JP3512706B2 - 高い比弾性率を有するガラス及びガラスセラミックス並びにそれらの使用 - Google Patents

高い比弾性率を有するガラス及びガラスセラミックス並びにそれらの使用

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い比弾性率を有
するガラス及びガラスセラミック並びにそれらの使用又
は用途に関する。
【0002】
【従来の技術】ガラスは、その表面が平坦でありかつ表
面粗さが殆どないために、金属、例えばアルミニウム又
は金属合金に比べてデータ記録媒体(ハードディスク)
の基板としての使用に有利である。最も均一な材料であ
るガラスを磨いて、非常に滑らかな表面をガラス体に与
えることが可能である。また、ガラス基板の製造プロセ
スは対応するアルミニウム基板の製造方法に比べて短時
間であり、また経済的である。
【0003】ハードディスクに用いる基板ガラスは、大
きな化学的、熱的及び機械的応力に耐えられるものでな
ければならない。即ち、それはコーティング(例えばカ
ソードスパッタリング)の際に、高温に曝され、急冷さ
れるからである。ハードディスクが使用されるときに高
い機械的応力が生じ、例えば製造中に締付力が回転軸に
かかり、また現在使用されている3,500〜10,0
00rpmの高い回転速度で作動中に、遠心力及び歳差
運動により付加的な応力がかかる。特に厚さ0.25〜
3.00mmの薄いガラスは、予備応力付加処理(プレ
ストレス処理)された場合にのみこれらの応力に耐える
ことができる。熱的プレストレス処理により機械的強度
を増大させることができる最小厚さは3mmであるた
め、上記の用途に用いる場合、ガラスは、例えばイオン
交換により、化学的にプレストレス処理されねばならな
い。裂けや割れを引き起こしかねない、例えば、乱暴に
輸送したときにかかるG−衝撃負荷は、プレストレス処
理により対抗させることができる。さらに破壊強度を高
めることもできる。
【0004】特にアルカリ金属イオンを用いてガラスの
イオン交換を行なうと、種々の目的が達成される。その
うち最も重要な2つは、(a)傾斜材料を製造するため
に光学値もしくはデータを変えること、及び(b)曲げ
力に対するガラスの感受性を減少させるために、ガラス
材料の表面領域に圧縮応力を生じさせることである。傾
斜ガラス(a)においては、加工プロセスが困難になっ
たり及び/又は費用がかかりすぎないようにするため
に、所定の屈折率プロファイルを導入することが望まし
い。応力複屈折(光線が通常の光線と異常な光線に分か
れること)の問題を抑えるために、ガラスに応力がかか
らないようにするべきである。下記のようにAg+イオ
ンと組み合わされたときにのみ応力複屈折の発生を防止
できるアルカリ金属イオンが、この用途においてイオン
交換のために用いられる。この場合、Na+イオンとA
+イオンのイオン半径が殆ど等しいためにイオン交換
の際に応力が生じないので、Na+イオンをAg+イオン
と交換することが好ましい。
【0005】対照的に、表面圧縮応力をイオン交換によ
り生じさせる場合、互いのイオン半径が著しく異なるイ
オン同士を互いに交換することが好ましい。しかしなが
ら、この場合、ガラスがイオン交換中にも変化しない三
次元基本構造を有し、それによって、例えば、塩浴中の
イオンが、ガラスから拡散して出たイオンの位置に、直
接ガラス内に拡散して入る場合にのみ、プレストレス処
理が可能となる。従って、イオン交換はガラス転移温度
g以下において行なわれる。さもなくば三次元構造が
緩み、そしてプレストレスが生じないであろうからであ
る。ガラスから拡散して出たイオンよりもイオン半径が
大きいイオンがガラス内に拡散して入ると、圧縮応力が
生じる。典型的にはNa+イオンがK+イオンと交換され
るが、しかしながらLi+イオンがNa+イオンにより、
又はK+イオンがCs+イオンにより交換されると、化学
的プレストレスが生じる。アルミノ珪酸塩ガラスはイオ
ン交換に特に適していることが知られている。その中で
アルカリイオンが特に移動し易く、また弛緩(緩和)に
対して安定な開放三次元構造は、四面体構造のSi位置
へのAlの挿入及びアルカリイオンによる関連した電荷
補償により調製される。
【0006】将来ハードディスクの回転速度が高まる方
向にあることより、ハードディスク基板を製造するため
に用いられるガラスの機械的安定性に対する要求は増大
している。ハードディスク市場における開発は、データ
記録媒体の寸法を従来と同一に保ちながら又は減少させ
ながら、データ記録媒体の容量をより大きくし、かつデ
