JP5171614B2 - 抗ウイルス剤 - Google Patents

抗ウイルス剤 Download PDF

Info

Publication number
JP5171614B2
JP5171614B2 JP2008502775A JP2008502775A JP5171614B2 JP 5171614 B2 JP5171614 B2 JP 5171614B2 JP 2008502775 A JP2008502775 A JP 2008502775A JP 2008502775 A JP2008502775 A JP 2008502775A JP 5171614 B2 JP5171614 B2 JP 5171614B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hop
cold water
water extract
influenza virus
infection
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2008502775A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2007099915A1 (ja
Inventor
修一 瀬川
久子 保井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sapporo Breweries Ltd
Original Assignee
Sapporo Breweries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sapporo Breweries Ltd filed Critical Sapporo Breweries Ltd
Priority to JP2008502775A priority Critical patent/JP5171614B2/ja
Publication of JPWO2007099915A1 publication Critical patent/JPWO2007099915A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5171614B2 publication Critical patent/JP5171614B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K36/00Medicinal preparations of undetermined constitution containing material from algae, lichens, fungi or plants, or derivatives thereof, e.g. traditional herbal medicines
    • A61K36/18Magnoliophyta (angiosperms)
    • A61K36/185Magnoliopsida (dicotyledons)
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23KFODDER
    • A23K20/00Accessory food factors for animal feeding-stuffs
    • A23K20/10Organic substances
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23LFOODS, FOODSTUFFS, OR NON-ALCOHOLIC BEVERAGES, NOT COVERED BY SUBCLASSES A21D OR A23B-A23J; THEIR PREPARATION OR TREATMENT, e.g. COOKING, MODIFICATION OF NUTRITIVE QUALITIES, PHYSICAL TREATMENT; PRESERVATION OF FOODS OR FOODSTUFFS, IN GENERAL
    • A23L2/00Non-alcoholic beverages; Dry compositions or concentrates therefor; Their preparation
    • A23L2/52Adding ingredients
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23LFOODS, FOODSTUFFS, OR NON-ALCOHOLIC BEVERAGES, NOT COVERED BY SUBCLASSES A21D OR A23B-A23J; THEIR PREPARATION OR TREATMENT, e.g. COOKING, MODIFICATION OF NUTRITIVE QUALITIES, PHYSICAL TREATMENT; PRESERVATION OF FOODS OR FOODSTUFFS, IN GENERAL
    • A23L33/00Modifying nutritive qualities of foods; Dietetic products; Preparation or treatment thereof
    • A23L33/10Modifying nutritive qualities of foods; Dietetic products; Preparation or treatment thereof using additives
    • A23L33/105Plant extracts, their artificial duplicates or their derivatives
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/70Carbohydrates; Sugars; Derivatives thereof
    • A61K31/7042Compounds having saccharide radicals and heterocyclic rings
    • A61K31/7048Compounds having saccharide radicals and heterocyclic rings having oxygen as a ring hetero atom, e.g. leucoglucosan, hesperidin, erythromycin, nystatin, digitoxin or digoxin
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • A61P31/12Antivirals
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • A61P31/12Antivirals
    • A61P31/14Antivirals for RNA viruses
    • A61P31/16Antivirals for RNA viruses for influenza or rhinoviruses
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23VINDEXING SCHEME RELATING TO FOODS, FOODSTUFFS OR NON-ALCOHOLIC BEVERAGES AND LACTIC OR PROPIONIC ACID BACTERIA USED IN FOODSTUFFS OR FOOD PREPARATION
    • A23V2002/00Food compositions, function of food ingredients or processes for food or foodstuffs

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Natural Medicines & Medicinal Plants (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Botany (AREA)
  • Communicable Diseases (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Mycology (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Nutrition Science (AREA)
  • Animal Husbandry (AREA)
  • Alternative & Traditional Medicine (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Medical Informatics (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Pulmonology (AREA)
  • Medicines Containing Plant Substances (AREA)
  • Coloring Foods And Improving Nutritive Qualities (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Fodder In General (AREA)

