次に、陽極板に正の電圧を印加し、例えばCo−Feターゲットが配設されたスパッタリングカソード55に負の電圧を印加する。これにより、トンネル障壁層4上に例えば膜厚2.5nmのCo−Fe合金からなる磁化自由層である第2の強磁性層強磁性層5を積層する。
【0073】
最後に、反強磁性層6の規則化熱処理を、例えば265℃の温度において4時間保持することにより施す。
【0074】
TMR素子1は、以上のようにして基板2上に各層を順次成膜することにより作製することができる。
【0075】
上記において、金属酸化物層8を形成する方法としては、大気中に暴露する方法を挙げたが、第1の強磁性層7の表面を大気圧以下の酸素中に暴露することにより、第1の強磁性層7を酸化させて形成することもできる。また、上記の方法の他に、電子サイクロトン波共鳴(Electron cycloton resonance:ECR)や、誘導結合型プラズマ(Inductively coupled plasma:ICP)を含むプラズマ酸化法等も用いることができる。
【0076】
また、トンネル障壁層4として、Al−O層、すなわち、Alの酸化物を形成する際には、第2の強磁性層9上に直接Al23膜等をスパッタリング等により形成する方法を挙げたが、第2の強磁性層9上にAl膜をスパッタリング等により成膜した後に、酸素プラズマ等を用いて酸化させても良い。
【0077】
上述したTMR素子1の製造方法では、トンネル障壁層4を形成するに先立って、金属酸化物層8を形成することを特徴とする。すなわち、このTMR素子1の製造方法においては、金属酸化物層8を基板2とトンネル障壁層4との間に形成する。
【0078】
金属酸化物は、その層上に形成される層の粒子の粒径が小さくなるため、金属酸化物層上に層を形成した際、その表面粗さが良好なものとなる。すなわち、上記の場合、金属酸化物層8を形成することにより、当該金属酸化物層8上に形成される第2の強磁性層9の表面の平坦性を良好なものとすることができる。そして、表面の平坦性が良好な状態とされた第2の強磁性層9上にトンネル障壁層4を形成することにより、トンネル障壁層4表面の平坦性もまた良好な状態とすることができる。
【0079】
そして、トンネル障壁層4の平坦性を良好なものとすることにより、トンネル障壁層4の厚みを薄く形成した場合においてもトンネル障壁層4における欠陥や亀裂等の発生が防止することができ、これらに起因する磁気抵抗効果の損失を防止することができ、良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子1を作製することができる。
【0080】
したがって、上述したTMR素子1の製造方法によれば、トンネル障壁層4を形成するに先立ち、トンネル障壁層4よりも下層、すなわち基板2とトンネル障壁層4との間に金属酸化物層8を形成することにより、トンネル障壁層4を薄く形成した場合においても良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子1を作製することが可能となる。すなわち、このTMR素子1の製造方法によれば、トンネル障壁層4を薄膜化することによるトンネル障壁層4の低電気抵抗化を可能とすることができ、且つ良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子1を作製することが可能となる。
【0081】
次に、本発明のTMR素子が適用されるトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッド(以下、TMRヘッドと呼ぶ。)について説明する。図7は本発明を適用したTMRヘッド61の要部斜視図である。また、図8は、本発明が適用されたTMRヘッド61を摺動面側から見た要部側面図である。また、以下の説明では、TMRヘッド61を構成する各部材並びにその材料、大きさ、膜厚及び成膜方法等について具体的な例を挙げるが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0082】
TMRヘッド61は、例えばAl23−TiC(アルチック)等の硬質の非磁性材料により略平板状に形成された基板62と、この基板62上に形成された下層磁気シールド層63と、この下層磁気シールド層63上に形成された下層磁気ギャップ層64と、この下層磁気ギャップ層64上に形成されたTMR素子65と、下層磁気ギャップ層64上においてTMR素子65を両側から挟み込むように形成された絶縁膜層66と、この絶縁膜層66上にその高さをTMR素子65と略同一に形成された永久磁石層67と、下層磁気ギャップ層64上において絶縁膜層66及び永久磁石層67を挟み込むように、且つその高さをTMR素子65と略同一に形成された絶縁膜層68と、TMR素子65、及び永久磁石層67、並びに絶縁膜層68上に形成された上層磁気ギャップ層69と、この上層磁気ギャップ層69上に形成された上層磁気シールド層70と、下層磁気シールド層63上の後段に形成された接続端子71とを備えて構成される。
