JP3486640B2 - 超電導薄膜製造用ターゲットおよびその製造方法、それを用いた超電導体の製造方法 - Google Patents

超電導薄膜製造用ターゲットおよびその製造方法、それを用いた超電導体の製造方法

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JP3486640B2 JP06880293A JP6880293A JP3486640B2 JP 3486640 B2 JP3486640 B2 JP 3486640B2 JP 06880293 A JP06880293 A JP 06880293A JP 6880293 A JP6880293 A JP 6880293A JP 3486640 B2 JP3486640 B2 JP 3486640B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、核融合炉用超電導磁
石、粒子加速器用超電導磁石、エネルギー貯蔵用超電導
磁石、磁気浮上輸送用超電導磁石、磁気分離用超電導磁
石、超電導薄膜デバイス素子等への応用開発が進められ
ている超電導体を製造する際に用いるスパッタリング用
ターゲットとその製造方法およびそれを用いた超電導体
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の超電導磁石に用いられて
いる超電導体として、臨界温度と臨界電流密度が高く、
臨界磁界も高いNb3Sn、Nb3Alなどの超電導金属
間化合物が知られている。そして従来、Nb3Sn超電
導金属間化合物をスパッタリング法でテープ状または線
状の基材上に膜状に積層して超電導導体を製造する場
合、従来は以下のような手法を用いていた。まず、Nb
のターゲットとSnのターゲットをそれぞれスパッタリ
ング装置の真空チャンバ内に設置し、スパッタリングを
行ないながらNbターゲットが生じさせたスパッタ粒子
とSnターゲットが生じさせたスパッタ粒子を交互に基
材上に堆積し、Nb層とSn層とが交互に堆積された積
層膜を得る。次にこの積層膜を熱処理してNbとSnを
反応させ、Nb3Sn超電導金属間化合物の薄膜を生成
させて超電導導体を得ていた。また、Nbターゲットと
Cu-Sn合金ターゲットを用いた場合は、Nb層とC
u-Sn合金層を交互に堆積させることにより、Nb-C
u/Sn積層膜を得、その後に熱処理を施すことによ
り、Nb3Sn超電導薄膜を得ていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前述の方法
で超電導導体を製造する場合、基材上に積層するNb層
とSn層の厚さの制御が難しく、両者の厚さにバラツキ
を生じ易いために、NbとSnを所定の元素比、例え
ば、3:1の比率で反応させることが極めて難しく、結
果的にNb3Sn超電導金属間化合物の生成割合が悪い
問題があった。また、前記のNb-Cu/Sn積層膜を
用いる場合は、Nb3Sn層が均一に生成せず、更に、
Sn成分が残留したCu-Sn層が生成してしまう問題
がある。このことは、超電導デバイス素子、例えば、S
IS素子(超電導体/絶縁体/超電導体の構造を有する
積層体)などに適用する場合は、前記Cu-Sn合金層
(ブロンズ層)が前記の如く超電導体側に生成するため
に、実際上は適用できない欠点があった。
【0004】即ち、SIS素子は、基板上に、超電導体
と薄い絶縁体と超電導体を順次積層した構造であるが、
前記のようにNb-Cu/Sn層を熱処理して超電導体
を製造すると、超電導体の絶縁体側の面にCu-Sn合
金層が生成してしまい、このCu-Sn合金層を除去し
なければ、絶縁体を積層できない問題がある。また、仮
に、前記Cu-Sn層を除去できたとしても、絶縁体上
に再度超電導体を生成する場合、この超電導体にCu-
Sn合金層が生成してしまうために、超電導体と絶縁体
の界面がNb3Snにはならず、その結果、SIS素子
として使用できない問題がある。
【0005】更に、Nbの融点(2470℃)に比べて
