JP3506431B2 - ジフテリア毒素受容体結合領域 - Google Patents

ジフテリア毒素受容体結合領域

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の背景 本発明は、合衆国国立衛生研究所によって認可(awar
ded)されたGM31299およびGM39558ならびに合衆国関節
炎・感染症研究所(National Institute of Arthritis
and Infectious Diseases)によって認可(awarded)さ
れたAI−22021およびAI−22848に基づいて、政府援助を
受けて考案されたものである。政府は、本発明に関し、
特定の権利を有する。
本発明は、ジフテリア毒素に関する。
ジフテリアは、1920年代後半に一般大衆に集団免疫予
防接種を行うまでは、子供の主な死亡原因であった。ジ
フテリアを抑制する現在の方法には、病気自体に特異的
に作用する抗毒素としての抗体を治療の目的で投与する
方法や、トキソイドと呼ばれるホルムアルデヒド不活化
ジフテリア毒素の集団予防接種などがある。後者の集団
予防接種では、特異的に抗毒素抗体形成を誘導すること
ができるが、トキソイド製剤は30%から40%の高率で汚
染物を含むので、予防接種の副作用の原因になることが
ある(Rappouli,in New Generations Vaccines,ed.Wood
row,L.Dekker publ.1990.p.251−268)。
ジフテリア毒素は、tox遺伝子を持つバクテリオファ
ージによって溶源化されたCorynebacterium diphtheria
e菌株から得られる535残基の一本鎖として分泌される
(Greenfield et al.,1983,Proc Natl.Acad.Sci.USA 8
0:6853−6857)。in vitroでジフテリア毒素を弱トリプ
シン処理(mild trypsinization)および換言すると、
残基190番、192番、または193番が切断され、フラグメ
ントA(N末端〜21K)とフラグメントB(C末端〜37
K)の2つのフラグメントが生成される(Moskaug,et a
l.,1989、Biol Chem 264:15709−15713;Collier,et a
l.,1971,Biol Chem,246:1496−1503)。同様のタンパク
質が分解して切断する現象(ニッキング)は、毒素が感
受性細胞に結合する以前または直後にin vivoで起こる
(Sandvig,et al.,1981,J Biol Chem 256:9068−907
6)。
ジフテリア毒素が感受性真核細胞を中毒させる過程に
は、少なくとも以下のステップが含まれる。すなわち、
(1)時に「R領域」と呼ばれるフラグメントBのC末
端の領域であるジフテリア毒素の結合ドメインが、感受
性細胞の表面上の特異的受容体に結合する。R領域に結
合する受容体は、さまざまなタイプの真核細胞で認めら
れている(Middlebrook,J.L.,et al.,1977.Can J Micro
biol 23:183−189)。(2)その受容体に結合する間
に、毒素分子はエンドサイトーシス小胞にインターナリ
ゼーション(内在化)される。(3)イターナリゼーシ
ョン以前か、エンドサイトーシス小胞内で、毒素分子が
フラグメントAとフラグメントBの間でタンパク質分解
により切除される。(4)エンドサイトーシス小胞のpH
は6以下に低下する際に、毒素の転位ドメインであるフ
ラグメントBのN末端領域で、毒素がエンドソーム膜に
自発的に入り込む。(5)膜に埋め込まれた後、毒素の
転位ドメインは、フラグメントAのサイトゾルへの伝達
を促進する。(6)細胞質のフラグメントAは、ニコチ
ンアミドアデニジンヌクレオチド(NAD+)のADPリボシ
ル基を真核生物のタンパク質合成に重大な因子である延
長因子2(EF−2)に伝達する触媒として機能する。こ
れによって、EF−2を不活性化し、タンパク質合成を中
断し、標的細胞を死滅させる。単一分子のフラグメント
Aを細胞の細胞質に導入すると、細胞を十分死滅させる
ことができる(Yamaizumi,et al.,1978,Cell 15:245−2
50)。
発明の大要 一般に、本発明はジフテリアに対するワクチンの免疫
原としてジフテリア毒素のR領域を使用する方法に関す
る。ジフテリア毒素のR領域を含む製剤は、ジフテリア
の進行を阻害する治療剤としても使用できる。出願者ら
は、X線結晶学の見地から、ジフテリア毒素ポリペプチ
ド内に独特のドメインであり、配列番号:1の残基496番
から512番を構成する長いループ(受容体結合ループ)
としてR領域の境界を決定した。尚、この長いループ
は、受容体結合領域として適当である。この見識に基づ
き、R領域、或いは受容体結合ループ或いはR領域のN
末端境界から受容体結合ループのC末端領域でのポリペ
プチドまたは受容体結合ループのN末端領域からジフテ
リア毒素のC末端までのポリペプチドを、優れた安定
性、安全性、免疫特性を有する分離ポリペプト単位(se
parate peptide entities)として、または、調製およ
び投与が容易な合成ペプチドとして生成することができ
る。
本発明は、ポリペプチドまたはポリペプチドを含む実
質的に純粋な調剤において、 図5に全て記載した配列番号:1の a)アミノ酸379番から535番まで b)アミノ酸380番から535番まで c)アミノ酸381番から535番まで d)アミノ酸382番から535番まで e)アミノ酸383番から535番まで f)アミノ酸384番から535番まで g)アミノ酸385番から535番まで h)アミノ酸386番から535番まで i)アミノ酸496番から512番まで j)アミノ酸379番から512番まで k)アミノ酸380番から512番まで l)アミノ酸381番から512番まで m)アミノ酸382番から512番まで n)アミノ酸383番から512番まで o)アミノ酸384番から512番まで p)アミノ酸385番から512番まで q)アミノ酸386番から512番まで r)アミノ酸496番から535番まで、または、 s)アミノ酸496番から524番まで を本質的に含むことを特徴とする。
これらのポリペプチド各々は、本文では「R領域ポリ
ペプチド」と呼ぶ。実質的に純粋であるとは、製品中に
存在する少なくとも50重量%のタンパク質がR領域ポリ
ペプチドであることを意味する。好ましい態様では製品
中に存在する少なくとも75重量%のタンパク質が、より
好ましい態様では製品中に存在する少なくとも90重量%
のタンパク質が、最も好ましくは製品に存在する少なく
とも99重量%のタンパク質が、R領域ポリペプチドであ
る。
本発明は、R領域ポリペプチドをコード化するが、R
領域ポリペプチドのアミノ末端終端に直接隣接する図5
の配列番号:1のアミノ酸291番から379番までに対応する
アミノ酸配列をコード化しないDNA、そのDNA配列を有す
るベクター、好ましくは、R領域ポリペプチドをコード
化するDNA配列が異種プロモーターの支配下にあるベク
ター、より好ましくは発現アミノ酸をシグナル配列に結
合するベクター、R領域ポリペプチドをコード化するDN
Aを含む細胞または均質な細胞集団を含有する。細胞
は、R領域ポリペプチドを発現できることが好ましく、
担体ワクチン微生物であることが最も好ましい。本文で
用いる「担体ワクチン微生物」とは、自然に存在する無
毒の生きた微生物または病原性が低いか弱毒化した生き
た微生物であり、免疫原を発現するものである。担体ワ
クチン微生物として機能する弱毒化したウイルス性ワク
チン株または細菌性ワクチン株の例を以下に記載した。
「異種プロモータ」とは、所定の遺伝子に対応する自然
に存在するプロモータ領域とは一致しないプロモータ領
域を言う。このプロモータ領域は、遺伝子の転写を開始
する以前にRNAポリメラーゼに結合する遺伝子の転写開
始部位までのDNA5′のセグメントである。
本発明は、R領域ポリペプチドをコード化する配列を
有するが、R領域ポリペプチドのアミノ末端終端に直接
隣接する図5の配列番号:1のアミノ酸291番から379番ま
でに対応するアミノ酸配列をコード化しない核酸から成
る本質的に純粋な製品を特徴とする。「核酸から成る本
質的な純粋な製品」とは、本発明に係る核酸を含み、Co
rynebacterium diphtheriaeにおいてジフテリア毒素を
コード化するDNAと自然に結合するその他の核酸分子か
らは実質的に遊離している製品を意味する。R領域ポリ
ペプチドは、化学合成によって、すなわち、有機化学の
古典的方法もしくはオートメーション化した方法によっ
て、または、生物学的合成によって、すなわち、一連の
遺伝的指令(genetic instructions)に基づいて生産す
ることによって調製されることが好ましい。本発明に係
る細胞は、細胞を提供し、培地で細胞を増殖し、R領域
ポリペプチドを発現する細胞集団を形成し、細胞集団ま
たは培地からR領域ポリペプチドを得ることを含む方法
に使用できる。
本発明は、R領域ポリペプチドと製剤上許容できる担
体を有する治療組成物を特徴とする。例えば、この製剤
組成物をジフテリアの疑いがある患者を識別するステッ
プと、治療に効果的な量の治療用組成物を患者に投与す
るステップとを含むジフテリア罹患者の処置方法に使用
することができる。「製剤的に許容できる担体」とは、
治療用組成物の伝達体を形成する不活性物質を意味す
る。
別の態様では、本発明は、細胞を中毒を阻害する量の
R領域ポリペプチドに接触させて、ジフテリア毒素によ
る細胞の中毒を阻害する方法を特徴とする。
患者に免疫原的に効果的な量で以下の本発明に係るワ
クチンの一つを投与することによってジフテリア毒素に
対して免疫することができる。すなわち、そのワクチン
とは、1)R領域のポリペプチドを含むが、R領域ポリ
ペプチドのアミノ末端終端に直接隣接する図5の配列番
号:1のアミノ酸291番からから379番までに対応するアミ
ノ酸配列を含まないワクチン、2)R領域ポリペプチド
をコード化するDNAを含む弱毒化ウイルス性ベクターを
有するワクチン[ただし、本文で用いる「弱毒化ワクチ
ン」とは、目的の付着遺伝子に複製機能を提供し、無毒
性であるか、病原性が低いか、または、ヒトにおける毒
性が自然に存在する同種のウイルスに比較して弱められ
たウイルスのことを言う]、3)R領域ポリペプチドを
コード化するDNAを含む弱毒化細菌[ただし、本文で用
いる「弱毒化細菌」とは、自然に存在する同種の細菌に
比較し、生存度を弱めた細菌を言う]、または、4)R
領域ポリペプチドをコード化するがR領域ポリペプチド
末端終端に直接隣接する図5の配列番号:1のアミノ酸29
1番から379番までに対応するアミノ酸配列をコード化し
ないDNA配列を有するベクターを有し、好ましくはDNA配
列が異種プロモータに転写制御されており、及び/また
は発現アミノ酸がシグナル配列に結合しているワクチン
である。ベクターを有するワクチンを投与する方法の一
つには、biolistic伝達による方法があり、この方法
は、目的の免疫原をコード化するDNAで微小投射体(マ
イクロプロジェクティル、microprojectile)を被覆す
るステップと、その被覆微小投射体(マイクロプロジェ
クティル、microprojectile)をレシピエントの細胞に
注入するステップを含む伝達方法があるが、この方法に
限らない。R領域ポリペプチドは、DNAから発現され、
レシピエントの免疫応答を刺激する(Tang,et al.1992.