【0083】
TMRヘッド61は、上述した各層及び各部材が薄膜状に形成されて基板62上に積層されてなる。また、TMRヘッド61は、記録媒体の摺動面で上述した各層及び各部材が外方に臨み、略同一面を構成している。
【0084】
下層磁気シールド層63は、TMRヘッド61における記録媒体の摺動面から所定の幅で臨むように基板62上に形成されている。下層磁気シールド層63は、例えばFe−Al−Si合金(センダスト)、Fe−Si−Ru−Ga合金、Fe−Ta−N合金等の高い耐熱性を有し、且つ良好な軟磁気特性及び導電性を示す金属磁性層が1〜5μm程度の厚みで形成されている。
【0085】
下層磁気ギャップ層64は、例えばCu、Ta等の導電性を有する非磁性材料により下層磁気シールド層63上に10〜100μm程度の厚みで形成されている。
【0086】
TMR素子65は、下層磁気ギャップ層64の直上に位置して、略矩形形状に形成される。このTMR素子65は、上述したTMR素子1と同等の膜構造とされており、図1に示すように、第1の磁性金属層3と、当該第1の磁性金属層3上に形成されたトンネル障壁層4と、当該トンネル障壁層4上に形成された第2の磁性金属層5とがこの順で積層されている。そして、第1の磁性金属層3は、磁化固定層であり、反強磁性層と、第1の強磁性層と、金属酸化物層と、第2の強磁性層とがこの順で積層して構成されている。また、第2の磁性金属層5は、磁化自由層である。すなわち、このTMR素子65は、いわゆるボトムスピンバルブ型TMR素子とされている。
【0087】
そして、このTMR素子65では、トンネル障壁層4よりも下側、すなわち、基板2とトンネル障壁層4との間に第1の強磁性層7が酸化された金属酸化物層8を備えてなる。これにより、このTMR素子65は、トンネル障壁層4の平坦性が良好なものとされることにより、トンネル障壁層4の厚みを薄く形成した場合においてもトンネル障壁層4における欠陥や亀裂等の発生が防止されるため、これらに起因する磁気抵抗効果の損失が防止され、良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子とされる。すなわち、このTMR素子65は、トンネル障壁層4よりも下層、すなわち基板2とトンネル障壁層4との間に金属酸化物層8を備えているため、トンネル障壁層4を薄膜化することによるトンネル障壁層4の低電気抵抗化が可能とされ、且つ良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子とされている。
【0088】
したがって、このTMRヘッド61は、上述したTMR素子65を備えるため、TMR素子の電気抵抗が低抵抗化され、且つ良好な磁気抵抗効果を有するTMRヘッドとされている。
【0089】
永久磁石層67は、磁化自由層の磁化安定化を図るために設けるものであり、下層磁気ギャップ層64上において絶縁膜層66、永久磁石層67の順でTMR素子65を挟み込むように形成されている。絶縁膜層66としては、例えばAl23等を用いることができ、また、永久磁石層67としては、例えばCoCrPt等を用いることができる。
【0090】
絶縁膜層68は、TMR素子65を周囲から絶縁するためのものであり、例えばAl23等の絶縁材料により形成される。また、図7及び図8に示した絶縁膜層68は、一部分であり、図示した部分以外に、図中の隙間部分にも絶縁膜層が形成されているがここでは図示を省略している。
【0091】
上層磁気ギャップ層69は、例えばCu、Ta等の導電性を有する非磁性材料によりTMR素子65、及び永久磁石層67、並びに絶縁膜層上68に10〜100μm程度の厚みで形成されている。
【0092】
上層磁気シールド層70は、TMRヘッド61における記録媒体の摺動面から所定の幅で臨むように上層磁気ギャップ層69上に形成されている。上層磁気シールド層70は、上述した下層磁気シールド層63と同様に、良好な軟磁気特性を示す金属磁性材料からなり、スパッタリング等の成膜方法により1〜5μm程度の厚みで形成されている。
【0093】
TMRヘッド61において、下層磁気シールド層63と、上層磁気シールド層70とは、磁気記録媒体からの信号磁界のうち、再生対象外の磁界がTMRヘッド61に引き込まれないように機能する。すなわち、TMRヘッド61においては、下層磁気シールド層63と上層磁気シールド層70とがTMR素子65の上下に配されているために、磁気記録媒体からの信号磁界のうち、再生対象外の磁界が下層磁気シールド層63と上層磁気シールド層70とに導かれ、再生対象の信号磁界だけがTMR素子65に引き込まれる。
