JP2003503059A - 破傷風毒素ポリペプチド - Google Patents

破傷風毒素ポリペプチド

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フェアウェザー,ニール・フレイザー
シンハ,カサリン
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Abstract

(57)【要約】 破傷風毒素(TeNT)フラグメントCまたはそれの免疫原性フラグメントを含むポリペプチドであって、該破傷風毒素フラグメントCまたはそれの免疫原性フラグメントがループ領域において突然変異を含んでおり、該突然変異が、破傷風毒素フラグメントCもしくはそれの免疫原性フラグメントのガングリオシドへの結合性の低下、および/または破傷風毒素フラグメントCもしくはそれの免疫原性フラグメントの一次運動ニューロンへの結合性の低下、および/または破傷風毒素フラグメントCもしくはそれの免疫原性フラグメントが逆行性輸送を受ける能力における低下を生じさせるポリペプチド。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (発明の分野) 本発明は、破傷風毒素(tetanus toxin:TeNT)のフラグメ
ントCに由来するポリペプチドと、ワクチン組成物におけるこのポリペプチドの
使用に関する。
【0002】 (発明の背景) 破傷風は、微生物破傷風菌(Clostridium tetani)によっ
て惹起される非常に感染性のある全世界に及ぶ疾患である。その胞子は、開放創
(open wound)に対する感染症の主要原因であるハウスダスト中や土
壌中において、無期限に休眠状態で存在することができる。汚染動物の糞便はこ
の疾患が蔓延する原因にもなり、さらに以前には感染していなかった局所を汚染
させることがある。
【0003】 破傷風感染は常に傷ついたヒトや動物にとってリスクとなり、たいていは大き
な疼痛を伴い、死亡の原因となることさえある。そこで、原因物質が細菌である
ことが発見された19世紀には、有効なワクチンの開発に大きな努力が費やされ
てきた。ヒト被検者において最初のワクチン接種が実行されて成功が収められた
のは1926年であり、このとき使用されたワクチンは無毒性にするための処理
が施された天然の破傷風毒素を含有していた。
【0004】 破傷風毒素は最初のワクチンのためのターゲットを提供したが、これは破傷風
の症状の原因が宿主細胞に感染する細菌ではなく、むしろ細菌細胞の溶解後に遊
離される強力な神経毒素であることが明らかになっていたためである。
【0005】 インビボでは軽鎖および重鎖の両方を含む単一(親)ペプチドが合成される。
細菌細胞が溶解すると、内生タンパク質は以前から存在するジスルフィド架橋間
でペプチドを開裂してジスルフィド架橋によって連結された2個のペプチド鎖を
生じさせる。
【0006】 パパインは重鎖を開裂させて軽鎖と重鎖の一部から構成されるフラグメントB
(100kDa)、および重鎖の残りから構成されるフラグメントC(50kD
a)を生じさせる。どちらのフラグメントも保護を提供できるが、未開裂毒素に
よる汚染を原因とする残留毒性に関連している可能性があることが証明されてい
る。
【0007】 破傷風毒素(tetanus toxin:TeNT)はボツリヌス毒素(b
otulinum toxin:BoNTs)を含むクロストリジウム神経毒素
(clostridial neurotoxin:CNTs)ファミリーに属
する毒素である。クロストリジウム神経毒素はシナプス小胞と細胞膜との融合に
関係するタンパク質のタンパク分解性開裂によってシナプス前神経細胞からの神
経伝達物質の遊離を阻害する。この開裂は亜鉛依存性メタロプロテアーゼをコー
ドするクロストリジウム神経毒素の50kDaのL鎖によって触媒される。クロ
ストリジウム神経毒素の総合的な構造的特性および機能的特性は極めて類似して
おり、類似のサブユニット構造および30〜40%のアミノ酸同一性を有してい
る(Minton,1995年)。末梢神経系内に残留するボツリヌス毒素とは
対照的に、破傷風毒素は逆行性軸索輸送(retrograde axonal
transport)によって中枢神経系へ運ばれ、それからシナプス経由で
抑制性介在ニューロン内へ分布させられる。これら毒素の区別可能な作用部位と
、それにあるこれら2種の疾患の区別可能な臨床症状を説明するのは、ボツリヌ
ス毒素と比較した破傷風毒素の差別的細胞トラフィッキング(differen
tial cellular trafficking)である。
【0008】 破傷風毒素およびボツリヌス毒素が、感受性細胞に結合するメカニズムは、組
織標本、一次細胞培養および細胞系を含む様々なインビトロ系において試験され
てきた。これらの試験、および他の試験は、破傷風毒素およびボツリヌス毒素が
膜受容体に結合し、毒素のL鎖のサイトゾル作用が起こる前に吸収されてしまう
ことを証明している。破傷風毒素の結合およびトラフィッキングに関係するステ
ップは詳細には特徴付けられていないが、小胞再取り込み中のシナプス小胞の取
り込みを通しての吸収を含んでいると思われる。ニューロン組織への破傷風毒素
の結合は、インビボでのHcの逆行性輸送およびインビトロでのラット脳膜並び
に一次神経細胞および神経芽細胞腫細胞系に結合する能力によって証明されるよ
うに、C末端50kDaドメイン(フラグメントCとしても知られている、Hc
ドメイン)を含んでいる。脊髄細胞に添加すると、VAMP−2開裂の阻害およ
び神経筋伝導の拮抗作用によって証明されるように破傷風毒素 Hcフラグメン
トは破傷風毒素の取り込みをブロックしたが、これはHcの結合が機能的である
ことを示している。Hcフラグメントだけはインビボで逆行性輸送を受ける能力
を保持するので、CNSへの異種タンパク質の担体として使用されている。
【0009】 ガングリオシドへの破傷風毒素結合が最初に証明されて以降、多くの試験がイ
ンビトロおよびインビボアッセイを使用してガングリオシドへのクロストリジウ
ム神経毒素の結合を特性付けることを試みてきた。破傷風毒素および分離Hcフ
ラグメントはどちらもガングリオシドGD1bおよびGT1bと結合するが、G
M1とは結合しないことは明確に証明されており、これは結合にはガングリオシ
ド内にポリシアル酸が必要であることを示している。細胞表面上にガングリオシ
ドが必要であることは、培養クロム親和細胞と破傷風毒素およびボツリヌス毒素
に対する感受性を増加させたGD1bまたはGT1bとののインキュベーション
によって証明された。ガングリオシド合成の阻害剤であるフモニシン(fumo
nisin)の存在下で増殖させた一次脊髄ニューロンの処理を含んでいた最近
の実験は、グリシン遊離およびVAMP反応性の保持のカリウム誘発性刺激の遮
断の欠如によって証明されたように、フモニシン処理細胞が、破傷風毒素に対し
て非感受性になることを証明している。さらにその上、フモニシン処理細胞は外
生的ガングリオシドの添加後に破傷風毒素への感受性を再獲得した。しかし多く
の実験的証拠は、ガングリオシドが破傷風毒素およびボツリヌス毒素に対する単
独受容体であることに関しては一致していない。例えば、ボツリヌス毒素および
破傷風毒素はどちらもガングリオシドに結合するが、体内での作用部位は相違し
ており、ポリシアロガングリオシドは神経細胞組織上では独自には存在しておら
ず、さらにラット脳膜および神経細胞系への破傷風毒素結合は、プロテアーゼ感
受性を有する。そこで、毒素がガングリオシドおよびタンパク質受容体の両方と
相互作用することを惹起する二重受容体モデルが提案されてきた。このモデルを
支持して、シナプス小胞の内腔に局在するシナプトタグミンIIはボツリヌス毒
素セロタイプB、並びにセロタイプAおよびBに対するタンパク質受容体である
と同定されている。一次脊髄運動ニューロンおよびNGF(神経成長因子)分化
PC12細胞を使用した架橋結合実験は、15kDa糖タンパク質が破傷風毒素
に対する可能性あるニューロン受容体であると同定した(Herrerosら、
J.Neurochemistry、印刷中)。この受容体は破傷風毒素のHc
ドメインのカルボキシル末端側にしか結合しない。
【0010】 現在認可されているワクチンは、溶解破傷風菌細胞から入手された不活性化毒
素に基づいている。十分な毒素を入手するためには大量の細胞培養を必要とする
が、これは細胞残屑で汚染された毒素を生じさせる傾向がある。結果として生じ
た毒素は通常はホルムアルデヒドを用いた処理によって無毒化(トキソイド化)
されるが、グルタールアルデヒドを用いて無毒化することもできる。しかし、ど
ちらの処理も毒素を無害にはするが、毒素と細胞汚染物質との接合を導く可能性
があり、これはかわるかわる可能性のある有害な臨床反応をもたらす可能性があ
る。
【0011】 破傷風毒素に対する構造遺伝子はクローニングかつシークケンスされており(
Fairweatherら、1986)、これは組み換え破傷風毒素の産生を可
能にした。破傷風毒素のフラグメントCを基剤とする組み換えワクチンについて
は当分野において記載されている(例えば、WO−A−9015871および欧
州特許第A−209281号を参照)。しかし、そのようなワクチンはガングリ
オシド結合活性を保持している。ガングリオシド結合に免疫された個体における
毒性が関連しているという決定的証拠はないが、ガングリオシド結合活性が低下
した破傷風毒素ポリペプチドを入手することは望ましいであろう。
【0012】 大腸菌(E.coli)において発現した欠失変異体を使用したHcフラグメ
ントのガングリオシド結合特性に関する試験は、HcのN末端領域が欠けた一部
の変異体はまだガングリオシドおよび神経細胞に結合するが、カルボキシル末端
アミノ酸が欠けている変異体は結合することができないことを証明している。H
alpernらによる試験(HalpernおよびLoftus,1993)は
、ガングリオシドおよび神経細胞両方の結合におけるHcのカルボキシル末端の
10個のアミノ酸(1306〜1315番目の残基)が重要な役割を果たすこと
を示唆した。HcをGT1bガングリオシド光親和性リガンドに結合させた試験
は、Hcのカルボキシル末端の34個のアミノ酸から構成されるペプチド(12
82−1315)内のHis−1293の修飾を解明した(Shapiroら、
1997)。この結果は、標識されていないGT1bガングリオシドを使用した
阻害試験と一緒に考察すると、ガングリオシドGT1bへの結合に対してはHc