Description

本発明は、抗ウイルス剤に関する。
インフルエンザウイルスを初めとする病原性ウイルスは、ヒト又は動物への感染を繰り返しながら伝播し、人々の健康を害する。近年では、病原性ウイルスのヒト又は動物への感染を予防し、重篤な病気となるのを防ぐために、植物由来の天然物の利用が注目されている。例えば、緑茶成分のエピガロカテキンガレート(EGCG)(非特許文献1)や紅茶成分のテアフラビンジガレート(TFDG)(非特許文献2)は、インフルエンザウイルスのプラーク形成を抑制し、動物実験においてマウスへのウイルス感染を阻害することが報告されている。
一方、ホップは、ビール等発泡性アルコール飲料の醸造において酵母や麦芽と並ぶ重要な原料であるが、民間療法においては、鎮静剤や抗催淫剤として使用される。ホップには、抗酸化作用を有するフムロンやルプロン等の結晶性苦味配糖体(特許文献1〜3)、ルチンやイソケルシトリン等のフラボノイド配糖体が含まれており、最近では、ホップ中のポリフェノールが、飲食品及び化粧品用の抗酸化剤として利用できることが報告されている(特許文献4)。
特開平04−202138号公報 特開平06−025081号公報 特開平06−312924号公報 特開平09−2917号公報 中山ら、1996年、感染症学雑誌、70巻、11号、p1190〜1192 中山ら、1996年、感染症学雑誌、68巻、7号、p824〜828
しかしながら、植物由来の天然物で抗ウイルス活性を有するとして知られているものは、上述した緑茶及び紅茶等由来のカテキン類に限られ、より広い範囲の病原性ウイルスに対抗するには、他の植物種から異なる抗ウイルス剤を探索することが望まれている。
また、ビール等発泡性アルコール飲料の醸造に使用されるホップペレット(ホップ毬花を乾燥させ、粉砕後に篩分し、篩を通過して微粉となったものを固めたものをいう)又はホップエキス(ホップ毬花から、有機溶媒抽出又は超臨界流体抽出された抽出物をいう)の製造過程あるいはビール等発泡性アルコール飲料の醸造過程で副産物として大量に廃棄されるホップの未利用組織又はホップ残渣は、土壌改良用の肥料や家畜の餌として二次利用されるが、これらの需要は廃棄される量に比べてはるかに低く、そのほとんどが産業廃棄物となるのが現状である。さらに、廃棄されるホップの未利用組織又はホップ残渣の二次利用は、コストの面で採算が合わず、より付加価値の高い利用法が望まれている。
そこで、本発明の目的は、植物に由来する安全性の高い抗ウイルス剤を提供することにある。本発明の目的はまた、上記抗ウイルス剤を含有する飲食品、飼料及び飼料添加物並びに上記抗ウイルス剤を有効成分とする医薬品を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、ホップ組織の冷水抽出物を有効成分とすることを特徴とする抗ウイルス剤を提供する。
本発明者らは、ホップ組織の抽出物のうち冷水抽出物が、特に効果的にインフルエンザウイルスによって引き起こされる鶏赤血球凝集反応を抑制し、動物細胞へのウイルス感染を抑制することを見出した。ホップは、ビールの醸造に主に用いられ、醸造以外の種々の用途にも古くから利用されている植物であるため、ホップ由来の抗ウイルス剤は人体に対する安全性が優れると考えられる。また、本発明の抗ウイルス剤は、ホップ組織を冷水で抽出して得られるものであるため、熱による影響を受けず、抗ウイルス剤の活性を安定的に維持できる。
上記ホップ組織は、乾燥されたホップ苞の粉砕物であることが好ましく、また、乾燥されたホップ毬花の粉砕物であって、ルプリンの大きさ以下の粉砕物の少なくとも一部が除かれたものであることが好ましい。
ビール等発泡性アルコール飲料の醸造で使用するホップは、茎や葉を除いた毬花を乾燥させ、粉砕後に篩分して篩を通過したものを固めてホップペレットとして使用するが、篩を通過しなかった粉砕物は廃棄されることになる。この廃棄される粉砕物は、ルプリンの大きさ以下の粉砕物の少なくとも一部が除かれたものであり、その大部分はホップ苞であるため、これを原料として抗ウイルス剤の抽出に用いれば産業廃棄物の減少に貢献し、ホップ苞を有効利用できる。
また、上記ホップ組織は、乾燥されたホップ毬花から、有機溶媒抽出又は超臨界流体抽出される物質の少なくとも一部が除かれたホップ残渣とすることができる。ビールの醸造で使用するホップ毬花は、ホップペレットとして使用する他に、ホップエキスの抽出のために使用されるが、ホップエキスを抽出した後に残るホップ残渣は廃棄されることになる。この廃棄されるホップ残渣は、有機溶媒抽出又は超臨界流体で抽出される物質の少なくとも一部が除かれたものであるため、これを原料として抗ウイルス剤の抽出に用いれば産業廃棄物の減少に貢献できる。
さらに、上記の乾燥されたホップ毬花の粉砕物は、乾燥されたホップ毬花の凍結物の粉砕物であることが好ましい。乾燥されたホップ毬花を凍結後に粉砕すると、粉砕効率が増し、粉砕時に生じる熱の影響を受けにくくなるため、抗ウイルス剤の活性を安定的に維持できる。また、ルプリンの大きさ以下の粉砕物が容易に篩を通過するようになるため、ルプリンの大きさを越える粉砕物の純度が高まり、抗ウイルス活性に影響を与える成分の純度も高めることができる。
また、本発明の抗ウイルス剤は、アストラガリン、アストラガリンマロニルグルコシド、イソケルシトリン、イソケルシトリンマロニルグルコシド、ケルセチンマロニルグルコシド、ケンフェロールルチノシド、ケンフェロールマロニルグルコシド、ルチン及びフロロアシルフェノン配糖体からなる群より選ばれるフラボノイド配糖体の少なくとも一つ、好ましくは少なくとも二つ、より好ましくは総てを含有することが好ましい。また、本発明の抗ウイルス剤は、これらのフラボノイド配糖体のそれぞれを、0.001重量%〜5重量%含有することが好ましい。なお、上記フロロアシルフェノン配糖体には、フロロイソブチロフェノングルコシド、フロロ−2−メチルブチロフェノングルコシド及びフロロイソバレロフェノングルコシドが含まれる。
インフルエンザウイルスの増殖は、赤血球凝集素(ヘマグルチニン蛋白質)が宿主細胞の表面レセプターに結合することによって始まるが、A型及びB型インフルエンザウイルスの場合には、糖鎖の非還元末端にN−アセチルノイラミン酸を持つ糖蛋白質又は糖脂質がレセプターとなる。本発明の抗ウイルス剤が、上記フラボノイド配糖体の少なくとも一つを含有する場合は、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン蛋白質に吸着することが期待でき、このためにインフルエンザウイルスの細胞表面レセプターへの結合が阻害され、細胞内へのインフルエンザウイルスの侵入が阻止されると考えられる。
上記抗ウイルス剤は、抗インフルエンザウイルス剤であることが好ましい。
上記抗ウイルス剤は、インフルエンザウイルスの鶏赤血球凝集反応を抑制し、動物細胞への感染を阻害する活性を有するため、インフルエンザウイルスのヒト及び動物、中でも家禽類、特に鶏への感染を防止するのに好適である。
なお、上述した本発明の抗ウイルス剤は、抗ウイルス活性と安全性に優れることから、飲食品、飼料、飼料添加物又は医薬品に含有させて有効成分として利用できる。
本発明によれば、ウイルスの鶏血小板凝集反応を抑制する活性を有し、病原性ウイルスのヒト及び動物への感染を防止できる抗ウイルス剤が提供される。本発明の抗ウイルス剤は、天然の植物由来であるため、安全性に優れ、各人が家庭内で病原性ウイルスの感染を予防し、感染後においては早期治癒に導くことができる。
また本発明の抗ウイルス剤は、ビール等発泡性アルコール飲料の醸造の際の副産物として産出され、廃棄されるホップを原料とできるため、産業廃棄物の減少に貢献し、ホップの付加価値を高めて有効利用できる。
鶏赤血球凝集価測定試験の手順を簡易的に示した図である。 インフルエンザウイルスの赤血球凝集作用に及ぼすホップペレット冷水抽出物及びスペントホップ冷水抽出物の抑制作用を示すグラフである。 インフルエンザウイルスの動物細胞への感染阻害試験の手順を簡易的に示した図である。 インフルエンザウイルスのMDCK細胞への感染に及ぼすホップペレット冷水抽出物及びスペントホップ冷水抽出物の阻害作用を示すグラフである。 スペントホップ冷水抽出物に含まれるフラボノイドをLC−MS分析した結果である。 各群のマウスへのインフルエンザウイルスの感染率を示した図である。 各群のマウスの生存率を示した図である。
以下、本発明に係る抗ウイルス剤の好適な実施形態について説明する。