【0094】
したがって、TMRヘッド61においては、下層磁気シールド層63と上層磁気シールド層70との間隔が、いわゆる再生ギャップ長とされている。
【0095】
接続端子は、下層磁気シールド層63と上層磁気シールド層70とを電気的に接続可能とするものであり、導電材料により下層磁気シールド層63の所定の端部に形成される。
【0096】
以上のように構成されたTMRヘッド61では、下層磁気シールド層63と、下層磁気ギャップ64層と、上層磁気シールド層70と、上層磁気ギャップ層69とが導電性を有する材料により形成されており、下層磁気シールド層63と下層磁気ギャップ層64とが、第1の磁性金属層側の電極として機能し、上層磁気シールド層70と上層磁気ギャップ層69とが第2の磁性金属層側の電極として機能する。
【0097】
このTMRヘッド61では、磁気記録媒体から信号磁界が印加されると、磁化自由層である第2の磁性金属層5の磁化方向が変化して、磁化固定層である第1の磁性金属層3の磁化方向と所定の角度を有することとなる。
【0098】
また、下層磁気シールド層64と上層磁気シールド層70との間には所定の電圧が印加されており、トンネル障壁層4を介して第2の磁性金属層5から第1の磁性金属層3の方向にトンネル電流が流れる。そして、磁化自由層である第2の磁性金属層5の磁化方向と磁化固定層である第1の磁性金属層3の磁化方向との成す角度に応じて、トンネル電流に対する電気抵抗が変化する。したがって、このTMRヘッド61では、この電気抵抗の変化を測定することにより、磁気記録媒体からの信号磁界を検出することができる。
【0099】
以上説明したように、本発明に係るTMRヘッド61は、感磁部として上述した磁気抵抗効果素子であるTMR素子65を備える。したがって、本発明に係るTMRヘッド61は、上述した本発明に係るTMR素子65を備えることにより、TMR素子の電気抵抗が低抵抗化され、且つ良好な磁気抵抗効果を有するTMRヘッドとされている。
【0100】
このようなTMRヘッドは、次のようにして作製することができる。
【0101】
上述したTMRヘッド61を製造する際は、まず、図9に示すように、AlTiC系、TiO-CaO系等の一般に薄膜磁気ヘッドを作製する際に使用される基板81を用意する。そして、この基板81の一主面上に、下層磁気シールド層63となる磁性金属膜であるセンダスト膜82と、下層磁気ギャップ層64となる非磁性金属膜であるTa膜83とを順次成膜する。このとき、非磁性金属膜83は、TMR素子65の下地層となることから、高度に平坦化されていることが望ましい。
【0102】
次に、図10に示すように、Ta膜83上に、第1の磁性金属層3となるPtMn膜84、CoFe膜85、CoFe−O膜86及びCoFe膜87を順次成膜する。また、PtMn膜84には、CoFe膜85との間で、磁気記録媒体から印加される信号磁界に対して略平行な方向に交換結合するように配向処理が施される。また、CoFe−O膜86は、CoFe膜を酸素プラズマにより酸化させることにより形成される。
【0103】
そして、CoFe膜87上に、トンネル障壁層4となるAl23膜88を成膜する。このAl23膜88は、CoFe膜87上にAl膜を成膜し、このAl膜を酸素プラズマにより酸化させることにより形成される。この場合、Al23膜88は、例えば、酸化時間、ガス圧力、酸素分圧及び高周波投入電力等を適宜調節することにより、酸化が制御される。また、Al23膜88の形成方法としては、CoFe膜87上に直接Al23膜をスパッタリング等により成膜する手法であっても良い。
【0104】
次に、図11に示すように、Al23膜88上に、第2の磁性金属層5となるNiFe膜89を成膜する。また、NiFe膜89には、磁気記録媒体から印加される信号磁界に対して略垂直な方向に一軸異方性を有するように配向処理が施される。
【0105】
次に、図12に示すように、NiFe膜89上に、レジスト材料を塗布してレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィ技術によりこのレジスト膜を所定の形状にパターンニングすることによって、レジストパターン90を形成する。具体的に、レジストパターン90は、レジスト膜をNiFe膜89上の絶縁膜層66と永久磁石層67とが形成される領域以外に残存するようなパターンニングを施すことにより形成される。
【0106】