の34個のアミノ酸から構成されるペプチドが十分である可能性があることを示
唆した。
【0013】 変異分子を大腸菌内で産生させ、精製し、ガングリオシド結合、細胞結合およ
びインビボ逆行性輸送検定においてアッセイした。我々の試験結果は、ガングリ
オシド結合のために必要な特定残基を同定し、さらにガングリオシド結合は低下
しているが一次神経細胞に結合して逆行性軸索輸送を受ける能力は保持している
一定の変異体を同定している。
【0014】 (発明の要約) 我々は、近年報告された三次元構造によって提供される構造情報(Umlan
dら、1997)を使用して破傷風毒素の一連の特定部位変異体を作成した。変
異分子を大腸菌内で産生させ、精製し、ガングリオシド結合、細胞結合およびイ
ンビボ逆行性輸送アッセイにおいて検定した。我々の試験結果は、ガングリオシ
ド結合におけるHis−1293についての役割を確証している。しかし我々は
さらにまた、その欠失変異がHis−1293単独について入手される結果より
ガングリオシド結合における大きな低下を導く、ガングリオシドに結合するため
に必要な破傷風毒素フラグメントCの他の領域を同定した。典型的には、これら
の領域はβシートの2つのセクションを結合するループ領域である。我々の試験
結果はさらにまた、ガングリオシド結合は低下しているが一次神経細胞に結合し
て逆行性軸索輸送を受ける能力は保持している一定の変異体を同定している。
【0015】 従って、本発明は、破傷風毒素(TeNT)フラグメントCまたはそれの免疫
原性フラグメントを含むポリペプチドであって、その破傷風毒素フラグメントC
またはそれの免疫原性フラグメントがループ領域において突然変異を含んでおり
、その突然変異が破傷風毒素フラグメントCまたはそれの免疫原性フラグメント
のガングリオシドへの結合における低下を生じさせるポリペプチドを提供する。
【0016】 本発明はさらにまた、破傷風毒素(TeNT)フラグメントCまたはそれの免
疫原性フラグメントを含むポリペプチドであって、その破傷風毒素フラグメント
Cまたはそれの免疫原性フラグメントがループ領域において突然変異を含んでお
り、その突然変異が破傷風毒素フラグメントCまたはそれの免疫原性フラグメン
トの一次運動ニューロン(motoneurone)への結合の低下を生じさせ
るポリペプチドを提供する。
【0017】 本発明はさらにまた、破傷風毒素(TeNT)フラグメントCまたはそれの免
疫原性フラグメントを含むポリペプチドであって、その破傷風毒素フラグメント
Cまたはそれの免疫原性フラグメントがループ領域において突然変異を含んでお
り、その突然変異が破傷風毒素フラグメントCまたはそれの免疫原性フラグメン
トの逆行性輸送の低下を生じさせるポリペプチドを提供する。
【0018】 好ましくは、突然変異は破傷風毒素フラグメントC(またはそれの免疫原性フ
ラグメント)のガングリオシドへの結合の低下および一次運動ニューロンへの結
合の低下および/または逆行性輸送を受ける能力の低下を生じさせる。
【0019】 好ましくは、前記ループ領域は2枚のβシート間の全長の野生型配列内に存在
する。より好ましくは、前記ループ領域は破傷風毒素フラグメントCのアミノ酸
配列の1214〜1219番目および1271〜1282番目のアミノ酸残基か
ら選択される。
【0020】 好ましくは、前記突然変異は少なくとも1つの欠失変異、より好ましくは破傷
風毒素フラグメントCのアミノ酸配列のΔ1214〜1219、Δ1274〜1
279およびΔ1271〜1282から選択される少なくとも1つの欠失変異で
ある。
【0021】 本発明はさらに、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供
する。
【0022】 本発明はさらにまた、調節塩基配列に動作可能に連結された本発明のポリペプ
チドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。好ましくは、調
節塩基配列は宿主細胞におけるポリペプチドの発現を可能にする。典型的には、
宿主細胞は細菌、または動物の、より好ましくは霊長類およびヒトを含む哺乳動
物の細胞である。
【0023】 本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドおよびベクターは、Clostri
dium tetani(破傷風)感染症の予防(もしくはそれに対する感受性
の低下)またはそれに対する治療において使用することができる。従って、別の
態様では、本発明は製薬学的に容認可能な担体または希釈剤と一緒に、本発明の
ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはベクターを含む医薬組成物を提供する。
【0024】 本発明はさらに、有効量の本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはベ
クターをヒトまたは動物に投与するステップを含むヒトまたは動物における破傷
風菌感染症を治療または予防する方法を提供する。
【0025】 本発明はさらに、破傷風菌感染症の例えば予防(もしくはそれに対する感受性
の低下)または治療のような療法において使用するために本発明のポリペプチド
を提供する。さらに提供されるのは、破傷風菌感染症の予防(もしくはそれに対
する感受性の低下)または治療において使用するための薬剤の製造における本発
明のポリペプチドの使用である。
【0026】 また別の態様では、本発明は破傷風毒素ポリペプチド内のエピトープを認識す
る抗体を産生するための方法において、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチ
ドまたはベクターの使用を提供する。例えば、本発明はその方法が哺乳動物に本
発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドまたはベクターを投与するステップを含
む破傷風毒素ポリペプチド内のエピトープを認識する抗体を産生するための方法
を提供する。当分野において知られている様々な方法によって産生するそのよう
な抗体は、本発明の上記の方法によって産生した有効量の抗体をヒトまたは動物
に投与するステップを含むヒトまたは動物における破傷風菌感染症を治療または
予防する方法において使用することができる。
【0027】 さらにまた別の態様では、本発明はその方法がポリペプチドの表面に露出する
ループ領域に存在する1個以上のアミノ酸残基を修飾するステップを含む破傷風
毒素フラグメントCポリペプチドのガングリオシドへの結合親和性を低下させる
ための方法を提供する。さらに提供されるのは、前記方法によって産生するポリ
ペプチドである。
【0028】 (発明の詳細な説明) 一般にここで言及する技法は当分野においてよく知られているが、特にSam
brookら、Molecular Cloning,A Laborator
y Manual(1989)およびAusubelら、Current Pr
otocols in Molecular Biology(1995),J
ohn Wiley & Sonsを参照することができる。
【0029】 A.破傷風毒素ポリペプチド 破傷風毒素に対する構造遺伝子はクローニングおよびシークエンシングされて
いる(Fairweatherら、1986;Eiselら、1986(データ
ベース受入番号No.BTCLTNおよびg69647))。アミノ酸配列は引
用されている。フラグメントCはパパイン開裂によって生成される50kDaポ
リペプチドであり、C末端に451個のアミノ酸を含む、または実質的に相当す
る。用語「フラグメントC」および「Hc」はここでは置き換え可能に使用され
ている。下記の説明ではここで説明する破傷風毒素の配列に基づいてナンバーリ
ングされたアミノ酸を採用しているが、本発明は他の菌株の破傷風菌(わずかに
相違するアミノ酸ナンバリングを有する可能性がある)において所見されるフラ
グメントC変異株についても同等に適用できると理解されなければならない。
【0030】 本発明のポリペプチドは、ガングリオシドへ結合する力、および/または一次
運動ニューロンへ結合する力、および/または逆行性輸送を受ける力を低下させ
るために修飾されている破傷風毒素フラグメントCまたはそれの免疫原性フラグ
メントを含む。特に、本発明のポリペプチドは2つのβシート間で所見されるル
ープ領域に突然変異を含む。破傷風毒素フラグメントCの3D(三次元)構造は
Umlandら(1997)によって決定され、その構造座標は参照番号1af
9を付けてタンパク質データ銀行に寄託されている。Umlandら(1997
)によって提示された構造情報(特に図1aを参照)を使用すると、当業者であ
れば候補ループ領域を同定することができる。好ましくは、これらのループは分
子の表面上に露出している。これらはその後突然変異させ、例えば実施例に記載
した結合アッセイを使用してガングリオシド結合について試験することができる
。ガングリオシド結合に関係することが証明されているそのような2つのループ
は実施例の項に記載されている。第1ループはほぼ1214〜1219番目のア
ミノ酸から構成され、第2ループはほぼ1271〜1282番目のアミノ酸から
構成されている。
【0031】 ループ領域における突然変異は、置換、挿入および/または欠失変異であって
もよい。好ましくは、突然変異は欠失変異、より好ましくは実質的に特定ループ
領域全部を除去する欠失変異である。アミノ酸配列を修飾する技法は、例えばP
CR特定突然変異誘発のように当分野においてよく知られている。
【0032】 本発明の突然変異破傷風毒素ポリペプチドは、野生型破傷風毒素と比較して5
0%未満、より好ましくは40、30、20または10%未満、最も好ましくは
5%未満のガングリオシド結合活性を有することが好ましい。ガングリオシド結
合活性は、例えば実施例で説明するようにインビトロで測定することができる。
【0033】 あるいはまた、または好ましくは付け加えて、本発明の突然変異の破傷風毒素
ポリペプチドは野生型破傷風毒素と比較して50%未満、より好ましくは40、
30、20または10%未満、最も好ましくは5%未満の神経細胞結合活性を有
することが好ましい。神経細胞結合活性は、例えば実施例で説明するように測定
することができる。
【0034】 さらに、本発明の突然変異ポリペプチドはそれらが由来する野生型配列(すな
わち、全長フラグメントC配列またはそれの免疫原性フラグメント)の少なくと