Nature 356:152−154、本文に参考として採用)。ジフ
テリア毒素と反応する免疫原を取り込むことによって、
本発明に係るワクチンは、ジフテリアの進行に免疫性を
付与し、さらに、細菌Corynebacterium diphthriaeによ
って感染に対する免疫性を付与する。
この観点から、本発明は、別のポリペプチドにペプチ
ド結合によって連結されたR領域ポリペプチドから成る
が、R領域ポリペプチドのアミノ末端終端に直接隣接す
る配列番号:1の図5のアミノ酸291番から379番、好まし
くは310番から379番、より好ましくは335番から379番、
最も好ましくは360番から379番までに対応する配列を含
まない融合ポリペプチドを特徴とする。この融合ポリペ
プチドは、ワクチンに含まれ、これを使用して患者にジ
フテリア毒素に対する免疫性を付与できることが好まし
い。融合ポリペプチドをコード化するDNAは、細胞に取
り込むことができるが、、担体ワクチン微生物などの細
胞に融合ポリペプチドを発現できることが好ましい。本
文で用いられる「融合ポリペプチド」とは、R領域ポリ
ペプチドをコード化するDNAを遺伝子工学的手段によっ
て第2のポリペプチド配列をコード化する第2のDNAに
連結するハイブリッドDNAの発現によって生成されるタ
ンパク質分子を言う。
同様の観点から、本発明は、化学基に付着したR領域
ポリペプチドを特徴とする。治療用組成物は、化学基に
付着したR領域ポリペプチドと、製剤的に許容できる担
体を有することができる。患者のジフテリアを治療する
方法は、ジフテリアの疑いがある患者を識別するステッ
プと、化学基に付着したR領域ポリペプチドを含み治療
に効果的な量の組成物を患者に投与するステップとを含
む。「化学基」とは、通常は自然に存在するジフテリア
毒素に結合しない分子を言う。適切な化学基の例には、
例えばインフルエンザ菌、髄膜炎菌、肺炎球菌など、さ
まざまな病原体の多糖類、あるいは、さまざまな細菌性
もしくは病原体ウイルス性病原体の表面成分または病原
性因子に対応するペプチドなどがある。化学基は、R領
域ペプチドの担体物質として機能することができる。逆
に、R領域ポリペプチドは、このようなあらゆる化学基
または(酵素やその他の病原体の免疫原などの)他の化
学基に対する担体物質として機能することもできる。
「担体物質」は、結合分子に安定性を付与し、及び/或
いは結合分子の伝達もしくは免疫原性を補助する物質で
ある。
最後に、R領域はアジュバントに結合される。結合し
たポリペプチドおよびアジュバントをワクチンに用いる
ことができる。ワクチンは、患者にジフテリア毒性に対
する免疫性を付与する方法で用いられる。アジュバント
は、アルミニウム塩、細菌性エンドトキシン、カルメッ
トゲランウシ型結核菌(BCG)、リポソームやフロイン
トアジュバントなどに限らず、既知のタイプのアジュバ
ントであればよい。本文で用いられる「アジュバント」
とは、抗原の免疫原性を高めることができる物質であ
る。
出願者らは、ジフテリア毒素のR領域の境界と、受容
体結合に必要な配列に適していると思われるR領域内の
ループの境界とを決定し、ジフテリア毒素に対する新規
のワクチンに安全で安定した免疫原としてジフテリア毒
素のこれらの部分に基づいてポリペプチドを使用する方
法を認めた。このようにして、出願者らはR領域または
これらのループの一つである配列を、分離単位(separa
te entity)として発現させることを可能にした。本発
明に係るR領域ポリペプチドを用いて免疫化することに
よって、ジフテリア毒素ポリペプチド全体を用いて免疫
化する場合よりも優れた特定の利益が得られる。例え
ば、患者は毒素(フラグメントAの部分)の有毒な酵素
活性を保持する分子部分に晒されることは決してなく、
酵素活性形態に可逆するリスクもなく、患者はフラグメ
ントAに晒されることもTMドメインに晒されることもな
いので、抗毒素の一部としてこれらの領域の一方または
両方を続いて使用しても、二次免疫応答を誘導すること
はない。X線結晶学的分析方法で正確に定義されたR領
域の境界を用いて、本発明に係るR領域のポリペプチド
は、その固有の機能的コンホーメションを再生自在に構
成することができる。
本発明に係る別の利益は、R領域ポリペプチドを治療
に使用してその受容体に結合し、自然のジフテリア毒素
が受容体に付着するのを競合的に阻害することができる
ことにある。さらに、R領域ポリペプチドは多種多様な
細胞タイプで認められるその受容体に極めて効果的に結
合するので、R領域ポリペプチドは薬物伝達に安定で効
果的な担体分子となる。さらに、R領域ポリペプチド
は、安定性の低い免疫原に代わる安定な担体分子として
機能することができるが、これについては本文に例を記
載してある。
本発明に係るその他の特徴および利益は、以下の詳細
な説明と請求の範囲から明らかであろう。
詳細な説明 図面について簡単に説明する。
図面 図1は、ジフテリア毒素タンパク質のX線結晶学的構
造を示す図式表現である。
a)各二次構造セグメントを標識化するジフテリア毒
素のリボン状図(Ribbon drawing)である。最初の文字
は領域を示し、Cは触媒領域、Tは貫膜領域、Rは受容
体結合領域である。2番目の文字は二次構造クラスを示
し、Hはヘリックス、Bはβ鎖、Lはループである。3
番目の記号は各ドメインのN末端からの各二次セグメン
トの配列番号でりある。各セグメントの残基番号は、CH
1:2−7、CB1:11−14、CB2:16−24、CH2:28−34、CB3:5
2−57、CH3:58−66、CB4:76−86、CB5:88−96、CH4:99
−106、CH5:120−126、CB6:130−136、CB7:147−152、C
B8:159−166、CH6:168−173、CH7:176−186、TH1:205−
221、TH2:225−231、TH3:238−257、TH4:258−269、TH
5:274−288、TH6:297−307、TH7:310−315、TH8:326−3
46、TH9:356−378、RB1:386−390、RB2:393−399、RB3:
412−424、RB4:428−438、RB5:447−453、RB6:455−46
5、RB7:467−480、RB8:483−495、RB9:513−520、およ
びRB10:525−534である。b)パネルaと同じ観点から
のジフテリア毒素のCαスケルトン(skelton)の立体
図である。ApUp分子は、ジフテリア毒素の活性部位を占
める。C)(2Fob−Fc)から2.5オングストロームで算
出した電子密度マップの立体対(stereo pairs)および
精製モデル相である。d)形態4の結晶内で認められる
ジフテリア毒素二量体である。二つの単量体は、鉛直で
結晶学的に二つ折り回転軸(2−fold rotation axis)
によって関連づけられている。太線で示す左の分子は、
図(パネル)aと同じ方向である。
図2。CドメインのCαスケルトン(skeleton)の立
体対。活性部位への入口(entrance)は、右下にある。
4つのループCL1からCL4を太線で示した。これらの形態
は、Cドメインをさらに伸張した構造にすることができ
るヒンジであることに留意すること。
図3。図1のジフテリア毒素の右側から眺めたTドメ
インのCαスケルトン(skeleton)の立体対である。ヘ
リックスTH1は、裏側にあり、残基205番から出発する。
ヘリックスTH2は、左下部に流れ、ヘリックスTH3に続
き、右に流れる。前方中央にはヘリックスTH5があり、
左に流れているが、その上にヘリックスTH6およびTH7が
ある。これらの逆平行のらせんの裏側には、別の逆平行
らせん対TH8およびTH9があり、TH9は上方に流れ、残基3
78が終点になる。a)Asp側鎖とGlu側鎖を示す。2つの
らせん層の先端TL3およびTL5は、合計6個の酸性基を左
側に含むことに留意すること。b)Lys側鎖、Arg側鎖お
よびHis側鎖を示す。TH5とTH6の間のループTL3付近のLy
s299を除き、ドメイン底部と後部の全ての電荷が左右不
対称に正に帯電していることに留意すること。
図4。ジフテリア毒素のRドメインの分子配列(左)
をIg可変ドメインの分子配列(中央)(Marquart,et a
l.,1980,J Mol Biol 141:369)と、腫瘍壊死因子(TN
F、右)(Eck,et al.,1989,J Biol Chem,264:17595)と
