JP3477628B2 - ホップ苞より得られるポリフェノール製剤とその製造法 - Google Patents

ホップ苞より得られるポリフェノール製剤とその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ホップあるいはホップ
毬果からルプリン部分を除いたホップ苞から抽出した抗
酸化作用を有するポリフェノール製剤とその製造法に関
する。更に、ホップ由来のポリフェノール製剤を飲食
品、化粧品および医薬品に利用することに関する。
【0002】
【従来の技術】ホップはクワ科の多年生植物であり、そ
の毬果(未受精の雌花が成熟したもの)を一般にホップ
と呼んでいる。このホップを粉砕後、ふるいにかけて取
り出したルプリン部分(黄色の顆粒)は、ホップの苦
み、芳香の本体であり、ビール醸造において酵母、麦芽
と並んで重要なビール原料である。またホップは、民間
療法で鎮静剤や抗催淫剤として通用している。
【0003】その他、ホップの抽出物を利用した作用と
しては、う蝕予防(特開昭63−211219号公
報)、抗菌作用(特開平06−98738号公報)、歯
周病の予防あるいは治療に有用なプロテアーゼ作用の阻
害(特開平06−25000号公報)が開示されてい
る。更にホップ成分であるルプロン類やフムロン類に抗
酸化作用があることが明らかにされている(特開平04
−202138号公報、特開平06−025081号公
報、特開平06−312924号公報)が、これらはホ
ップをヘキサンなどの有機溶媒で抽出後精製したもの
で、ルプリン部に含有され、水に対し難溶な物質であ
る。また特開平04−5237号公報では、ホップを水
で抽出したエキスをスーパーオキシド消去剤として利用
している。
【0004】ホップには、ポリフェノールであるカテキ
ンや、ルチン、イソクエルシトリンなどのフラボノイド
配糖体が含有されていることが知られている(Yasuo Um
edaand Makoto Koshihara, Rep. Kirin Brew. Co., No.
1, 53-55, 1958)。なお、ルチンは、血圧降下、血管増
強作用をもつことが知られている。一方、近年、活性酸
素や過酸化脂質が、老化や成人病、発ガンといった生体
への悪影響を及ぼすことが明らかとなっており、またシ
ミ、ソバカス、ニキビなどの成因の一つと考えられてい
る。更に飲食品を劣化させて、嗜好的品質や栄養の低下
を引き起こすことも知られている。現在、抗酸化剤とし
て、BHT(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシト
ルエン)やα−トコフェロール(ビタミンE)やアスコ
ルビン酸(ビタミンC)が化粧品や飲食品に利用されて
いる。また最近の天然物志向の高まりとともに、天然物
から得られる抗酸化剤、例えば茶カテキン製剤などが注
目されており、同製剤に関しては、ゲル型合成吸着剤を
利用した製造法などが開示されている(特公平01−4
4234号公報、特開昭64−9922号公報、特開平
03−14572号公報、特開平02−311474号
公報、特開平06−9607号公報、特開平07−70
105号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者らは、
これらの抗酸化剤と同等またはそれ以上の抗酸化作用を
有する物質を植物から得られないものかと探索した結
果、ホップ苞の水性画分より抗酸化作用を有する物質が
得られることを見出した。前述したように、ホップはビ
ール醸造に用いられ、民間薬としても古くから利用され
ていることから、抗酸化剤としては安全性が高く、利用
価値も高いと考えられる。更に、ホップ苞については、
ビール醸造の際の副産物として、年間70〜80トン産
出され、土壌改良用の肥料として用いられているが、コ
スト面などから有効な利用法とは言い難く、より付加価
値の高い利用法が望まれている。
【0006】従って本発明の目的は、ビール醸造時の副
産物であるホップ苞の水溶性画分を分離精製することに
よって、抗酸化作用を有するポリフェノール製剤を提供
し、これを飲食品、化粧品及び医薬品に利用する点にあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記課題を
解決するために検討を行った結果、ホップ苞から水溶性
画分を抽出し、ゲル型合成吸着剤に吸着、洗浄、溶出さ
せることで、公知の抗酸化剤と同等またはそれ以上の抗
酸化作用を有するポリフェノール製剤を得ることができ
た。更にホップ由来のポリフェノール製剤を飲食品、
化粧品及び医薬品に利用することにより本発明を完成し
た。
【0008】すなわち、本発明の第1は、ホップ苞から
水溶性画分を抽出し、これをゲル型合成吸着剤に通し
て、水またはエタノール水溶液で洗浄後、エタノールま
たはエタノール水溶液により溶出させて製造することを
特徴とするポリフェノール製剤の製造法に関する。本発
明の第2は、前記製造法により得られたポリフェノール
製剤に関する。
【0009】本発明の第3は、前記のポリフェノール製
剤を含有する抗酸化剤に関する。
【0010】本発明の第は、前記のポリフェノール製
剤を含有する飲食品に関する。本発明の第は、前記の
ポリフェノール製剤を含有する化粧品に関する。本発明
の第は、前記のポリフェノール製剤を含有する医薬品
に関する。以下、本発明に関して詳しく説明する。本発
明に用いるホップ苞はホップ毬果を粉砕後、ふるいにか
けてルプリン部を取り除いて得られるものである。ポリ
フェノール製剤の製造法としては、ホップ苞より水溶性
画分を抽出することによりホップ抽出液を得る抽出工
程、ゲル型合成吸着剤にポリフェノール製剤を吸着させ
る吸着工程、水またはエタノール水溶液、好ましくは1
〜10重量%のエタノール水溶液によりゲル型合成吸着
剤を洗浄する洗浄工程、60重量%以上のエタノール水
溶液またはエタノールによりゲル型合成吸着剤からポリ
フェノール製剤を溶出する溶出工程の4段階からなる。
【0011】抽出工程は、ホップ苞より水溶性のポリフ
ェノール製剤を抽出する工程であり、抽出溶媒としては
水またはアルコール50重量%以下の含水アルコールを
用いることができ、特に好適な例としては水またはエタ
ノール50重量%以下の含水エタノールが挙げられる。
ホップ苞と抽出溶媒の割合は1:20〜100(重量
比)程度が望ましく、また抽出は70〜95℃、攪拌
下、20〜60分間程度行われることが望ましい。濾過
により抽出液を得るが、その際必要があればパーライト
などの濾過助材を用いることもできる。抽出に用いた溶
媒のアルコール分が10重量%以上であるときは、次工
程におけるポリフェノール製剤の樹脂による保持量が低
減するため、減圧濃縮により、余剰なアルコール分を除
く必要がある。また回収したアルコール分は再利用する
ことができる。
【0012】吸着工程は、同抽出溶液を室温程度(15
〜30℃)まで冷却した後、ゲル型合成吸着剤を充填し
たカラムに通液し、吸着剤にポリフェノール製剤を吸着
させる工程である。ゲル型合成吸着剤の材質としては、
親水性ビニルポリマー、ヒドロキシプロピル化デキスト
ラン、スチレン−ジビニルベンゼン重合体、メタアクリ
ル酸エステル重合体などを用いることができ、特に好適
な例としては、親水性ビニルポリマー、スチレン−ジビ
ニルベンゼン重合体を挙げることができる。通液時間は
SV値が5〜100の間となるように設定するのが好ま
しい。
【0013】なお、ここで言うSV値とは、以下の式で
定義される値である。 SV=(通液量(L))/{(樹脂量(L))×(通液
時間(h))} 洗浄工程は、ポリフェノール製剤を保持したゲル型合成
吸着剤を洗浄する工程であり、この工程により夾雑成分
を除き、ポリフェノール製剤の精製度をよりあげること
が可能となる。洗浄に用いる溶媒としては水、ないしは
1〜10重量%のエタノール水溶液が好適であり、樹脂
量の1〜10倍程度の溶媒量を通液し、洗浄することが
望ましい。
【0014】溶出工程は、ポリフェノール製剤を保持し
たゲル型合成吸着剤よりポリフェノール製剤を脱離溶出
する工程であり、溶出に用いる溶媒としては含水アルコ
ール、含水アセトン、含水アセトニトリルなどを用いる
ことができ、特に好適な例としては60重量%以上のエ
タノール水溶液またはエタノールが挙げられる。溶出溶
媒の通液量は樹脂量の2〜6倍程度が望ましい。また、
溶出の初期において、溶出溶媒が混濁する現象がまれに
見られるが、その部分は除くか、または活性炭で処理す
ることにより、ポリフェノール製剤を含む清明な溶出溶
媒を得ることができる。
【0015】得られた溶出溶媒を濃縮、凍結乾燥、スプ
レードライなどの通常の方法により取り除き、ポリフェ
ノール製剤を粉末として得ることができる。また濃縮の
際、アルコール、アセトン、アセトニトリルなどを回収
し再利用することができる。得られたポリフェノール製
剤は、苦みを呈した無臭の肌色、褐色ないし淡黄色の粉
末であり、収率はホップ苞重量換算では0.7〜5.0
重量%である。
【0016】またポリフェノール製剤は、このままでも
利用することができるが、粒径を揃え、なおかつ溶解度
を上げるために通常の微粒粉砕器などを用いて、粒径を
100μm程度にして用いることもできる。このポリフ
ェノール製剤は、現在、一般に飲食品や化粧品に使われ
ているビタミンEや茶カテキンの抗酸化剤と同等または
それ以上の抗酸化作用を有しており、飲食品、化粧品お
よび医薬品に利用することができる。また、得られたポ
リフェノール製剤には、カテキンを20〜60重量%含
有し、またルチン、イソクエルシトリンなどのフラボノ
イド配糖体を5〜50重量%含有することから、この製
剤を飲食品や医薬品に用いた場合、前述したルチンの血
圧降下、血管増強作用も併せて期待することができる。
【0017】
【実施例】以下、実施例を示すが本発明はこれに限定さ
れるものではない。
【0018】実施例1(ホップ苞からのポリフェノール
製剤の精製) ホップ苞部分20gを2リットルの水で攪拌下、95
℃、40分間抽出した。濾過後、放冷し、抽出液を親水
性ビニルポリマー樹脂(東ソー社製トヨパールHW4
0)80mlを充填したカラムに2時間かけて通じ(S
V−12.5)、次いで400mlの水で洗浄した。さ
らに同カラムに80重量%エタノール水溶液400ml
を通液し、同溶出液を回収し、凍結乾燥して、ポリフェ
ノール製剤140mgを無臭の苦みを呈した淡黄色の粉
末として得た。カテキン含量は50.2重量%であり、
ルチンおよびイソクエルシトリンの含量はそれぞれ1
4.4重量%、9.0重量%であった。
【0019】実施例2 スチレン−ジビニルベンゼン樹脂(米国ダイヤモンドシ
ャムロックケミカル社製デュオライトS−876)80
mlを充填したカラムを用い、実施例と同様にしてポ
リフェノール製剤620mgを無臭の苦みを呈した淡黄
色の粉末として得た。カテキン含量は25.6重量%で
あり、ルチンおよびイソクエルシトリンの含量はそれぞ
れ6.7重量%、4.2重量%であった。
【0020】実施例3 ホップ苞部分20gを600mlの50重量%含水エタ
ノールで攪拌下、80℃、20分間抽出した。濾過後、
放冷し、抽出液をヒドロキシプロピル化デキストラン樹
脂(ファルマシア社製Sephadex LH-20)80mlを充填
したカラムに、1時間かけて通じ(SV−25)、次い
で300mlの5重量%エタノール水溶液で洗浄した。
さらに同カラムに80重量%エタノール水溶液250m
lを通液し、同溶出液を回収し、スプレードライして、
ポリフェノール製剤550mgを無臭の苦みを呈した淡
黄色の粉末として得た。カテキン含量は58.7重量%
であり、ルチンおよびイソクエルシトリンの含量はそれ
ぞれ9.1重量%、8.3重量%であった。
【0021】実施例4 メタアクリル酸エステル樹脂(三菱化学社製ダイヤイオ
ンHP2MG)80mlを充填したカラムを用い、実施
と同様にしてポリフェノール製剤755mgを無臭
の苦みを呈した淡黄色の粉末として得た。カテキン含量
は34.2重量%であり、ルチンおよびイソクエルシト
リンの含量はそれぞれ7.1重量%、11.3重量%で
あった。
【0022】比較例1 ホップ苞部分20gを2リットルの水で攪拌下、95
