JP3470676B2 - 黒発色性に優れた脂肪族ポリエステル繊維構造物 - Google Patents

黒発色性に優れた脂肪族ポリエステル繊維構造物

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JP3470676B2
JP3470676B2 JP2000077720A JP2000077720A JP3470676B2 JP 3470676 B2 JP3470676 B2 JP 3470676B2 JP 2000077720 A JP2000077720 A JP 2000077720A JP 2000077720 A JP2000077720 A JP 2000077720A JP 3470676 B2 JP3470676 B2 JP 3470676B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は脂肪族ポリエステル
から構成された黒色染料によって染色されてなる繊維構
造物に関する。さらに詳しくは、黒発色の深色性に優れ
るため、ブラックフォーマル、学衣、和服用途に特に好
適な脂肪族ポリエステル繊維構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレンテレフタレートを代表とす
る芳香族ポリエステル繊維は、強度、耐熱性、耐薬品
性、ウォッシュアンドウエア性など各種の特性に優れる
ため、衣料用繊維として広く用いられている。
【0003】しかし、芳香族ポリエステルは分子鎖内に
芳香環を有するためにポリマーの屈折率が高く、発色性
の観点からは不十分な特性の繊維構造物しか得られなか
った。特に黒発色に関する深色性に劣っているため、ブ
ラックフォーマル、学衣、和服など黒発色の深色性が必
要とされる分野においては、発色性を向上させるべく種
々検討が行われている。
【0004】芳香族ポリエステル繊維の黒発色性を向上
させる方法としては、微細シリカを含有させたポリマー
を繊維化した後、繊維のアルカリ処理を行うことによっ
て繊維表面を粗面化する方法や、糸加工によって単繊維
間に空隙を設け、光の散逸を防止する方法が知られてい
る。しかし、これらの方法によっても、ポリマー基質の
屈折率が高いことに変わりがないため、黒色の深色性を
得ることは困難であり、L*値が18以下、あるいは
2以下、さらには8以下といった黒発色性を得るために
は、特殊な繊維あるいは糸使いを行う必要があって、汎
用性に欠ける問題があった。
【0005】また、繊維布帛の表面にフッ素系あるいは
シリコン系の樹脂加工を行うことによって黒色の深色性
を発現する方法も知られている。この方法によれば確か
にL*値が低下し、発色性は良好となるが、布帛表面に
存在する樹脂層に起因して、布帛が粗硬なものとなり、
また場合によってはぬめり感を生じることがあった。
【0006】天然繊維や化学繊維の中には、芳香族ポリ
エステルとは異なり、レーヨンやアセテートなど黒発色
性に優れた繊維は存在している。しかし、これらの繊維
は強度が弱いために布帛の強力が低いこと、洗濯後にし
わになりやすくウォッシュアンドウエア性がないこと、
また熱や水の作用によって収縮しやすく取り扱い性に劣
ることなどの欠点を有しており、衣料用繊維構造物とし
ては必ずしも望ましいものではなかった。脂肪族ポリエ
ステル繊維を染色する方法に関しては、特開平8−31
1781号公報に提案が見られる
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記
の問題点を克服し、黒発色性、布帛触感および引裂強力
に優れた繊維構造物を、汎用的に提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題は、屈折率が
1.30〜1.50、カルボキシル基末端濃度[COO
H]が0〜20eq/tであるポリマーからな分散
染料によって染色された脂肪族ポリエステル繊維を少な
くとも一部に用いた繊維構造物であって、明度L*値が
以下、彩度C*値が10以下であることを特徴とす
る黒発色性に優れた脂肪族ポリエステル繊維構造物によ
って解決される。
【0009】この繊維構造物は、エルメンドルフ引裂強
力計を用いて測定される布帛の引裂強力が490cN以
上であることが、布帛の耐久性、取り扱い性の観点から
重要であり、脂肪族ポリエステル繊維の強度は3〜8c
N/dtex、沸騰水収縮率が0〜15%、カルボキシ
ル基末端濃度[COOH]が0〜0eq/tであるこ
とが望ましい。
【0010】脂肪族ポリエステルとしては、L−乳酸及
び/又はD−乳酸を主たる繰り返し単位とするポリエス
テルを好適に用いることができる。
【0011】繊維構造物は織物であっても編物であって
もよいが、繊維構造物が織物である場合にはカバーファ
クターF1 が300〜2000であることが、また、繊
維構造物が編物である場合は、編地カバーファクターF
2 が2〜60であることがよい。
【0012】また、染色されてなる繊維構造物のL*値
は8以下であることが好ましい。このように低いL*値
とするためには、繊維中の染料の濃度が5〜20wt%
であることが好ましい。
【0013】繊維構造物のKES(Kawabata
Evaluation System)による曲げ剛性
測定値Bが0.01〜0.1(g・cm2/cm)であ
ることが、布帛触感の観点からは好ましく採用される。
【0014】また、本発明の繊維構造物の製造方法は、
脂肪族ポリエステル繊維を少なくとも一部に用いた繊維
構造物を、黒色染料濃度5〜30%owf、染色温度1
0〜130℃で染色することを特徴とするものであ
る。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の繊維構造物は、脂肪族ポ
リエステル繊維を主体に構成されており、その脂肪族ポ
リエステルは、屈折率が1.30〜1.50であるもの
である。屈折率が1.50よりも高いと繊維表面におけ
る反射光が多くなるため、黒発色性に劣るものしか得ら
れない。屈折率は好ましくは1.30〜1.45であ
る。
【0016】ここでいう屈折率は、自然光を採光できる
室内に設置され恒温水の循環等の手段により23℃に調
節された、プリズムを備えたアッベ屈折計により、JI
S−K7105記載の方法に準拠して測定される値を意
味している。
【0017】屈折率が1.30〜1.50である脂肪族
ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、
ポリ−3−ヒドロキシプロピオネート、ポリ−3−ヒド
ロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレートバ
リレートなどのポリオキシ酸類、脂肪族ジカルボン酸と
脂肪族ジオールの重縮合物類、ポリピバロラクトンなど
の脂肪族環状エステルを開環重合して得られるポリエス
テル類、およびこれらのブレンド物、変性物等を例示す
ることができるが、これらに限定されるものではない。
【0018】なかでも、高融点、高耐熱性の観点から望
ましいポリマーとしては、L−乳酸及び/又はD−乳酸
を主たる繰り返し単位とするポリエステルであるポリ乳
酸を挙げることができる。ポリ乳酸の製造方法には、L
−乳酸及び/又はD−乳酸を原料として一旦環状二量体
であるラクチドを生成せしめ、その後開環重合を行う二
段階のラクチド法と、L−乳酸及び/又はD−乳酸を原
料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合
法が知られている。本発明で用いるポリ乳酸はいずれの
製法によって得られたものであってもよい。
【0019】ポリ乳酸の平均分子量は、通常少なくとも
5万、好ましくは少なくとも10万、好ましくは10〜
30万である。平均分子量が5万よりも低い場合には繊
維の強度物性が低下するため好ましくない。30万を越
える場合には溶融粘度が高くなりすぎ、溶融紡糸が困難
になる場合がある。
【0020】また、本発明におけるポリ乳酸は、L−乳
酸、D−乳酸の他にエステル形成能を有するその他の成