Snの融点(239.1℃)が極度に低いために、両者
のターゲットを同一の真空チャンバ内でスパッタリング
する場合に、プラズマ出力を高く設定することができな
い問題がある。即ち、スパッタリング時のプラズマ出力
を高融点のNbに合わせて高く設定すると、Snのター
ゲットが高温に加熱されて溶融してしまい、Sn層のス
パッタリングができなくなる。従ってプラズマ出力をS
nターゲットに合わせて低く設定したままで成膜するこ
とになり、この結果、Nb層の成膜速度を上げることが
できなくなり、積層膜の合成速度が遅くなる問題があ
る。
【0006】次に、前述のような問題点を解決する目的
で本発明者らは、Nb粉末とSn粉末を所定の比率で混
合して1個のターゲットを形成し、このターゲットをス
パッタ装置の真空チャンバ内に設置し、この単一ターゲ
ットを用いてスパッタリングを行なって超電導導体を製
造した。しかしながらこの方法では、成膜速度を速くす
るためにプラズマの出力を高く設定すると、ターゲット
内部に存在するSnの粉末から形成された部分が、加熱
されて溶融してしまうために、Sn成分のスパッタが満
足にできない問題があり、いぜんとしてプラズマ出力を
高く設定できないために、成膜速度を向上できない問題
があった。
【0007】更に、Nb3Al超電導金属間化合物の超
電導導体を製造する場合、Nb層とAl層を複合加工と
熱処理により製造するには、Nb層とAl層とを断面積
比で1/106程度以上になるように強加工する必要が
あり、この程度の比率に加工してから熱処理することで
Nb3Alを満足に生成させることができるが、この方
法では、強加工のために極めて煩雑な加工工程と大型の
設備を必要とするので、他の方法でNb3Alを基材上
に直接形成できる方法が望まれている。また、金属間化
合物系超電導体において、超電導体の内部にTiやTa
などの第3元素を添加することにより高磁界域での超電
導特性を向上できることが知られている。このような第
3元素添加型の超電導体を得るためには、前記高融点の
第3元素をNbなどに微量添加したNb合金を作成し、
このNb合金を用いてスパッタを行う必要があるが、前
記第3元素を均一に配合したNb合金を作成することは
難しい問題がある。
【0008】本発明は前記事情に鑑みてなされたもので
あり、低融点の金属元素を含む金属間化合物からなる超
電導体をスパッタリングで製造する場合であっても、プ
ラズマ出力を高く設定してスパッタできるターゲットを
提供すること、このターゲットを製造する方法を提供す
ること、および、このターゲットを利用して速い成膜速
度でスパッタリングして超電導金属間化合物を備えた導
体状あるいは薄膜状の超電導体を短時間で製造できる方
法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は前
記課題を解決するために、低融点金属であるSn又はA
と高融点金属であるNbとを構成元素に含む超電導体
からなる超電導薄膜を形成するためのスパッタリングタ
ーゲットにおいて、前記超電導体と同一組成あるいは異
なる組成であって前記低融点金属と高融点金属を含む高
融点の前駆体化合物と、前記高融点金属とが、前記所定
組成の超電導体の組成と同一になるように配合されてな
るものである。
【0010】請求項2記載の発明は前記課題を解決する
ために、低融点金属であるSn又はAlと高融点金属
あるNbとを構成元素に含む超電導金属間化合物からな
る超電導薄膜を形成するためのスパッタリングターゲッ
トにおいて、前記超電導金属間化合物と同一組成あるい
は異なる組成であって前記低融点金属と高融点金属を含
む高融点の前駆体金属間化合物と、前記高融点金属と
が、前記所定組成の超電導金属間化合物の組成と同一に
なるように配合されてなるものである。
【0011】請求項3記載の発明は前記課題を解決する
ために、前記前駆体金属間化合物が、Nb3Sn、Nb6
Sn5、NbSn2のうちの1種または2種以上、あるい
は、Nb2Al、NbAl3のうちの1種または2種であ
り、高融点金属がNbであるものである。