本発明に使用するホップは、いずれのホップ品種であってもよいが、チェコ産ザーツ種、ドイツ産ハラタウ・トラディション種及び国産フラノ18号等のビール醸造用ホップ品種が好ましく、抗ウイルス活性の高いホップ抽出物を得るには、チェコ産ザーツ種がより好ましい。
本発明におけるホップ組織とは、ホップのいずれかの組織又はその一部を意味する。冷水抽出に用いるホップ組織は、葉、茎及び毬花のいずれでもよく、毬花が好ましく、ホップ苞がより好ましい。ホップ苞は、毬花を構成する苞葉のことであって、毬花からルプリン部分(黄色の顆粒)の少なくとも一部を取り除いて得ることができる。このため、本発明の冷水抽出に用いるホップ組織は、ビール等発泡性アルコール飲料の醸造に用いるホップペレットを加工する際に規定の大きさに粉砕されずに廃棄されるホップ苞であってもよく、後述するホップ毬花を超臨界流体又は有機溶媒で抽出した後に残るホップ残渣であってもよい。
本発明の抗ウイルス剤は、ホップ組織の冷水抽出物を有効成分として含有するものであり、この有効成分は、ホップ組織を冷水で抽出する工程を備える製造方法により得られる。本工程では、ホップ組織を冷水で抽出するが、「冷水」とは室温以下の水を意味し、通常、0℃超30℃以下の水のことをいう。冷水の温度は、0℃超10℃以下が好ましく、5±3℃(さらには5±2℃)がより好ましい。なお、抽出時間を短縮するためには、水に少量のアルコール、好ましくはエタノールを、10重量%以下添加して抽出効率を上げることができる。
ホップ組織から抗ウイルス剤を抽出する方法としては、植物から天然物を水抽出する方法が広く採用でき、例えば、ホップ組織と一定量の冷水とを容器に入れ、適宜撹拌しながら所定時間静置し、抽出液を濾過して残渣を取り除く方法が挙げられる。混入する残渣や不純物等を完全に取り除くためには、濾過した抽出液をさらに遠心分離すればよく、その上清(以下、遠心上清)を抗ウイルス剤として使用できる。なお、得られた抗ウイルス剤は、濃縮し、乾燥して使用することもできる。
また、ホップ組織の冷水抽出物である抗ウイルス剤は、合成吸着剤を充填したカラムに通して、精製して使用することもできる。合成吸着剤としては、例えば、Amberlite XAD−4、7及び16(オルガノ社)、活性炭、ポリビニルポリピロリドン(PVPP;ポリフェノール吸着剤)が挙げられ、この中でもAmberlite XAD−4が好ましく用いられる。具体的には、ホップ組織の水抽出物を、合成吸着剤を充填したカラムに通し、その吸着成分を、例えば、水及びメタノールの混合溶媒で溶出させ、溶出した画分を抗ウイルス剤として使用できる。
本発明の抗ウイルス剤は、乾燥されたホップ苞の粉砕物の冷水抽出物を有効成分とすることが好ましく、また、乾燥されたホップ毬花の粉砕物からルプリンの大きさ以下の粉砕物の少なくとも一部が除かれたものの冷水抽出物を有効成分とすることが好ましい。冷水抽出に用いる乾燥ホップ毬花の粉砕物は、例えば、ホップ毬花を乾燥して乾燥ホップ毬花を得る乾燥工程と、乾燥ホップ毬花を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、この粉砕物からルプリンの大きさ以下の粉砕物を取り除く選別工程と、を備える製造方法により得られる。
乾燥工程では、ホップ毬花を100℃以下の温度で乾燥させ、ホップ毬花を保存可能な程度にまで水分を除去できればよいが、55℃以下の温度で水分含量を7〜9%まで乾燥することが好ましい。粉砕工程では、ホップ毬花を効率的に微粉状に粉砕できればよく、例えば、ピンミル、ハンマーミル、ボールミル等の粉砕機を用いればよい。選別工程では、粉砕物をふるいにかけ、例えば、長径が0.1mm以上の粉砕物を「ルプリンを超える大きさ」のものとして選別することができる。この場合において、篩を通過させない大きさを長径0.3mm以上とすることが好ましく、長径0.5mm以上とすることがより好ましい。乾燥ホップ毬花の粉砕物からルプリンの大きさ以下の粉砕物を取り除くには、例えば、目開き0.1、0.3又は0.5mmのふるいで乾燥ホップ毬花の粉砕物をふるい
分け、ふるいを通過しなかった粉砕物を回収すればよい。なお、乾燥ホップ毬花の粉砕物からルプリンの大きさ以下の粉砕物の少なくとも一部が除かれたものの冷水抽出物は、こうして選別された乾燥ホップ毬花の粉砕物を、上述した冷水で抽出する工程で記載した方法で抽出すればよい。
さらに、本発明の抗ウイルス剤を調製するために使用する乾燥されたホップ毬花の粉砕物は、乾燥されたホップ毬花の凍結物の粉砕物であることが好ましい。乾燥されたホップ毬花を凍結する方法は、特に制限されないが、−10℃以下が好ましく、−35℃以下がより好ましい。
また、本発明の抗ウイルス剤は、乾燥されたホップ毬花から、有機溶媒抽出又は超臨界流体抽出される物質の少なくとも一部が除かれたホップ残渣の冷水抽出物を有効成分とすることができる。有機溶媒抽出に用いる有機溶媒としては、例えば、アルコール又はヘキサンが挙げられ、炭素数1〜4の低級アルコールが好ましく、エタノールがより好ましい。超臨界流体抽出に用いる超臨界流体としては、例えば、二酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ペンタン、メタノール、エタノールが挙げられ、二酸化炭素が好ましい。
本発明の抗ウイルス剤は、種々の病原性ウイルスの感染を防止する効果があり、空気感染性ウイルスの感染を防止するのに適している。空気感染性ウイルスとしては、例えば、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、SARSコロナウイルス、RSウイルス、エコーウイルス、単純ヘルペスウイルス、EBウイルス、麻疹ウイルス、サイトメガロウイルスが挙げられ、インフルエンザウイルスの感染を防止するのにより適している。
本発明の抗ウイルス剤は、病原性ウイルスの感染の予防や症状の緩和を目的として飲食品、飼料又は飼料添加物に添加することができ、又は病原性ウイルスの感染予防剤若しくは治療剤となる医薬品の有効成分として使用できる。ここで、「飲食品」とは、ヒトが摂取する飲食品のことをいい、「飼料」とは、ヒト以外の動物が摂取する飲食品のことをいう。また、「飼料添加物」とは、このような「飼料」に添加するもののことをいう。上記飲食品、飼料、飼料添加物及び医薬品は、ホップ組織の冷水抽出物を有効成分とする抗ウイルス剤のみからなっていてもよく、例えば、ホップ組織の冷水抽出物又はこの冷水抽出物の凍結乾燥品をそのまま上記飲食品、飼料、飼料添加物又は医薬品として使用できる。
本発明の飲食品、飼料、飼料添加物は、上記の抗ウイルス剤を含んでおり、当該分野で通常使用される添加物を含んでいてもよい。この添加物としては、例えば、リンゴファイバー、大豆ファイバー、肉エキス、黒酢エキス、ゼラチン、コーンスターチ、蜂蜜、動植物油脂、グルコース等の単糖類、スクロース、フルクトース及びマンニトール等の二糖類、デキストロース及びデンプン等の多糖類、エリスリトール、キシリトール及びソルビトール等の糖アルコール類、ビタミンC等のビタミン類が挙げられ、これらの添加物は単独種又は複数種であってもよい。
本発明の医薬品は、上記の抗ウイルス剤を有効成分として含んでおり、薬学的に許容される添加物をさらに含んでいてもよい。この添加物としては、例えば、グルコース等の単糖類、スクロース、フルクトース及びマンニトール等の二糖類、デキストロース及びデンプン等の多糖類、エリスリトール、キシリトール及びソルビトール等の糖アルコール類、ビタミンC等のビタミン類、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、珪酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、トラガカント、ゼラチン、シロップ、ヒドロキシ安息香酸メチル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、水、鉱油が挙げられ、これらの添加物は単独種又は複数種であってもよい。
さらに、病原性ウイルスの感染の予防や症状の緩和の目的で、食品添加物として、特定保健用食品、特殊栄養食品、栄養補助食品、健康食品、機能性食品や病者用食品等の飲食物に配合することもできる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、特に明記しない限り、「%」は「重量%」を表す。
(ホップ組織の冷水抽出物の調製)