も50%、より好ましくは少なくとも70、80または90%の免疫原性を保持
することが好ましい。免疫原性は、典型的には例えばELISAまたはウェスタ
ン・ブロッティング法のようなインビトロ技法の使用によって測定できる。ある
いはまた、または付け加えて、免疫原性は本発明のポリペプチドで動物を免疫し
、さらにその後ELISAまたはウェスタン・ブロッティング法のどちらかによ
って、または引続いて活性毒素を用いて個体を攻撃免疫するステップによってイ
ンビボで測定することもできる。
【0035】 特に好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドは、その破傷風毒素フラグ
メントCまたはそれの免疫原性フラグメントが1214〜1219番目および/
または1271〜1282番目のアミノ酸残基に突然変異を含んでいる破傷風毒
素フラグメントCまたはそれの免疫原性フラグメントを含む。特に、本発明のポ
リペプチドはその破傷風毒素フラグメントCまたはそれの免疫原性フラグメント
が1214〜1219番目および/または1274〜1279番目のアミノ酸残
基、より好ましくは1271〜1282番目のの欠失変異を含んでいる破傷風毒
素フラグメントCまたはそれの免疫原性フラグメントを含む。
【0036】 また別の好ましい実施形態では、本発明のポリペプチドは残基His−129
3での修飾、好ましくは例えばHis→AlaまたはHis→Serのような置
換を含む。
【0037】 エピトープを含む破傷風毒素フラグメントCのフラグメントもまた本発明のポ
リペプチドにおいて使用することができる。これらのフラグメントは、少なくと
も5もしくは6個のアミノ酸、好ましくは少なくとも10個のアミノ酸、より好
ましくは少なくとも15、20、25、50もしくは100個のアミノ酸を含む
であろう。特に好ましいフラグメントは、優れたB細胞エピトープである約94
3〜1023番目のアミノ酸、および優れたT細胞エピトープである約946〜
966番目のアミノ酸を含む。すべてのアミノ酸のナンバリングは全長である毒
素遺伝子に関連している。
【0038】 破傷風毒素フラグメントCのアミノ酸配列はさらに本発明のポリペプチドを提
供するように修飾することができる。例えば、これは本発明のポリペプチドの免
疫原性を増強させるために実施できる。アミノ酸置換は、修飾されたポリペプチ
ドがエピトープを保持していることを前提に、例えば1、2もしくは3から10
、20もしくは30までの置換から作製できる。
【0039】 同類置換(conservative subsitution)は、例えば
下記の表に従って作製できる。
【0040】 第2欄における同一ブロックおよび好ましくは第3欄における同一列のアミノ
酸は相互に置換することができる。
【0041】
【表1】
【0042】 本発明のポリペプチドはさらにまた、典型的にはN末端またはC末端、好まし
くはN末端に異種アミノ酸配列を含むことができる。異種配列(heterol
ogous sequence)は、細胞内または細胞外タンパク質ターゲティ
ングに影響を及ぼす配列(例えばリーダー配列)を含むことができる。異種配列
はさらに本発明のポリペプチドの免疫原性を増加させる、および/またはポリペ
プチドの同定、抽出および/または精製を容易にする配列を含むことができる。
特に好ましいまた別の異種配列は、好ましくはN末端である例えばポリヒスチジ
ンのようなポリアミノ酸配列である。少なくとも10個のアミノ酸、好ましくは
少なくとも17個のアミノ酸、しかし50個未満のアミノ酸のポリヒスチジン配
列が特に好ましい。
【0043】 その他の異種アミノ酸配列には、例えば細菌またはウイルスのような他の病原
体からの免疫原性配列が含まれる。その例には、病原性大腸菌(E.coli)
、Neiserria sp.(ナイセリア属)、B.pertussis(百
日咳菌)、C.difficile(クロストリジウム・ディフィシル)、Sa
lmonella sp.(サルモネラ属)、Campylobacter s
p.(カンピロバクター属)、P.falciparum(熱帯熱マラリア原虫
)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスおよびヒト乳頭腫ウイルスが含まれる
。好都合なことに、これらの免疫原性配列は中断させることが望ましいループ領
域(例えば、1214〜1219番目のアミノ酸)内に挿入することができる。
【0044】 本発明のポリペプチドは、典型的には例えば下記で説明するような組み換え手
段によって作製する。しかし、ポリペプチドはさらにまた例えば固相合成法のよ
うな当業者によく知られている技法を使用する合成手段によって作製することも
できる。本発明のポリペプチドはさらにまた、例えば抽出および精製において役
立たせるために融合タンパク質として産生させることもできる。
【0045】 融合タンパク質パートナーの例には、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ
(GST)、6xHis、GAL4(DNA結合および/または転写活性化ドメ
イン)およびβ−ガラクトシダーゼが含まれる。さらに、例えばトロンビン開裂
部位のような融合タンパク質配列の除去を許容する融合タンパク質パートナーと
関心あるタンパク質配列(protein sequence of inte
rest)との間のタンパク質分解性開裂部位を含むことも好都合な可能性があ
る。好ましくは、融合タンパク質は関心タンパク質配列の機能を妨害しないであ
ろう。
【0046】 本発明のポリペプチドは実質的に孤立した形態であってよい。タンパク質をタ
ンパク質の予定の目的を妨害しない担体または希釈剤と混合することができ、そ
れでもまだ実質的に孤立した形態であると見なせることは理解されるであろう。
本発明のポリペプチドは、さらに実質的に精製された形態であってもよく、その
場合には調製物中のタンパク質の例えば概して90%以上(95%、98%また
は99%)が本発明のポリペプチドである調製物中にタンパク質を含むであろう
【0047】 B.ポリヌクレオチドおよびベクター 本発明のポリヌクレオチドは本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を含
む。本発明のポリヌクレオチドはDNAまたはRNAを含むことができる。それ
らはさらに、それらの中に合成ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドを含むポリ
ヌクレオチドであってよい。オリゴヌクレオチドへの多数の様々なタイプの修飾
方法は当分野において知られている。これらには、メチルホスホネートおよびホ
スホロチオエート・バックボーン、分子の3’末端および/または5’末端での
アクリジン鎖またはポリリシン鎖の添加が含まれる。本発明の目的のためには、
ここで記載されたポリヌクレオチドは当分野において利用できるいずれかの方法
によって修飾することができる。そのような修飾は、本発明のポリヌクレオチド
のインビボ活性または寿命を高めるために実施することができる。
【0048】 本発明の好ましいポリヌクレオチドは、さらにまた上記の本発明のポリペプチ
ドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを含んでいる。当業者には、非常に
多数の異なるポリヌクレオチドが遺伝コードの縮重の結果として同一ポリペプチ
ドをコードできることは理解されるであろう。
【0049】 本発明のポリヌクレオチドは組み換え複製可能ベクター内に組み込むことがで
きる。このベクターは適合する宿主細胞内で核酸を複製するために使用すること
ができる。従って、また別の実施形態では、本発明は本発明のポリヌクレオチド
を複製可能なベクター内に導入するステップ、そのベクターを適合する宿主細胞
内に導入するステップ、さらにその宿主細胞をベクターの複製を発生させる条件
下で増殖させるステップによって本発明のポリヌクレオチドを作製する方法を提
供する。このベクターは宿主細胞から回収することもできる。適切な宿主細胞に
は、例えば大腸菌のような細菌、酵母、哺乳動物細胞系および例えば昆虫Sf9
細胞のような他の真核細胞系が含まれる。
【0050】 好ましくは、ベクター内の本発明のポリヌクレオチドは宿主細胞によって暗号
配列(coding sequence)の発現を提供できる調節配列に動作可
能に連結されている。つまり、ベクターは発現ベクターである。用語「動作可能
に連結されている」は、ここに記載されたコンポーネントがそれらの予定された
方法で機能することを許容する関係にある並列を意味する。暗号配列へ「動作可
能に連結されている」調節配列は、暗号配列の発現が制御配列と適合する条件下
で達成されるような方法で連結されている。
【0051】 そのようなベクターは本発明のポリペプチドの発現を提供するために上記で説
明した適切な宿主細胞内に形質転換またはトランスフェクトすることができる。
このプロセスは、ポリペプチドをコードする暗号配列のベクターによる発現を提
供するための条件下で、上記のように発現ベクターを用いて形質転換された宿主
細胞を培養する、および任意で発現されたポリペプチドを回収するステップを含
むことができる。
【0052】 これらのベクターは、例えば、複製の起源、任意で前記ポリヌクレオチドの発
現のためのプロモーターおよび任意でプロモーターの調節因子を用いて提供され
るプラスミドまたはウイルスベクターであってよい。これらのベクターは、1個
以上の選択可能なマーカー遺伝子、例えば、細菌プラスミドの場合は、アンピシ
リン耐性遺伝子または哺乳動物ベクターについてはネオマイシン耐性遺伝子を含
有することができる。ベクターは、例えばRNAの産生のためにインビトロで使
用でき、または宿主細胞をトランスフェクトもしくは形質転換するために使用で
きる。このベクターは、さらに例えば、遺伝子療法においてインビボで使用する
ために適合させることもできる。
【0053】 プロモーター/エンハンサーおよびその他の発現調節シグナルはそれに対して
発現ベクターが設計されている宿主細胞と適合性であるように選択できる。例え
ば、原核生物プロモーター、特に大腸菌株(例えば、大腸菌(E.coli)
HB101)において使用するために適切なプロモーターを使用できる。本発明
の特に好ましい実施形態においては、htrAまたはnirBプロモーターを使
用できる。本発明のポリペプチドの発現がインビトロまたはインビボのどちらか
の哺乳動物細胞内で実施される場合は、哺乳動物プロモーターを使用できる。組
