JP4273624B2 - ガラス組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は結晶化ガラス組成物に関する。さらに詳しくは、結晶化ガラス磁気ディスクの組成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、磁気ディスク用の基板としては、アルミニウム基板、ガラス基板等が実用化されている。中でもガラス基板は、表面の平滑性や機械的強度が優れていることから、最も注目されている。そのようなガラス基板としては、ガラス基板表面をイオン交換で強化した化学強化ガラス基板や、基板に結晶成分を析出させて結合の強化を図る結晶化ガラス基板が知られている。
【0003】
ところで最近の基板に対する性能の要求は、日に日に厳しくなってきており、とくに高速回転時のたわみやそりに直接的に関わる強度に対する性能の向上が求められている。これは基板材料のヤング率によって表すことができ、数値が高ければ高いほど望ましい。
【0004】
例えば特開平11−322362に示される組成においては、ヤング率は130以上を達成している。しかし、上記先行技術においては熱処理温度が1次処理温度で800度、2次処理温度で1000度と非常に高く、製造が困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって最近は高いヤング率を達成しながら、生産性の向上が求めらることになる。そこで本発明は、ガラスのヤング率が向上し、さらに生産性の高い組成を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、結晶化ガラス組成物であって、主成分の組成範囲を、
SiO2が35wt%以上で且つ 50wt%以下、
Al23が13wt%以上で且つ 15.5wt%以下、
MgOが17.0wt%以上で且つ 30wt%以下、
TiO2が15.5wt%以上で且つ 20wt%以下とし
主析出結晶相がクリノエンスタタイトであることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明に係る実施形態のガラス基板は、主成分の組成範囲が、SiO2が35wt%以上で且つ50wt%以下、Al23が13wt%以上で且つ15.5wt%以下、MgOが10wt%以上で且つ30wt%以下、TiO2wt%以上で且つ20wt%以下、であることを特徴としている。
【0009】
【0010】
SiO2はガラス形成酸化物のため組成比が35wt%より少ないと、溶融性が悪くなり、50wt%を越えるとガラスとして安定状態になるため、結晶が析出しにくくなる。
【0011】
Al23はガラス中間酸化物であり、熱処理によって析出する結晶相であるマグネシウムアルミニウム系結晶の構成成分である。組成比が13wt%より少ないと析出結晶が少なく、強度が得られず、15.5wt%を越えると溶融温度が高くなり失透しやすくなる。
【0012】
MgOは融剤であり、それを加えているため粒状の結晶を凝集させ結晶粒子塊を形成する。ただし、組成比が10wt%より少ないと作業温度幅が狭くなり、ガラスマトリクス相の化学的耐久性が向上しない。30wt%を越えると、他の結晶相が析出して求める強度を得ることが難しくなる。
【0013】
TiOは結晶核剤としてマグネシウムシリケート系結晶析出には不可欠な成分である。また融剤として働くため生産時の安定性が向上している。組成比がwt%より少ないと溶融性が悪くなると共に、結晶成長がしにくくなり、20wt%を越えると結晶化が急激に促進され、結晶化状態の制御が困難となり析出結晶の粗大化、結晶相の不均質が発生し、微細で均質な結晶構造が得られなくなり、研磨加工においてディスク基板として必要な平滑面が得られなくなる。さらに溶融成形時に失透しやすくなり、生産性が低下する。
【0014】
またさらに、融剤として働くLi2Oを加えることにより生産時の安定性が向上している。組成比が0.1wt%より少ないと溶融性が悪くなり、8wt%を越えると、また研磨−洗浄工程における安定性が悪くなる。
【0015】
以下製造方法を説明する。最終的に生成されるガラス基板の主成分の組成を含む原料を所定の割合にて充分に混合し、これを白金るつぼに入れ溶融を行う。溶融後金型に流し概略の形状を形成する。これを室温までアニールする。続いて、500〜680度の1次熱処理温度と1次処理時間により保持し(熱処理)、結晶核生成が行われる。引き続き、680〜800度の2次熱処理温度と2次処理時間により保持し結晶核成長を行う。これを除冷することにより目的とする結晶化ガラスが得られる。
【0016】
さらにこれを所望の形状、厚さに研磨等の加工を施すことにより、ディスク基板として利用できる。
【0017】
以上の製造方法によって得られたガラス基板は、主成分の組成範囲が、SiO2が35wt%以上で且つ50wt%以下、Al23が13wt%以上で且つ15.5wt%以下、MgOが10wt%以上で且つ30wt%以下、TiO2wt%以上で且つ20wt%以下、とするために、非常に高いヤング率と高い生産性を得ることが可能となった。但し、請求項1に記載された発明では、MgOが17.0wt%以上で且つ30wt%以下、TiO 2 が15.5wt%以上で且つ20wt%以下とする。
【0018】
また上記組成に加えさらにLi2Oが0.1wt%以上で且つ8wt%以下、とすることにより、より高いヤング率と高い生産性を得ることが可能となった。
【0019】
また以下の組成を適正な範囲において加えることにより、よりよい性能が得られる。
【0020】