ホップ組織の冷水抽出物の抗ウイルス活性を調べるため、乾燥されたホップ毬花から製造された、ルプリンを豊富に含有するホップペレット(チェコ産ザーツ種:SSAタイプタイプ90)と、ホップペレットの製造過程で副産物として生じ、ルプリンの少なくとも一部が取り除かれた画分であるスペントホップからそれぞれ冷水抽出物(以下、それぞれ「ホップペレット冷水抽出物」及び「スペントホップ冷水抽出物」という)を調製した。まず、ホップを50℃で水分含量が8%になるまで乾燥させ、専用の粉砕機で粉砕し、目開き0.3mmのふるいを通過したホップ組織をホップペレットとし、このふるいを通過しなかった0.3mm以上の組織をスペントホップとした。すなわち、ホップペレットは、ホップ組織の微粉とルプリンを含有する画分であり、ホップ苞は、毬花を構成
する苞葉部分の0.3mm以上の粉砕物であって、ルプリンが取り除かれた画分である。
こうして得られたホップペレット又はスペントホップは、5%となるように冷水で懸濁し、4℃の低温室で1晩静置することにより冷水抽出した。その後、各冷水抽出物を濾過(ADVANTEC No.5A)することにより残渣を取り除き、凍結乾燥して用いた。
(ポリフェノール濃度の定量)
ホップペレット冷水抽出物及びスペントホップ冷水抽出物は、以下に示すフォーリンチオカルト法に従ってポリフェノール濃度を定量し、この濃度を基準にして、後述する鶏赤血球凝集価測定試験及びインフルエンザウイルスの動物細胞への感染阻害試験を行った。
まず、各冷水抽出物を0.05mg/mLとなるように0.1%ウシ血清アルブミン含有リン酸緩衝液(以下、0.1%BSA・PBS)に溶解し、等量の1Nフェノール試薬を加え、3分間反応させた。その後、添加した1Nフェノールと等量の10%炭酸ナトリウム水溶液を加えて、室温でさらに1時間反応させ、700nmの吸光度を測定した。その際、濃度が予め分かっている没食子酸の標準溶液を用いて検量線を作製し、この検量線から各冷水抽出物中のポリフェノール濃度を没食子酸当量として算出した。
(実施例1)ホップ組織の冷水抽出物の赤血球凝集抑制作用:
インフルエンザウイルスは、赤血球凝集素(hemagglutinin;以下、HA)を持っており、このHAによりニワトリの赤血球を凝集させる作用を有している。このため、鶏赤血球凝集反応の有無を調べることにより、検体中のインフルエンザウイルスの有無を判定できる。一方、インフルエンザウイルスのヒト及び動物への感染及び増殖は、ウイルス表面のHAが宿主細胞表面のレセプターに結合することによって始まる。宿主細胞表面に吸着したインフルエンザウイルスはエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ、細胞内で宿主細胞の翻訳系を利用して増殖し、他の細胞への感染を繰り返す。このため、HAを介したインフルエンザウイルスの動物細胞への結合を抑制すれば、インフルエンザウイルスのヒト及び動物への感染を防止できると考えられている。そこで、ホップ組
織の冷水抽出物に鶏赤血球凝集抑制作用があるかどうかについて、以下の鶏赤血球凝集価測定試験を行って調べた。
1)実験材料
ホップペレット冷水抽出物及びスペントホップ冷水抽出物は、上述したように各組織から冷水抽出を行い、凍結乾燥後、所定のポリフェノール濃度となるように0.1%BSA・PBSで溶解して調製した。
赤血球浮遊液は、鶏保存血を0.1%BSA・PBSに縣濁し、3000rpm、5分間の遠心分離操作を3回繰り返して赤血球を洗浄し、その後、沈殿した赤血球画分に対して0.5%(v/v)になるように新しい0.1%BSA・PBSを加えて調製した。
インフルエンザウイルス株は、A/Puerto Rico/8/34(PR8:H1N1)株を用い、インフルエンザウイルス液は、TCID50値が105.8となるように0.1%BSA・PBSで希釈して調製した。ここで、TCID50値とは培養細胞の50%にウイルス感染を起こさせるウイルス希釈倍率のことである。
2)鶏赤血球凝集価測定試験
図1は、鶏赤血球凝集価測定試験の手順を簡易的に示した図である。まず、96穴マイクロプレートの各ウェルに50μLのインフルエンザウイルス液と50μLの各濃度のホップペレット冷水抽出物、スペントホップ冷水抽出物又は0.1%BSA・PBSとを加えて混合し、室温で1時間反応させた。その後、マイクロピペットにより2倍段階希釈系列(2倍希釈〜215倍希釈)をそれぞれの群について作り、これらに50μLの0.5%(v/v)赤血球浮遊液をそれぞれ加えて室温で1晩静置し、赤血球凝集像の有無を観察した。
鶏赤血球凝集反応は、赤血球凝集像が認められた場合に陽性であると判定し、赤血球凝集反応が陽性となる最高希釈倍率を赤血球凝集価(HA価)として求めた。赤血球凝集抑制作用の有無は、インフルエンザウイルス液と0.1%BSA・PBSの混合液に赤血球浮遊液を反応させた希釈系列のHA価(対照群)と各被検抽出物のHA価とを比較することにより調べた。グラフ中の値は、それぞれの実験を3回行った平均値±標準誤差で、対照群のHA価と試験群のHA価との間の有意差検定は、Mann−Whitney検定で行った。
図2は、インフルエンザウイルスのHA価に及ぼすホップペレット冷水抽出物及びスペントホップ冷水抽出物の赤血球凝集抑制作用を示すグラフである。縦軸はHA価を表し、各被検抽出物の濃度は、ポリフェノール含量で示している。
その結果、ホップペレット冷水抽出物及びスペントホップ冷水抽出物は、0.6mg/mLの濃度でインフルエンザウイルスのHA価を有意に抑制した。この結果より、ホップ組織の冷水抽出物には、インフルエンザウイルスの赤血球凝集反応を抑制する物質が含まれていることが判明し、抗ウイルス活性があることが示唆された。
(実施例2)インフルエンザウイルスのMDCK細胞への感染に及ぼすホップ組織の冷水抽出物の効果:
ホップ組織の冷水抽出物が、インフルエンザウイルスの動物細胞への感染を阻害するか否かについて、正常イヌ腎臓由来上皮細胞であるMDCK細胞(Madin−Darby canine kidney cells)を用いて調べた。MDCK細胞は、さまざまなウイルスの感染実験に適した細胞であり、インフルエンザウイルスの感染阻害作用の評価に一般的に用いられる細胞である。
1)MDCK細胞の培養
MDCK細胞は、37℃、5%のCO濃度下(COインキュベータ中)、5%ウシ胎児血清(FBS)を含有するMEM培地中で培養し、週2回の頻度で継代培養して維持した。インフルエンザウイルスの感染実験には、3×10細胞/mLに調製したMDCK細胞の細胞懸濁液を96ウェルプレートに200μLずつ添加し、3日又は4日間培養して使用した。
2)インフルエンザウイルスの動物細胞への感染阻害試験
図3は、インフルエンザウイルスの動物細胞への感染阻害試験の手順を簡易的に示した図である。まず、25μLのインフルエンザウイルス希釈液(上記のインフルエンザウイルス液を5×10倍希釈)と各濃度のホップペレット冷水抽出物又はスペントホップ冷水抽出物とを96ウェルプレート中で混合し、室温で1時間反応させた(以下、この反応液をウイルス反応液と呼ぶ。)。その後、予め96ウェルプレートで3日間又は4日間培養した上記MDCK細胞からMEM培地を吸引除去し、そこに25μLの上記ウイルス反応液を添加し、37℃のCOインキュベータ中でさらに1時間反応させた。反応後、各ウェルに200μLの維持培地(0.2%アルブミン、5μg/mLアセチルトリプシンを含むMEM培地)を添加して3日間培養し、この培養上清に鶏赤血球凝集作用があるか否かについて調べた。
すなわち、インフルエンザウイルスのMDCK細胞への感染が成立した場合には、3日間の培養期間中にウイルス粒子が複製され、培地中にウイルス粒子が放出されるため、この培養上清の鶏赤血球凝集作用の有無を調べれば、インフルエンザウイルスのMDCK細胞への感染の阻害の程度を調べることができる。
鶏赤血球凝集作用の有無は、上述した鶏赤血球凝集価測定試験とほぼ同じ手順で調べられるが、HA価を求めない点で相違する。具体的には、96穴マイクロプレートの各ウェルに50μLのインフルエンザウイルス液(TCID50値=105.8)と50μLの各培養上清又は0.1%BSA・PBSとを加えて混合し、室温で1時間反応させ、これに50μLの0.5%赤血球浮遊液を加えて室温で1晩静置する。その後、赤血球凝集像の有無を観察し、各群(n=6)の培養上清ごとに赤血球凝集が阻害された割合を調べ、赤血球凝集阻害率として評価した。さらに、赤血球凝集阻害率と被検抽出物の濃度との関係から50%感染阻害濃度(TCID50)についても求め、インフルエンザウイルスの感染阻害活性の指標とした。