分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。共重合
可能な成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪
酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−
ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の
他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタ
ンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレング
リコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子
内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘
導体、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸等の分子内に
複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの
誘導体が挙げられる。ただし、繊維強度を損なわないた
め、繊維の70モル%以上が乳酸単位からなることが望
ましい。
【0021】また、溶融粘度を低減させるため、ポリカ
プロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレ
ンサクシネートのような脂肪族ポリエステルポリマー
や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコー
ル、ポリ(エチレン−プロピレン)グリコール共重合体
などの脂肪族ポリエーテルポリマーを内部可塑剤とし
て、あるいは外部可塑剤として用いることができる。さ
らには、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、抗
酸化剤、着色顔料等として無機微粒子や有機化合物を必
要に応じて添加することができる。
【0022】また、本発明における脂肪族ポリエステル
繊維は繊維の強度が3〜8cN/dtex以上であり、
沸騰水収縮率が0〜15%であることが好ましい。強度
が3cN/dtex未満の場合には製織時の糸切れ停台
の原因となったり、織物、編地の引裂強力および破裂強
力の低下による製品強度の低下を招くため好ましくな
い。繊維の強度は、より好ましくは4cN/dtex以
上であり、さらに好ましくは5cN/dtex以上であ
る。8cN/dtex以上の強度を有する繊維を得るた
めには、延伸倍率を高くとる必要があり、この場合繊維
の伸度が著しく低くなるため、製造が困難となることが
ある。
【0023】また沸騰水収縮率は0〜15%であること
が望ましい。15%より大きいと、精練、染色など熱水
処理を行った場合の収縮が大きくなり、布帛の幅出しが
困難となり、風合いも硬化する傾向にあるため好ましく
ない。通常の布帛として用いる場合には、沸騰水収縮率
は2〜10%、さらに好ましくは3〜8%となっている
ことがよい。
【0024】また、本発明における脂肪族ポリエステル
のカルボキシル基末端濃度[COOH]は0〜20eq
/tである必要がある。カルボキシル基末端濃度[CO
OH]が20eq/tよりも多い場合には、染色加工時
に生じる加水分解の度合いが大きく、染色条件によって
は布帛の引裂強力の著しい低下を招くことがある。特
に、濃色に染色するため染色温度を高くした場合に加水
分解は顕著であるため、布帛の強力保持の観点からは、
脂肪族ポリエステルのカルボキシル基末端濃度[COO
H]は、好ましくは10eq/t以下、最も好ましくは
6eq/t以下である。カルボキシル基末端濃度[CO
OH]は少なければ少ないほど好ましい。ここでカルボ
キシル基末端濃度[COOH]とは実施例中に記載の方
法によって測定した値を指す。
【0025】このような低いカルボキシル基末端基量の
脂肪族ポリエステルは、脂肪族ポリエステルの溶融状態
でカルボキシル基と反応性を有する化合物、例えばカル
ボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合
物、オキサジン化合物、アジリジン化合物、ジオール化
合物、長鎖アルコール化合物などの末端封鎖剤を適量反
応させることで得ることができるが、脂肪族ポリエステ
ルの高重合度化、残存低分子量物の抑制などの観点か
ら、ポリマーの重合反応終了後に末端封鎖剤を添加・反
応させることが好ましい。上記した末端封鎖剤と脂肪族
ポリエステルとの混合・反応としては、例えば、重縮合
反応終了直後の溶融状態の脂肪族ポリエステルに末端封
鎖剤を添加し攪拌・反応させる方法、脂肪族ポリエステ
ルのチップに末端封鎖剤を添加・混合した後に反応缶あ
るいはエクストルーダなどで混練・反応させる方法、エ
クストルーダで脂肪族ポリエステルに液状の末端封鎖剤
を連続的に添加し、混練・反応させる方法、末端封鎖剤
を高濃度含有させた脂肪族ポリエステルのマスターチッ
プと脂肪族ポリエステルのホモチップとを混合したブレ
ンドチップをエクストルーダなどで混練・反応させる方
法などにより行うことができる。また、末端封鎖剤を用
いず、ポリマーの重縮合反応を低温でおこなう等、ポリ
マーの重合時における熱分解を抑制する方法によっても
よい。
【0026】本発明に用いることのできる末端封鎖剤の
うちカルボジイミド化合物の例としては、例えば、N,
N´−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N´−ジ
フェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシル
カルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェ
ニルカルボジイミド、N−トリイル−N´−シクロヘキ
シルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジイソプ
ロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6
−ジ−tert.−ブチルフェニルカルボジイミド、N
−トリイル−N´−フェニルカルボジイミド、N,N´
−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−
ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ
−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−
ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p
−トリイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ
−o−トリイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス
−ジシクロヘキシルカルボジイミド、ヘキサメチレン−
ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビ
ス−ジフェニルカルボジイミド,N,N′−ベンジルカ
ルボジイミド、N−オクタデシル−N′−フェニルカル
ボジイミド、N−ベンジル−N′−フェニルカルボジイ
ミド、N−オクタデシル−N′−トリルカルボジイミ
ド、N−シクロヘキシル−N′−トリルカルボジイミ
ド、N−フェニル−N′−トリルカルボジイミド、N−
ベンジル−N′−トリルカルボジイミド、N,N′−ジ
−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−
p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o