【0012】請求項4記載の発明は前記課題を解決する
ために、低融点金属であるSn又はAlと高融点金属
あるNbとを構成元素に含む超電導金属間化合物の薄膜
を形成するためのスパッタリングターゲットの製造方法
において、前記超電導金属間化合物を構成する金属元素
のうち、低融点金属と他の高融点金属とからなり、前記
所定成分の超電導金属間化合物と同一組成あるいは異な
る組成の前駆体金属間化合物を製造し、この前駆体金属
間化合物と前記高融点金属を前記所定の組成になるよう
に混合して圧密しターゲットを製造するものである。
【0013】請求項5記載の発明は前記課題を解決する
ために、前記前駆体金属間化合物として、Nb3Sn、
Nb6Sn5、NbSn2のうちの1種または2種以上、
あるいは、Nb2Al、NbAl3のうちの1種または2
種を用いるとともに、高融点金属としてNbを用いるも
のである。
【0014】請求項6記載の発明は前記課題を解決する
ために、請求項1、2または3記載のターゲットを用
い、このターゲットから発生させたスパッタ粒子を基材
上に堆積させ、この堆積物を熱処理して超電導金属間化
合物を生成させ、超電導薄膜を備えた超電導体を製造す
るものである。
【0015】
【作用】超電導金属間化合物を構成する金属元素のう
ち、低融点金属であるSn又はAlと高融点金属である
Nb元素との前駆体金属間化合物を形成し、この前駆体
金属間化合物と高融点金属とからターゲットを形成す
る。この構成のターゲットは、高融点の前駆体金属間化
合物と高融点金属とからなり、低融点金属からなる低融
点の部分を含んでいなので、このターゲットを用いて
スパッタリングを行う場合、プラズマパワーを従来より
も大きく設定できるようになる。従って膜の成膜速度が
高くなり、生産性が向上する。前駆体金属間化合物とし
て、NbSn、NbSn、NbSnのうち
の1種または2種以上、あるいは、NbAl、NbA
のうちの1種または2種を用いることができ、高融
点金属としてNbを用いることができる。
【0016】また、前駆体金属間化合物と高融点金属を
所定の割合で混合することが自由にできるので、ターゲ
ットの組成を自由に変更することができるようになり、
所望の組成の優れた超電導薄膜の合成ができるようにな
る。更に、超電導金属間化合物を構成する金属元素の中
にスパッタ時に消失しやすい金属元素がある場合、この
金属元素をターゲット中に多く含ませることにより、消
失しやすい金属元素をスパッタした薄膜中に規定の割合
で含ませることが容易にできるようになる。このため、
高磁界域での超電導特性を向上させるために第3元素と
してTiあるいはTaなどを微量添加した超電導体を製
造する場合、これらの元素を微量添加したNb合金を製
造する必要がなく、TiあるいはTaなどの第3元素を
ターゲット中に所定量添加することにより容易に第3元
素添加超電導体を得ることができる。
【0017】更にまた、複数の単体ターゲットを用いる
場合のように、異なる構成元素の層をそれぞれ積層して
から熱処理する方法を採用する必要がないので、異なる
構成元素の層の厚さを制御する必要がなく、前記ターゲ
ットを用いて所定の厚さの薄膜を積層して熱処理するこ
とで所定の元素比の超電導薄膜の合成が容易にできるよ
うになる。なお、これらの方法により、金属間化合物超
電導体に限らず、合金系超電導体の場合であっても、必
要とする合金元素を予め混合しておくことにより、容易
に適用することができる。
【0018】以下に本発明について更に詳細に説明す
る。本発明に係るターゲットを本発明方法で製造するに
は、まず、目的とする超電導金属間化合物を構成する複
数の金属元素の出発材料を調製する。ここで例えば、目
的とする超電導金属間化合物がNb3Snである場合に
は、Nb粉末とSn粉末を用い、目的とする超電導金属
間化合物がNb3Alである場合には、Nb粉末とAl
粉末を用い、目的とする超電導金属間化合物がNb3
eである場合には、Nb粉末とGe粉末を用いれば良
い。これらの各粉末は粒径を揃えたものを用いることが