ータ変換速度をより速くする方向に向かっている。デー
タ変換速度をより速くするためには、ドライブ装置に取
り付けられたハードディスクの回転速度をより速くし、
また読み取り装置のフライト高さを低くする必要があ
る。同一寸法のディスクでは、ハードディスク上のトラ
ック密度を高くするか、あるいはディスクドライブ装置
中のハードディスクの数を増加させることにより、容量
を増大することができる。しかしながら、回転速度を高
めると、ハードディスクの外周端縁部に強い揺れ(フラ
ッター)や脈動が生じるため、所望されるトラック密度
をより高くすることや、またトラックスペースを減少さ
せること及び狭い幅でハードディスクを重ねることがで
きなくなる。また、このフラッター運動のために、読み
取り/書き込みスピードを高めまた情報密度を増加させ
るために求められるような、ハードディスク上の読み取
り−書き込みヘッドのフライト高さもしくはグライド高
さを低くすることができなくなる。
【0007】従って、ハードディスクには高い形状安定
性が求められる。即ち、ハードディスクは外周端縁部に
おいて可能な限り小さい時間依存性の揺れを有するべき
である。最大ディスク揺れWは、以下の式(I)により
与えられる。 W={[ρ×rA 4]/[E×d2]}f(ν) ・・・ (I) ここで、 ρ=密度、 rA=ハードディスクの外径、 E=弾性率、 d=ハードディスクの厚さ、 f(ν)=幾何学的固有パラメータ。
【0008】ハードディスクの主な仕様又は必要条件
は、上記式より導かれる。幾何学的形状寸法が同一の場
合(即ち、d及びrAが一定の場合)、最大ディスク揺
れWは、弾性率Eが大きくなるほど及び/又は密度ρが
小さくなるほど小さくなる。通常、これらのパラメータ
の比率E/ρは、比弾性率を表わしている。それは可能
な限り高い値をとるべきである。しかしながら、公知の
イオン交換可能なアルカリアルミノ珪酸塩ガラスは、特
に高弾性率を有しておらず、典型的にはE<90GPa
である。特に最近の環境にやさしい光学ガラスは、一般
に高弾性率のガラスとして知られている。弾性率を得る
ために、それらはいわゆる典型的なガラス形成剤とし
て、例えばLa2O、Ta25を含有するか又は高い割
合のTiO2を含有しているが、しかしながらそれはイ
オン交換できるような所望の三次元構造をほとんど有し
ておらず、また構造変性剤であるためにガラスが早期に
結晶化する傾向がある。
【0009】ハードディスク基板に適したガラスの他の
必要条件としてさらに熱膨張係数があり、それは応力を
避けるためにドライブ装置のクランプ材料及びスピンド
ル材料の熱膨張係数(α20/300≧12×10-6/K)と
違いすぎないことが必要である。とりわけ、ガラスセラ
ミック材料は、化学的プレストレス処理なしでも破壊靭
性を有するため、前記用途として興味のある材料であ
る。しかしながら、現在使用されているガラスセラミッ
クにおいては、微結晶サイズのために表面粗さは高いも
のに止まっている。表面が充分に平滑でないと、特に読
み取り−書き込み用ヘッドのフライト高さもしくは滑走
高さでは、ディスク上に読み取り−書き込み用ヘッドが
配置された際にディスクの機械的損傷が生じ、それによ
って記録データが破損される危険性がある。
【0010】前記の用途に用いられる公知のガラス及び
ガラスセラミックは、主にSiO2を多く含有するアル
ミノ珪酸塩ガラス又はリチウムアルミノ珪酸塩ガラスセ
ラミックであるが、これらは高いSiO2含有量と高い
Al23含有量のため溶融特性に劣っており、またヤン
グ率もかなり低い。SiO2高含有の例としては、62
〜75質量%のSiO2を含有量するドイツ特許出願公
開DE4206268A1号に開示された情報記録媒体
用基板のための化学的に改良されたガラス組成物が挙げ
られる。また、SiO2を65〜83質量%含有し、α
−石英及び珪酸リチウムを含有するヨーロッパ特許出願
公開EP626353A1号に開示された磁気ディスク
基板用のガラスセラミックも挙げられる。公知のガラス
及びガラスセラミック並びに他の材料は、ハードディス
ク用、特に高速回転数に設定されるハードディスク用材
料に求められる全ての要求を満たしていないというより
か、むしろ多岐に渡る不利益を有する。
【0011】種々の公報には、屈折率勾配を生じさせる
ためのイオン交換可能なガラスが開示されている。ヨー
ロッパ特許出願公開EP0287345A1号は、屈折
率勾配を有するレンズに用いるガラスを開示しており、
このガラスはLi2Oの他に比較的高いNa2O及び/又
はK2O含有量を有する。任意成分や他の成分、例えば