比較した図である。Rドメインは、図1のジフテリア毒
素を裏側から眺めたものである。Rドメインの2から10
までの番号は、ジフテリア毒素のRB2鎖からRB10鎖まで
を示す。Rドメインの鎖2、3、4、8、9および10
は、Ig可変ドメインの鎖A、B、C、E、FおよびGと
良く一致することに留意すること。Rドメインの3、
4、5、6、7、8および9は、古典的ゼリーロール
(jellyroll)であるTNFの鎖C、D、E、F、G、Hお
よびIに良く一致する(Jones,et al.,1989,Nature 33
8:225−228)。
図5は、配列番号:1の成熟ジフテリア毒素の野生型ヌ
クレオチドおよび対応するアミノ酸配列と、矢印で示さ
れた本発明に係るさまざまなポリペプチドのアミノ末端
である。アミノ酸Gly 1は、N末端シグナル配列除去
後の野生型の成熟ポリペプチドの第1のアミノ酸を示
す。
出願者らの目的は、ワクチンを遺伝子工学的に処理し
ワクチン内でトキソイドを発現する生きた弱毒化ウイル
スまたは細菌の形態であっても、安全に患者に投与する
ことができるジフテリア毒素を生成することにある。こ
のように生(きた)ワクチンでは、ワクチン株がin viv
oで増殖する際に、トキソイドをコード化するDNAは突然
変異に敏感な状態を保つ。ワクチンDNAは不活性形態の
ジフテリア毒素の活性フラグメントAのコピーを含んで
いる場合は、突然変異を起こしその細胞死滅能力が失わ
れているが、そのような突然変異がin vivoで後に起こ
る自然突然変異によって後退すなわち抑制され得る恐れ
がある。ワクチンがフラグメントAを全く有しない場合
に限り、このリスクはゼロになる。
ジフテリア毒素は3つの構造ドメインから成る。3つ
の中で、R領域は分子を受容体を持つ細胞(receptor b
earing cells)に結合することによって受容体認識機能
を果たす。このR領域は、ジフテリア毒素分子の残りの
部分から分離した単位として生成され、ジフテリアに対
するワクチンでは良質のトキソイドとして役立つ。出願
者らが定義したR領域は、安定なドメインで、ジフテリ
ア毒素タンパク質全体の一次抗原決定基である。この概
念は、Rolfらの結果とともにジフテリア毒素の結晶学的
構造に基づいており、競合的に毒素特異受容体(toxin
−specific recptors)に結合することによってジフテ
リア毒素のカルボキシル末端ペプチド(HA6DT)の毒素
活性を阻害する。このペプチドは、アミノ酸482番から5
35番まで(MW 5982 Da)から成り、ジフテリア毒素のヒ
ドロキシルアミン処置によって調製されたものである
(Rolf,et al.,991,FASEB 75th Annual Meeting,5:A82
1、本文に参考として採用)。ただし、このようなフラ
グメントは、ワクチンの優れた候補になる抗原特異性お
よびin vivo安定性を備えているとは思われない。本文
で定義されるR領域ポリペプチドは、安定した三次構造
を有するので、完全なジフテリア毒素を標的にする効率
のよい形態の抗体を誘導することができる。さらに、本
発明に係るR領域は、in vivoのタンパク質分解に相対
的に安定である。
構造決定方法 R領域境界を決定するデータは、図1のX線結晶学的
構造から得られる。この構造は、形態1、形態3および
形態4の結晶分析に基づいている。アデニリル−3',5'
−ウリジン−リン酸(ApUp)と錯体を形成するジフテリ
ア毒素の形態1の結晶は、a=70.4オングストローム、
b=70.6オングストローム、c=65.4オングストロー
ム、α=94.9゜、β=91.0゜、γ=99.6゜の単位細胞寸
法を有し、非対称単位当たり二本鎖を有する三斜晶空間
群P1に属する。この二量体非対称単位は、出願者らの初
期の結晶化に関する報告(Collier,et al.,1982,J Biol
Chem 257:5283−5285)後、この結晶がタンパク質の粗
製或いは精製製品で確認されることがある二量体形態の
ジフテリア毒素であったとの発見と一致するものであ
る。二量体ジフテリア毒素自体には毒性がないが、これ
は恐らく受容体に結合しないからであるがしかしながら
それは完全な毒性単量体に徐々に解離する(Carroll et
al.,1986,Biochemistry 25:2485−2430)。この二量体
は、生物学的活性のある単量体毒素の立体配座的に変更
した形態である。形態1の結晶を得る再現不可能な結晶
化条件は、3種の新しい結晶形態が得られるまで、構造
決定に関する結晶学的研究の妨げになった(Fujii et a
l.,1991,J Mol Biol 222:861−864)。形態3および形
態4は、形態3についてはa=107.3オングストロー
ム、b=91.7オングストローム、c=66.3オングストロ
ーム、β=94.7゜、形態4についてはa=108.3オング
ストローム、b=92.3オングストローム、c=66.1オン
グストローム、β=90.4゜単位細胞寸法を有する単斜晶
空間群C2に属する。この形態の両方には非対称単位当た
り一本のジフテリア毒素鎖があり、ジフテリア毒素鎖対
は2つ折り回転軸(2−fold rotatin axis)によって
関連づけられる。
初期のモデルは、多重同形置換(multiple isomorpho
us replacement、MIR)方法を使用した後、溶媒を偏平
(flattening)にして、3.0オングストローム分解能(r
esolution)での形態4の結晶の構造決定に基づいた(W
ang,1985,Methods of Enzymol 115:90−112)。初期の
モデルによって、形態1および形態3の構造は、分子置
換によって容易に解決され(Brnger,1991,Acta Cryst
A47:195−204、Rossman et al.,1962,Acta Cryst 15:2
4−31)。単回同形置換(single isomorphous replacem
ent、SIR)相は形態3に関して得られた。2.5オングス
トローム分解能(resolution)までの自然のデータを収
集し、相をZhangおよびMainの方法によって拡張および
修正した後、形態3(SIR)および形態4(MIR)を用い
てモデルを2.5オングストロームのマップに再構成した
(Zhang et al.,1991,Acta Cryst A46:377−381)。こ
れに次いで、二つの形態間の実空間密度を平均化した。
受容体結合ドメインまたRドメインの一部であるl20個
までのC末端残基では、配列は適合し難く、408番と510
番の残基付近の領域が最もあいまいな(ambiguous)領
域であった。密度マップに有用なマーカーには、W50、W
153、W281、W398と、5−残基セグメントのM178
Y179、E180、Y181、M182と、4−残基クラスターの
F355、Y358、H372、Y375と、図1CのC末端付近の大型側
鎖を有するクラスターのY514、F530、F531と、C186とC
201、C461およびC471との間の2つのジスルフィド結合
もあった。Rドメインの初期の不適切な適合をプロフィ
ールウィンドウプロット(profile window plot)(L
thy,et al.,1992,Nature 356:83−85)で検知し調整
した。精製反復サイクルを各データセットに対して2.5
オングストロームで独立して行った。各形態の原子モデ
ルは、本質的に結晶パッキングを除き一致する。相修飾
と精製については別途説明する。モデルの評価精度は、
MIRおよび密度修正マップに対するモデルの適合と、結
晶学的R因子と、実空間R因子(Jones et al.,1991,Ac
ta Cryst A47:110−119)と、わずか4%だけ結晶学的
R因子より高い自由R値(free R−value)(Brnger,
1992,Nature 355:472−475)と、プロフィールウィンド
ウプロット(profile window plots)(Lthy et a
l.,1992,Nature 356:83−85)に依存する。精製の目下
の段階では、原子モデルと結晶学的モデルとの一致は、
形態1、形態3および形態4各々に対して21.1%、21.6
%、21.9%のR因子によって特徴付けられ、観察された
すべてのデータは、6オングストロームから2.5オング
ストロームまでの分解能では1σ(Fob)を超えるFob
ある。
最終モデルは、個々の等方性温度因子を有する4137の