図4は、インフルエンザウイルスのMDCK細胞への感染に及ぼすホップペレット冷水抽出物及びスペントホップ冷水抽出物の阻害作用を示すグラフである。縦軸は、鶏赤血球凝集阻害率(%)を表し、各被検抽出物の濃度は、ポリフェノール含量で表している。
その結果、ホップペレット冷水抽出物及びスペントホップ冷水抽出物は、インフルエンザウイルスと室温で1時間反応させることにより、MDCK細胞への感染及び増殖を阻害することが判明した。さらに、スペントホップ冷水抽出物は、50μg/mLの濃度で80%以上の感染を阻害するものであり、同じ濃度のホップペレット冷水抽出物よりも強いものであった。
また、スペントホップ冷水抽出物のTCID50を算出すると、28.6μg/mLであった。
これらの結果より、ホップ組織の冷水抽出物には抗ウイルス活性があり、スペントホップの冷水抽出物には、ホップペレットの冷水抽出物よりも強い抗ウイルス活性があることが示唆された。
(実施例3)スペントホップ冷水抽出物中に含まれるフラボノイドの分析:
1)LC−MSによる分析
スペントホップ冷水抽出物中に含まれるフラボノイド成分を調べるため、以下の条件下で、スペントホップ冷水抽出物のLC−MS分析を行った。
LC−MSの分析条件:
・溶離液:A液 0.05%TFA水溶液、B液 アセトニトリル
・グラジエント条件:0〜16min、B液10%〜50%
・流量:0.2mL/min
・カラム温度:40℃
・カラム:Waters Symmetry C18 2.1×150mm 3.5μm
・マススペクトル:(SIR;m/z197、m/z211、m/z287、m/z303)
図5は、スペントホップ冷水抽出物中に含まれるフラボノイドをLC−MS分析した結果である。その結果、アストラガリン、イソケルシトリン、ケルセチンマロニルグルコシド、ケンフェロールルチノシド、ケンフェロールマロニルグルコシド及びルチン並びにフロロアシルフェノン配糖体であるフロロイソブチロフェノングルコシド、フロロ−2−メチルブチロフェノングルコシド及びフロロイソバレロフェノングルコシドが含まれていることが判明した。
2)スペントホップ冷水抽出物中に含まれるフラボノイドアグリコンの分析
まず、400μLのスペントホップ冷水抽出物(20mg/mL)に2mLの2N塩酸を加え、沸騰水浴中で30分間加熱して加水分解した。その後、SepPak C18(Waters社)カラムに吸着する画分を、2mLのメタノールで溶出し、得られたメタノール溶出物をHPLCで分析した。
HPLC分析条件は以下の通りである。
HPLC分析条件:
・溶離液:A液 10mMリン酸水溶液、B液 アセトニトリル
・グラジエント条件:0〜20min、B液 20%−50%;20〜30min、B液 50%〜100%;30〜40min、B液 100%
・流量:0.2mL/min
・カラム温度:40℃
・カラム:Waters Symmetry C18 2.1×150mm 3.5μm
・検出:UV370nm
表2は、スペントホップ冷水抽出物の加水分解の前後におけるケルセチン及びケンフェロールの含有割合(%;ホップ冷水抽出物の乾燥重量重に対する各フラボノイドアグリコンの重量比)を比較した結果を示したものである。
Figure 0005171614
その結果、加水分解前では、ケルセチン及びケンフェロールを含むフラボノイドアグリコンは検出されなかったが、加水分解後では、ケルセチンが1.02%、ケンフェロールが1.21%含有されていることが判明した。加水分解前のスペントホップ冷水抽出物には、フラボノイドアグリコンは検出されなかったことより、スペントホップ冷水抽出物中に含有されるフラボノイドは配糖体として存在し、抗ウイルス活性に寄与していることが示唆された。
(実施例4)インフルエンザウイルスのマウスへの感染に及ぼすホップ組織の冷水抽出物の効果:
ホップ組織の冷水抽出物が、インフルエンザウイルスのマウスへの感染を阻害するか否かについて、BALB/cマウスとインフルエンザウイルスを使用したin vivoの感染実験で調べた。
マウス(BALB/cマウス、7週齢、雌性)は、日本エスエルシー(株)から購入し、1週間の検疫期間を設けて予備飼育した。予備飼育で異常の認められなかったマウスは、体重を測定し、各群の平均体重及び分散がほぼ等しくなるように無作為に3群(ホップペレット冷水抽出物投与群、スペントホップ冷水抽出物投与群及び対照群;1群=5匹)に分けた。
ホップペレット冷水抽出物投与群は、ホップペレット冷水抽出物とインフルエンザウイルスとを含む0.1%BSA・PBS溶液(ホップペレット冷水抽出物投与液)を、スペントホップ冷水抽出物投与群は、スペントホップ冷水抽出物とインフルエンザウイルスとを含む0.1%BSA・PBS溶液(スペントホップ冷水抽出物投与液)を、対照群はインフルエンザウイルスのみを含む0.1%BSA・PBS溶液(対照用インフルエンザウイルス投与液)を、各マウスの鼻孔に投与した。
インフルエンザウイルスは、実施例1で使用したA型Puerto Rico/8/34(PR8:H1N1)株を使用し、このインフルエンザウイルス株の原液(TCID50値=105.9)を0.1%BSA/PBSで10倍希釈して調製したインフルエンザウイルス液を実験に用いた。
ホップペレット冷水抽出物及びスペントホップ冷水抽出物は、上述したように調製し、ポリフェノール濃度が50mg/mLとなるように0.1%BSA/PBSで溶解して用いた。
マウスへの感染に使用するホップペレット冷水抽出物投与液及びスペントホップ冷水抽出物投与液は、それぞれ1.98mLのホップペレット冷水抽出物及びスペントホップ冷水抽出物に上記のインフルエンザウイルス液をそれぞれ0.02mLずつ加えて37℃で3分間反応させて調製した。対照用インフルエンザウイルス投与液については、ホップ組織の冷水抽出物を含まない0.1%BSA/PBSに上記のインフルエンザウイルス液を0.02mL加えて37℃で3分間反応させて調製した。
マウスへの感染実験は、以下の手順で行った。まず、ネンブタールを腹腔内投与してマウスを麻酔し、各群のマウスの両鼻孔にホップペレット冷水抽出物投与液、スペントホップ冷水抽出物投与液又は対照用インフルエンザウイルス投与液を10μLずつ(20μL/マウス)投与した。投与開始から2週間目まで連日、マウスの体重の推移を記録すると共に毛並みの乱れ及び運動性の低下を観察し、インフルエンザウイルスの感染の有無及び生存数を調べた。インフルエンザウイルスの感染の有無は、マウスの体重の推移、毛並みの乱れ及び運動性の低下を指標にし、2項目以上が該当する場合に感染成立と判断した。
なお、スペントホップ冷水抽出物投与群及びホップペレット冷水抽出物投与群と対照群との間における感染率及び生存率の有意差の有無は、ログランク検定により解析した。
図6は、各群のマウスへのインフルエンザウイルスの感染率を、図7は、各群のマウスの生存率を示したものである。感染率が低く、生存率が高いほど、インフルエンザウイルスのマウスへの感染が抑制されたことを意味している。
その結果、対照群では、投与開始3日目に全てのマウスでインフルエンザウイルスの感染が認められ、投与開始8日目に最初の死亡が確認され、投与開始12日目に全てのマウスの死亡が確認された。
一方、ホップペレット冷水抽出物投与群では、試験期間の2週間にわたって、インフルエンザウイルスの感染は一匹も認められず、生存率についても100%であった。ホップペレット冷水抽出物投与群の生存率は、対照群と比較して顕著に高く、両群の間には統計的有意差(p<0.01)が認められた。
また、スペントペレット冷水抽出物投与群では、投与開始3日目に2匹、投与開始8日目に全てのマウスにインフルエンザウイルスの感染が認められ、投与開始10日目には最初の死亡が確認されたが、対照群のように全てのマウスが死亡することはなく、2週間経過後においても3匹のマウスが生存していた。スペントペレット冷水抽出物投与群は、対照群と比較して高い生存率を示し、両群の間には統計的有意差が認められた(p<0.05)。
以上の結果より、ホップペレット冷水抽出物及びスペントホップ冷水抽出物は、インフルエンザウイルス感染を効果的に抑制することが示唆された。
本発明によれば、ウイルスの鶏血小板凝集反応を抑制する活性を有し、病原性ウイルスのヒト及び動物への感染を防止できる抗ウイルス剤が提供される。本発明の抗ウイルス剤は、天然の植物由来であるため安全性に優れ、また、ビール等発泡性アルコール飲料の醸造の際の副産物として産出され、廃棄されるホップを原料とするため、産業廃棄物の減少に貢献し、ホップの付加価値を高めて有効利用できる。