0〜10質量%のMgOが存在するため、これらのガラ
スは幾分低いヤング率、特に低い比ヤング率を有するの
でハードディスク基板の作製には適していない。さらに
23及びAl23が単なる任意成分として存在してい
る。特公昭59−41934号及び特開昭63−649
41号に開示されたLi2O及びNa2Oを含有する収光
レンズ用ガラスについても同様のことがいえ、単一のア
ルミノホウケイ酸塩ガラスは開示されていない。また、
特開昭63−170247号に開示されている屈折率勾
配を与えるためのイオン交換可能なガラスにおいても、
Al23(最高で7モル%)及びB23は任意成分であ
る。ガラスの実施例は開示されていないが、ガラスの密
度を極めて高くする成分、例えばBaOが存在するた
め、比較的広範な組成範囲において、それはイオン交換
性の他に高い比弾性率を有することとなる。またこの公
報は形状安定性(高い比弾性率)を与えるためのガラス
の組成の選択について教示しておらず、また同時に破壊
強度(高いプレストレス)を与えるためのガラスの組成
の選択についても教示していない。開示されたガラスは
ハードディスク基板として使用するには適していない。
【0012】特開平4−198041号には結晶化ガラ
スが開示されており、それは建築材料に用いられる。こ
れらのガラスはMgO及びZnOと一緒に高含有量のガ
ラス形成剤を含有している。ZnO成分はMgO成分よ
りも多くなければならないが、これは溶融及び粘度特性
にとって不利である。
【0013】ハードディスク基板にとって高ヤング率が
重要であることは、ヨーロッパ特許公開第858974
A1号で強調されている。そこに記載されたガラス群
は、高い転移温度を有し、またそれらの組成、特にB2
3が少量存在するか又は存在しないために、容易に溶
融又は加工できない。また国際出願公開WO96/11
888は記録媒体用ガラス基板を開示しており、それは
任意成分のみを含有し、またほんの少量のB23を含有
しているために、溶融性に劣っている。これらのLi2
Oを含有していないガラスは、最大8質量%のMgOを
任意に含有し、少なくとも11質量%のROを含有して
いるため、高い比ヤング率を達成することができない。
【0014】低密度で高強度及び非常に高い比弾性率E
/ρを有するAl−B−Cから成る複合材料が、IDE
MA、オルターネイティブ・サブストレイツ III(Alte
rnative Substrates III)(カリフォルニア州、サンホ
セ、1995年9月5日)、第55〜60頁;ディー.
ジェイ.ペレッティ(D. J. Perettie)ら「ザ・オルタ
ーネイト・オルターネイテイブ・サブストレイト−“化
学強化された”アルミニウム(The Alternate Alternat
ive Substrate-“Chemically Strengthened”Aluminu
m)」に記載されている。しかしながら、この材料は、
高品質のハードディスクに求められる表面品質に研磨す
るためにはかなりの努力が必要である。この材料からハ
ードディスクを作製することは、その大きな耐摩耗性の
ために非常に高価なものにつく。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高い
比弾性率、即ち、高ヤング率及び低い密度を有し、また
比較的大きな熱膨張係数を有し、溶融し易く、さらに充
分な破壊靭性を有するか又は化学的プレストレス処理に
よって充分な破壊靭性を有することとなる、良好な表面
特性を有する材料を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の一側面によると、酸化物基準で以下の量的
割合で以下の成分 SiO2 25〜50質量%、B23 >5〜
16質量%、 Al23 10〜17質量%、P25 0〜
8質量%、 Li2O 5〜15質量%、Na2O 0〜
10質量%、 K2O 0〜10質量%、MgO 10
〜30質量%、 CaO 0〜10質量%、SrO
0〜8質量%、 ZnO 0〜8質量%、TiO2 0.1
〜10質量%、 ZrO2 0〜8質量%を含 有し、2価の金属酸化物(RO)の合計量が45質
量%以下であり、アルカリ金属酸化物(R2O)の合計
量が30質量%以下である高い比弾性率を有するガラス
又はガラスセラミックが提供される。これらは、必要に
応じて慣用量の少なくとも一種の清澄剤を含有すること
ができる。本発明の他の側面は、ハードディスク基板の
製造における前記ガラス又はガラスセラミックの使用
(用途)に関する。換言すれば、上記本発明のガラス又