非水素原子から成る。このモデルは、触媒Cドメインの
活性部位の裂け目(クレフト、cleft)にApUpも有する
が、溶媒原子は含まない。電子密度マップでほは定義が
不十分な領域があり、残基170番から172番、190番から1
95番、389番から390番および500番から503番に対する主
鎖密度は、旨く定義されていない。残基190番から195番
は、第一のジスルフィドループのタンパク質分解酵素感
応領域の一部であり、ニッキングが行われる。この領域
は、本質的に可変し得る。貫膜(T)ドメインとRドメ
インとの間のループは残基389番から390番を有するが、
同様に可変し得る。
表1は、データ収集、相決定、精製の観点から纏めた
ものである。
表1の説明 結晶形態1、3および4を本発明の試験に用いた(Fu
jii,et al.,1991,J Mol Biol,222:861−864)。
回析データが、Xuong−Hamlin設計の2パネルエリア
検出器(2−panel area detector)を備え、8.5kWで動
作するRigaku AFC−6回折計に収集された(San Diego
Multiwire Systems,San Diego,CA)。画像は、0.1゜の
振動フレーム(oscillation frames)として記録され、
50フレーム(5゜)のバッチに集約され合わせられる。
集約した強度は、FOURIER変倍方法(scaling method)
で変倍し合併する(Weissman,L.1979.博士論文,ロサン
ゼルス、カリフォルニア州立大学)。形態4固有のデー
タおよび誘導体データ(derivative data)は、2.5オン
グストロームまでRAXISイメージングプレート装置(ima
ging plate system)を用いて収集された。
重原子誘導体。KOSすなわちK2OSO4を3日間、人工母
液(12%PEG8000、0.43Mの塩化ナトリウム、43mMのトリ
ス塩化水素、pH7.8)を飽和濃度にして浸軟させた。CNP
すなわち4−クロロ−2−ニトロ−水銀フェノールを人
工母液を飽和濃度にして5日間浸漬させた。KNPはKOSと
CNPの1対1混合物である。CAP、すなわちトランス−ジ
クロロジアミン白金(II)を3日間2mg/mlで人工母液に
浸漬した。KAPはKOSとCAPの1対1混合物である。GCL
(HgCl2)は人口母液に3日間2mg/mlで浸漬した。
重原子パラメータを改善し、プログラムHEAVY(Terwi
lliger et al.,1987,Acta Cryst,A431−5)を用いてMI
R相を算出した。出願者らは、初期に形態3の結晶に対
するOs誘導体を得た。3.5オングストロームに溶媒を偏
平化(flattening)した後、単回同形置換(single iso
morphous replacement、SIR)相に基づいて電子密度か
ら分子の形状を3つの領域を有するものと解釈した。
ただし、二次構造は容易に解釈できず、ポリペプチド鎖
の経路を定義することは難しかった。良質の形態3の結
晶がなかったので、さらに重原子誘導体を研究すること
ができなかった。したがって、出願者らは形態4の結晶
について研究することにした。形態4のMIR相は、同形
の差異と異形の差異とを利用して、得られた形態である
6個の重原子誘導体であった。Os誘導体およびPt誘導体
は同形差パターソンマップ(Patterson functions)に
よって、Hg誘導体は差フーリエ合成(difference Fouri
er synthesis)によって、それぞれ解決された。形態4
および形態3のOs誘導体は、単一点結合が同じであっ
た。
溶媒偏平化(flattening)。形態4の初期の電子密度
マップは、3.0オングストロームから3.2オングストロー
ムまで拡張された相など、相を修飾して、Wangの相拡張
アルゴリズムによって、反復溶媒偏平化プロシージャ
(iterative solvent flattening procedure)(Wang,1
985,Methods in Enzymol,115:90−112)を利用し、3.0
オングストロームで算出された。溶媒容量の45%を使用
して、すべてのタンパク質密度がタンパク質マスクに含
まれるようにしたが、分子量から概算した57%よりも幾
分少なかった。これらのマップから、すべての二次構造
を識別し、初期のモデルをポリアラニン鎖を用いて構成
した。
モデル構成は、プログラムFRODO(Jones,1985,Method
s in Enzymol 115:157−171)とプログラムOのフラグ
メント適合ルーチン(Jones et al.,1991,Acta Cryst,A
47)とを利用して手早く行った。人為的に構成したα炭
素配位から着手し、主鎖原子を34の十分に精製したタン
パク質構造のデータベースを用いて加えた。次に、側鎖
を回転異性体データベースを利用して加えた(Ponder e
t al.,1987,J Mol Biol,193;775−791)。
精製。この初期のモデルは、電子密度マップを目視検
査して調整した後、プログラムXPLORの刺激アニーリン
グプロトコル(simulated annealing protocol)(Br
ger,1990,Acta cryst,A46:585−593)によって精製され
た。形態1、3および4のジフテリア毒素の相対的配向
は、形態1および形態3のデータに対する形態4の精製
モデルをパターソンの空間回転翻訳サーチ(Patterson
−space roration and translation search)によって
決定された。形態1のデータに対する2種のトップソリ
ューション(9σ)は、非対称単位の非結晶学的対称に
よって関連づけられる2本のジフテリア毒素鎖に対応し
た。形態4から形態1への形質転換は、本質的にはC2か
らP1への配位系の変化であり、C2の結晶学的回転軸は、
P1の軸(110)にほぼ平行なP1の非結晶学的回転対称軸
になる。形態3に対するトップソリューションの1つ
(7σ)は、方向を問わず0.5゜未満の回転に対応し
た。形態4から形態3への形質転換は、本質的には、軸
aに沿った5オングストロームの翻訳である。この結果
は、形態3と形態4の間の0kl反射の構造因子の最大反
応(amplitudes)の平均絶対差は、15%であり、hk0ま
たはh0Lの場合の差は不規則に近い(R=48%)。ま
た、モデルをSIR相に基づく形態3に対する溶媒偏平化
電子密度マップに重ね合わせた場合、二次構造の大半
は、ガイドとしてのモデルとともに認められた。3.0オ
ングストロームでMIR相とSIR相を用いた場合、形態4と
形態3の間の密度の実空間平均によって、この段階で密
度マップは改善された。続いて、形態3および形態4に
ついて、溶媒偏平化(flattening)、ヒストグラム適
合、およびSayreの式に基づいたアルゴリズムによっ
て、実験相を2.5オングストロームに拡張した(Zhongお
よびMain,1991,Acta Cryst,A46:377−381)。2.5オン
グストロームでの形態3のマップは、さらに、形態4の
マップでスキュー(skew)され、平均化された。これら
は、最も解釈しやすいマップであった。原子モデルの精
製は、6オングストロームから2.5オングストロームま
でFobが1σ(Fob)を超えるデータをすべて利用して、
形態1、形態3および形態4について別々に行われた。
ジフテリア毒素の構造−結果 ジフテリア毒素は、インタードメインリンカー(inte
rdomain linker)によって接続させた3つの隣接領域か
ら成る。N末端Cドメインは残基1番から193番まで、
中間のTドメインは残基205番から378番まで、C末端R
ドメインは残基386番から535番までから各々成る。ジフ
テリア毒素は、Tドメインで形成された塩基で形づくら
れたY型をしており、Yの一方の腕はCドメインで形成
され、他方はRドメインで形成されている。このYは、
約90オングストロームの高さで、Yの腕の頂点間の距離
は約50オングストロームであるが、厚さは30オングスト
ロームしかない(図1)。
3ドメイン各々の層は異なっている。Cドメインは、
CB1からCB8までの8本のβ鎖とCH1からCH7までの7つの
αヘリックスとの混合構造である。これらの8本のβ鎖
は、各々3本鎖と5本鎖から成るβシートを形成する。
このβシートは、7個のショートヘリックスに囲まれた
コアを形成する。Cドメイン全体の重なりは、緑膿菌外