好ましい。
【0019】両方の粉末1、2を図1に示すように用意
したならば、両者を混合してボールミルなどで混練する
図1のS1工程にて粒径を揃え、次に、S2工程において
プレス装置、液圧プレス装置などの圧密装置により円盤
状、柱状などの所望の形状に圧密成型して圧密体を得
る。ここで圧密成型する場合の形状は任意の形状で良
く、圧密時の形状は特には問わないものとする。
【0020】次に、この圧密体に対し、図1のS3工程
においてアルゴンガスなどの不活性ガス中において熱処
理を施す。この際の熱処理温度は、630〜950℃の
範囲とすることが好ましく、熱処理時間は、数時間〜数
10時間の範囲とすることが好ましい。この熱処理によ
り圧密成型体の内部においてNbとSn、NbとAl、
あるいはNbとGeが反応してNb3Sn、NbSn2
Nb6Sn5、Nb2Al、NbAl3、Nb3Al、Nb3
Geなどの金属間化合物が生成する。ここで生成する金
属間化合物は、圧密成型体の配合組成に応じたものとな
る。
【0021】次いで熱処理後の圧密体をS2工程におい
て粉砕し、粉末状あるいは粒状とした後に、S5工程に
おいて再びターゲットに要求される円盤状などの形状に
成型し、これにより目的のターゲット3を得ることがで
きる。また、このS5工程において、圧密体の粉砕物に
対し、更にNb粉末やNb粒などの高融点金属を配合す
ることもできる。ここで、目的の超電導金属間化合物が
Nb3Snである場合、圧密体がNb3Snの単一相であ
るならば、Nb粉末を混合する必要はないが、圧密体の
内部にNbSn2やNb6Sn5を含む場合は、圧密体の
組成が目的のNb3Snの組成とずれることになる。よ
ってこの場合に圧密体の組成がNb3Snと一致するよ
うに、Nb粉末などを所定量添加するものとする。な
お、目的の超電導金属間化合物がNb3Alである場合
に、圧密体の組成がNb2Alである場合にも同様にN
b粉末を添加して組成の調整を行なえば良く、Nb3
eの場合も同様である。
【0022】このように一度圧密体とした後で再び粉砕
してから他の元素粉末を混合することにより、ターゲッ
トの組成を自由に変更することができるので、所望の組
成の優れた超電導薄膜を合成できるようになる。即ち、
目的の組成に合致した組成のターゲットを前記Nb粉末
の添加量の微調整により容易に得ることができる。ま
た、スパッタする際に消失しやすい金属元素も存在する
ので、この消失分を予め多く添加させた構成のターゲッ
トとしておき、このターゲットを用いて成膜することで
超電導薄膜を形成することもできる。
【0023】以上説明した方法により得られたターゲッ
ト3にあっては、内部に、目的の超電導金属間化合物の
組成と同一の組成の超電導金属間化合物、あるいは、組
成は異なるが融点の高い金属間化合物を含み、低融点の
金属からなる部分を有していないので、スパッタリング
を行なう場合にプラズマの出力を上げてもターゲット3
の一部分が不用に溶融することはない。よって前記ター
ゲット3を用いて基材上に、Nb3Sn、Nb3Alある
いはNb3Geなどからなる超電導薄膜を形成する場合
に、速い成膜速度で基材上に超電導薄膜を形成すること
ができる。よって成膜時間を従来よりも短縮できる。
【0024】このような超電導薄膜は、テープ状の基材
上に成膜したものにあっては超電導導体製造用に供する
ことができ、基板上に成膜した場合、超電導素子として
利用することができる。また、基板上に超電導薄膜を形
成した後で絶縁層を形成し、更にその上に前記ターゲッ
トを用いて超電導薄膜を形成するならば、SIS素子を
製造することができる。なお、前記超電導薄膜中に高磁
界域での超電導特性を向上させるためにTiまたはTa
などの第3元素を添加する場合、前記ターゲット3を製
造する場合に粉末状の第3元素を混合しておけば良いの
で、TiあるいはTaなどを微量添加したNb合金を製
造する必要がなく、TiあるいはTaなどの第3元素を
ターゲット3中に粉末状で所定量添加しておくことによ
り容易に第3元素添加型の超電導体を得ることができ