はガラスセラミックから製造されるハードディスク基
板、特に記録媒体として使用されるハードディスク基板
の製造方法が提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の材料は、25〜50質量
%、好ましくは30〜45質量%のSiO2及び10〜
17質量%、好ましくは10〜15質量%のAl23
含有する。ヤング率を高める成分が典型的なアルミノ珪
酸塩ガラス中に前記のような好ましい量で存在すること
で、密度を増大し過ぎることなく、お互いにヤング率を
高めることとなる。Al23はまた材料のヌープ硬度を
高める。ヌープ硬度は押込み硬度の尺度である。安定し
た三次元構造を形成するために、ガラス形成剤として5
質量%より多く、14質量%以下のB23が存在する。
従って、典型的なガラス形成剤(SiO2、Al23
23)の合計量は、40質量%より多く、8質量%
以下である。これらの成分の合計量は好ましくは少なく
とも50質量%である。上記のガラス形成剤が存在する
ため、安定していて弛緩(緩和)されてはいないベース
ガラスがイオン交換の後に得られる。ガラスの溶融は、
上記割合のB23が存在することにより実質的に改善さ
れる。上記B23含量によって粘度がより低下し、また
ガラスをより長く(longer)する。従って、材料が粘性
挙動を示し、それによって直接熱成形法により薄いディ
スクを成形することが可能になる。B23含量が上記範
囲を超えると、耐薬品性、ヤング率及びヌープ硬度が低
下してしまう。このため、23望ましい濃度上限
14質量%である。
【0018】なお、同様のガラスではあるが、B23
任意に含有するガラス(但し、B23含量はほんの少量
である。)は、ドイツ特許出願第19802919.5
号に開示されており、同一出願人によりすでに特許出願
されている。
【0019】1又はそれよりも多くのアルカリ土類金属
酸化物がヤング率を上げる成分として存在する。10〜
30質量%、好ましくは15〜30質量%のMgO、0
〜10質量%、好ましくは0〜8質量%のCaO及び0
〜8質量%のSrOが、アルカリ土類金属酸化物として
存在できる。しかしながら、0〜8質量%のZnOもま
た存在してもよい。2価の金属酸化物(RO)の合計量
は45質量%以下、好ましくは40質量%以下、特に好
ましくは35質量%以下であり、最も好ましくは30質
量%以下である。
【0020】本発明の材料は、フラックス材料としてア
ルカリ金属酸化物を5〜30質量%含有する。これより
も濃度が高いとヤング率及びヌープ硬度の両方共低下
し、また耐薬品性も低下してしまう。これらの酸化物の
最大量は好ましくは20質量%、特に好ましくは17質
量%であり、最も好ましくは15質量%である。アルカ
リ金属酸化物のうち、Na2Oは0〜10質量%、好ま
しくは0〜6質量%存在してもよく、またK2Oは0〜
10質量%、好ましくは0〜8質量%存在してもよい。
イオン交換により本発明の材料を化学的にプレストレス
処理するためにはLi2Oが必要になるので、必須成分
としてLi2Oは5〜15質量%、好ましくは5〜12
質量%存在する。K2O及びNa2Oの割合が極めて高い
と、所望の高ヤング率又は高い比ヤング率を得ることは
できないであろう。
【0021】本発明の材料は、8質量%以下の量でP2
5を含有することができる。ここでP25は、アルカ
リ土類アルミノ珪酸塩組成物のイオン交換を容易にする
ものであり、イオン交換の際に三次元構造を維持するた
めに前記量が求められる。少なくとも1質量%のP25
が存在することが好ましい。しかしながら、8質量%よ
りも高い割合であるとヤング率及びヌープ硬度がかなり
低くなってしまう。P25の上限濃度は比較的低いこと
が有利である。というのも、P25の溶融及び蒸発の問
題があるにもかかわらず、これらP25含有組成物の取
扱いが可能だからである。
【0022】本発明の材料はまた0.1〜10質量%の
TiO2を含有する。このB23及び比較的高濃度のR2
O含有組成物に充分な耐薬品性を保証するためには、好
ましくは1〜8質量%のこのTiO2成分が必要とな
る。同様の理由により、本発明の材料は8質量%まで、
好ましくは5質量%までZrO2を含有することができ
る。両成分は高いヤング率を得るためにプラスに寄与す
る。
【0023】Li2O及びTiO2が所定の割合で、また
所望によりZrO2が高含量のMgOと共に存在するこ
とにより、即ちMgO含量が21質量%以上、及びTi
2+ZrO2の合計量が6質量%以上あることにより、
溶融及び熱成形後の冷却中、ガラスの結晶化に際して、