毒素A(ETA)と、特に活性部位に近い点が似ている(A
llured et al.,1986,Proc Natl Acad Sci USA 83:1320
−1324)が、この結果はアミノ酸配列の類似性が低いこ
とから予想されていた(Carroll et al.,1988,Mol Micr
obiol 2:293−296、Brandhuber et al.,1988,Proteins
:146−154)。Sixmaら、(Sixma et al.,1991,Nature
351 371−377)は、最近、E.col熱不安定性エンテロト
キシンの活性部位の重なりが、ETAの重なりと非常に密
接に類似していることを証明した。Tドメインは、TH1
からTH9までの9個のヘリックスを含み、それらは3つ
のヘリックス層に折り重ねられている。各層は、2つ以
上の逆平行ヘリックスによって形成されている。同様の
特徴は、コリシンAのチャネル形成ドメインの構造にも
認められている(Parker et al.,1989,Nature 377:93−
96)。Rドメインは、RB1からRB10までの10本のβ鎖を
含み、そのうちRB2からRB10までの9本は、2つのβシ
ートを構成する。これら2つのβシートは、ゼリーロー
ル層と同様のトポロジーでβサンドイッチを形成する
(Richardson,1981,Adv Protein Chem 34:167−339)。
ジフテリア毒素の3ドメインの構成は、他の二つの細菌
性毒素すなわちETAとBacillus thuringiensis由来のδ
−エンドトキシンが共有している(Li et al.,1991,Nat
ure 353:815−821)。ジフテリア毒素およびETAの触媒
ドメインは、構造および機能においてこれらのドメイン
すべての中で最も良く似ている。
触媒ドメイン 我々は、Cドメインは、活性部位クレフト(cleft)
の境界を定める2つのβシートサブドメインから形成さ
れていると考えている(図2)。これらのβシートは、
互いに概ね垂直に配向され、ドメインの中核を成してい
る。サブドメインの一つは、β鎖CB2、CB4およびCB8か
ら成り、αヘリックスCH2、CH3、CH6およびCH7によって
囲まれている。他のサブドメインは、ヘリックスCH1、C
H4、およびCH5によって囲まれたβ鎖CB1、CB3、CB5、CB
6、およびCB7から成る。2つのサブドメインは、伸張ル
ープCL1からCL4によって接続され、これによって2つの
サブドメインは連結されている。これらの4ループは、
潜在的に柔軟性があり、細長い形状に拡張すらできると
思われる。Cドメインは、膜輸送中でこの部分的に重な
らない構造になり得ると考えられる。
Cドメインの活性部位クレフト(cleft)は、ジヌク
レオチドApUpの結合によって識別され、β鎖CB2、CB3、
CH3、CB7とループ、CL2によって一次的に構成され、R
ドメインのβ鎖RB6によって結合される。活性部位クレ
フト(cleft)内にあるのは、触媒の重要な役割を果た
すと思われるGlu148(Carroll et al.,1984,Acad Sci U
SA 81:3307−3311)と、NAD+結合に関与したHis21(Pap
ini et al.,1989,J Biol Chem 264:12685−12388)およ
びTyr65(Papini et al.,1991,J Biol Chem,266:2494−
2498)および、Gly52(Carroll et al.,1984,Proc Natl
Acad Sci USA,81:3307−3311、Giannini et al.,1984,
Nuc Acid Res,12:4063−4069)、Trp50(Collins et a
l.,1985,Biochim Biophys Acta 828:138−143)、Lys39
(Zhao et al.,1988,Biochemistry,27:3398−3403)やL
ys474(Proia,1980,J Biol Chem,255:12025−12033)な
どの活性部位またはその付近にあることが示唆されるそ
の他のさまざまな残基である。ジフテリア毒素およびET
AのCドメインのα炭素配位の方形重複が最小になれ
ば、85残基(ジフテリア毒素の16番から33番まで、34番
から38番まで、49番から66番まで、75番から90番まで、
91番から96番まで、131番から136番まで、147番から164
番までと、ETAの437番から452番まで、454番から458番
まで、465番から482番まで、493番から508番まで、511
番から516番まで、540番から545番まで、552番から569
番まで)の間のr.m.s.差は、1.44オングストロームにな
る。
ApUpであるジヌクレオチドは競合的にNAD+に結合する
ので、活性部位の基質NAD+の位置を概ね推定することが
できる。ApUp(NAD+について8μMまでから16μMまで
と比較して0.3nM)の親和力が高い場合(Carroll et a
l.,1986,Biochemistry,25:2425−2430)、Cドメインと
多重接触し、ApUpの3'−末端リン酸とThr42およびRド
メインの残基であるArg458'の側鎖との間に塩橋が生じ
る可能性がある。結合ApUpの構造はNAD+に類似している
が、NAD+とApUpの共有構造には、クレフト(cleft)に
おけるNAD+のコンホメーションの予測が困難であるとい
う十分な差異がある。NAD+のリン酸アデニン部分がApUp
の同じコンホメーション部分に結合すると仮定すると、
ニコチンアミド環がウリジン環の部位に近接することに
なる。これによってニコチンアミド環はHis21、Tyr65
よびGlu148の側鎖に隣接する。
ドメインの接合点 ジフテリア毒素の分子内の2カ所のジスルフィド結合
は、分子表面上でハンドル様のループTL1を架橋する
(図1a)。この187番から200番までの14残基ループは、
フラグメントAをフラグメントBに連結する。このルー
プは、Argに富んでおり、容易にプロテアーゼによって
ニッキングされることが知られている(Moskaug et a
l.,1989,J Biol Chem 264:15709−15713、Collier et a
l.,1971,J Biol Chem 246:1496−1503)。このループを
ニッキングすると、フラグメントAおよびBは、ジスル
フィド結合によってのみ共有結合をする。ニッキングが
ジフテリア毒素の細胞障害作用に役割を果たす証拠はあ
り(Sandvig et al.,1981,J Biol Chem 256:9068−907
6)、ニッキングされたジフテリア毒素は、毒素の膜輸
送中に、このジスルフィド結合がエンドソームを減少さ
せる環境に晒される場合、遊離フラグメントAとフラグ
メントBに分離すると考えられている。第2のジスルフ
ィド結合では、フラグメントB内で残基461番と471番の
間に9残基ループが形成される。このループ付近の残基
456番、458番、460番、472番、474番は、正の電荷に富
み、活性部位クレフト(cleft)に面し、恐らくは、い
わゆるリン酸結合である「P部位」(Lory et al.,198
0,Proc Natl Acad Sci USA 77:267−271)を形成してい
る。
この構造は、CドメインがフラグメントAとフラグメ
ントBの形態に解離するまでの間、EF−2のADPのリボ
シル化を触媒する際に、どうしてジフテリア毒素全体は
不活性であるのかということを示唆する。図1bに示すよ
うに、活性部位は、CドメインとRドメインのインタフ
ェースで形成されている。活性部位へのエントリーは、
18残基ループCL2とRドメインによって遮蔽されてい
る。このため、ジフテリア毒素全体では、活性部位への
EF−2(Mr=〜100K)のアプローチは遮断されている。
ジフテリア毒素全体の中で活性部位はNAD+に接近できる
が、生理学的には重要ではないと思われる低速度の側鎖
反応であるNAD-糖加水分解(glycohydrolysis)を触媒
する。ループCL2内で二次構成要素が不足すれば、その
ループの主鎖原子が実質的に移動できるので、活性部位
に基質を侵入させることができる。
膜内外ドメイン ジフテリア毒素について解決できていない大きな疑問
は、pHが低い環境のエンドソームがどのようにジフテリ
ア毒素のエンドソーム膜への挿入を誘発し、この挿入に