融剤として働くZnOを加えているため均一な結晶析出を補助する。ただし、組成比が0.1wt%より少ないと十分な結晶均質化の改善がなされない。22wt%を越えると、ガラスが安定となり結晶化が抑制され、求める強度が得られにくくなる。
【0021】
融剤として働くP25は、シリケート系結晶を析出させる核形成剤であり、ガラス全体に結晶を均一に析出させるために重要な成分である。組成比が0.1wt%より少ないと十分な結晶核が形成されにくくなり、結晶粒子が粗大化したり結晶が不均質に析出し、微細で均質な結晶構造が得られにくくなり、研磨加工においてディスク基板として必要な平滑面が得られなくなる。5.0wt%を越えると、溶融時の炉剤に対する反応性が増し、また失透性も強くなることから溶融成形時の生産性が低下する。また化学的耐久性が低下し、磁気膜に影響を与える恐れがあると共に、研磨−洗浄工程における安定性が悪くなる。
【0022】
ガラス修飾酸化物として働くZrO2を加えているためガラスの結晶核剤が有効に機能する。組成比が0.1wt%より少ないと十分な結晶核が形成されなくにくくなり、結晶粒子が粗大化したり結晶が不均質に析出し、微細で均質な結晶構造が得られなくなり、研磨加工においてディスク基板として必要な平滑面が得られなくなる。また化学的耐久性および耐マイグレーションが低下し、磁気膜に影響を与える恐れがあるとともに、研磨−洗浄工程において安定性が悪くなる。
また12wt%を越えると溶融温度が高くなり、また失透しやすくなり溶融成形が困難となる。また析出結晶相が変化し求める特性が得られにくくなる。
【0023】
融剤として働くCaOを加えているため均一な結晶析出を補助する。ただし、組成比が0.1wt%より少ないと十分な結晶均質化の改善がなされない。9wt%を越えると、化学的耐久性を向上させることができなくなる。
【0024】
融剤として働くNb25を加えているため結晶核剤物質が増加することになる。ただし、組成比が0.1wt%より少ないと十分な剛性の向上がなされない。
9wt%を越えると、ガラスの結晶化が不安定となり、析出結晶相を制御できなくなり、求める特性が得られにくくなる。
【0025】
融剤として働くTa25を加えているため溶融性、強度を向上させ、またガラスマトリクス相の化学的耐久性を向上させる。ただし、組成比が0.1wt%より少ないと十分な剛性の向上がなされない。9wt%を越えると、ガラスの結晶化が不安定となり、析出結晶相を制御できなくなり、求める特性が得られにくくなる。
【0026】
融剤として働くK2Oを加えているため生産時の安定性が向上している。ただし、組成比が0.1wt%より少ないと十分な溶融性改善がなされない。9wt%を越えると、ガラスが安定となり結晶化が抑制され、また化学的耐久性が低下し、磁気膜に影響を与える恐れがあると共に、研磨−洗浄工程における安定性が悪くなる。
【0027】
フォーマーとして働くB23を加えているためガラスの分相を促し、結晶析出および成長を促進させる。ただし、組成比が0.1wt%より少ないと十分な溶融性改善がなされない。9wt%を越えると、ガラスが失透しやすくなり成形が困難になると共に、結晶が粗大化し微細な結晶が得られなくなる。
【0028】
融剤として働くY23を加えているため剛性が向上している。ただし、組成比が0.1wt%より少ないと十分な剛性向上が得られない。9wt%を越えると、結晶析出が抑制され、十分な結晶化度が得られず、所望の特性が達成されない。
【0029】
清澄剤として働くSb23を加えているため生産時の安定性が向上している。
ただし、組成比が0.1wt%より少ないと十分な清澄効果が得られなくなり、生産性が低下する。9wt%を越えると、ガラスの結晶化が不安定となり析出結晶相を制御できなくなり、求める特性が得られにくくなる。
【0030】
清澄剤として働くAs23を加えているため生産時の安定性が向上している。
ただし、組成比が0.1wt%より少ないと十分な清澄効果が得られなくなり、生産性が低下する。9wt%を越えると、ガラスの結晶化が不安定となり析出結晶相を制御できなくなり、求める特性が得られにくくなる。
【0031】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。表1〜6には実施例1〜27、参考例1〜30のガラス組成を重量%で示した。これらの数値に従って、先述した製造方法によりガラス基板を得た。
【0032】
【表1】
Figure 0004273624
C1 MgSiO3:クリノエンスタタイト
C2 MgSiO3:エンスタタイト
M1 (Mg,Al)SiO3:マグネシウム・アルミニウム・シリケート
Z1 Zn2Ti3O8:チタン酸亜鉛
Z2 Zn2TiO4:チタン酸亜鉛
【0033】
【表2】
Figure 0004273624
【0034】
【表3】
Figure 0004273624
【0035】
【表4】
Figure 0004273624
【0036】
【表5】
Figure 0004273624
【0037】
【表6】
Figure 0004273624
【0038】
【発明の効果】
本発明によると、ヤング率が110以上かつ生産性の高いガラス基板を得ることができる。

Claims (1)

  1. 主成分の組成範囲を、
    SiO2が35wt%以上で且つ 50wt%以下、
    Al23が13wt%以上で且つ 15.5wt%以下、
    MgOが17.0wt%以上で且つ 30wt%以下、
    TiO2が15.5wt%以上で且つ 20wt%以下とし
    主析出結晶相がクリノエンスタタイトであることを特徴とする結晶化ガラス組成
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