−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ
−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′
−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,
N′−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、
N,N′−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミ
ド、N,N′−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェ
ニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−イソブチル−
6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−
ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、
N,N′−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニル
カルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソ
ブチルフェニルカルボジイミド、下記一般式(I)で示
される芳香族ポリカルボジイミドなどが挙げられる。
【0027】
【化1】
【0028】(式中のRは水素原子または炭素数1〜4
のアルキル基を表し、nは2〜20の整数を表す) さらには、これらのカルボジイミド化合物の中から1種
または2種以上の化合物を任意に選択して脂肪族ポリエ
ステルのカルボキシル末端を封鎖すればよいが、反応性
の点でN,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニル
カルボジイミドが好ましい。
【0029】本発明に用いることのできる末端封鎖剤の
うちエポキシ化合物の例としては、例えば、N−グリシ
ジルフタルイミド、N−グリシジル−4−メチルフタル
イミド、N−グリシジル−4,5−ジメチルフタルイミ
ド、N−グリシジル−3−メチルフタルイミド、N−グ
リシジル−3,6−ジメチルフタルイミド、N−グリシ
ジル−4−エトキシフタルイミド、N−グリシジル−4
−クロルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジク
ロルフタルイミド、N−グリシジル−3,4,5,6−
テトラブロムフタルイミド、N−グリシジル−4−n−
ブチル−5−ブロムフタルイミド、N−グリシジルサク
シンイミド、N−グリシジルヘキサヒドロフタルイミ
ド、N−グリシジル−1,2,3,6−テトラヒドロフ
タルイミド、N−グリシジルマレインイミド、N−グリ
シジル−α,β−ジメチルサクシンイミド、N−グリシ
ジル−α−エチルサクシンイミド、N−グリシジル−α
−プロピルサクシンイミド、N−グリシジルベンズアミ
ド、N−グリシジル−p−メチルベンズアミド、N−グ
リシジルナフトアミド、N−グリシジルステラミド、N
−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−
ジカルボン酸イミド、N−エチル−4,5−エポキシシ
クロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−フェ
ニル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカ
ルボン酸イミド、N−ナフチル−4,5−エポキシシク
ロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−トリル
−3−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,
2−ジカルボン酸イミド、オルソフェニルフェニルグリ
シジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテ
ル、フェニルグリシジルエーテル、3−(2−キセニル
オキシ)−1,2−エポキシプロパン、アリルグリシジ
ルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ラウリルグリ
シジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、シクロ
ヘキシルグリシジルエーテル、α−クレシルグリシジル
エーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテ
ル、メタクリル酸グリシジルエーテル、エチレンオキサ
イド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、オ
クチレンオキサイド、ヒドヘキサヒドロフタル酸ジグリ
シジルエステル、フタル酸ジメチルジグリシジルエステ
ル、フロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグ
リシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシ
ジルエーテル、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエ
ーテルなどが挙げられ、さらには、テレフタル酸ジグリ
シジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエ
ステル、フェニレンジグリシジルエーテル、エチレンジ
グリシジルエーテル、トリメチレンジグリシジルエーテ
ル、テトラメチレンジグリシジルエーテル、ヘキサメチ
レンジグリシジルエーテル、エポキシ化大豆油などが挙
げられる。これらのエポキシ化合物の中から1種または
2種以上の化合物を任意に選択して脂肪族ポリエステル
のカルボキシル末端を封鎖すればよいが、反応性の点で
エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、フェニル
グリシジルエーテル、オルソフェニルフェニルグリシジ
ルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテ
ル、N−グリシジルフタルイミド、ヒドロキノンジグリ
シジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添
ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルなどが好まし
い。
【0030】本発明に用いることのできる末端封鎖剤の
うちオキサゾリン化合物の例としては、例えば、2−メ
トキシ−2−オキサゾリン、2−エトキシ−2−オキサ
ゾリン、2−プロポキシ−2−オキサゾリン、2−ブト
キシ−2−オキサゾリン、2−ペンチルオキシ−2−オ
キサゾリン、2−ヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、
2−ヘプチルオキシ−2−オキサゾリン、2−オクチル
オキシ−2−オキサゾリン、2−ノニルオキシ−2−オ
キサゾリン、2−デシルオキシ−2−オキサゾリン、2
−シクロペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−シク
ロヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−アリルオキ
シ−2−オキサゾリン、2−メタアリルオキシ−2−オ
キサゾリン、2−クロチルオキシ−2−オキサゾリン、
2−フェノキシ−2−オキサゾリン、2−クレジル−2
−オキサゾリン、2−o−エチルフェノキシ−2−オキ
サゾリン、2−o−プロピルフェノキシ−2−オキサゾ
リン、2−o−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリ
ン、2−m−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2
−m−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−p
−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−メチル
−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、
2−プロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オ
キサゾリン、2−ペンチル−2−オキサゾリン、2−ヘ
キシル−2−オキサゾリン、2−ヘプチル−2−オキサ
ゾリン、2−オクチル−2−オキサゾリン、2−ノニル
−2−オキサゾリン、2−デシル−2−オキサゾリン、
2−シクロペンチル−2−オキサゾリン、2−シクロヘ
キシル−2−オキサゾリン、2−アリル−2−オキサゾ
リン、2−メタアリル−2−オキサゾリン、2−クロチ
ル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリ
ン、2−o−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−
o−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−フ
ェニルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−エチルフ
ェニル−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェニル
−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェニル−2−
オキサゾリンなどが挙げられ、さらには、2,2′−ビ
ス(2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−メチル
−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジ
メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−エ
チル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′
−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4
−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4
−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−
ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−
フェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−
シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス
(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−
フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−m−
フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−o−
フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−
フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、
2,2′−p−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−
2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス
(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フ
ェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリ
ン)、2,2′−エチレンビス(2−オキサゾリン)、
2,2′−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、
2,2′−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、
2,2′−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、
2,2′−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、
2,2′−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリ
ン)、2,2′−テトラメチレンビス(4,4−ジメチ
ル−2−オキサゾリン)、2,2′−9,9′−ジフェ
ノキシタンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−シク
ロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ジ
フェニレンビス(2−オキサゾリン)などが挙げられ
る。これらのオキサゾリン化合物の中から1種または2
種以上の化合物を任意に選択して脂肪族ポリエステルの
カルボキシル末端を封鎖すればよい。
【0031】本発明に用いることのできる末端封鎖剤の
うちオキサジン化合物の例としては、例えば、2−メト
キシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、
2−エトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキ
サジン、2−プロポキシ−5,6−ジヒドロ−4H−
1,3−オキサジン、2−ブトキシ−5,6−ジヒドロ
−4H−1,3−オキサジン、2−ペンチルオキシ−
5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ヘ
キシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキ
サジン、2−ヘプチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H
−1,3−オキサジン、2−オクチルオキシ−5,6−
ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ノニルオキ
シ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2
−デシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オ
キサジン、2−シクロペンチルオキシ−5,6−ジヒド
ロ−4H−1,3−オキサジン、2−シクロヘキシルオ
キシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、
2−アリルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−
オキサジン、2−メタアリルオキシ−5,6−ジヒドロ
−4H−1,3−オキサジン、2−クロチルオキシ−
5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジンなどが挙
げられ、さらには、2,2′−ビス(5,6−ジヒドロ
−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−メチレンビ
ス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、
2,2′−エチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−
1,3−オキサジン)、2,2′−プロピレンビス
(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、
2,2′−ブチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−
1,3−オキサジン)、2,2′−ヘキサメチレンビス
(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、
2,2′−p−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4
H−1,3−オキサジン)、2,2′−m−フェニレン
ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジ
ン)、2,2′−ナフチレンビス(5,6−ジヒドロ−
4H−1,3−オキサジン)、2,2′−P,P′−ジ
フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オ
キサジン)などが挙げられる。これらのオキサジン化合
物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択し
て脂肪族ポリエステルのカルボキシル末端を封鎖すれば
よい。
【0032】本発明に用いることのできる末端封鎖剤の
うちアジリジン化合物の例としては、例えば、モノ,ビ
スあるいはポリイソシアネート化合物とエチレンイミン
との付加反応物などが挙げられる。
【0033】本発明に用いることのできる末端封鎖剤の
うち、ジオール化合物の例としては、例えば、エチレン
グリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、
テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、
ポリ(エチレン−プロピレン)グリコール、ポリ(エチ
レン−ブチレン)グリコール、ビスフェノールA、ビス
フェノールS、ジエチレングリコール、ネオペンチルグ
リコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが
挙げられる。
【0034】本発明に用いることのできる末端封鎖剤の
うち、長鎖アルコール化合物としては、プロパノール、
イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ノナノ
ール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルア
ルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、
乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどがあげられ
る。また、グリセロール、ソルビトール、キシルトー
ル、リビトール、エリスチトールなどの多価アルコール
を用いてもよい。
【0035】また、本発明に用いることのできる末端封
鎖剤として上述した化合物のうち、2種以上の化合物を
末端封鎖剤として併用することもできる。
【0036】また、本発明の脂肪族ポリエステルの融点
は100〜300℃であることが望ましい。融点が10
0℃よりも低い場合には、単糸間の融着の発生による延
伸性不良や、染色加工時、熱セット時、摩擦加熱時に溶
融欠点が生じるなど、製品の品位が著しく低いものとな
るため、衣料用途に用いるには好ましくない。好ましく
は脂肪族ポリエステルの融点は150℃以上であり、さ
らに好ましくは融点が165℃以上である。融点が30
0℃より高いポリマーは溶融成形が困難であるため、望
ましくない。ここで融点とはDSC測定によって得られ
た溶融ピークのピーク温度を意味する。
【0037】本発明の脂肪族ポリエステル繊維は、丸断
面あるいは扁平、三〜八葉、C型、H型、中空などの異
形断面であってもよいし、少なくとも1成分、好ましく
は2成分以上が脂肪族ポリエステルからなる芯鞘型、偏
心芯鞘型、サイドバイサイド型、割繊維分割型など、あ
るいは海島型などの1成分を溶出するタイプの複合繊維
であってもよい。また、通常のフラットヤーン以外に、
仮撚加工糸、強撚糸、タスラン加工糸、太細糸、混繊糸
等のフィラメントヤーンであってもよく、ステープルフ
ァイバーやトウ、あるいは紡績糸などの各種形態の繊維
であってよい。
【0038】本発明の繊維構造物は、前述した本発明の
脂肪族ポリエステル繊維が単独または他の繊維と混用さ
れてなり、かつ染色を施した繊維構造物であって、縫い
糸や刺繍糸、ひも類などの糸形態でもよく、織物、編
物、不織布、フェルト等の布帛形態、あるいはコート、
セーター、その他の外衣、下着、パンスト、靴下、裏
地、芯地、スポーツ衣料などの衣料用製品、カーテン、
カーペット、椅子貼り、カバン、家具貼り、壁材、各種
のベルトやスリング等の生活資材用製品、帆布、ネッ
ト、ロープ、重布等の産業資材用製品、人工皮革製品な
ど、各種の繊維製品形態を含む。
【0039】本発明の脂肪族ポリエステル繊維構造体
は、本発明の脂肪族ポリエステル繊維を単独で使用して
もよく、また他の繊維と混用することもできる。混用す
る場合でも、脂肪族ポリエステル繊維の高い黒発色性を
生かす利用方法とすることが好ましい。布帛として混用
する場合には、例えば本発明の脂肪族ポリエステル繊維
の混用比率を重量比で30%以上とすることが好まし
く、50%以上とすることがより好ましく、混用する他
の繊維は適正な染料により脂肪族ポリエステル繊維と同
様に黒色に染色して使用することが好ましい。他の繊維
としては特に制限はないが、綿、麻などのセルロース繊
維、ウール、絹、レーヨン、アセテート、テンセル、あ
るいはポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、
ポリオレフィン、ポリウレタン等の繊維が挙げられる。
【0040】混用の態様としては、他の繊維からなる繊
維構造物との各種組み合わせのほか、他の繊維との混繊
糸、複合仮撚糸、混紡糸、長短複合糸、流体加工糸、カ
バリングヤーン、合撚、交織、交編、パイル織編物、混
綿詰め綿、長繊維や短繊維の混合不織布、フェルトが例
示される。
【0041】本発明の繊維構造物は、L*値が1
下、C*値が10以下となるように分散染料によって染
色されてなる。L*値は、L*a*b*系の色表示にお
ける明度であり、その値が小さいほど明度が低い、すな
わち黒色の発色が深いことを意味する。また、C*値は
(a*2+b*21/2で定義される彩度を意味してお
り、その値が小さいほど無彩色で黒らしい黒に見える。
本発明においては、黒発色性の点からL*値は1以下
であることが重要である。L*値は好ましくは以下で
あり、さらに好ましくは6以下である。また、C*値に
ついても黒発色性の点から、10以下であることが重要
である。
【0042】また、繊維構造物が布帛である場合に、該
布帛はエルメンドルフ強力計で測定した引き裂き強力が
490cN以上であることが重要である。引裂強力が4
90cNに満たない場合には、衣服の耐久性に問題を生
じることがある。引裂強力はより好ましくは700cN
以上である。
【0043】さらに、本発明の繊維構造物は、織物であ
っても編物であってもよいが、織物の場合には、下記式
1で規定される織物カバーファクターF1 が300〜2
000であることが望ましい。
【0044】 F1={経糸密度(本/cm)×(経糸の繊度(dtex))0.5}+{緯糸密 度(本/cm)×(経糸の繊度(dtex)0.5)} ・・・(式1) カバーファクターF1 が300以上の場合には、単位面
積あたりの繊維の存在率が高く、優れた黒発色が得られ
る。また、2000以下の場合には、風合いが硬くなら
ず衣料用途に適したものになる。カバーファクターF1
は、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは
700〜1200である。
【0045】繊維構造物が編物である場合には、下記式
2で規定される編地カバーファクターF2 が、2〜60
であることが望ましい。
【0046】 F2={繊度(dtex)0.5}/{ループ長(cm)} ・・・(式2) カバーファクターF2 が2以上の場合には、単位面積あ
たりの繊維の存在率が高く、優れた黒発色が得られる。
また、60以下の場合には、風合いが硬くならず衣料用
途に適したものとなる。カバーファクターF2 は、より
好ましくは5〜50、最も好ましくは10〜40であ
る。
【0047】本発明の黒色染料によって染色されてなる
繊維構造物は、繊維構造物のKES(Kawabata
Evaluation System)による曲げ剛性
測定値Bが0.01〜0.1(g・cm2 /cm)であ
ることが望ましい。曲げ剛性測定値Bは、繊維機械学会
誌、vol.26, No.10, p.721−728
に記載されているように、KESの曲げ特性測定器(カ
トーテック製)を用いて繊維構造物を曲げた時の、各曲
率での反発力を表している。具体的には、タテ方向、ヨ
コ方向ともに測定した時の、曲率0.5から1.5の間
での反発力の平均値である。曲げ剛性測定値Bが高けれ
ば、繊維布帛が堅くなりすぎ、布帛触感の観点からは好
ましくない。逆に曲げ剛性Bの値が小さすぎる場合に
は、繊維構造物の形態維持性が悪くなるため好ましくな
い。曲げ剛性Bの好適な範囲は0.01〜0.1であ
り、より好ましくは0.02〜0.08である。
【0048】本発明の繊維構造物を得るためには、ポリ
マーの屈折率が1.30〜1.50、カルボキシル基末
端濃度[COOH]が0〜20eq/tであるポリマー
からなる脂肪族ポリエステル繊維を少なくとも一部に用
いた繊維構造物を、黒色分散染料により染料濃度5〜3
0%owf、染色温度10〜130℃で染色する染色
方法を採用する
【0049】本発明における黒色染料とは、本発明の脂
肪族ポリエステル繊維を染色した際に、彩度(C*値)
が、10以下となる染料を意味する。すなわち、C*値
が10以下である限り、たとえば有彩色染料を1種また
は2種以上含む染料であってもよい。
【0050】染料濃度が5%owfに満たない場合に
は、L*値が1以下といった深い黒色の発色が得られ
ない。染料濃度を高くしても、濃染化の効果はある一定
の所で飽和するので、経済的な観点から30%owf以
下とすることがよい。また、染色温度が10℃に満た
ない場合には、染料の繊維中への拡散が不十分であるた
め、L*値で1以下といった深い黒色の発色が得られ
ない。高い染着性の観点から染色温度は120〜130
℃である。130℃を越えると、カルボキシル末端濃度
[COOH]を20eq/tとしても、染色加工時の繊
維の強力低下を防ぐことはできない。
【0051】特に、染料吸尽率を高くするために染色温
度を高くした場合に加水分解は顕著であるため、布帛の
強力保持の観点からは、脂肪族ポリエステル繊維のカル
ボキシル基末端濃度[COOH]は好ましくは10eq
/t以下、最も好ましくは6eq/t以下とする。
【0052】染色加工前に、50℃〜100℃の弱アル
カリ条件下での精練および/または50〜100℃のア
ルカリ条件下での減量加工を、必要に応じて実施するこ
とができる。また、染色加工後に、弱アルカリ条件、還
元剤存在下で還元洗浄を行うことも、必要に応じて実施
できる。さらに、発色性向上やその他の機能付与のため
に公知の樹脂コーティングを実施しても良い。
【0053】
【実施例】以下、実施例によって本発明をより詳細に説
明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法で求め
た。 A.融点 パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(DSC−7)
を用いて、昇温速度15℃/分の条件で測定し、得られ
た溶融ピークのピーク温度を融点とした。 B.カルボキシル基末端濃度[COOH](eq/t) 精秤した試料をo−クレゾール(水分5%)調製液に溶
解し、この溶液にジクロロメタンを適量添加の後、0.
02規定のKOHメタノール溶液にて滴定することによ
り測定した。 C.屈折率 ポリマーの熱圧フィルムを試料として、23℃に調節さ
れた、プリズムを備えたアッベ屈折計により、JIS−
K7105記載の方法に準拠して測定した。 D.強度 オリエンテック社製引張試験機(テンシロンUCT−1
00型)を用い、試料長20cm、引張速度20cm/
分の条件で引張試験を行い破断点の応力を繊維の強度と
した。 E.L*a*b*値 染色した布帛を試料とし、ミノルタ社製分光測色機CM
−3700dを用いて、D65光源、視野角度10度の
条件で、L*、a*、b*を測定した。 F.曲げ剛性B KES(Kawabata Evaluation Sy
stem)測定器を用いて曲げ特性を測定し、曲げ剛性
のタテ、ヨコの平均値B(単位:g・cm2 /cm)を
算出した。 G.引裂強力 ダイエイ科学製機(株)のエルメンドルフ引裂強力計を
用いて、縦10cm×横6.5cmの試験片をセット
し、試験機のカッターハンドルを引いて2cmの切れ目
を入れた。落下ボタンを押して扇形振り子を落下させ、
試験片の残り4.5cmを引き裂き、この時の強力を読
みとった。試験はタテ方向とヨコ方向を各3回繰り返し
て、平均値をもって布帛の引裂強力(cN)とした。 H.繊維中の染料濃度の定量 染色に用いる染色前の染浴を、水:アセトン=1:1の
混合溶媒で10倍に希釈した溶液を調製し、日立製作所
(株)製U−3010形分光光度計を用いて500〜7
00nm領域の吸光度測定を行って、最大ピークを与え
る波長(nm)と、そのときの吸光度LA(Abs)を
求めた。同様に染色を行った後の染色後の染浴を、水:
アセトン=1:1の混合溶媒で10倍に希釈した溶液を
調製し、先に求めた最大ピーク波長における、吸光度L
B(abs)を求め、下式によって繊維中の染料濃度を
算出した。
【0054】繊維中の染料濃度(wt%)={(LA
− LB)/LA}×浴中の染料濃度(%owf) 参考例1.低カルボキシル基末端濃度ポリマーの調製 融点168℃、重量平均分子量12万、カルボキシル基
末端濃度[COOH]26.6eq/tであるポリL乳
酸ポリマー100重量部に対して1.7重量部のN,
N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイ
ミドを、2軸エクストルーダーを用いて、スクリュー部
温度200℃、平均滞留時間2分間の条件で均一に混練
・反応させた。エクストルーダーから押し出したガット
を水冷し、チップ状に成形した。得られたポリマーの屈
折率は1.43、融点は166℃、カルボキシル基末端
濃度[COOH]は5eq/tであった。 実施例1 参考例1で得られた、屈折率1.43、融点166℃、
カルボキシル基末端濃度[COOH]5eq/tのポリ
L乳酸ポリマーのチップを、105℃に設定した真空乾
燥器で12hr乾燥した。乾燥したチップをプレッシャ
ーメルター型紡糸機にて、メルター温度210℃にて溶
融し、紡糸温度220℃で、0.23D−0.30Lの
口金孔より紡出した。この紡出糸を20℃、25m/m
inのチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束
した後、3000m/minで引き取って未延伸糸(1
22dtex−36f)を得た。
【0055】この未延伸糸をホットローラー系の延伸機
を用い、延伸温度90℃、熱セット温度120℃、延伸
倍率1.45倍、延伸速度800m/minの条件で延
伸して84dtex−36fの延伸糸を得た。得られた
延伸糸の強度は、4.2cN/dtex、沸騰水収縮率
は6.2%であり、布帛の取り扱い上問題を生じなかっ
た。
【0056】該延伸糸を用いてツイル織物(2/2)を
作成し、80℃×20分間精練を行った後、150℃×
2分間乾熱セットを施した。該織物を下記の条件に調整
された染浴にて、120℃×1hr染色を行い、続いて
カセイソーダ0.5g/l、ハイドロサルファイト0.
2g/lを溶解させた水溶液を用いて60℃×20分間
還元洗浄を行った。得られた染色布帛は、タテ糸密度が
40本/cm、ヨコ糸密度が40本/cmであり、カバ
ーファクターF1 は733であった。
【0057】表1に示すように、繊維中の染料濃度は
8.1wt%、L*値は12.2と十分低い値であり、
C*値は1.2であって、黒発色性に優れていた。ま
た、引裂強力は930cNと耐久性に優れたものであっ
た。曲げ剛性Bは0.05g・cm2 /cmであり、柔
らかなタッチであった。
【0058】 染色条件 染色温度 120℃ 染色時間 60分 染料 Dianix Black BG−FS 染料濃度 10%owf 浴比 1:50 浴pH 4.5 実施例2 実施例1と同様にして得た延伸糸(84dtex−36
f)を用いて、サテン織物(5枚朱子)を作成した。該
織物を下記の条件に調整された染浴にて、120℃×1
hr染色を行い、実施例1と同様に還元洗浄を行った。
得られた染色布帛は、タテ糸密度79本/cm、ヨコ糸
密度39本/cmであり、カバーファクターF1 は10
81であった。
【0059】表1に示すように繊維中の染料濃度は1
0.2wt%、布帛のL*値は5.8であり、C*値は
0.8であって、黒発色性に極めて優れていた。また、
引き裂き強力は800cNであり、耐久性にも優れたも
のであった。曲げ剛性Bは、0.04g・cm2 /cm
であり、柔らかなタッチであった。
【0060】 染色条件 染色温度 120℃ 染色時間 60分 染料 Dianix Black BG−FS 染料濃度 15%owf 浴比 1:50 浴pH 4.5 実施例3 実施例1と同様にして得た延伸糸(84dtex−36
f)を用いて、24ゲージの緯編機を用いてインターロ
ック編地を作成した。下記の条件に調整された染浴に
て、130℃×1hr染色を行い、続いて60℃×20
分間還元洗浄を行った。得られた染色編地のカバーファ
クターF2 は38であった。
【0061】表1に示すように繊維中の染料濃度は1
2.1wt%、布帛のL*値は6.3であり、C*値は
0.9であって、黒発色性に極めて優れていた。また、
引き裂き強力は1810cNであり、耐久性にも優れた
ものであった。曲げ剛性Bは、0.02g・cm2 /c
mであり、柔らかなタッチであった。
【0062】 染色条件 染色温度 130℃ 染色時間 60分 染料 Dianix Black BG−FS 染料濃度 15%owf 浴比 1:50 浴pH 4.5 実施例4 実施例1と同様にして得た延伸糸(84dtex−36
f)を用いて、パイル織物(ベロア)を作成した。実施
例1と同様に120℃×1hr染色を行い、続いて60
℃×20分間還元洗浄を行った。カバーファクターF1
は850であった。
【0063】表1に示すように繊維中の染料濃度は7.
8wt%、布帛のL*値は5.4であり、C*値は0.
8であって、黒発色性に極めて優れていた。また、引き
裂き強力は1200cNであり、耐久性にも優れたもの
であった。曲げ剛性Bは、0.06g・cm2/cmで
あり、柔らかなタッチであった
【0064】較例1 融点が262℃、屈折率が1.58、カルボキシル基末
端濃度[COOH]が28(eq/t)のポリエチレン
テレフタレートのチップを、160℃に設定した真空乾
燥機で5hr乾燥した。乾燥したチップをプレッシャー
メルター型紡糸機にて、メルター温度280℃にて溶融
し、紡糸温度290℃で、0.23D−0.30Lの口
金孔より紡出した。この紡出糸を20℃、25m/mi
nのチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束し
た後、3000m/minで引き取って未延伸糸(15
0dtex−36f)を得た。
【0065】この未延伸糸をホットローラー系の延伸機
を用い、延伸温度90℃、熱セット温度130℃、延伸
倍率1.80倍、延伸速度800m/minの条件で延
伸して84dtex−36fの延伸糸を得た。得られた
延伸糸の強度は、5.0cN/dtex、沸騰水収縮率
は6.8%であり、布帛の取り扱い上問題を生じなかっ
た。
【0066】該延伸糸を用いてツイル織物(2/2)を
作成し、80℃×20分間精練を行った後、180℃×
2分間乾熱セットを施した。該織物を下記の条件に調整
された染浴にて、130℃×1hr染色を行い、続いて
カセイソーダ0.5g/l、ハイドロサルファイト0.