よってCドメインへの細胞質輸送がどのように容易にな
るのかである。Tドメインの構造には、膜へのpH誘発に
よる挿入がどのように行われるかを示唆する2つの特徴
がある。第1の特徴は、Tドメインが完全にαヘリック
ス状であり、既知および提案された膜内外タンパク質に
類似し、αヘリックスの中には球状タンパク質よりも膜
内外ヘリックスに典型的に見られる疎水特性を示すもの
があることである(Ress et al.,1989,Science 245:510
−513)。9個のヘリックスは、ほぼ3層に配置され、
各層はヘリックスの逆平行対から成る。2つの長いC末
端ヘリックスTH8およびTH9は、通常無極性であり、中心
のコア層を構成する。ヘリックスTH5からTH7までから成
るフランキング層は、疎水ヘリックスTH6およびTH7も含
む。対照的に、残りの層はヘリックスTH1からTH3までか
ら成り、球状タンパク質と比較しても極めて疎水性があ
る。Tドメインに関する第2の注目すべき特徴は、これ
らのらせん対を接続するループの酸の組成である。すな
わち、ヘリックスTH5とTH6の間のループTL3と、疎水ヘ
リックスTH8とTH9の間のループTL5は、合計6個のAsp残
基とGlu残基を含む(図3a)。pHが中性の場合、これら
のループは非常に帯電しており、水溶性である。しか
し、酸性pHでは、これらの残基は少なくとも部分的にプ
ロトン化されているので、特に、表面の電位によってさ
らにプロトン濃度が高い膜表面付近では、さらに中性に
近くなり、膜に溶けやすくなる(McLaughlin,1977,Curr
Topics Memb Transport :71−144)。このため、エ
ンドソーム内側の低いpHは、これらのチップ形状のルー
プを膜溶性「ダガー(dagger)」にする傾向があり、2
つの無極性らせん対が膜に導かれることになる。
Tドメインのその他の構造的特性は、膜への挿入能力
があり、Cドメインの輸送を支援できることである。第
1の特性は、他の層が挿入された場合には、ヘリックス
3層のほぼ平行なパッキングを第1のヘリックス層(TH
1〜TH3)の膜表面に拡散させることができることであ
る。この挿入では、ループが局部的にコンホメーション
変化しなければならないが、らせん自体は変化しなくて
良い。顕著な疎水非対称性は提案された再配置と適合
し、16のLys残基の15およびArg残基とTドメインの全て
の6His残基は、「ダガー(dagger)」先端から反対側に
位置し(図3b)、Asp残基とGlu残基が中性化されれば、
ドメイン全体を疎水双極子にする。つまり、我々は、ヘ
アピンループTL5と恐らくはTL3とを、膜に交差させ、As
p残基とGlu残基を再び中性pHの細胞質に充填することを
提案しているのである。
受容体結合ドメイン Rドメインは、2つのβシートから形成される。β鎖
RB2、RB3、RB5およびRB8は、4連鎖(four−stranded)
βシートを形成し、β鎖RB4、RB6、RB7、RB9およびRB10
を含む5連鎖(five−stranded)βシートに面する。RB
6は水素結合によって両方のβシートに相互作用する。
これらの鎖の接続は、Rドメインが逆平行β鎖からのみ
形成される多くのタンパク質で見られるゼリーロールト
ポロジーに類似しているようなものである(Richardso
n,1981,J Adv Protein Chem 34:167−339)。ゼリーロ
ールドメインは、ウイルス性被覆タンパク質と、腫瘍壊
死因子と、ETAの受容体結合ドメインを有する。このド
メインは、「前方」のシートに鎖2があり「後方」には
鎖10がある点が厳密なゼリーロールトポロジーとは幾分
異なる(図4)。Rドメインは、免疫グロブリン(Ig)
の可変ドメインと良く似ているが、鎖4と7との間に鎖
5と6が「挿入」し、4と5の間の2本の短い鎖(図4
ではC′とC")が内点がIg層とは異なる。トポロジーが
ゼリーロールと厳密に似ているR領域のタンパク質は、
図4の右側であり、Ig可変ドメインに似たタンパク質
は、左側である。左側は、ジフテリア毒素単量体の残部
から離れている。このIg可変様の半分が受容体認識に関
与していると思われる。
R領域構造は、ジフテリア残基496番から512番から成
るβ鎖RB8とRB9との間の大型ループを示す。このループ
は、HA6DTペプチド内で唯一有意なサイズの柔軟なルー
プであり(上述のRolf et al)、疎水性があり表出され
ているので、このループは受容体結合領域の候補として
相応しい。アミノ酸残基521番から524番を有し、Ig可変
領域に類似する有意なループもある。このループは、49
6番から512番残基のループと組み合わせるか、別の結合
受容体領域として受容体結合において機能する。ループ
に対して、コンホメーションを修正するには、521番か
ら524番を囲む別のアミノ酸、例えば、残基517番から52
8番、517番から525番、517番から528番などを含む必要
もある。
さらに、Tドメインの二次構造の最後の要素を接続す
るループ(残基378で終わるヘリックスTH9)とR領域の
第1の要素(残基386から始まるβ鎖RB1)がある。この
ループは、アミノ酸であるアラニン379番とトレオニン3
86番の間に存在するR領域の境界を定義する。この位置
から開始しジフテリア毒素のカルボキシ末端に及ぶR領
域のポリペプチドは、157アミノ酸(予想MWは、17,22
1)から150アミノ酸(予想MWは、16,480)までを含むと
考えらる(表2)。
ジフテリア毒素二量体 2つの単量体は、密接に結合し、一方のジフテリア毒
素分子のRB1/RB2と2つ折り回転対称(2−fold rotati
on symmetry)によって関連づけられる他方のジフテリ
ア毒素分子のRB2/RB1との間にインタフェースを有する
二量体を形成する(図1d)。このインタフェースは、結
晶パッキング時の主な3つのタンパク質−タンパク質接
触(protein−protei contct)の一つであり、単量体あ
たり3つの水素結合が関与する。これらの水素結合は、
RB1およびRB2の主鎖NおよびCの原子との間で形成され
るので、十分に定義される。その他のインタフェース
は、3つの異なる結晶形態では共通点がない。二量体が
ジフテリア毒素受容体に結合できないこと(Carroll et
al.,1986,Biochemistry 25:2425−2430)は、二量体の
相互作用が立体的に標的細胞の表面の受容体から各単量
体の受容体結合ドメインを遮断することを示唆してい
る。二量体内の単量体と自然の単量体ジフテリア毒素の
コンホメーションの違いは、わかっていないが、生物化
学的な証拠から、大きな違いはないことが示唆される。
結合データから、ApUpに対する二量体の親和定数が単量
体の定数と同じであり、二量体は2つのApUpを結合する
ことがわかる(Carroll et al.,1986,Biochemistry,25:
2425−2430)。さらに、NAD−糖加水分解酵素(glycohy
drolase)活性の比較可能な特異活性とNAD+に対する親
和性が、単量体と二量体に認められた。還元後、二量体
から放出されたフラグメントAの特異的なADP−リボシ
ル転移酵素活性は、単量体の活性と同じであった(Carr
oll et al.,1989,Biochemistry 25:2425−2430)。これ
らの所見は、CドメインのコンホメーションとCドメイ
ンをインタフェースするRドメイン部分のコンホメーシ
ョンは、二量体で相対的に摂動されない。
使用 ジフテリア毒素の3次元構造によって、Rドメインと
Tドメインとの境界が定義され、受容体結合機能は孤立
性の小型ドメインであるR領域に対応し、残基496番か
ら512番まで、および/または残基521番から524番まで
そのいずれかに最も位置付けられやすい(図5、配列番
号1)。このR領域ポリペプチドは、ジフテリアに対す
る新規のワクチンまたは治療剤の開発に用いることがで
きる。
例えば、本発明に係るポリペプチドは、ジフテリア毒
素に反応する免疫原として使用することができる。これ
のみを精製タンパク質生成物として投与したり、安定性
または体内を輸送する能力を高める破傷風毒素などの担
体物質に化学的に結合して投与することができる。本発
明に係るポリペプチドは、アジュバントに組み合わせて
免疫原性を増大させることもできる。考えられるアジュ
バントは、アルミニウム塩、BCGまたは百日咳菌などの
細菌性内毒素または弱毒化ウイルス性株、弱毒化ウイル