加工は結晶化誘起成分及び結晶化阻害成分の割合がバラ
ンスされるように制御される。冷却速度が遅いと結晶化
が促進される。サイズ及び分布が極めて均一である微細
結晶相が形成され、その硬度はガラス相中で均一である
ため、本発明の材料は滑らかな表面を形成し易くなる。
結晶化成分を増やすと(即ち2価の酸化物(RO)の割
合を増やすと)、ヤング率及びヌープ硬度が高くなる。
結晶相部分が増すと、それでも材料はイオン交換可能で
はあるが、イオン交換の際にプレストレスが殆ど又は全
く生じないか、又は急速な緩和が生じることとなるが、
しかしながら、これらのガラスセラミック材料はプレス
トレス処理を行なうまでもなくすでに充分な破壊靱性を
有している。相の比(ガラス相に対する結晶相の割合)
及び微結晶のサイズに従って、ガラスセラミックは透
明、半透明又は不透明となる。従って、良好な表面加工
性は、透過性に依存しない。RO含量が前記した量より
も多いと、材料は典型的な脆性特性を有することにな
る。
【0024】不透明な材料又は例えば着色剤の添加によ
って透過率が低下した材料から作製されたハードディス
ク基板は、表面品質試験装置(係る装置は表面の欠陥を
検出するが、その大きさ(容積)は検出しない。)の試
験光の透過度が低くなるという利点を有する。従って、
ガラス及びガラスセラミックは、合計量が10質量%以
下の1又はそれよりも多くの着色剤を含有することがで
き、係る着色剤は、Fe23、NiO、Cr23、Co
O、CuO及びV25からなる群から選択される。
【0025】清澄化のために、慣用の清澄剤、例えばA
23、Sb23及びNaClをガラス又はガラスセラ
ミック用ベースガラスに添加することができる。清澄剤
は、慣用量で、即ち使用する清澄剤の種類及び量に応じ
て、生成物の0.05〜1質量%の割合で加えることが
できる。好ましくは、清澄剤As23は避けられるべき
である。即ち、本発明の材料を環境にやさしいものとす
るには、砒素酸化物の量は不可避的な微少不純物量に限
定される。同様の理由により、本発明の材料はPbOを
含有するべきではない。
【0026】さらに、本発明のガラス及びガラスセラミ
ックは、レーザー活性のある成分を含有することがで
き、それによってコーティング前に基板表面をレーザー
表面加工(laser texturing)することが可能となる。
よって、これらの材料は、酸化物基準で8質量%以下の
合計量で、Ga、Ge、Y、Nb、Mo、La、Ce、
Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Y
b、Hf及びTaからなる群から選ばれる1つ以上の元
素の酸化物を含有することができる。
【0027】Li+イオン及び必要によりまたNa+イオ
ンのNa+及び/又はK+とのイオン交換は、ガラス又は
ガラスセラミックをいくぶん低融点のナトリウム及び/
又はカリウム塩、例えばそれらの硝酸塩の溶融体(塩
浴)に入れ、あるいはまたいくぶん高い融点のナトリウ
ム及び/又はカリウム塩、例えばそれらの硫酸塩のペー
ストを材料表面に塗布するといった、公知の方法により
行なうことができる。塩浴又はペーストはさらにLi塩
を含有することもできる。好ましくは、ナトリウム塩で
イオン交換することが望ましい。作用時間及び温度は、
この種のイオン交換工程における通常の条件でよく、そ
れぞれの組成物に依存する。即ち、ガラス転移温度Tg
以下において、作用時間は1〜16時間、好ましくは1
〜8時間、温度は(Tg−120K)〜(Tg−30
K)、好ましくは(Tg−80K)〜(Tg−40K)
である。これらの範囲内において、温度が低くなるほ
ど、滞留時間をより長くする必要がある。従って、温度
が高くなるほど、また温度がTgに近づくほど、即ち
(Tg−50K)〜(Tg−30K)において、塩ペー
ストによるイオン交換が行なわれ、一般に、塩浴での化
学的プレスト処理における処理時間に比べて、イオン交
換時間が短くなる。イオン交換プロファイル深さ>15
μm、またプレストレス深さσ>50MPaが達成でき
る。
【0028】特にそれ程高くないプレストレス処理での
交換プロファイルは、前記の最大時間及び温度を超えて
さらにイオン交換を続けることにより得られ、それによ
ってより深くまでイオン交換が行なわれるが、緩和のた
めに応力値は低下する。ここで高すぎるプレストレス処
理とは、プレストレス>500MPaを意味し、それは
基板の自己破壊を引き起こし得るものである。
【0029】また2重イオン交換、いわゆる「隠蔽又は
マスクした(concealed or masked)プロファイル」を行