る。
【0025】
【実施例】
(実施例1)原料として、99.5%純度(主不純物:
Ta、O)、粒度325メッシュのNb粉末と、99%
純度、粒度10〜30μmのSn粉末を3:1の元素比
となるように混合し、この混合粉末を圧密して圧粉成形
体を得た。この場合、粉体の充填率95%を目標に成型
荷重(圧力)と充填率の関係を試験し、成型圧力を約6
40MPaに決定した。この圧粉成型体を複数作成し、
これらの個々についてアルゴン雰囲気中において、63
0℃×3時間、880℃×3時間、900℃×3時間、
950℃×3時間の各条件で熱処理し、示差熱分析(T
G-DTA)およびX線回折分析を行なった。また、熱
処理を施していない比較試料についても同様に示差熱分
析を行なった。
【0026】示差熱分析の結果を図2に示す。図2に示
す結果から明らかなように、熱処理を施していない比較
試料においては、230℃近傍の温度において吸熱反応
の鋭い谷が現われており、この比較試料をそのままター
ゲットとして用いてプラズマ出力を高くした場合、スパ
ッタリング時に、ターゲットでSnの溶解反応が生じる
おそれがあることを示唆している。また、比較試料の9
00℃前後に見られる鋭い谷は、Nb3SnあるいはN
bSn2の生成反応に起因する吸熱現象と見られる。
【0027】これに対し、本発明に係る熱処理を施した
試料にあっては、630℃〜950℃の範囲のいずれの
温度で熱処理してもSnの溶融に起因する吸熱反応の谷
が見られなかった。以上のことから、630〜950℃
の範囲の温度で前記圧密体を熱処理するならば、Snを
Nbとの高融点の金属間化合物の状態にできることが判
明した。ただし、Nb3Snは900℃以上の温度で生
成し易く、この温度においてはNbSn2も生成するの
で、圧密体の全部を金属間化合物相にするには、処理温
度を前記の範囲でなるべく高くして長時間熱処理するこ
とが好ましい。
【0028】ここで、前記の圧密体を950℃で24時
間熱処理したもののX線回折試験を行なったところ、N
3Snの単一相構造を示していることを確認できた。
また、このような熱処理を施した圧密体の臨界温度を測
定した結果を図3に示す。図3は重量磁化を測定した結
果であり、この試料の臨界温度はオンセットで約17.
5Kであった。以上のことからこの試料は、マグネトロ
ンスパッタ用単体ターゲットの原料として十分に使用で
きることが明らかである。
【0029】なお、前記圧密体の熱処理を725℃で1
時間行なった試料においても、X線回折において、Nb
3Snの強いピークを得ることができ、725℃で熱処
理しても圧密体をNb3Snとすることができることが
判明した。
【0030】(実施例2)次に前記のように950℃で
24時間熱処理して得られたNb3Sn単体ターゲット
を用いてMgOからなる複数の基板上に種々のスパッタ
膜を作成し、725℃〜900℃でそれぞれ1時間熱処
理後、X線回折およびSQID(超電導量子干渉素子)
による臨界電流測定を行なった結果を図4に示す。図4
に示す結果から、前記ターゲットを用いることで良好な
臨界温度を示す超電導薄膜を得られることが明らかにな
った。また、前記のスパッタ膜において、本発明に係る
ターゲットを用いて製造すると、厚さ10μmの薄膜を
形成するのに70分の成膜時間を要したが、従来のNb
ターゲットとSnターゲットを用いて行なうスパッタ法
によれば、10μmの薄膜を形成するのに5時間の成膜
時間を要した。このことから、本発明に係るターゲット
を用いることにより、成膜時間を短縮できることが明ら
かになった。
【0031】(実施例3)原料として、99.5%純度
のNb粉末と99%純度のSn粉末をNb:Sn=1:
2の元素比となるように混合し、圧粉成型体を形成し
た。この圧粉成型体の充填率は95%であった。次にこ
の圧粉成型体をアルゴンガス雰囲気中において800℃
で100時間加熱する熱処理を施した。この熱処理後の
成型体のX線回折分析を行なったところ、NbとSnの
金属間化合物であるNbSn2の単一相であることを確
認できた。 次にこの熱処理後の成型体を粉末状に加工
し、この粉末にNb粉末を添加してNb:Sn=3:1
の組成比となるようにした後で再び成型してターゲット
を得た。このターゲットについて実施例1と同様にター
ゲットの熱分析を行ったところ、230℃近傍のSnの
溶融による吸熱現象は見られず、スパッタリング中にタ
ーゲットが加熱される領域には、溶融を生じないターゲ
ットを得ることができた。
【0032】(実施例4)実施例2で用いたNb3Sn
ターゲットを用いてMgOからなる図5に示す基板5上
に、厚さ10μmのスパッタ膜と、厚さ1μmのAl2
3からなる絶縁膜と、厚さ10μmのスパッタ膜を順
次積層し、その後に、725℃〜900℃で1時間熱処
理して超電導薄膜6と絶縁層7と超電導薄膜8が積層さ
れた構造のSIS素子9を製造した。なお、このSIS
素子9にあっては、超電導薄膜6はNb3Snからな
り、超電導薄膜6と絶縁層7との界面に超電導金属間化
合物以外の合金層が生成していないことが確認できた。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、超
電導金属間化合物を構成する金属元素のうち、低融点金
であるSn又はAlと高融点金属であるNb元素との
前駆体金属間化合物を形成し、この前駆体金属間化合物
と高融点金属とからターゲットが形成される。このター
ゲットは高融点の前駆体金属間化合物と高融点金属とか
らなり、低融点金属からなる低融点の部分を含んでいな
ので、このターゲットを用いてスパッタリングを行う
場合、プラズマパワーを大きく設定できるようになる。
従って成膜速度が高くなり、生産性が向上する。前駆体
金属間化合物として、NbSn、NbSn、N
bSnのうちの1種または2種以上、あるいは、N
Al、NbAlのうちの1種または2種を用いる
ことができ、高融点金属としてNbを用いることができ
る。
【0034】また、前駆体金属間化合物と高融点金属を
所定の割合で混合することが自由にできるので、ターゲ
ットの組成を自由に変更することができるようになり、
所望の組成の優れた超電導薄膜の合成ができるようにな
る。このため、高磁界域での超電導特性を向上させるた
めに第3元素としてTiあるいはTaなどを微量添加し
たNb合金を製造する必要がなく、TiあるいはTaな
どの第3元素をターゲット中に所定量添加することによ
り容易に第3元素添加超電導体を得ることができる。
【0035】さらにまた、複数の単体ターゲットを用い
る場合のように、異なる構成元素の層を積層してから熱
処理する方法を採用する必要がないので、異なる構成元
素の層の厚さを制御する必要がなく、所定の厚さの薄膜
を積層して熱処理することで所定の元素比の超電導薄膜
の合成が容易にできるようになる。よって超電導薄膜を
用いる超電導導体の製造およびSIS素子などの超電導
デバイス素子の製造に前記の方法を適用することによ
り、成膜時間を短縮できるので、製造効率が向上する効
果がある。また、SIS素子を製造する場合に、前記の
ターゲットを用いるならば、Cu-Sn合金ターゲット
とNbターゲットを用いる場合とは異なり、Cu-Sn
合金層を生成させることなく超電導薄膜のみを形成でき
るので、超電導薄膜と絶縁層と超電導薄膜との積層体を
確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の一例の工程を示す説明図である。
【図2】図2は示差熱分析の結果を示すグラフである。
【図3】図3は得られた圧密体の温度と重量磁化率の関
係を示すグラフである。
【図4】図4は得られた超電導薄膜の温度と磁化の関係
を示すグラフである。
【図5】図5は本発明方法を適用して得られたSIS素
子を示す側面図である。
【符号の説明】
1 Nb粉末、 2 Sn粉末、 3 ターゲット、 6 超電導薄膜、 7 絶縁層、 8 超電導薄膜、 9 超電導体、
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 新井 和昭 茨城県つくば市梅園一丁目1番4 工業 技術院電子技術総合研究所内 (72)発明者 定方 伸行 東京都江東区木場一丁目5番1号 株式 会社フジクラ内 (72)発明者 斉藤 隆 東京都江東区木場一丁目5番1号 株式 会社フジクラ内 (56)参考文献 特開 昭53−70047(JP,A) 特開 昭53−86687(JP,A) 特開 平3−177568(JP,A) 特開 平2−85362(JP,A) 特開 昭64−50258(JP,A) 特開 平1−225737(JP,A) 特開 昭64−31966(JP,A) 特開 昭58−67866(JP,A) 特開 平5−78715(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 14/00 - 14/58 C22C 1/04 C22C 27/02

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 低融点金属であるSn又はAlと高融点
    金属であるNbとを構成元素に含む超電導体からなる超
    電導薄膜を形成するためのスパッタリングターゲットに
    おいて、 前記超電導体と同一組成あるいは異なる組成であって前
    記低融点金属と高融点金属を含む高融点の前駆体化合物
    と、前記高融点金属とが、前記所定組成の超電導体の組
    成と同一になるように配合されてなることを特徴とする
    超電導薄膜製造用ターゲット。
  2. 【請求項2】 低融点金属であるSn又はAlと高融点
    金属であるNbとを構成元素に含む超電導金属間化合物
    からなる超電導薄膜を形成するためのスパッタリングタ
    ーゲットにおいて、 前記超電導金属間化合物と同一組成あるいは異なる組成
    であって前記低融点金属と高融点金属を含む高融点の前
    駆体金属間化合物と、前記高融点金属とが、前記所定組
    成の超電導金属間化合物の組成と同一になるように配合
    されてなることを特徴とする超電導薄膜製造用ターゲッ
    ト。
  3. 【請求項3】 前記前駆体金属間化合物が、Nb
    n、NbSn、NbSnのうちの1種または2
    種以上、あるいは、NbAl、NbAlのうちの1
    種または2種であり、高融点金属がNbであることを特
    徴とする請求項2記載の超電導薄膜製造用ターゲット。
  4. 【請求項4】 低融点金属であるSn又はAlと高融点
    金属であるNbとを構成元素に含む超電導金属間化合物
    の薄膜を形成するためのスパッタリングターゲットの製
    造方法において、 前記超電導金属間化合物を構成する金属元素のうち、低
    融点金属と他の高融点金属とからなり、前記所定成分の
    超電導金属間化合物と同一組成あるいは異なる組成の前
    駆体金属間化合物を製造し、この前駆体金属間化合物と
    前記高融点金属を前記所定の組成になるように混合して
    圧密しターゲットを製造することを特徴とする超電導薄
    膜製造用ターゲットの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記前駆体金属間化合物として、Nb
    Sn、NbSn、NbSnのうちの1種また
    は2種以上、あるいは、NbAl、NbAlのうち
    の1種または2種を用いるとともに、高融点金属として
    Nbを用いることを特徴とする請求項4記載の超電導薄
    膜製造用ターゲットの製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1、2または3記載のターゲット
    を用い、このターゲットから発生させたスパッタ粒子を
    基材上に堆積させ、この堆積物を熱処理して超電導金属
    間化合物を生成させ、超電導薄膜を備えた超電導体を製
    造することを特徴とする超電導体の製造方法。
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