織特異的プロモーターもまた使用できる。例えば、モロニーマウス白血病ウイル
ス末端反復配列(MMLV LTR)、プロモーターラウス肉腫ウイルス(RS
V)LTRプロモーター、SV40プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(
CMV)IEプロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーターまたはアデノウ
イルスプロモーターのようなウイルスプロモーターもまた使用できる。これらの
プロモーターはすべてが当分野において容易に入手できる。
【0054】 C.宿主細胞 本発明のベクターおよびポリヌクレオチドは、ベクター/ポリヌクレオチドを
複製するためおよび/または本発明のポリヌクレオチドによってコードされた本
発明のポリペプチドを発現するために宿主細胞内に導入することができる。適切
な宿主細胞には、例えば、大腸菌および枯草菌(B.subtilis)のよう
な真性細菌のような原核細胞、および例えば酵母、昆虫または哺乳動物細胞のよ
うな真核細胞が含まれる。
【0055】 本発明のベクター/ポリヌクレオチドは、トランスフェクション、形質転換お
よび電気泳動法のような当分野において知られている様々な技法を使用して適切
な宿主細胞内に導入することができる。本発明のベクター/ポリヌクレオチドを
動物に投与しなければならない場合は、例えばレトロウイルス類、単純ヘルペス
ウイルスおよびアデノウイルスのような組み換えウイルスベクターを用いての感
染、核酸の直接注射およびバイオリスティック形質転換のような数種の技法が当
分野において知られている。
【0056】 D.タンパク質の発現および精製 本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチドを発
現させるために使用できる。宿主細胞は、本発明のタンパク質の発現を許容する
適切な条件下で培養できる。本発明のポリペプチドの発現は、それらが連続的に
産生されるような構成要素でもいいし、または発現を開始させるための刺激に対
する誘導性であってもよい。誘導性発現の場合は、タンパク質産生は、例えば培
地に対して、例えばデキサメタゾンまたはIPTGのような誘導物質を添加する
ことによって必要とされたときに開始される。破傷風毒素フラグメントCポリペ
プチドを産生するための適切な方法はWO−A−9015871号および欧州特
許第A−209281号に記載されている。
【0057】 本発明のポリペプチドは、酵素、化学および/または浸透圧溶解および物理的
破壊を含む当分野において知られている様々な技法によって宿主細胞から抽出で
きる。
【0058】 ポリペプチドの精製は、任意選択的に例えばイムノアフィニティクロマトグラ
フィー、イオン交換クロマトグラフィー等を含むアフィニティクロマトグラフィ
ーのようなよく知られている技法を使用して実施できる。特に好ましい技法は、
本発明のポリペプチドをポリヒスチジン標識(例、6xHis)を有する融合タ
ンパク質として発現させ、Ni−NTAアガロース(Qiagen)を使用して
細胞抽出液を精製することである。融合タンパク質配列に基づく様々な他の類似
のアフィニティクロマトグラフィーシステムは当分野において知られている。
【0059】 本発明のポリペプチドは、さらにまた例えばTnT(登録商標)(Prome
ga)ウサギ網状赤血球系のようなインビトロ無細胞系中で、組み換え的に産生
させることもできる。
【0060】 E.投与 本発明のポリペプチドは、直接注射によって投与できる。好ましくは、これら
のポリペプチドは、ヒトまたは獣医学的に使用することのできる医薬組成物を製
造するために、製薬学的に容認可能な担体または希釈剤と結合される。適切な担
体および希釈剤には、例えばリン酸緩衝生理食塩液のような等張生理食塩液が含
まれる。組成物は非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内または経皮的投与用に調
製されてよい。典型的には、各ポリペプチドは、0.01〜30μg/kg(体
重)、好ましくは0.1〜10μg/kg(体重)、より好ましくは0.1〜1
μg/kg(体重)の用量で投与される。さらにまた、下記のように破傷風菌感
染症を治療または予防する際に本発明のポリペプチドを使用して調製された抗体
を使用することもできる。中和抗体、または破傷風菌抗原に対する特異性を保持
しているそれらのフラグメント(断片)を本発明のポリペプチドに類似する方法
によって投与することができる。
【0061】 本発明のポリヌクレオチドは、好ましくはさらに宿主細胞ゲノムに一致する隣
接配列(flanking sequence)を含む裸核酸構成体として直接
に投与することができる。発現カセットが裸核酸として投与される場合は、投与
される核酸の量は典型的には1μg〜10mg、好ましくは100μg〜1mg
の範囲内である。
【0062】 哺乳動物細胞による裸核酸構成体の取り込みは、例えばトランスフェクション
剤を使用する数種の既知のトランスフェクション法によって増強される。これら
の物質の例には陽イオン物質(例、リン酸カルシウムおよびDEAE−デキスト
ラン)およびリポフェクタント(例、リポフェクタム(登録商標)およびトラン
スフェクタム(登録商標))が含まれる。典型的には、核酸構成体は組成物を製
造するためにトランスフェクション剤と混合される。
【0063】 特に好ましい実施形態では、本発明のヌクレオチドは、本発明のポリペプチド
が典型的には患者に経口投与された形質転換細菌株および生きている細菌によっ
て発現するように、Salmonella sp.の弱毒化菌株内に導入される
【0064】 好ましくは、本発明のポリペプチドまたはベクターは、医薬組成物を製造する
ために製薬学的に容認可能な担体または希釈剤と結合される。適切な担体および
希釈剤には、例えば、リン酸緩衝生理食塩液のような等張生理食塩液が含まれる
。組成物は非経口、筋肉内、静脈内、皮下、眼内または経皮的な投与用に調製さ
れてよい。
【0065】 ここで記載する投与経路および用量は、単なる指針であることが意図されてい
るが、それは熟練の当業者であれば特定の患者および条件に合わせて最適な投与
経路および用量を決定できるからである。
【0066】 F.ワクチン類の調製 ワクチンは本発明の1種以上のポリペプチドから調製できる。1種以上の活性
成分として1種以上の免疫原性ポリペプチドを含有するワクチンの調製は当業者
には知られている。典型的には、そのようなワクチン類は、溶液または懸濁液の
どちらかとしての注射可能物質として調製する。注射前に液体中に溶解または懸
濁させるために適切な固形剤として調製することもできる。調製物をさらにまた
乳化したり、またはタンパク質をリポソーム内に被包化することもできる。免疫
原性活性成分はしばしば製薬学的に容認可能かつ活性成分と適合性がある賦形剤
と混合される。適切な賦形剤は、例えば水、生理食塩液、デキストロース、グリ
セロール、エタノール等およびそれらの組合せである。
【0067】 さらに、所望の場合は、ワクチンには、例えば湿潤もしくは乳化剤、pH緩衝
剤、および/またはワクチンの有効性を増強するアジュバントのような少量の補
助物質を含めることができる。有効な可能性があるアジュバントの例には次のも
のが含まれるが、それらに限定されない。水酸化アルミニウム、N−アセチル−
ムラミール−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−ア
セチル−ノル−ムラミルL−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637
、nor−MDPと呼ばれる)、N−アセチルムラミルL−アラニル−D−イソ
グルタミル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセ
ロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP19835A、
MTP−PEと呼ばれる)、および2%スクアレン/Tween(トゥイーン)
80エマルジョン中に細菌から抽出された3種の構成要素であるモノホスホリル
脂質A、トレハロースジミコレートおよび細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS
)を含有するRIBI。
【0068】 さらにアジュバントおよびその他の含有成分の例には、水酸化アルミニウム、
リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸ベリリウ
ム、シリカ、カオリン、炭素、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、
ムラミールジペプチド、細菌内毒素、脂質X、コリネバクテリウム・パルブム(
Corynebacterium parvum)(瘡プロピオニバクテリウム
群)、百日咳菌、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リ
ゾレシチン、ビタミンA、サポニン、リポソーム類、レバミゾール、DEAE−
デキストラン、ブロックコポリマー類またはその他の合成アジュバント。そのよ
うなアジュバントは、例えばメルク・アジュバント(Merck Adjuva
nt)65(Merck and Company製、ローウェー、ニュージャ
ージー州)またはフロイント不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Di
fco Laboratories製、デトロイト、ミシガン州)のような様々
な入手源から市販で入手できる。
【0069】 典型的には、アンフィゲン(Amphigen)(水中油型)、アルヒドロゲ
ル(Alhydrogel)(水酸化アルミニウム)またはアンフィゲンとアル
ヒドロゲルの混合物のようなアジュバントを使用する。ヒトに使用するために承
認されているのは水酸化アルミニウムだけである。
【0070】 免疫原とアジュバントの比率は、両方が有効量で存在する限りにおいて広範囲
に渡って変化させることができる。例えば、水酸化アルミニウムはワクチン混合
物の約0.5%の量で存在することができる(Al23基剤)。有益にも、ワク
チン類は0.2〜200μg/ml、好ましくは5〜50μg/ml、最も好ま
しくは15μg/mlの範囲内の最終濃度の免疫原を含有するように調製する。
【0071】 調製後には、ワクチンを無菌容器に収容することができ、この容器はその後密
閉して例えば4℃のような低温で保管するが、または凍結乾燥してもよい。凍結
乾燥は安定化形での長期保存を許容する。
【0072】 アジュバントの有効性は、さらに様々なアジュバントを含むワクチン内のこの
ポリペプチドの投与の結果として生じる破傷風毒素抗原配列を含有する免疫原性
ポリペプチドに対して向けられる抗体の量を測定することによって測定すること
ができる。
【0073】 ワクチンは、従来通りに、例えば皮下または筋肉内のいずれかの注射によって
非経口投与する。他の投与様式のために適切な追加の調製物には座剤、および一
部の場合には経口調製物が含まれる。座剤については、伝統的結合剤および担体
には例えばポリアルキレングリコール類またはトリグリセリド類が含まれる。そ
のような座剤は0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲内で活性成分を
含有する混合物から形成することができる。経口調製物には、例えば製薬学的等
級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナ
トリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等のような通常使用される賦形剤が含
まれる。これらの組成物は溶液、懸濁液、錠剤、ピル剤、カプセル剤、徐放性調
製物または粉剤の剤形を取り、10%〜95%、好ましくは25%〜70%の活
性成分を含有する。ワクチン組成物を凍結乾燥する場合は、凍結乾燥物質は例え
ば懸濁液として、投与前に復元することができる。復元は、好ましくは緩衝剤中
で行う。
【0074】 患者への経口投与用のカプセル剤、錠剤およびピル剤には、例えばユードラギ
ット(Eudragit)「S」、ユードラギット「L」、酢酸セルロース、酢
酸フタル酸セルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む腸溶コ
ーティングを含むことができる。
【0075】 本発明のポリペプチドは中性形または塩形としてワクチン内に調製することが
できる。製薬学的に容認可能な塩類には、酸添加塩(ペプチドの遊離アミノ基を
用いて形成されている)および例えば塩酸もしくはリン酸のような無機酸または
例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸およびマレイン酸のような有機酸を用いて形成さ
れている塩類が含まれる。遊離カルボキシル基と一緒に形成される塩類はまた例
えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウ
ムもしくは水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメ
チルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジンおよびプロカインのよう
な有機塩基から引き出してもよい。
【0076】 G.ワクチンの用量および投与 ワクチンは投与調製物と適合する方法で、および予防的および/または治療的
に有効であるような量で投与する。一般に1回の投与当たり抗原5μg〜250
μgである投与する量は、治療する対象、抗体を合成する対象の免疫系の能力、
および所望の保護の程度に依存する。好ましい範囲は1回の投与当たり約20μ
g〜約40μgである。
【0077】 適切な用量サイズは約0.5mlである。従って、筋肉内注射のための用量は
、例えば、0.5%水酸化アルミニウムとの混合物中に20μgの免疫原を含有
する0.5mlを含有むであろう。
【0078】 投与するために必要な活性成分の正確な量は医師の判定に左右され、各対象に
対して固有である可能性がある。
【0079】 ワクチンは単回投与スケジュールで、または好ましくは複数回投与スケジュー
ルで与えることができる。複数回投与スケジュールは、ワクチン摂取の一次経過
が1〜10回の個別投与を用いて行われ、その後例えば第2回投与のために1〜
4ヵ月後に、および必要であればさらに数ヵ月後に免疫反応を維持および/また
は強化するために必要な引続いての時間間隔で投与される別の投与が行われるス
ケジュールである。用量レジメンは同様に、少なくとも一部には個体の必要によ
って決定され、医師の判定に依存するであろう。
【0080】 さらに、1種以上の免疫原性破傷風毒素抗原を含有するワクチンは例えば免疫
グロブリン類のような他の免疫調節物質と結合して投与することができる。
【0081】 H.本発明のポリペプチドに対する抗体の調製 上記のように調製された免疫原性ポリペプチドは、ポリクローナルおよびモノ
クローナル両方の抗体を製造するために使用できる。ポリクローナル抗体が所望
である場合は、1種以上の破傷風毒素エピトープを有する免疫原性ポリペプチド
を用いて選択した哺乳動物(例、マウス、ウサギ、ヒツジ、ウマ等)を免疫する
。免疫した動物からの血清を収集し、既知の手順に従って処理する。破傷風毒素
エピトープに対するポリクローナル抗体を含有する血清が他の抗原に対する抗体
を含有している場合は、ポリクローナル抗体はイムノアフィニティ・クロマトグ
ラフィーによって精製できる。ポリクローナル抗血清を産生およびプロセッシン
グするための技法は当分野において知られている。
【0082】 本発明のポリペプチド中の破傷風毒素エピトープに対して向けられたモノクロ
ーナル抗体もまた当業者であれば容易に産生することができる。ハイブリドーマ
によってモノクローナル抗体を製造するための一般的方法はよく知られている。
不滅化抗体産生細胞系は細胞融合、または例えば発癌性DNAを用いてのBリン
パ球の直接形質転換、またはエプスタインバーウイルスを用いてのトランスフェ
クションのような他の技法によって作製することができる。破傷風毒素エピトー
プに対して産生した一連のモノクローナル抗体は、例えばイソタイプおよびエピ
トープ親和性のような種々の特性についてスクリーニングすることができる。
【0083】 また別の方法には、例えばファージが極めて様々な相補性決定領域(CDRs
)を伴ってそれらの被膜表面上でscFvフラグメントを発現するファージ表示
ライブラリーをスクリーニングすることが含まれる。この技法は当分野において
よく知られている。
【0084】 破傷風毒素エピトープに対して向けられているモノクローナルおよびポリクロ
ーナル両方の抗体は特に診断において有用であり、さらに中和抗体は受動免疫療
法において有用である。特にモノクローナル抗体は、抗イディオタイプ抗体を立
てるために使用することができる。抗イディオタイプ抗体は、それに対して保護
が所望される感染性物質の抗原の「内部イメージ」を有する免疫グロブリンであ
る。
【0085】 抗イディオタイプ抗体を立てるための技法は当分野において知られている。こ
れらの抗イディオタイプ抗体はさらにまた破傷風菌の治療のため、並びに破傷風
菌抗原の免疫原性領域を解明するためにも有用な可能性がある。
【0086】 本発明のために、用語「抗体」には、これと反対に特定されていない限り、標
的抗原に対する結合活性を保持している完全抗体のフラグメントが含まれる。そ
のようなフラグメントには、Fv、F(ab’)およびF(ab’)2フラグメ
ント、並びに一本鎖抗体(scFv)が含まれる。さらにその上、これらの抗体
およびそれらのフラグメントは例えば欧州特許第A−239400号に記載され
ているように人体適応化抗体であってよい。
【0087】 下記の実施例を参照しながら本発明を説明するが、これらの実施例は説明を目
的としていて限定することは意図していない。実施例は図面に関連している。よ
り詳細には図面を参照されたい。
【0088】 [実施例] 方法 [細菌株およびプラスミドの構造] 下記で説明するプラスミドに対する宿主として大腸菌菌株BL21(λDE3
,ompT,hsdSB(rB−mB−),gal,dcm)を使用した。プラス
ミドpKS1はT7プロモーターの制御下で破傷風毒素のHcフラグメントの発
現のためのコドン最適化遺伝子を含有する。これはテンプレートとしてのpTE
Ttac215(Makoffら、1989)並びに遺伝子の5’および3’末
端で各々NdeIおよびBamHI部位を導入するオリゴヌクレオチド5’GA
GCATATGAAAAACCTTGATおよび5’CGGATCCTTAGT
CGTTGGTCCAを使用した1357bpフラグメントのPCR増幅(Pf
uポリメラーゼ、Stratagene、ケンブリッジ、英国)によって作製し
た。プラスミドpJC6を形成するために、ベクターpCRScript(St
ratagene製)内へのPCR産物の鈍端ライゲーション(れんさはんのう
g後に、Qiaex IIゲル精製キット(Qiagen、ウェストサセックス
、英国)を使用したアガロースゲル電気泳動法によってNdeI−BamHIフ
ラグメントを精製し、さらに事前にNdeIおよびBamHIを用いて分解され
ていたpET28a(Novagen製、ケンブリッジ、英国)内にサブクロー
ニングした(Roche Molecular Biochemicals、イ
ーストサセックス、英国)。DNA操作は標準手順によって実施した。
【0089】 [突然変異およびDNAシークエンシング] 突然変異はクイックチェンジ(QuikChange)(登録商標)特定部位
突然変異キット(Stratagene製)を使用して実施した。突然変異Hc
分子を作成するためには、対の相補的オリゴヌクレオチドを使用した(表1)。
単一アミノ酸突然変異を含有する変異体(M15、M24、M667、M564
およびM57)を作製するために、テンプレートDNAとしてのpKS1ととも
に下記のサイクルを使用した。ステップ1は95℃で30秒、ステップ2は95
℃で30秒、ステップ3は55℃で1分、ステップ4は68℃で12分。ステッ
プ2〜4を12サイクル繰り返した。
【0090】
【表2】
【0091】 欠失変異(M5、M13、M18およびM58)を含有する分子を作成するた
めには、下記のサイクルにおいてテンプレートDNAとしてのpKS1と一緒に
より長い伸長時間を使用した。ステップ1は95℃で30秒、ステップ2は95
℃、30秒、ステップ3:55℃、1分、ステップ4:68℃、18分。ステッ
プ2〜4を18サイクル繰り返した。変異体M37および二重変異体M40を作
成するためには、テンプレートとしてM28突然変異DNAを使用する以外は同
一のサイクル条件を使用した。
【0092】 [DNAシークエンシング] HcをコードするpKS1の全インサートおよび変化した領域における全変異
体のDNA配列を自動化DNAシークエンシングによって決定した。
【0093】 [組換えHis標識タンパク質の精製] 250mlのカナマイシン(50μg/ml)を含有するLBブロスにpKS
1を含有する大腸菌 BL21細胞のオーバーナイト培養5mlまたは突然変異
Hc遺伝子をコードする誘導体を接種した。OD650=0.8で、野生型または
突然変異Hcタンパク質の発現を最終濃度1mMまでのイソプロピル−β―ガラ
クトピラノシド(IPTG)の添加によって誘発した。37℃での培養を3.5
時間継続し、その後4,000g、15分間の遠心分離によって細胞を回収した
。細胞ペレットを冷凍して−20℃で保存した。His標識タンパク質を精製す
るために、細胞ペレットはリゾチーム(1mg/ml)(Roche Mole
cular Biochemicals)および10mM イミダゾール(Si
gma、ドーセット、英国)を含有する10mlの緩衝液A(300mM Na
Cl、50mM NaH2PO4、pH8.0)中に再懸濁させた。
【0094】 550W超音波処理機(Ultrasonic Processor XL2
020、Heat Systems製、ニューヨーク、米国)を使用して細胞を
15秒のオン、15秒のオフのパルスで4.5分間、フラットなチッププローブ
を用いて氷上で超音波分解した。13,000g、20分間の遠心分離後、50
0μlのNi−NTAアガロース樹脂を添加し、その混合物を4℃で16時間回
転させながら培養した。その後その樹脂を200gで遠心分離し、20mMイミ
ダゾールを含有する10mlの緩衝液A中に再懸濁させた。遠心分離および再懸
濁は2度繰り返した。その樹脂を5mlの緩衝液A中に再懸濁させ、ディスポー
ザブルのプラスチック製カラム(Biorad製、ハーツ、英国)内に注入し、
液体を排出させた。溶出緩衝液(250mMイミダゾールを含有する緩衝液A)
の適用によってHis標識タンパク質を溶出した。溶出分画のタンパク質濃度は
OD280での測定によってモニタリングした。ピーク分画をプールし、緩衝液A
中で透析し、Micro BCAタンパク質アッセイ(Pierce製、チェス
ター、英国)を使用してタンパク質濃度を測定した。細菌培養1リットル当たり
20〜32mgの精製タンパク質を入手した。
【0095】 [Hcタンパク質のビオチン化] Hcタンパク質のビオチン化はEZ−Link Sulfo−NHS−LC−
ビオチン化キット(Pierce製)を使用して実施した。
【0096】 [インビトロでのガングリオシド結合] (i)直接結合アッセイ タンパク質のガングリオシドへの直接結合は次のように測定した。50μlの
メタノール中の10μg/mlウシのガングリオシドGT1b(Sigma製、
ドーセット、英国)をELISAプレート(Life Technologie
s製、ペーズリー、英国)に塗り広げ、一晩乾燥するに任せた。0.05%Tw
een 20を含有するリン酸緩衝食塩液(PBS)(PBS/T)中で3分ず
つ2回洗浄した後、100μlのブロッキング液(3%BSA(Sigma製)
を含有するPBS)を添加し、さらにプレートを37℃で1時間ブロックした。
その後の全インキュベーションは50μlの用量で37℃で行い、全洗浄はPB
S/T中で3分間行い、3回繰り返した。タンパク質並びに一次抗体および二次
抗体は3%BSAを含有するPBS/T中に希釈させた(PBS/TB)。
【0097】 ブロッキングおよび洗浄後、プレートは10μg/ml(タンパク質)の初期
濃度から開始して野生型His標識HCまたは突然変異His標識Hcの二重希
釈を行いながら2時間インキュベートした。洗浄後、1:1000で希釈したウ
サギポリクローナル抗Hc抗体(Fairweatherら、1986)を1時
間添加した。洗浄後、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼに接合させたヒツ
ジ抗ウサギ抗体を二次抗体として添加した。プレートはo−フェニレンジアミン
ジヒドロクロリド(Sigma製)を用いて展開させた。これらのプレートはC
eres 900 Hdi ELISAリーダー(Bio−Tek Instr
uments製)において490nmで読み取った。各データポイントは、タン
パク質を添加せずに入手された平均値を減じた後の2回ずつの測定値の平均値を
表している。突然変異のタンパク質のGT1b結合活性(表2)は野生型Hcタ
ンパク質の結合の百分率として表されており、野生型Hcタンパク質の半最高結
合(half maximal binding)を表す490nmで1.5の
光学密度を生じさせるために必要なタンパク質濃度から計算した。
【0098】 非特異的結合の陰性対照には、細胞とHcタンパク質または一次抗体のどちら
かを除く全試薬とのインキュベーションが含まれた。
【0099】 (ii)競合アッセイ 直接結合アッセイの変形を下記のように実施した。ガングリオシドによるプレ
ートの塗布およびブロッキングは直接アッセイと同様であり、すべてのその後の
インキュベーションは50μl用量で37℃で実施した。全洗浄はPBS/T中
で3分間であり、これを3回繰り返した。タンパク質および二次抗体はPBS/
TB中で希釈した。容量25μl中で340μg/mlの濃度の一定量のビオチ
ン化His標識Hc(上記で説明した通りに調製する)を25μlの試験タンパ
ク質と濃度を低下させながら(最高濃度500μg/ml)混合した。50μl
のビオチン化Hc/未標識タンパク質の混合液をガングリオシド被覆プレートに
添加し、プレートを2時間インキュベートした。プレートを再度洗浄し、ストレ
プタビジン−HRP(Dako製)と一緒にインキュベートし、1時間に渡り1
:500に希釈した。洗浄後、o−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(OP
D、Sigma製)を用いてプレートを展開し、ELISAプレートリーダーで
490nmで読み取った。
【0100】 [N18細胞への変異体の結合] N18 RE−105細胞(ECACC番号88112301)を、4mMグ
ルタミン(Sigma製)、10%FBSおよび100μペニシリン、100μ
g/mlストレプトマイシン(Life Technologies製)を補充
したDMEM(Life Technologies製)中で培養した。間接免
疫蛍光検査で使用する1日前に、0.5ml中の3×104の細胞を5μg/m
lポリ−L−リシンを用いて一晩かけて前処理した8ウエルLabTek仕切り
付きスライド(Life Technologies製)の各ウエル内で前もっ
て処理した。その後の全インキュベーションは4℃で実施した。全洗浄は0.1
%BSAを含有する4℃のPBS(PBS/B)中で行い、3分間ずつ3回繰り
返した。細胞は野生型または突然変異タンパク質(5μg/ml)と一緒に2時
間インキュベートした。洗浄後、細胞を5%標準ブタ血清を含有するPBS/B
中で30分間インキュベートし、その後ウサギポリクローナル抗Hc抗体と一緒
に30分間インキュベートし、5%標準ブタ血清を含有するPBS/B中で1:
500で希釈した。細胞を再び洗浄し、PBS/B中で1:500で希釈したF
ITC複合ヒツジ抗ウサギ血清(Dako製)と一緒に1時間インキュベートし
た。洗浄後、細胞をグリセロール/PBS(Citifluor、Agar S
cientific製、ハーロー、英国)中の抗衰弱剤上に載せ、Zeiss
510共焦点顕微鏡を用いた蛍光顕微鏡検査によって可視化した。
【0101】 [ラット脊髄運動ニューロンの精製] ラット脊髄運動ニューロンは、以前に説明したようにE14ラット胎仔から精
製した。要約すると、腹側脊髄を切開し、0.025%トリプシン(GIBCO
−BRL、米国)を用いて37℃で10分間解離させ、粉砕した。BSAクッシ
ョン、およびその後メトリザミド密度勾配を通して細胞を遠心分離した。BSA
クッションを通して間期細胞およびペレット細胞を収集し、0.5%BSAを含
む50μlのリン酸緩衝生理食塩液(PBS)にE14でラット運動ニューロン
によって特異的に発現するp75低親和性神経成長因子(NGf)受容体を認識
する50μlのマウス抗ラットp75ハイブリドーマ上清を加えた中に再懸濁さ
せた。細胞をp75ハイブリドーマ上清と一緒に12℃で15分間インキュベー
トし、PBS−BSAを用いて洗浄し、BSAクッションを通して遠心分離した
。ペレットを80μlのPBS−BSA中に再懸濁させ、20μlのヒツジ抗マ
ウスIgG磁気マイクロビーズ(Miltenyi Biotec、ベルギッシ
ュグラートバッハ、ドイツ)と一緒に12℃で15分間インキュベートした。B
SAクッションを通してのもう1回の遠心分離後、細胞を500μlのPBS−
BSA中に再懸濁させ、Mini Macsマグネットおよび大型細胞分離カラ
ム(Miletnyi Biotec製)を使用して磁気セルソーティングによ
って精製した。精製した運動ニューロンをポリオルニチンおよびラミニン(Si
gma製、英国)が塗り広げられたカバーガラス上に40,000cells/
カバーガラスの密度で播種した。培養をB27サプリメント(Gibco−BR
L製、米国)、2%ウマ血清、0.5mM L−グルタミン、25μM 2−メ
ルカプトエタノール(Fluka製、英国)、10ng/mlのラット毛様体神
経栄養因子および100pg/mlのラットグリア細胞系由来神経栄養因子(ど
ちらもR & D systems製、米国)を含有するNeurobasal
培地(Life Technologies Gibco−BRL製、米国)中
の37℃で加湿した7.5%CO2インキュベーター内で保持した。最初の4日
間の培養では、培地にL−グルタミン酸塩(25μM)を添加した。
【0102】 [野生型および突然変異Hcタンパク質の一次運動ニューロンへの結合] カバーガラス上の細胞を4℃へ15分間冷却し、その後ハンクス液(20mM
Hepes−Na、pH7.4、0.44mM KH2PO4、0.42mM
NA2HPO4、5.36mM KCl、1136mM NaCl、0.81mM
MgSO4、1.26mM CaCl2、6.1mMグルコース)を用いて洗浄
し、さらに4℃で1時間Hanks/0.1%BSA中で濃度5μg/mlでの
野生型または突然変異Hcとのインキュベーションを実施した。ハンクス液を用
いての2回の洗浄後、細胞を室温で15分間、PBSに溶解した3.7%パラホ
ルムアルデヒド中で固定した。PBSを用いて2回洗浄した後、細胞をPBS中
の50mM NH4Clと一緒に20分間インキュベートし、PBSを用いて再
び2回洗浄し、2%BSA、0.25%ブタ皮膚ゼラチン、0.2%グリシン、
10%ウシ胎仔血清を用いて1時間ブロックした。細胞をPBS中で2回洗浄し
、1%BSA、0.25%ゼラチンを含有するPBS中で1:500に希釈した
ウサギ抗Hcポリクローナル抗血清と一緒に1時間インキュベートした。さらに
PBSを用いて2時間洗浄した後、細胞をPBS中に1:1000で希釈したF
ITC接合ブタ抗ウサギ血清(Dako)を用いて30分間インキュベートした
。PBSを用いての4回の洗浄後、Mowiol 4−88(Harco製)の
スライド上にカバーガラスを載せ、4℃で保管し、Zeiss LSM510共
焦点顕微鏡を使用して蛍光検査によって解析した。
【0103】 [野生型および突然変異Hcタンパク質の逆行性輸送] 10週齢のB6D2F1マウスをハーラン−オーラック(Harlan−Ol
ac)から入手し、2:1の比率でベタラー(Vetalar)(100mg/
ml)およびRompun(ロンプン)(20mg/ml)を筋肉内注射するこ
とによって麻酔をかけた。全身麻酔下で、1群3匹ずつのマウスの下に33ゲー
ジ注射針を備えた25μlハミルトン型シリンジを使用して22μlのPBSま
たは70〜85μgのタンパク質を含有するPBSを注射した。全動物は直ちに
回復し、注射されたタンパク質が脳幹へ輸送させるように24時間放置した。深
い麻酔下で、PBS、およびその後にPBS中の4%パラホルムアルデヒドを用
いた経心的潅流(transcardiac perfusion)によってマ
ウスを致死させた。脳を切開し、4%ホルムアルデヒド中で少なくとも1時間死
後固定した後、4℃の15%スクロース/PBS中へ移して少なくとも16時間
放置した。実験1(図6、パネルa−c)では、脳をTissue−Tedに載
せクリオスタットを使用して20μmスライスに切片作製した。実験2(図6、
パネルd−h)では、脳を切片作製前に液体窒素中で凍結した。
【0104】 [舌下神経核における野生型および突然変異Hcの免疫染色] ポリ−L−リシン(Sigma製)を事前に塗り広げたスライド上に切片を収
集した。引続いての全洗浄はPBS中で5分間かけて行い、3回繰り返した。ワ
ックスペンを用いて輪切り後、切片を洗浄した。PBS/5%標準ブタ血清(D
ako製)を用いて30分間ブロックした後、切片を1:500に希釈したウサ
ギ抗Hcポリクローナル抗体を含有するPBS/1%BSA/0.1%Trit
onX−100と一緒に2時間インキュベートした。洗浄後、切片をPBS中で
1:500に希釈したビオチン化ブタ抗ウサギ抗体(Dako製)と一緒に2時
間インキュベートした。再び洗浄した後、切片をPBS中で1:500に希釈し
たペルオキシダーゼ接合アビジンと一緒に2時間インキュベートした。切片を洗
浄し、0.04%NiCl2および0.01%H22を含むPBS中のジアミノ
ベンジジン(0.05%)を用いて展開させた。切片を蒸留水中で洗浄し、1%
ニュートラルレッドを用いて対比染色し、脱水して、スライド上に載せた。顕微
鏡写真を撮影する前に、スライドを−50℃で保存した。
【0105】 [実施例1 ガングリオシド結合におけるHcのNおよびC末端が果たす役割] Hcフラグメント破傷風毒素の三次元構造に関する検討(Umlandら、1
997)は、単一鎖によって連結されているN−末端ゼリーロールドメインとC
−末端βトレフォイルドメインの2つのドメインを解明している(図1)。これ
らのドメインは各々その大部分が分子から突き出たループによって結合されたβ
シートから構成されている。
【0106】 我々は以前に実施した研究で多数のmalE−Hc融合タンパク質の神経細胞
結合を解析した。破傷風毒素(K865−D1315)およびM338(N94
4−D1315)の全Hcドメインを含有するタンパク質M1453は一次後根
神経節細胞へ強く結合するが、他方このアッセイではM1321(K865−H
1271)は結合を表示しなかった。この試験では、M1453およびM338
がどちらも同等に良好にGT1bガングリオシドに結合することが発見されたが
、他方M1321は検出可能な結合を有さなかった。これらの結果は、M338
には不在のHcの最初の80個のアミノ末端残基がガングリオシドまたは細胞結
合にとって必須ではないが、他方M1321に不在のカルボキシル末端ドメイン
はこれらの活性のために必須であると思われることを確証している。
【0107】 HcのC末端領域の欠失変異はV1306−D1315がガングリオシド結合
および神経細胞結合にとって重要であることを同定した。このペプチドはβトレ
フォイル構造内で始まり、このドメインおよびレクチン様ドメインを分割する裂
け目で終了する(図1)。さらに詳細にガングリオシドGT1b結合に含まれる
Hcの領域を解析するために、一連の突然変異Hcタンパク質をHis標識融合
タンパク質として作成した(表2)。突然変異His標識タンパク質を大腸菌
BL21中で発現させ、ニッケルアガロース・アフィニティクロマトグラフィ−
を使用して精製した。我々の最初の一連の変異体はHcのC末端領域において作
成した。10個のC末端残基(Δ1306−1315)が欠けている変異体M5
は、野生型レベルの80%でGT1b結合を表示したが、変異体M13(Δ13
11−1315)は野生型Hcから識別不能な結合レベルを有していた(表2)
。これらの10個の残基内の個々のアミノ酸の役割を判定するために、単一アミ
ノ酸置換を含有する数種の変異体を作成し、GT1bガングリオシド結合を測定
した。これらの突然変異タンパク質T1308A、D1309AおよびE131
0Aはすべてが野生型HcのGT1b結合活性の80〜100%を保持していた
(表2)。βトレフォイルドメイン内の多数の他の単一アミノ酸置換もまた作成
したが、すべての例においてタンパク質はGT1b結合活性の野生型レベルを有
することが発見された(データは示されていない)。
【0108】 [実施例2 低いガングリオシド結合を表示するHcの変異体] ガングリオシドGT1b結合に関係するHc分子の他の残基を同定するために
、我々はカルボキシル末端βトレフォイルドメイン内でβシートを結合するルー
プを含む領域を調査することを選択した。これらの領域は表面を露出しており、
細胞の表面上のリガンドと相互作用する可能性が高いと思われる。βトレフォイ
ルドメイン内の2つのβシートを結合するループの6個の残基M28(ΔQ12
74−P1279)または12個の残基M37(ΔH1271−1282)のい
ずれかが欠けた変異体を作成した(図1)。精製タンパク質をガングリオシドG
T1b結合についてアッセイした。変異体M28は野生型HcフラグメントのG
T1b結合活性の5.19%しか保持していないが、他方変異体M37は一層低
いレベルの結合を表示し、野生型Hcフラグメントの活性の1.06%しか有し
ていなかった(図2および表2)。つまり、6個の残基の欠失変異は野生型ガン
グリオシド結合の5%において生じ、12個の残基の欠失変異は野生型結合の1
%においてしか生じなかった。
【0109】 第2の表面露出ループはβトレフォイルドメイン内の2つのβシートを結合し
ているD1214−N1219の領域で同定された。変異体M58(ΔD121
4−N1219)は、野生型Hcフラグメントの0.6%のレベルで実質的に低
下したガングリオシドGT1b結合を示した(図2および表2)。
【0110】
【表3】
【0111】 これらの結果は、方法の項に記載した競合アッセイを使用して確証された。従
って、我々の試験結果は破傷風毒素 Hc分子においてβシートを結合する2つ
のループのいずれか一方における欠失変異がガングリオシドへ結合する分子の能
力を劇的に低下させることを証明している。
【0112】 誘導ガングリオシドを用いての破傷風毒素の光親和性標識付けはHis−12
93がガングリオシド結合に関与していることを証明した。我々は結合において
この残基が果たす役割をセリンおよびアラニン両方への突然変異によって試験し
た。これらの変異体はどちらも結合を低下させたので(野生型のそれぞれが43
%へおよび15%へ)、これは結合におけるHis−1293の重要性を確証し
ている。His−1293は我々がここでやはり結合に関与していることを証明
したHis−1271〜ASP−1272に空間的に近い。His−1293→
SerおよびΔHis−1271からAsp−1282を含む二重変異体を作成
し、顕著に低い結合を示すことが発見された(野生型レベルの4.2%)(表2
および図2参照)。
【0113】 我々はさらにまた変異体Hcタンパク質がN18神経細胞へ結合する能力につ
いても調査した(方法の項を参照)。
【0114】 [実施例3 一次運動ニューロンへの結合はヒスチジン1293変異体によっ
て維持されるが、ループ変異体では低下する。]
【0115】 突然変異Hcタンパク質のガングリオシド結合活性が神経細胞への結合と関連
しているかどうかを判定するために、我々は一次ラット脊髄運動ニューロンへの
結合を試験した。結合は、ポリクローナル抗Hc抗体および蛍光標識二次抗体を
使用して可視化した。野生型Hcおよび変異M5(ΔV1306−D1315)
タンパク質はどちらも一次脊髄運動ニューロンに強力に結合することが証明され
た。これらの結果は、Hcのカルボキシル末端の10個の残基が神経細胞への結
合にとって不可欠ではないことを示唆している。これとは対照的に、ループ突然
変異M58(ΔD1214−N1219)が脊髄運動ニューロンへ結合する能力
は、一次運動ニューロンの非常に弱い染色によって可視化されたように非常に大
きく低下した。第2ループにおいて試験した12個のアミノ酸欠失を含有する変
異体M37(ΔH1271−D1282)もまた同一ループ領域内で6個のアミ
ノ酸欠失を含有する変異体M28(ΔQ1274−P1279)と同様に、一次
脊髄細胞への極めて大きな結合の低下を示した。変異体M58、M37およびM
28については、ガングリオシドGT1bの低下した結合(図2)は神経細胞へ
の低下した結合と一致しており、これはループ1214−1219および127
4−1279内の残基がガングリオシドおよび細胞結合の両方にとって重要であ
ることを示唆している。
【0116】 ヒスチジン1293変異体の細胞結合活性についてもまた一次運動ニューロン