なうことも可能である。この種のイオン交換において
は、比較的長い作用時間をかけることにより、例えば最
初にLi+がNa+と深い領域において置き換わる。そし
て第二段階において浅い表面領域において、Na+が再
びLi+と置き換わり、その間の作用時間は最初のイオ
ン交換のそれの1/3〜1/2である。
【0030】特に好ましいガラス、即ち所望の特性を有
し、また特に充分に化学的プレストレス処理されたガラ
スは、酸化物基準で以下の組成を有する。SiO2:3
5〜45質量%(好ましくは40〜45質量%)、B2
3:6〜12質量%(好ましくは6〜10質量%)、
Al23:10〜14質量%(好ましくは11〜13質
量%)、P25:0.1〜5質量%(好ましくは0.1
〜3質量%)、Li2O:8〜12質量%(好ましくは
9〜11質量%)、Na2O:0〜4質量%(好ましく
は0〜2質量%、好ましくは0質量%)、K2O:0〜
4質量%(好ましくは0〜2質量%、最も好ましくは0
質量%)、但しアルカリ金属酸化物(R2O)の合計量
は15質量%以下であり、MgO:15〜25質量%
(好ましくは17〜23質量%)、CaO:0〜5質量
%(好ましくは0〜3質量%、最も好ましくは0質量
%)、SrO:0〜5質量%(好ましくは0〜3質量
%、最も好ましくは0質量%)、ZnO:0〜5質量%
(好ましくは0〜2質量%、最も好ましくは0質量
%)、但し2価の金属酸化物(RO)の合計量は35質
量%以下(好ましくは30質量%以下)であり、TiO
2:3〜8質量%(好ましくは3〜7質量%)、Zr
2:0〜<5質量%(好ましくは0〜3質量%)、但
しTiO2及びZrO2の合計量は10質量%以下であ
る。
【0031】
【実施例】以下に実施例を示して本発明について具体的
に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるもの
でないことは言うまでもない。
【0032】本発明のガラスの10の実施例(実施例1
乃至及び実施例11)及びガラスセラミックの1つの
実施例(実施例10)を表1及び表2にまとめて示す。
表1及び表2にはそれらの組成及びそれらの基本特性が
示されている。表1及び表2に記載されたガラス及びガ
ラスセラミックの製造は、慣用の原料を用いて以下のよ
うに行なった。すなわち、混合物を連続溶解装置内で約
1400℃で溶解し、約1360℃で精製し、そして均
質化した。ガラスを約1350℃の注型温度で注型し、
そして冷却した。冷却工程において、高含有量のMO及
びTiO2+ZrO2含有組成物のセラミック化が起こっ
た。得られた注型ブロック(ガラス又はガラスセラミッ
ク体)から常法に従って円盤状のディスクを作製した。
このディスクはハードディスク基板の形状及び寸法、即
ち外径65.0mm及び厚さ0.635mmを有し、ま
た中心に直径20.00mmの内部貫通孔を有してい
た。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】表1及び表2に示されるように、ガラス及
びガラスセラミックの熱膨張係数α20/300は、7.0×
10-6/Kよりも高く、11.0×10-6/K未満であ
り、ドライブ装置のハードディスクを支持するスピンド
ル材料の熱膨張係数にかなり近い。表1及び表2にはま
た、ガラス及びガラスセラミックの熱膨張係数α20/300
及び転移温度Tgに加えて、ハードディスク基板にとっ
て他の重要な特性、即ち弾性率E[103N/mm2]、
密度ρ[g/cm3]及びそれらから計算した比弾性率
E/ρ[105N×cm/g]も記載されている。弾性率
(ヤング率)はプレストレス処理されていない試料から
測定した。ガラス及びガラスセラミックは、90×10
3N/mm2<E<125×103N/mm2、殆どは<1
15×103N/mm2の弾性率E、30×105N・c
m/g<、殆どは35×105N・cm/g<E/ρ<
45×105N・cm/gの比弾性率E/ρを有してい
た。ガラス及びガラスセラミックの密度が低いため、極
めて高い比弾性率が得られた。また、DIN ISO
9385に従って測定したヌープ硬度HK(0.1/2
0)も表1及び表2に記載した。
【0036】以下の表3には、種々の実施例組成物及び
イオン交換条件での、即ち、イオン交換時間及び温度を
変えたときのイオン交換の実験結果が示されている。イ
オン交換は、95質量%のNaNO3及び5質量%のN
aClの溶融塩中で、2mm厚の研磨し端面加工した6
mm×50mm寸法のディスクを用いて行なった。表3
には、被処理ガラスのイオン交換時間(時間)、交換温
度T(℃)及び転移温度と交換温度の差、ΔT(K)=
Tg−T(端数は四捨五入して5Kに丸めた)を記載し
た。さらに表3には所望される圧縮応力(MPa)及び
エネルギー分散型X線分析(EDX)によって測定した
圧縮応力領域のそれぞれの深さ(μm)が記載されてい
る。圧縮応力はイオン交換したディスクの研磨領域にお
いて測定した。圧縮応力値は、本発明の材料が高い破壊
靱性と引裂抵抗又は耐亀裂性を有することを示してい
る。また表中のn/aは測定しなかったことを示してい
る。
【0037】
【表3】
【0038】
【発明の効果】以上のように、本発明の材料は、ガラス
及びガラスセラミック共に、ハードディスク基板作製用
材料に求められる前記した仕様を全て満たし、また従来
では矛盾すると考えられた特性も併せ持っている。本発
明の材料は、比弾性率が高いために、優れた形状安定性
を有し、またそれらは溶融特性及び加工特性が良好であ
るために容易に製造できる。また、本発明のガラスは、
特に満足のいくように化学的にプレストレス処理され、
それによってそれらの機械的強度又は耐力特性が改善さ
れる。もちろん、ガラスセラミックをプレストレスする
能力はセラミックの割合を高めることで低下するが、破
壊靱性はセラミックの割合を高めると増大するので、本
発明の材料は充分な強度を有するか、又はプレストレス
処理により充分な強度を得ることができる。他の適した
特性に加えて、この特性により、本発明の材料は、充分
な結晶化又はプレストレス処理により充分な耐亀裂性を
有するハードディスク基板を製造するのに優れている。
さらに、本発明の材料は、充分な耐薬品性を有し、また
その熱膨張特性はクランプ材料及び回転軸の熱膨張特性
に充分適合している。また、本発明のガラス及びガラス
セラミック体の表面は容易に加工できる。従って、それ
らは所望の微小粗さ(平滑性)≦0.5nmにまで加工
することができる。それらは優れた表面特性を有してい
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C03C 3/095 C03C 3/095 3/097 3/097 10/00 10/00 G11B 5/73 G11B 5/73 (72)発明者 ジルケ ヴォルフ ドイツ連邦共和国、42499 ヒュッケス ワーゲン、ヒュッキンガー・シュトラー セ 47アー (56)参考文献 特開 昭61−77643(JP,A) 特開 平11−314932(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C03C 1/00 - 14/00 C04B 35/00 - 35/22 G11B 5/62 - 5/82 WPI

Claims (20)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化物基準で以下の量的割合で以下の成
    を含有し、2価の金属酸化物(RO)の合計量が45質
    量%以下であり、アルカリ金属酸化物(R2O)の合計
    量が30質量%以下である高い比弾性率を有するガラ
  2. 【請求項2】 酸化物基準で以下の量的割合で以下の成
    を含有し、2価の金属酸化物(RO)の合計量が45質
    量%以下であり、アルカリ金属酸化物(R 2 O)の合計
    量が30質量%以下である高い比弾性率を有するガラス
    セラミック。
  3. 【請求項3】 酸化物基準で以下の量的割合で以下の成
    を含有し、2価の金属酸化物(RO)の合計量が40質
    量%以下であり、アルカリ金属酸化物(R2O)の合計
    量が20質量%以下であり、SiO2、B23及びAl2
    3の合計量が50質量%以上であることを特徴とする
    請求項1に記載のガラ
  4. 【請求項4】 酸化物基準で以下の量的割合で以下の成
    を含有し、2価の金属酸化物(RO)の合計量が40質
    量%以下であり、アルカリ金属酸化物(R 2 O)の合計
    量が20質量%以下であり、SiO 2 、B 2 3 及びAl 2
    3 の合計量が50質量%以上であることを特徴とする
    請求項2に記載のガラスセラミック。
  5. 【請求項5】 酸化物基準で以下の量的割合で以下の成
    を含有し、2価の金属酸化物(RO)の合計量が35質
    量%以下であり、TiO2及びZrO2の合計量が10質
    量%以下であり、アルカリ金属酸化物(R2O)の合計
    量が15質量%以下であることを特徴とする請求項1又
    に記載のガラス。
  6. 【請求項6】 酸化物基準で以下の量的割合で以下の成
    を含有し、2価の金属酸化物(RO)の合計量が30質
    量%以下であることを特徴とする請求項1、3又は5
    記載のガラス。
  7. 【請求項7】 さらにP25を酸化物基準で少なくとも
    1質量%含有することを特徴とする請求項1、3、5又
    は6に記載のガラ
  8. 【請求項8】 さらにP 2 5 を酸化物基準で少なくとも
    1質量%含有することを特徴とする請求項2又は4に記
    載のガラスセラミック。
  9. 【請求項9】 さらにFe23、NiO、Cr23、C
    oO、CuO及びV25からなる群から選ばれる少なく
    とも一種を、酸化物基準の合計量で10質量%以下含有
    することを特徴とする請求項1、3、5〜7のいずれか
    一項に記載のガラ
  10. 【請求項10】 さらにFe 2 3 、NiO、Cr 2 3
    CoO、CuO及びV 2 5 からなる群から選ばれる少な
    くとも一種を、酸化物基準の合計量で10質量%以下含
    有することを特徴とする請求項2、4又は8に記載のガ
    ラスセラミック。
  11. 【請求項11】 さらにGa、Ge、Y、Nb、Mo、
    La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、E
    r、Tm、Yb、Hf及びTaからなる群から選ばれる
    少なくとも一種の元素の酸化物を、酸化物基準の合計量
    で8質量%以下含有することを特徴とする請求項1
    3、5〜7及び9のいずれか一項に記載のガラ
  12. 【請求項12】 さらにGa、Ge、Y、Nb、Mo、
    La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、E
    r、Tm、Yb、Hf及びTaからなる群から選ばれる
    少なくとも一種の元素の酸化物を、酸化物基準の合計量
    で8質量%以下含有することを特徴とする請求項2、
    4、8又は10に記載のガラスセラミック。
  13. 【請求項13】 さらに清澄剤を0.05〜1質量%含
    有することを特徴とする請求項1、3、5〜7、9及び
    11のいずれか一項に記載のガラ
  14. 【請求項14】 さらに清澄剤を0.05〜1質量%含
    有することを特徴とする請求項2、4、8、10及び1
    2のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
  15. 【請求項15】 不可避的不純物を除いて、As23
    びPbOを含有しないことを特徴とする請求項1、3、
    5〜7、9、11及び13のいずれか一項に記載のガラ
  16. 【請求項16】 不可避的不純物を除いて、As 2 3
    びPbOを含有しないことを特徴とする請求項2、4、
    8、10、12及び14のいずれか一項に記載のガラス
    セラミック。
  17. 【請求項17】 90×103N/mm2<E<125×
    103N/mm2の弾性率E、30×105N・cm/g
    <E/ρ<45×105N・cm/gの比弾性率E/
    ρ、及び7.0×10-6/K<α20/300<11.0×1
    -6/Kの熱膨張係数α20/300を有することを特徴とす
    る請求項1、3、5〜7、9、11、13及び15のい
    ずれか一項に記載のガラ
  18. 【請求項18】 90×10 3 N/mm 2 <E<125×
    10 3 N/mm 2 の弾性率E、30×10 5 N・cm/g
    <E/ρ<45×10 5 N・cm/gの比弾性率E/
    ρ、及び7.0×10 -6 /K<α 20/300 <11.0×1
    -6 /Kの熱膨張係数α 20/300 を有すること を特徴とす
    る請求項2、4、8、10、12、14及び16のいず
    れか一項に記載のガラスセラミック。
  19. 【請求項19】 ハードディスク基板の製造のための請
    求項1、3、5〜7、9、11、13、15及び17
    いずれか一項に記載のガラスの使用。
  20. 【請求項20】 ハードディスク基板の製造のための請
    求項2、4、8、10、12、14、16及び18のい
    ずれか一項に記載のガラスセラミックの使用。
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