Claims (4)

  1. 乾燥されたホップ苞の粉砕物の冷水抽出物を有効成分とする抗インフルエンザウイルス剤であって、前記冷水が0℃超10℃以下である抗インフルエンザウイルス剤。
  2. 前記乾燥されたホップ苞の粉砕物は、乾燥されたホップ毬花の粉砕物から、ルプリンの大きさ以下の粉砕物の少なくとも一部が除かれたものである、請求項1記載の抗インフルエンザウイルス剤。
  3. 前記乾燥されたホップ毬花の粉砕物は、乾燥されたホップ毬花の凍結物の粉砕物である、請求項2記載の抗インフルエンザウイルス剤。
  4. アストラガリン、アストラガリンマロニルグルコシド、イソケルシトリン、イソケルシトリンマロニルグルコシド、ケルセチンマロニルグルコシド、ケンフェロールルチノシド、ケンフェロールマロニルグルコシド、ルチン及びフロロアシルフェノン配糖体からなる群より選ばれるフラボノイド配糖体の少なくとも一つを含有する、請求項1〜3のいずれか一項記載の抗インフルエンザウイルス剤。
JP2008502775A 2006-03-01 2007-02-26 抗ウイルス剤 Expired - Fee Related JP5171614B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008502775A JP5171614B2 (ja) 2006-03-01 2007-02-26 抗ウイルス剤