ス、リポソーム、または、水性および油性エマルション
±加熱殺菌結核菌(water and oil emulsion ± heat−
killed Mycobacterium tuberculosis)であるフロイン
トの完全アジュバントもしくは不完全アジュバントなど
がある。R領域ポリペプチドは、R領域ポリペプチドを
コードする生物分解性伝達DNAによって投与後in situで
発現させることもできる(Tang et al.上述)。本発明
に係る免疫原は、ジフテリアの進行またはジフテリア菌
による感染からレシピエント(recipient)を保護する
ことができる抗体反応を高める。
R領域ポリペプチドを含む融合タンパク質は、ジフテ
リア毒素に対して、従ってジフテリア感染によって引き
起こされた疾患状態に対して、能動免疫を付与するさま
ざまな担体ワクチン微生物によって発現することができ
る。融合タンパク質の一部として、R領域ポリペプチド
を、Hemophilus、インフルエンザ菌(influenzae)、髄
膜炎菌(menigococci)、肺炎球菌(pneumococci)など
に止まらず、病原体由来の多糖または細胞表面ペプチド
などの、その他の安定性が低い免疫原に対する担体とし
て使用することができる。TドメインおよびCドメイン
とRドメインとの間の境界を明らかにすることによっ
て、ジフテリア毒素のより効果的なキメラを設計するこ
とができるようになる。
さらに、予防接種に用いるには、ジフテリア毒素のR
領域のポリペプチドを別の薬化学的に有用なポリペプチ
ドに融合するハイブリッドタンパク質技術は、不安定な
治療剤を別の方法で輸送し、安定化し、伝達させる方法
に役立つと思われる。ポリペプチドを治療剤に付着させ
る遺伝的方法とは別に、R領域ポリペプチドを化学的に
付着し、担体として機能させ、非ペプチド剤をジフテリ
ア毒素受容体を保持する細胞へ伝達させることができ
る。化学基を還元アルキル化によって付着させることも
できる。
本発明に係るR領域ポリペプチドは、臨床的にジフテ
リアを処置する際に治療上有用になる。抗毒素抗体のよ
うに、ジフテリア毒素受容体への毒素の結合を遮断し、
抗毒素療法を不要にし、あるいは、必要な抗毒素の量を
低減することができる。HIVなどの輸血感染症を引き起
こすリスクやヒト以外の抗体を使用して誘導された抗−
抗毒素抗体などの抗毒素抗体の使用に関する問題を考え
ると、本発明に係るポリペプチドの使用は、非常に有望
である。
R領域ポリペプチドの調製 本発明に係るポリペプチドは、有機化学合成によって
合成し、生合成ポリペプチドとして生産し、あるいは、
本発明に係るアミノ酸配列を含む大型のタンパク質から
切除することができる。例えば、有機化学合成を従来の
自動ペプチド合成方法によって行ったり、古典的な有機
化学合成技術によって行うことができる。R領域ポリペ
プチドは、完全なジフテリア毒素またはフラグメントB
から切除するか、R領域ポリペプチドを含む融合タンパ
ク質から切除することができる。これは、自然のジフテ
リア毒素を用いて行うことができるが、この代わりに、
ジフテリア毒素をコードするDNAをTM/R領域境界にプロ
テアーゼ感応部位などを含ませるなどの方法で突然変異
させることができる。次にジフテリア毒素タンパク質ま
たはフラグメントBをCarrollらの方法(Carroll et a
l.,1988.Meth Enzymol 165:68−76)で精製し、導入さ
れたプロテアーゼ感応部位に特異的なプロテアーゼによ
って切断することができる。
本発明に係るR領域ポリペプチドは、R領域ポリペプ
チドをコード化する遺伝子工学的に処理したDNAから生
物学的に合成することができる。本発明に係るポリペプ
チドをコードするDNA配列は、原核宿主細胞で発現させ
ることができる。R領域ポリペプチドをコードするDNA
は、ベクターに操作自在に連結され、原核宿主での発現
に影響を与える信号を調節する。必要に応じて、このコ
ード化配列は、5'−末端で、発現タンパク質宿主細胞の
周辺腔に効果的に分泌することができる全ての既知のシ
グナル配列をコードする配列を含み、タンパク質の回収
を容易にすることができる。最も多く使用される原核生
物は、大腸菌(E.Coli)の様々な株によって表現される
が、ジフテリア菌などのその他の微生物株を用いること
もできる。複製起点、選択マーカー、微生物の宿主とし
て適合する種由来の制御配列(control sequence)を含
むプラスミドベクターが使用される。例えば、大腸菌
は、2つをサルモネラ属の種から単離し、1つを大腸菌
から単離した計3つの天然に存在するプラスミドを用い
て、Bolivarらによって構成されたプラスミドであるpBR
322の誘導体(1977,Gene :95)を使用し形質転換する
ことができる。pBR322は、アンピシリン耐性およびテト
ラサイクリン耐性の遺伝子を含み、所望の発現ベクター
を構成する際に保持または破壊することができる複数の
選択マーカーを提供する。一般に用いられる原核発現制
御配列(control sequences)は、「調節」要素とも呼
ばれ、本文では、リボソーム結合部位配列とともに、任
意にオペレータを用いて転写開始をするためのプロモー
タを有するものとして定義されている。タンパク質発現
させるために一般に使用されるプロモータには、βラク
タマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトース(lac)(Cha
ng et al.,198 Nature 1056,1977)およびトリプトファ
ン(trp)プロモータ系(Goeddel et al.,8 Nucl.Acids
Res.4075,1980)などのほか、λ誘導PLプロモータやN
遺伝子リボソーム結合部位(Shimatake et al.,292 Nat
ure 128,1981)。微生物性株、ベクター、関連調節配列
は、あくまでも本発明の説明のために記載したものであ
ってこれに限定するものではない。
当業者は、沈殿法、クロマトグラフィー、免疫吸着、
またはアフィニティー技術などに限らず、タンパク質を
単離する従来の方法を用いて本発明に係るR領域ポリペ
プチドを精製することができる。このポリペプチドは、
プロテアーゼ処置したジフテリア毒素または、R領域ポ
リペプチドを発現するよう遺伝子工学的に処理された微
生物株の細胞、細胞培地を用いて出発材料から精製する
ことができる。上述の方法と同様に、R領域のポリペプ
チドを、マルトース結合タンパク質のフラグメントやグ
ルタチオン−S−トランスフェラーゼタンパク質などの
別の組換えタンパク質に融合させて精製することができ
る。これらの融合構成物は、ベクターpMAL(New Englan
d Biolabs)またはベクターpGEX−3Xもしくは−2T(Pha
rmacia)などで構成することができ、これらは、各々、
マルトース結合タンパク質またはグルタチオン−S−ト
ランスフェラーゼタンパク質に特異な親和カラムで精製
される。
R領域ポリペプチドの発現 例では、本発明に係るポリペプチドを発現するベクタ
ーまたは本発明に係るポリペプチドを有する融合タンパ
ク質は、(i)プラスミドpBR322由来の大腸菌に官能的
な複製起点と、(ii)pBR322由来の選択可能なテトラサ
イクリン耐性遺伝と、(iii)テトラサイクリン耐性遺
伝子末端に位置しtrpプロモータ領域への転写リードス
ルーを阻止する大腸菌trpオペロンなど、転写端末領域
と、(iv)trpオペロンプロモータまたはジフテリア毒
素プロモータなどの転写プロモータと、(v)配列をコ
ード化するR領域タンパク質と、(vi)大腸菌のリボソ
ームRNA(rrnB)遺伝子座から得られた配列T1T2を有す
る。担体分子の配列、DNA配列の合成に用いられる方
法、適切なベクターおよび発現系は、当業者らに周知の
ものである。同様の発現系を融合ポリペプチド用および
非融合ポリペプチド用に、すなわち、R領域ポリペプチ
ドのみを発現するために設計することができる。これら
のプロシージャは、一例であり、本発明に係る方法を限
定するものではない。
治療用組成物の投与 本発明に係るポリペプチドを哺乳類、特にヒトに、経
口、非経口、経皮、経粘膜などの適切な方法で投与する
ことができる。投与は、生物分解性の生物学的に適合し
たポリマーを使用して、ミセル、ゲル、リポソームの形
態で現場に運んでまたは形質転換形態で、遊離した形態
で行う。治療投与量は、必ずというわけではないが、0.
