JP2006290756A - 植物抽出物の製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 植物抽出物をベントナイトなどの粘土鉱物で処理し、二価陽イオンを除去することを特徴とする精製植物抽出物の製造法並びに精製植物抽出物を、カラムに通液してポリフェノール類を吸着させ、次いで溶媒を通液して水溶性ポリフェノールを溶出させることを特徴とするポリフェノール製造法と、ホップ苞抽出液にベントナイトを添加して酸性条件下で静置する工程、固−液分離を行い上清を得る工程、該上清をカラム精製し、得られたポリフェノール画分上清を冷却して静置して非水溶性成分を析出させ、固−液分離を行う工程を含むことを特徴とする水溶性ホップ苞ポリフェノールの製造法を提供する。
【選択図】 なし
Description
このように、ビール醸造の際に副産物として得られるホップ苞は、これまで土壌改良用の肥料や、家畜の飼料などとして用いられる他に、有効な利用法がなく、付加価値の高い利用法の開発が求められている。
そのため、ホップ苞の有効利用法として、ポリフェノール類を抽出する方法が注目されている。しかし、ホップ苞にはワックス、繊維分などの夾雑物が多量に含まれており、ホップ苞からのポリフェノール類の抽出、精製の工程を複雑化させる要因となっている。
二価陽イオンは、食品衛生法上問題にはならないが、例えばホップ苞やブドウ果皮よりポリフェノール画分を精製後、特に粉末化後では二価陽イオンは数百ppmも存在することがある。キレート樹脂により二価陽イオンの除去は可能であるが、同時に目的のポリフェノール成分も大幅に減少するため、安定して効率の良い、二価陽イオンの除去方法の開発が望まれていた。
また、これまでの製造法によるホップ苞ポリフェノール画分では、酒類や飲料へ添加あるいは配合する際、不溶性物質の発生や濁り等が生じるという品質面の低下が懸念されており、水溶性ポリフェノール画分の製造法の開発が望まれていた。
(1)ホップ苞抽出液の珪藻土濾過工程で、濾液の濁度が十分に低下しないため、合成吸着剤によるカラム精製工程で目詰まりが発生し、ポリフェノールが損失していた。
(2)合成吸着剤によるカラム精製工程で得られる固形分中、水溶性ポリフェノール純度が約50%と低いため、後の澱下げ工程に長時間を要する。
(3)酒類や飲料へ添加あるいは配合する際、不溶性物質の発生や濁り等が生じていた。
(4)二価陽イオンが精製後も粉末あたり数百ppm存在していた。
(1)ポリフェノールを含有する植物抽出物、例えばホップ苞抽出液を粘土鉱物で処理することにより、二価陽イオンの除去が効率的に行われる。二価陽イオンは、酒類や清涼飲料中に高濃度に存在すると、混濁、変色および酸化等が起こることが知られている。例えば、葡萄酒においては、葡萄酒中に10ppm以上の鉄イオンが存在すると、低酸度と低温によって鉄混濁が発生することが知られている。
また、銅混濁は葡萄酒においては、少なくとも0.6ppm以上存在すると発生する。したがって、植物抽出物の二価陽イオンを除去することは、該抽出物を酒類や清涼飲料に使用する際に、混濁防止等の効果が期待される。
(2)さらに、粘土鉱物による処理により、ホップ苞抽出液の清澄化が行われ、後続の合成吸着剤によるカラム精製工程において目詰まりが生起しない。
(3)合成吸着剤によるカラム精製工程で得られる水溶性ポリフェノールの純度が約90%に向上し、後の澱下げ工程における所要時間が大幅に短縮される。
(4)水溶性ホップ苞ポリフェノールの回収率が従来法に比べて約18%向上する。
ここで、ホップ苞とは、ホップ毬花よりルプリン部分を取り除いて得られるものであり、一般に、ホップ毬花を粉砕後、ふるい分けなどによってルプリン部分を除くことによって得られる。
ホップ苞は、ルプリン部分を除いた後、そのままの状態で原料として用いることもできるし、ペレット状に加工形成したものを用いてもよい。その他、ホップ毬花そのものやホップ毬花の超臨界抽出残渣などのように、ホップ苞を含むものであれば、特に問題なく本発明に用いることができる。
本発明で用いるベントナイトは、天然ベントナイトから夾雑成分を取り除いた精製物が好ましく、フレーク状、粉末状などに加工したものであってもよい。
まず、原料のホップ苞を抽出溶媒の含水アルコール、好ましくは50容量%以下のアルコール水溶液で抽出することにより、ポリフェノール類を含む抽出液を得る。アルコールとしては、エタノールが好ましい。原料に対する抽出溶媒の割合は、1:10〜20(重量比)程度であればよい。また、抽出は30〜60℃で攪拌下、60〜180分間行えばよい。
このようにして得られたポリフェノール類を含む抽出液は、残存アルコール濃度が2容量%以下になるように、好ましくは固形分含量がBRIX(可溶性固形分含量:水溶液中に含まれる糖類を初めとして、塩類、蛋白質、酸類など水に溶ける物質すべてが屈折率に影響するが、測定した屈折率がショ糖含量にのみ依存するとして換算し得られる値)で50〜75%に濃縮する。濃縮方法としては、加熱濃縮、減圧濃縮などの通常用いられる方法を採用すればよいが、減圧濃縮が好ましい。また濃縮後、冷蔵もしくは冷凍で保存できる。
次いで、該抽出液にベントナイトを添加した後、12〜24時間、好ましくは15〜20時間程静置する。なお、ベントナイトは、あらかじめ60℃以上、好ましくは80〜90℃の温水と混合して膨潤させ、5〜15%水溶液、好ましくは10%水溶液としておき、これを前記抽出液量に対するベントナイト量として2000ppm、好ましくは1500〜2000ppmの割合で添加する。
この操作により、抽出液中に含まれる二価陽イオンはベントナイトにより吸着、除去され(固形分含量BRIX12当たり20ppmから)5ppm以下、通常は0.5〜1.0ppmに低下する。
さらに、ベントナイトにより生じた沈殿物を、遠心分離(通常は5,000〜10,000Gで5〜10分間)、ろ過(例えば珪藻土ろ過)、その他の固−液分離により、抽出液の清澄化が行われる。
また、必要であれば、上記抽出液を10℃以下の低温で数日〜1ヶ月間保存して十分に沈殿を生じさせた後に、当該沈殿物を除去することにより清澄化することもできる。
SV値 =(通液量(L))/{(樹脂量(L))x(通液時間(h))}
得られるポリフェノールを含むアルコール水溶液は、減圧濃縮機により含有アルコールを除去し、結果として固形分含量3.5〜5.0%まで濃縮する。
このようにして得られたホップ苞ポリフェノールは、苦味あるいは渋味を呈した僅かなホップ香を有する、淡褐色〜褐色の粉末である。
なお、上記の方法で得られるポリフェノール類の収率は、ホップ苞あたり2.0〜2.1%である。この収率は、従来法と比べると、約18%向上している。
原料のホップ苞800gを50容量%のアルコール水溶液で抽出して得たポリフェノール類を含む抽出液400gを40℃に加温した純水に溶解し、1200mlまでメスアップ(希釈率3倍v/w)した。次いで、これを250mlメスシリンダーに200mlずつ分注し、5検体を準備した。
一方、80℃に加温した純水100mlにベントナイト5gを添加し、12時間以上撹拌して膨張させ、ベントナイト5%懸濁液を調製した。この懸濁液を、表1に示した通りに上記各検体に添加した後、すべて等量になるように純水を用いて調整した。
一晩静置させた後、遠心分離を行って上清を採取した。この上清について濁度を10mm長セルを用いて分光光度計にて650nmにおける吸光度を測定して求め、pH値をpHメーターで測定した。さらに、上清を0.45μmメンブレンフィルターでろ過したのち、銅(Cu)とナトリウム(Na)の濃度および見掛けポリフェノール濃度を測定した。なお、Cu濃度とNa濃度は、原子吸光法により測定し、見掛けポリフェノール濃度はUV280nm法により測定した。ここで、UV280nm法について以下に説明する。
実施例1と同様にして、原料のホップ苞800gを50容量%のアルコール水溶液で抽出して得たポリフェノール類を含む抽出液400gを40℃に加温した純水に溶解し、1200mlまでメスアップ(希釈率3倍v/w)した。次いで、これを250mlメスシリンダーに200mlずつ分注し、5検体を準備した。
一方、80℃に加温した純水100mlにベントナイト5gを添加し、12時間以上撹拌して膨張させ、ベントナイト5%懸濁液を調製した。この懸濁液を、表2に示した通りに上記各検体に添加した後、すべて等量になるように純水を用いて調整した。次いで、各検体に無水クエン酸を添加して、表2に示したpH値に調整した。
一晩静置させた後、遠心分離を行って上清を採取した。この上清について、実施例1と同様の方法で処理したのち、濁度、pH値、Cu濃度、Na濃度、見掛けポリフェノール濃度を測定した。測定結果を表2に示す。
原料のホップ苞4kgを50容量%のアルコール水溶液で抽出して得たポリフェノール類を含む抽出液2kgを40℃に加温した純水に溶解し、7.2Lまでメスアップ(希釈率3.6倍v/w)した。次いで、これを2Lメスシリンダーに1.8Lずつ分注し、4検体を準備した。尚、検体のpH調整には、クエン酸(無水)を使用した。
一方、80℃に加温した純水500mlにベントナイト25gを添加し、12時間以上撹拌して膨張させ、ベントナイト5%懸濁液を調製した。この懸濁液を、表3に示した通りに上記各検体に添加した後、すべて等量(2000ml)になるように純水を用いて調整した。
一晩静置させた後、遠心分離を行って上清を採取した。この上清について濁度を10mm長セルを用いて分光光度計にて650nmにおける吸光度を測定して求め、pH値をpHメーターで測定した。さらに、上清を実施例1と同様にしてろ過したのち、銅(Cu)とナトリウム(Na)の濃度および見掛けポリフェノール濃度を実施例1と同じ方法で測定した。測定結果を表3に示す。
したがって、ベントナイトの添加量を2000ppm程度、処理液のpHを3.0程度に設定するのが適当である。
原料のホップ苞800gを50容量%のアルコール水溶液で抽出して得たポリフェノール類を含む抽出液400gを40℃に加温した純水に溶解し、1440mlまでメスアップ(希釈率3.6倍v/w)した。次いで、これを1000mlメスシリンダーに720mlずつ分注し、2検体を準備した。実施例3と同様に抽出液にベントナイト添加量2000ppmを加え、クエン酸によるpH調整(3.0)を行い、純水にて希釈倍率を4倍となるよう調整した。これを一晩静置させた後、遠心分離を行って上清を採取し、抽出液重量に対し純水にて希釈倍率を6倍となるよう調整した。この上清を実施例1と同様にろ過して検液1とした。
一方、対照としてポリフェノール類を含む抽出液を、ベントナイト処理せずに純水にて希釈倍率を6倍としたものを検液2とした。
次に、各検液1200mlを空間速度=1(3.3ml/min)にてカラム(充填剤:三菱化学社製SP850、196ml)に通液し、次いで純水を通液し、カラム下部Brix.0.2で終了した。次に、50%エタノール(液温は室温)600mlを空間速度=1(3.3ml/min)にてカラムに通液した。エタノールの通液開始後から、最終液量850mlまで回収した(純水押し分を含む)。得られた試料(カラム負荷検液、液量1200ml)について、実施例1と同様の方法でCu濃度とNa濃度を測定し、結果を表4に示した。また、カラム溶出液(液量 850ml)中のCu濃度とNa濃度を測定し、Cu除去率とNa除去率及びポリフェノール濃度を求め、その結果を表5に示した。
カラム溶出液を脱アルコール、濃縮しポリフェノール画分濃縮液を得た。これを乾燥させ、ホップ苞ポリフェノールの粉末(1)(非水溶性成分除去前のもの)を得た。次に、クエン酸で濃縮液をpH3.2に調整し、3日間0℃で冷却保存を行い、沈殿を析出させた。これをろ過後、乾燥させ、水溶性ホップ苞ポリフェノールの粉末(2)(非水溶性成分除去後のもの)を得た。これら粉末(1)、(2)の100ppm水溶液を作成し、分析を行った結果を表6に示す。表中のポリフェノール係数は、ゲル浸透高速液体クロマトグラフィー(GPC-HPLC)で得られる分子量パターンより、ピーク面積として測定した。また、プロアントシアニジン係数は、Porter法により測定した。Porter法とは、ニ量体以上のカテキンオリゴマー(縮合型タンニンまたはプロアントシアニジン)を酸性条件下で加熱すると、カテキン-カテキンの間の結合が切断されるとともに、アントシアニジン(赤色色素)が生成する現象を利用し、再現性良く試料中の総プロアントシアニジン量を比色定量する方法である。また、タンパク質はケルダール法により全窒素を測定し、係数6.15を乗じてタンパク質含量を求めた。
しかも、本発明によりホップ苞抽出液をベントナイトで処理することにより、不純物の二価陽イオンなどの除去を効率的に行うことができる。
Claims (7)
- 植物抽出物を粘土鉱物で処理し、二価陽イオンを除去することを特徴とする精製植物抽出物の製造法。
- 粘土鉱物がベントナイトである請求項1記載の製造法。
- 請求項1の精製植物抽出物を、カラムに通液してポリフェノール類を吸着させ、次いで溶媒を通液して水溶性ポリフェノールを溶出させることを特徴とするポリフェノール製造法。
- 植物がホップである請求項1〜3のいずれかに記載の製造法。
- ホップ苞抽出液にベントナイトを添加して酸性条件下で静置する工程、固−液分離を行い上清を得る工程、該上清をカラム精製し、得られたポリフェノール画分上清を冷却して静置して非水溶性成分を析出させ、固−液分離を行う工程を含むことを特徴とする水溶性ホップ苞ポリフェノールの製造法。
- ホップ苞抽出液にベントナイトを添加して酸性条件下で静置する工程を、pH2.0〜4.0の酸性領域で行う請求項5に記載のホップ苞ポリフェノールの製造法。
- ポリフェノール画分上清の冷却温度が0〜10℃、静置時間が6時間以上900時間以内である請求項5または6に記載のポリフェノール製造法。
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