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006055409 2006-03-01
JP2006055409 2006-03-01
JP2008502775A JP5171614B2 (ja) 2006-03-01 2007-02-26 抗ウイルス剤
PCT/JP2007/053538 WO2007099915A1 (ja) 2006-03-01 2007-02-26 抗ウイルス剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2007099915A1 JPWO2007099915A1 (ja) 2009-07-16
JP5171614B2 true JP5171614B2 (ja) 2013-03-27

Family

ID=38459021

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008502775A Expired - Fee Related JP5171614B2 (ja) 2006-03-01 2007-02-26 抗ウイルス剤

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP5171614B2 (ja)
WO (1) WO2007099915A1 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009173583A (ja) * 2008-01-24 2009-08-06 Sapporo Breweries Ltd IgE抗体産生抑制剤
JP2010094064A (ja) * 2008-10-15 2010-04-30 Sapporo Breweries Ltd 生地用添加剤及びこれを使用した方法
JP5731738B2 (ja) * 2009-01-27 2015-06-10 サッポロビール株式会社 脂肪細胞分化抑制剤
JP5456443B2 (ja) * 2009-10-19 2014-03-26 株式会社大雄振興公社 ホップ組成物及びその製造方法
WO2014103011A1 (ja) * 2012-12-28 2014-07-03 サントリーホールディングス株式会社 味の締まりが付与された、ノンアルコールのビールテイスト飲料
CN103145783A (zh) * 2013-03-26 2013-06-12 靖宇县金翔农林生物科技有限公司 用返魂草提取异槲皮苷、返魂草甙、返魂草多糖的方法
DE102015115876A1 (de) * 2015-09-21 2017-03-23 Eberhard Karls Universität Tübingen Medizinische Fakultät Substanz zur Prophylaxe und Behandlung von Infektionen durch Influenzaviren
JP2023007737A (ja) 2021-07-02 2023-01-19 東洋精糖株式会社 ウイルスの細胞侵入阻害剤