℃、40分間抽出した。濾過後、濾液を凍結乾燥し、水
抽出物6.2gを、無臭の苦みを呈した褐色の粉末とし
て得た。カテキン含量は3.8重量%であり、ルチンお
よびイソクエルシトリンの含量はともに0.2重量%で
あった。
【0023】実施例6(紅茶飲料) 紅茶葉(セイロンティー)1gより紅茶1.5リットル
を抽出し、実施例で得たポリフェノール製剤2mgを
加え、紅茶飲料とした。
【0024】実施例7(ハンドローション剤) カーボワックス1500を15重量部、エタノール8重
量部およびプロピレングリコール90重量部をよく混合
融解し、水52.5重量部、実施例と同様にして得た
ポリフェノール製剤0.2重量部および香料、防腐剤の
適量を加え、ハンドローション剤とした。
【0025】実施例8(外用剤) パラオキシ安息香酸エチル 0.1 パラオキシ安息香酸ブチル 0.1 ラウロマクロゴール 0.5 セタノール 18 白色ワセリン 40 水 39.3 実施例で得たポリフェノール製剤 2 上記の各重量部の各成分を用い、常法に従って軟膏とし
た。
【0026】実施例9(錠剤、カプセル剤) 実施例で得たポリフェノール製剤 10 乳糖 75 ステアリン酸マグネシウム 15 上記の各重量部を均一に混合し、錠剤、およびカプセル
剤とした。
【0027】実施例10(散剤、顆粒剤) 実施例で得たポリフェノール製剤 20 デンプン 30 乳糖 50 上記の各重量部を均一に混合し、錠剤、および顆粒剤と
した。
【0028】実施例11(DPPHラジカル消去活性) 実施例1〜で得たポリフェノール製剤、比較例1で
た抽出物、α−ト コフェロール(VE)、および市販の茶カテキン製剤の
DPPHラジカル消去活性をブロイスの方法(M. S. Bl
ois: Nature, 181, 1199−1200)に従って測定した。活
性は1mg当たりの供試物質が何μモルのDPPHラジ
カルを消去するかで表した。その結果を表1に示す。実
施例1〜で得たポリフェノール製剤は比較例1よりも
10倍以上優れた活性を示し、またその活性はα−トコ
フェロール(VE)と同等か、それよりも優れており、
さらに市販の茶カテキン製剤と同等程度であった。
【0029】
【表1】
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、ビール製造時の副産物
として有効利用されていないホップ苞を原料として、市
販の抗酸化剤と同等またはそれ以上の抗酸化作用を有す
るポリフェノール製剤を得ることができる。更に植物由
来の抗酸化剤として、飲食品、化粧品および医薬品に容
易に利用することができる。これによって飲食品の劣化
の抑制や健康上の障害、美容上の障害の予防、治療に有
効であり、植物由来の抗酸化剤として、飲食品、化粧品
および医薬品に利用することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 7/00 - 7/50 A61K 31/05 A23L 3/349

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホップ苞から水溶性画分を抽出し、これ
    をゲル型合成吸着剤に通して、水またはエタノール水溶
    液で洗浄後、エタノールまたはエタノール水溶液により
    溶出させることを特徴とするポリフェノール製剤の製造
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の製造法により得られたポ
    リフェノール製剤。
  3. 【請求項3】 請求項2記載のポリフェノール製剤を含
    有する抗酸化剤。
  4. 【請求項4】 請求項2記載のポリフェノール製剤を含
    有する飲食品。
  5. 【請求項5】 請求項2記載のポリフェノール製剤を含
    有する化粧品。
  6. 【請求項6】 請求項2記載のポリフェノール製剤を含
    有する医薬品。
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