2g/lを溶解させた水溶液を用いて80℃×20分間
還元洗浄を行った。得られた染色布帛は、タテ糸密度が
40本/cm、ヨコ糸密度が40本/cmであり、カバ
ーファクターF1 は1091であった。
【0067】表2に示すように、繊維中の染料濃度は1
8.2wt%で、L*値は20.0と高い値であり、C
*値が2.5であって、黒発色の深色性に劣るものであ
った。曲げ剛性Bは0.08g・cm2 /cmであり、
実施例に比較して粗硬なタッチであった。引き裂き強力
は1500cNであった。
【0068】 染色条件 染色温度 130℃ 染色時間 60分 染料 Dianix Black BG−FS 染料濃度 20%owf 浴比 1:50 浴pH 4.5 比較例2 染液の組成を下記の通りとする以外は、実施例1と同様
に染色加工を行った。表2に示す通り、繊維中の染料濃
度は1.0wt%であり、布帛のL*値は24.2、C
*値は2.0と深色性に劣るものであった。
【0069】 染色条件 染色温度 100℃ 染色時間 60分 染料 Dianix Black BG−FS 染料濃度 1%owf 浴比 1:50 浴pH 4.5 比較例3 実施例1と同様にして得た延伸糸(84dtex−36
f)を用いて、経緯密度の粗いタフタ織物を作成した。
該織物を実施例1と同様に120℃×1hr染色を行
い、続いて60分×20分の還元洗浄を行った。得られ
た染色布帛は、タテ糸密度15本/cm、ヨコ糸密度が
15本/cmであり、カバーファクターF 1 は275で
あった。
【0070】表2に示すように、繊維中の染料濃度は
8.8wt%であったが、L*値は20.2と高い値で
あり、C*値は1.8で、黒発色の深色性に劣るもので
あった。また、引裂強力は220cNと低いものであ
り、耐久性に難があった。 比較例4 実施例1と同様にして得た延伸糸(84dtex−36
f)を用いて、8ゲージの緯編機を用いて天竺を作成し
た。下記の条件に調製された染浴にて、120℃×1h
r染色を行い、続いて60℃×20分間還元洗浄を行っ
た。得られた染色編地のカバーファクターF2 は1.8
であった。
【0071】表2に示すように、繊維中の染料濃度は
6.5wt%であったが、L*値は26.2と高い値で
あり、C*値は3.2で、黒発色の深色性に劣るもので
あった。また、引裂強力は320cNと低いものであ
り、耐久性に難があった。
【0072】 染色条件 染色温度 120℃ 染色時間 60分 染料 Dianix Black BG−FS 染料濃度 10%owf 浴比 1:50 浴pH 4.5
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【発明の効果】本発明によって、従来得られなかった黒
色の深色性に優れる繊維構造物を得ることができる。ま
た、風合いにも優れるため、ブラックフォーマル、学
衣、和服用途に好適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−311781(JP,A) 特開 平9−21017(JP,A) 特開 平11−152640(JP,A) 特開 平10−110341(JP,A) 特開2001−271224(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D03D,D06P,D01F

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】屈折率が1.30〜1.50、カルボキシ
    ル基末端濃度[COOH]が0〜20eq/tであるポ
    リマーからなり、分散染料によって染色された脂肪族ポ
    リエステル繊維を少なくとも一部に用いた繊維構造物で
    あって、明度L*値が1以下、彩度C*値が10以下
    であることを特徴とする脂肪族ポリエステル繊維構造
    物。
  2. 【請求項2】繊維構造物が布帛であり、エルメンドルフ
    引裂強力計を用いて測定される該布帛の引裂強力が49
    0cN以上であることを特徴とする請求項1記載の脂肪
    族ポリエステル繊維構造物。
  3. 【請求項3】脂肪族ポリエステルがL−乳酸及び/又は
    D−乳酸を主たる繰り返し単位とするポリエステルであ
    ることを特徴とする請求項1または2に記載の脂肪族ポ
    リエステル繊維構造物。
  4. 【請求項4】脂肪族ポリエステル繊維の強度が3〜8c
    N/dtex、沸騰水収縮率が0〜15%、カルボキシ
    ル基末端濃度[COOH]が0〜0eq/tであるこ
    とを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の脂
    肪族ポリエステル繊維構造物。
  5. 【請求項5】繊維構造物が織物であり、下記式1で規定
    される織物カバーファクターF1が300〜2000で
    あることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記
    載の脂肪族ポリエステル繊維構造物。 F1={経糸密度(本/cm)×(経糸の繊度(dte
    x))0.5}+{緯糸密度(本/cm)×(経糸の繊度
    (dtex)0.5)} ・・・(式1)
  6. 【請求項6】繊維構造物が編物であり、下記式2で規定
    される編地カバーファクターF2が、2〜60であるこ
    とを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の脂肪
    族ポリエステル繊維構造物。 F2={繊度(dtex)0.5}/{ループ長(cm)}
    ・・・(式2)
  7. 【請求項7】明度L*値が8以下であることを特徴とす
    る請求項1〜6のいずれか1項記載の脂肪族ポリエステ
    ル繊維構造物。
  8. 【請求項8】繊維構造物のKES(Kawabata
    Evaluation System)による曲げ剛性
    測定値Bが0.01〜0.1(g・cm2/cm)であ
    ることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項記載の
    脂肪族ポリエステル繊維構造物。
  9. 【請求項9】脂肪族ポリエステル繊維の混用比率を重量
    比で30%以上とすることを特徴とする請求項1〜8の
    いずれか1項記載の脂肪族ポリエステル繊維構造物。
  10. 【請求項10】屈折率が1.30〜1.50、カルボキ
    シル基末端濃度[COOH]が0〜20eq/tである
    ポリマーからなる脂肪族ポリエステル繊維を少なくとも
    一部に用いた繊維構造物を、黒色分散染料により染料濃
    度5〜30%owf、染色温度10〜130℃で染色
    することを特徴とするポリエステル繊維構造物の製造方
    法。
  11. 【請求項11】脂肪族ポリエステル繊維のカルボキシル
    基末端濃度[COOH]が0〜0eq/tであること
    を特徴とする請求項10に記載のポリエステル繊維構造
    物の製造方法。
  12. 【請求項12】カルボジイミド化合物、エポキシ化合
    物、オキサゾリン化合物の中から選ばれる少なくとも1
    種の末端封鎖剤を反応させた脂肪族ポリエステル繊維を
    用いることを特徴とする請求項10または11記載の脂
    肪族ポリエステル繊維構造物の製造方法。
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