次に、図13に示すように、このレジストパターン90をマスクとして、イオンミリング等の手法により、レジストパターン90が形成されていない領域のTMR膜を、この下部に形成されたTa膜83が露出するまでエッチングして除去する。これにより、Ta膜83上において、絶縁膜層66と永久磁石層67とが形成される部分以外の領域に、上記において形成した各膜及びレジストパターン90が残存した状態となる。
【0107】
次に、図14に示すように、レジストパターン90を残存させた状態で、上層絶縁膜層66となる非磁性膜であるAl23膜91をスパッタリング等により成膜する。
【0108】
次に、図15に示すように、Al23膜91を形成した上に更に永久磁石層67となる磁性金属膜であるCoCrPt膜92をスパッタリング等により成膜する。
【0109】
次に、図16に示すように、有機溶剤等によりレジストパターン90とともに、このレジストパターン90上に残存するAl23膜91及びCoCrPt膜92を剥離して除去する。これにより、Ta膜83上の所定の位置に、絶縁膜層66及び永久磁石層67が形成されることとなる。
【0110】
次に、図17に示すように、NiFe膜89及びCoCrPt膜92上に、レジスト材料を塗布してレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィ技術によりこのレジスト膜を所定の形状にパターニングすることによって、レジストパターン93を形成する。具体的に、レジストパターン93は、NiFe膜89上のTMR素子65となる領域及び磁性金属膜92上に残存するようなパターンニングを施すことにより形成される。
【0111】
次に、図18に示すように、このレジストパターン93をマスクとして、イオンミリング等の手法により、レジストパターン93が形成されていない領域を、この下部に形成された非磁性金属膜83が露出するまでエッチングして除去する。これにより、下層磁気シールド層63上に、略矩形形状とされたTMR素子65、絶縁膜層66及び永久磁石層67が形成されることとなる。
【0112】
次に、図19に示すように、レジストパターン93を残存させた状態で、永久磁石層67と略々同じ高さとなるように絶縁膜層68となる非磁性膜であるAl23膜94をスパッタリング等により成膜する。
【0113】
次に、図20に示すように、有機溶剤等によりレジストパターン93とともに、このレジストパターン93上に残存するAl23膜4を剥離して除去する。これにより、TMR素子65、絶縁膜層66及び永久磁石層67が絶縁膜層68中に埋め込まれたようなかたちとなる。
【0114】
次に、図21に示すように、レジストパターン93が除去された主面上に、上層磁気ギャップ層69となる非磁性膜であるTa膜95をスパッタリング等により成膜する。
【0115】
次に、図22に示すように、Ta95の主面上に上層磁気シールド層70となる磁性金属膜であるセンダスト膜96を所定の形状に形成する。この上層磁気シールド層70の形成方法としては、上層磁気シールド層70となる磁性金属膜を所定の形状とされたレジストパターンを用いた鍍金法により形成する手法、或いは、上層磁気シールド層70となる磁性金属膜をスパッタリング等により成膜した後に所定の形状にエッチングすることにより形成する手法等が挙げられる。
【0116】
そして、フォトリソグラフィ技術及びエッチングによって、絶縁膜層68及び下層磁気シールド層63を所定の形状(図示せず。)とする。また、下層磁気シールド層63の端部上の絶縁膜68に、下層磁気シールド層63が露出するような開口部を形成し、この開口部内に導電材料を充填することにより、下層磁気シールド層68上に接続端子71を形成する。これにより、下層磁気シールド層63を上層磁気シールド層70とともに電気的に接続可能とする。
【0117】
以上のようにして、図7に示すようなTMRヘッド61が作製される。
【0118】
上述したTMRヘッドの製造方法によれば、TMR素子65を作製する際に、前述したTMR素子1の製造方法を用いている。すなわち、トンネル障壁層4を形成するに先立ち、トンネル障壁層よりも下層、すなわち基板とトンネル障壁層との間に金属酸化物層を形成する。これにより、トンネル障壁層を薄く形成した場合においても良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子を作製することが可能となる。
【0119】
したがって、このTMRヘッドの製造方法によれば、トンネル障壁層を薄膜化することによるトンネル障壁層の低電気抵抗化を可能とすることができ、且つ良好な磁気抵抗効果を有するTMRヘッドを作製することが可能となる。
【0120】