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03101623A (ja) * 1989-09-14 1991-04-26 Mitsui Norin Kk インフルエンザウィルス感染予防剤
JPH0698738A (ja) * 1992-01-20 1994-04-12 Asama Kasei Kk 食品用保存剤
JPH092917A (ja) * 1995-06-19 1997-01-07 Asahi Breweries Ltd ホップより得られるポリフェノール製剤とその製造法
JP2002505267A (ja) * 1998-03-05 2002-02-19 メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング 抗ウイルス性効果をもつ製剤

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH03101623A (ja) * 1989-09-14 1991-04-26 Mitsui Norin Kk インフルエンザウィルス感染予防剤
JPH0698738A (ja) * 1992-01-20 1994-04-12 Asama Kasei Kk 食品用保存剤
JPH092917A (ja) * 1995-06-19 1997-01-07 Asahi Breweries Ltd ホップより得られるポリフェノール製剤とその製造法
JP2002505267A (ja) * 1998-03-05 2002-02-19 メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング 抗ウイルス性効果をもつ製剤

Non-Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6012035499; BARTOSZCZE M et al: 'ANTI VIRAL PROPERTIES OF PLANT EXTRACTS ACTIVITY OF HOP-CONES (STROBULI LUPULI)' Bulletin of the Veterinary Institute in Pulawy Vol.12, No.1-4, 1968, pp.69-75 *
JPN6012035500; Wang, Qian et al: 'Xanthohumol, a novel anti-HIV-1 agent purified from hops Humulus lupulus' Antiviral Research Vol.64,No.3, 2004, pp.189-194 *
JPN6012035503; Buckwold,Victor E.et al: 'Antiviral activity of hop constituentsagainst a series of DNA and RNA viruses' Antiviral Research Vol.61,No.1, 2004, pp.57-62 *
JPN6012035504; 山本秀樹 他: '食品製造工程から生じる廃棄物の有価物質への転換再生技術プロジェクト ホップほう部分からのポリフェノ-ル' 関西大学産学連携研究センター研究成果報告書 平成16年度, , 2004, Page.58-61 *
JPN6012035505; Kurumatani Masami et al: 'Analysis of Polyphenols from Hop Bract Region Using CCC' J Liq Chromatogr Relat Technol Vol.28,No.12/13, 2005, Page.1971-1983 *
JPN6012035506; Hubacek,J.et al: 'Paper chromatography of flavanol glycosides of hops' Collection of Czechoslovak Chemical Communications Vol.29,No.5, 1964, pp.1259-1265 *
JPN6012035508; Wei, Feng et al: 'Antiviral Flavonoids from the Seeds of Aesculus chinensis' Journal of Natural Products Vol.67,No.4, 2004, pp.650-653 *
JPN6012035509; Mitrocotsa D. et al: 'Evaluation of the antiviral activity of kaempferol and its glycosides against human cytomegalovirus' Planta Medica Vol.66,No.4, 2000, pp.377-379 *

Also Published As

Publication number Publication date
WO2007099915A1 (ja) 2007-09-07
JPWO2007099915A1 (ja) 2009-07-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5171614B2 (ja) 抗ウイルス剤
US8470378B2 (en) Anti-influenza viral composition containing bark or stem extract of Alnus japonica
CN102716164A (zh) 一种紫锥菊提取物及其制备方法
JP2017189169A (ja) 糖吸収抑制用食品組成物
US20100298250A1 (en) Compositions and methods for extracting and using phytochemicals for the treatment of influenza
KR101612051B1 (ko) 단삼 추출물을 포함하는 코로나 바이러스 감염의 예방 또는 치료용 조성물
JP2007016014A (ja) 花粉荷を有効成分とする骨量増進組成物
KR101260250B1 (ko) 패모 추출물을 포함하는 항 호흡기 바이러스용 조성물
JP5002127B2 (ja) アカシア属樹皮由来物を含有する血糖降下組成物
KR102109980B1 (ko) 건조 상추,복령 및 로즈마리의 혼합 추출물을 포함하는 숙면 유도 조성물 및 이의 제조방법
KR20150001345A (ko) 갓 추출물을 포함하는 항 바이러스 조성물
JP6304731B2 (ja) カラタチ抽出物を有効成分として含む抗インフルエンザウイルス組成物
KR20110086473A (ko) 감태 추출물을 포함하는 코로나 바이러스 감염의 예방 또는 치료용 조성물 및 3cl 프로테아제 활성의 억제용 조성물
Shimode et al. Antiglycative effect and Antiviral effect of Kuromoji (Lindera umbellata Thunb.) extract.
CN102772790A (zh) 一种复方紫锥菊制剂及其制备方法和应用
KR102583001B1 (ko) 클로렐라(Chlorella sp.)추출물 및 이의 페오피틴화 분획물 또는 이로부터 수득한 폴피린계 또는 카로테논계 화합물을 유효성분으로 포함하는 신종코로나 바이러스 감염의 예방 또는 치료용 조성물
US20110195135A1 (en) Anti-avian influenza virus agent, and product containing anti-avian influenza virus agent
KR102534348B1 (ko) 콩 추출물을 유효성분으로 함유하는 항바이러스 조성물
KR102570597B1 (ko) 항인플루엔자 바이러스 효과를 갖는 천연 추출물 및 그 조성물
JP2011051901A (ja) α−グルコシダーゼ阻害剤
JP2009018997A (ja) 摂食量低減剤
KR100839099B1 (ko) 오배자 및 목단피 추출물을 함유하는 돼지 유행성 설사바이러스의 치료 및 예방용 조성물
KR101989006B1 (ko) 숙취해소용 땅콩새싹 과립 및 그 제조방법
KR20220115432A (ko) 구아바(Psidiuma guajava) 추출물 또는 이의 페오피틴화 분획물 또는 이로부터 분리한 메로테르페노이드계 화합물을 유효성분으로 포함하는 신종코로나 바이러스 감염의 예방 또는 치료용 조성물
KR101662459B1 (ko) 자단향 추출물을 유효성분으로 함유하는 알레르기성 질환 예방 또는 치료용 약학적 조성물

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20091210

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120710

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120907

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121002

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121115

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20121211

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20121225

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5171614

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees