JP3497561B2 - 改良された生分解性ポリエステル繊維 - Google Patents
改良された生分解性ポリエステル繊維Info
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Description
分解性又は中性環境での加水分解性を有する新規な複合
繊維に関する。
の見地から近年注目されている。天然繊維の綿、羊毛、
絹などは生分解性を有するが、強度、繊度、長さなどが
限られ用途が限定される。又一般に、天然繊維は細菌の
豊富な土中や水中に保持すると1〜3ヶ月程度で分解が
進行し、製品の寿命が短すぎるという欠点がある。この
ため、任意の太さや長さのものを製造し得る人造繊維
で、必要に応じた分解又は劣化速度を有するものが強く
望まれている。しかし、生分解性ポリマーを紡糸して繊
維化しても、多くは寿命が短かすぎて実用上問題があ
り、或いは、寿命が長すぎてなかなか劣化しない等の問
題がある。
ぼ直線的に劣化する性質が有り、使用中に強度や物性が
著しく変化するという欠点がある。
範囲で必要に応じて寿命(使用期限)を制御可能であ
り、更に使用期間中の強度や物性の劣化が比較的少な
く、寿命が来ると急速に劣化るという極めて好ましい劣
化特性を高い信頼性を持って与える事が可能な新規な生
分解性又は中性環境での加水分解性を有する繊維を提供
するにある。
は、鞘部が生分解又は中性水溶液中での加水分解による
劣化速度が低い難分解性ポリエステルからなり、芯部が
劣化速度が高い易分解性ポリエステルからなり、芯部ポ
リマーと鞘部ポリマーとの劣化速度比が2以上であり、
且つ芯鞘両成分が分子配向されている芯鞘複合繊維であ
って、芯と鞘との主成分(50%以上の成分)が同一で
変性度が互いに異なる分解性ポリエステルからなること
を特徴とする芯鞘複合繊維によって達成される。
紡糸時に接合しつつ紡出されて単繊維を形成したもので
あり、芯鞘複合とは芯成分(ポリマー)が鞘成分(ポリ
マー)によって完全に包囲されている複合構造である。
図1〜図7は、本発明の芯鞘複合繊維の色々な例を示す
単繊維の横断面図である。図において、(1)は、難分
解ポリマーからなる鞘であり、(2)、(2A)及び(2B)は
易分解ポリマーからなる芯である。
解性を低減する為に「加水分解性のポリマーよりなる加
水分解性ポリエステル繊維よりなり、且つ繊維の表面が
該加水分解性ポリエステルより、加水分解性が低い分解
性重合体でコーティングされていることを特徴とする釣
糸」が開示されている。勿論本発明と特開平4‐108
331号に示される釣糸とは、構成要件、効果において
全く異なるものである。該釣糸の一部分は、加水分解性
の繊維の表面が、それよりも低い加水分解性の重合体で
表面を被覆されている点で、本発明の複合繊維に一見類
似する構造を有すると考えられるかもしれないが、両者
の間には、以下に述べるように、本質的な相違が存在す
る。
工(塗付法など)で繊維表面にポリマーの皮膜を形成す
るものである。コーティング法では、付着せしめるポリ
マーの溶剤による溶液、又はポリマーの水系分散液等を
塗布法や吹きつけ法等で付着、固化させる。従って得ら
れるコーティングされた皮膜は延伸されることはなく、
分子配向をしていない。従って、コーティング皮膜は本
質的に結晶性及び強度に劣り、その結果加水分解速度が
高くなる(易分解性となる)傾向があり、分解速度を広
い範囲で制御することは困難で、特に分解速度の低い
(長寿命の)ものを得ることは至難である。
繊維に比較して強度に劣り、摩擦等の外力によって損
傷、破壊されやすい。繊維や織編み物や不織布に加工す
る時も、繊維は強く摩擦を受ける事が多く、又衣料用や
非衣料用、農業用、漁業用等の用途においても使用中に
摩擦される事が多い。従って、コーティング法による皮
膜を有する製品は余り強い摩擦を受けない限られた特殊
な用途にしか使用できない。
みを均一にすることが極めて困難で、その上ピンホール
などの欠陥が出来易く、従って加水分解による寿命が一
定せず、使用中に劣化が進行し、実用上大きな支障とな
る。その上、コーティング法では溶剤を使用する場合、
その溶剤によって繊維が溶解又は膨潤して繊維強度の低
下が起きる可能性が極めて高い。特開平4−10833
1号公報の実施例では、この問題を防ぐ為にあらかじめ
繊維表面にシリコーン油を付けている。そうする事によ
り繊維の劣化は防げるとしても繊維とコーティング剤の
接着性は更に低下し摩擦などで極めて容易にコーティン
グ皮膜が剥離又は破損して、本来の目的を達する事が出
来ない。一方溶融コーティング法では溶剤は使用しない
が、溶融したコーティング剤の熱によって繊維の軟化、
劣化する可能性が高く、実用性は極めて低い。
融法にせよコーティングと言う極めて困難な方法に適応
する為、コーティング剤は極めて限られた物しか使用で
きず(例えば、繊維より高融点のものは溶融コーティン
グには使用できない。溶融法でも繊維、特にポリ乳酸や
生分解性のポリエステル等では繊維の劣化なしに利用可
能な溶剤は極めて少ない。)得られる製品の範囲は極め
て狭い。
の厚みも限られ、極めて薄いものや、厚いものを均一に
製造する事は不可能である。また、製造工程も複雑で加
工速度も低く、コスト高である。このように、コーティ
ング法では、本発明の目的を効果的に達成する事は到底
不可能である。
ともに延伸又は超高速紡糸法などにより、充分に配向、
結晶化させることが出来、優れた強度を得ることが出来
る、分解速度の制御範囲が広く、分解速度の低い(長
寿命の)ものも容易に得られる、複合構造や鞘の厚み
が均一で欠陥のないものが容易に得られ、性能、品質の
信頼性が高い、鞘の厚みを変えることにより寿命を容
易且つ自由に変えることが出来、広範な目的、用途に応
用可能である、鞘と芯との接着性の良い成分を(例え
ば同系統のポリマー同士)組み合わせる事により、鞘と
芯とが摩擦等で剥離する事を防げる、高速、高能率で
製造することが出来、実用性及び経済性に優れる、等の
点で、前記コーティング法とは本質的に異なり、且つ格
段に優れた数々の特長を有する。
例である。図1は同心円型、図2は偏心型、図3は2芯
型、図4は非円形型、図5は多芯異形型、図6は2種の
易分解ポリマー(2A)及び(2B)が一体となって芯を形成し
ている例、図7は中空形の例である。すなわち、本発明
の繊維の複合構造は、同心、偏心、単芯、多芯など任意
であり、断面の形も円形、非円形(楕円、多角形、多葉
形、星形、C形、I形、H形、L形、W形、まゆ形、そ
れらに類似する形等)、中空形など任意に選ぶことが出
来る。
比又は体積比)は、目的や用途に応じて選べば良いが、
2/1〜1/20が好ましく、1/1〜1/10が更に
好ましく、1/1〜1/4が特に好ましい。複合繊維の
寿命は、主として鞘成分の劣化速度と鞘の厚みによって
定まる。目的・用途によって寿命を変更する場合、鞘成
分として劣化速度の異なるものを多数準備するよりも、
複合比を変えて鞘の厚みを変える方が、はるかに容易且
つ有利である。本発明の特長、すなわち使用中(寿命以
前)は劣化が少なく、寿命に到達すると急速に劣化する
特性を発揮するには、複合繊維の強度に対する芯成分の
寄与率が30%以上、特に40%以上であることが好ま
しく、50%以上が最も好ましい。鞘の厚み(最も薄い
部分)は通常0.5μm程度以上、100μm程度以
下、好ましくは1μm〜10μmの範囲が最も広く用い
られる。
るには、芯成分の劣化速度と鞘成分の劣化速の比を大き
くすることが効果的である。該劣化速度比は、2以上が
必要であり、特に5以上が好ましく、10以上が最も好
ましく、5〜200程度の範囲が最もよく利用される。
劣化速度は、土中又は水中などで繊維を分解・劣化した
時の、繊維の引張強度が初期(未劣化時)の値の1/2
になる時間すなわち強度の半減期(以下、半減期と記
す)を指標とする。多くの場合、時間と共に強度は(半
減期付近までは)、ほぼ直線的に低下するので、半減期
は劣化速度に逆比例とみなして良い。劣化速度比は、芯
成分及び鞘成分をそれぞれ用いて、複合繊維の製造条件
と実質的に同一条件で単成分繊維を製造し、劣化試験に
より半減期を求め、両成分の半減期の比の逆数で示す。
例えば半減期3ヵ月の成分(A)と半減期2年の成分
(B)との半減期比(A/B)は1/8で、劣化速度比
(A/B)は8である。
相対的なものである。同一ポリマーでも、試験条件や比
較する相手が変ると、「難分解」になったり「易分解」
になる。従って劣化速度比は、両成分を同一条件で劣化
させて求める。使用目的によって、土中に埋没した場
合、堆肥中で醗酵させた場合、活性汚泥を含む廃水処理
槽中に浸漬した場合、海水中に浸漬した場合、PH7.
2の37℃の緩衝水溶液(市販品)中に浸漬した場合
(人体埋設に近いと言われる)、それらの環境で温度を
変えた場合(促進試験)などから、適切なものを選ぶこ
とが出来る。下記の実施例では、常温(15℃〜25
℃)の土壌(畑土)中埋没法の例を示す。
ポリマーとしては、一般に、純度が高い、構造の規
則性や結晶性が高い、芳香族成分をより多く含有す
る、などの特徴を有するポリエステル類から選ぶことが
出来る。その半減期は、通常1ヵ月程度から10年程度
までの範囲、特に6ヵ月〜8年がよく用いられ、1年〜
5年が、最もよく用いられる。
は、ポリL乳酸、ポリD乳酸、ポリLヒドロキシブチレ
ート、ポリDヒドロキシブチレートなどの不純物(共重
合成分や混合物)を含まないホモポリマー、又は不純物
の含有量の少ない(3重量%未満)低率の変性体が有用
である。同様に、芳香族ポリエステル例えばポリエチレ
ンテレフタレート(以下PETと記す)、ポリブチレン
テレフタレート(以下PBT)、ポリヘキサンテレフタ
ート(以下PHT)、それらにイソフタル酸などの第3
成分を共重合したものなどに、分解性成分として脂肪族
ポリエステル成分を少量、例えば3〜30%共重合した
ものも有用である。上記分解性成分に用いる脂肪族ポリ
エステル成分としては、脂肪族グリコール(例えばエ
チレングリコール、プロピレングリコール、ブチレング
ルコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカ
ンジオールなど)及びエチレングリコールのオリゴマー
類(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリ
コールなど)と脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク
酸、アジピン酸、ヘキサンジカルボン酸、デカンジカル
ボン酸など)との組合せ、ラクトン類(例えばカプロ
ラクトン、ピハロラクトンなど)及びヒドロキシカル
ボン酸(例えば乳酸、酪酸、吉草酸など)などがあげら
れる。
ば3〜30%の脂肪族ポリエステル(例えば、ポリ乳
酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリエチレンアジペー
ト、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサンアジペー
ト、ポリカプロラクトン、及びそれらを成分とする共重
合体など)を混合したものも有用である。
ルであっても、撥水成分を混合して分解性を低減させた
ものは、本発明複合繊維の鞘成分として有用である。撥
水剤としては、パラフィン、ワックス類、高級脂肪酸エ
ステル、アミドワックス、高級脂肪酸金属塩(特にカル
シウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩など)、ポリエチレ
ン(分子量2万以下、特に1万以下)、酸化ポリエチレ
ン(カルボキシル基含有物共重合体)、シリコン油、シ
リコンワックスなどがあげられる。撥水剤の混合率は
0.1〜5%程度、特に0.2〜3%の範囲が好ましい
ことが多い。
と溶融複合紡糸することが品質、性能、コスト面で最も
有利であり、従って芯成分用易分解性ポリエステルと融
点(及び溶融粘度)が近いものが望ましい。すなわち、
鞘成分の融点は100℃〜220℃、特に120℃〜2
00℃が望ましい。
リ乳酸、ポリヒドロキシブチレートなどの脂肪族ポリエ
ステルを用いる場合、未変性(ホモポリマー)で分子量
や分子構造の規則性が高いものほど、結晶性が高く分解
速度が低い。同様に、高い倍率で延伸して配向度及び結
晶化度を高めたり、熱処理で結晶化度を高めることによ
り、分解速度を低下させることが出来る。逆に、第2成
分や第3成分を共重合したり混合したりして、分子構造
の規則性を低下させ結晶性を低減させると、分解速度が
増大する。
リマーの組成、特に脂肪族成分と芳香族成分の比率、
撥水性成分の添加、結晶化度などの要因を変えて、広
い範囲で制御可能である。例えば、鞘成分の土中埋設時
の半減期を2週間、1カ月、3カ月、6カ月、1年、2
年、5年、10年などと変えることにより、複合繊維の
寿命(使用限度期間)を広範囲に調節し、色々な用途に
応用することが出来る。
一般に未変性の脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエ
ステルを主成分とする共重合体又は混合体、芳香族ポ
リエステルに脂肪族ポリエステル成分を共重合又は混合
して、分解性を付与したもの、などの中から鞘成分より
も分解速度が早い(2倍以上)ものを選ぶことが出来
る。
2成分や第3成分を共重合したり混合して、ポリマーの
分子構造の規則性を低下させることは容易である。例え
ばポリL乳酸、ポリLヒドロキシブチレートなどの脂肪
族ポリエステルに、光学異性体(D体)モノマーを1〜
50%、特に3〜20%共重合して結晶化度を大巾に低
下したり、非晶化することが出来る。同様に、異種脂肪
族や芳香族成分を共重合して、結晶性を大巾に低下させ
ることが出来る。同様に同種モノマーや異種モノマーの
オリゴマーや異種ポリマーなどを1〜50%、特に3〜
20%混合して結晶性を低下させることも容易である。
増大し、疎水化すると分解性が低減する傾向がある。撥
水剤の混合により分解性を低減する方法は、前記(鞘成
分の分解速度を低下する手段の項)した。逆に親水成分
の導入で、ポリマーの分解速度を増大することが出来
る。例えば、アミノ基、イミノ基、アミド結合、水酸
基、スルフォン酸基、リン酸基、エーテル結合などをも
つ化合物を、共重合したり混合して、ポリマーの分解速
度を増大することが出来る。例えば、スルホイソフタル
酸や、ポリエーテル特にポリエチレングルコールを0.
5〜30%程度共重合し、分解速度を高めることが出来
る。同じく、ポリエチレングリコール、多糖類、ポリア
ミノ酸などを0.5〜30%程度混合し、分解速度を高
めることが出来る。
例えばTgが20℃以下、特に0℃以下の成分(例えば
ポリカプロラクトン、ポリヘキサンアジペート、ポリア
ルキレンエーテルなど)を0.5〜30%程度共重合し
たり混合して、ポリエステルの分解速度を高めることが
出来る。
マーの組成、特に脂肪族成分と芳香族成分の比率、結
晶化度などの要因を変えたり、親水成分の導入やT
gの低い成分の導入により、広い範囲で制御可能であ
る。例えば土中に埋設時の半減期を1週間、2週間、1
ヵ月、2ヵ月、6ヵ月、1年、2年などと変えることに
より、使用期間を過ぎた後の劣化特性を使用目的に合わ
せて調節することが出来る。芯成分の半減期は目的によ
って異なるが6ヵ月以下が好ましく、3ヵ月以下が特に
好ましく、1〜3ヵ月が最も好ましい場合が多い。しか
し、芯成分が余りにも分解しやすいと鞘が破損する以前
に鞘を浸透した水等により芯が分解してしまう事がある
ので注意が必要である。
かなりの、又は大きな差があるものを用いる。分解速度
の相異は、上述のように色々の要因を変えることにより
得られるが、中でも純度、変性度、結晶性などの要因は
基本的なものである。この見地からは、鞘成分の結晶化
度は、芯成分の結晶化度よりも5%以上高いことが望ま
しく、10%以上高いことが特に望ましいことが多い。
(非晶性の場合は軟化点)よりも5℃以上高いことが望
ましく、10℃以上高いことが特に望ましいことが多
い。
る事が望ましい。(勿論、接着性が乏しくても本発明の
複合繊維は鞘成分も十分に延伸・配向されているから、
コーティング法に比べると摩擦等の外力に対する抵抗力
ははるかに高い。)芯成分と鞘成分とは同系統のポリマ
ーにする事により比較的容易に良好な接着性が得られ
る。特に主成分(50%以上の成分)が同一で副次成分
の量を変えて変性した物の組み合わせは良好な接着性が
得られる。例えば、ホモポリマー(変性率0%)とそれ
を主成分としコポリマー(変性率2〜50%)の組み合
わせは接着性に優れる物の組み合わせが多い。同じく例
えば変性率3%のものと変性率10%のものも接着性の
良い組み合わせの一例である。L−乳酸を主成分とする
ポリマーとL−ヒドロキシブチレートを主成分とするポ
リマーも分子構造の近似性が高く接着性は良好である。
図である。曲線4は劣化速度の大きい(半減期1ヵ月)
ポリマーAの劣化曲線、曲線5は劣化速度の小さい(半
減期2.5年)ポリマーBの劣化曲線、曲線6及び7は
ポリマーAを芯とし、ポリマーBを鞘とした複合繊維の
劣化曲線である。曲線6は、鞘の厚みが小さく、約3ヵ
月で鞘が実質的に破壊されて芯の劣化が急速に進行し、
半減期が約4ヵ月になった例である。曲線7は曲線6の
複合繊維よりも鞘が厚く、約5.5ヵ月で鞘が実質的に
破壊されて急速に劣化が進行し、半減期が6.3ヵ月を
示したを例である。曲線6では寿命は約3ヵ月、曲線7
では寿命(使用期限)は約5.5ヵ月である。図に見る
ように、本発明の複合繊維は、使用中はあまり劣化せ
ず、寿命(使用限度)を過ぎると急速に劣化する極めて
好ましい劣化特性を与える事が出来る。他方、従来の単
成分からなる繊維の劣化は、曲線4又は6のように単純
に劣化が進行し、使用中に強度が著しく低下するという
欠点がある。又、コーティング法では摩擦などによるコ
ーティング皮膜の破損があり実際の使用時には図7中の
曲線6や7の様な特性を得る事は極めて困難である。
ーは、繊維に充分な強度を与えるために、充分な分子量
を有するものである必要がある。一般に脂肪族成分を主
成分(50%以上)とするポリマーでは平均分子量3万
以上が好ましく、4万以上が特に好ましく、6万〜30
万が最も好ましいことが多い。一方、芳香族成分を主成
分(50%以上)とするポリマーでは、分子量1500
0以上が好ましく、20000以上が特に好ましく、3
万〜15万が最も好ましいことが多い。充分に延伸した
本発明の複合繊維は、通常2g/d以上、多くの場合3
g/d以上、更に好ましくは4g/d以上の強度を持た
せることが出来、6g/d以上の高強度品も比較的容易
に得ることが出来る。
ーの融点又は軟化点は、繊維に充分な耐熱性を与えるた
め、100℃以上が好ましく、120℃以上が特に好ま
しく、150℃以上が最も好ましい。しかし、通常の用
途以外の、低温で使用する場合や、加熱による融着性を
与える目的の場合は、融点又は軟化点が100℃以下の
ものも利用可能である。
ーには必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、
顔料、着色剤、帯電防止剤、離型剤その他周知の添加剤
や充填剤を配合、混合することが出来る。
試料のクロロホルム0.1〜0.5%程度の溶液のGP
C(ポリスチレン標準試料により較正)の、高分子物
(分子量1000以下のものを除く)の分散の、数平均
値とする。
延伸、熱処理して十分に配向結晶化させた繊維を示差熱
量分析(DSC)法で測定(昇温速度10℃/min)
した時の、結晶の主たる溶融吸熱のピーク値とする。本
発明において、部及び%は特に断らない限り重量部、重
量%である。
乾湿式などの周知の複合紡糸方法で製造し、必要に応じ
延伸、熱処理、捲縮などを行うことが出来る。特に溶融
紡糸は、高速、高能率で行えるので好ましい。特に、紡
糸速度を3000m/min以上の高速とすることによ
り部分配向糸(POY)を得ることが出来、5000m
/min以上とすることより高配向糸(HOY)とする
ことが出来る。また、溶融重合工程と連結して、重合−
紡糸を連続化することも可能であり、スピンドロー方式
により、紡糸と延伸を同時に行うことも可能で、極めて
効率的である。
験は次のように行った。試料繊維は150デニール/4
8フィラメントの連続フィラメント(単糸繊度3.1デ
ニール)とし、それを直径6mmのステンレス網の長方形
の枠で間隔10cmのものに緊張状態(張力50mg/d程
度)で10回巻き付け固定する。比較対照するサンプル
は、1cm離して隣に同様に巻き付ける。試料(糸)を取
付けたステンレス棒枠を、農業用寒冷紗の下の中性(p
H6.5〜7.0)の肥沃な畑土に深さ10cmで水平に
埋没する。土壌は過度に乾燥したり、湿潤にならぬよう
に注意し、温度は20℃±5℃の範囲に保つ。所定期
間、例えば1週間おき、或いは1ヵ月おきに、試料を取
り出し、水洗して自然乾燥後各試料から3本の単繊維を
抜き取り、単糸で引張試験を行う。試料の長さは5cm、
引張速度は5cm/minとし、切断強度を求め、10回
の測定値の平均値を代表値とする。引張試験の試験室の
温度は20℃、湿度は65%RHとする。
2軸混練機を用い、0.3%のジオクチル酸錫を重合触
媒とし、酸化防止剤としてチバガイギー社イルガノック
ス1010を0.1%、流動性改良兼撥水剤としてステ
アリン酸マグネシウム0.3%及び分子量4000の酸
化ポリエチレン(酸化数15)0.5%を添加し、19
0℃で35分間撹拌重合し、重合後口径3mmのノズルよ
り押出し、水で冷却して切断してチップ化した。得たチ
ップを、遠心脱水した後、真空乾燥機で90℃、真空度
0.1Torr以下で48時間乾燥及び残存モノマー
(ラクチド)を除去し、数平均重合度16万2000、
光学純度99.9%以上のポリ乳酸を得た。これをポリ
マーP1とする。
マーとしてLラクチド95部とDラクチド5部を混合し
たものを用い撥水剤を添加しないで得たL/D=95/
5共重合ポリ乳酸で平均分子量15万6000の物をポ
リマーP2とする。
出機で溶融し、孔径0.2mm、温度195℃のオリフィ
スより紡出し、空気中で冷却し、オイリングして800
m/minの速度で巻き取り未延伸糸UDY1を得た。
UDY1を延伸温度70℃、延伸倍率4.1倍で延伸
し、緊張下120℃で熱処理した150デニール/48
フィラメントの延伸糸DY1を得た。糸の強度4.1g
/d、伸度32.0%、初期弾性率(ヤング率)63.
6g/d、分子量108000、融点173℃であっ
た。
紡糸、延伸して得た糸DY2の物性値は、強度3.1g
/d、伸度43.1%、初期弾性率36.6g/d、分
子量87,000、融点151℃であった。
クリュウ押出機で溶融し、P1を鞘とし、P2を芯とし
P1/P2の体積比率1/1で同心の芯鞘型に複合し、
195℃、直径0.2mmのオリフィスより紡糸し、以
下DY1と同様に紡糸、延伸して糸DY3を得た。DY
3の物性値は強度3.6g/d、伸度40.1%弾性率
57.4g/d、分子量96,000であった。DY3
とほぼ同様にして、但し複合比率(体積)P1/P2=
1/2で芯鞘型に複合紡糸、延伸して糸DY4を得た。
DY4の物性値は強度3.5g/d、伸度31%、弾性
率51g/d、分子量92,000であった。糸DY
1、DY2、DY3、DY4を土中に埋没して2年間の
劣化試験を行なった。各糸の各埋没時間における強度保
持率を表1に示す。
らなる糸DY1の半減期は推定約15ヵ月であり、易分
解ポリエステルからなる糸DY2の半減期は約3ヵ月で
ある。両ポリマーを鞘/芯複合比1/1で複合した糸D
Y3は12ヵ月を過ぎると急速に劣化が進行し、半減期
は14ヵ月である。同じく鞘/芯複合比1/2で複合し
た糸DY4は、8ヵ月を過ぎると劣化が急速に進行し、
半減期は約9ヵ月である。単一成分からなる糸DY1及
びDY2はほぼ直線的に劣化するが、本発明複合繊維は
それぞれ所定の期間内では劣化はゆるやかに進行し、そ
の期間を過ぎると劣化が急速に進行するという特長を有
する。なおポリマーP1とP2を混合紡糸した繊維の劣
化特性は、混合状態によって異なるが、多くの場合直線
的な劣化特性を示し、本発明複合繊維のような特異な劣
化挙動は示さない。図8に結果を示す。
2.2で、エステル交換触媒として酢酸ナトリウムを2
00ppm、180℃で撹拌して約2時間反応させエス
テル交換させた。次にブチレンテレフタレート成分に対
し分子量600のポリヘキサンアジペート20重量%及
び重合触媒として3酸化アンチモン250ppmを混合
し、240℃で1時間撹拌しつつ圧力を600Torr
から徐々に低下させて0.5Torrまで到達させ、さ
らに0.5torrで約4時間重合して、ポリブチレン
テレフタレート(PBT)/ポリヘキサンアジペート
(PHA)共重合体P3を得た。共重合体P3は主とし
てPBT/PHAのブロック共重合であるが、一部はエ
ステル交換反応のため、ランダム共重合体化している。
て、但し重合時に分子量6300のポリエチレングリコ
ール(PEG)を2.5%混合反応せしめ、ポリ乳酸/
PEGブロック共重合体P4を得た。
紡糸延伸して延伸糸DY5を得た。DY5の物性値は、
強度3.6g/d、伸度58.0%、弾性率28.6g
/d、分子量46000、融点231℃であった。同じ
く共重合体P4を同様に紡糸延伸して延伸糸DY6を得
た。DY5の特性値は、強度4.3g/d、伸度33.
1%、弾性率59.4g/d、分子量97,000、融
点171℃であった。
し、実施例1のDY3と同様にスクリュウ押出機で溶融
しP3/P4の複合比率1/2で同心の芯鞘型に複合し
DY7を得た。DY7の物性値は強度4.1g/d、伸
度36.1%、弾性率58.0g/dであった。
間の劣化試験を行なった。その結果、DY5の半減期は
約3年、DY6の半減期は約6ケ月でほぼ直線的に劣化
が進行した。これに対して複合繊維DY7は24ケ月迄
は劣化が緩やかに進行し、その後急速に劣化した。半減
期は27ケ月であった。結果は図8に示す。
り前)は強度の劣化がゆるやかで、使用期間を過ぎると
急速に劣化が進行すると言う極めて好ましい特性を高信
頼性で持たせる事が出来る。これに対して従来の単成分
タイプの分解性繊維の劣化は時間と共にほぼ直線的に進
行する為に使用中にも劣化の進行が著しく、使用(可能
な)期間が不明瞭であると言う大きな問題点があった。
更に、従来の単成分繊維は使用後も使用中とほぼ同じ速
度で劣化するので、使用期間の長い物では劣化しないで
残ったものが様々なトラブルの原因となる。
る事が出来るので、その様なトラブルを防ぐ事が出来
る。更に本発明の繊維は鞘と芯の成分ポリマー及びその
複合比率や断面形状を選定する事により、広範囲の分解
特性を有する繊維を自由に設計し、容易に高能率で製造
する事が出来ると言う非常に大きな特長を有する。又、
本発明の複合繊維は鞘部分が十分に延伸されており、且
つ芯と鞘とを十分に強く接着出来る為に摩擦などの外力
でも容易に鞘が損傷したり、鞘と芯とが剥離したりする
事を防ぐ事が出来、実際の使用に際してもその特長を十
分に発揮でき、信頼性が極めて高い。
速で製造する事が出来、従来のコーティング法等により
生産される物に比べて工業的に極めて有利である。
切断したステープルやスパンボンド、フラッシュ紡糸等
の方法で各種の繊維を得る事が出来る。用途としては、
各種の糸、ロープ、紐、編み物、織物、不織布、紙、そ
の他の繊維構造物に利用する事が出来る。使用にあたっ
ては、本繊維のみでも又他の繊維との混合してもよい。
本発明の繊維は衣料用、非衣料用、医療用、衛生材料
用、包装材料用、農業用・土木用資材、釣り糸、魚網、
使い捨て資材、一般資材用、工業資材用等の広範な用途
に、その優れた特性を利用して使用する事が出来る。
示す。図中の1は鞘成分:難分解性ポリエステルを示
し、2は芯成分:易分解性ポリエステルを示す。
示す。図中の1は鞘成分:難分解性ポリエステルを示
し、2は芯成分:易分解性ポリエステルを示す。
示す。図中の1は鞘成分:難分解性ポリエステルを示
し、2は芯成分:易分解性ポリエステルを示す。
示す。図中の1は鞘成分:難分解性ポリエステルを示
し、2は芯成分:易分解性ポリエステルを示す。
示す。図中の1は鞘成分:難分解性ポリエステルを示
し、2は芯成分:易分解性ポリエステルを示す。
示す。図中の1は鞘成分:難分解 性ポリエステルを示
し、2Aおよび2Bは芯成分:易分解性ポリエステルを示
す。
示す。図中の1は鞘成分:難分解性ポリエステルを示
し、2は芯成分:易分解性ポリエステルを示す。又、3
は中空部を示す。
る強度保持率の時間依存性の一例を示す。曲線4は分解
速度の早い単成分からなる繊維の劣化曲線、曲線5は分
解速度の遅い単成分からなる繊維の劣化曲線、曲線6及
び7は分解速度の遅い鞘と分解速度の早い芯成分よりな
る本発明の芯/鞘型複合繊維の劣化曲線を示す。
Claims (15)
- 【請求項1】 鞘が生分解による、又は中性の水又は水