以上、本発明に係るTMR素子及びTMRヘッドについて詳細に説明したが、本発明の効果を確認するために、以下のような二つのサンプルを作製し、表面の平坦性を測定した。
【0121】
サンプル1
サンプル1は、金属酸化物層を設けずに下記構成の各層を積層して作製した。サンプル1の構成は、ガラス基板/Ta(5nm)/NiFe(2nm)/PtMn(20nm)/CoFe(1.1nm)/Ru(0.8nm)/CoFe(2.2nm)とした。すなわち、サンプル1は、従来のボトムスピンバルブ型TMR素子において、基板から第1の磁性金属層までを形成した状態のものである。
【0122】
サンプル2
サンプル2は、金属酸化物層を設けて下記構成の各層を積層して作製した。サンプル2の構成は、ガラス基板/Ta(5nm)/NiFe(2nm)/PtMn(20nm)/CoFe(1.1nm)/Ru/Ru−O(Ru層との合計で0.8nm)/CoFe(2.2nm)とした。すなわち、サンプル2は、本発明を適用したボトムスピンバルブ型TMR素子において、基板から第1の磁性金属層までを形成した状態のものである。
【0123】
<特性評価>
上記において作製したサンプル1及びサンプル2について、最上層であるCoFe層(2.2nm)の表面粗度を原子間力顕微鏡(Atomic force microscope:AFM)ナノスコープIIIa/D−3000(商品名、デジタルインストルメンツ社製)を用いて測定した。その結果を図23及び図24に示す。図23及び図24においては、横軸に測定長を、縦軸にCoFe層の表面粗度を示した。図23及び図24から、Ru層の表面を酸化させた金属酸化物層Ru−Oを備えるサンプル2の表面粗度は、サンプル1の表面粗さと比較してピークの高さが全体的に低くなっていることが判る。このことより、金属酸化物層を備えるサンプル2の表面粗度がサンプル1と比較して大きく改善されていることが判る。これは、上記において詳説したように、当該金属酸化物層上に形成された層の結晶粒径が小さくなることによると考えられる。このことより、TMR素子を作製する際においても、トンネル障壁層よりも下層に金属酸化物層を設けることにより、トンネル障壁層を薄膜化した場合においても、平坦性の良いトンネル障壁層を形成することが可能でありることが判る。すなわち、トンネル障壁層の薄膜化が可能となるため、トンネル障壁層の低電気抵抗化が可能となるといえる。そして、トンネル障壁層を薄膜化した際の平坦性の悪さに起因した欠陥や亀裂等の発生が防止できるため、これらに起因する磁気抵抗効果の損失が防止され、良好な磁気抵抗効果を有するTMR素子を構成することができるといえる。
【0124】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明に係るトンネル磁気抵抗効果素子は、
基板とトンネル障壁層との間に金属酸化物層を備える。すなわち、このトンネル磁気抵抗効果素子では、トンネル障壁層よりも先に金属酸化物層が形成されている。これにより、この金属酸化物層よりも上層に形成されているトンネル障壁層表面の平坦性は、良好な状態とされ、トンネル障壁層の厚みを薄く形成した場合においても、トンネル障壁層における欠陥や亀裂等の発生が防止される。そして、これらに起因する磁気抵抗効果の損失が防止されるため、トンネル障壁層の薄膜化が可能とされ、トンネル障壁層の低抵抗化が可能とされる。
【0125】
したがって、本発明によれば、電気抵抗が低く、良好な磁気抵抗効果を有するトンネル磁気抵抗効果素子を提供することが可能となる。
【0126】
本発明に係るトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、上述した本発明に係るトンネル磁気抵抗効果素子を備える。
【0127】
したがって、本発明によれば、電気抵抗が低く、良好な磁気抵抗効果を有するトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッドを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施例のTMR素子の要部斜視図である。
【図2】第2の実施例のTMR素子を正面側から見た要部断面図である。
【図3】第3の実施例のTMR素子を正面側から見た要部断面図である。
【図4】第4の実施例のTMR素子を正面側から見た要部断面図である。
【図5】第5の実施例のTMR素子を正面側から見た要部断面図である。
【図6】超高真空スパッタ装置の一構成例を示した図である。
【図7】本発明を適用したTMRヘッドの要部斜視図である。
【図8】本発明を適用したTMRヘッドを摺動面側から見た要部側面図である。
【図9】本発明を適用したTMRヘッドの製造方法を説明する図であり、基板の一主面上に、センダスト膜と、Ta膜とを成膜した状態を示す要部側面図である。
【図10】同製造方法を説明する図であり、Ta膜上にPtMn膜、CoFe膜、CoFe−O膜、CoFe膜及びAl23膜を成膜した状態を示す要部側面図である。
【図11】同製造方法を説明する図であり、Al23膜上にNiFe膜を成膜した状態を示す要部側面図である。
【図12】同製造方法を説明する図であり、Al23膜上にレジストパターンを形成した状態を示す要部側面図である。
【図13】同製造方法を説明する図であり、レジストパターンをマスクとして、レジストパターンが形成されていない領域のTMR膜をTa膜が露出するまでエッチングして除去した状態を示す要部側面図である。
【図14】同製造方法を説明する図であり、レジストパターンを残存させた状態で、Al23膜を成膜した状態を示す要部側面図である。
【図15】同製造方法を説明する図であり、Al23膜上にCoCrPt膜を成膜した状態を示す要部側面図である。
【図16】同製造方法を説明する図であり、レジストパターンとともに、レジストパターン上に残存するAl23膜及びCoCrPt膜を剥離して除去した状態を示す要部側面図である。
【図17】同製造方法を説明する図であり、NiFe膜及びCoCrPt膜上にレジストパターンを形成した状態を示す要部側面図である。
【図18】同製造方法を説明する図であり、レジストパターンをマスクとして、レジストパターンが形成されていない領域を、エッチングして除去した状態を示す要部側面図である。
【図19】同製造方法を説明する図であり、レジストパターンを残存させた状態で、永久磁石層67と略々同じ高さとなるようにAl23膜を成膜した状態を示す要部側面図である。
【図20】同製造方法を説明する図であり、レジストパターンとともに、レジストパターン上に残存するAl23膜を剥離して除去した状態を示す要部側面図である。
【図21】同製造方法を説明する図であり、レジストパターンが除去された主面上にTa膜を成膜した状態を示す要部側面図である。
【図22】同製造方法を説明する図であり、Ta膜の主面上にセンダスト膜を成膜した状態を示す要部側面図である。
【図23】サンプル1の最上層であるCoFe層の表面粗度を示した特性図である。
【図24】サンプル2の最上層であるCoFe層の表面粗度を示した特性図である。
【符号の説明】
1 トンネル磁気抵抗効果素子、2 基板、3 第1の磁性金属層、4 トンネル障壁層、5 第2の磁性金属層、6 反強磁性層、7 第1の強磁性層、8金属酸化物層、9 第2の強磁性層

Claims (2)

  1. 少なくとも、基板上に第1の磁性層と、当該第1の磁性層上に形成されたトンネル障壁層と、当該トンネル障壁層上に形成された第2の磁性層とを備え、上記トンネル障壁層を介して上記第1の磁性層及び上記第2の磁性層の間にトンネル電流が流れるトンネル磁気抵抗効果素子であって、
    上記第1の磁性層は、磁化自由層であり、且つ、上記第2の磁性層が、磁化固定層である、トップスピンバルブ型の構造を有し、
    上記磁化自由層は、一対の強磁性層が非磁性層を介して積層されてなる積層フェリ構造を有し、
    上記積層フェリ構造は、上記トンネル障壁層を平坦化するRu―O層を備え、
    上記Ru―O層は、上記強磁性層を平坦化することで、強磁性層上に形成されるトンネル障壁層を平坦化するトンネル磁気抵抗効果素子。
  2. 基板上に一対の磁気シールド層と、当該一対の磁気シールド層に当該一対の磁気シールド層間に当該一対の磁気シールド層にそれぞれ当接して形成された一対の磁気ギャップ層と、当該一対の磁気ギャップ層間に形成されたトンネル磁気抵抗効果素子と、当該一対の磁気シールド層に接続して形成された一対のリード電極とを備えてなり、
    上記トンネル磁気抵抗効果素子は、少なくとも、基板上に第1の磁性層と、当該第1の磁性層上に形成されたトンネル障壁層と、当該トンネル障壁層上に形成された第2の磁性層とを備え、上記トンネル障壁層を介して上記第1の磁性層及び上記第2の磁性層の間にトンネル電流が流れるトンネル磁気抵抗効果素子であって、
    上記第1の磁性層は、磁化自由層であり、且つ、上記第2の磁性層が、磁化固定層である、トップスピンバルブ型の構造を有し、
    上記磁化自由層は、一対の強磁性層が非磁性層を介して積層されてなる積層フェリ構造を有し、
    上記積層フェリ構造は、上記トンネル障壁層を平坦化するRu―O層を備え、
    上記Ru―O層は、上記強磁性層を平坦化することで、強磁性層上に形成されるトンネル障壁層を平坦化するトンネル磁気抵抗効果型磁気ヘッド。
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