を使用して試験した。H1293AおよびH1293S突然変異タンパク質はど
ちらも入手された強力な染色パタンに判定されるように野生型Hcタンパク質と
同様に強力に一次細胞へ結合すると思われた。これは野生型レベルの12−43
%への結合活性の低下が明確に観察されたガングリオシドGT1bについて入手
された結果(表2)とは対照的である。従って、ガングリオシドGT1b結合に
おける大きな低下はこれらの突然変異タンパク質が一次神経細胞へ結合する能力
を低下させない。選択した変異体のガングリオシド結合、細胞結合および逆行性
輸送(下記参照)活動は表3に要約されている。
【0117】
【表4】
【0118】 [実施例4 逆行性輸送活性は、ヒスチジン1293によっては保持されるが
、ループ変異体では破棄される。]
【0119】 我々の変異体の生物学的活性に関する機能試験として、我々はマウスにおいて
末梢ニューロンから中枢神経系へタンパク質が逆行性輸送を受ける能力を調査し
た。これは破傷風毒素のHcフラグメントの明確に認識された特性であり、破傷
風毒素が中枢神経系のより高度の中心へ輸送される能力を反映する。このアッセ
イのために、マウスの舌に野生型または突然変異タンパク質を注射し、タンパク
質が脳幹内の舌下神経核へ輸送される能力を可視化した。野生型Hcタンパク質
は24時間後に舌下神経核において検出したが、これとは対照的に変異体M28
(ΔQ1274−P1279)を検出することはできず、これはこの変異体が逆
行性輸送において不完全であることを示している。M28の染色の欠如は、PB
Sを使用した陰性対照について所見された場合と同様であった。この結果はM2
8の低下したガングリオシド結合活性(図2および表2)および一次運動神経細
胞への低下した結合と一致している。
【0120】 第2実験において、我々はループ変異体M58(Δ1214−1219)もま
た、非注射マウスに類似する染色の欠如により、逆行性輸送を受けるのに失敗す
ることを発見した。これらの結果は、1274〜1279番目および1214〜
1219番目の残基が、ガングリオシド結合および細胞結合における役割に一致
して、逆行性輸送に不可欠であることを示唆している。C末端突然変異M5(Δ
V1306−D1315)および野生型Hcタンパク質について入手された陽性
染色は、Hcのカルボキシル末端の10個の残基がガングリオシド結合、細胞結
合または逆行性輸送にとって不可欠ではないことを示している。最後に、逆行性
輸送におけるヒスチジン1293の役割についても試験した。H1293Aタン
パク質は舌下神経核の染色によって可視化されたように逆行性輸送を受けたが、
これはヒスチジン1293が逆行性輸送活性のために絶対的には必要とはされな
いことを示唆している。P.Fishmanによって別のヒスチジン1293変
異体(H1293S)の逆行性輸送を示している同様の結果が入手されている(
個人的見解である)。
【0121】 [参考文献]
【表5】
【0122】
【化1】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 破傷風毒素フラグメントCの構造の三次元表示である。
【図2】 様々な破傷風毒素フラグメントC変異体について野生型と比較したガングリオ
シドへの結合率を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 39/395 A61P 31/04 4C086 C07K 14/33 4C087 A61P 31/04 16/12 4H045 C07K 14/33 C12N 1/21 16/12 C12P 21/08 C12N 1/21 21/02 C 15/02 C12R 1:19 C12P 21/08 C12N 15/00 ZNAA // C12P 21/02 C (C12P 21/02 A61K 37/02 C12R 1:19) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,C A,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM ,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH, GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,K E,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS ,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN, MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,R U,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM ,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN, YU,ZA,ZW (72)発明者 シンハ,カサリン イギリス国、エスダブリュー7 2エイワ イ ロンドン、サウス・ケンジントン、イ ンペリアル・カレッジ、デパートメント・ オブ・バイオケミストリー Fターム(参考) 4B024 AA01 AA13 BA31 BA50 CA04 DA06 EA04 GA11 HA01 HA15 4B064 AG27 AG30 AG31 CA02 CA10 CA19 CA20 CC24 CE02 CE10 DA01 4B065 AA23Y AA26X AB01 AC14 BA02 CA24 CA45 4C084 AA02 BA02 BA22 CA04 DA33 NA14 ZB352 4C085 AA03 AA13 AA14 BA12 CC04 CC05 CC07 CC21 DD22 DD33 GG03 GG04 4C086 AA01 AA02 AA03 AA04 EA16 MA01 MA04 NA14 ZB35 4C087 AA01 AA02 BC34 CA12 NA14 ZB35 4H045 AA10 AA11 AA20 AA30 BA10 CA11 DA76 DA83 EA29 EA31 EA52 FA72 FA74 GA21

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 破傷風毒素フラグメントCまたはそれの免疫原性フラグメン
    トを含むポリペプチドであって、該破傷風毒素フラグメントCまたはそれの免疫
    原性フラグメントがループ領域において突然変異を含み、 該突然変異が、 破傷風毒素フラグメントCもしくはそれの免疫原性フラグメントのガングリオ
    シドへの結合性の低下、および/または 破傷風毒素フラグメントCもしくはそれの免疫原性フラグメントの一次運動ニ
    ューロンへの結合性の低下、および/または 破傷風毒素フラグメントCもしくはそれの免疫原性フラグメントが逆行性輸送
    を受ける能力の低下 を生じさせることを特徴とするポリペプチド。
  2. 【請求項2】 前記ループ領域が、破傷風毒素フラグメントCのアミノ酸配
    列の1214〜1219番目および1272〜1282番目のアミノ酸残基から
    選択されることを特徴とする請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 【請求項3】 前記突然変異が、少なくとも1つの欠失変異であることを特
    徴とする請求項1または2に記載のポリペプチド。
  4. 【請求項4】 前記欠失変異が、破傷風毒素フラグメントCのアミノ酸配列
    の1214番目〜1219番目、1274番目〜1279番目および1271番
    目〜1282番目から選択されることを特徴とする請求項3に記載のポリペプチ
    ド。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載のポリペプチドをコードする
    ポリヌクレオチド。
  6. 【請求項6】 宿主細胞におけるポリヌクレオチドの発現を許容する調節配
    列に動作可能に連結された請求項5に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載のベクターを含む宿主細胞。
  8. 【請求項8】 細菌である請求項7に記載の宿主細胞。
  9. 【請求項9】 希釈するために製薬学的に容認可能な担体と一緒に請求項1
    〜4のいずれかに記載のポリペプチド、請求項5に記載のポリヌクレオチドまた
    は請求項6に記載のベクターを含む医薬組成物。
  10. 【請求項10】 希釈するために製薬学的に容認可能な担体と一緒に請求項
    1〜4のいずれかに記載のポリペプチド、請求項5に記載のポリヌクレオチドま
    たは請求項6に記載のベクターを含むワクチン組成物。
  11. 【請求項11】 ヒトまたは動物に有効量の請求項1〜4のいずれかに記載
    のポリペプチド、請求項5に記載のポリヌクレオチドまたは請求項6に記載のベ
    クターを投与するステップを含むヒトまたは動物における破傷風菌感染症を治療
    する方法、または予防する方法、または破傷風菌感染症に対する感受性を低下さ
    せる方法。
  12. 【請求項12】 破傷風毒素ポリペプチド内のエピトープを認識する抗体を
    産生する方法における請求項1〜4のいずれかに記載のポリペプチド、請求項5
    に記載のポリヌクレオチドまたは請求項6に記載のベクターの使用。
  13. 【請求項13】 動物に対して、請求項1〜4のいずれかに記載のポリペプ
    チド、または請求項5に記載のポリヌクレオチド、または請求項6に記載のベク
    ターを投与するステップを含む、破傷風毒素ポリペプチド内のエピトープを認識
    する抗体を産生する方法。
  14. 【請求項14】 請求項12または13に従って産生した有効量の抗体をヒ
    トまたは動物に投与するステップを含むヒトまたは動物における破傷風菌感染症
    を治療する方法。
  15. 【請求項15】 ポリペプチドの表面露出ループ領域に存在する1個以上の
    アミノ酸残基を修飾するステップを含むガングリオシドに対する破傷風毒素フラ
    グメントCポリペプチドの結合親和性を低下させる方法。
  16. 【請求項16】 請求項15の方法によって産生されたポリペプチド。
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