溶液(以下中性水溶液と記す)中での加水分解による劣
化速度が低い難分解ポリエステルからなり、芯が該鞘の
劣化速度の2倍以上の劣化速度を有する易分解ポリエス
テルからなり、且つ芯鞘両成分が分子配向されている芯
鞘複合繊維であって、芯と鞘との主成分(50%以上の
成分)が同一で変性度が互いに異なる分解性ポリエステ
ルからなることを特徴とする芯鞘複合繊維。 - 【請求項2】 芯の易分解ポリエステルの劣化速度が、
鞘の難分解ポリエステルの劣化速度の5倍以上である請
求項1に記載の複合繊維。 - 【請求項3】 芯の易分解ポリエステルの劣化速度が、
鞘の難分解ポリエステルの劣化速度の10倍以上である
請求項1に記載の複合繊維。 - 【請求項4】 芯の易分解ポリエステルの土壌(畑土、
15〜25℃)中の劣化試験による強度の半減期が6ヶ
月以下であり、鞘の難分解ポリエステルの該半減期が6
ヶ月以上である請求項1〜3のいずれかに記載の複合繊
維。 - 【請求項5】 芯の易分解ポリエステルの土壌中の強度
劣化半減期が6ヶ月以下であり、鞘の難分解ポリエステ
ルの該半減期が1年以上である請求項1〜3のいずれか
に記載の複合繊維。 - 【請求項6】 鞘と芯との複合比(体積比)が2/1〜
1/20である請求項1〜5のいずれかに記載の複合繊
維。 - 【請求項7】 鞘と芯との複合比(体積比)が1/1〜
1/10である請求項1〜5のいずれかに記載の複合繊
維。 - 【請求項8】 鞘の最も薄い部分の厚みが1μm〜10
μmである請求項1〜7のいずれかに記載の複合繊維。 - 【請求項9】 鞘が、未変性のポリ乳酸、未変性のポリ
ヒドロキシブチレート、3重量%未満の第2成分を共重
合又は混合した低変性ポリ乳酸、3重量%未満の第2成
分を共重合又は混合した低変性ポリヒドロキシブチレー
ト、撥水成分を混合して分解性を低減せしめた脂肪族ポ
リエステル、脂肪族成分を3〜30重量%共重合して弱
い分解性を付与した芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエ
ステルを3〜30重量%混合して弱い分解性を付与した
芳香族ポリエステルの群から選ばれた少なくとも1種の
難分解ポリエステルからなり、芯が、未変性又は50重
量%以下の第2成分を共重合又は混合した変性脂肪族ポ
リエステル、親水性成分を共重合又は混合により導入し
て分解性を増大させた分解性ポリエステル及び、ガラス
転移点が20℃以下の成分を共重合又は混合により導入
して分解性を増大させた分解性ポリエステルの群から選
ばれた易分解ポリエステルからなる、請求項1〜8のい
ずれかに記載の複合繊維。 - 【請求項10】 芯と鞘とが強固に接着されてなる請求
項1〜9のいずれかに記載の複合繊維。 - 【請求項11】 鞘成分の結晶性が芯成分の結晶性より
も5%以上高い請求項1〜10のいずれかに記載の複合
繊維。 - 【請求項12】 鞘成分の融点が芯成分の融点よりも5
℃以上高い請求項1〜11のいずれかに記載の複合繊
維。 - 【請求項13】 断面の形が、円形、楕円形、多角形、
多葉形又はそれに類似する形である請求項1〜12のい
ずれかに記載の複合繊維。 - 【請求項14】 芯鞘複合繊維が、同心的又は偏心的で
ある請求項1〜13のいずれかに記載の複合繊維。 - 【請求項15】 引張強度が3g/デニール以上である
請求項1〜14のいずれかに記載の複合繊維。
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