1−10.0mg/kg体重の範囲または当業者によって臨床的に
適切と判断された範囲であれば良い。
ワクチン投与 本発明に係るR領域ポリペプチドは、患者に直接ジフ
テリア毒性に対するワクチンの免疫原として投与するこ
とができる。また、ポリペプチドを生きた弱毒ワクチン
株の状態で投与することもできる。投与した弱毒化組織
は、増殖し、クローン化した保護タンパク質抗原を発現
し、弱毒化組織自体とR領域ポリペプチドなどのクロー
ン抗原から保護することができる。生きた弱毒ワクチン
株は、BCG、サルモネラ種、コレラ菌などがあるが、こ
れに限るものではない。R領域ポリペプチドをコード化
する核酸を有するこれらの株の形質転換の一つは、当業
者に既知の従来の方法で行うことができる。
ワクチンは、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワ
クシニアウイルスなどの弱毒化ウイルスによって保持す
ることができる。また、ワクチンは、R領域ポリペプチ
ドの発現可能な形態をコードするDNAをワクチンの細胞
に直接取り込む生物分解性伝達によって投与することが
できる。患者へのポリペプチドの効果的な最終投与量
は、1.0−500μg/kg体重か、当業者らによって臨床的に
適切と定められた範囲であれば良い。
その他の態様は、以下の請求の範囲に含まれる。
配列表 (1)一般情報: (i)出願者:R.John Collier David Eisenberg Haian Fu Seunghyon Choe (ii)発明の名称:ジフテリア毒素受容体結合領域 (iii)配列の数:1 (iv)連絡先: (A)ADDRESS:Fish & Richardson (B)STREET:225 Franklin Street (C)市:ボストン (D)州:マサチューセッツ (e)国:アメリカ合衆国 (f)郵便番号:02110−2804 (v)コンピュータ読取形式: (A)媒体型:3.5インチディスク、1.44Mb (B)コンピュータ:IBM PS/2 Model 50Zまたは55S
X (C)オペレーティングシステム:IBM P.C.DOS(Ve
rsion 3.0) (D)ソフトウェア:WordPerfect(Version 5.0) (vi)現在の出願データ (A)出願番号: (B)提出日: (C)分類: (vii)従来の出願データ (A)出願番号: (B)提出日: (viii)代理人/弁理士情報: (A)氏名:Janis K.Fraser (B)登録番号:34,819 (C)参照/事件番号:00246/143001 (ix)通信情報: (A)電話:(617)542−5070 (B)テレファクス:(617)542−8906 (C)テレックス:200154 (2)配列番号に対する情報:1 (i)配列の特性: (A)配列の長さ:1942 (B)配列の種類:核酸 (C)鎖の数:2本 (D)トポロジー:直鎖状 (xi)配列の記載:配列番号:1 配列表 (1)一般情報: (i)出願者:R.John Collier David Eisenberg Haian Fu Seunghyon Choe (ii)発明の名称:ジフテリア毒素受容体結合領域 (iii)配列の数:1 (iv)連絡先: (A)ADDRESS:Fish & Richardson (B)STREET:225 Franklin Street (C)市:ボストン (D)州:マサチューセッツ (e)国:アメリカ合衆国 (f)郵便番号:02110−2804 (v)コンピュータ読取形式: (A)媒体型:3.5インチディスク、1.44Mb (B)コンピュータ:IBM PS/2 Model 50Zまたは55S
X (C)オペレーティングシステム:IBM P.C.DOS(Ve
rsion 3.0) (D)ソフトウェア:WordPerfect(Version 5.0) (vi)現在の出願データ (A)出願番号: (B)提出日: (C)分類: (vii)従来の出願データ (A)出願番号: (B)提出日: (viii)代理人/弁理士情報: (A)氏名:Janis K.Fraser (B)登録番号:34,819 (C)参照/事件番号:00246/143001 (ix)通信情報: (A)電話:(617)542−5070 (B)テレファクス:(617)542−8906 (C)テレックス:200154 (2)配列番号に対する情報:1 (i)配列の特性: (A)配列の長さ:1942 (B)配列の種類:核酸 (C)鎖の数:2本 (D)トポロジー:直鎖状 (xi)配列の記載:配列番号:1
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C07K 1/12 C07K 19/00 19/00 C12N 1/21 C12N 1/21 C12P 21/02 C 15/09 C12R 1:19 C12P 21/02 C12P 21/02 //(C12N 1/21 C12N 15/00 A C12R 1:19) A61K 37/02 (C12P 21/02 C12R 1:19) (72)発明者 コリアー アール ジョーン アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 ウェルスレイ ヒルズ ガーデン ロー ド 43 (72)発明者 エイゼンバーグ デビッド アメリカ合衆国 カリフォルニア州 ロ サンゼルス コムストック アベニュー 342 (72)発明者 エフユー ハイアン アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 オールストン フランクリン ストリー ト 65 (72)発明者 チョー ションヤン アメリカ合衆国 カリフォルニア州 レ セダ ダービィー プレイス 7311 (56)参考文献 J.Biol.Chem.(1990), 265(23),p.7331−7337 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) BIOSIS(DIALOG) EUROPAT(QUESTEL) WPI(DIALOG) SwissProt/PIR/GeneS eq GenBank/EMBL/DDBJ/G eneSeq

Claims (32)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】配列番号:1の a)アミノ酸379番から535番まで、 b)アミノ酸380番から535番まで、 c)アミノ酸381番から535番まで、 d)アミノ酸382番から535番まで、 e)アミノ酸383番から535番まで、 f)アミノ酸384番から535番まで、 g)アミノ酸385番から535番まで、 h)アミノ酸386番から535番まで、 l)アミノ酸381番から512番まで、 m)アミノ酸382番から512番まで、 n)アミノ酸383番から512番まで、 o)アミノ酸384番から512番まで、 p)アミノ酸385番から512番まで、または q)アミノ酸386番から512番まで、 からなるポリペプチド。
  2. 【請求項2】精製されたポリペプチドである、請求の範
    囲第1項記載のポリペプチド。
  3. 【請求項3】請求の範囲第1項記載のポリペプチドをコ
    ードするDNAであって、請求の範囲第1項記載の前記ポ
    リペプチドのアミノ末端終端に直接隣接する配列番号:1
    のアミノ酸291番から379番に対応するアミノ酸配列をコ
    ードしない前記DNA。
  4. 【請求項4】請求の範囲第3項記載の前記DNAを含むベ
    クター。
  5. 【請求項5】請求の範囲第3項記載の前記DNAを含む細
    胞。
  6. 【請求項6】前記細胞が前記ポリペプチドを発現するこ
    とができることを特徴とする請求の範囲第5項記載の細
    胞。
  7. 【請求項7】前記細胞が担体ワクチン微生物であること
    を特徴とする請求の範囲第6項記載の細胞。
  8. 【請求項8】前記DNA配列が異種プロモータの転写制御
    下にあることを特徴とする請求の範囲第4項記載のベク
    ター。
  9. 【請求項9】前記アミノ酸がシグナル配列に連結してい
    ることを特徴とする請求の範囲第4項記載のベクター。
  10. 【請求項10】各々が請求の範囲第3項記載のDNAを含
    む細胞から成る細胞集団。
  11. 【請求項11】請求の範囲第1項記載のポリペプチドを
    コード化する配列を含む核酸であり、請求の範囲第1項
    記載の前記ポリペプチドのアミノ末端終端に直接隣接す
    る配列番号:1のアミノ酸291番から379番に対応するアミ
    ノ酸配列をコードしないことを特徴とする核酸。
  12. 【請求項12】ポリペプチドの調製方法において、 請求の範囲第6項記載の細胞を提供し、 前記細胞を培地で育成し、前記ポリペプチドを発現させ
    る細胞母集団を形成し、前記細胞母集団または前記培地
    から前記ポリペプチドを取得することを特徴とする調製
    方法。
  13. 【請求項13】請求の範囲第1項記載のポリペプチドを
    形成する方法において、前記ポリペプチドを化学合成に
    よって調製することを特徴とする方法。
  14. 【請求項14】請求の範囲第1項記載のポリペプチドを
    形成する方法において、前記ポリペプチドを生物学的合
    成によって調製することを特徴とする方法。
  15. 【請求項15】ジフテリア治療用組成物において、 請求の範囲第1項記載のポリペプチドと、薬化学的に許
    容できる担体と、 を含むことを特徴とする治療用組成物。
  16. 【請求項16】非ヒト細胞の中毒をジフテリア毒素によ
    って阻止する方法において、 前記細胞の中毒を阻止する量の請求の範囲第1項記載の
    ポリペプチドに接触させることを特徴とする方法。
  17. 【請求項17】請求の範囲第1項記載のポリペプチドを
    含むジフテリアに対するワクチン。
  18. 【請求項18】請求の範囲第3項記載のDNAを含む弱毒
    化ウイルスベクターを含むことを特徴とするジフテリア
    に対するワクチン。
  19. 【請求項19】請求の範囲第3項記載のDNAを含む弱毒
    化細菌を含むことを特徴とするジフテリアに対するワク
    チン。
  20. 【請求項20】請求の範囲第4項記載のベクターを含む
    ことを特徴とするジフテリアに対するワクチン。
  21. 【請求項21】別のポリペプチドに結合したペプチドに
    よって連結される請求の範囲第1項記載のポリペプチド
    から成る融合ポリペプチドにおいて、前記融合ポリペプ
    チドが請求の範囲第1項記載の前記ポリペプチドのアミ
    ノ末端終端に直接隣接する配列番号:1のアミノ酸291番
    から379番に対応するアミノ酸配列をコードしないこと
    を特徴とする融合ポリペプチド。
  22. 【請求項22】請求の範囲第21項記載の融合ポリペプチ
    ドを含むことを特徴とするジフテリアに対するワクチ
    ン。
  23. 【請求項23】請求の範囲第21項記載の融合ペプチドを
    コード化するDNA。
  24. 【請求項24】請求の範囲第23項記載のDNAを含む細
    胞。
  25. 【請求項25】前記細胞が前記ポリペプチドを発現する
    ことができることを特徴とする請求の範囲第24項記載の
    細胞。
  26. 【請求項26】前記細胞が担体ワクチン微生物であるこ
    とを特徴とする請求の範囲第25項記載の細胞。
  27. 【請求項27】前記ポリペプチドが化学基に付着してい
    ることを特徴とする請求の範囲第1項記載のポリペプチ
    ド。
  28. 【請求項28】請求の範囲第27項記載のポリペプチド
    と、薬化学的に許容できる担体と、を有することを特徴
    とするジフテリア治療用組成物。
  29. 【請求項29】前記化学基は、担体物質を含むことを特
    徴とする請求の範囲第27項記載のポリペプチド。
  30. 【請求項30】前記ポリペプチドが前記化学基の担体と
    して機能することを特徴とする請求の範囲第27項記載の
    ポリペプチド。
  31. 【請求項31】請求の範囲第1項記載のポリペプチド
    と、アジュバントを含むことを特徴とするジフテリアに
    対して免疫化するための組成物。
  32. 【請求項32】請求の範囲第31項記載の組成物を含むこ
    とを特徴とするジフテリアに対するワクチン。
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